(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イベント検出回路は、前記デジタルデータのレベルと予め決定されたレベルのデジタルデータが検出された期間との少なくとも一方に関連するイベントを検出する請求項1〜3のいずれか一項に記載の波形記録装置。
前記メモリ回路は、前記波形データの記憶を停止するタイミングを、前記トリガ信号が生成されるタイミングと前記イベント検出信号が生成されるタイミングとの時間差に基づいて調整する請求項1〜4のいずれか一項に記載の波形記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による波形記録装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明による波形記録装置の一実施の形態を示す図であり、
図2は、
図1の一部を詳細に示す図である。
図1に示す波形記録装置1は、デジタルオシロスコープ等として用いられ、アナログ入力信号Saが外部から入力される。
【0016】
波形記録装置1は、アナログ・デジタル変換器(ADC)11と、バッファ12と、制御部13と、トリガ回路14と、バッファ制御回路15と、イベント検出回路16と、取込み処理回路17と、メモリ回路18と、波形処理及び表示処理回路19と、表示器20と、を備える。
【0017】
制御部13は、例えば、CPUによって構成される。バッファ12、バッファ制御回路15、イベント検出回路16、取込み処理回路17並びに波形処理及び表示処理回路19は、例えば、メモリを内蔵したFPGA(field-programmable gate array)によって構成される。メモリ回路18は、後に説明する波形データDwを記憶するメモリ及びメモリを制御する周辺回路によって構成される。メモリは、例えば、DRAM(dynamic random access memory)によって構成される。周辺回路は、例えば、FPGAによって構成される。表示器20は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)によって構成される。
【0018】
ADC11は、アナログ入力信号SaをデジタルデータDd(例えば、8ビットのデジタル値)に変換し、デジタルデータDdは、バッファ12及び取込み処理回路17に入力される。ADC11のサンプリングレートが1ギガサンプル/秒である場合、デジタルデータDdが1ナノ秒ごとに生成されるが、ADC11の後段のバッファ12並びに取込み処理回路17及びメモリ回路18においてデータ処理を並列化することによって処理速度を低減することができる。例えば、FPGAの内部に設けられた125MHzのシステムクロック(図示せず)を用いた場合、8ナノ秒ごとに8個のデジタルデータDdが並列に処理される。
【0019】
バッファ12は、バッファ制御回路15からの書込み/読出し信号C1に基づいて、デジタルデータDdを一時的に記憶する。本実施の形態では、バッファ12は、書込み/読出し信号C1の立上りによりデジタルデータDdの記憶を開始し、書込み/読出し信号C1の立下りによりデジタルデータDdの記憶を終了し、バッファ12に記憶されたデジタルデータDdをイベント検出回路16に出力する。
【0020】
制御部13は、トリガ条件に関する情報Xtをトリガ回路14に提供する。また、制御部13は、イベントの条件に関する情報Xiをイベント検出回路16に提供する。また、制御部13は、波形データDwの波形処理及び表示処理条件に関する情報Xdを波形処理及び表示処理回路19に提供する。また、制御部13は、メモリ回路18が記憶動作を開始するための指令C2をメモリ回路18に出力する。なお、トリガ条件に関する情報Xt、イベントの条件に関する情報Xi、波形データDwの波形処理及び表示処理条件に関する情報Xd及び指令C2は、例えば、キーボード等の操作部(図示せず)の操作により制御部13に入力される。さらに、制御部13は、後に説明するイベント検出信号Siに応答して、メモリ回路18の記憶動作を終了するとともにメモリ回路18に記憶された波形データDwを読み出すための指令C3をメモリ回路18に出力する。
【0021】
本実施の形態は、イベントの条件に、正パルスの幅及び高さ(最大値)を選択した場合を例にとって説明するが、負パルスを条件にすることも可能である。また、パルスの高さの代わりに平均値等を用いることも可能である。
【0022】
本実施の形態では、トリガ条件は、予め設定された閾値レベルThに基づいて検出されるアナログ入力信号Saの立上りエッジ及び立下りエッジである。この場合、トリガ条件に関する情報Xtは、アナログ入力信号Saが閾値レベルThより上になったか否か及びアナログ入力信号Saが閾値レベルThより上になった後に閾値レベルThより下になったか否かの判定を行う旨の条件を含む。
【0023】
また、本実施の形態では、イベントは、デジタルデータDd(更に詳しくは、後に説明する補間データDh)が閾値レベルThを超えている期間によって規定されるパルス幅Wである。この場合、イベントの条件に関する情報Xiは、デジタルデータDdを補間処理するために用いられる補間倍率H、閾値レベルTh並びに検出すべきパルスのパルス幅W及び最大値Pmを含む。
【0024】
