特許第6844105号(P6844105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844105
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/34 20060101AFI20210308BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20210308BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20210308BHJP
【FI】
   C08F220/34
   C09D4/02
   C09D11/101
【請求項の数】8
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-196908(P2015-196908)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-66347(P2017-66347A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷内 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】稲田 和正
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/102834(WO,A1)
【文献】 特表2008−545859(JP,A)
【文献】 特開2007−000711(JP,A)
【文献】 特開2012−255137(JP,A)
【文献】 特開2000−086728(JP,A)
【文献】 特開平07−149849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00−220/70
C09D 1/00− 4/06
C09D 11/00− 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、下記発光ダイオードを光源とする紫外線(以下、「UV−LED」という)硬化型組成物を塗工した後、UV−LEDによる紫外線を照射する硬化膜を有する基材の製造方法。
UV−LED硬化型組成物:下記混合物(a)と化合物(b)のマイケル付加反応生成物である3個以上の(メタ)アクリロイル基及び3級アミノ基を有し、酸性基及び芳香族基を有しない化合物を含む混合物あって、水酸基価1〜100mgKOH/gの混合物である(A)及び水素引抜き型光重合開始剤を必須成分として含有するUV−LED硬化型組成物。
・混合物(a):4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し酸性基を有しない化合物(a1)を含む(メタ)アクリレート混合物であって、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、並びにジペンタエリスリトールのペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種
・化合物(b):酸性基及び芳香族基を有しない2級アミンであって、脂肪族モノアミン及びヒドロキシモノアミンから選択される2級アミン
【請求項2】
前記(A)成分が、(メタ)アクリル当量90〜250g/eqで、3級アミン価5〜140mgKOH/gの混合物である請求項1記載の硬化膜を有する基材の製造方法
【請求項3】
前記(A)成分が、混合物(a)1モルに対して化合物(b)を0.1〜1.0モルの割合で反応させた反応物の混合物である請求項1又は請求項2に記載の硬化膜を有する基材の製造方法
【請求項4】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製造方法を含むコーティング用硬化膜を有する基材の製造方法
【請求項5】
請求項に記載の製造方法を含むプラスチックコーティング用硬化膜を有する基材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製造方法を含むインキ用硬化膜を有する基材の製造方法
【請求項7】
請求項に記載の製造方法を含むオフセットインキ用硬化膜を有する基材の製造方法
【請求項8】
下記混合物(a)と化合物(b)を常温又は加熱下で撹拌して、マイケル付加反応生成物である3個以上の(メタ)アクリロイル基及び3級アミノ基を有し、酸性基及び芳香族基を有しない化合物を含む混合物であって、水酸基価1〜100mgKOH/gの混合物(A)を製造する工程、及び
得られた(A)成分と水素引抜き型光重合開始剤を混合する工程
を含むUV−LED硬化型組成物を製造する工程、
基材に、前記で得られたUV−LED硬化型組成物を塗工する工程、並びに
UV−LEDによる紫外線を照射する工程を含む
硬化膜を有する基材の製造方法。
・混合物(a):4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し酸性基を有しない化合物(a1)を含む(メタ)アクリレート混合物あって、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、並びにジペンタエリスリトールのペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種
・化合物(b):酸性基及び芳香族基を有しない2級アミンであって、脂肪族モノアミン及びヒドロキシモノアミンから選択される2級アミン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型組成物に関し、好ましくは活性エネルギー線硬化型組成物に関し、コーティング剤、インキ、レジスト及び接着剤等の種々の用途に使用可能であり、特に、プラスチックコーティング用途及びオフセットインキ用途に好ましく使用可能であり、これら技術分野に属する。
尚、本明細書においては、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型組成物は、コーティング剤、インキ、レジスト及び接着剤等の種々の用途で使用され、活性エネルギー線硬化の場合には、光源として高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の紫外線ランプが硬化システムとして広く用いられてきた。
【0003】
近年、これら紫外線ランプに変わる硬化システムとして、光源寿命が長く、省エネルギー性に優れる発光ダイオードを光源とした紫外線装置(以下、「UV−LED」という)が開発され、特に、空気雰囲気下で紫外線照射を行うクリアコーティング剤等の塗料分野及びオフセットインキ等の印刷分野において、UV−LED光源に対応する硬化物の製造方法、それに用いる組成物が検討されている。
【0004】
一方、UV−LED光源の短所として、従来の紫外線ランプ光源と比較して、紫外線硬化型組成物の硬化性(皮膜乾燥性)が大きく劣る点が挙げられる。
これは、広域波長の紫外線を発する紫外線ランプ光源と比較して、単色の光源であり紫外線エネルギーの総量が小さく、光重合開始剤から生成するラジカルの発生量が少ない為に、重合反応が酸素阻害の影響を受けやすいためである。又、相対的に短波長領域の紫外線エネルギー量が不足することから、UV−LED照射により得られた紫外線硬化型組成物は、一般に皮膜表面の硬化性が劣る傾向がある。
【0005】
従来、酸素阻害による硬化阻害を防ぐ為に、窒素雰囲気下での紫外線照射やフィルムのラミネートによる酸素遮断下での紫外線照射が知られているが、装置の大型化、コスト高及び生産性低下といった問題があり、導入されるケースは少ない。
又、アミン化合物、リン系化合物等の添加剤を含む組成物が知られているが、このような比較的効果の高い添加剤は、いずれも硬化後にブリードアウトすることなどから、添加量が制限される問題がある。そこで、ポリアミン化合物と(メタ)アクリレートのマイケル付加を利用した多分岐の反応性酸素阻害抑制剤が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、当該化合物はウレタン結合を有し粘度が高いため、無溶剤の用途での使用には適していなかった。
【0006】
又、アミン化合物と多官能(メタ)アクリレートのマイケル付加物としては、酸性基を有する化合物が知られている(特許文献2)。
しかしながら、当該化合物は、種々の性能に優れるものの、耐乳化性が要求される用途には不十分なものであったり、硬化物の密着性や耐擦過性等が要求される用途においては物性が不十分となってしまうものであった。
【0007】
一方、インキ組成物をUV−LEDで硬化させようとする場合、波長350〜420nmに吸収を有する光重合開始剤を使用する必要があるが、インキに用いられる顔料は、多くの場合、波長350〜420nmに光吸収があり、インキの光重合開始剤として単に波長350〜420nmに吸収を有する光重合開始剤を用いたとしても十分な硬化は得られない。そこで、特定の3種類の光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型インキが提案されている(特許文献3)。
しかしながら、当該組成物は、内部硬化性に優れるものの、これまでに開発されているUV−LED光源の照度はまだまだ低く、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(以下、「DPHA」という)を用いたとしても、表面硬化性については不充分であった。
