特許第6844186号(P6844186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844186
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/047 20060101AFI20210308BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20210308BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20210308BHJP
   H01L 41/297 20130101ALI20210308BHJP
   H01L 41/293 20130101ALI20210308BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20210308BHJP
   G11B 21/10 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01L41/047
   H01L41/09
   H01L41/083
   H01L41/297
   H01L41/293
   G11B21/21 D
   G11B21/10 N
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-200231(P2016-200231)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-64000(P2018-64000A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
(72)【発明者】
【氏名】森澤 愛美
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/145453(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/208376(WO,A1)
【文献】 特開2015−057838(JP,A)
【文献】 特開2007−037003(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0069490(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0099400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/00−41/47
G11B 21/10
G11B 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素体と、
前記圧電素体上に配置され、前記圧電素体に電圧を印加するための第1電極及び第2電極と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方の表面には、導電性の第1材料により形成され且つ実装時においてはんだが付与される第1領域と、前記第1領域に隣接し且つ前記第1材料及び導電性の第2材料を含んで形成された第2領域と、が設けられており、
前記第2材料は、前記第1材料よりも前記はんだの濡れ性が低く、
前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方は、前記圧電素体側から、第1層及び第2層がこの順番で配置されて構成されており、
前記第2領域は、前記第1層及び前記第2層を形成する材料の合金からなる、圧電素子。
【請求項2】
前記第2領域は、前記電圧の印加により変位を生じる前記圧電素体の活性部上の位置に設けられている、請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
前記圧電素体は、略長方形状を呈し且つ互いに対向する一対の主面と、一対の前記主面の長辺方向で互いに対向する一対の端面と、一対の前記主面の短辺方向で互いに対向する一対の側面と、を有し、
前記第1電極は、一方の前記主面及び一方の前記端面に少なくとも配置され、
前記第2電極は、他方の前記主面及び他方の前記端面に少なくとも配置され、
前記第2領域は、一対の前記側面の対向方向において、所定の間隔をあけて複数設けられている、請求項1又は2に記載の圧電素子。
【請求項4】
前記圧電素体は、略長方形状を呈し且つ互いに対向する一対の主面と、一対の前記主面の長辺方向で互いに対向する一対の端面と、一対の前記主面の短辺方向で互いに対向する一対の側面と、を有し、
前記第1電極は、一方の前記主面及び一方の前記端面に少なくとも配置され、
前記第2電極は、他方の前記主面及び他方の前記端面に少なくとも配置され、
