特許第6844455号(P6844455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844455
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】回路装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20210308BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20210308BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01R13/52 301H
   H01R12/71
   H01R43/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-131185(P2017-131185)
(22)【出願日】2017年7月4日
(65)【公開番号】特開2019-16453(P2019-16453A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2019年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 洋和
(72)【発明者】
【氏名】澤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】川島 直倫
(72)【発明者】
【氏名】江口 寛航
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−040992(JP,A)
【文献】 特開2013−120733(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/132973(WO,A1)
【文献】 特開平10−270602(JP,A)
【文献】 特開2010−055866(JP,A)
【文献】 特開2014−165186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 12/71
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、前記回路基板に固定されたコネクタと、前記回路基板と前記コネクタとを覆う樹脂部とを備えた回路装置であって、
前記コネクタが、内部空間と外部空間とを隔てる隔壁を備えるコネクタハウジングと、前記隔壁を貫通する端子金具とを備え、
前記コネクタハウジングが、前記隔壁の外側面に配置され、前記端子金具を囲む囲み壁部を備え、前記囲み壁部の内部にポッティング材が配置されており、
前記樹脂部がホットメルト接着剤により構成されており、
前記隔壁において前記端子金具が貫通している部分の周辺が、前記ポッティング材によって前記樹脂部から隔てられている、回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板と、この回路基板に固着されたコネクタとを備える回路装置の防水構造として、回路基板の全体と、コネクタにおいて回路基板に固着されている部分とがモールド樹脂によって覆われた構造が知られている(特許文献1参照)。モールド樹脂は、回路基板を成形金型内にセットし、その金型内に溶融状態の樹脂を充填して硬化させることにより、形成される。コネクタは、隔壁と、隔壁から連なる筒状のフード部とを備えるコネクタハウジングと、隔壁を貫通してフード部の内部に配置されるタブ部を備える端子金具とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−40992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、モールド成形時に、溶融樹脂がタブ部の貫通部分を通ってフード部の内部に入り込んでしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される回路装置は、回路基板と、前記回路基板に固定されたコネクタと、前記回路基板と前記コネクタとを覆う樹脂部とを備えた回路装置であって、前記コネクタが、内部空間と外部空間とを隔てる隔壁を備えるコネクタハウジングと、前記隔壁を貫通する端子金具とを備え、前記コネクタハウジングが、前記隔壁の外側面に配置され、前記端子金具を囲む囲み壁部を備え、前記囲み壁部の内部にポッティング材が配置されている。
【0006】
上記の構成によれば、隔壁において端子金具が貫通している部分が、ポッティング材によって樹脂部から隔てられている。これにより、モールド成形によって樹脂部を形成させる際に、溶融樹脂が隔壁における端子金具の貫通部分を通ってフード部の内部に入り込んでしまうことを回避できる。
【0007】
上記の構成において、前記樹脂部がホットメルト接着剤により構成されている。
