(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844255
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】キャラクターラインを有するパネルの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/10 20060101AFI20210308BHJP
B21D 22/26 20060101ALI20210308BHJP
B21D 37/01 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
B21D22/10 B
B21D22/26 D
B21D37/01
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-255169(P2016-255169)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-103249(P2018-103249A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 栄志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亨
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雅寛
(72)【発明者】
【氏名】中田 匡浩
【審査官】
永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−256348(JP,A)
【文献】
特開平11−277157(JP,A)
【文献】
特表2013−533806(JP,A)
【文献】
特開平11−285742(JP,A)
【文献】
特開2010−036222(JP,A)
【文献】
特開2002−263744(JP,A)
【文献】
特開2008−100240(JP,A)
【文献】
特開2015−096271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/10
B21D 22/26
B21D 37/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチと、前記パンチに対向するダイとを備え、前記パンチと前記ダイとの間に配置されるブランクのプレス加工を行い、少なくとも二つの面により挟まれた稜線から成るキャラクターラインを有する、自動車車体の外板パネルを製造する製造装置であって、
前記パンチの先端部に弾性体が設けられ、
前記弾性体は、前記ブランクが前記ダイと接触して成形される際に該ブランクが前記ダイの表面に沿った形状に変形可能となるような硬さおよび形状を有し、
前記弾性体の材料は、ゴム材料またはウレタン材料であることを特徴とする、キャラクターラインを有するパネルの製造装置。
【請求項2】
前記ブランクから前記弾性体が受ける荷重に応じて該弾性体を前記ダイから離れる方向に移動させる弾性体移動機構が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のキャラクターラインを有するパネルの製造装置。
【請求項3】
パンチと、前記パンチに対向するダイとを用い、前記パンチと前記ダイとの間に配置されるブランクのプレス加工を行うことにより、少なくとも二つの面により挟まれた稜線から成るキャラクターラインを有する、自動車車体の外板パネルを製造する製造方法であって、
前記パンチの先端部に、前記ブランクが前記ダイと接触して成形される際に該ブランクが前記ダイの表面に沿った形状に変形可能となるような硬さおよび形状を有する弾性体を設けてプレス加工を行い、
前記弾性体の材料は、ゴム材料またはウレタン材料であることを特徴とする、キャラクターラインを有するパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャラクターラインを有するパネルの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のエクステリアデザインの高い意匠性を実現するための一つの手段として、例えばドアーアウターパネル、フェンダーパネル、サイドパネル、フードアウターパネル、リアゲートアウター等の車体の外板パネル(以下、“パネル”)にキャラクターラインを設けることが知られている。特に車体の側面に配置されるパネルにキャラクターラインを設けることが多用されるようになっている。
【0003】
しかし、パネルにキャラクターラインを設けると、外板面品質不良である線ずれが発生することが知られている。特に、キャラクターラインがシャープであると線ずれが発生しやすい。なお、キャラクターラインがシャープであるとは、キャラクターラインの稜線の曲率半径が例えば10mm以下と小さいこと、あるいは、稜線を形成する二つの面がなす挟み角度が例えば150°以下と小さいことを意味する。
【0004】
図1(a)および
図1(b)は、従来のパネル製造装置51を用いた場合の線ずれの発生状況を模式的に説明する断面図であり、
図1(a)は成形初期を示し、
図1(b)は成形完了時を示している。キャラクターラインLは、パンチ52、ダイ4、ブランクホルダー3、さらに必要に応じてダイパッド(図示しない)を用いてブランクSに絞り成形または張り出し成形等のプレス加工を行うことで形成されるが、線ずれはキャラクターラインLの成形段階で発生する。具体的に説明すると、まず、
