特許第6844504号(P6844504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6844504デジタル音声処理装置、デジタル音声処理方法、及びデジタル音声処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844504
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】デジタル音声処理装置、デジタル音声処理方法、及びデジタル音声処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G10L 21/0332 20130101AFI20210308BHJP
   G10L 25/51 20130101ALI20210308BHJP
   H03H 17/00 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   G10L21/0332
   G10L25/51
   !H03H17/00 601L
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-214286(P2017-214286)
(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公開番号】特開2019-86637(P2019-86637A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】安良 定浩
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3401171(JP,B2)
【文献】 特開2010−19901(JP,A)
【文献】 特開2008−275876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 21/00−25/93
H03H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大値及び極小値を算出して、極大値を有する極大サンプル及び極小値を有する極小サンプルを検出する極値算出部と、
隣接する極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔を検出するサンプル数検出部と、
前記デジタル音声信号における隣接するサンプル間の差分値を算出する差分値算出部と、
前記サンプル数検出部で検出されたサンプル間隔が所定の最小値から最大値までの範囲にあるとき、前記差分値算出部で算出された、前記極大サンプルと前記極大サンプルに隣接する第1の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗算した第1の補正値と、前記極小サンプルと前記極小サンプルに隣接する第2の隣接サンプルとの差分値に前記所定の係数を乗算した第2の補正値を算出する補正値算出部と、
前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算し、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算する加減算部と、
少なくとも、前記サンプル数検出部が検出した最新のサンプル間隔と、前記最新のサンプル間隔の2つ前のサンプル間隔との第1の差分に基づいて、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出する周期性信号検出部と、
を備え、
前記周期性信号検出部が、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることを検出したとき、前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算せず、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算しないように構成されている
ことを特徴とするデジタル音声処理装置。
【請求項2】
前記周期性信号検出部は、前記第1の差分と、前記最新のサンプル間隔の1つ前のサンプル間隔と前記最新のサンプル間隔の3つ前のサンプル間隔との第2の差分とに基づいて、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出することを特徴とする請求項1に記載のデジタル音声処理装置。
【請求項3】
前記周期性信号検出部は、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることを検出したとき、前記所定の係数を0とするよう前記補正値算出部を制御することにより、前記加減算部が前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算せず、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算しない状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載のデジタル音声処理装置。
【請求項4】
入力されたデジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大値及び極小値を算出して、極大値を有する極大サンプル及び極小値を有する極小サンプルを検出し、
隣接する極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔を検出し、
前記デジタル音声信号における隣接するサンプル間の差分値を算出し、
少なくとも、最新のサンプル間隔と、前記最新のサンプル間隔の2つ前のサンプル間隔との差分に基づいて、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出し、
前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号ではないことが検出され、検出されたサンプル間隔が所定の最小値から最大値までの範囲にあるとき、前記極大サンプルと前記極大サンプルに隣接する第1の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗算した第1の補正値と、前記極小サンプルと前記極小サンプルに隣接する第2の隣接サンプルとの差分値に前記所定の係数を乗算した第2の補正値を算出し、