樹脂部の材料としてホットメルト接着剤を用いることにより、樹脂部を低圧で成形することができるので、ポッティング材による封止と組み合わせることによって、成形時に溶融樹脂が隔壁における端子金具の貫通部分を通ってフード部の内部に入り込んでしまうことを確実に回避できる。
【発明の効果】
【0008】
本明細書によって開示される回路装置によれば、モールド成形によって樹脂部を形成させる際に、溶融樹脂が隔壁における端子金具の貫通部分を通ってフード部の内部に入り込んでしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のECUの平面図
図2図1のA−A線断面図
図3】実施形態において、ポッティング材を充填前のコネクタの斜視図
図4】実施形態において、ポッティング材を充填前のコネクタの平面図
図5図4のB−B線断面図
図6】実施形態において、ポッティング材が充填されたコネクタを図4のB−B線と同位置で切断した断面図
図7】実施形態において、コネクタが固定された回路基板の斜視図
図8】実施形態において、コネクタが固定された回路基板の平面図
図9図8のC−C線断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態を、図1図9を参照しつつ説明する。本実施形態の回路装置は、電動ブレーキシステムにおいて車両のタイヤハウス内に配され、ブレーキングを制御するためのECU(Electronic Control Unit)1である。ECU1は、図2に示すように、回路基板10と、この回路基板10の一面に固定されるコネクタ20と、回路基板10とコネクタ20とを覆う合成樹脂製の樹脂部50とを備えている。
【0011】
回路基板10は、絶縁材料からなる絶縁板の一面または両面に、プリント配線技術により導電路(図示せず)が形成されるとともに、電子部品(図示せず)が実装された周知の構成の部材である。
【0012】
コネクタ20は、図3および図4に示すように、コネクタハウジング21と、このコネクタハウジング21を回路基板10に固定するための2つの固定金具31と、コネクタハウジング21に組み付けられて回路基板10上の導電路と接続される複数の端子金具41とを備えている。
【0013】
コネクタハウジング21は、合成樹脂製であって、図5に示すように、端子保持壁22(隔壁に該当)と、この端子保持壁22から連なるフード部24と、同じく端子保持壁22から連なる囲み壁部27とを備える。
【0014】
端子保持壁22は、図5に示すように、端子金具41を保持する厚みのある板状の部分であって、端子金具41を圧入可能な複数の圧入孔23を有している。フード部24は、端子保持壁22の一面から延びる角筒状の部分であって、回路基板10に沿って配置される底壁24Aと、この底壁24Aと平行な天壁24Bと、底壁24Aと天壁24Bとを繋ぐ2つの側壁24Cとで構成されており、端子保持壁22とは反対側に開口部26を有している。端子保持壁22とフード部24とで囲まれるコネクタハウジング21の内部空間には、相手側コネクタを受け入れ可能となっている。
【0015】
囲み壁部27は、図3および図5に示すように、端子保持壁22の外側面(フード部24とは反対側の面)から立設された略楕円筒状の部分である。囲み壁部27と端子保持壁22とで囲まれた空間の内部には、図6に示すように、ポッティング材28が充填されている。ポッティング材28としては、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0016】
2つの側壁24Cのそれぞれは、図3および図4に示すように、装着溝25を有している。装着溝25は、側壁24Cの外側面と平行な溝底面25Aと、溝底面25Aから連なり、端子保持壁22と平行な一対の溝側面25Bとで区画される幅広の溝であって、天壁24Bから底壁24Aまで延びている。
【0017】
2つの固定金具31のそれぞれは、金属板をプレス加工して形成された部材であり、図3に示すように、略矩形の本体部32と、本体部32の一辺から垂直に延びる板片状の取付部33とを備えて、全体としてL字状をなしている。本体部32の2つの側縁(取付部33が接続している1辺と垂直な2辺)のそれぞれには、詳細には図示しないが、複数の係止片が配置されており、一対の溝側面25Bのそれぞれには、これら複数の係止片が係合する係合受部が配置されている。
【0018】
図4に示すように、一方の固定金具31は、一方の側壁24Cに配された装着溝25に収容され、他方の固定金具31は、他方の側壁24Cに配された装着溝25に収容されている。各固定金具31は、本体部32が溝底面25Aに沿い、取付部33が回路基板10に沿うように配され、係止片が係合受部に係合することで、位置決め状態で保持される(図7を併せて参照)。取付部33は、回路基板10に対しリフロー半田付けにより固定される。
【0019】
