特許第6844314号(P6844314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6844314ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844314
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20210308BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210308BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20210308BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20210308BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20210308BHJP
   C08G 69/40 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K3/22
   C08K3/26
   C08K3/34
   C08K7/04
   C08G69/40
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-36505(P2017-36505)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-59040(P2018-59040A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-191785(P2016-191785)
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】梅津 秀之
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−056261(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/182693(WO,A1)
【文献】 特開2014−037467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)と(B)の合計を100重量%として、(A)ポリアミド樹脂25〜60重量%、(B)水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよびタルクならびにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の非繊維状無機充填材を40〜75重量%を含有し、かつ、下記[I]および[II]を満足し、(A)ポリアミド樹脂は、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃における相対粘度(ηr)が1.4〜1.93の範囲であるポリアミド樹脂組成物。
[I](A)ポリアミド樹脂が、ポリアルキレングリコール構造を0.05〜20重量%含むポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)またはポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)からなる
[II]熱流計法で測定したポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/m・K以上。
【請求項2】
(A)ポリアミド樹脂が、下記一般式(I)表されるポリアルキレングリコール構造を有してなる、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
−X−(R−O)−R (I)
上記一般式(I)中、nは2〜100の範囲を表す。Rは炭素数2〜10の炭化水素基、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を表す。−X−は−NH−、−N(CH)−、−O−または−C(=O)−を表す。
【請求項3】
(A)ポリアミド樹脂100重量%中、ポリアルキレングリコール構造が0.1〜10重量%含有されてなる、請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(C)繊維状無機充填材を10〜150重量部含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(D)難燃剤を1〜40重量部含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
(D)難燃剤が臭素化ポリフェニレンエーテルおよび/または臭素化ポリスチレンである、請求項5に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
【請求項8】
成形品が、放熱性電気・電子部品である、請求項7記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率、冷熱耐性ならびに射出成形時の計量安定性に優れ、成形加工性および機械強度のバランスに優れた成形品を得ることができる、ポリアルキレングリコール構造を有するポリアミド樹脂と水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよびタルクならびにこれらの混合物からなる群より選択される非繊維状無機充填材を含有してなるポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、優れた機械特性、熱特性などを有するため、繊維、各種容器、フィルム、電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品など様々な成形品の材料として幅広く使用されている。
【0003】
近年の電気・電子機器は、高機能化および高性能化に伴って内部に実装される電気・電子部品の消費電力が増加し、その結果、機器の温度上昇が問題となっている。例えば、携帯電話機に代表される携帯電子機器は、更なる複雑化、小型化、薄型化そして高機能化が求められていることから、スペース的な制約により、パソコンなどで用いられている金属製ヒートシンクやファンのような放熱構造を設けることが困難である。また、複雑化、小型化、薄型化に伴い、計量安定性を含む製品の精密成形安定性や消費電力増加に伴う使用環境下での急激な温度変化に耐えうる冷熱耐性対する要求も年々高まってきており、従来技術では対応できなくなりつつある。
【0004】
上記課題に対し、近年、材料面からの改良が提案されている。
例えば、特許文献1には、コネクター外装および内部に電気絶縁性で0.8W/m・K以上の熱伝導率を有する樹脂組成物を使用してなるコネクター付き電線が開示されている。明細書には、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド(PA)、液晶ポリマー(LCP)から選ばれる少なくとも1つの樹脂と、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チッ化硼素、タルクから選択される少なくとも1種のフィラーとを含有する樹脂組成物が記載されているが、これら材料を用いた具体例は示されていない。
【0005】
また、特許文献2には、熱可塑性で一部結晶性のポリアミド樹脂と水酸化マグネシウムとガラス繊維を含有する難燃性ポリアミド成形用組成物が開示され、ポリアミド6やポリアミド6/66共重合体を用いた具体例が示されている。
【0006】
これに対し、特許文献3では、熱伝導率、射出成形時の流動性および溶融滞留安定性、および機械特性のバランスに優れる、ポリアミド樹脂と水酸化マグネシウムとガラス繊維を含有するポリアミド樹脂組成物が開示されている。該発明はポリアミド樹脂の相対粘度、アミノ末端基量とカルボキシル末端基量およびアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比を制御すること、並びに耐酸性水酸化マグネシウムを用いること特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−59649号公報
【特許文献2】特開平6−234913号公報
【特許文献3】特開2016−56261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や2にて提案される技術は、熱伝導性は改善するものの、射出成形時の計量安定性が依然として不十分である。また、特許文献3にて提案される技術においても、射出成形時の計量安定性は十分であるとはいえず、更なる高性能化が求められている。また、いずれの特許文献においても冷熱耐性向上効果については記載も示唆もされていない。
【0009】
本発明は、熱伝導率、冷熱耐性および射出成形時の計量安定性に優れ、成形加工性および機械強度のバランスに優れた成形品を得ることができるポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を達成すべく、高分子量化と分子の絡み合いに着目して検討した結果、ポリアミド樹脂にポリアルキレングリコール構造を導入することにより、ポリアミド樹脂の溶融粘度を低減し、かつ高分子量化可能であることを見出した。それにより、ポリアミド樹脂組成物の耐衝撃性および冷熱耐性が向上し、さらに熱伝導率および射出成形時の計量安定性に優れ、成形加工性および機械強度のバランスに優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明に係るポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品は以下の構成を有する。
(1)(A)と(B)の合計を100重量%として、(A)ポリアミド樹脂25〜60重量%、(B)水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよびタルクならびにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の非繊維状無機充填材を40〜75重量%を含有し、かつ、下記[I]および[II]を満足するポリアミド樹脂組成物である。