前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算し、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算することにより前記デジタル音声信号を補正して出力し、
前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることが検出されたとき、前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算せず、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算しないで、前記デジタル音声信号を補正することなく出力する
ことを特徴とするデジタル音声処理方法。
【請求項5】
コンピュータに、
入力されたデジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大値及び極小値を算出して、極大値を有する極大サンプル及び極小値を有する極小サンプルを検出するステップと、
隣接する極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔を検出するステップと、
前記デジタル音声信号における隣接するサンプル間の差分値を算出するステップと、
少なくとも、最新のサンプル間隔と、前記最新のサンプル間隔の2つ前のサンプル間隔との差分に基づいて、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出するステップと、
前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号ではないことが検出され、検出されたサンプル間隔が所定の最小値から最大値までの範囲にあるとき、前記極大サンプルと前記極大サンプルに隣接する第1の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗算した第1の補正値と、前記極小サンプルと前記極小サンプルに隣接する第2の隣接サンプルとの差分値に前記所定の係数を乗算した第2の補正値を算出するステップと、
前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算し、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算することにより前記デジタル音声信号を補正して出力するステップと、
前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることが検出されたとき、前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算せず、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算しないで、前記デジタル音声信号を補正することなく出力するステップと、
を実行させることを特徴とするデジタル音声処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル音声信号を処理するデジタル音声処理装置、デジタル音声処理方法、及びデジタル音声処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デジタル音声信号を次のように処理して音質を向上させるデジタル音声処理装置が記載されている。デジタル音声処理装置は、デジタル音声信号の波形の極大値を有する極大サンプルと極小値を有する極小サンプルとの間のサンプル数を検出する。デジタル音声処理装置は、極大サンプルに隣接するサンプルには、極大サンプルと隣接するサンプルとの差分値に1未満の係数を乗じた補正値を加算し、極小サンプルに隣接するサンプルより、極小サンプルと隣接するサンプルとの差分値に1未満の係数を乗じた補正値を減算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3401171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のデジタル音声処理装置には、単一正弦波のデジタル音声信号を処理すると、音質を悪化させることがあるという問題点があった。例えば、デジタル音声信号の音源がシンセサイザであるとき単一正弦波の周期性信号となることがあり、単一の楽器を演奏したときの音声信号は単一正弦波に近い周期性信号となることがある。こうした周期性信号を特許文献1に記載のデジタル音声処理装置によって処理すると、単一正弦波を基音とした倍音がデジタル音声信号に付加されることとなり、かえって音質を悪化させることがあった。
【0005】
本発明は、単一正弦波のデジタル音声信号を処理しても音質を悪化させることなく、単一正弦波以外のデジタル音声信号の音質を向上させることができるデジタル音声処理装置、デジタル音声処理方法、及びデジタル音声処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、入力されたデジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大値及び極小値を算出して、極大値を有する極大サンプル及び極小値を有する極小サンプルを検出する極値算出部と、隣接する極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔を検出するサンプル数検出部と、前記デジタル音声信号における隣接するサンプル間の差分値を算出する差分値算出部と、前記サンプル数検出部で検出されたサンプル間隔が所定の最小値から最大値までの範囲にあるとき、前記差分値算出部で算出された、前記極大サンプルと前記極大サンプルに隣接する第1の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗算した第1の補正値と、前記極小サンプルと前記極小サンプルに隣接する第2の隣接サンプルとの差分値に前記所定の係数を乗算した第2の補正値を算出する補正値算出部と、前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算し、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算する加減算部と、少なくとも、前記サンプル数検出部が検出した最新のサンプル間隔と、前記最新のサンプル間隔の2つ前のサンプル間隔との第1の差分に基づいて、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出する周期性信号検出部とを備え、前記周期性信号検出部が、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることを検出したとき、前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算せず、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算しないように構成されていることを特徴とするデジタル音声処理装置を提供する。
