(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1半導体領域の内部に選択的に設けられ、前記半導体基板の、前記第2半導体領域と前記第4半導体領域との間の部分に接する、前記半導体基板よりも不純物濃度の高い第1導電型の第6半導体領域をさらに備え、
前記第2半導体領域は、前記第6半導体領域の内部に、前記半導体基板の、前記第2半導体領域と前記第4半導体領域との間の部分に接して設けられ、
前記ゲート絶縁膜は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間の前記第6半導体領域に沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記第1半導体領域の内部に選択的に設けられ、前記第5半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第4半導体領域との間の部分に接する、前記第5半導体領域よりも不純物濃度の高い第1導電型の第6半導体領域をさらに備え、
前記第2半導体領域は、前記第6半導体領域の内部に、前記第5半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第4半導体領域との間の部分に接して設けられ、
前記ゲート絶縁膜は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間の前記第6半導体領域に沿って設けられていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
前記半導体基板の、前記第2半導体領域と前記第4半導体領域との間の部分に選択的に設けられた第2導電型の第7半導体領域をさらに備えることを特徴とする請求項1または3に記載の半導体装置。
前記半導体基板の、前記第2半導体領域と前記第4半導体領域との間の部分に選択的に設けられ、前記第6半導体領域に電気的に接続された第2導電型の第7半導体領域をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
前記第5半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第4半導体領域との間の部分に選択的に設けられた第2導電型の第7半導体領域をさらに備えることを特徴とする請求項2または4に記載の半導体装置。
前記第5半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第4半導体領域との間の部分に選択的に設けられ、前記第6半導体領域に電気的に接続された第2導電型の第7半導体領域をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
従来、高耐圧集積回路装置(HVIC:High Voltage Integrated Circuit)では、同一の半導体チップに設けた高電位側(ハイサイド)領域と低電位側(ローサイド)領域とを、これらの領域の間に設けた高耐圧接合終端領域(HVJT:High Voltage Junction Termination region)で電気的に分離する高耐圧接合を利用した素子分離方式が知られている。
【0003】
HVICは、パワーデバイスを駆動するゲートドライバICとして用いられ、HVJTには、HVICのレベルシフト素子として機能する高耐圧のnチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(以下、HVNMOSとする))が配置され、レベルシフト素子を介して高電位領域と低電位領域との間の信号伝達が行われる。
【0004】
また、HVICでは、インターフェイスデバイスであるレベルシフト素子を、当該レベルシフト素子のソースと共通電位COM(主直流電源の負極側の電位)との間に抵抗体またはバイポーラ素子などの素子を接続したソースフォロワ構成とした装置が提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照。)。レベルシフト素子をソースフォロワ構成とすることで、レベルシフト素子の低電流化、高速化、発熱防止(すなわち損失低減)および信号伝達の安定化等を図っている。従来のHVICの回路構成について説明する。
【0005】
図5は、従来のレベルシフト素子を内蔵したHVICの回路構成を示す回路図である。
図6は、
図5のレベルシフト素子の電圧・電流特性を示す特性図である。
図5,6は、下記特許文献1の
図5,6である。
図5に示す従来のHVIC100は、ブリッジ回路120の例えば一相分を形成するIGBT121,122の高電位側(上アーム)のIGBT121を駆動するゲートドライバICである。ブリッジ回路120は、主直流電源の正極側の電位(電源電位)Vdcと、負極側である共通電位COMとの間に、直列に接続されている。
【0006】
符号OUTは、ブリッジ回路120の上アームのIGBT121のエミッタと低電位側(下アーム)のIGBT122のコレクタとの接続点であり、ブリッジ回路120の交流出力端子である。HVNMOS(レベルシフト素子)101,102、負荷抵抗(抵抗体)103,104、定電圧ダイオード105,106、NOT回路107,108、RSフリップフロップ(RS−FF)109、高電位側回路部110および補助直流電源E1は、ブリッジ回路120の上アームのIGBT121を駆動するためのレベルシフト回路である。符号Vcc1は、高電位側の補助直流電源E1の正極ラインの電位(HVIC100の最高電位)である。
【0007】
HVNMOS101は制御回路(不図示)により作られたパルスのオン信号131の入力を受けて導通し、HVNMOS101の導通による負荷抵抗103の電圧降下を信号としてIGBT121がオンされる。HVNMOS102は制御回路で作られたパルスのオフ信号132が入力されて導通し、HVNMOS102の導通による負荷抵抗104の電圧降下を信号としてIGBT121がオフされる。制御回路は、共通電位COMを基準とした低電圧側の補助直流電源E2の正極ラインの電位Vcc2から電流を供給される。
【0008】
レベルシフト回路のうち、2つのHVNMOS101,102は、共通電位COMを基準とした信号を後段(NOT回路107,108)に入力する回路部分となる。HVNMOS101とHVNMOS102、および負荷抵抗103と負荷抵抗104とは通常、それぞれ互いに等しく構成されている。HVNMOS101,102は、ソースと共通電位COMとの間に電流負帰還用の抵抗体(以下、電流帰還抵抗とする)111,112がそれぞれ接続され、ソースフォロア構成になっている。
【0009】
このようにHVNMOS101,102のソースと共通電位COMとの間に電流帰還抵抗111,112を挿入して、HVNMOS101,102をソースフォロア構成にする。かつ、HVNMOS101,102のゲートと共通電位COMとの間に印加する電圧を、HVNMOS101,102の負荷抵抗103,104側電源電圧の最低値を供給する補助直流電源E1よりも低い電圧値に設定する。これによって、HVNMOS101,102のドレイン電流の定電流性が改善されるとともに、電流帰還抵抗111,112での電圧降下を小さく抑えることができる。
