(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<熱転写リボン>
図1は、熱転写リボンの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すように、熱転写リボン1は、基材2と、基材2の一方の面上に設けられた染料層3と、基材2の他方の面上に設けられた耐熱滑性層4と、を備える。染料層3は、例えば、イエロー染料層5、マゼンダ染料層6及びシアン染料層7がこの順に繰り返して配列されていてもよい。この場合、後述する熱転写受像紙に印画画像を形成する際には、印画画像を形成する一の領域に対して、イエロー染料層5、マゼンダ染料層6及びシアン染料層7がこの順に接することで各染料層の画像パターンが重ねて転写され、印画画像における色が表現される。
【0015】
基材2としては、熱転写リボンの基材として使用できるものであれば特に制限はないが、機械強度が高く、表面が平滑であることから、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリサルフォンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムが好ましい。特に、ポリエステルフィルムに分類されるPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)は比較的安価であるうえ、強度が高く薄いフィルムを形成できるためより好ましい。
【0016】
基材2の厚さは、特に制限はなく、例えば1〜50μmである。機械的強度を確保しつつ、熱による感度を良好に保つ観点から、3〜10μmが好ましい。
【0017】
染料層3は、ポリオール成分と、イソシアネート架橋剤と、染料と、を含む第一の樹脂組成物の少なくとも一部を架橋して得られるものである。すなわち、染料層3は、少なくともポリオール成分及びイソシアネート架橋剤の架橋物と、染料と、を含むが、その他、例えば未反応のポリオール成分及び/又は未反応のイソシアネート架橋剤が含まれていてもよい。
【0018】
ポリオール成分は、後述するイソシアネート架橋剤と架橋可能な水酸基を分子内に有するポリオール化合物で構成されており、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール及びセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0019】
ポリオール成分の含有量は、第一の樹脂組成物全量を基準として、例えば1〜10質量%であってもよく、3〜8質量%であってもよい。
【0020】
イソシアネート架橋剤は、イソシアネート基を分子内に少なくとも1以上有する化合物で構成されており、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)系、ヘキサメチレンジイソシアネート(HID)系、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)系、キシリレンジイソシアネート(XDI)系等が挙げられる。
【0021】
イソシアネート架橋剤の含有量は、第一の樹脂組成物全量を基準として、例えば0.01〜1質量%であってもよく、0.1〜0.5質量%であってもよい。
【0022】
染料としては、熱転写リボンに用いられる昇華染料を特に制限なく使用することができ、例えば、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンテン系、アキサジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等が挙げられる。
【0023】
より具体的には、イエロー染料層5に用いられるイエロー染料としては、C.I.ソルベントイエロー14、16、29、30、33、56、93等、C.I.ディスパースイエロー7、33、60、141、201、231等が挙げられ、マゼンダ染料層6に用いられるマゼンダ染料としては、C.I.ソルベントレッド18、19、27、143、182等、C.I.ディスパースレッド60、73、135、167等、C.I.ディスパースバイオレット13、26、31、56等が挙げられ、シアン染料層7に用いられるシアン染料としては、C.I.ソルベントブルー11、36、63、105等、C.I.ディスパースブルー24、72、154、354等が挙げられる。
【0024】
染料の含有量は、第一の樹脂組成物全量を基準として、例えば、1〜10質量%であってもよく、3〜8質量%であってもよい。
【0025】
第一の樹脂組成物は、上記の各成分のほか、必要に応じて離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、例えば、シリコーン離型剤、フッ素系離型剤等が挙げられる。中でも好適には、シリコーン離型剤が用いられる。
【0026】