[I](A)ポリアミド樹脂が、ポリアルキレングリコール構造を0.05〜20重量%含む。
[II]熱流計法で測定したポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/m・K以上。
(2)(A)ポリアミド樹脂が、下記一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造を有する、(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
−X−(R−O)−R (I)
−X−(R−O)−X− (II)
上記一般式(I)中、nは2〜100の範囲を表す。Rは炭素数2〜10の炭化水素基、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を表す。−X−は−NH−、−N(CH)−、−O−または−C(=O)−を表す。
(3)(A)ポリアミド樹脂100重量%中、ポリアルキレングリコール構造が0.1〜10重量%含有されてなる、(1)または(2)記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(C)繊維状無機充填材を10〜150重量部含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(5)(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(D)難燃剤を1〜40重量部含有する、(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(6)(D)難燃剤が臭素化ポリフェニレンエーテルおよび/または臭素化ポリスチレンである、(5)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
(8)成形品が、放熱性電気・電子部品である、(7)記載の成形品。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、熱伝導率、耐衝撃性、冷熱耐性ならびに射出成形時の計量安定性に優れる。本発明のポリアミド樹脂組成物によれば、耐衝撃性ならびに冷熱耐性に優れ、成形加工性および機械強度のバランスに優れた成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂および(B)水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよびタルクならびにこれらの混合物からなる群より選択される非繊維状無機充填材を含有する。
【0014】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいは「ジアミンとジカルボン酸との混合物」から選ばれる1種以上を主たる原料として得ることができるポリアミド樹脂であって、ポリアルキレングリコール構造を、ポリアミド樹脂100重量%に対して、0.05〜20重量%含む。
【0015】
ポリアミド樹脂100重量%に対するポリアルキレングリコール構造が0.05重量未満の場合、ポリアミド樹脂の溶融粘度低減効果が低く、耐衝撃性、冷熱耐性、熱伝導率、計量安定性、成形加工性に劣る。0.08重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましい。一方、ポリアミド樹脂100重量%に対するポリアルキレングリコール構造が20重量%を超えると、射出成形時の計量安定性が悪化し、難燃性、衝撃強度、冷熱耐性に劣る。15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
【0016】
本発明において、(A)ポリアミド樹脂中における上記一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造の含有量は、例えば、ポリアミド樹脂を製造する際に、後述する一般式(V)および/または(VI)で表されるポリアルキレングリコールの配合量を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
【0017】
(A)ポリアミド樹脂の主たる原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどのジアミン、シュウ酸、スクシン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、これらジカルボン酸のジアルキルエステル、ジクロリドなどが挙げられる。
【0018】
本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを用いることができる。かかるポリアミド樹脂の主たる構造単位を構成する原料を2種以上用いてもよい。本発明においては、上に例示した主たる原料に由来する構造単位を、一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造を除いたポリアミド樹脂を構成する全繰り返し構造単位中、80モル%以上有することが好ましく、90モル%以上有することがより好ましく、100モル%有することがさらに好ましい。また、上に例示した原料に由来する重合構造は直鎖であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂は下記一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造を含有することが好ましい。
−X−(R−O)−R (I)
−X−(R−O)−X− (II)
【0020】
上記一般式(I)および(II)で表される構造は、エーテル結合を有するため分子運動性が高く、アミド基との親和性に優れる。一般式(I)および(II)で表される構造中、nは2〜100の範囲を表す。前記一般式(I)および/または(II)におけるnと同様に、5以上が好ましく、8以上がより好ましく、16以上がさらに好ましい。一方、nは70以下が好ましく、50以下がより好ましい。Rは炭素数2〜10の炭化水素を表す。ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性の観点から、炭素数2〜6の炭化水素基がより好ましく、炭素数2〜4の炭化水素基がより好ましい。また、Rは炭素数1〜30の炭化水素を表す。Rの炭素数が少ないほどポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるため、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。上記一般式(I)および(II)中、−X−は−NH−、−N(CH)−、−O−または−C(=O)−、を表す。ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるため、−X−は−NH−、−N(CH)−がより好ましい。一般式(II)における−X−は同一でも異なっていてもよい。
【0021】
一般式(I)または一般式(II)として、ポリ(エチレングリコール)モノアルキルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、ポリ(テトラメチレングリコール)モノアルキルエーテル、メトキシポリ(エチレングリコール)アミン、メトキシポリ(プロピレングリコール)アミン、メトキシポリ(テトラメチレングリコール)アミン、メトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン、メトキシポリ(エチレングリコール)カルボン酸、メトキシポリ(プロピレングリコール)カルボン酸、メトキシポリ(テトラメチレングリコール)カルボン酸由来の構造などが挙げられる。また、一般式(II)として、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)ジアミン、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、ポリ(テトラメチレングリコール)ジアミン、ポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、ポリ(エチレングリコール)ジカルボン酸、ポリ(プロピレングリコール)ジカルボン酸、ポリ(テトラメチレングリコール)ジカルボン酸由来の構造などが挙げられる。これらの構造は2種類以上組み合わせてもよい。2種類以上のポリアルキレングリコール構造が含まれる場合、ブロック重合構造をとっていてもよいし、ランダム共重合構造をとっていてもよい。ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるため、ポリ(エチレングリコール)モノアルキルエーテル、メトキシポリ(エチレングリコール)アミン、メトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)ジアミン、ポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)ジアミンが好ましく、ポリアミド樹脂の主たる構造単位との反応性に優れるため、メトキシポリ(エチレングリコール)アミン、メトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン、ポリ(エチレングリコール)ジアミン、ポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)ジアミン由来の構造を有することがさらに好ましい。
【0022】
としては、例えば、エチレン基、1,3−トリメチレン基、イソプロピレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基、および1,6−ヘキサメチレン基などが挙げられ、n個のRは、異なる炭素数の炭化水素基の組合せであってもよい。Rは、炭素数2の2価の飽和炭化水素基および炭素数3の2価の飽和炭化水素基から少なくとも構成されることが好ましい。ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるエチレン基および自由体積の大きいイソプロピレン基から構成されることがより好ましく、溶融粘度への低減効果をより効果的に発現させることができる。