【0010】
電流帰還抵抗111,112での電圧降下を小さく抑えることで、HVNMOS101,102のドレイン・ソース間電圧の値に依らず、HVNMOS101,102のドレイン電流が小さくなり、かつHVNMOS101,102のドレイン電流の変動が小さくなる。このため、HVIC100の内部電位の高電位側への変動および低電位側への変動に依らず、負荷抵抗103,104の電圧降下を適切に保って、安定した信号伝達を行うことができる。また、レベルシフト回路の消費電力を削減することができる。
【0011】
図5に示すHVIC100のレベルシフト回路の動作について、
図6を参照して説明する。
図6の符号141は、HVNMOS101,102単独でのドレイン・ソース間電圧V
DSとドレイン電流I
Dとの関係を示している。
図6の符号142は、HVNMOS101,102のソースと共通電位COMとの間に電流帰還抵抗111,112を挿入した場合の、HVNMOS101,102単独でのドレイン・ソース間電圧V
DSとドレイン電流I
Dとの関係を示している。
【0012】
HVIC100では、MOSFET101,102がそれぞれオン信号131およびオフ信号132の入力によって導通したとき、ドレイン電流I
Dによる電流帰還抵抗111,112での電圧降下により、HVNMOS101,102のゲート・ソース間電圧が減少する。電流帰還抵抗111,112の電圧降下はゲート電圧(定電圧ダイオード113,114のツェナー電圧)からHVNMOS101,102のゲートしきい値電圧を減算した電圧値を超えないため、MOSFET101,102のドレイン電流I
Dに負帰還がかかる。
【0013】
MOSFET101,102のドレイン電流I
Dに負帰還がかかることで、
図6に示すように定電流領域が広い電圧・電流特性142となる。このため、交流出力端子OUTの電位が共通電位COMに近い場合に負荷抵抗103または負荷抵抗104の負荷直線143で決定されるドレイン電流I
Lと、交流出力端子OUTの電位がブリッジ回路120の電源電位Vdcに近い場合に負荷抵抗103または負荷抵抗104の負荷直線144で決定されるドレイン電流I
Hと、の差が小さくなり、レベルシフト回路の損失の増加が防止される。
【0014】
図7は、従来のレベルシフト素子を内蔵したHVICの別の一例の回路構成を示す回路図である。
図7は、引用文献2の
図3である。
図7に示すHVIC150は、nチャネルMOSFET151、カレントミラー回路152および高電位側回路部153を備える。nチャネルMOSFET151は、内部ノード154と共通電位COMの間に接続されている。カレントミラー回路152は、電流供給部155,156から供給される電流に応じた電流を流す。
【0015】
高電位側回路部153は、カレントミラー回路152を流れる電流に応じた電圧信号を発生させて、上アームのIGBT121のゲート駆動信号を生成する。カレントミラー回路152は、HVNMOS157およびバイポーラトランジスタ158,159を備える。HVNMOS157は、ゲートが内部ノード154に接続され、ドレインが交流出力端子OUTに接続されている。また、HVNMOS157は、ソースと共通電位COMとの間にバイポーラトランジスタ158が接続され、ソースフォロワ構成になっている。
【0016】
HVNMOS157は、ゲート電圧よりもドレイン電圧が高くなり、ソースフォロワモードで動作し、高電圧がバイポーラトランジスタ158,159へ供給されるのを防止する。また、HVNMOS157は、電流供給部155,156から供給される電流Irに等しい電流を高電位側回路部153から引き抜くレベルシフト素子である。符号HINは上アームのIGBT121のオン・オフを制御するパルス信号である。符号LINは、下アームのIGBT122のオン・オフを制御するパルス信号である。
【0017】
これら
図5,7に示すHVIC100,150のように、レベルシフト素子であるHVNMOSをソースフォロア構成とすることで、HVNMOSのソースと共通電位COMとの間に何も接続しない場合と比べて、HVNMOSの飽和電流(ドレイン電流)を小さくし、かつ定電流化することができる。このため、プロセスばらつき(例えばゲート絶縁膜の厚さのばらつきなど)によるHVNMOSの飽和電流のばらつきも抑制され、安定したレベルシフト動作が可能となる。
【0018】
HVICの別の一例として、HVICチップの内部寄生ダイオードのアノードと共通電位COMとの間に当該内部寄生ダイオードに直列に抵抗体を接続した装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。下記特許文献3では、ブリッジ回路の上アームのIGBTと下アームのIGBTとの接続点の電位が負電位になりすぎたときに、HVICチップの内部寄生ダイオードの順方向電流を抵抗体で抑制して、HVICチップを保護している。この抵抗体は、HVICチップ上に絶縁層を介して設けられたポリシリコン層で構成される。
【0019】
従来のHVIC100の構造およびHVNMOS101,102の構造について、
図8,9を参照して説明する。
図8は、従来の半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。平面レイアウトとは、半導体基板(半導体チップ)160のおもて面側から見た各部の平面形状および配置構成である。
図9は、
図8の矩形枠AAにおける断面構造を示す斜視図である。
図9には、
図8の高電位側回路部のセット(set)用のレベルシフト回路を構成するHVNMOS101を示す。
【0020】
図8に示す従来の半導体装置は、同一の半導体基板160上に高電位側領域171および低電位側領域172を備え、これらの領域をHVJT173で電気的に分離したHVIC100である。p
--型の半導体基板160のおもて面の表面層には、n
-型拡散領域162およびp
-型分離領域164がそれぞれ選択的に設けられている(
図9参照)。p
-型分離領域164は、拡散領域である。以下、p
--型の半導体基板160の、n
-型拡散領域162およびp
-型分離領域164以外の部分をp
--型基板領域161とする。
【0021】
高電位側領域171は、n
-型拡散領域162の内部に略矩形状の平面レイアウトに配置されたn型拡散領域163で構成される。p
-型分離領域164は、n
-型拡散領域162およびp
--型基板領域161に接し、かつn
-型拡散領域162の周囲を囲む環状の平面レイアウトに配置されている。p
-型分離領域164とn
-型拡散領域162とのpn接合で形成される寄生ダイオードでHVJT173が構成される。p
-型分離領域164の内部には、n
-型拡散領域162の周囲を囲む環状の平面レイアウトにp
+型コンタクト領域165が選択的に配置されている。
【0022】
p
+型コンタクト領域165は、共通電位COMの電極パッド(以下、COM電極パッドとする)191に電気的に接続され、p
-型分離領域164およびp