第一の樹脂組成物において、ポリオール成分の水酸基当量に対するイソシアネート架橋剤のイソシアネート基当量の比は、0.1〜1.1である。当該比が0.1未満であると、架橋反応が十分に進行せず、ハイライト部の染料濃度を十分に低減することができない。一方、当該比が1.1を超えると、架橋反応が過度に進行してしまい、シャドー部の染料濃度を十分に向上することができない。このような観点から、ポリオール成分の水酸基当量に対するイソシアネート架橋剤のイソシアネート基当量の比は、0.5〜1.1であることが好ましく、0.8〜1.1であることがより好ましく、0.95〜1.05であることが更に好ましい。
【0027】
染料層3を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、溶剤中に上述した各成分を添加して第一の樹脂組成物を作製し、得られた第一の樹脂組成物を上述した基材2の一方の面上にグラビアコート法等により塗布した後、乾燥する方法が挙げられる。
【0028】
溶剤としては、特に制限されないが、例えばメチルエチルケトン、トルエン等が挙げられる。
【0029】
染料層3の厚さは、特に制限はなく、例えば0.5〜1.0μmである。
【0030】
耐熱滑性層4は、サーマルヘッドと熱転写リボンとの間の熱による固着を防ぐために設けられるものであり、例えば、バインダー樹脂、機能性添加剤、充填材、硬化剤等を含む。
【0031】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0032】
機能性添加剤としては、例えば、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤などが挙げられる。
【0033】
充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
【0034】
硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、それらの誘導体等が挙げられる。
【0035】
耐熱滑性層4を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、上述した各成分を含む混合物を作製し、上述した基材2の一方の面上に塗布した後、乾燥する方法が挙げられる。
【0036】
耐熱滑性層4の厚さは、特に制限はなく、例えば1.0〜1.5μmである。
【0037】
本実施形態に係る熱転写リボンは、上述した基材、染料層及び耐熱滑性層のほかに、必要に応じてオーバーレイヤー層(OL層)を設けてもよい。OL層は、染料層における染料が後述する熱転写受像紙側に転写された後に、該受像紙側に転写される層であり、受像紙側に印画された印画画像を保護するための保護層を形成するために用いられる。OL層は1種又は複数種設けられていてもよく、複数種設けられる場合、各OL層における塗料を順に熱転写受像紙側に転写することで、熱転写受像紙側に保護層を形成してもよい。OL層が設けられる場合の熱転写リボンは、例えば、基材の一方の面上に、染料層と、OL層とがこの順に繰り返して配列される。また、OL層の基材からの剥離をより効果的に行うため、OL層と基材との間に剥離層を設けてもよい。OL層には、例えば、アクリル系の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。アクリル系熱可塑性樹脂は、例えば、三菱レイヨン株式会社製のダイヤナールBR(商品名)等の市販品を用いてもよい。
【0038】
<熱転写受像紙>
図2は、熱転写受像紙の一実施形態を示す模式断面図である。
図2に示すように、熱転写受像紙10は、支持体11の一方の面上に、第一の接着剤層12、第一のプラスチックフィルム層13、プライマー層14及び受像層15をこの順に備え、且つ、支持体11の他方の面上に、第二の接着剤層16、第二のプラスチックフィルム層17及び裏面層18をこの順に備える。
【0039】
支持体11としては、熱転写受像紙の支持体として使用できるものであれば特に制限はないが、熱転写において、加熱された状態でも取扱い上支障のない程度の機械的強度を有するものが好ましい。
【0040】
支持体11としては、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、レジンコート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂若しくはエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙等の紙、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフィルムなどが挙げられる。
【0041】
支持体11の厚さは、特に制限はなく、例えば90〜120μmである。
【0042】
第一の接着剤層12及び第二の接着剤層16としては、特に制限されないが、例えば低密度ポリエチレン接着性樹脂により構成されていてもよい。第一の接着剤層12及び第二の接着剤層16は、互いに同種の材料により構成されていても異種の材料により構成されていてもよいが、印画後の熱転写受像紙にカールが発生することを防止する観点から、互いに異種の材料が用いられることが好ましい。特に、第二の接着剤層16が第一の接着剤層12よりも硬くなるような材料を用いた場合(例えば、第一の接着剤層12が低密度ポリエチレンで構成され、第二の接着剤層16が低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのドライブレンドで構成される場合)は、印画後の熱転写受像紙において、受像層側に凹状のカールの発生を抑えられるため好ましい。