【0007】
本発明は、入力されたデジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大値及び極小値を算出して、極大値を有する極大サンプル及び極小値を有する極小サンプルを検出し、隣接する極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔を検出し、前記デジタル音声信号における隣接するサンプル間の差分値を算出し、少なくとも、最新のサンプル間隔と、前記最新のサンプル間隔の2つ前のサンプル間隔との差分に基づいて、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出し、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号ではないことが検出され、検出されたサンプル間隔が所定の最小値から最大値までの範囲にあるとき、前記極大サンプルと前記極大サンプルに隣接する第1の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗算した第1の補正値と、前記極小サンプルと前記極小サンプルに隣接する第2の隣接サンプルとの差分値に前記所定の係数を乗算した第2の補正値を算出し、前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算し、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算することにより前記デジタル音声信号を補正して出力し、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることが検出されたとき、前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算せず、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算しないで、前記デジタル音声信号を補正することなく出力することを特徴とするデジタル音声処理方法を提供する。
【0008】
本発明は、コンピュータに、入力されたデジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大値及び極小値を算出して、極大値を有する極大サンプル及び極小値を有する極小サンプルを検出するステップと、隣接する極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔を検出するステップと、前記デジタル音声信号における隣接するサンプル間の差分値を算出するステップと、少なくとも、最新のサンプル間隔と、前記最新のサンプル間隔の2つ前のサンプル間隔との差分に基づいて、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出するステップと、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号ではないことが検出され、検出されたサンプル間隔が所定の最小値から最大値までの範囲にあるとき、前記極大サンプルと前記極大サンプルに隣接する第1の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗算した第1の補正値と、前記極小サンプルと前記極小サンプルに隣接する第2の隣接サンプルとの差分値に前記所定の係数を乗算した第2の補正値を算出するステップと、前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算し、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算することにより前記デジタル音声信号を補正して出力するステップと、前記デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることが検出されたとき、前記第1の隣接サンプルに前記第1の補正値を加算せず、前記第2の隣接サンプルより前記第2の補正値を減算しないで、前記デジタル音声信号を補正することなく出力するステップとを実行させることを特徴とするデジタル音声処理プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のデジタル音声処理装置、デジタル音声処理方法、及びデジタル音声処理プログラムによれば、単一正弦波のデジタル音声信号を処理しても音質を悪化させることなく、単一正弦波以外のデジタル音声信号の音質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1、第3、及び第4実施形態のデジタル音声処理装置を示すブロック図である。
図2】各実施形態のデジタル音声処理装置による極大サンプル及び極小サンプルの近傍のサンプルに対する補正値の加減算処理の一例を示す波形図である。
図3】極大サンプル・極小サンプル間のサンプル間隔ごとに設定されている補正値のテーブルの例を示す図である。
図4】第1及び第2実施形態のデジタル音声処理装置の周期性信号検出部が周期性信号であるか否かを検出する際に用いるサンプル間隔の変数を示す波形図である。
図5】第1及び第2実施形態のデジタル音声処理装置の周期性信号検出部による周期性信号検出処理を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態のデジタル音声処理装置を示すブロック図である。
図7】第3及び第4実施形態のデジタル音声処理装置の周期性信号検出部が周期性信号であるか否かを検出する際に用いるサンプル間隔の変数を示す波形図である。
図8】第3実施形態のデジタル音声処理装置の周期性信号検出部による周期性信号検出処理を示すフローチャートである。
図9】第4実施形態のデジタル音声処理装置の周期性信号検出部による周期性信号検出処理を示すフローチャートである。