--型基板領域161を共通電位COMに固定する。低電位側領域172は、p
--型基板領域161に選択的に設けられたn型拡散領域166で構成される。n型拡散領域166は、p
-型分離領域164に対してn型拡散領域163の反対側に配置され、p
-型分離領域164によりn型拡散領域163と電気的に絶縁されている。
【0023】
HVIC100の高電位側回路部のセット用およびリセット(reset)用のレベルシフト回路を構成するHVNMOS101,102は、HVJT173に配置されている。
図9に示すように、HVNMOS101は、バックゲートとなるp型拡散領域(以下、p型バックゲート領域とする)181、n
+型ソース領域182、p
+型コンタクト領域183、n
+型ドレイン領域184およびゲート電極185を備える。p型バックゲート領域181およびn
+型ドレイン領域184は、n
-型拡散領域162の内部にそれぞれ選択的に設けられている。p型バックゲート領域181の深さは、n
-型拡散領域162の深さよりも浅い。
【0024】
p型バックゲート領域181は、p
-型分離領域164と離して、p
-型分離領域164よりもn型拡散領域163側に配置される。n
+型ドレイン領域184は、p型バックゲート領域181と離して、p型バックゲート領域181よりもn型拡散領域163側に配置される。n
+型ソース領域182およびp
+型コンタクト領域183は、p型バックゲート領域181の内部に選択的に設けられている。n
+型ソース領域182およびp
+型コンタクト領域183は、抵抗体R
SFを介してCOM電極パッド191に電気的に接続されている。抵抗体R
SFは、
図5の電流帰還抵抗111に相当する。
【0025】
HVNMOS101のp型バックゲート領域181およびn
+型ソース領域182と、共通電位COMに固定された領域(p
--型基板領域161およびp
-型分離領域164)と、はn
-型拡散領域162によって電気的に分離される。これによって、HVNMOS101のソース電位と、共通電位COMと、が電気的に分離される。かつ、これらn
-型拡散領域162で電気的に分離された領域間に抵抗体(以下、ソースフォロワ抵抗とする)R
SF等の抵抗素子が接続される。これによって、HVNMOS101がソースフォロワ構成となっている。HVNMOS102の構成は、HVNMOS101と同様である。
【0026】
p型バックゲート領域181が共通電位COMに固定された領域と電気的に分離されることで、p型バックゲート領域181の電位を共通電位COM以外の電位に固定することが可能となる。また、ブリッジ回路を構成するIGBT121,122のスイッチングによりHVNMOS101のドレインが数百ボルトの高電圧に持ち上がったとしても、n
-型拡散領域162の、p型バックゲート領域181とp
--型基板領域161とに挟まれた部分が空乏化し耐圧が確保される。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の構造について、
図1,2A,5を参照して説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。平面レイアウトとは、半導体基板(半導体チップ)10のおもて面側から見た各部の平面形状および配置構成である。
図2Aは、
図1の矩形枠Aにおける断面構造を示す斜視図である。
図2Aには、
図1の高電位側回路部のセット(set)用のレベルシフト回路を構成するHVNMOS21を示す。
【0050】
図1,2Aに示す実施の形態1にかかる半導体装置は、同一の半導体基板10上に高電位側領域11および低電位側領域12を備え、これらの領域を高耐圧接合終端領域(HVJT)13で電気的に分離した高耐圧集積回路装置(HVIC)20である。HVIC20は、例えば、電力変換用のブリッジ回路120の一相分を構成するIGBT121,122のうちの上アーム(高電位側)のIGBT121を駆動するゲートドライバICである。
【0051】
実施の形態1にかかる半導体装置を適用した回路構成例は、
図5に示す回路構成のHVIC100およびHVNMOS101,102に代えて、
図1,2AのHVIC20およびHVNMOS21,22を適用したものである。すなわち、実施の形態1にかかる半導体装置を適用した例えば電力変換装置は、
図5の符号100〜102をそれぞれ符号20〜22とした回路構成を有する。ブリッジ回路120を構成するスイッチング素子として、IGBT21,22に代えて、直列接続された2つのMOSFETを用いてもよい。
【0052】
p
--型の半導体基板10には、n
-型拡散領域(第1半導体領域)2およびp
-型分離領域(第5半導体領域)4がそれぞれ選択的に配置され自己分離構造が形成されている。p
-型分離領域4は、p
-型拡散領域である。以下、p
--型の半導体基板10の、拡散領域2,4が形成されていない部分をp
--型基板領域1とする。
図2Aでは、p
--型基板領域1を「p
--sub」と図示する(
図2B〜2Eにおいても同様)。半導体基板10は、例えば略矩形状の平面形状を有する。n
-型拡散領域2は、例えば略矩形状の平面レイアウトに配置されている。
【0053】
n
-型拡散領域2には、例えば略矩形状の平面レイアウトにn型拡散領域3が配置されている。p
-型分離領域4は、n
-型拡散領域2およびp
--型基板領域1に接し、かつn
-型拡散領域2の周囲を囲む環状の平面レイアウトに配置されている。
図1には、p
-型分離領域4が略矩形状の平面レイアウトでn
-型拡散領域2の周囲を囲んだ状態を示す。n
-型拡散領域2、p
-型分離領域4およびp
--型基板領域1は、n型拡散領域3の周囲を略同心円状に囲む平面レイアウトに配置されている。
【0054】
以降、半導体基板10のおもて面(拡散領域2〜4,6側の面)に平行な方向に、n型拡散領域3側を内側(チップ内側)とし、n型拡散領域3側に対して反対側を外側(チップ外側)とする。p
--型基板領域1には、p
-型分離領域4よりも外側に、例えば略矩形状の平面レイアウトにn型拡散領域6が配置されている。n型拡散領域6は、p
-型分離領域4に接していてもよい。拡散領域とは、半導体基板10にイオン注入等により不純物を導入することで形成された領域である。
【0055】
図1には、半導体基板10のおもて面の表面層のn
-型拡散領域2以外の部分全体にp
-型分離領域4が配置されていてもよい(すなわち、
図1のp
--型基板領域1の部分をp
-型分離領域4とした状態)。この場合、n型拡散領域6は、p
-型分離領域4の、後述するp
+型共通電位領域(第4半導体領域)5よりも外側に配置される。p
--型基板領域1は、半導体基板10の裏面の表面層(後述する基板裏面側のp型領域1a:
図2参照)のみとなる。
【0056】
p
-型分離領域4に代えて後述するようにp
--型基板領域1を半導体基板10のおもて面に露出させてもよいが(
図2C参照)、p
-型分離領域4を設けることで正電荷に対する耐性が高くなる。その理由は、p
-型分離領域4を配置した部分で半導体基板10のおもて面側のp型不純物濃度が高くなるため、層間絶縁膜に堆積した正電荷の悪影響を受けにくく、半導体基板10のおもて面側がn型に反転しにくくなるからである。