前記第2領域は、一対の前記側面の対向方向において、一方の前記側面から他方の前記側面にわたって連続して設けられている、請求項1又は2に記載の圧電素子。
【請求項5】
圧電素体と、
前記圧電素体上に配置され、前記圧電素体に電圧を印加するための第1電極及び第2電極と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方の表面には、導電性の第1材料により形成され且つ実装時においてはんだが付与される第1領域と、前記第1領域に隣接し且つ前記第1材料及び導電性の第2材料を含んで形成された第2領域と、が設けられており、
前記第2材料は、前記第1材料よりも前記はんだの濡れ性が低く、
前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方は、前記圧電素体側から、第1層、第2層及び第3層がこの順番で配置されて構成されており、
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれは、前記圧電素体側から、Crからなる前記第1層、NiCuからなる前記第2層及びAuからなる前記第3層がこの順番で配置されて構成されており、
前記第2領域は、前記第2層を形成する材料のNiCu及び前記第3層を形成する材料のAuの合金からなる、圧電素子。
【請求項6】
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれは、前記圧電素体側から、NiCrからなる前記第1層及びAuからなる前記第2層がこの順で配置されて構成されており、
前記第1層の厚みは、前記第2層の厚みよりも大きく、
前記第2領域は、NiCr及びAuの合金からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電素子として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の圧電素子は、圧電素体と、圧電素子に電圧を印加する第1の電極及び第2の電極と、第1の電極上に配置され、第1の電極よりもはんだの濡れ性が低い導電膜と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/145453号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電素子をランド電極等に実装したときに、はんだが濡れ拡がると、圧電素子とランド電極とを接合するために十分なはんだを確保できなくなるおそれがある。一方の電極とランド電極との間のはんだの量が不足すると、圧電素子に傾きが生じることがある。これにより、他方の電極とランド電極との間のはんだに応力が加わり、実装不良となるおそれがある。従来の圧電素子では、導電膜のはんだの濡れ性を第1電極よりも低くすることにより、圧電素子をはんだ実装したときに、第1の電極におけるはんだの濡れ拡がりの抑制を図っている。しかしながら、従来の圧電素子では、第1の電極上に導電膜が広範囲にわたって配置されているため、導電膜が圧電素体の活性部の変位を阻害するおそれがある。したがって、従来の圧電素子では、変位を効率的に得ることができない。
【0005】
本発明の一側面は、はんだの濡れ拡がりに起因する実装不良を抑制しつつ、変位を効率的に得ることができる圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る圧電素子は、圧電素体と、圧電素体上に配置され、圧電素体に電圧を印加するための第1電極及び第2電極と、を備え、第1電極及び第2電極の少なくとも一方の表面には、導電性の第1材料により形成され且つ実装時においてはんだが付与される第1領域と、第1領域に隣接し且つ第1材料及び導電性の第2材料を含んで形成された第2領域と、が設けられており、第2材料は、第1材料よりもはんだの濡れ性が低い。
【0007】
本発明の一側面に係る圧電素子では、第1電極及び第2電極の少なくとも一方の表面に第1領域及び第2領域が設けられている。第1領域は、圧電素子がはんだ実装されるときに、はんだが付与される領域である。第2領域は、第1領域に隣接して設けられており、第1領域を形成する第1材料と、第1材料よりも濡れ性の低い第2材料とが混在して形成されている。これにより、圧電素子では、第1領域にはんだが付与されたときに、はんだが濡れ拡がった場合であっても、はんだが第2領域に到達すると、第2領域によりはんだの濡れ拡がりが抑制される。したがって、第1電極又は第2電極とランド電極等との間のはんだの量を確保でき、はんだの量のアンバランスによって圧電素子に傾きが発生することを抑制できるため、はんだに応力が加わることを抑制できる。これにより、はんだの濡れ拡がりに起因する実装不良を抑制できる。また、圧電素子では、第1材料及び第2材料が導電性を有し、第2領域が電極の表面に設けられている。つまり、第2領域は、電極の一部として構成されている。そのため、第2領域は、圧電素体の活性部の変位を阻害しない。したがって、圧電素子では、活性部の変位を効率的に得ることができる。
