特許第6844140号(P6844140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844140
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】封止用エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/34 20060101AFI20210308BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20210308BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210308BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C08G59/34
   H01L23/30 R
   C09K3/10 L
   C09K3/10 E
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-138917(P2016-138917)
(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-9098(P2018-9098A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年3月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】原田 英治
(72)【発明者】
【氏名】岩田 孝文
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−013271(JP,A)
【文献】 特開平05−025366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/34
C08L 63/00−63/10
C08F 290/04
C09K 3/10
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、グリシジル(メタ)アクリレート、下記一般式(1)で示されるn=2〜8の単量体および下記一般式(1)で示されるn=9〜90の単量体を含有する単量体混合物の重合体(A)と、硬化剤とを含有し、前記単量体混合物における前記グリシジル(メタ)アクリレートの含有量が20〜70モル%であり、エポキシ樹脂100質量部に対する重合体(A)の含有量が1〜300質量部であることを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】
(式中、X、YおよびZはそれぞれ独立してHまたはCHを示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の封止に使用される封止用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品や半導体素子を物理的または化学的に保護し、かつ固着するための封止材料として、エポキシ樹脂や硬化剤などを含むエポキシ樹脂組成物が従来から用いられている。耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性などが優れているためエポキシ樹脂がよく用いられているが、エポキシ樹脂の多くは、硬化後の性状が硬くて脆いため、屈曲性が不足することがあり、曲面状への加工やフレキシブルな基材上の加工などに対しての使用が困難であった。また封止する工程においては、室温で固体のエポキシ樹脂組成物をいったん加熱軟化させて金型内部に注入し充填して成形するところ、エポキシ樹脂は比較的高い熱膨張係数を有するため、硬化する際に内部応力が生じやすく、反りや亀裂、粘着力の低下を引き起こし、製品の信頼性に悪い影響を及ぼすことがあった。
【0003】
そのため、例えば特許文献1では、内部応力を低減するために、樹脂のガラス転移温度を高くして基材との収縮率の差を小さくする方法が提案されているが、工程が煩雑で材料に制約があるなどの課題があった。また例えば特許文献2では、樹脂にポリアルキレンジオールを含有し、硬化体のガラス転移点以上の温度領域における貯蔵弾性率を特定の範囲にするなどの方法が提案されているが、分子量1000以下程度の低分子量の化合物を使用する場合には、ブリードアウトにより信頼性に影響を与えるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−112515号公報
【特許文献2】特開2009−191170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、電子部品や半導体素子を物理的または化学的に保護し、かつ固着するための封止用エポキシ樹脂組成物であって、硬化後に屈曲性があり、また反りや亀裂がなく透明性が良好であり、接着性も良好な封止材が得られる封止用エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、エポキシ樹脂と、グリシジル(メタ)アクリレートおよび特定の単量体を含有する単量体混合物の重合体(A)とを特定の割合で含有し、更に硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物が上記目的を達成できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂と、グリシジル(メタ)アクリレート、下記一般式(1)で示されるn=2〜8の単量体および下記一般式(1)で示されるn=9〜90の単量体を含有する単量体混合物の重合体(A)と、硬化剤とを含有し、前記単量体混合物における前記グリシジル(メタ)アクリレートの含有量が20〜70モル%であり、エポキシ樹脂100質量部に対する重合体(A)の含有量が1〜300質量部であることを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物である。