【0057】
高電位側領域11は、その周囲をHVJT13で囲まれており、高電位側の補助直流電源E1の正極ラインの電位(以下、高電位側電源電位とする:HVIC20の最高電位)Vcc1や高電位側回路部110の基準電位VSが数百Vの高電位になったとしても(
図5参照)、HVJT13により低電位側領域12と電気的に分離される。高電位側回路部110の基準電位VSは、上アームのIGBT121と下アームのIGBT122との接続点123の電位である。高電位側領域11は、n型拡散領域3で構成される。
【0058】
n型拡散領域3は、高電位側電源電位Vcc1に電気的に接続されている。n型拡散領域3には、例えば高電位側回路部110が配置される。高電位側回路部110は、高電位側電源電位Vcc1を電源電位とし、基準電位VSで動作し、低電位側回路部115からの信号に基づいてブリッジ回路120の交流出力端子OUTから出力される信号を生成する例えばCMOS(Complementary MOS:相補型MOS)回路である。
【0059】
HVJT13は、p
-型分離領域4とn
-型拡散領域2とのpn接合で形成される寄生ダイオードで構成される耐圧領域である。n
-型拡散領域2には、HVIC20の高電位側回路部のセット用およびリセット(reset)用のレベルシフト回路を構成するHVNMOS21,22が配置されている。HVNMOS21,22は、共通電位COMを基準とした信号をブリッジ回路120の電源電位Vdcを基準とした信号に変換するレベルシフト素子である。共通電位COMは、ブリッジ回路120の主直流電源およびHVIC20の補助直流電源E1,E2の負極側の電位であり、例えば接地電位であってもよい。HVNMOS21,22は、例えば高電位側領域11を中心として点対称に配置されることが好ましい。
【0060】
p
-型分離領域4の内部には、n
-型拡散領域2と離して、p
+型コンタクト領域(以下、p
+型共通電位領域とする)5が選択的に配置されている。p
+型共通電位領域5は、p
-型分離領域4を共通電位COMに固定する。p
+型共通電位領域5は、内側から外側へ向かう方向(p
-型分離領域4の径方向D)にHVNMOS21,22に対向しない位置に配置される。
【0061】
また、p
+型共通電位領域5は、HVNMOS21,22の後述するp型バックゲート領域31およびソースコンタクト領域36との間で所定の抵抗値の拡散抵抗(抵抗体)R’が得られる距離X1で当該p型バックゲート領域31およびソースコンタクト領域36と離して配置されている。
【0062】
例えば、HVNMOS21,22が、略矩形状のp
-型分離領域4の1組の対辺4a,4bにそれぞれ対向する位置に配置されているとする。この場合、p
+型共通電位領域5は、p
-型分離領域4の他の1組の対辺4c,4dに、p
-型分離領域4の周方向Rに沿って配置される。p
+型共通電位領域5は、p
-型分離領域4の当該1組の対辺4c,4dからもう1組の対辺4a,4bに延在する略U字状または略C字状の平面レイアウトに配置されてもよい。
【0063】
低電位側領域12は、n型拡散領域6で構成される。n型拡散領域6は、低電位側回路部115の最高電位(低電圧側の補助直流電源E2の正極ラインの電位Vcc2:
図5参照)に電気的に接続されている。低電位側領域12には、図示省略する内部回路(低電位側回路部115)などが配置される。低電位側回路部115は、例えば、共通電位COMを基準電位として動作し、HVNMOS21,22を駆動するCMOS回路である。
【0064】
次に、セット用およびリセット用のレベルシフト回路を構成するHVNMOS21,22の構成について、
図2Aを参照して説明する。
図2Aには、略矩形状の平面レイアウトを有するp
-型分離領域4の4辺4a〜4dのうちの1辺4aの一部(HVNMOS21が配置された部分:
図1の矩形枠A)を示す。
【0065】
HVNMOS21のソース・ドレイン間には、HVNMOS21のオン時に例えば10V程度の電圧が印加される。HVNMOS22のソース・ドレイン間には、HVNMOS22のオン時に例えば最大600V程度の電圧が印加される。ここでは、HVNMOS21の構成について説明するが、HVNMOS22の構成はHVNMOS21と同様である。
【0066】
HVNMOS21は、バックゲートとなるp型拡散領域(p型バックゲート領域:第6半導体領域)31、n
+型ソース領域(第2半導体領域)32、p
+型コンタクト領域33、n
+型ドレイン領域(第3半導体領域)34およびゲート電極35を備えた高耐圧(例えば600V以上)の横型のnチャネル型MOSFETである。p型バックゲート領域31およびn
+型ドレイン領域34は、n
-型拡散領域2の、基板おもて面側の表面層にそれぞれ選択的に設けられている。
【0067】
p型バックゲート領域31は、n型拡散領域3(すなわち高電位側領域11:
図1参照)の周囲を囲む環状の平面レイアウトに配置されていてもよい。p型バックゲート領域31をn型拡散領域3の周囲を囲む環状の平面レイアウトに配置した場合、p型バックゲート領域31およびp
-型分離領域4とn
-型拡散領域2とのpn接合で寄生ダイオードが形成され、当該寄生ダイオードでHVJT13が構成される。
【0068】
また、p型バックゲート領域31は、基板裏面側のp型領域1aに達していてもよい。基板裏面側のp型領域1aとは、半導体基板10のおもて面から拡散領域2,4,6よりも深さ方向Zに深い部分に、これらの領域が形成されないことでp
--型基板領域1として残っている部分(半導体基板10の裏面の表面層)である。深さ方向Zとは、半導体基板10のおもて面から裏面に向かう方向である。
【0069】
基板裏面側のp型領域1aの比抵抗は、HVNMOS21のオン時に、基板裏面側のp型領域1aとn
-型拡散領域2とのpn接合から伸びる空乏層を、基板裏面側のp型領域1aに深く広げることができる程度に高くする。すなわち、基板裏面側のp型領域1a側に伸びる空乏層の体積を増やしてHVNMOS21の耐圧(耐電圧)を確保する。耐圧とは、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。基板裏面側のp型領域1aの比抵抗は、例えば100Ωcm程度であってもよい。
【0070】
n
+型ドレイン領域34は、p型バックゲート領域31よりも内側に、p型バックゲート領域31と離して配置されている。n
+型ソース領域32およびp
+型コンタクト領域33は、p型バックゲート領域31の内部にそれぞれ選択的に設けられ、互いに接する。n
+型ソース領域32とp型バックゲート領域31とは、p
+型コンタクト領域33を介して短絡されている。
【0071】
n
+型ソース領域32とp型バックゲート領域31とが短絡されていることで、基板おもて面に平行な方向に基板おもて面に沿って形成されるn
+型ソース領域32、p型バックゲート領域31およびn
-型拡散領域2からなるnpn寄生バイポーラトランジスタ(以下、横方向のnpn寄生バイポーラトランジスタとする)が動作することが抑制される。このため、当該横方向のnpn寄生バイポーラトランジスタによる素子破壊が生じることを防止することができる。
