(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軸方向から前記山部と前記谷部を見たとき、前記山部は、前記谷部の位置に一致するか、前記谷部の位置よりも前記胴体部の内側に位置する、請求項1に記載のスタッドピン。
前記軸方向から前記山部と前記谷部を見たとき、前記第1曲面と前記第2曲面との間の距離は、前記山部と前記谷部の位置で最小になる、請求項1または2に記載のスタッドピン。
前記軸方向から少なくとも2組の第1側面及び第2側面における少なくとも2つの山部と谷部を見たとき、少なくとも2つの山部のいずれも、2つ谷部の1つの位置に一致するか、前記最も近くに位置する谷部の位置よりも前記胴体部の内側に位置する、請求項4〜6のいずれか1項に記載のスタッドピン。
前記第1側面を前記軸方向からみたとき、前記第1側面の外周形状は、凹状に湾曲した複数の辺と、前記辺のうち隣り合う辺の間のそれぞれに設けられた丸い凸部と、を有する形状である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスタッドピン。
前記第2側面を前記軸方向からみたとき、前記第2側面の外周形状は、複数の辺と、前記辺のうち隣り合う辺の間のそれぞれに設けられた丸い凸部と、を有する形状である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスタッドピン。
前記縁形状における、前記少なくとも2組の第1側面及び第2側面のうち少なくとも2つの山部と同じ前記中心軸まわりの方位方向の位置には、凹部が設けられている、請求項14に記載のスタッドタイヤ。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態のスタッドタイヤの断面の一例を示すタイヤ断面図である。
【
図2】本実施形態のスタッドタイヤのトレッドパターンの一例を平面上に展開したトレッドパターンの一部の平面展開図である。
【
図3】本実施形態のスタッドピンの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態のスタッドピン周りのトレッドゴムの動きを模式的に説明する図である。
【
図5】従来のスタッドピン周りのトレッドゴムの動きを模式的に説明する図である。
【
図6】(a)〜(e)は、本実施形態の他のスタッドピンの形態を示す図である。
【0024】
(タイヤの全体説明)
以下、本実施形態のスタッドタイヤについて説明する。
図1は、本実施形態のスタッドタイヤ(以降、タイヤという)10の断面の一例を示すタイヤ断面図である。タイヤ10は、トレッド部にスタッドピンが埋め込まれたタイヤである(
図1では、スタッドピンは図示されていない)。
タイヤ10は、例えば、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤは、JATMA YEAR BOOK 2012(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。この他、B章に定められる小型トラック用タイヤおよびC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
以降で具体的に説明する各パターン要素の寸法の数値は、乗用車用タイヤにおける数値例であり、スタッドタイヤはこれらの数値例に限定されない。
【0025】
以降で説明するタイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心にタイヤ10を回転させたとき、トレッド面の回転する方向(両回転方向)をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に対して直交して延びる放射方向をいい、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸からタイヤ径方向に離れる側をいう。タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸方向に平行な方向をいい、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ10のタイヤセンターラインCLから離れる両側をいう。
また、スタッドピンにおける胴体部の内側とは、胴体部の外周から中心軸の側をいう。