【0008】
一実施形態においては、第2領域は、電圧の印加により変位を生じる圧電素体の活性部上の位置に設けられていてもよい。第2領域は、活性部の変位を阻害しない。したがって、第2領域が活性部に対応する位置に設けられている構成においては、上記圧電素子の構成は特に有効である。また、第2領域の位置が制限されないため、はんだが付与される第1領域を確保でき、圧電素子のはんだ実装を確実に行うことができる。
【0009】
一実施形態においては、圧電素体は、略長方形状を呈し且つ互いに対向する一対の主面と、一対の主面の長辺方向で互いに対向する一対の端面と、一対の主面の短辺方向で互いに対向する一対の側面と、を有し、第1電極は、一方の主面及び一方の端面に少なくとも配置され、第2電極は、他方の主面及び他方の端面に少なくとも配置され、第2領域は、一対の側面の対向方向において、所定の間隔をあけて複数設けられていてもよい。この構成では、一対の端面の対向においてはんだが濡れ拡がることを抑制できる。したがって、はんだの濡れ拡がりに起因する実装不良を抑制できる。
【0010】
一実施形態においては、圧電素体は、略長方形状を呈し且つ互いに対向する一対の主面と、一対の主面の長辺方向で互いに対向する一対の端面と、一対の主面の短辺方向で互いに対向する一対の側面と、を有し、第1電極は、一方の主面及び一方の端面に少なくとも配置され、第2電極は、他方の主面及び他方の端面に少なくとも配置され、第2領域は、一対の側面の対向方向において、一方の側面から他方の側面にわたって連続して設けられていてもよい。この構成では、一対の端面の対向においてはんだが濡れ拡がることを抑制できる。したがって、はんだの濡れ拡がりに起因する実装不良を抑制できる。
【0011】
一実施形態においては、第1電極及び第2電極のそれぞれは、圧電素体側から、Crからなる第1層、NiCuからなる第2層及びAuからなる第3層がこの順番で配置されて構成されており、第2領域は、NiCu及びAuの合金からなっていてもよい。NiCuは、Auよりもはんだの濡れ性が低い。そのため、第2層及び第3層を例えばレーザーにより溶融してNiCu及びAuの合金を形成して第2領域を設けることにより、第2領域の濡れ性を第1領域よりも低くできる。また、第1層により電気的な接続が確実に確保されているため、第2領域を設けても電極としての機能を確実に確保できる。
【0012】
一実施形態においては、第1電極及び第2電極のそれぞれは、圧電素体側から、NiCrからなる第1層及びAuからなる第2層がこの順で配置されて構成されており、第1層の厚みは、第2層の厚みよりも大きく、第2領域は、NiCr及びAuの合金からなっていてもよい。NiCrは、Auよりもはんだの濡れ性が低い。そのため、第1層及び第2層を例えばレーザーにより溶融してNiCr及びAuの合金を形成して第2領域を設けることにより、第2領域の濡れ性を第1領域よりも低くできる。また、第1層の厚みが第2層の厚みよりも大きいため、第1層により電気的な接続を確実に確保でき、電極としての機能を確実に確保できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、はんだの濡れ拡がりに起因する実装不良を抑制しつつ、変位を効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)及び(b)は一実施形態に係る圧電素子の斜視図である。
図2図1(a)におけるII-II線に沿った断面構成を示す図である。
図3】圧電素子の断面構成を一部拡大して示す図である。
図4】圧電素子の実装構造を示す図である。
図5】はんだが濡れ拡がった状態の圧電素子の一部を示す斜視図である。
図6】他の実施形態に係る圧電素子の断面構成を示す図である。
図7】他の実施形態に係る圧電素子の斜視図である。
図8】他の実施形態に係る圧電素子の実装構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示されるように、圧電素子1は、圧電素体3と、第1電極5及び第2電極7と、を備えている。圧電素子1は、例えば、磁気ディスクを備えたディスク装置などに適用される。すなわち、デュアル・アクチュエータ方式のディスク装置において、ボイスコイルモータ以外の第二のアクチュエータとして、圧電素子1が用いられる。
【0017】