【0023】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられ、その中でもポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるメチル基およびエチル基がより好ましい。
【0024】
また、ポリアミド樹脂の主たる構造単位に由来する特性を維持するという観点から、本発明において変性ポリアミド樹脂は上記(I)で表される構造を有することが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂は、上記一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造を含むことが好ましい。ここで、上記一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造の、ポリアミド樹脂に対する含有量は、ポリアルキレングリコール構造の化学式量と、H−NMR測定によって求めることができる。上記一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造を有することにより、ポリアミド樹脂の溶融粘度を低減しつつ高分子量化でき、射出成形時の計量安定性を向上させることができる。 さらに、本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂は、一般式(III)で表される末端構造を有することが好ましい。一般式(III)で表される末端構造を有することにより、ポリアミド樹脂のアミノ末端基量とカルボキシル末端基量が低減され、一般式(I)または一般式(II)で表されるポリアルキレングリコール構造の熱分解を抑制し、射出成形時の計量安定性をより向上させることができる。
−Y−R (III)
【0026】
上記一般式(III)中、Rは炭素数1以上30以下の1価の炭化水素基を表す。Rの炭素数が少ないほどポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるため、炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘネイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等の分岐鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0027】
また、本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂が前記一般式(I)で表されるポリアルキレングリコール構造を有する場合において、一般式(I)におけるXが−NH−、−N(CH)−または−O−の場合は、上記一般式(III)における−Y−は−(C=O)−を表し、一般式(I)におけるXが−(C=O)−の場合は、上記一般式(III)におけるYは−NH−、−N(CH)−または−O−を表す。
【0028】
さらに、(A)ポリアミド樹脂が前記一般式(I)で表されるポリアルキレングリコール構造を有さない場合において、上記一般式(III)における−Y−は−(C=O)−、−NH−、−N(CH)−または−O−を表す。
【0029】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂は、一般式(III)で表される末端構造を、ポリアミド樹脂100重量%中5重量%以下含むことが好ましい。一般式(III)で表される末端構造の含有量が5重量%以下の場合、射出成形時の計量安定性が良好となり、難燃性、衝撃強度、冷熱耐性にも優れる。一般式(III)で表される末端構造の含有量は3重量%以下がより好ましい。
【0030】
本発明において用いられる(A)ポリアミド樹脂中の一般式(III)で表される末端構造の含有量は、例えば、ポリアミド樹脂を製造する際に、後述する一般式(VI)で表される末端変性用化合物を適宜配合することにより、所望の範囲に調整することができる。
【0031】
(A)ポリアミド樹脂の融点(Tm)は、200℃以上であることが好ましい。融点は、示差操作熱量測定(DSC)により求めることができる。融点が200℃以上のポリアミド樹脂としては、例えば、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド5T/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドXD6)およびこれらの共重合体に、前記一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造を含有するものなどが挙げられる。また、これらを2種以上用いてもよい。
【0032】
とりわけ好ましいものとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド56、ポリアミド410、ポリアミド510、ポリアミド610、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12などに前記一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造を含有するものを挙げることができる。機械物性、成形安定性の観点からポリアミド66に前記一般式(I)および/または(II)で表されるポリアルキレングリコール構造を含有するものがさらに好ましい。
【0033】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂は、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃における相対粘度(ηr)が1.4〜3の範囲であることが好ましい。ηrが1.4未満の場合、機械特性が低下する。1.5以上がより好ましい。一方、ηrが3を越える場合、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が高く、成形加工性が低下する。
【0034】
(A)ポリアミド樹脂の相対粘度を1.4以上にする手法としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸を、主たる構造単位を構成する原料として重縮合して得られるポリアミド樹脂であれば、後述するポリアミド樹脂の製造方法において、溶融1段重合法で系内の水量を調整する方法、原料であるジアミンの過剰添加量を適度に大きくする方法、重合時間(特に、重合の最終段階において、融点以上の温度で、不活性ガス雰囲気下または減圧下で重合を行う時間)を長くする方法などが挙げられる。一方、相対粘度を3以下にする手法としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸を、主たる構造単位を構成する原料として重縮合して得られるポリアミド樹脂であれば、後述するポリアミド樹脂の製造方法において、原料であるジアミンの過剰添加量を適度に小さくする方法、原料であるジカルボン酸またはジアミンの過剰添加量を適度に大きくする方法、重合時間(特に、重合の最終段階において、融点以上の温度で、不活性ガス雰囲気下または減圧下で重合を行う時間)を短くする方法などが挙げられる。
【0035】
ここで、(A)ポリアミド樹脂の相対粘度は、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液を作製し、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定することができる。
【0036】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂(A)中のカルボキシル末端基量が2.2×10−5mol/g以下であることが好ましい。カルボキシル末端基量が2.2×10−5mol/g以下のポリアミド樹脂を用いることで、溶融混練時および射出成形などの溶融滞留時に、カルボキシル末端基と非繊維状無機充填材の反応を抑制することができ、熱伝導性、冷熱特性を高くすることができる。カルボキシル末端基量は2.0×10−5mol/g以下がより好ましく、1.8×10−5mol/g以下がさらに好ましい。
【0037】
カルボキシル末端基量を少なくする手法としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂であれば、後述するポリアミド樹脂の製造方法において、後述する溶融1段重合法により製造する方法、系内の水量を調整する方法、原料であるジアミンをジアミンとジカルボン酸の塩に対して大過剰に添加して重縮合する方法などが挙げられる。
【0038】
ここで、(A)ポリアミド樹脂中のカルボキシル末端基量は、ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解し、0.02N水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
【0039】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂は、融点+20℃で5分間溶融滞留させた後の1216sec−1における溶融粘度が、60Pa・s以下であることが好ましい。60Pa・s以下であれば、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよびタルクならびにこれらの混合物からなる群より選択される非繊維状無機充填材を複合したポリアミド樹脂組成物の成形などの射出成形時の流動性をより向上させ、またガラス繊維の折損やせん断発熱による樹脂分解を抑制し、成形品の機械強度をより向上させることができる。40Pa・s以下がより好ましく、25Pa・s以下がさらに好ましい。
【0040】
ここで、(A)ポリアミド樹脂の溶融粘度は、キャピログラフ1C(東洋精機(株)製)を用い、長さ10mm、直径1mmのキャピラリーを用いて測定することができる。
【0041】