トリガ回路14は、予め設定された閾値レベルThに基づいて検出されるアナログ入力信号Saの立上りエッジ及び立下りエッジに応じてトリガ信号T1,T2を生成する。本実施の形態では、トリガ回路14は、アナログ入力信号Saのレベルと閾値レベルThとをコンパレータ(図示せず)を用いて比較し、トリガ回路14に対するディセーブル信号(図示せず)が解除された状態でアナログ入力信号Saが閾値レベルThより上になったときにトリガ信号T1を生成してバッファ制御回路15に送信する(すなわち、トリガ信号T1はローレベルからハイレベルに遷移する。)。また、トリガ回路14は、トリガ回路14に対するディセーブル信号(図示せず)が解除された状態でアナログ入力信号Saが閾値レベルThより上になった後に閾値レベルThより下になったときにトリガ信号T2を生成してバッファ制御回路15に送信する(すなわち、トリガ信号T2はローレベルからハイレベルに遷移する。)。トリガ回路14は、トリガ信号T2をバッファ制御回路15に送信した後にディセーブル状態になる。なお、トリガ回路14は、トリガ信号T1を生成するまではトリガ信号T2を生成しないようにする。また、トリガ信号T1を生成してから所定の時間が経過するまでにアナログ入力信号Saが閾値レベルThより下になった場合には、トリガ回路14は初期化され、トリガ回路14に対するディセーブル信号が解除された状態(すなわち、トリガ信号T1はハイレベルからローレベルに遷移する。)に戻ることによって、無効なイベント検出動作を排除することを可能にする。また、トリガ回路14は、予め設定された閾値レベルThに基づいてデジタルデータDdの立上りエッジ及び立下りエッジを検出し、検出した立上りエッジ及び立下りエッジに応じてトリガ信号T1,T2を生成してもよい。
【0025】
バッファ制御回路15は、デジタルデータDdからイベント(この場合、パルス幅W)を検出するために、バッファ12が記憶動作を開始してから終了するまで期間をトリガ信号T1,T2に基づいて制御する。本実施の形態では、バッファ制御回路15は、トリガ信号T1を受信すると、バッファ12がデジタルデータDdの記憶を開始するために書込み/読出し信号C1をハイレベルにする。また、バッファ制御回路15は、トリガ信号T2を受信すると、デジタルデータDdの記憶を終了してバッファ12に記憶されたデジタルデータDdをイベント検出回路16に出力するために書込み/読出し信号C1をローレベルにする。
【0026】
また、本実施の形態では、バッファ制御回路15は、バッファ12が記憶動作を開始してから終了するまで期間を調整するために、トリガ信号T1,T2が生成された時間の他に種々の要件を考慮する。種々の要件は、例えば、トリガ信号T1の生成からバッファ12の制御までの遅れ時間、トリガ信号T2の生成からバッファ12の制御までの遅れ時間、トリガ信号T1の生成のタイミングとデジタルデータDdのバッファ12への記憶のタイミングとの差、補間処理に必要な余分なデータ数等を含む。種々の要件についての情報を、例えば、操作部の操作を介して制御部13からバッファ制御回路15に提供してもよい。
【0027】
イベント検出回路16は、バッファ12が記憶動作を開始してから終了するまで期間の終了の際にバッファ12に記憶されているデジタルデータDdからイベントが検出された場合にイベント検出信号Siを生成する。本実施の形態では、イベント検出回路16は、
図2に示すように、イベント検出制御回路16aと、補間処理回路16bと、時間検出処理回路16cと、レベル検出処理回路16dと、イベント判定回路16eと、を有する。
【0028】
イベント検出制御回路16aは、イベントの条件に関する情報Xiが制御部13から提供される。そして、イベント検出制御回路16aは、補間倍率Hについての情報を補間処理回路16bに提供し、閾値レベルThを時間検出処理回路16cに提供し、検出すべきパルスのパルス幅W及び最大値Pmについての情報をイベント判定回路16eに提供する。
【0029】
補間処理回路16bは、イベントを検出するためのデジタルデータDdがバッファ12から供給され、補間倍率HでデジタルデータDdの補間処理を行うことによって補間データDhを生成して時間検出処理回路16c及びレベル検出処理回路16dに供給する。補間処理は、一般的なsin(x)/x補間、リニア補間又はこれらの組合せ等を用いることができる。補間倍率Hが100である場合、1ナノ秒ごとのデジタルデータDdは、10ピコ秒ごとの補間データDhに変換される。また、補間処理回路16bは、補間データDhの出力期間に、時間検出信号C11を時間検出処理回路16cに出力する。
【0030】
時間検出処理回路16cは、時間検出信号C11に従って、正スロープ時刻及び負スロープ時刻を検出処理し、レベル検出期間信号C12をレベル検出処理回路16dに出力し、かつ、パルス幅の検出処理結果Dtをイベント判定回路16eに供給する。時間検出処理回路16cは、補間データDhを用いることによって高精度の時間検出が可能になる。時間検出処理においてアナログ入力信号Saのノイズ等に起因する誤測定を防ぐために、一般的に用いられているヒステリシス処理を行ってもよい。また、負スロープ時刻を、後に表示器20に波形を表示する際に時間軸の基準に使用してもよい。
【0031】
レベル検出処理回路16dは、レベル検出期間信号C12に従って、補間データDhの最大値Lの検出処理結果De(補間データのレベル)を検出処理し、検出処理結果Deをイベント判定回路16eに供給する。
【0032】
イベント判定回路16eは、バッファ12に記憶されているデジタルデータDdからイベントが検出されたか否かを、検出処理結果Dt及びDe並びにイベント検出条件であるパルス幅W及び最大値Pmに基づいて判定する。
図3は、イベント検出回路によって検出される正パルスのイベントの一例を示す図である。
図3において、閾値レベルThを横切る正スロープ時刻から負スロープ時刻までの期間Tiは、時間検出処理回路の検出処理結果Dtに対応し、期間Tiにおける補間データDhの最大値Lは、レベル検出処理回路の検出処理結果Deに対応する。イベント判定回路16eは、検出処理結果Dtがパルス幅Wに相当するか否か及び検出処理結果Deが最大値Pmに相当するか否かを判定する。更に詳しくは、イベント判定回路16eは、検出処理結果Dtがパルス幅Wの上限値(例えば、20.1ナノ秒)と下限値(例えば、19.9ナノ秒)の間に存在するか否か及び検出処理結果Deが最大値Pmの上限値と下限値の間に存在するか否かを判定する。
【0033】