図10】各実施形態のデジタル音声処理プログラムを実行するマイクロコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図11】各実施形態のデジタル音声処理プログラムがマイクロコンピュータに実行させる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施形態のデジタル音声処理装置、デジタル音声処理方法、及びデジタル音声処理プログラムについて、添付図面を参照して説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す第1実施形態のデジタル音声処理装置101は、極値算出部11、サンプル数検出部12、差分値算出部13、補正値算出部14、加減算部15、周期性信号検出部16を備える。デジタル音声処理装置101は、ハードウェアによって構成されていてもよいし、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとが混在していてもよい。
【0013】
極値算出部11〜周期性信号検出部16のそれぞれが回路で構成されていてもよく、極値算出部11〜周期性信号検出部16の全体が集積回路によって構成されていてもよい。
【0014】
極値算出部11及び差分値算出部13には、一例として、量子化ビット数24ビット、サンプリング周波数192kHzのデジタル音声信号が入力される。極値算出部11は、入力されたデジタル音声信号の隣接するサンプルの大小関係を判定することによって、極大値及び極小値を算出する。極値算出部11は、極大値及び極小値を算出することにより、極大値を有する極大サンプルと、極小値を有する極小サンプルを検出する。
【0015】
入力されたデジタル音声信号が図2に示すような波形であるとき、極値算出部11は、サンプルS0を極小サンプル、サンプルS3を極大サンプルと検出する。
【0016】
サンプル数検出部12は、極大サンプルと極小サンプルとの間のサンプル数(サンプル間隔に相当)を検出する。極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔とは、図2に示すように極小値から極大値へとサンプル値が上昇していく部分のサンプル間隔と、極大値から極小値へとサンプル値が下降していく部分のサンプル間隔とを意味する。サンプル数検出部12が検出した極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔は、差分値算出部13及び周期性信号検出部16に供給される。
【0017】
差分値算出部13は、入力されたデジタル音声信号における隣接するサンプルの差分値を算出する。差分値算出部13がサンプルごとに算出した差分値は、補正値算出部14に供給される。
【0018】
補正値算出部14は、極大サンプルと極大サンプルに隣接する第1の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗じて補正値を算出し、極小サンプルと極小サンプルに隣接する第2の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗じて補正値を算出する。係数は1以下の数である。
【0019】
補正値算出部14は、第1の隣接サンプルと第1の隣接サンプルに隣接する第3の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗じて補正値を算出し、第2の隣接サンプルと第2の隣接サンプルに隣接する第4の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗じて補正値を算出することがあってもよい。
【0020】
補正値算出部14には、サンプル間隔に応じた係数が設定されている。補正値算出部14は、サンプル数検出部12で検出されたサンプル間隔に応じて係数を選択する。補正値算出部14にはレベル選択信号が入力され、レベル選択信号によって差分値に乗じる係数を選択することによって、補正値が調整可能とされていることが好ましい。
【0021】
図3は、補正値算出部14が、サンプル間隔及びレベル選択信号に応じて算出する補正値の例を示している。図3に示すように、補正値算出部14には、極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔が2サンプルから例えば8サンプルまで、レベル選択信号“00”,“01”,“10”,“11”に対応させて、1/2〜1/128の係数が設定されている。
【0022】
図3における隣接サンプルとは、極大サンプルに対する第1の隣接サンプル、極小サンプルに対する第2の隣接サンプル、第1の隣接サンプルに対する第3の隣接サンプル、第2の隣接サンプルに対する第4の隣接サンプルである。
【0023】
加減算部15は、極大サンプル近傍のサンプルに補正値を加算し、極小サンプル近傍のサンプルより補正値を減算する。具体的には、加減算部15は次のように極大サンプル近傍のサンプルに対して補正値を加算または減算するのがよい。
【0024】
サンプル間隔が2サンプルから5サンプルまでであれば、加減算部15は、極大サンプルの1つ前のサンプルに、極大サンプルと1つ前のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を加算する。これと同時に、加減算部15は、極大サンプルの1つ後のサンプルに、極大サンプルと1つ後のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を加算する。極大サンプルの1つ前及び1つ後のサンプルが上記の第1の隣接サンプルである。
【0025】
また、加減算部15は、極小サンプルの1つ前のサンプルより、極小サンプルと1つ前のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を減算する。これと同時に、加減算部15は、極小サンプルの1つ後のサンプルより、極小サンプルと1つ後のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を減算する。極小サンプルの1つ前及び1つ後のサンプルが上記の第2の隣接サンプルである。
【0026】
サンプル間隔が6サンプル以上であれば、加減算部15は、次のように加減算処理する。加減算部15は、極大サンプルの1つ前のサンプルに、極大サンプルと1つ前のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を加算し、極大サンプルの2つ前のサンプルに、1つ前のサンプルと2つ前のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を加算する。これと同時に、加減算部15は、極大サンプルの1つ後のサンプルに、極大サンプルと1つ後のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を加算し、極大サンプルの2つ後のサンプルに、1つ後のサンプルと2つ後のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を加算する。
