(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶融するアルミニウム合金を、ウィスカー状のホウ酸アルミニウムで構成された多孔質セラミックス体の内部に圧入してアルミニウム複合材部を作製する工程と、得られたアルミニウム複合材部の表面を陽極酸化処理して陽極酸化皮膜部を作製する工程と、を含む強化アルミニウム複合部材の製造方法において、
前記アルミニウム合金には、マグネシウムを0.7質量%より多く含有するAC8AまたはAC8Bを用い、前記アルミニウム合金を800℃より高く850℃以下の温度で溶融して前記多孔質セラミックス体の内部に圧入する、強化アルミニウム複合部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る強化アルミニウム複合部材は、アルミニウム複合材部と、陽極酸化皮膜部とを有する。上記強化アルミニウム複合部材は、上記陽極酸化皮膜部を含む上記アルミニウム複合材部製の部分であり、ピストンなどの特定の部材の一部分であってもよいし全体であってもよい。上記強化アルミニウム複合部材は、後述するウィスカーの表面におけるスピネルの特定の存在量以外は、前述の特許文献1における、アルミ複合材の遮熱コーティング構造と同様の構成を有し得る。
【0013】
上記アルミニウム複合材部は、多孔質セラミックス体とそれに含浸したアルミニウム合金とから構成されている。
【0014】
上記多孔質セラミックス体は、ホウ酸アルミニウム(9Al
2O
3・2B
2O
3)のウィスカーで構成されており、前述の特許文献1における「ホウ酸アルミニウムのウィスカーの骨格構造からなる多孔質セラミックス」と同様に構成され得る。
【0015】
上記多孔質セラミックス体は、より具体的には、上記特許文献1に記載されているように、ホウ酸、水酸化アルミニウムとウィスカー成長の助剤である酸化ニッケルの粉末の成形体を1100〜1300℃で焼成することによって作製することができる。
【0016】
上記ウィスカーは、上記強化アルミニウム複合部材に十分かつ均一に分布するサイズであればよく、例えばその直径は0.2〜1.5μmであり、その長さは5〜60μmである。また、上記強化アルミニウム複合部中の上記ウィスカーの含有量は、上記強化アルミニウム複合部材に十分かつ均一に分布するサイズであればよく、例えば体積分率で15〜50体積%である。
【0017】
上記多孔質セラミックス体中の上記ウィスカーの表面にスピネルを有する。当該スピネルは、いわゆる尖晶石であり、その化学組成はMgAl
2O
4である。上記ウィスカー表面のスピネル粒子は、溶湯アルミニウム(Al)合金中のマグネシウム(Mg)と上記ウィスカーと反応して生成されるもので、溶湯Al合金中のMgの量が多くなると、スピネルの生成反応が激しくなり、上記ウィスカーの表面に生成されるスピネル粒子の量が増える。また、溶湯アルミニウムの温度が高ければ高いほど、上記生成反応が激しくなり、生成されるスピネル粒子の量が増える。
【0018】
上記スピネルは、多孔質セラミックス体中の上記ウィスカーの表面の全域に分散して存在する。個々のスピネル粒子の大きさは、大きすぎても、また小さすぎても、後述するアルミニウム合金に対するアンカー効果が不十分になることがある。個々のスピネル粒子の大きさは、上記アンカー効果を十分に発現させる観点から、その最大径で10nmであることが好ましい。上記最大径は、例えばスピネル粒子の観察したときの視野における最長部の長さであり、例えば上記強化アルミニウム複合部材の断面中の任意の複数のスピネル粒子の上記最大径の平均値であってよい。
【0019】
上記強化アルミニウム複合部材における上記スピネル粒子の大きさは、によって確認することが可能である。
【0020】
上記スピネルの存在量は、少なすぎると上記アンカー効果が不十分となることがあり、多すぎると上記ことがある。上記アンカー効果を十分に発現させる観点から、上記ウィスカーの表面積に対する上記スピネルの存在量は、1%以上であることが好ましい。また、上記スピネルの存在量は、上記ウィスカーによる強化効果を十分に発現させる観点から、20%以下であることが好ましい。
【0021】