【0072】
n
+型ソース領域32およびp
+型コンタクト領域33は、例えばp
-型分離領域4の周方向Rに交互に繰り返し配置されていてもよい。以下、p
-型分離領域4の周方向Rに交互に繰り返し配置された1組以上のn
+型ソース領域32およびp
+型コンタクト領域33をまとめてソースコンタクト領域36とする。ソースコンタクト領域36の端部36a,36bは、n
+型ソース領域32およびp
+型コンタクト領域33のいずれであってもよい。
【0073】
ソースコンタクト領域36は、抵抗体(ソースフォロワ抵抗)R
SFを介して共通電位COMの電極パッド(COM電極パッド)41に電気的に接続されている。すなわち、HVNMOS21はソースフォロワ構成となっている。ソースフォロワ抵抗R
SFは、
図5の電流帰還抵抗111に相当する。ソースフォロワ抵抗R
SFは、HVNMOS21のオン時に電圧降下して、HVNMOS21のドレイン電流を小さくする機能を有する。
【0074】
ソースフォロワ抵抗R
SFは、例えば、半導体基板10のおもて面上に絶縁層(不図示)を介して設けられたポリシリコン(poly−Si)層などの抵抗素子で構成される。ソースフォロワ抵抗R
SFをポリシリコン層で構成する場合、例えば、ソースフォロワ抵抗R
SFと半導体基板10とを絶縁する絶縁層のコンタクトホールを介して、当該ポリシリコン層一方の端部がソースコンタクト領域36に接続され、他方の端部がCOM電極パッド41に接続される。ソースフォロワ抵抗R
SFの抵抗値は、例えば1kΩ程度であってもよい。
【0075】
n
-型拡散領域2の、p型バックゲート領域31とn
+型ドレイン領域34とに挟まれた部分がHVNMOS21のn
-型ドリフト領域として機能する。p型バックゲート領域31の、n
-型ドリフト領域とn
+型ソース領域32とに挟まれた部分の表面上には、ゲート絶縁膜(不図示)を介してゲート電極35が設けられている。n
+型ドレイン領域34は、ドレイン電極(不図示)に電気的に接続されている。
【0076】
p
-型分離領域4は、HVNMOS21のp型バックゲート領域31よりも外側に配置されている。p
-型分離領域4は、HVNMOS21のp型バックゲート領域31、n
+型ソース領域32およびp
+型コンタクト領域33に接し、これらの領域に電気的に接続されている。また、p
-型分離領域4は、p
--型基板領域1に接し、p
--型基板領域1に電気的に接続されている。p
-型分離領域4の内部には、p
+型共通電位領域5が選択的に設けられている。
【0077】
p
+型共通電位領域5は、HVJT13に形成される寄生ダイオードのアノードコンタクト領域として機能する。p
+型共通電位領域5は、p
-型分離領域4の径方向DにHVNMOS21のn
+型ソース領域32およびp
+型コンタクト領域33に対向する位置には配置されていない。p
+型共通電位領域5は、COM電極パッド41に電気的に接続され、p
-型分離領域4およびp
--型基板領域1を共通電位COMに固定する。
【0078】
また、p
+型共通電位領域5は、HVNMOS21のp型バックゲート領域31およびソースコンタクト領域36との間に挟まれた部分で所定の抵抗値の拡散抵抗R’が得られるように、所定の距離X1で当該p型バックゲート領域31およびソースコンタクト領域36と離して配置される。すなわち、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のp型バックゲート領域31およびソースコンタクト領域36とは、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のp型バックゲート領域31およびソースコンタクト領域36との間の拡散抵抗R’(または後述する基板抵抗:
図2C,2D参照)を介して電気的に接続されている。
【0079】
p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のp型バックゲート領域31およびソースコンタクト領域36とを上記拡散抵抗R’ (または基板抵抗)を介して接続することで、p型バックゲート領域31とp
--型基板領域1(基板裏面側のp型領域1a)との間に電位差が生じる。このため、HVNMOS21のソース電位と、共通電位COMと、を電気的に分離することができる。p型バックゲート領域31とp
--型基板領域1との間の電位差は、ソースコンタクト領域36の両端部36a,36bに形成される各拡散抵抗R’の合成抵抗で調整される。
【0080】
また、p型バックゲート領域31はp
-型分離領域4を介してp
--型基板領域1に短絡(または後述するようにp
--型基板領域1に直接短絡:
図2C,2D参照)しているため、半導体基板10内に寄生構造が形成されない。このため、HVNMOS21のn
+型ソース領域32と共通電位COMとの間のインピーダンスが極端に低くなることを防止することができる。したがって、ソースフォロワ構成によるHVNMOS21の電流制御効果(ドレイン電流安定化)が安定して得られる。
【0081】
拡散抵抗R’およびソースフォロワ抵抗R
SFは、COM電極パッド41とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との間に並列に接続されている。この場合、HVNMOS21,22のドレイン電流の安定化と(ソースフォロワ抵抗R
SFで実現)と、寄生動作の防止(拡散抵抗R’で実現)と、をそれぞれ異なる抵抗体で実現することができる。したがって、ソースフォロワ抵抗R
SFの抵抗値のばらつきや、ノイズ(変位電流)によるソースフォロワ抵抗R
SFの抵抗値変動を小さくすることができる。
【0082】
また、拡散抵抗R’とソースフォロワ抵抗R
SFとを並列に接続する場合、拡散抵抗R’は、ソースフォロワ抵抗R
SFよりも抵抗値を高くし、数十kΩ(例えば1kΩ〜10kΩ)程度に高抵抗化する。具体的には、例えば、p
+型共通電位領域5と、ソースコンタクト領域36のp
-型分離領域4の周方向Rにおける端部36a,36bと、の最短距離X1は、例えば5μm以上100μm以下程度とする。かつp
-型分離領域4の不純物濃度は、例えば1×10
13/cm
3程度とすればよい。
【0083】
また、p型バックゲート領域31をn型拡散領域3の周囲を囲む環状の平面レイアウトに配置した場合、拡散抵抗R’は、p
-型分離領域4およびp型バックゲート領域31の合成抵抗となる。また、ソースフォロワ抵抗R
SFを設けずに、拡散抵抗R’自体をソースフォロワ抵抗として用いてもよい。この場合、拡散抵抗R’は、ゲート・ソース間への印加電圧(例えば5V程度)からHVNMOS21のゲート閾値電圧を減算した電圧値(=3V〜4V程度)以下の電圧降下を生じさせる抵抗値とすることが好ましい。
【0084】
次に、HVNMOS21の変形例について説明する。
図2B〜2Fは、実施の形態1にかかる半導体装置の変形例の構造を示す斜視図である。
図2B〜2Fには、
図1の矩形枠Aにおける断面構造を示す。
図2B〜2Fに示すHVNMOS21が
図2Aに示すHVNMOS21と異なる点は、次の通りである。