図1を参照して、バッファ12に記憶されているデジタルデータDdからイベントが検出された場合、イベント判定回路16eは、イベント検出信号Siを制御部13及びメモリ回路18に供給する。それに対し、バッファ12に記憶されているデジタルデータDdからイベントが検出されなかった場合、イベント判定回路16eは、トリガ回路14に対するディセーブル信号を解除するための解除信号Ssをトリガ回路14に供給する。正スロープ時刻から負スロープ時刻までの期間Tiがパルス幅Wより著しく大きい場合は、時間検出処理回路16cでパルス幅の検出処理結果Dtが正常に検出できない可能性がある。このような場合は、イベント判定回路16eによる判定を待たずに、バッファ制御回路15又は時間検出処理回路16cが解除信号Ssをトリガ回路14に供給してもよい(図示せず)。
【0034】
取込み処理回路17は、デジタルデータDdの取り込み処理(一定期間ごとのピーク検出及び平均化処理、デシメーション(間引き)等)を行うことによって波形データDwを生成し、生成した波形データDwをメモリ回路18に格納する。デジタルデータDdの取り込み処理を行うための取込みモードを、例えば、操作部の操作を介して制御部13によって選択してもよい。
【0035】
メモリ回路18は、指令C2に応答して波形データDwの記憶動作を開始し、プリトリガ(トリガ発生前)分としてメモリ回路18に記憶すべきデータとして設定された個数分の波形データDwを記憶する。その後、制御部13は、トリガ回路14に対するディセーブル信号を解除する。そして、メモリ回路18は、トリガ回路14に対するディセーブル信号が解除された後も波形データDwの記憶動作を継続し、イベント検出回路16からのイベント検出信号Siを待機する。イベント検出信号Siがイベント検出回路16からメモリ回路18に供給されると、メモリ回路18は、表示器20の表示時間条件に基づいて設定された個数分の波形データDwをポストトリガ(トリガ発生後)分として記憶した後に波形データDwの記憶を停止する。
【0036】
検出されたイベントの時刻を基準にしてメモリ回路18に記憶される波形データDwの個数を制御するために、メモリ回路18は、波形データDwの記憶を停止するタイミングを、トリガ信号T2が生成されるタイミングに基づいて調整するのが好ましい。トリガ信号T2が生成されるタイミングとイベント検出信号Siが生成されるタイミングとの時間差は、例えば、システムクロックでカウントすることによって計測される。また、メモリ回路18に記憶される波形データDwの個数を制御するために、トリガ信号T2が生成されるタイミングとイベント検出信号Siが生成されるタイミングとの時間差を予め予測し、予測した時間差をポストトリガ分として記憶させる波形データDwの個数又はメモリ回路18のオーバーラン(余分な書込み個数)に反映させてもよい。
【0037】
メモリ回路18は、指令C3に応答して、波形データDwを読み出し、波形データDwを波形処理及び表示処理回路19に出力する。波形処理及び表示処理回路19は、制御部13から提供された波形データDwの波形処理及び表示処理条件に関する情報Xdに基づいて、波形データDwの波形処理及び表示処理を行う。そして、波形処理及び表示処理回路19は、波形処理及び表示処理が行われた波形データDwdを表示器20に供給し、表示器20は、波形処理及び表示処理が行われた波形データDwdを表示する。
【0038】
図4は、
図1に示す波形記録装置の波形記録動作を示すフローチャートである。このフローは、波形記録装置1が波形記録動作を開始してからディセーブル期間が解除された後にトリガ信号T1,T2が生成されることを前提にしている。先ず、メモリ回路18は、指令C2に応答して波形データDwの記憶動作を開始する(ステップS1)。この場合、メモリ回路18は、プリトリガ分の波形データDwを記憶してからトリガ回路14に対するディセーブル信号を解除した後も波形データDwの記憶を継続する。
【0039】
次に、トリガ回路14は、トリガ条件(立上りエッジ)に基づいてトリガ信号T1を生成する(ステップS2)。次に、バッファ制御回路15は、トリガ信号T1に応答して書込み/読出し信号C1をハイレベルにし、バッファ12は、書込み/読出し信号C1に応答してデジタルデータDdの記憶を開始する(ステップS3)。
【0040】
次に、トリガ回路14は、トリガ条件(立下りエッジ)に基づいてトリガ信号T2を生成する(ステップS4)。次に、バッファ制御回路15は、トリガ信号T2に応答して書込み/読出し信号C1をローレベルにし、バッファ12は、書込み/読出し信号C1に応答してデジタルデータDdの記憶を終了し、デジタルデータDdを補間処理回路16bに供給する(ステップS5)。
【0041】
次に、補間処理回路16bは、バッファ12から供給されたデジタルデータDdの補間処理を行う(ステップS6)。次に、時間検出処理回路16cは、正スロープ時刻及び負スロープ時刻からパルス幅の検出処理結果Dtを検出処理し、レベル検出処理回路16dは、レベル検出期間信号C12に従って、補間データDhから最大値の検出処理結果Deを検出処理する(ステップS7)。ステップS6及びステップS7は、機能上の手順を説明したものであり、回路動作上は、イベント検出処理する時間を短縮するためにパイプラインで順次処理される。
【0042】
次に、イベント判定回路16eは、バッファ12に記憶されているデジタルデータDdからイベントが検出されたか否かを判定する(ステップS8)。イベントが検出されなかった場合、処理はステップS2に戻る。
【0043】
それに対し、イベントが検出された場合、メモリ回路18は、ポストトリガ分として設定された個数分の波形データDwを記憶した後に波形データDwの記憶を停止する(ステップS9)。次に、波形処理及び表示処理回路19は、メモリ回路18に記憶された波形データDwの波形処理及び表示処理を行い、表示器20は、波形処理及び表示処理が行われた波形データDwdを表示する(ステップS10)。その後、波形記録装置1は処理を終了する。
【0044】
本実施の形態によれば、メモリ回路18への波形データDwの記憶と並行してバッファ12に記憶されたデジタルデータDdからリアルタイムでイベント検出を行うので、波形記録の中断及び再開の期間の発生を回避することができる。
【0045】