また、上記スピネルの存在量は、上記アンカー効果を十分に発現させる観点から、上記ウィスカーの表面積1平方マイクロメートルに対する上記スピネルの個数で、5〜40個以上であることが好ましい。上記スピネルの存在量は、走査電子顕微鏡写真から、またはその画像処理によって確認することが可能である。
【0022】
上記アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分として含有し、さらにマグネシウムを含有する。上記アルミニウム合金におけるマグネシウムの含有量は、少なすぎると後述するスピネルの存在量が不十分となり、多すぎるとアルミニウム合金における所期の効果が不十分となることがある。上記アルミニウム合金におけるマグネシウムの含有量は、上記スピネルの十分な存在量の観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、0.6質量%以上であることがより好ましい。
【0023】
また、上記アルミニウム合金におけるマグネシウムの含有量は、上記アルミニウム合金における所期の機能の実現の観点から、2.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。アルミニウム合金中のマグネシウムの含有量は、アルミニウム合金の種類によって調整することが可能であり、また、溶融されるアルミニウム合金へのマグネシウム(またはマグネシウム以外の金属材料)の添加量によって増減させることが可能である。
【0024】
たとえば、前述したように、Mgを含むアルミニウム合金を多孔質セラミックス中に含浸させた後、高温でMgと上記ウィスカーと反応させることによって、スピネル粒子が上記ウィスカーの表面に形成される。したがって、上記強化アルミニウム複合部材におけるアルミニウム合金中のMgの濃度は、原料としてのアルミニウム合金のMgの濃度よりも低くなる。当該合金中のMgの量と鋳造温度とを制御することにより、上記ウィスカーの表面に生成するスピネル粒子の量が決定される。よって、上記生成反応で消耗するMg量を計算し、上記鋳造前に、Mgの消耗量に対応する量のMg量をアルミニウム合金にあらかじめ添加すればよい。
【0025】
上記アルミニウム合金は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、アルミニウムおよびマグネシウム以外の他の金属元素をさらに含んでいてもよい。当該他の金属元素の例には、Si、Cu、Ni、Mn、Fe、Zn、V、Zr、PおよびBが含まれる。また、上記アルミニウム合金の例には、AC8AおよびAC8Bが含まれる。
【0026】
上記陽極酸化皮膜部は、上記アルミニウム複合材部の表面が陽極酸化処理されてなる部分である。上記陽極酸化皮膜部は、上記アルミニウム複合材部の表面の一部分であってもよいし、全部であってもよい。
【0027】
上記陽極酸化皮膜部の厚さは、薄すぎると当該陽極酸化皮膜部の所期の機能の発現が不十分となることがあり、厚すぎると上記陽極酸化皮膜部の所期の機能が頭打ちとなる。上記陽極酸化皮膜部の厚さは、上記陽極酸化皮膜部の所期の機能を十分に発現させる観点から、20μm以上であることが好ましい。同様に、上記陽極酸化皮膜部の厚さは、上記の観点から250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0028】
上記陽極酸化皮膜部の厚さは、当該陽極酸化皮膜部の厚さを代表する値であればよく、例えば任意の複数箇所の厚さの平均値であってよい。上記陽極酸化処理皮膜部は、例えば特許文献1に記載されているような、上記アルミニウム合金の公知の陽極酸化処理によって形成することが可能である。
【0029】
上記強化アルミニウム複合部材における上記アルミニウム合金の組成は、複合部材でない部分(たとえば多孔質セラミックス体外の部分)の発光分光法により同定することできる。また、上記強化アルミニウム複合部材における上記多孔質セラミックス体の含有量は、強化アルミニウム複合部材の比重とそれを構成する上記アルミニウム合金の比重とから算出することができる。さらに、上記強化アルミニウム複合部材における上記陽極酸化皮膜部の厚さは、過電流式膜厚計によって求めることが可能である。
【0030】