【0027】
また、加減算部15は、極小サンプルの1つ前のサンプルより、極小サンプルと1つ前のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を減算し、極小サンプルの2つ前のサンプルより、1つ前のサンプルと2つ前のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を減算する。これと同時に、加減算部15は、極小サンプルの1つ後のサンプルより、極小サンプルと1つ後のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を減算し、極小サンプルの2つ後のサンプルより、1つ後のサンプルと2つ後のサンプルとの差分値に係数を乗じた補正値を減算する。
【0028】
極大サンプルの2つ前及び2つ後のサンプルが上記の第3の隣接サンプルである。極小サンプルの2つ前及び2つ後のサンプルが上記の第4の隣接サンプルである。
【0029】
サンプル間隔が6サンプル以上であっても、サンプル間隔が2サンプルから5サンプルまでと同様に、第1の隣接サンプルのみに補正値を加算し、第2の隣接サンプルのみより補正値を減算してもよい。以上の処理に加えて、加減算部15は、極大サンプルに補正値を加算し、極小サンプルより補正値を減算してもよい。
【0030】
図2に示す例では、極小サンプルS0と極大サンプルS3とのサンプル間隔は3サンプルである。隣接するサンプルの間隔をfsとして、例えば、極大サンプルと極小サンプルとの間のサンプル間隔が3であれば3fs、サンプル間隔が4であれば4fsのように表記することとする。ここではサンプルS0とサンプルS3との間の波形の補正のみについて説明する。図2に示す例はサンプル間隔が3fsであるので、レベル選択信号が“00”であるとすれば、加減算部15は、極大サンプルS3の1つ前のサンプルS2に、サンプルS2と極大サンプルS3との差分値に係数1/2を乗じた補正値Vaddを加算する。
【0031】
また、加減算部15は、極小サンプルS0の1つ後のサンプルS1より極小サンプルS0とサンプルS1との差分値に係数1/2を乗じた補正値Vsubを減算する。
【0032】
破線で示す位置にあるサンプルS1は補正値Vsubの減算によって実線で示す位置へと補正され、破線で示す位置にあるサンプルS2は補正値Vaddの加算によって実線で示す位置へと補正される。これにより、一点鎖線にて示す波形が細い実線にて示す波形へと補正される。
【0033】
なお、極大サンプルと極小サンプルとのサンプル間隔が2fsであれば、極大サンプルと極小サンプルとの間の中間サンプルには、加算処理と減算処理との双方が施されてしまうことになる。これを避けるために、加減算部15は、サンプル間隔が2fsの場合には、中間サンプルに加算処理のみを施すようにするのがよい。
【0034】
図1に戻り、周期性信号検出部16は、後述する方法によって、入力されたデジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出する。周期性信号検出部16は、入力されたデジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かに応じた処理フラグを補正値算出部14に供給する。
【0035】
周期性信号検出部16は、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号ではないと検出したときには、上述した係数を差分値に乗じる処理を実行させる“オン”の処理フラグを補正値算出部14に供給する。処理フラグが“オン”であれば、補正値算出部14は補正値を算出して出力するので、加減算部15は極大サンプル近傍のサンプルに補正値を加算し、極小サンプル近傍のサンプルより補正値を減算する加減算処理を実行する。よって、加減算部15からは、音質が向上するように補正された量子化ビット数24ビット、サンプリング周波数192kHzのデジタル音声信号が出力される。
【0036】
周期性信号検出部16は、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であると検出したときには、差分値に乗じる係数を強制的に0とするよう補正値算出部14を制御する“オフ”の処理フラグを補正値算出部14に供給する。処理フラグが“オフ”であれば、補正値算出部14が算出する補正値は0となるので、極大サンプルまたは極小サンプル近傍のサンプルに対する加減算処理が実行されない状態となって、加減算部15からは入力されたデジタル音声信号がそのまま出力される。よって、デジタル音声処理装置101が単一正弦波のデジタル音声信号を処理しても音質を悪化させることはない。
【0037】
ここで、図4に示す波形を例とし、図5に示すフローチャートを用いて、周期性信号検出部16で実行される周期性信号検出処理を説明する。図4に示す波形は、サンプルS0及びS5が極小サンプルであり、サンプルS3及びS9が極大サンプルである。極小サンプルS0と極大サンプルS3とのサンプル間隔は3fs、極大サンプルS3と極小サンプルS5とのサンプル間隔は2fs、極小サンプルS5と極大サンプルS9とのサンプル間隔は4fsである。
【0038】
周期性信号検出部16は、変数として、極大サンプルと極小サンプルとの最新のサンプル間隔N0と、直前のサンプル間隔N1と、さらにその前(最新のサンプル間隔N0の2つ前)のサンプル間隔N2とを保持する。
【0039】
図5において、周期性信号検出部16は、処理を開始すると、ステップS101にて、変数としてのサンプル間隔N1及びN2を0に初期化する。周期性信号検出部16は、ステップS102にて、変数としてのサンプル間隔N0に、サンプル数検出部12によって検出された最新のサンプル間隔を入力する。
【0040】
図3に示すように、第1実施形態においては、補正値を加減算する対象の波形を、2fs以上8fs以下の波形としている。そこで、周期性信号検出部16は、ステップS103にて、サンプル間隔N0が2以上8以下を満たすか否かを判定する。サンプル間隔の最小値及び最大値はそれぞれ2及び8に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0041】
ステップS103にてサンプル間隔N0が2以上8以下でなければ(NO)、周期性信号検出部16は、ステップS107にて、処理フラグを“オフ”に設定して、処理をステップS108に移行させる。
【0042】