次に、本発明の(A)ポリアミド樹脂の製造方法について説明する。本発明の(A)ポリアミド樹脂は、例えば、前記のポリアミド樹脂の主たる原料と下記一般式(IV)または(V)で表されるポリアルキレングリコールとを重合時に反応させる方法や、ポリアミド樹脂とポリアルキレングリコールとを溶融混練する方法などが挙げられる。重合時に反応させる方法としては、例えば、ポリアミド樹脂の主たる原料とポリアルキレングリコールをあらかじめ混合した後、加熱して縮合を進行させる方法や、ポリアミド樹脂の主たる原料の重合途中にポリアルキレングリコールを添加して結合させる方法などが挙げられる。
Z−(R−O)−R (IV)
Z−(R−O)−Z (V)
【0042】
上記一般式(IV)および(V)中、nは2〜100の範囲を表す。前記一般式(I)および/または(II)におけるnと同様に、5以上が好ましく、8以上がより好ましく、16以上がさらに好ましい。一方、nは70以下が好ましく、50以下がより好ましい。Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。それぞれ、一般式(I)および/または(II)におけるRおよびRとして例示したものが挙げられる。Z−はアミノ基、N−メチルアミノ基または水酸基を示す。ポリアミドの末端との反応性に優れるNH−がより好ましい。一般式(V)におけるZ−は同一でも異なっていてもよい。
【0043】
上記一般式(IV)および(V)で表されるポリアルキレングリコールの数平均分子量は、750〜10000の範囲にあることが好ましい。数平均分子量を750以上とすることにより、溶融粘度をより低減することができる。より好ましくは800以上、さらに好ましくは900以上である。一方、数平均分子量を10000以下とすることにより、ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性をより向上させることができる。より好ましくは5000以下、さらに好ましくは2500以下、最も好ましくは1500以下である。
【0044】
上記一般式(IV)および(V)で表されるポリアルキレングリコールの具体的な例としては、一般式(IV)として、メトキシポリ(エチレングリコール)アミン、メトキシポリ(トリメチレングリコール)アミン、メトキシポリ(プロピレングリコール)アミン、メトキシポリ(テトラメチレングリコール)アミン、メトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミンなどが挙げられる。また、一般式(V)として、ポリ(エチレングリコール)ジアミン、ポリ(トリメチレングリコール)ジアミン、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、ポリ(テトラメチレングリコール)ジアミン、ポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)ジアミンなどが挙げられる。これらポリアルキレングリコールは2種以上用いてもよく、2種類のポリアルキレングリコールが含まれる場合、ブロック重合構造をとっていてもよいし、ランダム共重合構造をとっていてもよい。
【0045】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂が、前記一般式(III)で表される末端構造を有する場合、前記のポリアミド樹脂の主たる原料と前記ポリアルキレングリコールに、さらに下記一般式(IV)で表される化合物を重合時に反応させる方法や、ポリアミド樹脂、ポリアルキレングリコール、さらに下記一般式(VI)で表される化合物とを溶融混練する方法などが挙げられる。
H−Y’−R (VI)
【0046】
上記一般式(VI)中、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。前記一般式(III)におけるYが−NH−、−N(CH)−または−O−の場合、上記一般式(VI)における−Y’−は−NH−、−N(CH)−または−O−を表し、前記一般式(III)におけるYが−(C=O)−の場合、上記一般式(VI)におけるY’は−O(C=O)−を表す。一般式(IV)で表される化合物の具体的な例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、セロチン酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン、ベンジルアミン、およびβ−フェニルエチルアミンなどの芳香族モノアミン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、ノナデカノールなどの脂肪族モノアルコール、シクロヘキシルアルコール、メチルシクロヘキシルアルコールなどの脂環式モノアルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族モノアルコールなどが挙げられる。上記した末端変性用化合物を、2種以上用いることもできる。
【0047】
ポリアミド樹脂の主たる原料とポリアルキレングリコールとを重合時に反応させる方法により(A)ポリアミド樹脂を製造する際、必要に応じて、重合促進剤を添加することができる。重合促進剤としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機系リン化合物などが好ましく、特に亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムが好適に用いられる。重合促進剤は、ポリアミド樹脂の主たる原料(ポリアルキレングリコールを除く)100重量部に対して、0.001〜1重量部の範囲で使用することが好ましい。重合促進剤の添加量を0.001〜1重量部とすることで、機械特性と成形加工性のバランスにより優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
【0048】
本発明に用いられる(B)非繊維状無機充填材は、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよびタルクならびにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種である。放熱特性に優れる水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよびタルクが好ましく用いられる。これらは2種以上用いてもよい。その中でも水酸化マグネシウムがより好ましい。水酸化マグネシウムとしては、化学式Mg(OH)で示される無機物を80重量%以上含む純度の高い水酸化マグネシウムが好ましい。本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂に水酸化マグネシウムを含有させることにより、ポリアミド樹脂組成物に熱伝導率、難燃性を付与することができる。熱伝導率、難燃性をより向上させる点から、Mg(OH)で示される無機物を80重量%以上含み、CaO含量5重量%以下、塩素含量1重量%以下である高純度水酸化マグネシウムがより好ましく、Mg(OH)を98重量%以上含み、CaO含量0.1重量%以下、塩素含量0.1重量%以下である高純度水酸化マグネシウムがさらに好ましい。
【0049】
本発明に用いられる(B)非繊維状無機充填材の形状は、とくに規定されないが、押出溶融混練時のフィード性、分散性などの観点から、粒子状、フレーク状が好ましい。また、その粒子径に関して特に限定はないが、ポリアミド樹脂組成物の機械強度、熱伝導率、難燃性をより向上させる点から、レーザー回折法によって測定した平均粒子径が0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、0.3〜4μmの範囲のものがより好ましい。
【0050】
本発明に用いられる(B)非繊維状無機充填材は、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールなどにより表面処理が施されていてもよい。特に、エポキシシラン化合物および/またはアミノシラン化合物により表面処理が施された非繊維状無機充填材は、ポリアミド樹脂組成物の機械強度をより高めることができるため、好ましく使用される。
【0051】
また、本発明に用いられる(B)非繊維状無機充填材は、特殊表面処理により、耐酸性が付与されたものが好ましい。耐酸性が付与された非繊維状無機充填材であれば、溶融混練時および射出成形などの溶融滞留時に、ポリアミド樹脂のカルボキシル末端基と非繊維状無機充填材の反応を抑制することができ、流動性、溶融滞留安定性、機械強度を高くすることができる。
【0052】
本発明のポリアミド樹脂組成物における、(A)ポリアミド樹脂、(B)非繊維状無機充填材の含有量は、(A)と(B)の合計を100重量%として、(A)ポリアミド樹脂25〜60重量%、(B)非繊維状無機充填材40〜75重量%である。
【0053】
(A)ポリアミド樹脂の含有量が25重量%より少ないと、得られるポリアミド樹脂組成物の射出成形時の流動性、計量安定性、機械強度が低くなる。30重量%以上がより好ましい。一方、ポリアミド樹脂の含有量が60重量%より多いと、得られるポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が小さくなる。55重量%以下がより好ましい。
【0054】
(B)非繊維状無機充填材の含有量が40重量%より少ないと、得られるポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が小さくなる。45重量%以上がより好ましい。一方、非繊維状無機充填材の含有量が75重量%より多いと、射出成形時の計量安定性ならびに流動性、機械強度が低くなる。70重量%以下がより好ましい。
【0055】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、下記[I]および[II]を満足する必要がある。
[I](A)ポリアミド樹脂が、ポリアルキレングリコール構造を0.05〜20重量%含む。
[II]熱流計法で測定したポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/m・K以上。
【0056】
[I]に関して、ポリアミド樹脂100重量%に対して、ポリアルキレングリコール構造が0.05重量%未満の場合は、ポリアミド樹脂の溶融粘度低減効果が低く、熱伝導率、冷熱耐性、成形加工性に劣る。0.08重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましい。一方、ポリアミド樹脂中のポリアルキレングリコール構造が20重量%を超える場合射出成形時の安定性や冷熱耐性に劣り、難燃性も悪化する。15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