圧電素体3は、一対の主面3a,3bと、一対の端面3c,3dと、一対の側面3e,3fと、を有している。本実施形態では、圧電素体3は、直方体形状を呈している。一対の主面3a,3bのそれぞれは、略長方形状を呈している。一対の端面3c,3dは、主面3a,3bの長辺方向において対向している。一対の側面3e,3fは、主面3a,3bの短辺方向において対向している。
【0018】
圧電素体3は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料としては、PZT[Pb(Zr、Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb、La)(Zr、Ti)O]、又はチタン酸バリウム(BaTiO)などが挙げられる。本実施形態では、圧電素体3は、圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体である圧電素体層が積層されて構成されている。圧電素体3では、複数の圧電素体層の積層方向が一対の主面3a,3bの対向方向と一致する。実際の圧電素体3では、各圧電素体層は、各圧電素体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0019】
圧電素体3は、内部電極9と、内部電極11と、備えている。各内部電極9,11は、例えば、平面視で、略長方形状を呈している。各内部電極9,11は、積層型の電子素子の内部電極として通常用いられる導電性材料(例えば、Ni、Pt又はPdなど)からなる。各内部電極9,11は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0020】
図1又は図2に示されるように、第1電極5は、第1電極部分5aと、第2電極部分5bと、を有している。第1電極部分5aは、一方の主面3a上に配置されている。第1電極部分5aの他方の端面3d側の端部は、他方の端面3dよりも一方の端面3c側に位置している。すなわち、第1電極部分5aの一対の端面3c,3dの対向方向の長さは、一対の端面3c,3d間の長さよりも短い。これにより、第1電極部分5aの他方の端面3d側の端部は、後述する第2電極7の第3電極部分7cの一方の端面3c側の端部と離間している。第2電極部分5bは、一方の端面3c上に配置されている。第1電極部分5a及び第2電極部分5bは、一体的に形成されている。第2電極部分5bは、内部電極9の一端と物理的に接触している。これにより、第1電極5は、内部電極9に電気的に接続されている。
【0021】
第1電極5は、第1層15と、第2層17と、第3層19と、から構成されている。第1層15、第2層17及び第3層19は、圧電素体3側からこの順番で配置(積層)されている。第1層15は、Crからなる。第2層17は、NiCuからなる。第3層19は、Auからなる。本実施形態では、第1層15、第2層17及び第3層19の厚みは、例えば、同等である。
【0022】
第2電極7は、第1電極部分7aと、第2電極部分7bと、第3電極部分7cと、を有している。第1電極部分7aは、他方の主面3b上に配置されている。第1電極部分7aの一方の端面3c側の端部は、一方の端面3cよりも他方の端面3d側に位置している。すなわち、第1電極部分7aの一対の端面3c,3dの対向方向の長さは、一対の端面3c,3d間の長さよりも短い。これにより、第1電極部分7aの一方の端面3c側の端部は、第1電極5の第2電極部分5bの他方の主面3b側の端部と離間している。第2電極部分7bは、他方の端面3d上に配置されている。第3電極部分7cは、一方の主面3a上に配置されている。第3電極部分7cの一方の端面3c側の端部は、第1電極5の第1電極部分5aの他方の端面3d側の端部と離間している。第2電極部分7bは、内部電極11の一端と物理的に接触している。これにより、第2電極7は、内部電極11に電気的に接続されている。
【0023】
第2電極7は、第1層21と、第2層23と、第3層25と、から構成されている。第1層21、第2層23及び第3層25は、圧電素体3側からこの順番で配置されている。第1層21は、Crからなる。第2層23は、NiCuからなる。第3層25は、Auからなる。本実施形態では、第1層21、第2層23及び第3層25の厚みは、例えば、同等である。
【0024】
第1電極5及び第2電極7は、内部電極9,11を介して、圧電素体3に電圧を印加するための電極として機能する。圧電素子1では、圧電素体3における、第1電極5の第1電極部分5aと内部電極11とで挟まれた領域、内部電極9と内部電極11とで挟まれた領域、及び、第2電極7の第2電極部分7bと内部電極9とで挟まれた領域が、活性部となり、電圧が印加されたときに変位する。
【0025】