ステップS103にてサンプル間隔N0が2以上8以下であれば(YES)、周期性信号検出部16は、ステップS104にて、サンプル間隔N1が2以上8以下を満たすか否かを判定する。ステップS104にてサンプル間隔N1が2以上8以下でなければ(NO)、周期性信号検出部16は、ステップS107にて、処理フラグを“オフ”に設定して、処理をステップS108に移行させる。
【0043】
ステップS104にてサンプル間隔N1が2以上8以下であれば(YES)、周期性信号検出部16は、ステップS105にて、サンプル間隔N2とサンプル間隔N0との差分の絶対値が閾値Dth1以下であるか否かを判定する。差分の絶対値が閾値Dth1以下であれば(YES)、デジタル音声信号は単一正弦波の周期性信号であると判定されるので、周期性信号検出部16は、ステップS107にて、処理フラグを“オフ”に設定して、処理をステップS108に移行させる。
【0044】
差分の絶対値が閾値Dth1以下でなければ(NO)、デジタル音声信号は単一正弦波の周期性信号ではないと判定されるので、周期性信号検出部16は、ステップS106にて、処理フラグを“オン”に設定して、処理をステップS108に移行させる。
【0045】
デジタル音声信号の真の極大値と真の極小値がサンプリング点と一致している場合と一致していない場合とがあるから、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを判定するには所定の許容値が必要である。閾値Dth1は周期性信号であるか否かを判定する許容値であり、例えば2とする。
【0046】
このように、第1実施形態においては、周期性信号検出部16は、サンプル数検出部12が検出した最新のサンプル間隔N0と、最新のサンプル間隔N0の2つ前のサンプル間隔N2との第1の差分に基づいて、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出する。
【0047】
周期性信号検出部16は、ステップS108にて、サンプル間隔N0及びN1をサンプル間隔N1及びN2へと変数を更新し、サンプル間隔N0を0とする。周期性信号検出部16は、ステップS109にて、波形の終端であるか否かを判定し、終端でなければ(NO)、処理をステップS102に戻して、ステップS102〜S109の処理を繰り返す。終端であれば(YES)、周期性信号検出部16は処理を終了させる。
【0048】
第1実施形態においては、ステップS103及びS104によって、直前のサンプル間隔N1及び最新のサンプル間隔N0の双方で補正値を加減算する対象の波形である2fs以上8fs以下の波形であるか否かを判定している。これにより、最新のサンプル間隔N0と直前のサンプル間隔N1との一方が偶然に2fs以上8fs以下の波形となった場合に補正値を加減算する処理を実行してしまうという誤処理を防止することができる。
【0049】
第1実施形態のデジタル音声処理装置101、及び、第1実施形態のデジタル音声処理方法によれば、単一正弦波のデジタル音声信号を処理しても音質を悪化させることなく、単一正弦波以外のデジタル音声信号の音質を向上させることができる。
【0050】
<第2実施形態>
図6に示す第2実施形態のデジタル音声処理装置102において、図1に示す第1実施形態のデジタル音声処理装置101と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。第2実施形態のデジタル音声処理装置102は、入力段に、ビット数・サンプリング周波数変換部17を備える。
【0051】
ビット数・サンプリング周波数変換部17は、量子化ビット数16ビット、サンプリング周波数48kHzのデジタル音声信号をビット数変換及びサンプリング周波数変換して、量子化ビット数24ビット、サンプリング周波数192kHzのデジタル音声信号を出力する。ビット数・サンプリング周波数変換部17より出力された量子化ビット数24ビット、サンプリング周波数192kHzのデジタル音声信号は、デジタル音声処理装置102においてデジタル音声処理装置101と同様に処理される。
【0052】
第2実施形態のデジタル音声処理装置102、及び、第2実施形態のデジタル音声処理方法によれば、入力されたデジタル音声信号がCD(コンパクトディスク)等の音声信号であっても、音質が向上した量子化ビット数24ビット、サンプリング周波数192kHzのデジタル音声信号とすることができる。
【0053】
<第3実施形態>
第3実施形態のデジタル音声処理装置103は、図1に示す第1実施形態のデジタル音声処理装置101と同一の構成である。図7に示す波形を例とし、図8に示すフローチャートを用いて、デジタル音声処理装置103における周期性信号検出部16の動作を説明する。
【0054】
図7に示す波形は、サンプルS0、S5及びS11が極大サンプルであり、サンプルS2及びS7が極小サンプルである。極大サンプルS0と極小サンプルS2とのサンプル間隔は2fs、極小サンプルS2と極大サンプルS5とのサンプル間隔は3fs、極大サンプルS5と極小サンプルS7とのサンプル間隔は2fs、極小サンプルS7と極大サンプルS11とのサンプル間隔は4fsである。
【0055】
周期性信号検出部16は、変数として、極大サンプルと極小サンプルとの最新のサンプル間隔N0と、直前のサンプル間隔N1と、その前(最新のサンプル間隔N0の2つ前)のサンプル間隔N2と、さらに前(最新のサンプル間隔N0の3つ前)のサンプル間隔N3を保持する。
【0056】
図8において、周期性信号検出部16は、処理を開始すると、ステップS301にて、変数としてのサンプル間隔N1〜N3を0に初期化する。周期性信号検出部16は、ステップS302にて、変数としてのサンプル間隔N0に、サンプル数検出部12によって検出された最新のサンプル間隔を入力する。
【0057】
周期性信号検出部16は、ステップS303にて、サンプル間隔N0が2以上8以下を満たすか否かを判定する。ステップS303にてサンプル間隔N0が2以上8以下でなければ(NO)、周期性信号検出部16は、ステップS307にて、処理フラグを“オフ”に設定して、処理をステップS308に移行させる。
【0058】
ステップS303にてサンプル間隔N0が2以上8以下であれば(YES)、周期性信号検出部16は、ステップS304にて、サンプル間隔N1が2以上8以下を満たすか否かを判定する。ステップS304にてサンプル間隔N1が2以上8以下でなければ(NO)、周期性信号検出部16は、ステップS307にて、処理フラグを“オフ”に設定して、処理をステップS308に移行させる。
【0059】
