(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844142
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】漏洩検知装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20210308BHJP
G01M 3/22 20060101ALI20210308BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20210308BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20210308BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20210308BHJP
F17D 5/02 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
G01M3/20 N
G01M3/22
F16L23/02 D
F16J15/00 E
F16J15/10 L
F17D5/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-144824(P2016-144824)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-13458(P2018-13458A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 康平
【審査官】
岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−108725(JP,A)
【文献】
特開平10−185742(JP,A)
【文献】
実開昭59−092835(JP,U)
【文献】
特開昭60−093329(JP,A)
【文献】
特開昭54−082283(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0245289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
F16L 23/02
F16J 15/00
F17D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が封入されている配管の端部と、蓋とをシール材を挟んでボルトで封止する箇所からの前記液体の漏洩を検知する漏洩検知装置であって、
少なくとも一部分が前記シール材に貼り付けられ、かつ、少なくとも一部分が前記蓋の外側に露出している紙を備え、
前記シール材は、前記ボルトが貫通するボルト挿通孔を有するシートガスケットであり、
前記紙は、内部に紙のない除外範囲があり、前記除外範囲の縁には、切欠きがあり、
前記紙は、前記ボルト挿通孔に前記切欠きが重なるように、前記シール材と前記蓋との間に挟まれ、
前記切欠きが前記ボルト挿通孔よりも大きく、
前記紙は、前記液体が付着した場合に一方の面から他方の面が透けて見える
漏洩検知装置。
【請求項2】
前記他方の面に前記一方の面と異なる色の着色がある
請求項1に記載の漏洩検知装置。
【請求項3】
前記配管の端部と、前記蓋とが前記シール材を挟んで複数のボルトで封止されており、
前記紙は、前記ボルトの中心を結ぶ円の内側の範囲まである、請求項1又は2に記載の漏洩検知装置。
【請求項4】
前記液体は、油圧を伝達する作動油である
請求項1から3のいずれか一項に記載の漏洩検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧駆動に用いられる作動油が封入されている配管における漏油を検知する構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−145444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来の構成で漏油を検知するためにはフランジ部の加工を含む大掛かりな構成が必要になる。そのため、従来の構成は、コスト等の問題から導入の敷居が高い。係る問題は、作動油の漏洩に係る構成に限らず、配管に封入された液体の漏洩について同様のことがいえる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、より簡易な構成で液体の漏洩を検知することができる漏洩検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による漏洩検知装置は、液体が封入されている配管においてシール材が設けられる箇所からの前記液体の漏洩を検知する漏洩検知装置であって、少なくとも一部分が前記シール材に貼り付けられ、かつ、少なくとも一部分が前記配管の外側に露出している紙を備え、前記紙は、前記液体が付着した場合に一方の面から他方の面が透けて見える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による漏洩検知装置が取り付けられた配管の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、分岐系統の端部における蓋の内側の構造を主系統側から見た場合の例を示す図である。
【
図3】