本実施形態では、第1電極5の表面5sには、第1領域A1及び第2領域A2が設けられている。第1領域A1は、第1電極部分5aの一方の端面3c側の領域である。第1領域A1は、図4に示されるように、圧電素子1がランド電極L1,L2に実装されたときに、ランド電極L2と対向配置されてはんだS2が付与される領域である。第1領域A1は、第1電極5の最外層である第3層19の表面により形成されている。すなわち、第1領域A1は、Au(第1材料)により形成されている。
【0026】
第2領域A2は、第1領域A1に隣接して設けられている。第2領域A2は、圧電素子1の活性部上の位置、すなわち圧電素体3を内部電極11とで挟む位置に配置されている。本実施形態では、第2領域A2は、第1電極部分5aの表面5sにおいて、第1電極部分5aの一対の端面3c,3dの対向方向の長さの中央部よりも、一方の端面3c側に位置している。第2領域A2は、一対の側面3e,3fの対向方向において、一方の側面3eから他方の側面3fにわたって設けられている。第2領域A2の幅(一対の端面3c,3dの対向方向における長さ)は、第1領域A1の幅よりも小さい。
【0027】
第2領域A2は、第1領域A1を形成するAuよりもはんだの濡れ性が低い材料(第2材料)で形成されている。具体的には、第2領域A2は、図3に示されるように、第2層17を形成するNiCuと、第3層19を形成するAuとの合金からなるの混合部20の表面で形成されている。NiCuは、Auよりもはんだの濡れ性が低い。混合部20は、例えば、レーザーの照射により形成される。具体的には、一対の側面3e,3fの対向方向に沿ってレーザーを照射する。このとき、レーザーが第2層17及び第3層19に到達するように(第1層15を溶融しないように)、第3層19側からレーザーを照射する。これにより、第2層17のNiCuと第3層19のAuとがレーザーにより溶融して混合され、合金からなる混合部20が形成される。レーザーの強度は、第1電極5の特性(材料、厚み等)に応じて適宜設定する。
【0028】
図4に示されるように、圧電素子1は、ランド電極L1,L2にはんだS1,S2で実装される。具体的には、圧電素子1の第2電極7の第3電極部分7cとランド電極L1とが対向するように配置し、第1電極5の第1電極部分5aとランド電極L2とが対向するように配置する。第3電極部分7cとランド電極L1とをはんだS1により接合し、第1電極部分5aとランド電極L2とをはんだS2により接合する。
【0029】
図5に示されるように、はんだS2は、第1電極部分5aとランド電極L2とがはんだS2により接合されるとき、第1電極部分5aの第1領域A1において濡れ拡がる(図5においてはんだS2を黒の塗り潰しで示している)。第1領域A1で濡れ拡がったはんだS2は、第2領域A2に到達すると、第2領域A2の濡れ性が低いため、拡がりが抑制される。なお、図5には示していないが、はんだS2は、第2電極部分5bにも濡れ拡がり得る。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る圧電素子1では、第1電極5の表面5sに第1領域A1及び第2領域A2が設けられている。第1領域A1は、圧電素子1がはんだ実装されるときに、はんだS2が付与される領域である。第2領域A2は、第1領域A1に隣接して設けられており、第1領域A1を形成する第1材料(本実施形態ではAu)と、第1材料よりも濡れ性の低い第2材料(本実施形態ではNiCu)とが混在して形成されている。これにより、圧電素子1では、第1領域A1にはんだS2が付与されたときに、はんだS2が濡れ拡がった場合であっても、はんだS2が第2領域A2に到達すると、第2領域A2によりはんだS2の濡れ拡がりが抑制される。したがって、第1電極5とランド電極L2との間のはんだS2の量を確保でき、はんだS1の量とはんだS2の量とのアンバランスによって圧電素子1に傾きが発生することを抑制できるため、はんだS1に応力が加わることを抑制できる。その結果、はんだS2の濡れ拡がりに起因する実装不良を抑制できる。
【0031】
また、圧電素子1では、第1材料及び第2材料が導電性を有し、第2領域A2が第1電極5の表面5sに設けられている。つまり、第2領域A2は、第1電極5の一部として構成されている。そのため、第2領域A2が圧電素体3の活性部の変位を阻害しない。したがって、圧電素子1では、活性部の変位を効率的に得ることができる。
【0032】
本実施形態に係る圧電素子1では、第2領域A2は、電圧の印加により変位を生じる圧電素体3の活性部上の位置に設けられている。第2領域A2は、活性部の変位を阻害しない。したがって、第2領域A2が活性部に対応する位置に設けられている構成においては、圧電素子1の構成は特に有効である。また、第2領域A2の位置が制限されないため、はんだS2が付与される第1領域A1を確保でき、圧電素子1のはんだ実装を確実に行うことができる。
【0033】