ステップS304にてサンプル間隔N1が2以上8以下であれば(YES)、周期性信号検出部16は、ステップS305にて、サンプル間隔N2とサンプル間隔N0との差分の絶対値が閾値Dth1以下であり、かつ、サンプル間隔N3とサンプル間隔N1との差分の絶対値が閾値Dth1以下であるか否かを判定する。
【0060】
ステップS305にてこの条件を満たせば(YES)、デジタル音声信号は単一正弦波の周期性信号であると判定されるので、周期性信号検出部16は、ステップS307にて、処理フラグを“オフ”に設定して、処理をステップS308に移行させる。ステップS305にてその条件を満たさなければ(NO)、デジタル音声信号は単一正弦波の周期性信号ではないと判定されるので、周期性信号検出部16は、ステップS306にて、処理フラグを“オン”に設定して、処理をステップS308に移行させる。
【0061】
このように、第3実施形態においては、上記の第1の差分と、最新のサンプル間隔N0の1つ前のサンプル間隔N1と最新のサンプル間隔N0の3つ前のサンプル間隔N3との第2の差分とに基づいて、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出する。
【0062】
周期性信号検出部16は、ステップS308にて、サンプル間隔N0〜N2をサンプル間隔N1〜N3へと変数を更新し、サンプル間隔N0を0とする。周期性信号検出部16は、ステップS309にて、波形の終端であるか否かを判定し、終端でなければ(NO)、処理をステップS302に戻して、ステップS302〜S309の処理を繰り返す。終端であれば(YES)、周期性信号検出部16は処理を終了させる。
【0063】
第3実施形態のデジタル音声処理装置103によれば、サンプル間隔N2とサンプル間隔N0との差分の絶対値と、サンプル間隔N3とサンプル間隔N1との差分の絶対値との双方を用いて、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを判定しているので、第1実施形態のデジタル音声処理装置101よりも判定精度を向上させることができる。
【0064】
第3実施形態のデジタル音声処理装置103、及び、第3実施形態のデジタル音声処理方法によれば、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを高精度に判定でき、単一正弦波のデジタル音声信号を処理しても音質を悪化させることなく、単一正弦波以外のデジタル音声信号の音質を向上させることができる。
【0065】
図6に示す第2実施形態のデジタル音声処理装置102と同一の構成を、第3実施形態のデジタル音声処理装置としてもよい。
【0066】
<第4実施形態>
第4実施形態のデジタル音声処理装置104は、図1に示す第1実施形態のデジタル音声処理装置101と同一の構成である。図7に示す波形を例とし、図9に示すフローチャートを用いて、デジタル音声処理装置104における周期性信号検出部16の動作を説明する。
【0067】
第3実施形態のデジタル音声処理装置103と同様に、デジタル音声処理装置104における周期性信号検出部16は、変数として、極大サンプルと極小サンプルとの最新のサンプル間隔N0と、直前のサンプル間隔N1と、その前(最新のサンプル間隔N0の2つ前)のサンプル間隔N2と、さらに前(最新のサンプル間隔N0の3つ前)のサンプル間隔N3を保持する。
【0068】
周期性信号検出部16は、図9に示すステップS401〜S404及びS406〜S409にて、図8に示すステップS301〜S304及びS306〜S309と同じ処理を実行する。デジタル音声処理装置104における周期性信号検出部16は、図8のステップS305の代わりに、図9のステップS405を実行する。
【0069】
周期性信号検出部16は、ステップS405にて、サンプル間隔N3とサンプル間隔N2とを加算した値から、サンプル間隔N1とサンプル間隔N0とを減算した値の絶対値が閾値Dth2以下であるか否かを判定する。このように、周期性信号検出部16は、デジタル音声信号における最新のサンプル間隔N0とサンプル間隔N1とよりなる1周期と、その1周期前であるサンプル間隔N2とサンプル間隔N3とよりなる1周期とを比較することによって、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを判定する。
【0070】
ここでの閾値Dth2は、図8のステップS305における2つの閾値Dth1を加算した値とすればよい。
【0071】
ステップS405の処理は、図8のステップS305におけるサンプル間隔N2とサンプル間隔N0との差分の絶対値が閾値Dth1以下であるか否かの判定と、サンプル間隔N3とサンプル間隔N1との差分の絶対値が閾値Dth1以下であるか否かの判定を実質的に1つにまとめたものに相当する。従って、第4実施形態においても、上記の第1の差分と、上記の第2の差分とに基づいて、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出していることになる。
【0072】
第4実施形態のデジタル音声処理装置104によれば、サンプル間隔N0〜N3を用いて、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを判定しているので、第1実施形態のデジタル音声処理装置101よりも判定精度を向上させることができる。
【0073】
第4実施形態のデジタル音声処理装置104、及び、第4実施形態のデジタル音声処理方法によれば、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを高精度に判定でき、単一正弦波のデジタル音声信号を処理しても音質を悪化させることなく、単一正弦波以外のデジタル音声信号の音質を向上させることができる。
【0074】
図6に示す第2実施形態のデジタル音声処理装置102と同一の構成を、第4実施形態のデジタル音声処理装置としてもよい。
【0075】
<第1〜第4実施形態のデジタル音声処理プログラム>
以上説明した第1〜第4実施形態のデジタル音声処理装置101〜104の動作、第1〜第4実施形態のデジタル音声処理方法による処理を、デジタル音声処理プログラムがコンピュータに実行させることができる。
【0076】
図10に示すように、マイクロコンピュータの中央処理装置(CPU)50には、記憶媒体60が接続されている。記憶媒体60はマイクロコンピュータが備える記憶媒体であってもよい。記憶媒体60は、ハードディスクドライブ、光ディスク、半導体メモリ等の任意の非一時的な記憶媒体である。記憶媒体60には、デジタル音声処理プログラムが記憶されている。デジタル音声処理プログラムは、外部のサーバからインターネット等の通信回線を介して送信されて記憶媒体60に記憶されてもよい。