又、DPHA以外の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物の中には、UV−LEDによる硬化性及び耐乳化性に優れるものもあるが、この場合、硬化物の密着性や耐擦過性等といった物性が不十分となってしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−72831号公報
【特許文献2】国際公開第2006/75754号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2009/8226号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、組成物のUV−LED照射による硬化性に優れ、耐乳化性に優れ、その硬化物が密着性及び耐擦過性に優れるUV−LED硬化型組成物を使用した硬化膜を有する基材の製造方法、好ましくはコーティング用又はインキ用UV−LED硬化型組成物を使用した硬化膜を有する基材の製造方法を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するためには、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であって、さらに化合物中に酸性基を有せず、3級アミノ基を有する化合物を含む硬化型組成物が、組成物の硬化性及び耐乳化性に優れ、その硬化物が密着性及び耐擦過性にも優れることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化膜を有する基材の製造方法によれば、組成物のUV−LED照射による硬化性に優れ、耐乳化性に優れ、その硬化物が密着性及び耐擦過性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
基材に、下記発光ダイオードを光源とする紫外線(以下、「UV−LED」という)硬化型組成物を塗工した後、UV−LEDによる紫外線を照射する硬化膜を有する基材の製造方法に関する。
UV−LED硬化型組成物:下記混合物(a)と化合物(b)のマイケル付加反応生成物である3個以上の(メタ)アクリロイル基及び3級アミノ基を有し、酸性基及び芳香族基を有しない化合物を含む混合物あって、水酸基価1〜100mgKOH/gの混合物である(A)及び水素引抜き型光重合開始剤を必須成分として含有するUV−LED硬化型組成物。
・混合物(a):4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し酸性基を有しない化合物(a1)を含む(メタ)アクリレート混合物であって、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、並びにジペンタエリスリトールのペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種
・化合物(b):酸性基及び芳香族基を有しない2級アミンであって、脂肪族モノアミン及びヒドロキシモノアミンから選択される2級アミ
以下、(A)成分、硬化型組成物及び用途について説明する。
【0013】
1.(A)成分
(A)成分は、3個以上の(メタ)アクリロイル基及び3級アミノ基を有し酸性基及び芳香族基を有しない化合物を含む混合物であって、水酸基価1〜100mgKOH/gの混合物である。
但し、(A)成分は、下記混合物(a)と化合物(b)のマイケル付加反応により製造されるものである。
・混合物(a):4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し酸性基を有しない化合物(a1)を含む(メタ)アクリレート混合物
・化合物(b):酸性基及び芳香族基を有しない2級アミンであって、脂肪族モノアミン及びヒドロキシモノアミンから選択される2級アミン
(A)成分は酸性基を有しない化合物であり、酸性基を有する化合物の場合、粘度が高く、耐乳化性が悪くなってしまう。
以下、(A)成分の原料化合物である混合物(a)及び化合物(b)、並びに(A)成分の製造方法について説明する。
【0014】
1−1.混合物(a)
混合物(a)は、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し酸性基を有しない化合物(a1)〔以下、「化合物(a1)」という〕を含む(メタ)アクリレート混合物である。
化合物(a1)としては、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し酸性基を有しない化合物であれば、種々の化合物を使用することができる。
化合物(a1)としては、水酸基を有する化合物であっても良い。
【0015】
化合物(a1)の具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのテトラ、ペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレートが挙げられる
混合物(a)としては、前記した化合物を2種以上含むものであっても良い。
【0016】
化合物(a1)としては、成物が硬化性に優れるものとなる点で、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、並びにジペンタエリスリトールのペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレートを使用する
【0017】
混合物(a)は、化合物(a1)を含む(メタ)アクリレート混合物である。
混合物(a)を工業的に製造する場合、例えば4個以上の水酸基を有するポリオールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応で製造する場合、1種又は2種以上の化合物(a1)を主成分とし、(メタ)アクリロイル基を3個以下含む(メタ)アクリレートの混合物として得られる。
本発明では、当該混合物を混合物(a)として使用しても良い。
具体的には、原料ポリオールを基準として、以下の例が挙げられる。
・ペンタエリスリトール:テトラ(メタ)アクリレートを主成分とし、モノ、ジ及びトリ(メタ)アクリレートを含む混合物
・ジペンタエリスリトール:テトラ、ペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレートを主成分とし、モノ、ジ及びトリ(メタ)アクリレートを含む混合物
・ジグリセリン:テトラ(メタ)アクリレートを主成分とし、モノ、ジ及びトリ(メタ)アクリレートを含む混合
この場合の混合物(a)は、水酸基含有モノ(メタ)アクリレート、水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート及び水酸基を有しないポリ(メタ)アクリレートの混合物であり、水酸基価を有する混合物となる。
混合物(a)の好ましい水酸基価としては、1〜100mgKOH/gが好ましく、より好ましくは1〜90mgKOH/gである。
【0018】
1−2.化合物(b)
化合物(b)は、酸性基及び芳香族基を有しない2級アミンであって、脂肪族モノアミン及びヒドロキシモノアミンから選択される2級アミンであり、下記一般式(1)で表される化合物である。
1−NH−R2 ・・・(1)
ここで、R1及びR2は脂肪族炭化水素基、水酸基含有脂肪族炭化水素基、及びアルキルカルボニル基を表し、酸性基を有しない基である。但し、1分子中のR1及びR2は、同一であっても異なっていても良い。又、R1及びR2は、一つとなって環状基を形成する脂肪族炭化水素基であっても良い。又、脂肪族炭化水素基は、酸素原子を含む基であっても良い。
脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基及びイソブチル基等の分岐状アルキル基、シクロヘキシル基等の脂環式基等が挙げられる。
水酸基含有脂肪族炭化水素基の例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基及びヒドロキシブチル基等が挙げられる。
一つとなって環状基を形成する脂肪族炭化水素基の例としては、−CH2CH2CH2CH2CH2−及び−CH2CH2OCH2CH2−等が挙げられる。
アルキルカルボニル基の例としては、アセチル基等が挙げられる
【0019】
化合物(b)としては、酸性基及び芳香族基を有しない2級アミンであって、脂肪族モノアミン及びヒドロキシモノアミンから選択される2級アミンであれば、種々の化合物を使用することができる。
好ましい具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン及びモルフォリン等の脂肪族モノアミン;並びに
N−メチルエタノールアミン、N−アセチルエタノールアミン及びジエタノールアミン等のヒドロキシルモノアミンが挙げられる。
これらの中でも、耐乳化性に優れる点で、脂肪族モノアミンが特に好ましい。
【0020】
1−3.(A)成分の製造方法
(A)成分は、混合物(a)と化合物(b)のマイケル付加反応により得られるものである。
(A)成分の具体例を下記式(1)に示す。式(1)は、化合物(a1)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを使用した例である。
【0021】
【化1】
【0022】
式(1)において、Aはアクリロイルオキシ基を表し、A’は−OCOCH2CH2−を表し、R1及びR2は前記と同義である。
上記式(1)では、理解しやすいように化合物(a1)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのみを記載した。実際は前記したとおり、工業的に得られるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート中には、他の化合物(a1)としてジペンタエリスリトールのテトラ及びペンタアクリレート、並びにジペンタエリスリトールのモノ、ジ及びトリアクリレートが含まれており、これら化合物と化合物(b)がマイケル付加反応した種々の化合物の混合物となる。