また、イベント検出のために用いられるデジタルデータDdはトリガ信号T1,T2の発生タイミングの周辺に限定されるので、高効率のイベント検出が可能である。また、補間データDhを用いたイベント検出を行うことによって、高周波数の計数クロックを用いることなく高精度のイベント検出が可能となり、波形記録装置1のコストの上昇を回避することができる。また、デジタルデータDdの取込み処理から独立したイベント検出が可能となる。さらに、イベント検出の際に時間検出処理及びレベル検出処理を行うことによって、所望のイベントの取得が容易になる。
【0046】
さらに、イベントを高精度に検出することが要求されない場合には、バッファ12に記憶するデジタルデータDdをデシメーションすることによって、広いパルス幅を検出することができる。
【0047】
図5は、本発明による波形記録装置の他の実施の形態を示す図であり、
図6は、
図5の一部を詳細に示す図である。波形記録装置1’は、ADC11と、バッファ12’,12”と、制御部13と、トリガ回路14と、バッファ制御回路15’と、イベント検出回路16’と、取込み処理回路17と、メモリ回路18と、波形処理及び表示処理回路19と、表示器20と、を備える。
【0048】
バッファ12’、 バッファ12”、バッファ制御回路15’、イベント検出回路16’、取込み処理回路17並びに波形処理及び表示処理回路19は、例えば、メモリを内蔵したFPGAによって構成される。
【0049】
検出すべきイベントであるパルス幅が広くなるに従ってバッファ容量を増大させる必要がある。本実施の形態では、バッファ容量を増大させることなく広いパルス幅を高精度に検出するために、アナログ入力信号Saの立上りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶するバッファ12’及びアナログ入力信号Saの立下がりエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶するバッファ12”を用いる。バッファ12’は、第1のバッファの一例であり、バッファ12”は、第2のバッファの一例である。また、バッファ12’及びバッファ12”に記憶するデジタルデータDdのデータ数の情報は、制御部13からバッファ制御回路
15’に提供される。
【0050】
バッファ制御回路15’は、広いパルス幅Wを検出するためのデジタルデータDdすなわちアナログ入力信号Saの立上りエッジ周辺のデジタルデータDdをバッファ12’に記憶させるために、バッファ12’が記憶動作を開始してから終了するまでの期間を、トリガ信号T1及び制御部13から提供されたデータ数に基づいて制御する。本実施の形態では、バッファ制御回路15’がトリガ信号T1を受信すると、バッファ制御回路15’は、バッファ12’がデジタルデータDdの記憶を開始するために書込み/読出し信号C1’をハイレベルにする。その後、バッファ制御回路
15’は、制御部13から提供されたデータ数をシステムクロックで計数した後に書込み/読出し信号C1’をローレベルにする。バッファ12’は、アナログ入力信号Saの立上りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶した後にデジタルデータDdの記憶を終了し、バッファ12’に記憶されたデジタルデータDdをイベント検出回路16’に出力する。
【0051】
バッファ制御回路15’は、広いパルス幅Wを検出するためのデジタルデータDdすなわちアナログ入力信号Saの立下りエッジ周辺のデジタルデータDdをバッファ12”に記憶させるために、バッファ12”が記憶動作を開始してから終了するまでの期間を、トリガ信号T2及び制御部13から提供されたデータ数に基づいて制御する。本実施の形態では、バッファ制御回路15’がトリガ信号T2を受信すると、バッファ制御回路15’は、バッファ12”がデジタルデータDdの記憶を開始するために書込み/読出し信号C1”をハイレベルにする。その後、バッファ制御回路
15’は、制御部13から提供されたデータ数をシステムクロックで計数した後に書込み/読出し信号C1”をローレベルにする。バッファ12”は、アナログ入力信号Saの立下りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶した後にデジタルデータDdの記憶を終了し、バッファ12”に記憶されたデジタルデータDdをイベント検出回路16’に出力する。
【0052】
バッファ制御回路15’は、バッファ12’が記憶を停止してからバッファ12”が記憶を開始するまでの期間を、書込み/読出し信号C1’及び書込み/読出し信号C1”を基にしてシステムクロックを用いて計測する。
【0053】
また、本実施の形態では、バッファ制御回路15’は、バッファ12’,12”が記憶動作を開始してから終了するまで期間を調整するために、トリガ信号T1,T2が生成された時間の他に種々の要件を考慮する。種々の要件は、例えば、トリガ信号T1の生成からバッファ12’の制御までの遅れ時間、トリガ信号T2の生成からバッファ12”の制御までの遅れ時間、トリガ信号T1の生成のタイミングとデジタルデータDdのバッファ12’への記憶のタイミングとの差、書込み/読出し信号C1’を出力してからバッファ12’が記憶を停止するまでの期間の終了時からバッファ12”の記憶の開始時までの期間、補間処理に必要な余分なデータ数等を含む。種々の要件についての情報を、例えば、操作部の操作を介して制御部13からバッファ制御回路15’に提供してもよい。
【0054】
図6に示すように、イベント検出回路16’は、イベント検出制御回路16aと、補間処理回路16b’と、時間検出処理回路16c’と、レベル検出処理回路16d’と、イベント判定回路16eと、を有する。
【0055】
バッファ制御回路15’は、バッファ12’が記憶を停止してからバッファ12”が記憶を開始するまでの期間の計測結果Tmを時間検出処理回路16c’に提供する。また、バッファ制御回路15'は、バッファ12'が記憶を停止してからバッファ12"が記憶を開始するまでの期間にレベル検出期間信号C12をレベル検出処理回路16d'に出力する。