【0026】
(タイヤ構造)
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ層12と、ベルト層14と、ビードコア16とを有する。タイヤ10は、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム18と、サイドゴム20と、ビードフィラーゴム22と、リムクッションゴム24と、インナーライナゴム26と、を主に有する。
【0027】
カーカスプライ層12は、一対の円環状のビードコア16の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆したカーカスプライ材12a,12bを含む。
図1に示すタイヤ10では、カーカスプライ層12は、カーカスプライ材12a,12bで構成されているが、1つのカーカスプライ材で構成されてもよい。カーカスプライ層12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるベルト層14が設けられている。ベルト層14は、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20〜30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材であり、下層のベルト材14aのタイヤ幅方向の幅が上層のベルト材14bの幅に比べて広い。2層のベルト材14a,14bのスチールコードの延在方向はタイヤ周方向からタイヤ幅方向に向かって互いに異なる方向に傾いている。このため、ベルト材14a,14bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ層12の膨張を抑制する。
【0028】
ベルト層14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム18が設けられ、トレッドゴム18の両端部には、サイドゴム20が接続されてサイドウォール部を形成している。トレッドゴム18は2層のゴムで構成され、タイヤ径方向外側に設けられる上層トレッドゴム18aとタイヤ径方向内側に設けられる下層トレッドゴム18bとを有する。サイドゴム20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム24が設けられ、タイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわす前のカーカスプライ層12の部分と、ビードコア16の周りに巻きまわした後のカーカスプライ層12の部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム26が設けられている。
この他に、タイヤ10は、ベルト層14のタイヤ径方向外側からベルト層14を覆う、有機繊維をゴムで被覆したベルトカバー層28を備える。
【0029】
タイヤ10は、このようなタイヤ構造を有するが、本実施形態のタイヤ構造は、
図1に示すタイヤ構造に限定されない。
【0030】
(トレッドパターン)
図2は、タイヤ10の、一例であるトレッドパターン30を平面上に展開したトレッドパターンの一部の平面展開図である。タイヤ10は
図2に示されるように、タイヤ周方向の一方の向きを示す回転方向Rが指定されている。回転方向Rの向きの情報は、タイヤ10のサイドウォール表面に設けられた数字、記号等の情報表示部に示されている。
図2では、トレッド部に装着されるスタッドピンの図示は省略されている。スタッドピン(
図3(a)参照)は、
図2に示されるピン埋め込み用孔(
図2中の黒丸部分)に装着される。
【0031】
トレッドパターン30は、周方向主溝32,34と、第1傾斜溝36と、第2傾斜溝38と、第3傾斜溝40と、を有する。第1傾斜溝36と、第2傾斜溝38と、第3傾斜溝40は、タイヤ周方向(
図2の上下方向)に所定の間隔で複数形成されている。
【0032】
周方向主溝32,34は、タイヤセンターラインCLからタイヤ幅方向外側に同じ距離離間した位置に設けられ、タイヤ周方向に直線状に延びている。
【0033】
第1傾斜溝36は、周方向主溝32,34の間のタイヤ陸部の領域からタイヤ周方向の一方向であるタイヤ回転方向Rと逆方向(