【0023】
混合物(a)1モルに対する化合物(b)の反応割合としては、0.1〜1.0モルが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0モルである。
混合物(a)1モルに対して化合物(b)を0.1〜1.0モル反応させて得られた反応物は、空気雰囲気下での表面硬化性及び硬化物の密着性に優れるという点で好ましい。
尚、混合物(a)は、複数種の(メタ)アクリレートを含む混合物であり、分子量を一義的に決定できない。よって、本発明における混合物(a)のモル数は、混合物(a)の数平均分子量(以下、「Mn」という)より計算された値とする。
本発明におけるMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)法により測定されたポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
【0024】
尚、本発明におけるGPCにより測定した分子量は、以下の条件で測定した値を意味する。
・検出器:示差屈折計(RI検出器)
・カラムの種類:架橋ポリスチレン系カラム
・カラムの温度:25〜50℃の範囲内
・溶離液:テトラヒドロフラン(以下、「THF」という)
【0025】
マイケル付加反応の方法としては、常法に従えば良い。
具体的には、例えば、混合物(a)及び化合物(b)を、常温〜50℃程度で1時間以上反応させる方法等が挙げられる。
【0026】
(A)成分の製造方法においては、反応液の色調を良好に維持する目的で系内にアルゴン、ヘリウム、窒素及び炭酸ガス等の不活性ガスを導入しても良く、(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で系内に含酸素ガスを導入しても良い。
含酸素ガスの具体例としては、空気、酸素と窒素の混合ガス、酸素とヘリウムの混合ガス等が挙げられる。含酸素ガスの導入方法としては、反応液中に溶存させたり、又は反応液中に吹込む(いわゆるバブリング)方法がある。
【0027】
(A)成分の製造方法においては、(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で反応液中に重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、フェノチアジン、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等の有機系重合禁止剤、塩化銅、硫酸銅及び硫酸鉄等の無機系重合禁止剤、並びにジブチルジチオカルバミン酸銅、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等の有機塩系重合禁止剤が挙げられる。
【0028】
(A)成分は3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む混合物であり、(メタ)アクリル当量90〜250g/eqが好ましく、より好ましくは90〜230g/eqである。
(A)成分の(メタ)アクリル当量90〜250g/eqである化合物は、空気雰囲気下での表面硬化性及び硬化物の耐擦過性に優れる点で好ましい。
又、(A)成分は3級アミノ基を有する化合物を含む混合物であり、3級アミン価5〜140mgKOH/gの化合物が好ましく、より好ましくは5〜120mgKOH/gである。
(A)成分の3級アミン価5〜140mgKOH/gである化合物は、空気雰囲気下での表面硬化性及び硬化物の密着性に優れる点で好ましい。
(A)成分、水酸基価が1〜100mgKOH/gの化合物でありましくは1〜90mgKOH/gである。
(A)成分の水酸基価が1〜100mgKOHである化合物は空気雰囲気下での表面硬化性及び硬化物の密着性に優れる点で好ましい。
【0029】
(A)成分の重量平均分子量(以下、「Mw」という)は、400〜3,000であることが好ましく、400〜2,000であることがより好ましい。
本発明におけるMwは、GPCにより測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。GPCの測定条件は、前記した通りである。
【0030】
(A)成分の粘度は、100〜15,000mPa・sであることが好ましく、100〜10,000mPa・sであることがより好ましい。
尚、本発明において粘度とは、E型粘度計を使用して25℃で測定した値を意味する。
【0031】
2.硬化型組成物
本発明は、前記(A)成分を含む硬化型組成物に関する。
組成物の製造方法としては、上記混合物(a)と化合物(b)を常温又は加熱下で撹拌して、マイケル付加反応生成物である3個以上の(メタ)アクリロイル基及び3級アミノ基を有し酸性基を有しない化合物を含む混合物(A)を製造する工程を含む方法が好ましい。
当該工程としては、前記した(A)成分の製造方法に従えば良い。
【0032】
本発明の組成物は、前記(A)成分を必須成分とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
本発明の組成物は、活性エネルギー線硬化型組成物及び熱硬化型組成物のいずれにも使用することができるが、活性エネルギー線硬化型組成物が好ましい。
【0033】
その他成分としては、具体的には、重合開始剤〔以下、「(B)成分」という〕、前記(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物〔以下、「(C)成分」という〕及び有機溶剤〔以下、「(D)成分」という〕等が挙げられる。
以下、これらの成分について説明する。
尚、後記するその他の成分は、例示した化合物の1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0034】
2−1.(B)成分
本発明の組成物は、硬化型組成物であり、(B)成分(重合開始剤)を含むものが好ましい。
本発明の組成物を活性エネルギー線硬化型組成物として使用する場合には、(B)成分として光重合開始剤〔以下、「(B1)成分」という〕を配合することが好ましく、熱硬化型組成物として使用する場合には、(B)成分として熱重合開始剤〔以下、「(B2)成分」という〕を配合することが好ましい。
以下、(B1)及び(B2)成分について説明する。
【0035】
2−1−1.(B1)成分
本発明の組成物を活性エネルギー線硬化型組成物として使用し、さらに電子線硬化型組成物として使用する場合は、(B1)成分(光重合開始剤)を含有させず、電子線により硬化させることも可能である。
本発明の組成物を活性エネルギー線硬化型組成物として使用する場合において、特に、活性エネルギー線として紫外線及び可視光線を用いたときには、硬化の容易性やコストの観点から、(B1)成分を更に含有することが好ましい。
活性エネルギー線として電子線を使用する場合には、必ずしも配合する必要はないが、硬化性を改善させるため必要に応じて少量配合することもできる。
【0036】
(B1)成分の具体例としては、ベンジルジメチルケタール及びベンジル等のベンジル系化合物;
ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインぎ酸メチル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン及び2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物;
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン及び3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール等のα−アミノアルキルフェノン系化合物;
エチルアントラキノン及びフェナントレンキノン等のキノン系化合物;
ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イル−オキシ]−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフルオロチオキサントン等のチオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0037】
(B1)成分としては、これら化合物の中でも、硬化性及び硬化物の密着性に優れる点で、水素引抜き型の光重合開始剤が好ましい。水素引抜き型の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系化合物及びチオキサントン系化合物等が挙げられる。
さらに、α−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物が、大気下において、薄膜のコーティングであっても表面硬化性が良好で好ましく、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンがより好ましい。
又、硬化物の膜厚を厚くする必要がある場合、例えば50μm以上とする必要がある時は、硬化物内部の硬化性を向上させる目的で、又、紫外線吸収剤や顔料を併用する場合は、組成物の硬化性を向上させる目的で、アシルホスフィンオキサイド化合物、チオキサントン系化合物及びα−アミノアルキルフェノン系化合物から選ばれる複数種の化合物を併用することが好ましい。