図3は、シール材に貼り付けられた紙の形状の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、作動油の付着により一方の面から他方の面が透けて見える状態になった紙を示す模式図である。
【
図5】
図5は、シール材に貼り付けられた紙の形状の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態による漏洩検知装置10が取り付けられた配管1の構成例を示す図である。配管1は、液体が封入されている配管である。また、漏洩検知装置10は、係る配管においてシール材20が設けられる箇所からの液体の漏洩を検知する漏洩検知装置である。具体的には、例えば、液体は配管1に封入されている液体は油圧を伝達する作動油であり、漏洩検知装置10は漏油検知装置として機能する。配管1は、例えば、油圧を伝達する主系統2から分岐した分岐系統3に設けられたバルブ4を有する。バルブ4は、分岐系統3の開放と閉塞とを切り替え可能に設けられている。分岐系統3が開放状態である場合、通油口7を介して主系統2内の作動油に対するアクセス(例えば、作動油の追加、排出又は交換等)が可能になる。
【0010】
主系統2からみて分岐系統3のバルブ4より外側に位置する端部には、端部を封止する蓋5が取り付けられている。蓋5は、複数(例えば、4つ)のボルト6を用いて分岐系統3に固定されている。分岐系統3は、バルブ4及びボルト6によって固定された蓋5によって作動油の漏出が起きにくい状態で閉塞されている。
【0011】
図2は、分岐系統3の端部における蓋5の内側の構造を主系統2側から見た場合の例を示す図である。ボルト6を用いて封止されている箇所である蓋5と分岐系統3の配管との間には、シール材20が設けられている。シール材20は、例えばシートガスケットである。シール材20には、ボルト挿通孔21が設けられている。このように、シール材20が設けられる箇所は、ボルト6を用いて封止されている箇所である。本実施形態では、シール材20の外周縁20aが描く円と複数のボルト挿通孔21の中心Q同士を結ぶ円とは円中心Pを共有する同心円であるが、これは一例であってこれに限られるものでない。
【0012】
図3は、シール材20に貼り付けられた紙11の形状の一例を示す図である。シール材20には、紙11が貼り付けられている。紙11は、少なくとも一部分がシール材20に貼り付けられている。具体的には、例えば
図2及び
図3に示すように、紙11は、シートガスケットであるシール材20に設けられたボルト挿通孔21の外側に貼り付けられる。より具体的には、紙11は、例えば、シートガスケットであるシール材20に設けられたボルト挿通孔21を縁取る形状である。
【0013】
図3に示す例の場合、シール材20において紙11が貼り付けられる範囲は、ボルト挿通孔21を縁取る周縁部21aを除く範囲をカバーする範囲である。具体的には、本実施形態のように内孔20bを中央に有する円板状のシール材20の場合、紙11が貼り付けられる範囲は、シール材20の一方の板面であって、当該板面における所定の除外範囲20c(
図2参照)を除く範囲となる。紙11の貼り代11aの形状は、係る範囲に対応する形状である。所定の除外範囲20cは、例えば、円状の範囲20dと周縁部21aを合わせた範囲である。円状の範囲20dは、シール材20の内孔20bの径より大きくシール材20の外径より小さい所定の径を有し、シール材20の外径と円中心Pを共有する円より内側の範囲である。
【0014】
周縁部21aは、例えばボルト挿通孔21と中心Qを共有し、かつ、ボルト挿通孔21の径よりも大きい外径を有する円状の範囲であるが、これは周縁部21aの具体的形状の一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。周縁部21aの範囲はシール材20において紙11が貼り付けられる範囲を確保することができる範囲内で任意に定めることができる。4つの周縁部21aの外径は、例えば、ボルト挿通孔21の中心Qと所定の点Sとの距離未満となるよう定められる。所定の点Sは、相対的に最も近くに位置する2つのボルト挿通孔21の中心Q同士を結ぶ直線に直交する直線であって円中心Pを通過する直線と外周縁20aとの交点のうち、当該2つのボルト挿通孔21の中心Qに近い方の交点である。
【0015】
また、紙11は、少なくとも一部分が配管1の外側に露出している。具体的には、例えば
図1に示すように、紙11は、蓋5が固定された分岐系統3の外側に露出する露出部11bを有する。露出部11bは、例えば環状の形状であるが、これは露出部11bの具体的形状の一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。紙11は、
図2及び
図3に示すように、露出部11bと貼り代11aとが物理的に連続している。
【0016】
紙11が貼り付けられるシール材20の面部は、蓋側の面である。すなわち、本実施形態では、紙11は、貼り代11aが蓋5とシール材20とに挟まれる。また、本実施形態では、露出部11bのうちシール材20側の面にその反対側と異なる色(例えば、赤色)の着色が施されている。係る色の具体例はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
図2では、係る着色をドットパターンで示している。
【0017】