【0057】
[II]に関して、ポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/m・K未満であると、例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物からなるコネクター等の電気・電子部品に電極をつけて電気を流した場合、発生する熱はポリアミド樹脂組成物を伝わって空気中に放熱されにくいため、電気・電子部品が熱劣化する。このため、長時間使用後には、例えば落下させたときの割れなどが発生しやすくなり、落下衝撃耐性および冷熱耐性が低減する。ここで、ポリアミド樹脂組成物の熱伝導率とは、ポリアミド樹脂組成物を射出成形することにより角板成形品(50mm×50mm×厚み3mm、フィルムゲート)を作製し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmの試験片としたものを用いて、熱流計法熱伝導率測定装置(リガク株式会社製、GH−1S)により測定して得られる熱伝導率を指す。熱伝導率は1.0W/m・K以上であることがより好ましく、1.1W/m・K以上であることがさらに好ましい。例えば、[I]を満たすポリアミド樹脂に、(B)非繊維状無機充填材を前述のように特定量含有させることにより、上記の熱伝導率を満足するポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0058】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、母材強度を向上させる目的で(C)繊維状無機充填材ならびに難燃剤を付与する目的で(D)難燃剤を含有させることが好ましい。
【0059】
(C)繊維状無機充填材としてはガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが挙げられる。2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもコストと強度のバランスに優れたガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、特に制限はなく、公知のものが使用できる。本発明のポリアミド樹脂組成物にガラス繊維を含有させることにより、機械強度を高めることができる。ガラス繊維は、所定長さにカットしたチョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバーなどの形状のものがあるが、いずれを使用してもよい。繊維径は特に制限はないが、4〜11μmのものが好ましい。繊維径が4μm以上であれば、成形品薄肉部への充填率を高めることができる。一方、11μm以下であれば、ポリアミド樹脂組成物中のガラス繊維の本数を多くすることができ、ガラス繊維による補強効果が得られやすくなることから、機械的強度を高めることができる。ここで、ガラス繊維の繊維径とは、各ガラス繊維の繊維径の数平均値を指し、以下の方法により求めることができる。SEM(走査型電子顕微鏡)を使用してガラス繊維の断面(繊維の長さ方向に対して直角な面)を観察し、最大径と最小径を測定し、その平均値を各ガラス繊維の繊維径とする。無作為に選んだ10本のガラス繊維の繊維径の数平均値を算出することにより、ガラス繊維の繊維径を求めることができる。チョップドストランドを使用する場合、繊維長に特に制限はないが、押出混練作業性の高いストランド長3mmのガラス繊維が好ましく使用される。ロービングストランドを使用する場合、押出機にロービングストランドを直接投入する公知の技術により複合することができる。これらのガラス繊維を2種以上併用してもよい。
【0060】
(C)繊維状無機充填材は、公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤を用いて表面処理することが好ましく、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができる。シラン系カップリング剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシランなどが挙げられる。
【0061】
また、(C)繊維状無機充填材は、集束剤(結束剤)で被覆されていることが好ましく、溶融混練する際の作業性を向上させることができる。さらに、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度をより向上させる効果を発現する場合もある。集束剤(結束剤)としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル酸系樹脂、アミノ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0062】
(C)繊維状無機充填材の含有量は、本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して10〜150重量部であることが好ましい。(C)繊維状無機充填材の含有量が10重量部以上の場合、得られるポリアミド樹脂組成物の機械強度が高くなる。20重量部以上がより好ましい。一方、繊維状無機充填材の含有量が150重量部以下の場合、得られるポリアミド樹脂組成物の熱伝導率、射出成形時の計量安定性が良好となる。120重量部以下がより好ましい。
【0063】
(D)難燃剤としては、メラミンシアヌレート、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、ホスフィン酸アルミニウム、ポリリン酸メラミン、ホウ酸亜鉛、赤リン、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂などの臭素系難燃剤が好ましく使用される。これらの中でも、難燃性、熱伝導率、冷熱耐性、射出成形時の計量安定性および機械強度のバランスの観点から、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび/または臭素化ポリスチレンが好ましく、低溶融粘度、射出成形時の計量安定性と機械強度の観点から、臭素化ポリスチレンがより好ましい。かかる難燃剤を2種以上併用することも可能である。また、難燃助剤として三酸化アンチモンを併用するとさらに好ましい。
【0064】
かかる難燃剤を用いる場合、その含有量は、特に制限はないが、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましい。(D)難燃剤含有量が1重量部以上の場合、得られるポリアミド樹脂組成物に充分な難燃特性を付与することができる。5重量部以上がより好ましい。一方、難燃剤の含有量が40重量部以下の場合、得られるポリアミド樹脂組成物の熱伝導率、冷熱特性、機械強度が良好となる。35重量部以下がより好ましい。
【0065】
中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物に臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの組み合わせを難燃剤として含有させ、かつ(A)ポリアミド樹脂の相対粘度制御、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基量とカルボキシル末端基量制御、(B)非繊維状無機充填材に耐酸性水酸化マグネシウムを使用する等により、水酸化マグネシウムの水酸基による本来の冷却効果と難燃剤による難燃効果が相乗的に作用し、一般にポリアミド樹脂を難燃化する量以下の難燃剤量でも高度な難燃性を付与することができるため、好ましい。
【0066】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、前記(A)(B)(C)(D)以外の成分を含有させても構わない。
【0067】
例えば、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、(A)ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有させてもよい。(A)ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂を2種以上含有させることも可能である。かかる熱可塑性樹脂を用いる場合、その含有量は、特に制限はないが、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.1〜400重量部が好ましい。
【0068】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、ゴム質重合体を含有させてもよい。ゴム質重合体とは、ガラス転移温度が室温より低い重合体であって、分子間の一部が共有結合・イオン結合・ファンデルワールス力・絡み合い等により、互いに拘束されている重合体を指す。ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ブタジエン/イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン/プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン/ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン/α−オレフィンの共重合体、エチレン/アクリル酸エステル、エチレン/メタクリル酸エステルなどのエチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体、ブチルアクリレート/ブタジエン共重合体などのアクリル酸エステル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのエチレン/脂肪酸ビニル共重合体、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/ヘキサジエン共重合体などのエチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合体、ブチレン/イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、(A)ポリアミド樹脂との相溶性の観点から、エチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体が好ましく用いられる。不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルである。(メタ)アクリル酸エステルの具体的な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0069】