【0056】
補間処理回路16b’は、イベントを検出するためのデジタルデータDdがバッファ12’及びバッファ12”から供給され、補間倍率HでデジタルデータDdの補間処理を行うことによって補間データDh’,Dh”を生成して時間検出処理回路16c’に供給する。また、補間処理回路16b’は、補間データDh’の提供期間に時間検出信号C11’を時間検出処理回路16c’に出力し、補間データDh”の提供期間に時間検出信号C11”を時間検出処理回路16c’に出力する。
【0057】
時間検出処理回路16c’は、時間検出信号C11’に従って、補間データDh’から正スロープ時刻を検出処理し、時間検出信号C11”に従って、補間データDh”から負スロープ時刻を検出処理する。また、時間検出処理回路16c’は、正スロープ時刻及び負スロープ時刻とバッファ制御回路15’から提供された計測結果Tmを演算処理したパルス幅の検出処理結果Dtを、イベント判定回路16eに供給する。時間検出処理回路16c’は、補間データDh’,Dh”及び計測結果Tmを用いることによって高精度の時間検出が可能になる。
【0058】
レベル検出処理回路16d’は、デジタルデータDdがADC11から入力され、レベル検出期間信号C12に従って、デジタルデータDdの最大値の検出処理結果De(デジタルデータのレベル)を検出処理し、イベント判定回路16eに供給する。イベント判定回路16eは、ADC11から入力されたデジタルデータDdを用いることによって、バッファ12’が記憶する期間の終了時からバッファ12”が記憶する期間の開始時までの期間のデジタルデータDdの最大値Lを検出処理することができる。
【0059】
図7は、イベント検出回路によって検出されるイベントの他の例を示す図である。イベントが広いパルス幅(例えば、1マイクロ秒)のパルスである場合、バッファ12’の記憶の終了時からバッファ12”の記憶の開始時までの期間Sが設けられる。イベント判定回路16eは、正スロープ時刻から負スロープ時刻までの期間Ti’がパルス幅Wに相当するか否か及びデジタルデータDdの最大値Lが最大値Pmに相当するか否かを判定する。更に詳しくは、イベント判定回路16eは、正スロープ時刻から負スロープ時刻までの期間Ti’が上限値(例えば、1000.1ナノ秒)と下限値(例えば、999.9ナノ秒)の間に存在するか否か及びデジタルデータDdの最大値Lが上限値と下限値の間に存在するか否かを判定する。
【0060】
本実施の形態において、最大値Lの検出期間としてバッファ12’の記憶の終了時からバッファ12”の記憶の開始時までの期間Sを設定したが、本実施の形態の変形例として、最大値Lの検出期間を、正スロープ時刻から負スロープ時刻までの期間Ti’に拡張することが可能である。例えば、時間検出処理回路16cが正スロープ時刻以降の補間データDh’及び負スロープ時刻より前の補間データDh”をレベル検出処理回路16d’に提供することによって、レベル検出処理回路16d’は期間Ti’を設定することができる。
【0061】
本実施の形態によれば、バッファ12’がアナログ入力信号Saの立上りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶するとともにバッファ12”がアナログ入力信号Saの立下がりエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶することによって、バッファ容量を増大させることなく広いパルス幅を高精度に検出することができる。
【0062】
上記実施の形態において、イベントとしてパルス幅を検出する場合について説明したが、パルス幅以外のイベント、例えば、デジタルデータDdのレベルとデジタルデータDdが予め決定されたレベルから検出された期間の少なくとも一方に関連するイベントを検出する場合にも本発明を適用することができる。
図8は、イベント検出回路によって検出されるイベントの他の例を示す図である。イベント検出回路16(
図1)は、二つの閾値Th’,Th”(Th’<Th”)の間の遷移時間、及び補間データDhの極小値L’と極大値L”によって決定されるヒステリシス量h(極大値L”−極小値L’)によって規定される
図8に示すような立上りエッジをイベントとして検出することもできる。この場合、トリガ条件は、予め設定された閾値レベルTh’に基づいて検出されるアナログ入力信号Saの立上りエッジ及び予め設定された閾値レベルTh”に基づいて検出されるアナログ入力信号Saの立上りエッジである。また、トリガ条件に関する情報Xtは、アナログ入力信号Saが閾値レベルTh’より上になったか否か及びアナログ入力信号Saが閾値レベルTh”より上になったか否かの判定を行う旨の条件を含む。
【0063】
イベントに関する情報Xiは、デジタルデータDdを補間処理するために用いられる補間倍率H、閾値レベルTh’,Th”、デジタルデータDdのレベルが閾値レベルTh’から閾値レベルTh”まで上昇するまでに要すべき時間Txを含む。また、イベントに関する情報Xiは、デジタルデータDdのレベルが閾値レベルTh’から閾値レベルTh”まで上昇するまでに検出すべき補間データDhのヒステリシス量Hを含む。
【0064】
トリガ回路14は、予め設定された閾値レベルTh’に基づいて検出されるアナログ入力信号Saの立上りエッジ及び予め設定された閾値レベルTh”に基づいて検出されるアナログ入力信号Saの立上りエッジに応答してトリガ信号T1,T2を生成する。この場合、トリガ回路14は、アナログ入力信号Saのレベルと閾値レベルTh’とをコンパレータを用いて比較し、トリガ回路14に対するディセーブル信号が解除された状態でアナログ入力信号Saが閾値レベルTh’より上になったときにトリガ信号T1を生成してバッファ制御回路15に送信する。また、トリガ回路14は、アナログ入力信号Saのレベルと閾値レベルTh”とを別のコンパレータを用いて比較し、トリガ回路14に対するディセーブル信号(図示せず)が解除された状態でアナログ入力信号Saが閾値レベルTh”より上になったときにトリガ信号T2を生成してバッファ制御回路15に送信する。トリガ回路14は、トリガ信号T2をバッファ制御回路15に送信した後にディセーブル状態になる。