図2では、上方向)に延び、周方向主溝32,34を横切ってタイヤ幅方向外側に延びている。第1傾斜溝36は、トレッド部のタイヤショルダー領域まで、溝幅を徐々に拡げて延び、タイヤショルダー領域から急激に傾斜角度を変えてタイヤ周方向、すなわち、タイヤ回転方向Rと逆方向に向けて延び、パターンエンドEに至る。
【0034】
第2傾斜溝38は、周方向主溝32,34のタイヤ幅方向外側の陸部の領域から、タイヤ回転方向Rと逆方向(
図2では、上方向)に延び、かつタイヤ幅方向外側に延びる。第2傾斜溝38は、第1傾斜溝36と並行するように形成されている。第2傾斜溝38は、トレッド部のタイヤショルダー領域まで、溝幅を徐々に拡げ延び、タイヤショルダー領域から急激に傾斜角度を変えてタイヤ周方向、すなわち、タイヤ回転方向Rと逆方向に向けて延び、パターンエンドEに至る。第2傾斜溝38は、タイヤ周方向に隣り合って設けられた2つの第1傾斜溝36の間に設けられる。
第3傾斜溝40は、第1傾斜溝36の途中の位置から、タイヤ周方向に隣り合う第2傾斜溝38を横切って、さらに、タイヤ周方向において第2傾斜溝38に隣り合う第1傾斜溝36を横切って、タイヤショルダー領域で閉塞する。第3傾斜溝40は、タイヤ周方向の一方向、すなわち、タイヤ回転方向Rと逆方向(
図2では、上方向)に延び、かつタイヤ幅方向外側に延びている。
このようなトレッドパターン30において、ピン埋め込み用孔(
図2中の黒丸部分)に、後述するスタッドピン50が装着される。
周方向主溝32,34、第1傾斜溝36、第2傾斜溝38、及び第3傾斜溝40の溝深さは、例えば8.5〜10.5mmであり、溝幅は、最大12mmである。
図2に示すトレッドパターンは一例であり、本実施形態のスタッドピンを装着するタイヤのトレッドパターンは、
図2に示す形態に限定されない。
【0035】
(スタッドピン)
図3(a),(b)は、本実施形態のスタッドピン50の例を示す図である。
図3(a)は、スタッドピン50の斜視図であり、
図3(b)は、スタッドピン50の平面図であり、スタッドピン50を中心軸Xの軸方向から見た図である。
スタッドピン50は、チップ52と、胴体部54と、を備える。胴体部54は、上部フランジ56と、シャンク部58と、下部フランジ60と、を備える。胴体部54は、タイヤ10のピン埋め込み用孔に装着されるとき、トレッドゴム18に埋設されてトレッドゴム18と接触する。
【0036】
チップ52は、路面と接触するチップ先端面を有する。チップ52は、タングステンカーバイト等の超鋼合金で構成される。このほかに、チップ52は、サーメット材料で構成することもできる。チップ52は、胴体部54の上端面に設けられた孔に勘合して固定される。このスタッドピン50がタイヤ10に装着された時、スタッドピン50のチップ52がトレッド表面から突出するようになっている。
【0037】
胴体部54は、チップ52を保持し、中心軸Xの周りに設けられている。胴体部54の上部フランジ56は、タイヤ10のトレッド部に埋め込まれる時、トレッド表面からチップ52が突出するように構成されている。チップ52は、胴体部54の第1の端(
図3(a)では、図中上側の端)であって上部フランジ56の端で固定される。
下部フランジ60は、タイヤ10のトレッド部に埋め込まれる時、ピン埋め込み用孔の底に接触するように構成されている。下部フランジ60は、胴体部54の第1の端と反対側の位置に設けられている。
シャンク部58は、上部フランジ56と下部フランジ60を接続する部分で、上部フランジ56及び下部フランジ60に比べてその断面が細い。
胴体部54の材料は特に制限されないが、例えば、スタッドピン50の軽量化のためにアルミニウム合金等で構成されている。
中心軸Xは、胴体部54の延在方向に対して直交する胴体部54の各断面の図心を通る。
【0038】
ここで、胴体部54の上部フランジ56及び下部フランジ60は、スタッドピン50の中心軸Xの軸方向に平行に延びる側面を備える。この側面のうち下部フランジ60の第1側面は、軸方向から見たとき、胴体部54の内側に(中心軸Xに近づく方向に向かって)凹んだ第1曲面60aを含む。すなわち、第1側面の、軸方向から見た形状は、中心軸Xに近づく側に向かって凹んだ曲線になっている。
また、上記側面のうち上部フランジ56の第2側面は、軸方向から見たとき、胴体部54の外側に(中心軸Xから遠ざかる方向に向かって)凸状に膨らんだ第2曲面56aと、第2曲面56aを両側から挟むように第2曲面56aと接続した平面56bとを備える。すなわち、第2側面の、軸方向から見た形状は、中心軸Xから離れる側に向かって凸状に膨らんだ曲線になっている。平面56bの代わりに、第2側面の