上記強化アルミニウム複合部材は、上記アルミニウム複合材部を作製する第1の工程と、上記陽極酸化皮膜部を作製する第2の工程とを含む製造方法によって製造することができる。
【0031】
上記第1の工程は、溶融する上記アルミニウム合金を、上記ホウ酸アルミニウムウイスカで構成された上記多孔質セラミックス体の内部に圧入して上記アルミニウム複合材部を作製する工程である。
【0032】
上記第1の工程において、上記アルミニウム合金には、前述したような、マグネシウムを0.5〜2.5質量%含有するアルミニウム合金が用いられる。
【0033】
また、上記第1の工程では、上記アルミニウム合金を680〜850℃で溶融して上記多孔質セラミックス体の内部に圧入する。これにより、溶融している上記アルミニウム合金が多孔質セラミックス体の内部まで十分に浸透する。
【0034】
上記アルミニウム合金の溶融温度が上記範囲よりも低すぎると、上記ウィスカーの表面におけるスピネルの析出量が不十分となることがある。また、上記アルミニウム合金の溶融温度が上記範囲よりも高すぎると、Mgと上記ウィスカーの反応が激しくなり、上記強化アルミニウム複合部材の強度が不十分となることがある。上記ウィスカーの表面にスピネルを十分に析出させる観点から、上記溶融温度は、740℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、上記強化アルミニウム複合部材の十分な強度の観点から、上記溶融温度は、850℃以下であることが好ましく、810℃以下であることがより好ましい。
【0035】
溶融している上記アルミニウム合金の多孔質セラミックス体への圧入は、例えば特許文献1に記載されているような公知の方法によって行うことが可能である。上記アルミニウム合金の圧入は、溶融しているアルミニウム合金を多孔質セラミックス体へ直接加圧してもよいし、液またはガスなどの他の媒体を介して溶融しているアルミニウム合金を多孔質セラミックス体に向けて加圧してもよい。空気などのガスを介して溶融アルミニウム合金を加圧することは、溶融アルミニウム合金を直接加圧する場合に比べて製造設備の簡素化などのイニシャルコストの観点から好ましく、液を介して溶融アルミニウム合金を加圧する場合に比べてライニングコストの観点から好ましい。
【0036】
上記第1の工程において溶融しているアルミニウム合金の圧入により作製されたアルミニウム複合材部の冷却は、速すぎると多孔質セラミックス体の表面に析出する個々のスピネルの粒子の大きさが不十分となることがあり、遅すぎると、当該スピネルの粒子の大きさが大きすぎ、あるいは製造時間の延長により生産性が低下することがある。
【0037】
上記第2の工程は、得られた上記アルミニウム複合材部の表面を陽極酸化処理して上記陽極酸化皮膜部を作製する工程である。上記第2の工程は、アルミニウム合金の公知の陽極酸化処理方法によって行うことが可能である。たとえば、上記第2の工程は、特許文献1に記載されているように、10〜20質量%の硫酸を含有する処理浴に上記アルミニウム複合材部の一部または全部を浸漬し、当該アルミニウム複合材部を陽極とし、電流密度1〜50A/dm
2、処理時間10分間以上5時間以下で通電することで行うことが可能である。
【0038】
上記処理浴は、上記アルミニウム複合材部の表面の陽極酸化処理を可能とする範囲において、上記の硫酸のような無機の強酸以外の他の成分をさらに含有していてもよい。たとえば、上記処理浴は、上記硫酸に加えて有機酸をさらに含有することが、陽極酸化処理被膜部の成膜速度と強度とを高める観点から好ましい。上記有機酸は、一種でもそれ以上でもよく、上記処理浴中における上記有機酸の含有量は、例えば0.1〜1.5質量%である。上記有機酸の例には、シュウ酸およびクエン酸が含まれる。上記硫酸と有機酸との組み合わせの例には、が含まれる。
【0039】
なお、前述の条件による陽極酸化処理によれば、例えば、特許文献1に記載されているような、20〜200μmの厚さを有し、0.2〜1.5W/(m・K)の熱伝導率を有し、30〜75%の気孔率を有する陽極酸化皮膜部を作製することができる。なお、気孔率とは、陽極酸化皮膜部における固体部分とそこに形成される空間部分との総和に対する上記空間部分の割合である。
【0040】