【0065】
イベント検出制御回路16aは、補間倍率Hについての情報を補間処理回路16bに提供する。また、イベント検出制御回路16aは、閾値レベルTh’,Th”についての情報を時間検出処理回路16cに提供する。イベント検出制御回路16aは、補間データDhが閾値レベルTh’から閾値レベルTh”まで上昇するまでに要すべき遷移時間Txについての情報をイベント判定回路16eに提供する。さらに、イベント検出制御回路16aは、デジタルデータDdのレベルが閾値レベルTh’から閾値レベルTh”まで上昇するまでに検出すべき補間データDhのヒステリシス量Hについての情報をイベント判定回路16eに提供する。
【0066】
時間検出処理回路16cは、時間検出信号C11に従って、補間データDhが閾値レベルTh’より上になった時間及び補間データDhが閾値レベルTh”より上になった時間を検出処理し、レベル検出期間信号C12をレベル検出処理回路16dに出力し、遷移時間の検出処理結果Dtをイベント判定回路16eに供給する。
【0067】
レベル検出処理回路16dは、レベル検出期間信号C12に従って、補間データDhの極小値L’(補間データのレベル)及び極大値L”(補間データのレベル)を検出処理し、補間データDhのヒステリシス量に対応する検出処理結果Deをイベント判定回路16eに供給する。
【0068】
イベント判定回路16eは、バッファ12に記憶されているデジタルデータDdからイベントが検出されたか否かを、検出処理結果Dt,De、補間データDhが閾値レベルTh’から閾値レベルTh”まで上昇するまでに要すべき遷移時間Tx並びに補間データDhのヒステリシス量Hに基づいて判定する。
【0069】
図8において、補間データDhが閾値レベルTh’を下から上に通過してから閾値レベルTh”を下から上に通過するまでの遷移時間Ti”は時間検出処理回路16cの検出処理結果Dtに対応し、遷移時間Ti”の中で発生する補間データDhの極大値L”と極小値L’の差(ヒステリシス量h)はレベル検出処理回路16dの検出処理結果Deに対応する。
【0070】
イベント判定回路16eは、補間データDhの遷移時間Ti”がTxの上限値(例えば、10.1ナノ秒)と下限値(例えば、9.9ナノ秒)の間に存在するか否かを判定する。また、イベント判定回路16eは、ヒステリシス量hが上限値と下限値の間に存在するか否かを判定する。
【0071】
したがって、閾値レベルTh’ 及び閾値レベルTh”に基づいて検出されるアナログ入力信号Saの立上り遷移時間並びに補間データDhが閾値レベルTh’から閾値レベルTh”まで上昇する間に発生する非単調性(ヒステリシス量h)をイベントとして検出することができる。同様に、閾値レベルTh’ 及び閾値レベルTh”に基づいて検出されるアナログ入力信号Saの立下りエッジ遷移時間並びに補間データDhが閾値レベルTh’から閾値レベルTh”まで下降する間に発生する非単調性(ヒステリシス量h)をイベントとして検出することができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、イベント条件にヒステリシス量hを例に説明したが、補間データDhの極小値L’及び極大値L”をイベント条件とすることも可能である。
【0073】
上記実施の形態において、イベント検出の際に時間検出処理及びレベル検出処理を行う場合について説明したが、イベント検出の際に時間検出処理とレベル検出処理の少なくとも一方を行う場合でも所望のイベントの取得が容易になる。すなわち、イベントがデジタルデータのレベルとデジタルデータが予め決定されたレベルから検出された期間の少なくとも一方に関連する場合でも所望のイベントの取得が容易になる。
【0074】
さらに、イベントを高精度に検出することが要求されない場合には、バッファ12に記憶するデジタルデータDdをデシメーションすることによって、長い遷移期間を検出することができる。
【0075】
図9は、本発明による波形記録装置の他の実施の形態を示す図であり、
図10は、
図9の一部を詳細に示す図である。波形記録装置1”は、ADC11と、バッファ12a,12b,12c,12dと、制御部13と、トリガ回路14’と、バッファ制御回路15”と、イベント検出回路16”と、取込み処理回路17と、メモリ回路18と、波形処理及び表示処理回路19と、表示器20と、を備える。
【0076】
バッファ12a,12b, 12c,12d、バッファ制御回路15”、イベント検出回路16”、取込み処理回路17並びに波形処理及び表示処理回路19は、例えば、メモリを内蔵したFPGAによって構成される。
【0077】
トリガ回路14’は、予め設定された二つの閾値レベルTh’,Th”(Th’<Th”)に基づいて、アナログ入力信号Saの閾値レベルTh’の立上りエッジに応じてトリガ信号T1’を生成し、閾値レベルTh“の立上りエッジに応じてトリガ信号T2’を生成し、閾値レベルTh”の立下りエッジに応じてトリガ信号T3’を生成し、閾値レベルTh’の立下りエッジに応じてトリガ信号T4’を生成する。本実施の形態で、緩やかなスロープを持つ正パルスのイベント(正スロープの後に負スロープが発生する)を例にとると、トリガ条件に関する情報Xtは、トリガ信号がT1’,T2’,T3’,T4’の順に発生する情報を含む。従って、例えば閾値レベルTh’を超え、かつ、閾値レベルTh”を超えない正のラントパルスがアナログ入力信号Saに入力された場合、すなわち、トリガ信号T1’が発生した後、トリガ信号T2’,T3’が生成されずにトリガ信号T4’が発生する場合には、トリガ回路14’は初期化され、トリガ回路14’に対するディセーブル信号が解除された状態(すなわち、トリガ信号T1’,T2’,T3’,T4’は全てローレベルとする。)に戻ることによって、無効なイベント検出動作を排除することを可能にする。
【0078】