図1(a)に示す成形初期において、パンチ52のキャラクターライン成形用凸部の型当たりによりブランクSに、局部的かつ微小な曲げ部である曲げ癖(
図1中の黒丸印)が不可避的に発生する。ここで生じた曲げ癖は、その後の成形時においてキャラクターラインLを挟む二つの面にかかる張力の差により、
図1(b)の矢印で示すようにキャラクターラインLから傾斜面に沿って外側に移動し、成形完了時にも消失せずに残存する。このように、キャラクターラインLを有するパネルに曲げ癖が残存する現象が線ずれである。
【0005】
線ずれが発生すると、パネルのハイライト面検査において線ずれの発生部でハイライト折れ(外板面品質不良)が発生する原因になると考えられる。一方、特許文献1には、パンチと、第1ダイおよび第2ダイを有する分割ダイと、ブランクホルダーとを用いてキャラクターラインの線ずれを抑制するリヤーサイドアウターパネルのプレス加工方法が開示されている。特許文献1の加工方法は、まず第2ダイおよびパンチによりキャラクターラインを含む部分をプレス加工し、次いで、成形したキャラクターラインを第2ダイおよびパンチにより拘束したまま、第1ダイおよびパンチによりブランクの残りの部分をプレス加工することで、線ずれを抑制しながらキャラクターラインを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−100240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1により開示された発明では、ブランクのキャラクターラインを含む部分をプレス加工した後に、成形箇所を拘束したまま、ブランクの残りの部分をプレス加工するが、そのような状態でプレス加工すると、ブランクの拘束されていない部分にしわが発生する可能性があり、線ずれとは異なる外板面品質不良が生じるおそれがある。特に、三次元的に湾曲する形状のパネルを成形する場合には、しわが発生しやすい。
【0008】
本発明は、従来の技術が有するこの課題に鑑みてなされたものであり、しわ発生を伴うことなく、キャラクターラインを有するパネルの線ずれを抑制、または実質的に解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したように、キャラクターラインを有するパネルの線ずれは、成形初期に型(パンチ)当たりによりブランクに生じた曲げ癖が、その後の成形時にキャラクターラインから傾斜面に沿って外側へ移動することにより発生すると考えられる。このため、線ずれを抑制するには、(i)曲げ癖の発生を抑制すること、(ii)発生した曲げ癖をキャラクターラインの外側へ移動させずに留めること、が有効である。本発明者らは、上記(i)、(ii)について鋭意検討を重ねた結果、以下に列記の知見A〜Cを得て、本発明を完成した。
【0010】
(A)パンチには、成形開始から成形完了までの間に、ブランクに高い面圧を与える高面圧発生部(キャラクターライン成形用凸部)と、高面圧発生部がブランクに与える面圧よりも低い面圧をブランクに与える低面圧発生部とが存在する。その高面圧発生部に、面圧を緩和するための弾性体を設置することにより、パンチとの初期当たりにより生じる曲げ癖の発生を抑制するとともに、発生した曲げ癖がキャラクターラインから移動することを抑制することができる。
【0011】
(B)パンチの高面圧発生部の周辺における、ブランクに対する面圧を緩和する手段である弾性体は例えばゴム材やウレタン材であることが好ましい。
【0012】
(C)線ずれの抑制は、パンチ、ダイ、ブランクホルダーおよび必要に応じてダイパッドを用いる絞り成形または張り出し成形等のプレス加工において実現されるが、その他のプレス加工、例えばパンチ、ダイ、およびダイパッドを用いるパッド曲げ成形によるプレス加工においても実現できる。
【0013】
即ち、上記課題を解決する本発明は、パンチと、前記パンチに対向するダイとを備え、前記パンチと前記ダイとの間に配置されるブランクのプレス加工を行い、少なくとも二つの面により挟まれた稜線から成るキャラクターラインを有する
、自動車車体の外板パネルを製造する製造装置であって、前記パンチの先端部に弾性体が設けられ、前記弾性体は、前記ブランクが前記ダイと接触して成形される際に該ブランクが前記ダイの表面に沿った形状に変形可能となるような硬さおよび形状を有し、前記弾性体の材料は、ゴム材料またはウレタン材料であることを特徴としている。
【0015】
前記ブランクから前記弾性体が受ける荷重に応じて該弾性体を前記ダイから離れる方向に移動させる弾性体移動機構が設けられていても良い。
【0016】
別の観点による本発明は、パンチと、前記パンチに対向するダイとを用い、前記パンチと前記ダイとの間に配置されるブランクのプレス加工を行うことにより、少なくとも二つの面により挟まれた稜線から成るキャラクターラインを有する
、自動車車体の外板パネルを製造する製造方法であって、前記パンチの先端部に、前記ブランクが前記ダイと接触して成形される際に該ブランクが前記ダイの表面に沿った形状に変形可能となるような硬さおよび形状を有する弾性体を設けてプレス加工を行い、前記弾性体の材料は、ゴム材料またはウレタン材料であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
しわ発生を伴うことなく、キャラクターラインを有するパネルの線ずれを抑制、または実質的に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来のプレス加工時における線ずれの発生状況を模式的かつ経時的に説明する断面図であり、