この場合の化合物の好ましい例としては、アシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられ、チオキサントン系化合物としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられ、並びに、α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタンー1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。
【0038】
光源として、UV−LEDを使用する場合は、水素引抜き型の光重合開始剤と開裂型の光重合開始剤を組合わせて使用することが好ましい。
水素引抜き型の光重合開始剤としては、前記と同様の化合物が挙げられ、2,4−ジエチルチオキサントン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
開裂型の光重合開始剤としては、α−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α−アミノアルキルフェノン系化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられ、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
水素引抜き型の光重合開始剤と開裂型の光重合開始剤の併用割合としては、これらの合計量100重量%を基準として、水素引抜き型の光重合開始剤が5〜95重量%、開裂型の光重合開始剤が5〜95重量%が好ましい。
【0039】
(B1)成分の含有割合は、硬化性成分合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜8重量部である。(B1)成分の割合を0.1重量部以上にすることで、組成物の光硬化性を良好にし、密着性に優れるものとすることができ、10重量部以下とすることで、硬化膜の内部硬化性が良好にすることができ、基材との密着性を良好にすることができる。
尚、硬化性成分とは、熱又は活性エネルギー線により硬化する成分であり、(A)成分を意味し、後記する(C)成分を配合する場合は、(A)及び(C)成分を意味する。
【0040】
2−1−2.(B2)成分
本発明の組成物を熱硬化型組成物として使用する場合には、(B2)成分(熱重合開始剤)を配合することが好ましい。
(B2)成分としては、種々の化合物を使用することができ、有機過酸化物及びアゾ系開始剤が好ましい。
有機過酸化物の具体例としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジーメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α、α‘−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ系化合物の具体例としては、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾジ−t−オクタン、アゾジ−t−ブタン等が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。又、有機過酸化物は還元剤と組み合わせることによりレドックス反応とすることも可能である。
【0041】
(B2)成分の配合割合としては、硬化性成分合計量100重量部に対して、10重量部以下が好ましい。
(B2)成分を単独で用いる場合は、通常のラジカル熱重合の常套手段にしたがって行えばよく、場合によっては(B1)成分と併用し、光硬化させた後にさらに反応率を向上させる目的で熱硬化を行うこともできる。
【0042】
2−2.(C)成分
(C)成分は、前記(A)成分以外のエチレン性不飽和化合物であり、組成物の硬化物に種々の物性を付与する目的で配合する。
(C)成分におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基及び(メタ)アリル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
尚、下記において、「単官能」とは、エチレン性不飽和基を1個有する化合物を意味し、「○官能」とはエチレン性不飽和基を○個有する化合物を意味し、「多官能」とはエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を意味する。
【0043】
(C)成分において、単官能エチレン性不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸のマイケル付加型のダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、パラクミルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノール(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメチロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)テトラヒドロフタルイミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0044】
2官能(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びノナンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。このほかに、ビスフェノール骨格や、ポリエーテル骨格、ポリアルキレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレート等も用いることができる。
【0045】
3官能以上(メタ)アクリレート化合物としては、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば種々の化合物が挙げられ、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート;
イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート;並びに
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基を有し3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と有機ポリイソシアネートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート等
を挙げることができる。
前記における、アルキレンオキサイド付加物の例としては、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
又、前記有機ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体等を挙げることができる。
【0046】
(C)成分の含有割合は、硬化性成分の合計量100重量部中に0〜60重量%含むことが好ましく、より好ましくは0〜30重量%である。
(C)成分の含有割合が60重量%以下とすることで、特に(C)成分が多官能エチレン性不飽和化合物の場合には、硬化膜が脆くなることを防止することができる。
【0047】
2−3.(D)成分
本発明の組成物は、最も好ましいのは無溶剤であるが、基材への塗工性を改善する等の目的で、(D)成分の有機溶剤を含むことができる。
【0048】
(D)成分の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルコール化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノエーテル化合物;ダイアセトンアルコール等のアセトンアルコール;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン化合物;ジブチルエーテル等のエーテル化合物;並びにN−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの中でも、アルキレングリコールモノエーテル化合物、ケトン化合物が好ましく、アルキレングリコールモノエーテル化合物がより好ましい。
【0049】
(D)成分の含有割合は、硬化性成分の合計量100重量部に対して、0〜1,000重量部であることが好ましく、0〜500重量部であることがより好ましく、0〜300重量部であることがさらに好ましい。上記範囲であると、組成物を塗工に適当な粘度とすることができ、後記する公知の塗布方法で組成物を容易に塗布することができる。
【0050】
3.用途
本発明の組成物は、種々の用途に使用可能である。
好ましい用途の例としては、コーティング剤、インキ、レジスト及び接着剤等が挙げられ、より好ましい用途の例としては、プラスチックコーティング用組成物、オフセット印刷用インキ用組成物等が挙げられる。
以下、より好ましい用途について説明する。
【0051】
3−1.コーティング用組成物
本発明の組成物は、薄膜硬化性が優れ、硬化物の硬度が高いため、コーティング用組成物として好ましく使用することができる。
【0052】
コーティング用組成物は、プラスチックコーティング用途として好ましく使用でき、基材としては、偏光子保護フィルムや反射防止フィルムに用いられるプラスチックフィルム、家電製品や自動車内外装部品に用いられる樹脂成型品等が挙げられる。
【0053】
コーティング用組成物は、前記(A)を必須成分とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