本実施の形態によれば、緩やかなスロープを持つパルスイベントに対し、閾値レベルTh’ 及び閾値レベルTh”に基づいて検出されるアナログ入力信号Saの立上り遷移時間並びに立下り遷移時間を高精度で検出するために、アナログ入力信号Saの正スロープにおける閾値レベルTh’の立上りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶するバッファ12aと、閾値レベルTh”の立上りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶するバッファ12bと、アナログ入力信号Saの立下りスロープにおける閾値レベルTh”の立下りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶するバッファ12cと、閾値レベルTh’の立下りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶するバッファ12dと、を用いる。また、バッファ12a,12b,12c,12dに記憶するデジタルデータDdのデータ数の情報は、制御部13からバッファ制御回路15“に提供される。
【0079】
バッファ制御回路15”は、緩やかな立上りスロープの遷移時間を検出するためのデジタルデータDdすなわちアナログ入力信号Saの閾値レベルTh’の立上りエッジ周辺のデジタルデータDdをバッファ12aに記憶させるために、バッファ12aが記憶動作を開始してから終了するまでの期間を、トリガ信号T1’及び制御部13から提供されたデータ数に基づいて制御する。本実施の形態では、バッファ制御回路15”がトリガ信号T1’を受信すると、バッファ制御回路15”は、バッファ12aがデジタルデータDdの記憶を開始するために書込み/読出し信号C1aをハイレベルにする。その後、バッファ制御回路15”は、制御部13から提供されたデータ数をシステムクロックで計数した後に書込み/読出し信号C1aをローレベルにする。バッファ12aは、アナログ入力信号Saの閾値レベルTh’の立上りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶した後にデジタルデータDdの記憶を終了し、バッファ12aに記憶されたデジタルデータDdをイベント検出回路16”に出力する。
【0080】
バッファ制御回路15”は、緩やかな立上りスロープの遷移時間を検出するためのデジタルデータDdすなわちアナログ入力信号Saの閾値レベルTh”の立上りエッジ周辺のデジタルデータDdをバッファ12bに記憶させるために、バッファ12”が記憶動作を開始してから終了するまでの期間を、トリガ信号T2’及び制御部13から提供されたデータ数に基づいて制御する。本実施の形態では、バッファ制御回路15”がトリガ信号T2’を受信すると、バッファ制御回路15”は、バッファ12bがデジタルデータDdの記憶を開始するために書込み/読出し信号C1bをハイレベルにする。その後、バッファ制御回路15”は、制御部13から提供されたデータ数をシステムクロックで計数した後に書込み/読出し信号C1bをローレベルにする。バッファ12bは、アナログ入力信号Saの閾値レベルTh”の立上りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶した後にデジタルデータDdの記憶を終了し、バッファ12bに記憶されたデジタルデータDdをイベント検出回路16”に出力する。
【0081】
バッファ制御回路15”は、バッファ12aが記憶を停止してからバッファ12bが記憶を開始するまでの期間を、書込み/読出し信号C1a及び書込み/読出し信号C1bを基にしてシステムクロックを用いて計測する。
【0082】
バッファ制御回路15”は、緩やかな立下りスロープの遷移時間を検出するためのデジタルデータDdすなわちアナログ入力信号Saの閾値レベルTh”の立下りエッジ周辺のデジタルデータDdをバッファ12cに記憶させるために、バッファ12cが記憶動作を開始してから終了するまでの期間を、トリガ信号T3’及び制御部13から提供されたデータ数に基づいて制御する。本実施の形態では、バッファ制御回路15”がトリガ信号T3’を受信すると、バッファ制御回路15”は、バッファ12cがデジタルデータDdの記憶を開始するために書込み/読出し信号C1cをハイレベルにする。その後、バッファ制御回路15”は、制御部13から提供されたデータ数をシステムクロックで計数した後に書込み/読出し信号C1cをローレベルにする。バッファ12cは、アナログ入力信号Saの閾値レベルTh”の立下りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶した後にデジタルデータDdの記憶を終了し、バッファ12cに記憶されたデジタルデータDdをイベント検出回路16”に出力する。
【0083】
バッファ制御回路15”は、緩やかな立下りスロープの遷移時間を検出するためのデジタルデータDdすなわちアナログ入力信号Saの閾値レベルTh’の立下りエッジ周辺のデジタルデータDdをバッファ12dに記憶させるために、バッファ12dが記憶動作を開始してから終了するまでの期間を、トリガ信号T4’及び制御部13から提供されたデータ数に基づいて制御する。本実施の形態では、バッファ制御回路15”がトリガ信号T4’を受信すると、バッファ制御回路15”は、バッファ12dがデジタルデータDdの記憶を開始するために書込み/読出し信号C1dをハイレベルにする。その後、バッファ制御回路15”は、制御部13から提供されたデータ数をシステムクロックで計数した後に書込み/読出し信号C1dをローレベルにする。バッファ12dは、アナログ入力信号Saの閾値レベルTh’の立下りエッジ周辺のデジタルデータDdを記憶した後にデジタルデータDdの記憶を終了し、バッファ12dに記憶されたデジタルデータDdをイベント検出回路16”に出力する。
【0084】
バッファ制御回路15”は、バッファ12cが記憶を停止してからバッファ12dが記憶を開始するまでの期間を、書込み/読出し信号C1c及び書込み/読出し信号C1dを基にしてシステムクロックを用いて計測する。