図1(a)は成形初期の状態を示し、
図1(b)は成形完了時の状態を示している。
【
図2】本発明の実施形態に係るパネルの製造装置の概略構成およびその製造装置を用いたプレス加工を経時的に説明するための断面図である。
図2(a)は成形初期の状態を示し、
図2(b)は成形完了時の状態を示している。
【
図3】本発明の実施形態に係るプレス加工時のキャラクターライン成形部の拡大図であり、
図3(a)は成形初期の状態を示し、
図3(b)は成形完了時の状態を示している。
【
図4】本発明の別の実施形態に係るパネルの製造装置の概略構成を示す図である。
【
図5】実施例で成形するパネルの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態において、パネルのキャラクターラインは二つの面で構成されている。また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
図2(a)、
図2(b)に示すように、本実施形態に係るパネルの製造装置1は、パンチ2と、被加工材であるブランクSを支持するブランクホルダー3と、パンチ2およびブランクホルダー3に対向するようにパンチ2およびブランクホルダー3の上方に設けられた可動式のダイ4を備えている。ブランクSは金属製の被加工材であり、鋼板であることが例示されるが、鋼板には限定されず、アルミニウムまたはアルミニウム合金板や、チタンまたはチタン合金板であってもよい。また、プレス加工により得られるパネルとしては、ドアーアウターパネル、フェンダーパネル、サイドパネル、フードアウターパネル、リアゲートアウター等の自動車の車体の外板パネルが例示される。
【0021】
パンチ2の先端部には、キャラクターラインLの形状に合わせて、
図2中の紙面垂直方向に延びるように凹部が形成され、その凹部には弾性体5が設置されている。即ち、本実施形態のパンチ2は、従来のパンチと同様に金属材料で形成された金属部2aと、弾性体5で構成されている。
図3(a)に示すように、弾性体5は金属部2aの先端(上端)からダイ側に向かって突出するように形成され、頂部は略凸形状を有している。換言すると、本実施形態のパンチ2は、金属材料のみでパンチを構成した場合のパンチ先端部の形状に対してダイ側に膨らんだような形状を有している。
【0022】
弾性体5は、
図2(b)に示すような断面視において、キャラクターラインLから200mm以上の範囲、またはパンチ2によるブランクSの面圧が2MPa以上となる範囲に設置することが望ましい。このような範囲に弾性体5を設置することにより、線ずれ発生の抑制効果が向上する。パンチ2に対する弾性体5の固定方法は特に限定されないが、例えばパンチ先端部に設けた凹部のサイズよりも大きな体積を有する弾性体5を溝に押し込み、弾性体5の復元力を利用して固定することとしても良い。
【0023】
弾性体5は、プレス加工時にブランクSの表面に密着するように弾性変形すると共に、ダイ4の下死点において、ブランクSがダイ4の表面に沿った形状に変形できるような適度な硬さを有している。なお、弾性体5の硬さは軟質であるほど成形下死点でのダイ表面へのなつきが良くなるが、弾性体5の硬さが軟らかすぎると、ブランクSを所望に形状に成形することができないおそれがある。このため、弾性体5の硬さは、閉型時にブランクSがダイ4の表面に沿った形状に変形可能なようにブランクSの材料や製品形状に応じて適宜変更されるものである。弾性体5は例えば硬さ(JIS K6253タイプA)が30以上であることが望ましい。
【0024】
本実施形態のパネルの製造装置1は以上のように構成されている。このような製造装置1を用いてキャラクターラインを有するパネルを製造する際には、まずダイ4を下方に移動させ、ダイ4をブランクホルダー3に支持されたブランクSに接触させる。その状態でダイ4を更に下方に移動させると、
図2(a)および
図3(a)に示すようにブランクSがパンチ2の先端部に接触し、ブランクSの曲げ変形が開始される。このとき、本実施形態のパンチ先端部は弾性体5で構成されていることから、ブランクSに弾性体5が接触した際に弾性体5が潰れるように弾性変形し、パンチ先端部からブランクSに入力される荷重が従来構造のパンチを用いた場合に比べて小さくなる。これにより、パンチ2の初期当たりに起因するブランクSの曲げ癖の発生を抑制することができる。
【0025】
その後、ダイ4の下降と共に弾性体5とブランクSとの接触面積が大きくなっていく。上述の通り、弾性体5はブランクSが所望の形状に変形可能なように適度な硬さを有していることから、ブランクSとダイ4の接触時において弾性体5が潰れ過ぎずにダイ4の表面になつくように弾性変形していき、ブランクSがダイ4の表面に沿った形状に変形していく。そして、
図2(b)および
図3(b)に示すようにダイ4の下死点においては、弾性体5がダイ4の表面形状と略同一の形状となるように弾性変形した状態となる。このようなプレス加工においては、パンチ2の高面圧発生部においてキャラクターラインLを挟む2つの面に生じる張力の差が小さくなる。これにより、パンチ2の初期当たりによりブランクSに曲げ癖が生じたとしても、曲げ癖がキャラクターラインLの外側に移動することを抑制することができる。
【0026】