その他成分としては、具体的には、前記した(B)、(C)及び(D)成分の他、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料・染料、シランカップリング剤、表面改質剤及びポリマー等が挙げられる。
以下、これらの成分について説明する。
尚、後記するその他の成分は、例示した化合物の1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0054】
1)酸化防止剤
酸化防止剤は、硬化膜の耐熱性、耐候性等の耐久性を向上させる目的で配合する。
酸化防止剤としては、たとえばフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、たとえば、ジt−ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール類を挙げることができる。市販されているものとしては、(株)アデカ製のAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン等のホスフィン類や、亜リン酸トリアルキルや亜リン酸トリアリール等が挙げられる。これらの誘導体で市販品としては、たとえば(株)アデカ製、アデカスタブPEP−4C、PEP−8、PEP−24G、PEP−36、HP−10、260、522A、329K、1178、1500、135A、3010等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、チオエーテル系化合物が挙げられ、市販品としては(株)アデカ製AO−23、AO−412S、AO−503A等が挙げられる。
これらは1種を用いても2種類以上を用いてもよい。これら酸化防止剤の好ましい組合せとしては、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との併用、及びフェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤の併用が挙げられる。
酸化防止剤の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、硬化性成分合計量100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量部である。
含有割合を0.1重量部以上とすることで、組成物の耐久性を向上させることができ、一方、5重量部以下とすることで、硬化性や密着性を良好にすることができる。
【0055】
2)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、硬化膜の耐光性を向上させる目的で配合する。
紫外線吸収剤としては、BASF社製TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN479等のトリアジン系紫外線吸収剤や、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
紫外線吸収剤の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、硬化性成分合計量100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量部である。含有割合を0.01重量%以上とすることで、硬化膜の耐光性を良好なものとすることができ、一方、5重量%以下とすることで、組成物の硬化性に優れるものとすることができる。
【0056】
3)顔料・染料
顔料としては、有機顔料及び無機顔料等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー及びピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット及びパーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン及びチオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン等のフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド及びキナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド及びペリレンスカーレット等のペリレン系有機顔料;イソインドリノンエロー及びイソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド及びピランスロンオレンジ等のピランスロン系有機顔料;チオインジゴ系有機顔料;縮合アゾ系有機顔料;ベンズイミダゾロン系有機顔料;キノフタロンエロー等のキノフタロン系有機顔料、イソインドリンエロー等のイソインドリン系有機顔料;並びにその他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド及びジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0057】
無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック及び合成鉄黒等を挙げることができる。
尚、前記フィラーで例示したカーボンブラックは、無機顔料としても使用することができる。
染料としては、従来から知られた種々の化合物を使用することができる。
【0058】
4)シランカップリング剤
シランカップリング剤は、硬化膜と基材との界面接着強度を改善する目的で配合する。
シランカップリング剤としては、基材との接着性向上に寄与できるものであれば特に特に限定されるものではない。
【0059】
シランカップリング剤としては、具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル-N-(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
シランカップリング剤の配合割合は、目的に応じて適宜設定すれば良く、硬化性成分合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。
配合割合を0.1重量部以上にすることで、組成物の接着力を向上させることができ、一方、10重量部以下とすることで、接着力の経時変化を防止することができる。
【0061】
5)表面改質剤
本発明の組成物は、塗布時のレベリング性を高める目的や、硬化膜の滑り性を高めて耐擦傷性を高める目的等のため、表面改質剤を添加してもよい。
表面改質剤としては、表面調整剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、スベリ性付与剤及び防汚性付与剤等が挙げられ、これら公知の表面改質剤を使用することができる。
それらのうち、シリコーン系表面改質剤及びフッ素系表面改質剤が好適に挙げられる。具体例としては、シリコーン鎖とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するシリコーン系ポリマー及びオリゴマー、シリコーン鎖とポリエステル鎖とを有するシリコーン系ポリマー及びオリゴマー、パーフルオロアルキル基とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー、並びに、パーフルオロアルキルエーテル鎖とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー等が挙げられる。
又、滑り性の持続力を高める等の目的で、分子中にエチレン性不飽和基、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する表面改質剤を使用してもよい。
【0062】
表面改質剤の含有割合は、硬化性成分の合計量100重量部に対して、0.01〜1.0重量部であることが好ましい。上記範囲であると、塗膜の表面平滑性に優れる。
【0063】
6)ポリマー
本発明の組成物は、得られる硬化膜の耐カール性をより改良する目的等で、ポリマーをさらに含有していてもよい。
好適なポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられ、好適な構成モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。(メタ)アクリル酸を共重合したポリマーの場合、グリシジル(メタ)アクリレートを付加させて(メタ)アクリロイル基をポリマー鎖に導入してもよい。
ポリマーの含有割合は、硬化性成分の合計量100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。上記範囲であると、得られる硬化膜の耐カール性により優れる。
【0064】
3−2.インキ用組成物
本発明の組成物は、薄膜硬化性に優れるため、単色又は多色印刷後さらに印刷機で印刷される透明なオーバープリントニスインキや黄、紅、藍、墨等のカラー印刷用インキ用として好ましく使用することができる。
【0065】
印刷方式としては、オフセット印刷(湿し水を使用する通常の平版及び湿し水を使用しない水無し平版)、凸版印刷(平圧凸版、凸版半輪転、輪転、間欠輪転、フレキソ)、凹版印刷(グラビア印刷)、孔版印刷(スクリーン印刷)、インクジェット印刷等種々の印刷方式が挙げられ、乳化安定性に優れるために、湿し水を使用するオフセット印刷用として、好ましく使用することができる。又、低粘度であるため、インクジェット印刷としても好ましく使用することができる。
【0066】
インキ用組成物は、前記(A)を必須成分とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