【0085】
また、本実施の形態では、バッファ制御回路15”は、バッファ12a,12b,12c,12dが記憶動作を開始してから終了するまで期間を調整するために、トリガ信号T1’,T2’,T3’,T4’が生成された時間の他に種々の要件を考慮する。種々の要件は、例えば、トリガ信号T1’,T2’,T3’,T4’の生成からバッファ12a,12b,12c,12dの制御までの遅れ時間、トリガ信号T1’,T2’,T3’,T4’の生成のタイミングとデジタルデータDdのバッファ12a,12b,12c,12dへの記憶のタイミングとの差、書込み/読出し信号C1a,C1b,C1c,C1dを出力してからバッファ12a,12b,12c,12dが記憶を停止するまでの期間、補間処理に必要な余分なデータ数等を含む。種々の要件についての情報を、例えば、操作部の操作を介して制御部13からバッファ制御回路15”に提供してもよい。
【0086】
図10に示すように、イベント検出回路16”は、イベント検出制御回路16a”と、補間処理回路16b”と、時間検出処理回路16c”と、レベル検出処理回路16d”と、イベント判定回路16e”と、を有する。
【0087】
イベント検出制御回路16a”は、補間倍率Hについての情報を補間処理回路16b”に提供し、閾値レベルTh’,Th”を時間検出処理回路16c”に提供し、検出すべきパルスの立上り遷移時間Tr、立下り遷移時間Tf及び最大値Pmについての情報をイベント判定回路16e”に提供する。
【0088】
バッファ制御回路15”は、バッファ12aが記憶を停止してからバッファ12bが記憶を開始するまでの期間の計測結果Tm’及びバッファ12cが記憶を停止してからバッファ12dが記憶を開始するまでの期間の計測結果Tm”を時間検出処理回路16c”に提供する。また、バッファ制御回路15”は、バッファ12cが記憶を停止してからバッファ12dが記憶を開始するまでの期間にレベル検出期間信号C12をレベル検出処理回路16d”に出力する。
【0089】
補間処理回路16b”は、イベントを検出するためのデジタルデータDdがバッファ12a,12b,12c,12dから供給され、補間倍率HでデジタルデータDdの補間処理を行うことによってそれぞれの補間データDh1,Dh2,Dh3,Dh4を生成して時間検出処理回路16c”に供給する。また、補間処理回路16b”は、それぞれの補間データDh1,Dh2,Dh3,Dh4の提供期間に対応する時間検出信号C11a,C11b,C11c,C11dを時間検出処理回路16c”に出力する。
【0090】
時間検出処理回路16c”は、時間検出信号C11a,C11bに従って、補間データDh1が閾値レベルTh’より上になった正スロープ開始時刻及び補間データDh2が閾値レベルTh”より上になった正スロープ終了時刻を検出処理する。また、時間検出処理回路16c”は、正スロープ開始時刻及び正スロープ停止時刻とバッファ制御回路15”から提供された計測結果Tm’を演算処理した立上り遷移時間を検出する。同様に、時間検出処理回路16c”は、時間検出信号C11c,C11dに従って、補間データDh3が閾値レベルTh”より下になった負スロープ開始時刻及び補間データDh4が閾値レベルTh’より下になった負スロープ終了時刻を検出処理する。また、時間検出処理回路16c”は、負スロープ開始時刻及び負スロープ停止時刻とバッファ制御回路15”から提供された計測結果Tm”を演算処理した立下り遷移時間を検出する。時間検出処理回路16c”は、立上り遷移時間及び立下り遷移時間からなる検出処理結果Dt”を、イベント判定回路16e”に供給する。時間検出処理回路16c”は、補間データDh1,Dh2,Dh3,Dh4及び計測結果Tm’,Tm”を用いることによって高精度の時間検出が可能になる。
【0091】
レベル検出処理回路16d”は、デジタルデータDdがADC11から入力され、レベル検出期間信号C12に従って、デジタルデータDdの最大値の検出処理結果De”(デジタルデータのレベル)を検出処理し、イベント判定回路16e”に供給する。イベント判定回路16e”は、ADC11から入力されたデジタルデータDdを用いることによって、バッファ12bが記憶する期間の終了時からバッファ12cが記憶する期間の開始時までの期間のデジタルデータDdの最大値Lを検出処理することができる。
【0092】
イベント判定回路16e”は、バッファ12a,12b,12c,12dに記憶されているデジタルデータDdからイベントが検出されたか否かを、検出処理結果Dt”及びDe”並びにイベント検出条件であるパルスの立上り遷移時間Tr及び立下り遷移時間Tf及び最大値Pmに基づいて判定する。
図11は、イベント検出回路によって検出される緩やかなスロープを持つパルスイベントの例を示す図である。緩やかなスロープを持つパルスイベントの場合、バッファ12aの記憶の終了時からバッファ12bの記憶の開始時までの期間Sx、バッファ12bの記憶の終了時からバッファ12cの記憶の開始時までの期間Sy、バッファ12cの記憶の終了時からバッファ12dの記憶の開始時までの期間Szが設けられる。イベント判定回路16e”は、正スロープが遷移する期間Tiaが立上り遷移時間Trに相当するか否か、負スロープが遷移する期間Tibが立下り遷移時間Tfに相当するか否か、及びデジタルデータDdの最大値Lが最大値Pmに相当するか否かを判定する。
【0093】
本実施の形態によれば、バッファ12a及びバッファ12bがアナログ入力信号Saの立上りスロープの開始周辺及び終了周辺のデジタルデータDdを記憶するとともに、バッファ12c及びバッファ12dがアナログ入力信号Saの立下りスロープの開始周辺及び終了周辺のデジタルデータDdを記憶することによって、バッファ容量を増大させることなく、緩やかなスロープを持つパルスイベントの立上り遷移時間と立下り遷移時間を高精度に検出することができる。
【0094】
上記実施の形態において、バッファを1個、2個又は4個用いる場合について説明したが、バッファを3個又は5個以上用いてもよい。