このように、本実施形態のパネルの製造装置1によれば、パンチ2の初期当たりによる曲げ癖の発生を抑制できると共に、発生した曲げ癖がキャラクターラインLから移動することを抑制することができる。即ち、キャラクターライン成形時における線ずれを抑制することができる。また、プレス金型の閉型時にブランク全体が拘束されるため、キャラクターラインLの成形時におけるブランクSのしわの発生を抑制することが可能となる。したがって、本実施形態のパネルの製造装置1によれば、従来よりも外観品質に優れたパネルを製造することができる。
【0027】
また、シャープなキャラクターラインLを成形する場合には線ずれが生じやすくなるが、本実施形態に係るパネルの製造装置1によれば、そのようなシャープなキャラクターラインLを成形する際にも、パンチ2に弾性体5が設けられていることによって線ずれを抑制することができる。換言すると、本実施形態のパネルの製造装置1は、線ずれが生じやすいシャープなキャラクターラインLを成形する際に顕著な効果が表れる。
【0028】
なお、本実施形態では、2つの面に挟まれることで構成されるキャラクターラインLの成形について説明したが、本実施形態のようなプレス加工は3つ以上の面で構成されるキャラクターラインLを成形する場合にも適用できる。また、本実施形態では弾性体5の先端形状を凸形状としたが、これに限定されることはなく、例えば平坦形状であっても良い。弾性体5が平坦形状の場合、キャラクターラインLを成形するダイ4の表面形状と、パンチ先端の形状とが異なることになるが、閉型時には弾性体5がダイ4の表面になつくように弾性変形することから、結果としてパンチ2の先端部が凸形状となり、キャラクターラインLの成形が可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、パンチ2、ダイ4、ブランクホルダー3を用いて絞り成形または張り出し成形等のプレス加工を実施することとしたが、例えばパンチ2、ダイ4、およびダイパッド(図示しない)を用いてパッド曲げ成形を実施しても良い。また、本実施形態ではダイ4を可動式に構成したが、パンチ2を可動式にしても良い。また、パンチ2を上側に、ダイ4を下側に配置した金型構成であっても良い。即ち、パネルの製造装置1は、本実施形態で説明したものに限定されることはなく、パンチ2の先端部に弾性体5が設けられ、キャラクターラインLを成形可能な構成であれば、他の構成であっても良い。
【0030】
例えばプレス加工時において、弾性体5のサイズが大きすぎる場合には、弾性体5がブランクSとパンチ2との間に入り込むことも懸念される。この場合、例えば
図4に示すように弾性体5をダイ4から離れる方向に移動させるクッションシリンダー6を設けるようにしても良い。クッションシリンダー6は弾性体5がブランクSから所定の大きさを超える荷重を受けた際に自動的に弾性体5が下方に移動するように構成されている。これにより、ブランクSとパンチ2との間に余分な弾性体5が入り込むことを抑えることができ、より寸法精度の良いパネルを製造することができる。なお、弾性体5をダイ4から離れる方向に移動させる機構はクッションシリンダー6に限定されない。即ち、プレス加工時にブランクSから受ける荷重に応じて弾性体5をダイ4から離れる方向に移動させる弾性体移動機構が設けられていれば、より寸法精度の良いパネルを製造することができる。また、弾性体移動機構が設けられていれば、キャラクターラインLの形状が異なるパネルを製造する際に弾性体5を援用できる場合があり、その場合にはキャラクターラインLの形状に合わせた専用の弾性体5を用意する必要がなくなる。これにより、弾性体5の作製コストを抑えることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0032】
本発明に係るプレス加工の効果を検討するために、板厚0.7mmで引張り強さが270MPa級のめっき鋼板から成る、幅100mm、長さ300mmのブランクを用いて成形試験を実施した。本発明に係るパネルの製造装置として、パンチの先端部に弾性体を設置したものを用いた。弾性体は、硬さ(JIS K6253タイプA)が40の天然ゴムを使用した。弾性体の先端形状は凸形状とし、弾性体先端部の凸形状部分における変形前の曲率半径は30mmとした。なお、成形後のパネルの断面形状は
図5に示す通りであり、キャラクターラインの曲率半径は5mmである。
【0033】
また、比較例として、同一材料で同一サイズのブランクを用いた成形試験を実施した。上記実施例と比較するために、パンチには工具鋼を用い、パンチ先端の曲率半径は5mmとした。
【0034】
成形試験後、プレス加工により得られた各パネルに対し、キャラクターライン周辺に発生する線ずれの高さを表す曲率の2次微係数のピーク値Hとずれ量Xから官能評価と相関がある線ずれ評価値S=X×|H|
1/3を算出して、線ずれの評価を実施した。本発明に係る製造装置で得られたパネルは、線ずれ評価値が0.16で、目視評価においても線ずれが確認できなかった。比較例のパネルは、線ずれ評価値が0.83で、目視評価においても明確な線ずれが確認できた。即ち、パンチの先端部に弾性体を設けることで、キャラクターラインの成形時における線ずれを抑制することができた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、キャラクターラインを有するパネルの製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 パネルの製造装置
2 パンチ
2a 金属部
3 ブランクホルダー
4 ダイ
5 弾性体
6 クッションシリンダー
51 従来のパネル製造装置
52 従来のパンチ
L キャラクターライン
S ブランク