図4は、作動油の付着により一方の面から他方の面が透けて見える状態になった紙11を示す模式図である。紙11は、作動油が付着した場合に一方の面から他方の面が透けて見える。具体的には、紙11は、例えば着色されていない蓋側から見た場合、紙11を構成するパルプ繊維同士の隙間の空気による光の屈折率とパルプ繊維による光の屈折率の差異によって光の散乱が生じて所定の色(例えば、白色)に見え、蓋側の面からその裏側を透けて見通すことができないか、又は所定の色のもやが相対的に強くかかった状態で視認される。一方、紙11に作動油が付着した場合、紙11を構成するパルプ繊維同士の隙間に油が入り込む。油による光の屈折率とパルプ繊維による光の屈折率の差異は、空気による光の屈折率とパルプ繊維による光の屈折率の差異に比して相対的に小さい。このため、作動油が付着した紙11は、作動油が付着していない状態に比して光の散乱が弱まって透けるようになる。本実施形態では、他方の面に一方の面と異なる色の着色があることから、露出部11bに作動油が付着した場合、シール材20側の面に施された色が蓋側の面から透けて見えることになる。
図4では、漏油が生じたことで露出部11bに透けが生じた箇所を漏油箇所Lとして示している。
【0018】
分岐系統3は、シール材20の配設及びボルト6による蓋5の固定によって作動油の漏出が抑制されているが、経年等の事情によってシール材20による漏油の防止性能の低下、ボルト6の緩みによる封止力の低下等が生じる場合がある。この場合、シール材20が設けられている位置から作動油が漏れることがある。漏れた作動油がシール材20に貼り付けられている紙11の貼り代11aから露出部11bまで浸透すると、露出部11bを蓋側から見た場合にシール材20側の面に施された色が透けて見える状態になる。逆に、係る作動油の漏れがなければ、露出部11bを蓋側から見た場合にシール材20側の面に施された色は透けて見えない。このため、配管1の点検者は、露出部11bを視認するだけで容易に作動油の漏出の有無を判定することができる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態によれば、少なくとも一部分がシール材20に貼り付けられ、かつ、少なくとも一部分が配管1の外側に露出している紙11に作動油が付着した場合に一方の面から他方の面が透けて見えるので、露出している紙11(露出部11b)における係る透けの有無に基づいて容易に漏油の有無を把握することができる。このように、本実施形態によれば、より簡易な構成で漏油を検知することができる。
【0020】
また、他方の面に一方の面と異なる色の着色があるので、漏油の有無に応じた透けの有無を、透けない場合の色と透ける場合の色との差として視認することができる。従って、漏油の有無をより把握しやすくなる。
【0021】
また、シール材20は、シートガスケットであるので、シートガスケットが設けられる場所に簡単に漏油を検知するための紙11を設けることができる。
【0022】
また、シール材20が設けられる箇所は、ボルト6を用いて封止されている箇所であり、紙11は、シートガスケットに設けられたボルト挿通孔21の外側に貼り付けられるので、配管1における作動油の流動経路に影響を及ぼさずに漏油を検知するための構成を設けることができる。
【0023】
また、紙11は、シートガスケットに設けられたボルト挿通孔21を縁取る形状であるので、紙11の貼り代11aの一部分をシートガスケットのより内側に位置させることができる。従って、漏油が生じた場合における紙11への浸透のタイミングをより早めやすくなり、漏油の検知をより早いタイミングで行うことができるようになる。
【0024】
(変形例)
図5は、シール材20に貼り付けられた紙の形状の変形例を示す図である。上記の実施形態では紙11がボルト挿通孔21を縁取る形状であるが、これは紙の具体的形状の一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。例えば
図5に示すように、紙110は、貼り代110aの内周縁が円状であってもよい。この場合、紙110の形状の形成に係る加工をより簡略化することができる。
【0025】
油の付着により透けて見える色は必ずしも全面に施されていなくてもよい。一方の面と他方の面との間で、紙11,110の透けの有無が容易に判別可能な差異が施されていればよい。係る差異をもたらす加工として、例えば、他方の面に対する模様、文字その他の画像の形成が挙げられる。また、係る画像の形成が他方の面において露出部11bの全面に施されることで、作動油の漏出がどの部分から生じた場合にも対応することができる。
【0026】
上記の実施形態における配管1の具体的態様はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。例えば、作動油が封入されている管同士を連結するフランジFに設けられたシール材20(例えば、ガスケット)に紙11(又は紙110)が貼り付けられていてもよい。この場合、露出部11bは、フランジFの外側に延出する。
【0027】
また、液体は作動油に限られない。液体の水素イオン指数(酸性、中性、アルカリ性)を問わず、配管1に封入可能であって紙への浸透により光の屈折率を変じ得る液体であれば、係る液体が封入された配管において本発明の漏洩検知装置を採用可能である。
【0028】
また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0029】
1 配管
2 主系統
3 分岐系統
4 バルブ
5 蓋
6 ボルト
7 通油口
10 漏洩検知装置
11,110 紙
11a,110a 貼り代
11b 露出部
20 シール材
20a 外周縁
20b 内孔
20c 除外範囲
20d 範囲
21 ボルト挿通孔
21a 周縁部
F フランジ
L 漏油箇所