本実施形態に係る圧電素子1では、第2領域A2は、一対の側面3e,3fの対向方向において、一方の側面3eから他方の側面3fにわたって連続して設けられている。この構成では、一対の端面3c,3dの対向においてはんだS2が濡れ拡がることを抑制できる。したがって、はんだS2の濡れ拡がりに起因する実装不良を抑制できる。
【0034】
本実施形態に係る圧電素子1では、第1電極5及び第2電極7のそれぞれは、圧電素体3側から、Crからなる第1層15,21、NiCuからなる第2層17,23及びAuからなる第3層19,25がこの順番で配置されて構成されている。第2領域A2は、NiCu及びAuの合金からなる。NiCuは、Auよりもはんだの濡れ性が低い。そのため、第2層17及び第3層19をレーザーにより溶融してNiCu及びAuの合金を形成して第2領域A2を設けることにより、第2領域A2の濡れ性を第1領域A1よりも低くできる。また、第1層15により電気的な接続が確実に確保されているため、第2領域A2を設けても第1電極5において電極としての機能を確実に確保できる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0036】
上記実施形態では、第1電極5が第1層15、第2層17及び第3層19からなり、第2電極7が第1層21、第2層23及び第3層25からなる形態を一例に説明した。しかし、第1電極5及び第2電極7の構成はこれに限定されない。
【0037】
例えば、図6に示されるように、圧電素子1Aの第1電極5(第2電極7)は、第1層18と、第2層19Aと、から構成されていてもよい。第1層18及び第2層19Aは、圧電素体3側からこの順番で配置されている。第1層18は、NiCrからなる。第2層19Aは、Auからなる。第1層18の厚みT1は、第2層19Aの厚みT2よりも厚い。例えば、厚みT1は、厚みT2の2倍である。
【0038】
圧電素子1Aにおいて、第1電極5Aの表面5Asに設けられた第2領域A2は、第1層18を形成するNiCrと、第2層19Aを形成するAuとの合金からなるの混合部20Aの表面で形成されている。NiCrは、Auよりもはんだの濡れ性が低い。混合部20Aは、例えば、レーザーの照射により形成される。具体的には、一対の側面3e,3fの対向方向に沿ってレーザーを照射する。このとき、レーザーが第1層18の一部及び第2層19Aに到達するように(第1層18の一部を溶融しないように)、第2層19A側からレーザーを照射する。これにより、第1層18のNiCrと第2層19AのAuとがレーザーにより溶融して混合され、合金からなる混合部20Aが形成される。
【0039】
上記実施形態では、第2領域A2が、一対の側面3e,3fの対向方向において、一方の側面3eから他方の側面3fにわたって連続して設けられている形態を一例に説明した。しかし、第2領域の形態はこれに限定されない。例えば、図7に示されるように、圧電素子1Bの第2領域A2は、一対の側面3e,3fの対向方向において、所定の間隔をあけて複数設けられている。第2領域A2は、例えば、レーザーのスポット照射により混合部を形成して設ける。この構成では、複数の第2領域A2におけるはんだS2の表面張力により、はんだS2の濡れ拡がりを抑制できる。したがって、はんだS2の濡れ拡がりに起因する実装不良を抑制できる。
【0040】
上記実施形態では、第1電極5に第1領域A1及び第2領域A2が設けられている形態を一例に説明した。しかし、第1領域A1及び第2領域A2は、第2電極7に設けられてもよい。或いは、図8に示されるように、圧電素子1Cにおいて、第1領域A1及び第2領域A2は、第1電極5及び第2電極7に設けられていてもよい。第2電極7に第2領域A2を設けることにより、はんだS1の這い上がりを抑制できる。第2領域A2は、電極の形状に応じて、はんだの濡れ拡がりを抑制すべき位置に設けられればよい。
【0041】
上記実施形態では、第1電極5及び第2電極7を形成する材料の一例を挙げて説明した。しかし、電極を形成する材料は上記実施形態に記載の材料に限定されない。圧電素子においては、第2領域を形成する材料が、第1領域を形成する材料よりも濡れ性が低ければよい。
【0042】
上記実施形態では、混合部20,20Aをレーザーの照射により形成する形態を一例に説明した。しかし、混合部20,20Aの形成方法は、他の方法であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1,1A,1B,1C…圧電素子、3…圧電素体、3a,3b…主面、3c,3d…端面、3e,3f…側面、5…第1電極、5s,5As…表面、7…第2電極、15,21…第1層、17,23,19A…第2層、19,25…第3層、A1…第1領域、A2…第2領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8