【0043】
第一の接着剤層12及び第二の接着剤層16の厚さは、特に制限されるものではなく、例えば5〜40μmであってもよい。
【0044】
第一のプラスチックフィルム層13及び第二のプラスチックフィルム層17としては、第一のプラスチックフィルム層13及び第二のプラスチックフィルム層17は、互いにミクロボイドを有していても有していなくともよいが、断熱性能に優れる観点から、第一のプラスチックフィルム層13は、ミクロボイドを有するプラスチックフィルム層であることが好ましい。これにより、染料を転写させる際に効果的に色の調整を行うことができ、好適な画像形成を達成できる。第二のプラスチックフィルム層17は、例えば、ミクロボイドを有しないプラスチックフィルム層であってもよい。
【0045】
第一のプラスチックフィルム層13の厚さは、特に制限されるものではなく、例えば20〜50μmであってもよい。第二のプラスチックフィルム層17の厚さも、特に制限されるものではなく、例えば18〜50μmであってもよい。
【0046】
プライマー層14は、後述する受像層15と第一のプラスチックフィルム層13との接着性を確保するために設けられる。プライマー層14としては、特に制限はないが、例えば水系ウレタン、水系ゼラチン等をメインバインダーとして用いてもよい。メインバインダーとともに架橋剤を用いてもよく、一般的な架橋剤としては、水系塗料において使用できる材料が用いられる。架橋剤としては、アジリジン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤が挙げられる。プライマー層14の厚さも特に制限されるものではなく、例えば0.5〜10μmであってもよい。
【0047】
裏面層18は、背面にかかわる性能、例えば、筆記性能、糊付け性能、捌き性能、ヘッドクリニーング性能等を付与させるために設けられる。裏面層18は、例えば、バインダー樹脂で構成されていてもよい。バインダー樹脂としては、例えば、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。裏面層18の厚さは特に制限されるものではなく、例えば1〜5μmであってもよい。
【0048】
受像層15は、カルボン酸成分と、カルボジイミド架橋剤と、ウレタン会合剤と、を含む第二の樹脂組成物の少なくとも一部を架橋して得られるものである。すなわち、受像層15は、少なくともカルボン酸成分及びカルボジイミド架橋剤の架橋物と、ウレタン会合剤と、を含むが、その他、例えば未反応のカルボン酸成分及び/又は未反応のカルボジイミド架橋剤が含まれていてもよい。
【0049】
カルボン酸成分は、後述するカルボジイミド架橋剤と架橋可能なカルボキシル基を分子内に有する化合物で構成されており、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル変性ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及びポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0050】
カルボン酸成分の含有量は、第二の樹脂組成物全量を基準として、例えば10〜50質量%であってもよく、20〜30質量%であってもよい。
【0051】
カルボジイミド架橋剤は、上記カルボン酸成分のカルボキシル基と架橋可能なカルボジイミド化合物で構成されている。カルボジイミド架橋剤としては、カルボジライトE−05(日清紡ケミカル株式会社製)等の市販品を用いることができる。
【0052】
カルボジイミド架橋剤を用いることで、より効果的に印画画像のシャドー部の染料濃度を向上させるとともにハイライト部の染料濃度を低下させることができる。このような効果が得られる理由として、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、まず、カルボジイミド架橋剤は、アジリジン架橋剤やイソシアネート架橋剤と比較すると、架橋速度が遅いと考えられる。そのため、第二の樹脂組成物を支持体上に塗布して乾燥した際、カルボジイミド架橋剤を含む塗膜の架橋反応は、塗膜の表層部のみで起こるものと考えられる。一方、印画時は、サーマルヘッドによって熱転写リボンを加熱することで、染料層中の染料を昇華させて受像層へ移行させるが、ハイライト部を印画する際は、サーマルヘッドからの熱エネルギーが比較的低く、シャドー部を印画する際は、サーマルヘッドからの熱エネルギーが比較的高い。その結果、低エネルギーの熱に対しては、受像層表層の架橋物により染料との染着効果が抑制され、ハイライト部の染料濃度が低下し、高エネルギーの熱に対しては、受像層内部まで染料が到達し、染着効果が高まり、シャドー部の染料濃度が向上するものと考えられる。
【0053】
カルボジイミド架橋剤の含有量は、第二の樹脂組成物全量を基準として、例えば1〜30質量%であってもよく、10〜20質量%であってもよい。
【0054】