インキ用組成物の製造方法としては、従来のインキ用組成物の製造方法に従えば良く、(A)成分、(B)成分(活性エネルギー線が紫外線の場合)、(E)成分、(F)成分、重合禁止剤及びワックスその他添加剤等を配合した後、顔料を加えて、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機で分散する方法等が挙げられる。
【0067】
その他成分としては、具体的には、前記した(C)成分の他、バインダー〔以下「(E)成分」という〕、顔料〔以下「(F)成分」という〕、可塑剤及び耐摩擦剤等が挙げられる。
以下、これらの成分について説明する。
尚、その他の成分は、例示した化合物の1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0068】
1)(E)成分
本発明における(E)成分としては、重合性基を有さない例えばジアリルフタレート樹脂等、1分子中に少なくとも1つ以上の重合性基を有するエポキシアクリレート合物、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0069】
上述のバインダー成分のうち、ジアリルフタレート樹脂とは、ジアリルフタレートモノマーやジアリルイソフタレートモノマーから合成されるプレポリマーを指し、オルトフタル及びイソフタルのモノマー種別や分子量によって幾つかの市販製品があり本発明に利用できる。具体例としてダイソー社より販売されているダイソーダップA、ダイソーダップS、ダイソーダップK、ダイソーイソダップを挙げることが出来る。このうちインキ硬化後の皮膜強度、(A)成分との相溶性等を勘案すると、上述の市販製品の中ではダイソーダップAが最も好ましい。
【0070】
(E)成分のインキ組成物中の含有率は、インキ全量に対し10〜65重量%の範囲にあることが好ましい。10重量%未満であると十分な皮膜硬化性やオフセット印刷適性が得られず、又65重量%を超える添加量では、一般にこれら重合性基を有するバインダーは高粘度である為に本発明の実施例で述べる組成においてオフセットインキとして好適な粘度を得ることが困難となる。
【0071】
2)(F)成分
(F)成分の顔料としては、有機顔料及び無機顔料等が挙げられる。
有機顔料及び無機顔料の具体例としては、前記と同様の化合物を使用することができる。
【0072】
本発明においては、体質顔料として無機微粒子を用いてもよい。無機微粒子としては、酸化チタン、クラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料; 等の無機顔料や、シリコーン、ガラスビーズ等があげられる。
これら無機微粒子は、インキ中に0.1〜20重量%の範囲で使用することにより、インキの流動性調整、ミスチング防止、紙等の印刷基材への浸透防止といった効果を得ることが可能である。
【0073】
3)可塑剤及び耐摩擦剤
可塑剤及び耐摩擦剤として、パラフィンワックス、カルナバワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アマイドワックス等のワックスコンパウンド、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸等のC8〜C18程度の範囲にある脂肪酸等を本発明の目的を妨げない範囲において配合して使用することができる。
【0074】
4.使用方法
本発明の組成物の使用方法としては、常法に従えば良い。
例えば、基材に組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射するか又は加熱することにより硬化させて硬化させる方法等が挙げられる。
具体的には、適用される基材に組成物を通常の塗装方法により塗布した後、活性エネルギー線硬化型組成物の場合には活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、又熱硬化型組成物の場合は加熱して硬化させる方法等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射方法や加熱方法は、従来の硬化方法として知られている一般的
な方法を採用すれば良い。
又、組成物に(B1)成分(光重合開始剤)及び(B2)成分(熱重合開始剤)を併用し、これを活性エネルギー線照射した後、加熱硬化させることにより、基材との密着性を向上させる方法も採用することができる。
以下、本発明の組成物の好ましい用途であるコーティング用組成物及びインキ用特許について詳細に説明する。
【0075】
4−1.コーティング用組成物の使用方法
本発明の組成物が適用できる基材としては、種々の材料に適用でき、プラスチック、木材、金属、無機材料及び紙等が挙げられる。
プラスチックの具体例としては、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。
木材としては、自然の木材及び合成木材等が挙げられる。
金属としては、鋼板、アルミ及びクロム等の金属、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物等が挙げられる。
無機材料としては、ガラス、モルタル、コンクリート及び石材等が挙げられる。
これらの中でも、プラスチック基材が特に好ましい。
【0076】
基材に対する組成物硬化膜の膜厚は、目的に応じて適宜設定すればよい。硬化膜の厚さとしては、使用する基材や製造した硬化膜を有する基材の用途に応じて選択すればよいが、1〜500μmであることが好ましく、5〜200μmであることがより好ましい。
【0077】
本発明の組成物の基材への塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ディップコーター、ロールコーター、スピンコーター、フローコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター及びインクジェット等で塗工する方法が挙げられる。
【0078】
本発明の組成物を硬化させるための活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線及び電子線等が挙げられるが、紫外線が好ましい。
紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線(UV)無電極ランプ、発光ダイオード(LED)等が挙げられる。
照射エネルギーは、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて適宜設定すれば良く、一例として高圧水銀ランプを使用する場合を挙げると、UV−A領域の照射エネルギーで100〜5,000mJ/cm2が好ましく、200〜1,000mJ/cm2がより好ましい。
【0079】
4−2.インキ用組成物の使用方法
本発明の印刷物で使用する印刷基材としては、特に限定は無く、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
これらの中でも、紙基材が特に好ましい。
【0080】
基材に対する組成物硬化膜の膜厚は、目的に応じて適宜設定すればよい。硬化膜の厚さとしては、使用する基材や製造した硬化膜を有する基材の用途に応じて選択すればよいが、1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
【0081】
本発明の組成物をオフセットインキ用として使用する場合、基材への塗工方法としては、版面上に水を連続供給するオフセット印刷機を用いて好適に使用することが出来る。又、シート形態の印刷用紙を用いる枚葉オフセット印刷機、リール形態の印刷用紙を用いるオフセット輪転印刷機、いずれの用紙供給方式においても好適に利用することが可能である。
【0082】
本発明の組成物をインクジェットインキ用として使用する場合、基材への塗工方法としては、インクジェット方式により吐出して画像を形成する公知のインクジェット記録装置等を用いて好適に使用することが出来る。
【0083】
インクジェット方式では、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、40℃〜80℃、好ましくは25℃〜30℃)において、組成物の粘度が、7mPa・s〜30mPa・sであることが好ましい。より好ましくは7mPa・s〜20mPa・sである。
【0084】
本発明の組成物を硬化させるための活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線及び電子線等が挙げられるが、紫外線が好ましい。
紫外線照射装置としては、前記と同様の装置が挙げられる。
照射エネルギーとしては、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて適宜設定すれば良く、前記と同様の照射エネルギーが挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
尚、以下においては、「部」とは重量部を意味し、「%」は重量%を意味する。
又、以下においては、エチレンオキサイドを「EO」と略する。
【0086】
1.製造例
1)比較製造例1〔(A)成分以外の化合物の製造〕
温度計、撹拌機及び還流管を備えた2Lの側管付き4口フラスコに、ジペンタエリスリトールのEO6モル付加物〔青木油脂工業(株)製、ブラウノンDPE−E6、水酸基価643mgKOH/g〕600g、アクリル酸575g(アルコール中の全水酸基1モルに対して1.16モルの割合)、70%メタンスルホン酸(以下、「MSA」という)24g、塩化第二銅1.9g及びトルエン520gを投入した。
含酸素ガスをフラスコ内に吹き込みながら、反応液温度85〜95℃で加熱攪拌した。反応の進行に伴って生成する水をディーンスターク管で系外に取出しながら、6時間の脱水エステル化反応を行った。