【0077】
CPU50が、デジタル音声処理プログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、第1〜第4実施形態のデジタル音声処理装置101〜104として機能することができ、マイクロコンピュータは第1〜第4実施形態のデジタル音声処理方法を実行することができる。
【0078】
図11に示すフローチャートを用いて、デジタル音声処理プログラムがCPU50に実行させる処理を説明する。入力されたデジタル音声信号が量子化ビット数16ビット、サンプリング周波数48kHzであれば、CPU50は、ステップS500にて、量子化ビット数24ビット、サンプリング周波数192kHzのデジタル音声信号に変換する。入力されたデジタル音声信号が量子化ビット数24ビット、サンプリング周波数192kHzのデジタル音声信号であれば、ステップS500は省略される。
【0079】
CPU50は、ステップS501にて、極大値及び極小値を算出し、極大サンプル及び極小サンプルを検出する。CPU50は、ステップS502にて、極大サンプルと極小サンプルとの間のサンプル間隔を検出する。CPU50は、ステップS503にて、デジタル音声信号における隣接するサンプルの差分値を算出する。CPU50は、ステップS503と並行して、ステップS504にて、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かを検出する。
【0080】
CPU50は、ステップS504として、デジタル音声処理プログラムに従って、図5図8図9のいずれかに示す周期性信号検出処理を実行する。
【0081】
CPU50は、ステップS502でサンプル間隔が所定の最小値(例えば2fs)から最大値(例えば8fs)までの範囲にあることが検出され、ステップS504でデジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号ではないことが検出されたときには、ステップS505にて、補正値を算出する。具体的には、CPU50は、極大サンプルと極大サンプルに隣接する第1の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗算した第1の補正値と、極小サンプルと極小サンプルに隣接する第2の隣接サンプルとの差分値に所定の係数を乗算した第2の補正値を算出する。
【0082】
CPU50は、ステップS506にて、第1の隣接サンプルに第1の補正値を加算し、第2の隣接サンプルより第2の補正値を減算することにより、デジタル音声信号を補正して出力する。
【0083】
前述のように、互いに隣接する極大サンプルと極小サンプルとの間においては、第1及び第2の補正値を算出するための係数として、サンプル間隔(及びレベル選択信号)に基づいて選択される共通の係数が用いられる。
【0084】
一方、CPU50は、ステップS504でデジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることが検出されたときには、ステップS505にて、極大サンプルと第1の隣接サンプルとの差分値、及び、極小サンプルと第2の隣接サンプルとの差分値に乗算する係数を0とする。これにより、CPU50は、ステップS505にて、第1及び第2の補正値を0とする。
【0085】
結果として、CPU50は、ステップS506にて、第1の隣接サンプルに補正値を加算せず、第2の隣接サンプルより補正値を減算しないので、デジタル音声信号を補正することなく出力する。
【0086】
ステップS502でサンプル間隔が上記の範囲にないと検出されたときには、CPU50は、ステップS505にて補正値を算出しないので、ステップS506にてデジタル音声信号を補正することなく出力する。
【0087】
CPU50は、ステップS507にて、波形の終端であるか否かを判定し、終端でなければ(NO)、処理をステップS501(またはステップS500)に戻して、ステップS501〜S507(またはステップS500〜S507)の処理を繰り返す。終端であれば(YES)、CPU50は処理を終了させる。
【0088】
本発明は以上説明した第1〜第4実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。第1〜第4実施形態においては、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるとき、周期性信号検出部16が補正値算出部14に“オフ”の処理フラグを供給する。これにより、補正値算出部14が算出する補正値を0とすることによって、極大サンプルまたは極小サンプル近傍のサンプルに対する加減算処理を実行しないようにしている。
【0089】
周期性信号検出部16が処理フラグを加減算部15に供給して、極大サンプルまたは極小サンプル近傍のサンプルに補正値を加減算するか否かを切り換えるように構成してもよい。この場合、補正値算出部14は、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であるか否かにかかわらず補正値を算出する。加減算部15は、処理フラグが“オン”であれば補正値を加減算し、処理フラグが“オフ”であれば補正値を加減算しない。
【0090】
即ち、デジタル音声処理装置は、周期性信号検出部16が、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることを検出したときに、極大サンプルまたは極小サンプル近傍のサンプルに補正値を加減算しないように構成されていればよい。
【0091】
デジタル音声処理方法は、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることが検出されたときに、極大サンプルまたは極小サンプル近傍のサンプルに補正値を加減算しないで、デジタル音声信号を補正することなく出力すればよい。デジタル音声処理プログラムは、デジタル音声信号が単一正弦波の周期性信号であることが検出されたときに、コンピュータに、極大サンプルまたは極小サンプル近傍のサンプルに補正値を加減算しないで、デジタル音声信号を補正することなく出力するステップを実行させればよい。
【符号の説明】
【0092】
11 極値算出部
12 サンプル数検出部
13 差分値算出部
14 補正値算出部
15 加減算部
16 周期性信号検出部
17 ビット数・サンプリング周波数変換部
50 中央処理装置
60 記憶媒体
101〜104 デジタル音声処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11