ウレタン会合剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、UH450VF、UH526、UH530、UH540、UH472、UH420、UH752、UH756VF(以上、ADEKA社製)、Rheovis PU1191、Rheovis PU1291、Rheovis PU1331、Rheovis HS1212(以上、BASF社製)等が挙げられる。
【0055】
第二の樹脂組成物は、ウレタン会合剤を含むが、その含有量は、第二の樹脂組成物全量を基準として、0.1〜5.0質量%である。ウレタン会合剤の含有量が0.1質量%未満であると、シャドー部の染料濃度を十分に向上することができない。一方、ウレタン会合剤の含有量が5.0質量%を超えると、ウレタン結合と染料(例えばマゼンダ染料)との染着頻度が増強され、印画画像が赤みを帯びる傾向がある。また、第二の樹脂組成物の粘度が増加し、グラビアコート、リバースコート等で塗布する際にドクターブレードによる掻き取り不足が生じ、スジ、ムラ等の外観不良が発生し、加工適性が確保できない場合がある。このような観点から、ウレタン会合剤の含有量は、第二の樹脂組成物全量を基準として、0.5〜4.0質量%であることが好ましく、1.0〜3.0質量%であることがより好ましく、1.5〜2.5質量%であることが更に好ましい。
【0056】
第二の樹脂組成物は、上記の各成分のほか、必要に応じて離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、例えば、シリコーン離型剤、フッ素系離型剤等が挙げられる。
【0057】
第二の樹脂組成物における、カルボン酸成分のカルボキシル基当量に対するカルボジイミド架橋剤のカルボジイミド基当量の比は、0.1〜2.0である。当該比が0.1未満であると、架橋反応が十分に進行せず、本発明の効果を十分に発揮することができない。一方、当該比が2.0を超えると、カルボジイミド基当量が過剰に存在することで、上述したポリオール成分との摩擦帯電が大きくなり、JAMが発生しやすくなる。このような観点から、カルボン酸成分のカルボキシル基当量に対するカルボジイミド架橋剤のカルボジイミド基当量の比は、0.5〜1.1であることか好ましく、0.8〜1.1であることがより好ましく、0.95〜1.05であることが更に好ましい。
【0058】
受像層15を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、溶剤中に上述した各成分を添加して第二の樹脂組成物を作製し、得られた第二の樹脂組成物を上述した支持体11の一方の面上にグラビアコート法等により塗布した後、乾燥する方法が挙げられる。
【0059】
溶剤としては、特に制限されないが、例えば水等が挙げられる。
【0060】
受像層15の厚さは、特に制限はなく、例えば0.1〜5.0μmである。
【0061】
本実施形態においては、上述した熱転写リボンと熱転写受像紙をセットとして用いることにより、印画画像のシャドー部の染料濃度を向上させるとともにハイライト部の染料濃度を低下させることができ、更に印画画像の赤みを抑え、プリンタ初期動作中に熱転写リボンの染料層と熱転写受像紙の受像層との張り付きを抑制することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[熱転写リボンの作製]
(製造例1〜6)
基材として厚さ4.5μmのPETフィルムの一方の面上に、耐熱滑性層を、グラビアコート法により乾燥時の厚さが1.3μmとなるように塗布した。続いて基材の他方の面上に、表1に示す組成を有する第一の樹脂組成物を、ドライ塗布量が0.8g/m
2となるように塗布し、乾燥時の厚さが0.8μmとなるように染料層を形成して、熱転写リボンを得た。
【0064】
【表1】
【0065】
表1における各成分は、以下のものを用いた。
[ポリオール成分]
KS−5:ポリビニルブチラール樹脂、積水化学工業株式会社製
[イソシアネート架橋剤]
バーノックD750:トリレンジイソシアネート(TDI)系、DIC株式会社製
[染料]
FS Red 1367:有本化学株式会社製
HSR2174:三菱化学株式会社製
[離型剤]
EFKA3031:BASF社製
[溶剤]
MEK:メチルエチルケトン
TOL:トルエン
ANON:シクロヘキサノン
【0066】
[熱転写受像紙の作製]
(製造例7〜19)
熱転写受像紙は、エクストルーダーラミネートにより作製した。まず、紙(日本製紙株式会社製、商品名:NATURAL、厚さ:150μm)とプラスチックフィルム(東レ株式会社製、商品名:ルミラーS10、厚さ:18μm)とを、低密度ポリエチレン接着性樹脂(日本ポリエチレン株式会社、商品名:ノバテックLC607K)を押し出しながらラミネートし、紙の一方の面上に接着剤層を介してプラスチックフィルムが積層された積層体を得た。続いて該積層体における紙の他方の面上に、低密度ポリエチレン接着性樹脂を押し出しながらミクロボイドを有するプラスチックフィルムをラミネートし、更にミクロボイドを有するプラスチックフィルム上にプライマー層(水系ウレタン及びゼラチンを含む水系塗料)を塗布した。その後、該プライマー層上に表2及び表3に示す組成を有する第2の樹脂組成物をリバースグラビアコートにてドライ塗布量3.0g/m