【0085】
図2Bに示すように、HVNMOS21のp型バックゲート領域として、p
-型分離領域4を用いてもよい。この場合、p
-型分離領域4に、HVNMOS21のn
+型ソース領域32およびp
+型コンタクト領域33が配置される。HVNMOS21の一部をp
-型分離領域4に配置する分だけ、
図2Aの場合よりもp
-型分離領域4の幅を広くしてもよい。ゲート電極35は、p
-型分離領域4の、n
-型ドリフト領域とn
+型ソース領域32とに挟まれた部分の表面上にゲート絶縁膜(不図示)を介して設けられる。
【0086】
また、
図2Cに示すように、n
-型拡散領域2とn型拡散領域6(
図1参照)との間に基板裏面側のp型領域1aから基板おもて面に露出するようにスリット状に残したp
--型基板領域1で、p
-型分離領域を構成してもよい。この場合、p
--型基板領域1とn
-型拡散領域2とのpn接合で形成される寄生ダイオードでHVJT13が構成される。HVNMOS21のp型バックゲート領域31は、p
--型基板領域1とn
-型拡散領域2との境界に跨って設けられる。p
+型共通電位領域5は、基板おもて面に露出するようにスリット状に残るp
--型基板領域1に
図2Aと同様の構成で配置される。
【0087】
また、
図2Cに示すHVNMOS21に
図2Bに示すHVNMOS21を適用してもよい(
図2D参照)。すなわち、基板おもて面に露出するようにスリット状に残るp
--型基板領域1で構成したp
-型分離領域(
図2C参照)を、HVNMOS21のp型バックゲート領域として用いてもよい。この場合、基板おもて面に露出するようにスリット状に残るp
--型基板領域1に、HVNMOS21のn
+型ソース領域32およびp
+型コンタクト領域33が配置される。ゲート電極35は、p
--型基板領域1の、n
-型ドリフト領域とn
+型ソース領域32とに挟まれた部分の表面上にゲート絶縁膜(不図示)を介して設けられる。
【0088】
図2C,2Dのようにp
-型分離領域をp
--型基板領域1で構成する場合、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との間におけるp
--型基板領域1の基板抵抗により、寄生動作を防止する効果が得られる。
【0089】
また、
図2Eに示すように、n
-型拡散領域2に代えて、n
-型エピタキシャル層52を設けてもよい。この場合、例えば、p
--型支持基板51上にn
-型エピタキシャル層52をエピタキシャル成長させたエピタキシャル基板50が用いられる。
図2Eには、p
--型支持基板51を「p
--sub」と図示し、n
-型エピタキシャル層52を「n
-エピ」と図示する。このエピタキシャル基板50に、n
-型エピタキシャル層52を深さ方向Zに貫通してp
--型支持基板51に達するp
-型分離領域4が略環状の平面レイアウトに配置される。n
-型エピタキシャル層52の、p
-型分離領域4よりも内側に、高電位側領域11を構成するn型拡散領域(不図示:
図1の符号3)が配置される。n
-型エピタキシャル層52の、p
-型分離領域4よりも外側の部分で低電位側領域12が構成される。n
-型エピタキシャル層52には、
図2Aと同様の構成でHVNMOS21の各部が配置される。
【0090】
また、
図2Fに示すように、p
-型分離領域4に代えて、p
-型エピタキシャル層53を設けてもよい。
図2Fには、p
-型エピタキシャル層53を「p
-エピ」と図示する。この場合、例えば、p
--型支持基板51上にp
-型エピタキシャル層53をエピタキシャル成長させたエピタキシャル基板50が用いられる。このエピタキシャル基板50に、p
-型エピタキシャル層53を深さ方向Zに貫通してp
--型支持基板51に達するn
-型拡散領域2が略矩形状の平面レイアウトに配置される。このn
-型拡散領域2には、高電位側領域11を構成するn型拡散領域(不図示:
図1の符号3)と、
図2Aと同様の構成でHVNMOS21の各部と、が配置される。p
-型エピタキシャル層53の内部には、
図2Aと同様の構成でp
+型共通電位領域5が配置される。p
-型エピタキシャル層53の、p
+型共通電位領域5よりも外側に、低電位側領域12を構成するn型拡散領域(不図示:
図1の符号6)が配置される。
【0091】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、セット用およびリセット用のレベルシフト回路を構成する各HVNMOS(レベルシフト素子)をソースフォロワ構成とすることで、これら2つのHVNMOSのドレイン電流の定電流性が改善され(
図6の電圧・電流特性142が得られ)、伝達遅延時間差を小さくすることを防止することができる。また、HVNMOS(レベルシフト素子)をソースフォロワ構成とすることで、ドレイン電流を抑制することができるため、高速スイッチングによる発熱を抑制する(熱損失を低減させる)ことができ、高周波化が可能となる。
【0092】
また、実施の形態1によれば、p
+型共通電位領域を、HVNMOSのp型バックゲート領域およびソースコンタクト領域と所定距離で離して配置する。このため、p
+型共通電位領域とHVNMOSのp型バックゲート領域およびソースコンタクト領域とは、当該p
+型共通電位領域とHVNMOSのp型バックゲート領域およびソースコンタクト領域との間の拡散抵抗(または基板抵抗)を介して電気的に接続される。これにより、HVNMOSのソース電位と共通電位とを電気的に分離することができ、HVNMOSを動作させることができる。
【0093】
また、実施の形態1によれば、HVNMOSのp型バックゲート領域とp
--型基板領域とが短絡されるため、自己分離構造やpn接合分離構造で素子分離した半導体基板であっても、半導体基板内に寄生構造が形成されない。このため、ソースフォロワ構成によるHVNMOSの電流制御効果(ドレイン電流安定化)が安定して得られる。したがって、HVNMOSを備えたレベルシフト回路において、安定したレベルシフト動作を行うことができる。
【0094】
また、実施の形態1によれば、自己分離構造やpn接合分離構造で素子分離した半導体基板であっても、半導体基板内に寄生構造が形成されないため、FZ(Floating Zone:浮遊帯)法やCZ(Czochralski:チョクラルスキー)法、エピタキシャル成長法等で製造された安価な半導体基板を用いることができる。これにより、シリコン基板内に厚い絶縁層を埋め込んだSOI(Silicon on Insulator)基板等の高価な半導体基板を用いる必要がないため、コストを低減させることができる。
【0095】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の構造について説明する。
図3は、実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す斜視図である。実施の形態2にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、p