【0008】
【化1】
(式中、X、YおよびZはそれぞれ独立してHまたはCHを示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物によれば、硬化後に屈曲性があり、また反りや亀裂がなく透明性が良好である封止材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、グリシジル(メタ)アクリレートおよび下記一般式(1)で示される単量体を含有する単量体混合物の重合体(A)と、硬化剤とを含有する。以下、エポキシ樹脂と、重合体(A)と、硬化剤とについて説明する。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを表す。
【0011】
〔エポキシ樹脂〕
本発明においてエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を使用することができる。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、含窒素環エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂等が挙げられ、これらエポキシ樹脂は1種類を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
エポキシ樹脂の軟化点、融点、エポキシ当量に関して特に制限はないが、エポキシ当量が100〜5,000であることが好ましい。また、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が60℃以上の結晶性エポキシ化合物が好ましい。融点が低すぎると、常温で溶融し、作業性が低下して、生産性が低下するおそれがある。
【0012】
〔重合体(A)〕
本発明における重合体(A)は、グリシジル(メタ)アクリレートおよび上記一般式(1)で示される単量体を含有する単量体混合物からなる重合体である。
【0013】
グリシジル(メタ)アクリレートは、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートである。工業的に入手しやすいことから、グリシジルメタクリレートを用いることが好ましい。なお、グリシジルアクリレートとグリシジルメタクリレートとを併用してもよい。
単量体混合物におけるグリシジル(メタ)アクリレート成分の含有量は、1〜90モル%が好ましく、特に好ましくは10〜80モル%、更に好ましくは20〜70モル%である。
【0014】
上記一般式(1)において、X、YおよびZはそれぞれ独立してHまたはCHを示し、XとYとZは同じであっても異なっていてもよいが、それぞれ、XはCHが好ましく、YはCHが好ましく、ZはHが好ましい。
nは2〜90であり、好ましくは3〜60、特に好ましくは4〜30である。
一般式(1)で示される単量体は1種類を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良いが、屈曲性と接着性のバランスをとる観点からは2種類以上を併用するほうが好ましい。特に2種類を併用する場合は、nが2〜8の単量体とnが9〜90の単量体とを併用することが好ましく、nが4〜8の単量体とnが9〜30の単量体とを併用することが特に好ましい。
【0015】
単量体混合物における一般式(1)で示される単量体の含有量は、好ましくは10〜99モル%であり、特に好ましくは20〜90モル%であり、特に好ましくは30〜80モル%である。
一般式(1)で示される単量体の2種類以上を併用する場合、例えば、nが2〜8の単量体と9〜90の単量体との2種類を併用する場合、両者の含有比率〔(nが2〜8の単量体)/(nが9〜90の単量体)〕は、好ましくは0.5/1〜10/1、特に好ましくは1/1〜5/1である。
【0016】
単量体混合物には、グリシジル(メタ)アクリレートおよび一般式(1)で示される単量体とともに、その他の単量体を含有していても良い。その他の単量体は、上記グリシジル(メタ)アクリレートおよび一般式(1)で示される単量体以外の単量体であり、例えば、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N,N‘−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N‘−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、メトキシポリプロピレングリコール(重合度2〜30)モノ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。その他の単量体は、1種類を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0017】
単量体混合物におけるその他の単量体の含有量は、好ましくは30モル%以下(0〜30モル%)であり、特に好ましくは20モル%以下(0〜20モル%)であり、さらに好ましくは15モル%以下(0〜15モル%)である。すなわち、グリシジル(メタ)アクリレートと一般式(1)で示される単量体の総含有量は、単量体混合物において、好ましくは70モル%以上(70〜100モル%)であり、特に好ましくは80モル%以上(80〜100モル%)であり、さらに好ましくは85モル%以上(85〜100モル%)である。