反応終了後に、トルエン1250gを加えて希釈した。更に蒸留水300gを加えて撹拌し、静置した後に下層を除去した。次に、20%水酸化ナトリウム水溶液490gを攪拌下に添加して十分に撹拌し、静置した後に下相を除去した。続いて、撹拌下で有機相に蒸留水280gを添加して撹拌し、静置した後に下層を除去した。上層の有機相を減圧下に加熱してトルエンを留去した。
得られた反応物は、ペンタアクリレート及びヘキサアクリレートを含む混合物であった。以下、「A’2成分」という。
【0087】
2)比較製造例2〔(A)成分以外の化合物の製造〕
製造例1と同じフラスコに、ペンタエリスリトールのEO4モル付加物〔青木油脂工業(株)製、ブラウノンPE−240N、水酸基価717mgKOH/g〕520g、アクリル酸570g、MSA25g、塩化第二銅2g、MEHQ0.2g及びトルエン480gを投入した。
含酸素ガスをフラスコ内に吹き込みながら、反応液温度82〜97℃で加熱攪拌した。反応の進行に伴って生成する水をディーンスターク管で系外に取出しながら、6時間の脱水エステル化反応を行った。
反応終了後に、トルエン1050gを加えて希釈した。更に蒸留水250gを加えて撹拌し、静置した後に下層を除去した。次に、20%水酸化ナトリウム水溶液360gを攪拌下に添加して十分に撹拌し、静置した後に下相を除去した。続いて、撹拌下で有機相に蒸留水250gを添加して撹拌し、静置した後に下層を除去した。上層の有機相を減圧下に加熱してトルエンを留去した。
得られた反応物は、トリアクリレート及びテトラアクリレートを含む混合物であった。以下、「A’4成分」という。
【0088】
3)比較製造例3〔(A)成分以外の化合物の製造〕
製造例1と同じフラスコに、ジグリセリンを77.00g(0.46モル)、2−メトキシエチルアクリレートを627.21g(4.82モル)、触媒としてDABCOを2.45g(0.02モル)及び酢酸亜鉛を4.00g(0.02モル)、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテルを1.42g(仕込んだ原料の総重量に対して2000wtppm)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。
反応液温度105〜130℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を110〜760mmHgの範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生した2−メトキシエタノールと2−メトキシエチルアクリレートの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。又、該抜出液と同重量部の2−メトキシエチルアクリレートを反応系に随時追加した。加熱撹拌開始から27時間後に反応系内の圧力を常圧に戻して抜出を終了した。
反応液を室温まで冷却してノルマルヘキサンを200ml加え、沈殿物をろ過分離した後、ろ液に珪酸アルミニウム〔協和化学工業(株)製キョーワード700(商品名)〕を2.0g、活性炭〔フタムラ化学(株)製太閤S(商品名)〕を0.5g投入し、乾燥空気をバブリングさせながら、温度70〜95℃、圧力0.001〜100mmHgの範囲で8時間の減圧蒸留を行い、未反応の2−メトキシエチルアクリレートを含む留出液を分離した。釜液に珪藻土〔昭和化学工業(株)製ラヂオライト(商品名)〕を2.0g添加して加圧ろ過を行い、得られたろ液を精製処理物とした。
得られた反応物は、テトラアクリレートを主要成分として含む混合物であった。以下、「A’5成分」という。
【0089】
4)比較製造例4〔(A)成分以外の化合物の製造〕
製造例1と同じフラスコに、ジグリセリンのEO4モル付加物〔花王(株)、エマルゲンG2E−4、625mgKOH/g〕500g、アクリル酸518g、パラトルエンスルホン酸一水和物41g、塩化第二銅1.59g、MEHQ1.59g及びトルエン550gを投入した。
含酸素ガスをフラスコ内に吹き込みながら、反応液温度80〜100℃、反応系圧力400〜760Torrの条件で加熱攪拌した。反応の進行に伴って生成する水をディーンスターク管にて系外に除去しながら7時間の脱水エステル化反応を行った。
反応終了後に、得られた反応液を、分液ロートに添加して、純水で洗浄・分液した後、有機層をさらに水酸化ナトリウム水溶液で洗浄・分液し、有機層をさらに純水で洗浄・分液し、静置した後に下層を除去した。上層の有機相を減圧下に加熱してトルエンを留去した。
得られた反応物は、トリアクリレート及びテトラアクリレートを含む混合物であった。以下、「A’6成分」という。
【0090】
5)比較製造例5〔(A)成分以外の化合物の製造〕
温度計、撹拌機及び還流管を備えた500mLの側管付き4口フラスコに、無水コハク酸16g、A’1成分の250g、メトキノン0.13gを入れ、85℃に昇温した。その中に触媒のトリエチルアミン1.3gを投入後、4時間反応を行なった。反応は空気/窒素の混合雰囲気下で行い、酸価34mgKOH/gの化合物(以下、「A’’1成分」という)を得た。
次いで、ジ−n−ブチルアミン17.4g(A’’1成分1モルに対して0.3モル)を室温で投入後、50℃で4時間反応を行った。反応は、空気/窒素の混合雰囲気下で行った。
得られた反応物は、ジ−n−ブチルアミンのマイケル付加物を含む混合物であった。以下、「A’7成分」という。
又、A’7成分の水酸基価は11mgKOH/g、酸価は32mgKOH/gであった。
【0091】
6)製造例1〔(A)成分の製造〕
比較製造例5と同じフラスコに、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート混合物(Mw1,020、Mn1,012、粘度7,280mPa・s(25℃)、水酸基価32mgKOH/g、東亞合成製アロニックスM−402、以下、「A'1成分」という。)250g(0.247モル)を入れ、ジ−n−ブチルアミン17.3g(0.134モル、A'1成分1モルに対して0.54モル)を室温で投入後、50℃で4時間反応を行った。反応は、空気/窒素の混合雰囲気下で行った。
得られた反応物は、ジ−n−ブチルアミンのマイケル付加物を含む混合物であった。以下、「(A1)成分」という。
【0092】
7)参考製造例1〔(A)成分以外の化合物の製造〕
A’2成分(Mn1,138)の250g(0.220モル)、ジ−n−ブチルアミン11.9g(0.092モル、A'2成分1モルに対して0.42モル)とした以外は、製造例1と同様の方法に従い、反応を行った。
得られた反応物は、ジ−n−ブチルアミンのマイケル付加物を含む混合物であった。以下、「A1’成分」という。
【0093】
8)製造例2〔(A)成分の製造〕
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Mw560、Mn560、粘度570mPa・s(25℃)、水酸基価は6mgKOH/g、東亞合成製アロニックスM−450、以下、「A’3成分」という。)250g(0.446モル)、ジ−n−ブチルアミン27.5g(0.213モル、A'3成分1モルに対して0.48モル)とした以外は、製造例1と同様の方法に従い、反応を行った。
得られた反応物は、ジ−n−ブチルアミンのマイケル付加物を含む混合物であった〔以下、「A成分」という〕。
【0094】
9)参考製造例2〔(A)成分以外の化合物の製造〕
A’4成分(Mn739)の250g(0.338モル)、ジ−n−ブチルアミン18.7g(0.145モル、A'4成分1モルに対して0.43モル)とした以外は、製造例1と同様の方法に従い、反応を行った。
得られた反応物は、ジ−n−ブチルアミンのマイケル付加物を含む混合物であった。以下、「A2’成分」という。
【0095】
10)製造例3〔(A)成分の製造〕
A’5成分(Mn540)の250g(0.463モル)、ジ−n−ブチルアミン25.4g(0.197モル、A'5成分1モルに対して0.42モル)とした以外は、製造例1と同様の方法に従い、反応を行った。
得られた反応物は、ジ−n−ブチルアミンのマイケル付加物を含む混合物であった。以下、「A成分」という。
【0096】
11)参考製造例3〔(A)成分以外の化合物の製造〕
A’6成分(Mn1,218)の250g(0.205モル)、ジ−n−ブチルアミン16.9g(0.131モル、A'6成分1モルに対して0.64モル)とした以外は、製造例1と同様の方法に従い、反応を行った。
得られた反応物は、ジ−n−ブチルアミンのマイケル付加物を含む混合物であった。以下、「A3’成分」という。
【0097】
2.反応物の評価方法
前記製造例1〜同参考製造例1〜同3、並びに比較製造例1〜同5で得られた反応物について、後記する方法に従い、アクリル当量、3級アミン価、水酸基価、Mw及び粘度を測定した。
それらの結果を表1に示す。
【0098】
(1)アクリル当量
JIS K 2605に基づいて測定される、アクリレートの臭素価(試料100g中の不飽和成分に付加する臭素のg数)を、アクリロイル基1モルあたりのアクリレートのg数に換算した値(単位:g/eq)を表す。
【0099】
(2)3級アミン価
試料0.2g、アセトン50gに無水酢酸5mlを入れ、30分室温にて反応させてから、電位差滴定法により0.01N過塩素酸で滴定した。同様の方法で空試験を行い、以下の計算式より、3級アミン価を算出した。
3級アミン価={(A−B)×f×0.01×56.11}/C
A:試料の滴定に要した0.01N過塩素酸の消費量(ml)
B:空試験の滴定に要した0.01N過塩素酸の消費量(ml)
f:0.01N過塩素酸のファクター
C:試料の量(g)