外周に沿った曲率が第2曲面56aよりも小さい曲面(第3曲面)とすることもできる。
本実施形態では、
図3(b)に示すように、第1曲面60aの最も凹んだ谷部と第2曲面56aの最も膨らんだ山部は、軸方向から見たとき、中心軸Xまわりの同じ方位方向に位置している。
【0039】
このように、下部フランジ60の第1曲面60aの谷部が、上部フランジ56の第2曲面56aの山部と同じ方位方向に位置していることで、スタッドピン50を、タイヤ10から抜け落ち難くすることができる。
図4は、本実施形態のスタッドピン50が埋め込み用孔に埋め込まれたときのスタッドピン50周りのトレッドゴムの動きを模式的に説明する図である。スタッドピン50の上部フランジ56の第2曲面56aには山部が設けられているので、トレッドゴムは外側に押し出され易い。一方、下部フランジ60の第1曲面60aには、山部と同じ方位方向に谷部が設けられているので、外側に押し出されたトレッドゴムは、第1曲面60aの谷部に向かって動き易い。このため、
図4に示す矢印のようなトレッドゴムの動きが生じ易い。すなわち、
図4に示すように、トレッドゴムがトレッド表面からトレッドゴム内部に向かって(タイヤ径方向内側に向かって)動く。このトレッドゴムの動きは、スタッドピン50が抜け落ちる方向と逆方向である。このため、本実施形態では、スタッドピン50がタイヤ10から抜け落ち難い。
【0040】
図5は、上部フランジの側面に谷部が、下部フランジの側面に山部がある、従来のスタッドピン周りのトレッドゴムの動きを模式的に説明する図である。
図5に示すように、下部フランジにある山部から、トレッドゴムは外側に押し出され易い。一方、上部フランジの側面の同じ方位方向には谷部が設けられているので、下部フランジで外側に押し出されたトレッドゴムは、上部フランジの谷部に向かって動き易い。このため、
図5に示すように、トレッドゴムがトレッドゴム内部からトレッド表面に向かって(タイヤ径方向外側に向かって)動く。このトレッドゴムの動きは、スタッドピンが抜け落ちる方向と同方向である。このため、上部フランジの側面に谷部が、下部フランジの側面に山部がある場合、その逆の場合に比べて、スタッドピンはタイヤから抜け落ち易い。
したがって、本実施形態では、下部フランジ60の第1曲面60aの谷部が、上部フランジ56の第2曲面56aの山部と同じ方位方向に位置している。
【0041】
本実施形態では、
図3(a),(b)に示すように、中心軸Xの軸方向から山部と谷部を見たとき、山部は、谷部の位置に一致するか、谷部の位置よりも胴体部54の内側(中心軸Xに近づく側)に位置することが好ましい。特に、山部と中心軸Xとの間の距離は、谷部と中心軸Xとの間の距離の80%〜100%であることが好ましい。これにより、
図4に示すようなトレッドゴムの動きが生じ易く、スタッドピン50がタイヤ10から抜け落ち難い。
【0042】
また、本実施形態では中心軸Xの軸方向から上部フランジ56の山部と下部フランジ60の谷部を見たとき、第1曲面60aと第2曲面56aとの間の距離は、山部と谷部の位置で最小になることが好ましい。すなわち、山部と谷部の間の距離が、第1曲面60aと第2曲面56aとの間の距離の中で最も小さいことが好ましい。このため、
図4に示すようなトレッドゴムの動きが生じ易く、スタッドピン50がタイヤ10から抜け落ち難い。
【0043】
また、
図3(a),(b)に示すように、上部フランジ56の第2側面及び下部フランジ60の第1側面は、第1曲面60a及び第2曲面56aを1組として、少なくとも2組を備えることが好ましい。これにより、スタッドピン10のタイヤ10からの抜け落ち難くすることができる。
【0044】
上部フランジ56の第2側面及び下部フランジ60の第1側面は、第1曲面60a及び第2曲面56aを1組として、2組を備え、2組の第1側面及び第2側面のうち2つの第1曲面60a,60aは、中心軸Xを挟んで第1側面の外周上の互いに対向する位置に設けられていることが好ましい。これにより、チップ52が、路面から2つの第1曲面60a,60aが配置される方向に力を受けても、スタッドピン50の抜け落ちを抑制することができる。
【0045】
図6(a)〜(e)は、本実施形態の他のスタッドピンの形態を示す図である。
図6(a)〜(e)それぞれの上段は、外観斜視図であり、下段は平面図である。