複数の端子金具41のそれぞれは、金属製の細長い板材が屈曲された部材であって、図5に示すように、圧入孔23に圧入されて端子保持壁22を貫通するタブ部42と、タブ部42の一端から略垂直に延びる中間部43と、中間部43の延出端からタブ部42と反対方向に延びる基板接続部44とにより構成されている。タブ部42の先端部は、フード部24の内部に配置されている。また、中間部43に近い基端部は、囲み壁部27に囲まれて配され、ポッティング材28に埋設されている。基板接続部44は、回路基板10に沿って配置され、導電路に対しリフロー半田付けにより電気的に接続される。
【0020】
コネクタ20は、図8および図9に示すように、底壁24Aが回路基板10と対向する向きで、フード部24の開口部26に隣接する一部が回路基板10の端縁から所定寸法突出された形態で、回路基板10に固定されている。
【0021】
樹脂部50は、図1および図2に示すように、回路基板10の全体と、コネクタ20において回路基板10の端縁から突出された部分を除く残りの部分とを密着状態で覆っている。この樹脂部50は、ホットメルト接着剤を用いたモールド成形によって形成することができる。
【0022】
上記のような構成のECU1を製造する手順は、例えば以下のようである。
まず、コネクタハウジング21に端子金具41と固定金具31とを組み付ける。次に、囲み壁部27の内側に液状のポッティング材28を充填し、硬化させる。
【0023】
次に、リフローはんだ付けにより、コネクタ20を回路基板10に固定する。まず、回路基板10の一面において半田付けが予定されている各部位に予め半田を塗布する。続いて、コネクタ20を、回路基板10の一面に、フード部24の開口部26に隣接する一部が回路基板10の端縁から所定寸法突出された形態で載置する(図8および図9参照)。このとき、各端子金具41の基板接続部44が半田上に載せられ、各固定金具31の取付部33も同じく半田上に載せられる。次に、コネクタ20を載せた回路基板10を図示しないリフロー炉内に走行させ、半田を溶融させる。そののち半田が冷却固化されると、各端子金具41の基板接続部44が対応する導電路に固着されて導通がとられるとともに、各固定金具31の取付部33が回路基板10に対して固着される。これにより、コネクタハウジング21が回路基板10に対して固定される。
【0024】
次に、モールド成形により樹脂部50を形成させる。コネクタ20が固定された回路基板10を図示しない金型内に設置し、金型内に溶融樹脂を充填する。このとき、囲み壁部27の内部に配置されたポッティング材28によって、端子保持壁22において端子金具41が貫通している部分の周辺が、金型内に注入される溶融樹脂から隔てられる。これにより、溶融樹脂が圧入孔23を通ってフード部24の内部に流れ込んでしまうことが回避される。
その後、充填された樹脂を冷却、固化させる。このようにしてECU1が完成する。
【0025】
以上のように本実施形態によれば、ECU1は、回路基板10と、回路基板10に固着されたコネクタ20と、回路基板10とコネクタ20とを覆う樹脂部50とを備える。コネクタ20が、内部空間と外部空間とを隔てる端子保持壁22を備えるコネクタハウジング21と、端子保持壁22を貫通する端子金具41とを備える。コネクタハウジング21が、端子保持壁22の外側面に配置され、端子金具41を囲む囲み壁部27を備え、囲み壁部27の内部にポッティング材28が配置されている。
【0026】
上記の構成によれば、端子保持壁22において端子金具41が貫通している部分の周辺が、ポッティング材28によって樹脂部50から隔てられている。これにより、モールド成形によって樹脂部50を形成させる際に、溶融樹脂が圧入孔23を通ってフード部24の内部に入り込んでしまうことを回避できる。
【0027】
また、樹脂部50が、ホットメルト接着剤により構成されている。樹脂部50の材料としてホットメルト接着剤を用いることにより、樹脂部50を低圧で成形することができるので、ポッティング材28による封止と組み合わせることによって、成形時に溶融樹脂が圧入孔23を通ってフード部24の内部に入り込んでしまうことを確実に回避できる。
【0028】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、囲み壁部27が、端子保持壁22の外側面に立設された筒状の壁部であったが、端子保持壁が、外側面から凹む凹部を有しており、この凹部の内壁が囲み壁部とされていても構わない。
【0029】
(2)上記実施形態では、端子保持壁22が圧入孔23を有し、この圧入孔23に端子金具41のタブ部42が圧入されていたが、インサート成形によって端子金具とコネクタハウジングとが一体化されていても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1…ECU(回路装置)
10…回路基板
20…コネクタ
21…コネクタハウジング
22…端子保持壁(隔壁)
27…囲み壁部
28…ポッティング材
41…端子金具
50…樹脂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9