前記ゴム質重合体は、(A)ポリアミド樹脂との反応性の観点から、反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、オキサゾリン基、水酸基、イソシアネート基、メルカプト基、スルホン酸基等が挙げられる。これらを2種以上有してもよい。これらの中でも、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、オキサゾリン基は反応性が高く、しかも分解、架橋などの副反応が少ないため好ましく用いられる。反応性官能基をゴム質重合体に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、反応性官能基を有する単量体とゴム質重合体の原料である単量体とを共重合する方法、反応性官能基を有する化合物をゴム質重合体にグラフトさせる方法などを用いることができる。
【0070】
かかるゴム質重合体を2種類以上含有させることも可能である。かかるゴム質重合体を用いる場合、その含有量は、特に制限はないが、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.1〜400重量部が好ましい。
【0071】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、各種添加剤を含有させてもよい。各種添加剤としては、例えば、結晶核剤、着色防止剤、酸化防止剤(熱安定剤)、耐候剤、離型剤、可塑剤、滑剤、染料系着色剤、顔料系着色剤、帯電防止剤、発泡剤などを挙げることができる。これらを2種以上含有させてもよい。その含有量に特に制限はないが、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.01〜20重量部含有されることが好ましい。
【0072】
酸化防止剤(熱安定剤)としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ヒドロキノン系化合物、リン系化合物およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ化化合物などが好ましく使用される。特にヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物が好ましく用いられる。
【0073】
ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。中でも、アミド型高分子ヒンダードフェノールタイプが好ましく、具体的には、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]が好ましく用いられる。
【0074】
リン系化合物の具体例としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイトなどのホスファイト系化合物;3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。
【0075】
耐候剤としては、レゾルシノール系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物などが好ましく使用される。
【0076】
離型剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどが好ましく使用される。
【0077】
可塑剤としては、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミドなどが好ましく使用される。
【0078】
染料系着色剤としては、ニグロシン、アニリンブラックなどが好ましく使用される。
【0079】
顔料系着色剤としては、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなどが好ましく使用される。
【0080】
帯電防止剤としては、アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤などが好ましく使用される。
【0081】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用でき、生産性の観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールによる溶融混練等が使用でき、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等が挙げられる。これらの押出機を複数組み合わせてもよい。混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましい。
【0082】
二軸押出機を用いた溶融混練方法としては、例えば、(A)ポリアミド樹脂、(B)非繊維状無機充填材および必要に応じて(A)(B)以外の成分を予備混合して、シリンダー温度が(A)ポリアミド樹脂の融点以上に設定された二軸押出機に供給して溶融混練する手法が挙げられる。原料の混合順序に特に制限はなく、全ての原料を上記の方法により溶融混練する方法、一部の原料を上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原料を配合して溶融混練する方法、あるいは一部の原料を溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また押出機途中で真空状態に曝して発生するガスを除去する方法も好ましく使用される。
【0083】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、通常の成形方法(射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、インジェクションプレス成形など)により、溶融成形することが可能である。なかでも量産性の点から射出成形、インジェクションプレス成形により成形することが好ましく、射出成形により成形することが最も好ましい。なお、本発明の成形品は、(A)〜(D)以外の第三成分を含有することを許容する。
【0084】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、放熱性電気・電子部品用途に好ましく使用される。
【0085】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形時の流動性および計量安定性に優れるため、薄肉かつ複雑形状の電気・電子部品を成形する場合でも成形安定性に優れ成形不良を低減できる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、耐衝撃性に優れ、機械強度のバランスに優れるため、薄肉かつ複雑形状の電気・電子部品に用いても、成形品の強度、落下させたときの割れも抑制でき落下耐性を付与できる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、熱伝導率に優れるため、例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物からなる電気・電子部品に電極をつないで電気を流しても、発生する熱がポリアミド樹脂組成物を伝わって空気中に放熱されるため、成形品の熱劣化が抑制され、長時間使用後に落下させたときの割れも抑制できる。また、本発明のポリアミド樹脂は冷熱耐性に優れるため、自動車用電気・電子部品等温度変化の大きな過酷な環境下で長時間使用後もクラックの発生を抑制できる。さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物からなる電気・電子部品に電極を複数回抜き差ししても、スクラッチ耐性に優れるため削れ量を抑制できる。
【0086】
本発明の放熱性電気・電子部品としては、例えば、コネクター、リレーケース、リレーベース、リレー用スプール、スイッチ、コイル、センサー、各種ギヤー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、サーマルプロテクター、コンピューター関連部品などに代表される電子部品、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、パソコン部品、パソコン筐体、携帯電話部品、携帯電話筐体、スマートフォン部品、スマートフォン筐体、電池部品、電池筐体、リチウムイオンバッテリー用部品、リチウムイオンバッテリー用筐体などに代表される家庭・事務用電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連電気部品、顕微鏡部品、双眼鏡部品、カメラ部品、時計部品などに代表される光学機器・精密機械関連電気部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ周辺の電気部品、燃料関係・冷却系・ブレーキ系・ワイパー系・排気系・吸気系各種パイプ・ホース・チューブ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、燃料タンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、電池周辺部品、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、パワーコントロールユニット用部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、トランスミッション用オイルパン、トランスミッション用オイルフィルター、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクター等の各種コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルパン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウォッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、インストルメントパネル、エアバッグ周辺部品、ドアパッド、ピラー、コンソールボックス、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアモール、リアフィニッシャー、ワイパーなどの自動車・車両関連周辺の電気部品などに用いることができ、特にコネクター、リレー、スイッチ、パソコン筐体、携帯電話筐体、電池筐体などに有用である。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0088】