図3(a),(b)に示す形態では、下部フランジ60の第1側面及び上部フランジ56の第2側面は、第1曲面60a及び第2曲面56aを1組として、2組を備えるが、この場合の上部フランジ56の外周形状は、
図3(b)に示すような6つの辺と、6つの辺のうち隣接する辺の間に設けられる6つの丸い凸部を有する形状、いいかえると略6角形形状(角部が丸い6角形形状)に限定されない。上部フランジ56の外周形状は、
図6(a)、(b)に示す形態のように、第1曲面60a及び第2曲面56aの組を2組(
図6(b)中の紙面中の上下方向に2組)備え、10個の辺と、10個の辺のうち隣接する辺の間に設けられる10個の丸い凸部を有し、10個の辺のうち一部が凹んだ形状、いわゆる10角形形状の一部の辺が内側に凹んだ形状であってもよい。また、上部フランジ56の外周形状は、
図6(c)に示す形態のように、6つの辺のうち一部の辺が内側に凹んだ形状であってもよい。
【0046】
さらに、
図6(d),(e)に示すように、下部フランジ60の第1側面及び上部フランジ56の第2側面は、第1曲面60a及び第2曲面56aを1組として、4組を備えることも好ましい。4組の第1曲面60a及び第2曲面56aを備えるので、スタッドピン50が抜け落ち難くなることをより抑制することができる。この場合、4組の中の4つの第1曲面60aの谷部は、第1側面の外周上に、中心軸Xまわりに等角度間隔で、具体的には、方位角度90度間隔で設けられ、4つの第2曲面56aの山部は、第2側面の外周上に、中心軸Xまわりに等角度間隔で、具体的には方位角度90度間隔で設けられていることが好ましい。
【0047】
また、本実施形態では、中心軸Xの軸方向から少なくとも2組の第1曲面60a及び第2曲面56aのうち山部と谷部を見たとき、少なくとも2つの山部のいずれも、少なくとも2つの谷部の1つの位置に一致するか、最も近くに位置する谷部の位置よりも胴体部54の内側(中心軸Xに近づく方向)に位置することが、スタッドピン50のタイヤ10からの抜け落ちをより抑制する点から好ましい。特に、山部と中心軸Xとの間の距離は、最も近くに位置する谷部と中心軸Xとの間の距離の80%〜100%であることが好ましい。
【0048】
本実施形態では、
図3(a),(b)及び
図6(a)〜(e)に示すように、下部フランジ60の第1側面を中心軸Xの軸方向からみたとき、第1側面の外周形状は、凹状に湾曲した複数の辺と、この複数の辺のうち隣り合う辺の間に設けられた複数の丸い凸部と、を有する形状、言い換えると、凸多角形形状の辺が凹状に湾曲し、かつ角が丸い形状であることが好ましい。本実施形態では、上記外周形状は4つの辺を備える形状であるが、3個、5個、あるいは6個の辺を有する形状であることも好ましい。
【0049】
本実施形態では、
図3(a),(b)及び
図6(a),(d)に示すように、上部フランジ56の第2側面を中心軸Xの軸方向からみたとき、第2側面の外周形状は、複数の辺と、この複数の辺のうち隣り合う辺の間に設けられた複数の丸い凸部と、を有する形状、言い換えると凸多角形形状の角が丸い形状であることが好ましい。本実施形態では、上記外周形状は6個、8個、あるいは10個の辺を備える形状であるが、3個、4個、あるいは5個の辺を有する形状であることも好ましい。
【0050】
タイヤ10は、このようなスタッドピン50が、トレッド部に設けられたピン埋め込み用孔に装着される。
このとき、チップ52の縁形状は、中心軸Xの軸方向から見たとき、凸部を少なくとも含み、チップ52の縁形状における凸部の位置は、上部フランジ56の第2曲面56aの山部の中心軸Xまわりの方位方向の位置から外れていることが好ましい。チップ52の凸部の位置が、第2曲面56aの山部の方位方向の位置にあると、アスファルト路面をチップ52の上記凸部が削ることにより生じる粉塵の微粒子が、上部フランジ56の山部とトレッドゴムの壁面との間に進入して挟まり、トレッドゴムがスタッドピン50を締め付けようとする力が上記微粒子によって分散する。このため、トレッドゴムがスタッドピン50を締め付けようとする力は弱くなり、スタッドピン50のタイヤ10からの抜け落ちが生じ易くなる。この点から、チップ52の凸部の位置は、第2曲面56aの山部の方位方向の位置から外れていることが好ましい。さらにいうと、
図3(a),(b)及び