【0018】
重合体(A)は、エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜300質量部、好ましくは10〜200重量部、特に好ましくは20〜150重量部含有する。
また、重合体(A)の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、3, 000〜30, 000であることが好ましく、さらに好ましくは5,000〜25,000である。
なお、重合体(A)の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0019】
次に、重合体(A)を製造する方法について説明する。
本発明における重合体(A)は、グリシジル(メタ)アクリレートおよび一般式(1)で示される単量体を少なくとも含有する単量体混合物をラジカル重合させることにより得られる。重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられるが、重量平均分子量を調整し易いという面で、溶液重合が好ましい。
【0020】
重合に際しては重合開始剤を用いることができ、かかる重合開始剤としては公知のものを使用することができる。例えば、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は1種類のみを用いても2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。
なお、重合開始剤を投入するに際しては、例えば、全量一括仕込みしてもよいし、一部を一括仕込みして残りを滴下してもよく、全量を滴下してもよい。また、前記単量体とともに重合開始剤を滴下すると、反応の制御が容易となるので好ましく、さらに単量体滴下後も重合開始剤を添加すると、残存単量体を低減できるので好ましい。
【0021】
溶液重合の際に使用する重合溶媒としては、単量体と重合開始剤が溶解するものを使用することができ、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
重合溶媒に対する単量体混合物の濃度は、10〜70質量%が好ましく、特に好ましくは20〜50質量%である。単量体混合物の濃度が低すぎると、単量体が残存しやすく、得られる重合体の分子量が低下するおそれがあり、濃度が高すぎると発熱を制御し難くなるおそれがある。
【0022】
単量体を投入するに際しては、例えば、全量一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、全量を滴下しても良い。発熱の制御しやすさから、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、または全量を滴下するのが好ましい。
【0023】
重合温度は、重合溶媒と重合開始剤の種類に依存し、例えば、50℃〜110℃である。
重合時間は、重合開始剤の種類と重合温度に依存し、例えば、重合開始剤としてジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを使用し、重合温度を70℃として重合する場合であれば、重合時間は6時間が適当である。
【0024】
以上の重合反応を行なうことにより、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物に係る重合体(A)が得られる。得られた重合体(A)は、そのままエポキシ樹脂組成物の調製に用いてもよいし、重合反応後の反応液を乾燥したり、ろ取や精製を施して単離してから用いてもよい。
【0025】
〔硬化剤〕
本発明において硬化剤としては、エポキシ樹脂の種類に応じて公知のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができる。例えば、フェノールノボラック樹脂などのフェノール樹脂系硬化剤;無水テトラカルボン酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系硬化剤;アミン系硬化剤などが挙げられ、これら硬化剤のうち1種類を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。主としてフェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤を使用することが望ましい。
硬化剤の配合割合は、特に制限されないが、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.5当量となることが好ましい。
【0026】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、重合体(A)および硬化剤を含有する樹脂組成物であり、場合により、硬化促進剤、酸化防止剤、離型剤、シランカップリング剤、充填剤、顔料、染料などの各種の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0027】
硬化促進剤としては、必要に応じて、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させる公知の硬化促進剤を使用することができる。例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類;4級アンモニウム塩類;ホスホニウム塩類などが一般的であり、硬化性が良いもが好ましい。これら硬化促進剤のうち1種類を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0028】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物等の公知の酸化防止剤を適宜使用することができる。