-型分離領域4にn型拡散領域(第7半導体領域)61を配置し、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との間の拡散抵抗R’を高抵抗化した点である。図示省略するが、実施の形態2においても、HVNMOS22の構成はHVNMOS21と同様である。
【0096】
n型拡散領域61は、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との間において、p
-型分離領域4の、基板おもて面側の表面層に選択的に設けられている。p
-型分離領域4の、n型拡散領域61との界面付近の部分のシート抵抗で、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との間の拡散抵抗R’の抵抗値が決まる。p
-型分離領域4にn型拡散領域61を設けることで、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との間の拡散抵抗R’が高抵抗化される。その理由は、次の通りである。
【0097】
p
-型分離領域4は、例えばイオン注入等で導入したp型不純物を拡散させることで形成される。このため、p
-型分離領域4の不純物濃度分布は、ガウス分布に基づいて半導体基板10のおもて面付近で最も高く、かつ深さ方向Zに向かうにしたがって低くなっている。したがって、p
-型分離領域4の、基板おもて面側の表面層に例えばイオン注入等でn型不純物を導入して拡散させてn型拡散領域61を形成することで、p
-型分離領域4の、基板おもて面側の実効的なp型不純物濃度が低くなり、p
-型分離領域4の基板おもて面側のシート抵抗が高くなるからである。
【0098】
p
-型分離領域4の導電型が反転しない程度に、p
-型分離領域4の、基板おもて面側の表面層にn型不純物が導入されている場合においても、p
-型分離領域4の基板おもて面側のシート抵抗を高くすることができる。すなわち、n型拡散領域61に代えて、p
-型分離領域4にn型不純物を導入してなる、p
-型分離領域4よりも不純物濃度の低いp
--型拡散領域が設けられていてもよい。この場合、p
-型分離領域4の不純物濃度は、例えば1×10
13/cm
3程度であり、当該p
--型拡散領域の不純物濃度は例えば6×10
12/cm
3程度である。
【0099】
また、後述するようにp
-型分離領域4がp
-型エピタキシャル層で構成されている場合(
図2E参照)においても、p
-型分離領域4にn型拡散領域61を設けることで、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との間の拡散抵抗R’が高抵抗化される。その理由は、p
-型分離領域4にn型拡散領域61を設けることで、p
-型分離領域4の体積が小さくなり、p
-型分離領域4およびn型拡散領域61の単位体積当たりのp型不純物濃度が高くなるからである。
【0100】
このようにp
-型分離領域4にn型拡散領域61(またはp
--型拡散領域)を配置することで、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との最短距離X1を短くしても所定の抵抗値の拡散抵抗R’が得られる。また、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との最短距離X1を短くすることで、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との間の無効領域の面積が小さくなるため、チップサイズを縮小化することができる。無効領域とは、配線や回路等が配置されない領域である。
【0101】
また、n型拡散領域61は、p
-型分離領域4の径方向Dに所定距離X2を空けてHVNMOS21のソースコンタクト領域36に対向する。n型拡散領域61が距離X2でソースコンタクト領域36に対向する部分の長さ(p
-型分離領域4の周方向Rの長さ)X3は、可能な限り長いことが好ましい。
図3には、n型拡散領域61が距離X2でソースコンタクト領域36に対向する部分を内側に突出させた略T字状の平面レイアウトにn型拡散領域61を配置した場合を示す(太線で囲む部分)。p
-型分離領域4にn型拡散領域61を配置することで拡散抵抗R’を高抵抗化することができればよく、n型拡散領域61の平面レイアウトは種々変更可能である。
【0102】
n型拡散領域61は、フローティング(浮遊)電位、バックゲート電位および高電位側電源電位Vcc1のいずれの電位に固定されてもよい。n型拡散領域61をバックゲート電位以外の電位に固定する場合、n型拡散領域61は、上述したようにHVNMOS21のp型バックゲート領域31およびソースコンタクト領域36と距離X2で離して配置される(すなわちX2>0)。その理由は、例えばn型拡散領域61を高電位側電源電位Vcc1に固定したときに、回路全体の耐圧がHVNMOS21の横方向の耐圧に律速されてしまうからである。
【0103】
例えば、p
-型分離領域4とn型拡散領域61との間に、高電位側電源電位Vcc1から共通電位COMを減算した電位差の電圧が印加されるとする(すなわち、n型拡散領域61を高電位側電源電位Vcc1に固定)。この場合に、横方向のnpn寄生バイポーラトランジスタが動作する、また、p
-型分離領域4とn型拡散領域61とのpn接合から伸びる空乏層がHVNMOS21のソースコンタクト領域36にパンチスルーして、20V程度のソース・ドレイン間電圧でHVNMOS21がブレークダウンし、高電位側電源電位Vcc1と共通電位COM間の漏れ電流となる、等によりHVNMOS21の横方向の耐圧が低下する。このような問題が生じない程度に、n型拡散領域61とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との距離X2が設定される。具体的には、n型拡散領域61とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との距離X2は、例えば5μm以上程度であってもよい。
【0104】
n型拡散領域61をバックゲート電位に固定する場合には、n型拡散領域61は、HVNMOS21のp型バックゲート領域31およびソースコンタクト領域36と接していてもよい(すなわちX2=0)。
【0105】
図2Bに示すHVNMOS21に実施の形態2を適用してもよい(すなわちp型バックゲート領域31を設けない構成)。また、
図2C,2Dに示すHVNMOS21に実施の形態2を適用してもよい(すなわちp
-型分離領域をp
--型基板領域1で構成した素子分離構造)。すなわち、p
-型分離領域を構成するp
--型基板領域1の、p
+型共通電位領域5とHVNMOS21のソースコンタクト領域36との間にn型拡散領域61を配置してもよい。また、
図2E,2Fに示すHVNMOS21に実施の形態2を適用してもよい(すなわちn
-型拡散領域2およびp
-型分離領域4のいずれかをエピタキシャル層とした構成)。
【0106】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2によれば、p
-型分離領域にn型拡散領域を設けることで、p