2、乾燥時の厚さが1.0μmとなるように受像層を形成し、熱転写受像紙を作製した。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
表2及び表3における各成分は、以下のものを用いた。
[カルボン酸成分]
ビニブラン690:塩化ビニル系エマルジョン、固形分54%、日信化学工業株式会社製
ビニブラン700:塩化ビニル系エマルジョン、固形分30%、日信化学工業株式会社製
[カルボジイミド架橋剤]
カルボジライトE−05:日清紡ケミカル株式会社製
[アジリジン架橋剤]
PZ33:日本触媒株式会社製、ケミタイトPZ33
[離型剤]
KF352A:ポリエーテルシリコーン離型剤、信越化学工業株式会社製
【0070】
[色評価]
製造例1〜6で作製した熱転写リボン及び製造例7〜19で作製した熱転写受像紙を組み合わせて、市販の熱転写式昇華プリンター(三菱デジタルカラープリンター、CP−D70D)を用いてVステップ画像を印画した。
【0071】
(ハイライト部の濃度)
中階調(128階調)印画部のV濃度を測色し、光学濃度を測定した。光学濃度が0.62以下である場合に、自然画、人肌の色の再現性が確保でき、かつハイライト部の染料濃度が十分に低下しており良好「○」であると判断した。一方、光学濃度が上記数値範囲を満たさない場合、ハイライト部の染料濃度が十分に低下しておらず不良「×」であると判断した。
【0072】
(シャドー部の濃度)
高階調(256階調)印画部のV濃度を測色し、光学濃度を測定した。光学濃度が2.00以上である場合に、シャドー部の染料濃度が十分に向上しており、良好「○」であると判断した。一方、光学濃度が上記数値範囲を満たさない場合、シャドー部の染料濃度が十分に向上しておらず、不良「×」であると判断した。なお、測色は、分光測色計(IliO2、Xrite社製)を用いた。
【0073】
(赤みの評価)
印画画像が赤みを帯びているか否かを、色彩色差計(コニカミノルタ株式会社製、商品名:CS−100A)で測定した。
印画画像が赤みを帯びていない実施例1に対してΔa
*が3を超えるものを赤みが帯びていると判定した。
【0074】
[プリンタ通過性能評価]
製造例1〜6で作製した熱転写リボン及び製造例7〜19で作製した熱転写受像紙を組み合わせて、市販の熱転写式昇華プリンター(三菱デジタルカラープリンター、CP−D70D)を用いて黒ベタ印刷を行い、熱転写リボンと熱転写受像紙とが貼りつき、熱転写リボンが破断する程度のJAMが発生するか否かを調べた。なお、JAMとは、印画時において、熱転写リボンと熱転写受像紙との染料の昇華転写後の剥離性能が不足して、熱転写リボンが貼り付く現象であり、その現象が重症化したものが、リボン破断である。
【0075】
上記各評価結果を表4、表5及び表6に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
実施例1〜3に示されるように、本発明の熱転写リボン及び熱転写受像紙のセットによれば、印画画像のシャドー部の染料濃度を向上させるとともにハイライト部の染料濃度を低下させることができ、更に印画画像の赤みを抑え、プリンタ初期動作中に熱転写リボンの染料層と熱転写受像紙の受像層との張り付きを抑制することができる。
【0080】
一方、熱転写リボン及び熱転写受像紙のうちの少なくとも一方が本発明の要件を満たさないものを用いた場合、上述した作用効果のすべてを満たすことはできない。
【0081】
例えば、第一の樹脂組成物のポリオール成分の水酸基当量に対するイソシアネート架橋剤のイソシアネート基当量の比が0.1未満である熱転写リボン(製造例5の熱転写リボン)を用いた比較例1〜3では、ハイライト部の染料濃度の低下が不十分であり、当該比が1.1を超える熱転写リボン(製造例6の熱転写リボン)を用いた比較例11〜19では、シャドー部の染料濃度の向上が不十分であり、自然画を忠実に再現することができなかった。
【0082】
また、第二の樹脂組成物のウレタン会合剤の含有量が0.1質量%未満である熱転写受像紙(製造例9、13及び16の熱転写受像紙)を用いた比較例1〜7、11、14及び17では、シャドー部の染料濃度の向上が不十分であり、当該含有量が5.0質量%を超える熱転写受像紙(製造例11、15及び18の熱転写受像紙)を用いた比較例8、10、13、16及び19では、印画画像が赤みを帯びてしまい、自然画を忠実に再現することができなかった。
【0083】
さらに、第二の樹脂組成物のカルボン酸成分のカルボキシル基当量に対するカルボジイミド架橋剤のカルボジイミド基当量の比が0.1未満である熱転写受像紙(製造例13〜15の熱転写受像紙)を用いた比較例1、4及び11〜13では、シャドー部の染料濃度の向上が不安定であり、自然画を忠実に再現することができなかった。一方、当該比が2.0を超える熱転写受像紙(製造例16〜18の熱転写受像紙)を用いた比較例3、6、9〜10及び17〜19では、印画形成時にJAMが発生してしまい、プリンタ通過性能に問題が発生した。
【0084】
また、第二の樹脂組成物において、カルボジイミド架橋剤の代わりにアジリジン架橋剤を用いた作製した熱転写受像紙(製造例19の熱転写受像紙)を用いた比較例20では、ハイライト部の染料濃度の低下及びシャドー部の染料濃度の低下がともに不十分であり、自然画を忠実に再現することができなかった。