図6(a)〜(e)に示すように、チップ52の縁形状における、第2曲面56aの山部と同じ中心軸Xまわりの方位方向の位置には、凹部が設けられていることが、チップ52の凸部が路面を削ることにより生じる粉塵の微粒子が上部フランジ56の山部とトレッドゴムの壁面との間に進入して挟まることを抑制する点から好ましい。
【0051】
下部フランジ60の第1側面及び上部フランジ56の第2側面に、少なくとも2組の第1曲面60a及び第2曲面56aを備える形態のスタッドピンの場合、少なくとも2組の第1曲面60a,60aのうち少なくとも2つの谷部は、中心軸Xを挟んで互いに対向する位置であって、タイヤ周方向あるいはタイヤ幅方向に平行な直線上にあるように、スタッドピン50の向きが調整されてタイヤに埋め込められていることが好ましい。この場合、チップ52は、タイヤ周方向の制駆動力あるいはタイヤ幅方向の横力を路面から受けるので、
図4に示す矢印のようなトレッドゴムの動きにより、制駆動力あるいは横力によるスタッドピン50の抜け落ちを抑制できる。
この形態において、チップ52の縁形状は、中心軸Xから見たとき、凸部を少なくとも含み、この縁形状における凸部の位置は、少なくとも2組の第2曲面56a,56aのうち2つの山部の中心軸Xまわりの方位方向の位置から外れていることが好ましい。これにより、上述したように、アスファルト路面をチップ52の上記凸部が削ることにより生じる粉塵の微粒子が、上部フランジ56の山部とトレッドゴムの壁面との間に進入して挟まり、トレッドゴムがスタッドピン50を締め付けようとする力が上記微粒子によって分散することを抑制することができる。このため、スタッドピン50のタイヤ10からの受け落ちを抑制することができる。
この場合、チップ52の縁形状における、少なくとも2組の第2曲面56a,56aのうち少なくとも2つの谷部と同じ中心軸Xまわりの方位方向の位置には、凹部が設けられていることが好ましい。これにより、上部フランジ56の山部とトレッドゴムの壁面との間に進入して挟まることをよりいっそう抑制することができる。
【0052】
(実施例、比較例)
スタッドピンを種々作製し、作製したスタッドピンを
図1,2に示すタイヤ10に埋め込んだスタッドタイヤを乗用車に装着して、耐ピン抜け性を調べた。
作製したタイヤのタイヤサイズは、205/55R16とした。乗用車は、排気量2000ccの前輪駆動のセダン型乗用車を用いた。タイヤの内圧条件は、前輪、後輪ともに230(kPa)とした。各タイヤの荷重条件は、前輪荷重を450kg重、後輪荷重を300kg重とした。
【0053】
ピン抜けは、氷上路面では殆ど起こらず、アスファルト路面あるいはコンクリート路面を含む乾燥路面で起こり易い。したがって、耐ピン抜け性のテストでは、乾燥路面上を上記乗用車が10000km走行したときの、装着した全スタッドピンの数に対するトレッドゴムに残ったスタッドピンの数の比率を求めた。上記残ったスタッドピンの数の比率を、比較例1における残ったスタッドピンの数の比率を基準として(指数100として)、指数化した。したがって、指数が高いほど、ピン抜けし難いことを意味する。
実施例1は、
図3(a),(b)に示す、2組の上部フランジ56の山部及び下部フランジ60の谷部の形態のうち、1つの上部フランジ56の山部を直線形状にして、山部と谷部の組み合わせを1組にした。
実施例2は、
図3(a),(b)に示す2組の上部フランジ56の山部及び下部フランジ60の谷部の形態である。
実施例3は、
図6(d)に示す4組の上部フランジ56の山部及び下部フランジ60の谷部の形態である。
比較例4では、
図3(a),(b)に示す2組の上部フランジ56の山部及び下部フランジ60の谷部を有するが、上部フランジ56の山部と下部フランジ60の谷部の、中心軸Xまわりの方位方向の位置は、45度ずれている。
比較例1〜4及び実施例1〜3に用いたチップは、
図3(a)に示す形状のチップである。
下記表1,2は、スタッドピン50の仕様と耐ピン抜け性の結果を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1,2からわかるように、実施例1〜3の耐ピン抜け性は、比較例1〜4対比5ポイント以上高いことがわかる。これより、本実施形態の効果は明らかである。
【0057】
以上、本発明のスタッドピン及びスタッドタイヤについて詳細に説明したが、本発明のスタッドピン及びスタッドタイヤは上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。