-型分離領域を共通電位に固定するp
+型共通電位領域と、HVNMOSのソースコンタクト領域と、の最短距離を短くしても所定の抵抗値の拡散抵抗が得られる。このため、p
+型共通電位領域の配置の自由度が高くなり、チップレイアウトの制御が少なくなる。
【0107】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体装置の構造について説明する。
図4Aは、実施の形態3にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。実施の形態3にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、p
-型分離領域4を共通電位COMに固定するp
+型共通電位領域65を、略矩形状の平面レイアウトに配置されたp
-型分離領域4の頂点付近のみに配置した点である。
【0108】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、p
+型共通電位領域の配置に依らず、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
【0109】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる半導体装置の構造について説明する。
図4Bは、実施の形態4にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。実施の形態4にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、次の2点である。1つ目の相違点は、HVNMOS21,22がn
-型拡散領域2からn型拡散領域3にわたって設けられている点である。2つ目の相違点は、HVNMOS21,22の周囲をそれぞれ囲むようにp
-型スリット領域71,72が設けられている点である。
【0110】
具体的には、p
-型スリット領域71,72は、n
-型拡散領域2およびn型拡散領域3からなるn型領域に略U字状の平面レイアウトに設けられ、HVNMOS21,22の周囲をそれぞれ囲む。p
-型スリット領域71,72は、半導体基板10のおもて面から深さ方向にp
--型基板領域1に達する深さで設けられている。すなわち、p
-型スリット領域71,72は、n
-型拡散領域2およびn型拡散領域3を、HVNMOS21,22が配置された部分と、それ以外の部分と、に分離している。
【0111】
また、p
-型スリット領域71,72は、略U字状の両端部でp
-型分離領域4と接している。すなわち、HVNMOS21は、p
-型スリット領域71と3辺とし、p
-型分離領域4を残りの1辺とする略矩形状のp
-型領域に囲まれている。HVNMOS22は、p
-型スリット領域72と3辺とし、p
-型分離領域4を残りの1辺とする略矩形状のp
-型領域に囲まれている。HVNMOS21,22のn
+型ドレイン領域34は、n型拡散領域3に設けられる。
【0112】
p
-型スリット領域71,72は、p
--型基板領域1(p
--型の半導体基板10の、拡散領域2,3を形成しない部分)を半導体基板10のおもて面に露出させて構成されていてもよい。また、p
-型スリット領域71,72は、当該p
--型基板領域1や拡散領域2,3にイオン注入等により不純物を導入することで形成されたp
-型拡散領域であってもよい。
【0113】
図示省略するが、p
-型スリット領域71,72は、n
-型拡散領域2のみに設けられていてもよい。この場合、HVNMOS21,22のn
+型ドレイン領域34は、実施の形態1と同様にn
-型拡散領域2に設けられる。p
-型スリット領域71,72は、n
-型拡散領域2を、HVNMOS21,22が配置された部分と、それ以外の部分と、に分離する。
【0114】
このp
-型スリット領域71,72は、HVNMOS21,22のn
+型ドレイン領域34に高電圧が印加された際(例えば、
図5の回路に用いた場合において、上アームのIGBT121がオン状態となり交流出力端子OUTの電位がブリッジ回路120の略電源電位Vdcとなったとき)には空乏化される。
【0115】
以上、説明したように、実施の形態4によれば、実施の形態1〜3と同様の効果を得ることができる。実施の形態4によれば、HVNMOSのn
+型ドレイン領域に高電圧が印加されたとしても、HVNMOSの周囲を囲むp
-型スリット領域が空乏化され、耐圧が確保される。
【0116】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5にかかる半導体装置の構造について説明する。
図4Cは、実施の形態5にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。実施の形態5にかかる半導体装置は、p
-型スリット領域73の配置が実施の形態4にかかる半導体装置と異なる。具体的には、p
-型スリット領域73は、n
-型拡散領域2に、n型拡散領域3の周囲を囲むように設けられている。
【0117】
p
-型スリット領域73は、n
-型拡散領域2に略C字状(一部が開口した略矩形状)の平面レイアウトに設けられ、n型拡散領域3の周囲を囲む。p
-型スリット領域73は、半導体基板10のおもて面から深さ方向にp
--型基板領域1に達する深さで設けられている。すなわち、n
-型拡散領域2は、p
-型スリット領域73が配置された部分で、n型拡散領域3と分離されている。
【0118】
図示省略するが、p
-型スリット領域73は、n型拡散領域3に設けられていてもよい。この場合、p
-型スリット領域73は、n型拡散領域3の中央部を囲む略C字状の平面レイアウトに配置される。
【0119】
このp
-型スリット領域73は、HVNMOS21,22のn
+型ドレイン領域34に高電圧が印加された際(例えば、
図5の回路に用いた場合において、上アームのIGBT121がオン状態となり交流出力端子OUTの電位がブリッジ回路120の略電源電位Vdcとなったとき)には空乏化される。
【0120】
以上、説明したように、実施の形態5によれば、実施の形態1〜4と同様の効果を得ることができる。実施の形態5によれば、HVNMOSのn
+型ドレイン領域に高電圧が印加されたとしても、n型拡散領域の周囲を囲むp
-型領域が空乏化され、耐圧が確保される。
【0121】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、p
+型共通電位領域とHVNMOSのソースコンタクト領域およびp型バックゲート領域とが、p
-型分離領域の拡散抵抗(または基板抵抗)を介して接続さればよく、p
+型共通電位領域と、HVNMOSのソースコンタクト領域およびp型バックゲート領域と、の位置関係(平面レイアウト)は種々変更可能である。また、上述した各実施の形態では、パワーデバイスを駆動するゲートドライバICを例に説明しているが、MOSFETをソースフォロワ構成とした様々な回路に適用可能である。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。