参考例において、原料は以下に示すものを用いた。
ヘキサメチレンジアミン:東京化成工業社製
アジピン酸:和光純薬工業社製 和光特級
テトラメチレンジアミン:関東化学社製
セバシン酸:東京化成工業社製
酢酸:和光純薬工業社製 試薬特級
ポリアルキレングリコール導入剤として下記構造式で表されるメトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン「“JEFFAMINE”(登録商標)M1000」(HUNTSMAN社製) (数平均分子量Mn1000)
【0089】
【化1】
【0090】
実施例および比較例に用いた(A)ポリアミド樹脂は以下の通りである。
(A−1):参考例1で作製されたもの。
(A−2):参考例2で作製されたもの。
(A−3):参考例3で作製されたもの。
(A−4):参考例4で作製されたもの。
(A−5):参考例5で作製されたもの。
(A−6):参考例6で作製されたもの。
(A−7):参考例8で作成されたもの。
【0091】
実施例および比較例に用いた(B)非繊維状無機充填材は以下の通りである。
(B−1):水酸化マグネシウム「“KISUMA”(登録商標)5EU」(協和化学工業株式会社製)。Mg(OH)含量99.6%、CaO含量0.01wt%、塩素含量0.04wt%、平均粒子径%50 0.80μm。
(B−2):タルク「SG2000」(日本タルク社製)(平均粒子径:1μm)。
【0092】
実施例および比較例に用いた(C)ガラス繊維は以下の通りである。
(C−1):繊維径10.5μm、密度2.55g/cmのガラス繊維「T−275H」(日本電気硝子株式会社製)。
【0093】
実施例および比較例に用いた(D)難燃剤の成分は以下の通りである。
(D−1):臭素化ポリフェニレンエーテル「“ピロガード”(登録商標)SR−460B」(第一工業製薬株式会社製)。
(D−2):臭素化ポリスチレン「Great Lakes PDBS−80」(Chemtura社製)。
【0094】
実施例および比較例に用いた(A)(B)(C)(D)以外の成分は以下の通りである。
(E−1):三酸化アンチモン「PATOX−MK」(日本精鉱株式会社製)。
(E−2):熱安定剤「IR1098」(N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド])(BASF社製)。
【0095】
次に実施例および比較例における評価方法について説明する。
【0096】
(1)相対粘度
参考例により得られたポリアミド樹脂のペレットを98%硫酸に溶解して樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液を作製した。得られた硫酸溶液を用いて、25℃でオストワルド式粘度計を用いて、相対粘度を測定した。
【0097】
(2)アミノ末端基量 参考例により得られたポリアミド樹脂のペレット約0.5gを精秤し、フェノール・エタノール混合溶媒(体積比83.5:16.5)25mlに溶解した後、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定し、アミノ末端基量を測定した。
【0098】
(3)カルボキシル末端基
参考例により得られたポリアミド樹脂のペレット約0.5gを精秤し、ベンジルアルコール20mlを加えて190℃で溶解した後、0.02N水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて滴定し、カルボキシル末端基量を測定した。
【0099】
(4)融点
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレット約5mg採取し、TAインスツルメント社製 ロボットDSC Q200を用いて、窒素雰囲気下、次の条件で融点を測定した。350℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で50℃まで降温して5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で350℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。吸熱ピークが2つ以上観測される場合には、温度が高いピークを融点とした。
【0100】
(5)溶融粘度
キャピログラフ1C(東洋精機株式会社製)を用い、融点+20℃に温度設定し、長さ10mm、直径1mmのキャピラリーを用いて、各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、5分間溶融滞留させた後の、1216sec−1における溶融粘度を測定した。この値が低いほど、射出成形時の流動性が良好であることを示す。
【0101】
(6)熱伝導率
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、表1および表2に記載のシリンダー温度、金型温度に設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE50EVC160)に投入し、射出圧力:下限圧+0.5MPa、射出時間と保圧時間:合わせて10秒、冷却時間:15秒の成形サイクル条件で射出成形することにより角板成形品(50mm×50mm×厚み3mm、フィルムゲート)を作製し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmの試験片としたものを用いて、熱流計法熱伝導率測定装置(リガク株式会社製、GH−1S)により熱伝導率を測定した。この値が高いほど、熱伝導性に優れることを示す。
【0102】
(7)衝撃強度
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、表1および表2に記載のシリンダー温度、金型温度に設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE50EVC160)に投入し、射出圧力:下限圧+0.5MPa、射出時間と保圧時間:合わせて10秒、冷却時間:15秒の成形サイクル条件で射出成形することにより1/8インチノッチ付きIzod衝撃試験片を作製した。得られた試験片について、ASTM−D256に従い、23℃、50%RHの雰囲気下でIzod衝撃試験を行い、衝撃強度を測定した。なお、測定は5本行い、その平均値を衝撃強度とした。
【0103】
(8)難燃性
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、表1および表2に記載のシリンダー温度、金型温度に設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE50EVC160)に投入し、射出圧力:下限圧+0.5MPa、射出時間と保圧時間:合わせて10秒、冷却時間:15秒の成形サイクル条件で射出成形することにより1/64インチ(0.4mm)厚みの燃焼試験片を得た。前記の燃焼試験片を用いて、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に低下しランク付けされる。また、燃焼性に劣り上記のV−2に達せず、上記の難燃性ランクに該当しなかった材料は規格外とした。
【0104】
(9)耐冷熱性(ヒートサイクル試験)
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、表1および表2に記載のシリンダー温度、金型温度に設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE50EVC160)に投入し、縦47.0mm×横47.0mm×高さ28.6mmの金属片を金型内に固定して、射出圧力:下限圧+0.5MPa、射出時間と保圧時間:合わせて10秒、冷却時間:15秒の成形サイクル条件で当該金属片の外周に厚み0.8mmの樹脂をオーバーモールドし、耐冷熱性評価試験片を作製した。評価はTHERMAL SHOCK CHANBER TSA−100S−W型(タバイ社製)を用い、150℃(高温側)、−40℃(低温側)に各1時間ごとさらして、これを1サイクルとし、クラックが発生するまでのサイクル数を目視で判定した。なお、測定はn=10で行い、その平均値をヒートサイクル性とした。
【0105】
(10)計量時間および計量安定性
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、表1および表2に記載のシリンダー温度、金型温度に設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE50EVC160)に投入し、シリンダー温度設定290℃(一律)、計量値54mm、回転数70rpm、背圧2MPaの条件で80×80×3mm厚の試験片を20ショット成形し、上記条件で成形した際の各ショット毎の計量時間から平均計量時間を求めた。またその際、計量時間の標準偏差を算出し計量安定性の指標とした。
【0106】
参考例1