【0100】
(3)水酸基価
JIS K 0070−1992に基づいて測定される、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数を表す。
【0101】
(4)Mw(GPC測定条件)
・装置:Waters(株)製 GPC システム名 1515 2414 717P RI
・検出器:RI検出器
・カラム:ガードカラム 昭和電工(株)製 Shodex KFG(8μm 4.6×10mm)、本カラム2種類 Waters(株)製 styragel HR 4E THF(7.8×300mm)+styragel HR 1THF(7.8×300mm)
・カラムの温度:40℃
・溶離液組成:THF(内部標準として硫黄を0.03%含むもの)、流量0.75mL/分
【0102】
(5)粘度
E型粘度計を使用して、25℃において粘度を測定した。
【0103】
(6)耐乳化性
得られた反応物3gをキシレン6gに溶解し、ガラス試験管(18mφ硬質ガラス)に蒸留水9gを入れて栓をした。これを上下に10回振とうさせた後、静置して水層と有機層が完全に分離するまでの時間を測定し、上層及び下層の透明性を下記4水準で判定した。水分離性と耐乳化性は相関があり、水分離性が良好であるほど、インキに適用した場合の耐乳化性が良好である。
◎:透明 ○:若干濁りあり △:濁りあり ×:乳濁。
総合評価を、以下の4水準で判定した。
◎:分離時間が4分以内で、且つ上層透明性が◎又は○、下層透明性が◎又は○
〇:分離時間が4分以内で、且つ上層透明性が△、下層透明性が◎又は○
△:分離時間が4分以内で、且つ上層透明性が×、下層透明性が◎又は○
×:分離時間が5分以上、又は、上層透明性が×
【0104】
【表1】
【0105】
製造例1〜の結果から明らかなように、本発明の(A)成分に該当するA1〜A成分は、耐乳化性に優れるものであった。
これに対して、原料化合物であるか又は比較製造例1〜同5で得られたA'1〜A'6成分は、3級アミノ基を有しない化合物であるため、耐乳化性に劣った。又、A'7成分は、3級アミノ基及び酸性基を有する化合物であるため、粘度が18,590mPa・s以上と高粘度であった上、耐乳化性が格段に劣った。
【0106】
3.活性エネルギー線硬化型組成物
1)製造方法
下記表2及び4に示す化合物を表2及び4に示す割合で撹拌・混合し、活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。
得られた組成物を使用し、後記する評価を行った。それらの結果を表2及び4に示す。
【0107】
尚、表2及び4における数字は部数を意味する。
又、表2及び4における略号は下記を意味する。
・DETX:2,4−ジエチルチオキサントン、日本化薬製KAYACURE DETX−s
・IRG379:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、BASF社製IRGACURE379
・TPO:(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製ルシリンTPO
・EAB:4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、保土ヶ谷化学(株)製EAB
【0108】
2)組成物の評価方法
(1)硬化性[1](標準UV照射条件での評価)
表2で得られた組成物を、膜厚2μmとなるよう、ポリエチレンテレフタレートフィルム〔東洋紡(株)製、コスモシャインA4300(厚み100μm)。以下、「PET」という〕にバーコーターで塗布し、ステージ移動装置を備えたセンテック(株)製UV−LED照射装置(発光波長:365nm、ピーク強度:820mW/cm2)にて、1パスあたり200mJ/cm2となるように照射し、空気雰囲気下で搬送を行い、表面のタックがなくなるまでのパス数を求めた。結果を表3に示す。
【0109】
(2)耐擦過性[1](標準照射条件での評価)
表2で得られた組成物を、膜厚2μmとなるよう、PETにバーコーターで塗布し、前記(1)と同様の条件で、空気雰囲気下で、3パス搬送を行った。
得られた硬化物の耐擦過性を、不織布(旭化成製ベンコット)を用いて擦り試験(荷重500g、10往復)を行い、外観を目視で観察し、以下の2水準で評価を行った。結果を表5に示す。
○:傷が付かない。
×:傷が付く。
【0110】
(3)硬化性[2](低照度かつ低露光量での評価)
表4で得られた組成物を、膜厚2μmとなるよう、PETにバーコーターで塗布し、UV−LED照射装置(発光波長:365nm、ピーク強度:130mW/cm2)にて、1パスあたり10mJ/cm2となるように照射し、空気雰囲気下で搬送を行い、表面のタックがなくなるまでのパス数を求めた。結果を表5に示す。
【0111】
(4)耐擦過性[2](低照度かつ低露光量での評価)
表4で得られた組成物を、膜厚2μmとなるよう、PETにバーコーターで塗布し、前記(3)と同様の条件で、空気雰囲気下で、3パス搬送を行った。
得られた硬化物の耐擦過性を、不織布を用いて擦り試験(荷重500g、10往復)を行い、外観を目視で観察し、以下の2水準で評価を行った。結果を表5に示す。
○:傷が付かない。
×:傷が付く。
【0112】
(5)耐乳化性
表2及び4で得られた組成物についても、前記耐乳化性の方法と同様で評価した。
評価結果は、前記表1と同様の結果であった。表3及び5には、総合評価のみを記載した。
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
3)評価結果
実施例1〜の結果から明らかなように、本発明の組成物は、硬化性に優れ、更に耐擦過性及び耐乳化性に優れるものであった。特に、実施例1及び2の組成物は、光重合開始剤として水素引抜き型光重合開始剤であるDETXを含む組成物であり、格段に硬化性に優れた。
これに対して、比較例1〜5の組成物は、3級アミノ基を有しない化合物を含む組成物であり、実施例の組成物と比較して、硬化性が劣るか、又やや劣るものであり、一方、耐擦過性が全て劣るものであった。又、比較例6の組成物は、3級アミノ基及び酸性基を有する化合物を含む組成物であり、実施例の組成物と比較して、硬化性がやや劣るもので、耐擦過性が劣るものであった。さらに、耐乳化性については、比較例1〜3及び5〜6の組成物が劣っていた。
【0118】
実施例の結果から明らかなように、本発明の組成物は、低照度かつ低露光量であるUV−LEDを使用した場合でも、硬化性、耐擦過性及び耐乳化性に優れた。
これに対して、比較例7〜12の組成物は、3級アミノ基を有しない化合物を含む組成物であり、実施例の組成物と比較して、硬化性が劣るか、やや劣るか又は同程度であり、一方、耐擦過性が全て劣るものであった。又、比較例13の組成物は、3級アミノ基及び酸性基を有する化合物を含む組成物であり、実施例の組成物と比較して、硬化性が同程度であったが、耐擦過性が劣るものであった。さらに、耐乳化性については、比較例7〜8及び11〜13の組成物が劣っていた。
【0119】
4.インキ用活性エネルギー線硬化型組成物の製造
1)組成物の製造方法
後記表6に示す化合物を表6に示す割合で撹拌・混合した後、さらに三本ロールミルで練肉してインキ用活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。
得られた組成物を使用し、後記する評価を行った。それらの結果を表7に示す。
【0120】
尚、表6における数字は部数を意味する。
又、表6における略号は、前記と同義であり、前記以外は下記を意味する。
・DAP−A:ジアリルフタレートプレポリマー、ダイソー(株)製ダイソーダップA
・FA5375:青色顔料、C.I.ピグメントブルー15:3、DIC(株)製Fastogen Blue FA5375
【0121】
2)組成物の評価方法
(1)硬化性[2](低照度かつ低露光量での評価)
表6で得られた組成物を使用し、前記と同様の方法で評価した。
【0122】
(2)インキ密着性
表6で得られた組成物を、膜厚2μmとなるよう、PETにバーコーターで塗布し、前記(1)〔硬化性[2]〕と同様の条件で、空気雰囲気下で、3パス搬送を行った。
得られた硬化物の密着性を、不織布を用いて擦り試験(荷重500g、10往復)を行い、外観を目視で観察し、以下の2水準で評価を行った。結果を表7に示す
○:インキの剥離がない。
×:インキの剥離がある。
【0123】
(3)耐乳化性
表6で得られた組成物についても、前記耐乳化性の方法と同様で評価した。
評価結果は、前記表1と同様の結果であった。表7には、総合評価のみを記載した。
【0124】
【表6】
【0125】
【表7】
【0126】
3)評価結果
実施例の結果から明らかなように、本発明の組成物は、低照度かつ低露光量であるUV−LEDを使用した場合でも、硬化性、インキ密着性及び耐乳化性に優れた。
これに対して、比較例14〜19の組成物は、3級アミノ基を有しない化合物を含む組成物であり、実施例の組成物と比較して、硬化性が劣るか、やや劣るかであり、一方、インキ密着性が全て劣るものであった。又、比較例20の組成物は、3級アミノ基及び酸性基を有する化合物を含む組成物であり、実施例の組成物と比較して、硬化性がやや劣り、インキ密着性が劣るものであった。さらに、耐乳化性については、比較例14〜15及び18〜20の組成物が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の組成物は、活性エネルギー線硬化型組成物として好ましく使用できるものであり、又、その用途としては、コーティング剤、インキ、レジスト及び接着剤等の種々の用途に使用可能であり、特に、プラスチックコーティング用途及びオフセットインキ用途により好ましく使用することが可能である。