上記強化アルミニウム複合部材では、上記多孔質セラミックス体中のウィスカーの表面と上記アルミニウム合金およびその陽極酸化処理部分とが接する。よって、上記アルミニウム合金とその陽極酸化皮膜の部分とからなるアルミニウム合金部材に比べて、多孔質セラミックス体によってその機械的強度が向上している。
【0041】
さらに、上記強化アルミニウム複合部材では、上記多孔質セラミックス体中のウィスカーの表面に一定量のスピネルを有する。スピネルは、上記多孔質セラミックス体の表面に対して、また上記アルミニウム合金およびその陽極酸化処理部分に対して、良好な親和性を有する。さらに、スピネルは、粒子として、多孔質セラミックス体中のウィスカーの表面から突出して存在することから、上記アルミニウム合金およびその陽極酸化処理部分に対して食い込むように存在する。
【0042】
このため、上記多孔質セラミックス体中のウィスカーと上記アルミニウム合金およびその陽極酸化処理された部分との間には、スピネルが介在することによる化学的および物理的相互作用が存在している。よって、上記強化アルミニウム複合部材は、上記多孔質セラミックス体と上記アルミニウム合金およびその陽極酸化処理部分とからなり、スピネルを少なくとも十分量含有していない従来の強化アルミニウム複合部材に比べて、上記多孔質セラミックス体と上記アルミニウム合金およびその陽極酸化処理部分とのより高い接触強度(アンカー効果)を有している。
【0043】
上記陽極酸化皮膜部は、元来、前述した気孔を有することから高い遮熱性を有している。さらに、本実施形態における上記陽極酸化皮膜部は、前述したように、上記多孔質セラミックス体と上記アルミニウム合金部またはその陽極酸化処理された部分との間で、高い接触強度を有している。よって、上記強化アルミニウム複合部材は、高い遮熱性および高い耐久性を要する部材への利用に適している。
【0044】
たとえば、上記強化アルミニウム複合材部は、内燃機関の気筒中を往復運動させるためのピストンであって、上記内燃機関の燃焼室に面すべきピストンヘッドを有するピストンに好適である。この場合、上記ピストンヘッドは、前述の強化アルミニウム複合部材であり、上記ピストンヘッドにおける表面の、上記燃焼室に面すべき部分は、前述した陽極酸化皮膜部である。
【0045】
なお、上記ピストンにおける上記ピストンヘッド以外の部分は、上記アルミニウム複合材部で構成されていてもよいし、他の材料で構成されていてもよい。また、上記ピストンヘッドにおける上記燃焼室に面すべき部分およびそれに隣接する部分以外の部分は、上記アルミニウム複合材部以外の他の材料で構成されていてもよい。
【0046】
上記ピストンに有するエンジンでは、燃焼室からピストンへの熱を遮る遮熱効果が高められ、その結果、当該エンジンの燃費の改善が図られる。さらに、上記ピストンヘッドは、その機械的強度が向上していることから、当該エンジンにおける上記ピストンの耐久性の向上が図られる。よって、上記ピストンは、塔内最高圧力がより高いエンジンに適用され得る。
【0047】
以上の説明から明らかなように、上記強化アルミニウム複合部材は、マグネシウムを含有するアルミニウム合金、および、ウィスカー状のホウ酸アルミニウムで構成された多孔質セラミックス体、を含み、上記多孔質セラミックス体に上記アルミニウム合金が含浸しているアルミニウム複合材部と、上記アルミニウム複合材部の表面の一部または全部が陽極酸化処理されてなる陽極酸化皮膜部と、を有し、上記多孔質セラミックス体中の上記ホウ酸アルミニウムのウィスカーの表面に、上記ウィスカーの表面積に対する存在量で1〜20%のスピネルを有する。よって、強化アルミニウム複合部材は、十分量のスピネルを含有しない強化アルミニウム複合部材に比べて、より高い機械的強度を有する。
【0048】
また、上記強化アルミニウム複合部材の製造方法は、溶融するアルミニウム合金を、ウィスカー状のホウ酸アルミニウムで構成された多孔質セラミックス体の内部に圧入してアルミニウム複合材部を作製する工程と、得られたアルミニウム複合材部の表面を陽極酸化処理して陽極酸化皮膜部を作製する工程とを含む。そして上記製造方法では、上記アルミニウム合金には、マグネシウムを0.5〜2.5質量%含有するアルミニウム合金を用い、上記アルミニウム合金を740〜850℃で溶融して上記多孔質セラミックス体の内部に圧入する。よって、上記製造方法によれば、十分量のスピネルを含有しない強化アルミニウム複合部材に比べて高い機械的強度を有する強化アルミニウム複合部材を提供することができる。