ヘキサメチレンジアミン332gとアジピン酸418g、末端基調整用のヘキサメチレンジアミンを9.07g(アジピン酸1000molに対して27.3mol)、イオン交換水250g、“JEFFAMINE”M1000 14.5gを、撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.05MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を290℃に設定して加熱を開始した。65分後に、缶内温度は220℃、缶内圧力は1.75MPaに到達した。水を留出させながら、缶内圧力を1.75MPaに維持した。缶内温度が250℃に到達した時点で放圧を開始し、水を留出させながら、60分間かけて缶内圧力を常圧にした。このとき、缶内温度は277℃であった。続けて、−0.053MPaの減圧下で60分間撹拌した後、圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりポリアミド66樹脂を得た。得られたポリアミド66樹脂を、メチルアルコールでソックスレー抽出により、未反応の“JEFFAMINE”M1000を除去した後、80℃で24時間真空乾燥した。このようにして得られたポリアミド66樹脂の相対粘度は1.92、アミノ末端基量は24.27×10−5mol/g、カルボキシル末端量は1.24×10−5mol/gであった。また、以下の化学式にて示される構造を末端に有する、ポリアルキレングリコール構造を2.2重量%含むポリアミド66樹脂であった。
【0107】
【化2】
【0108】
参考例2
末端基調整用のヘキサメチレンジアミンを8.09g(アジピン酸1000molに対して24.3mol)、−0.053MPaの減圧下での撹拌時間を50分に変更した以外は参考例1と同様に重合を行い、ポリアミド66樹脂を得た。得られたポリアミド66樹脂の相対粘度は1.93、アミノ末端基量は22.96×10−5mol/g、カルボキシル末端量は2.51×10−5mol/gであった。また、上記化学式にて示される構造を末端に有する、ポリアルキレングリコール構造を2.2重量%含むポリアミド66樹脂であった。
【0109】
参考例3
末端基調整用のヘキサメチレンジアミンの変わりに、末端基調整用のアジピン酸を5.25g(ヘキサメチレンジアミン1000molに対して12.6mol)、“JEFFAMINE”M1000を114gに変更した以外は参考例1と同様に重合を行い、ポリアミド66樹脂を得た。得られたポリアミド66樹脂の相対粘度は1.71、アミノ末端基量は21.01×10−5mol/g、カルボキシル末端量は1.29×10−5mol/gであった。また、上記化学式にて示される構造を末端に有する、ポリアルキレングリコール構造を15.0重量%含むポリアミド66樹脂であった。
【0110】
参考例4
末端基調整用のヘキサメチレンジアミンを6.81g(アジピン酸1000molに対して20.5mol)、−0.053MPaの減圧下での撹拌時間を90分に変更し、さらに追加で酢酸8.0gを仕込んだ以外は参考例1と同様に重合を行い、ポリアミド66樹脂を得た。得られたポリアミド66樹脂の相対粘度は1.93、アミノ末端基量は4.67×10−5mol/g、カルボキシル末端量は2.15×10−5mol/gであった。また、上記化学式にて示される構造を末端に有する、ポリアルキレングリコール構造を2.2重量%含むポリアミド66樹脂であった。
【0111】
参考例5
末端基調整用のヘキサメチレンジアミンの変わりに末端基調整用のアジピン酸を15.18g(ヘキサメチレンジアミン1000molに対して36.3mol)、“JEFFAMINE”M1000を182gに変更した以外は参考例1と同様に重合を行い、ポリアミド66樹脂を得た。得られたポリアミド66樹脂の相対粘度は1.53、アミノ末端基量は21.64×10−5mol/g、カルボキシル末端量は1.34×10−5mol/gであった。また、上記化学式にて示される構造を末端に有する、ポリアルキレングリコール構造を22.0重量%含むポリアミド66樹脂であった。
【0112】
参考例6
末端基調整用のヘキサメチレンジアミンを8.97g(アジピン酸1000molに対して27.0mol)、“JEFFAMINE”M1000を0gに変更した以外は参考例1と同様に重合を行い、ポリアミド66樹脂を得た。得られたポリアミド66樹脂の相対粘度は1.94、アミノ末端基量は19.30×10−5mol/g、カルボキシル末端量は4.83×10−5mol/gであった。
【0113】
参考例7(ポリアミド410塩の作製)
エタノール15000gにセバシン酸1500g(7.42mol)を添加し、60℃のウォーターバスに浸漬して溶解させた。ここに、あらかじめ調製したテトラメチレンジアミン654g(7.42mol)をエタノール8000gに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。3時間撹拌を続けた後、静置下で室温に放置し、析出した塩を沈降させた。その後、ろ過、エタノール洗浄を行い、50℃で24時間真空乾燥して、ポリアミド410塩を得た。
【0114】
参考例8
参考例7で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン13.11g(ナイロン410塩1000molに対して61.7mol)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間2分後に、缶内温度は213℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで88分間保持した。このとき缶内温度は248℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は253℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で120分間保持することにより、缶内温度は268℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりポリアミド410を得た。得られたポリアミド410を80℃で24時間以上真空乾燥した。得られたポリアミド410の相対粘度は1.93、アミノ末端基量は22.60×10−5mol/g、カルボキシル末端基量は0.88×10−5mol/gであった。
【0115】
実施例1〜9、比較例1〜5
表1および表2に示す配合組成で各成分を予備混合し、スクリュー径が30mm、スクリューが2条ネジの2本のスクリューである、L/D=35の同方向回転完全噛み合い型二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX−30α)を使用し、窒素フローを行いながら、表1および表2に示すシリンダー温度に設定して、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hの条件で溶融混練を行い、吐出口(L/D=35)よりストランド状の溶融樹脂を吐出した。その際のスクリュー構成は、L/D=7、16、25の位置から始まる3箇所のニーディングゾーンを設け、各ニーディングゾーンの長さLk/Dは、順番にLk/D=3.0、3.0、3.0とした。さらに各ニーディングゾーンの下流側に、逆スクリューゾーンを設け、各逆スクリューゾーンの長さLr/Dは、順番にLr/D=0.5、0.5、0.5とした。L/D=23の位置にサイドフィーダーを設置し、(C)ガラス繊維を除く全ての原料を押出機根元(L/D=1の位置)から投入し、(C)ガラス繊維は押出機途中(L/D=23の位置)から投入した。ベント真空ゾーンをL/D=30の位置に設け、ゲージ圧力−0.1MPaで揮発成分の除去を行った。ダイヘッドを通過して4mmφ×2ホールから吐出された溶融樹脂組成物をストランド状に引いて冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより引取りながら裁断することにより、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットは80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(4)〜(10)の評価に供した。評価結果を表1および表2に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
実施例1〜9のポリアミド樹脂組成物は、水酸化マグネシウムあるいはタルクと、ガラス繊維を高充填させているが、射出成形時のせん断速度に相当する1216sec−1での溶融粘度が低いため、射出成形時の流動性に優れることがわかる。また、衝撃強度ならびに冷熱耐性に優れ、ヒートサイクル試験において、クラックが発生するまでのサイクル数が多いことがわかる。さらに、平均計量時間が短く、標準偏差も小さいことより計量安定性に優れていることがわかる。また熱伝導率にも優れる。
【0119】
実施例1と比較例1および比較例2の比較より、本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂として、ポリアルキレングリコール構造が含有されていないポリアミド樹脂を用いると、得られるポリアミド樹脂組成物の衝撃強度が低下し、冷熱耐性が悪化することがわかる。また、溶融粘度が高く、熱伝導率が低下し、計量安定性も不十分で標準偏差が大きいことが分かる。
【0120】
比較例3では、本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂として、ポリアルキレングリコール構造を22重量%含有しているポリアミド66を用いているが、得られるポリアミド樹脂組成物の衝撃強度が低下し、難燃性および冷熱耐性が悪化することが分かる。また、押出混練時のペレット形状が不安定化するため、計量安定性も不十分で標準偏差が非常に大きくなることが分かる。
【0121】
比較例4では、(A)ポリアミド樹脂の含有量が少なく、水酸化マグネシウムの配合量が多いため、得られるポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が高く、衝撃強度が低下し、冷熱耐性および計量安定性が悪化することが分かる。
【0122】
比較例5では、(A)ポリアミド樹脂の含有量が多く、水酸化マグネシウムの配合量が少ないため、熱伝導率が低いことがわかる。そのため、ヒートサイクル試験時にポリアミド樹脂組成物が熱劣化され易く、冷熱耐性が悪化することが分かる。