離型剤としては、例えば、天然カルナバ系、長鎖脂肪酸およびその金属石鹸、エステル、アマイド、ポリエチレン系ワックスなどのポリオレフィン等の公知の離型剤を適宜使用することができる。
充填剤としては、例えば、シリカ、窒化珪素、アルミナ、石英ガラス、タルク、炭酸カルシウムなどが挙げられ、これら充填剤のうち1種類を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0029】
上記配合成分をミキサー、ブレンダーなどを用いて均一に混合した後、ニーダー、ロールなどを用いて混錬して封止用エポキシ樹脂組成物が得られる。
上記混錬した後に、必要に応じて、冷却固化してから粉砕し、粉状または粒状にして用いることができる。このようにして得られた封止用エポキシ樹脂組成物は、金型を用いてトランスファー成形することにより、電子部品や半導体素子等を封止することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下において「%」および「部」は質量基準である。
実施例および比較例にて使用した単量体の名称と略号を下記に示す。
GMA:グリシジルメタクリレート
MEM4:一般式(1)においてX=CH、Y=CH、Z=H、n=4
MEM23:一般式(1)においてX=CH、Y=CH、Z=H、n=23
AN:アクリロニトリル
パーブチルND:t−ブチルパーオキシネオデカノエート
【0031】
〔重合体(A)の合成〕
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロートおよび窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに1−プロパノール300gを仕込み、窒素置換により窒素雰囲気下とした。GMA(製品名:ブレンマーGMA(日油(株)製))80g、MEM4(製品名:ブレンマーPME−200(日油(株)製))160g、MEM23(製品名:ブレンマーPME−1000(日油(株)製))160gを混合した単量体溶液、および1−プロパノール100gとパーブチルND(製品名:パーブチルND−100(日油(株)製))24gを混合した重合開始剤溶液をそれぞれ調製した。
反応容器内を70℃まで昇温し、単量体溶液および重合開始剤溶液を同時にそれぞれ3時間かけて滴下した。その後、70℃で3時間反応させた。反応後、重合液を80℃で6時間減圧乾燥し、室温で軟質固体の重合体(A)−1を得た。
重合体(A)−1と同様の方法にて、重合体(A)−2〜(A)−4を調製した。重合体(A)−2および(A)−4については、表1に示した単量体量に変えて、その他の条件は重合体(A)−1と同様に合成を行った。重合体(A)−3については、表1に示した単量体量に変えて、また重合開始剤量は18gに変えて、その他の条件は重合体(A)−1と同様に合成を行った。
【0032】
【表1】
【0033】
〔実施例1、2、参考例1、2及び比較例1〕
表2に示した分量でエポキシ樹脂、重合体(A)、硬化剤、硬化助剤を、ミキサーを用いて均一に混合した後に、ニーダーを用いて混錬して封止用エポキシ樹脂組成物を得た。なお、実施例1では重合体(A)−1、実施例2では重合体(A)−参考
では重合体(A)−、参考例では重合体(A)−3をそれぞれ用いた。
次に、得られた封止用エポキシ樹脂組成物を用い、その硬化体の硬化後の屈曲性と接着性をそれぞれ下記の方法にしたがって評価した。これらの結果を表2に示した。
【0034】
【表2】
【0035】
エポキシ樹脂a:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:jER1001(三菱化学社製) )
エポキシ樹脂b:ビフェニル型エポキシ樹脂(製品名:jERYX4000H(三菱化学社製))
硬化剤c:テトラヒドロ無水フタル酸
硬化剤d:フェノールノボラック樹脂
硬化助剤:2−エチル−4−メチルイミダゾール
【0036】
〔屈曲性〕
各封止用エポキシ樹脂組成物を用い、100μm厚のアルミシート上に120℃で溶融した樹脂液を塗布し、150℃3時間加熱し500μm厚の樹脂シートを作成した。アルミシートから剥離した樹脂シートに定規を当てて折り曲げて屈曲性を下記の基準で評価した。
◎:割れなく折れ曲がる。
○:90度以上の屈曲後割れる。
×:90度以下の屈曲で割れる。
【0037】
〔接着性〕
各封止用エポキシ樹脂組成物を用い、100μm厚の銅シート上に120℃で溶融した樹脂液を塗布し、150℃3時間加熱し200μm厚の樹脂シートを作成した。樹脂シートを銅シートとともに90度以上折り曲げて平面状に戻した状態にして樹脂シートの接着性を次の基準で評価した。
◎:折り曲げ部分の樹脂シートに浮きがなく銅シートへの接着性が良好である。
×:折り曲げ部分の樹脂シートと銅シートの間に浮きが見られる。
【0038】
〔外観〕
各封止用エポキシ樹脂組成物を用い、1. 5mm厚のガラス板上に120℃で溶融した樹脂液を塗布し、150℃3時間加熱し500μm厚の樹脂膜を作成した。樹脂膜の外観を次の基準で評価した。
○:亀裂なく透明性があり封止状態が良好である。
×:透明性はあるが亀裂が入っている。
【0039】
上記結果から、全ての実施例は、重合体(A)を含有しない比較例1と比べて、屈曲性と接着性が改善しており、またそれ以外の外観の評価項目に関しても良好な評価結果が得られており、優れた封止用エポキシ樹脂組成物が得られていることが分かる。