【0049】
さらに、上記ピストンは、内燃機関の気筒中を往復運動させるためのピストンであって、上記内燃機関の燃焼室に面すべきピストンヘッドを有する。そして、上記ピストンヘッドは、前述の本実施の形態の強化アルミニウム複合部材であり、上記ピストンヘッドにおける表面の、上記燃焼室に面すべき部分は、上記陽極酸化皮膜部である。よって、上記ピストンによれば、それが使用される内燃機関の燃費をより高めることができ、また、当該内燃機関での使用における耐久性の向上が期待される。
【実施例】
【0050】
[
比較例A]
ホウ酸、水酸化アルミニウムおよび酸化ニッケルの粉体を混合し、得られた混合粉体を圧縮成形し、得られた圧縮成形体を1100℃〜1300℃で焼成し、上記ウィスカーの骨格構造を有する円柱状の多孔質セラミックス体1を作製する。
【0051】
多孔質セラミックス体1におけるウィスカーの直径および長さは、の観察から求められる。上記直径は0.7μmであり、上記長さは5〜40μmである。その後、多孔質セラミックスを金型に入れ、800℃の溶湯アルミ合金を鋳込んだ後、スクイズキャスティング法(圧力100MPa)で溶湯アルミニウム合金を多孔質セラミックス中に含浸させ、複合材料を得た。
【0052】
次いで、20質量%の硫酸および1質量%のシュウ酸を含有する処理浴(残りは水)に、アルミニウム複合材部1の円筒の一端面部と炭素電極とを浸漬し、アルミニウム複合材部1を陽極とし、炭素電極を陰極とする電気回路を形成する。次いで、8A/dm
2の電流密度で1.5時間通電し、アルミニウム複合材部1の一端面部に陽極酸化皮膜部1を作製する。
【0053】
なお、強化アルミニウム複合部材1における多孔質セラミックス体1のホウ酸アルミニウムのウィスカーの体積分率は、強化アルミニウム複合部材1の密度とアルミニウム合金の密度とから算出したところ、20体積%であった。
【0054】
また、陽極酸化皮膜部1の厚さは、膜厚計によって測定したところ、120μmであった。また、陽極酸化皮膜部1における気孔率は、その密度から算出したところ、60%であった。
【0055】
さらに、強化アルミニウム複合部材1における多孔質セラミックス体1のウィスカーの表面積に対するスピネルの存在量(含有量)は、5%である。さらには、当該ウィスカーの表面におけるスピネルの最大径は80nmである。そして、上記表面におけるスピネルの個数は、25個/平方マイクロメートルである。
【0056】
[評価]
(1)遮熱性
強化アルミニウム複合部材1の軸方向における熱伝導率を求めたところ、当該熱伝導率は0.6W/(m/K)である。
【0057】
(2)耐久性
陽極酸化皮膜の硬さ(ビッカース硬さ、Hv)を、ビッカース硬度計を用いて求めたところ、陽極酸化皮膜1のHvは250であった。
【0058】
[実施例2]
アルミニウム合金中のマグネシウムの含有量を1.5質量%に変更し、さらに溶融温度を850℃に変更した以外は
比較例Aと同様にして強化アルミニウム複合部材2を作製する。強化アルミニウム複合部材2における上記ウィスカーの表面積に対するスピネルの存在量は15.0%であり、上記表面におけるスピネルの最大径は120nmであり、そして、上記表面におけるスピネルの個数は、46個/平方マイクロメートルである。
【0059】
[比較例1]
アルミニウム合金中のマグネシウムの含有量を0.3質量%に変更し、さらに溶融温度を730℃に変更した以外は
比較例Aと同様にして強化アルミニウム複合部材C1を作製する。強化アルミニウム複合部材C1における多孔質セラミックス体C1の表面積に対するスピネルの存在量は0%であった。よって、上記表面におけるスピネルの最大径および上記表面におけるスピネルの個数は、確認されなかった。
【0060】
【表1】
【0061】
以上の結果から、多孔質セラミックス体中のウィスカーの表面に十分量のスピネルが晶析している強化アルミニウム複合部材1、2は、いずれも、十分量の当該スピネルを有さない強化アルミニウム複合部材C1に比べて、同等の遮熱性を有するとともに、より高い耐久性を有することがわかる。