(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1から
図15は、この発明の実施の形態1に係るもので、
図1は集塵装置を備えた電気掃除機の斜視図、
図2は電気掃除機の本体の側面図、
図3は電気掃除機の本体の断面図、
図4は電気掃除機の本体に集塵装置を着脱する途中の状態を示す図、
図5は集塵装置の斜視図、
図6は集塵装置の分解斜視図、
図7は集塵装置の側面図、
図8は集塵装置の上面図、
図9は
図7中に示す断面A−Aによる集塵装置の断面図、
図10は
図8中に示す断面B−Bによる集塵装置の断面図、
図11は集塵装置が備える仕切部材、排出部及びスポンジフィルタの斜視図、
図12は集塵装置が備える仕切部材、排出部及びスポンジフィルタの断面図、
図13は集塵装置の要部を拡大して示す断面図、
図14は集塵装置が備える仕切部材及び排出部の斜視図、
図15は集塵装置が備える流入部ケースの要部の斜視図である。
【0012】
以下の説明では、塵埃及びその他のゴミを総称して単に「塵埃」と呼ぶ場合がある。また、塵埃が混じった空気を「含塵空気」と呼ぶ場合がある。そして、塵埃が取り除かれた空気を「清浄空気」と呼ぶ場合がある。
【0013】
この発明の実施の形態1に係る集塵装置を備えた電気掃除機1は、例えばコードレスタイプの縦型電気掃除機である。
図1に示すように、電気掃除機1は、主な構成要素として、本体3、管体4及び吸込具5を備えている。
図2及び
図4に示すように、本体3は、ハンドル15、外郭部16及び集塵部17を備えている。ハンドル15は、電気掃除機1の使用中に使用者が手で握る部位である。使用者は、ハンドル15を握ることで電気掃除機1の本体3を把持できる。
【0014】
外郭部16は、本体3の外郭すなわち外側の覆いをなす部材である。本体3の外郭部16には、
図3に示すように、電動送風機23及びバッテリ部19が内蔵されている。電動送風機23は電気掃除機1の吸引風を生成するためのものである。バッテリ部19は、電動送風機23を駆動するための電池を含んでいる。
【0015】
外郭部16は、ケース部18及び接続管部20を備えている。接続管部20は、管体4が着脱可能に連結される中空筒状の部材である。接続管部20は、塵埃を吸い込むための接続口29を有する。接続口29は、接続管部20の一端に形成された開口である。接続管部20の内部には、接続口29を通過した含塵空気の気流を集塵部17へ導く風路が形成されている。接続管部20の他端には、ハンドル15の一端が外見上連続するようにして配置されている。ハンドル15の他端側には、操作部22が設られている。
【0016】
集塵部17は、この発明の実施の形態1に係る集塵装置である。集塵部17は、電動送風機23が生成した吸引風により本体3に吸い込んだ含塵空気中の塵埃を捕集するためのものである。
図4に示すように、集塵部17は、本体3に対し着脱可能に取り付けられている。
【0017】
集塵部17の後述する集塵容器87の底部には、凹部が形成されている。また、集塵部17には、後述するようにレバー部94が設けられている。そして、
図3に示すように、接続管部20には凸部36が形成されている。集塵部17を本体3に取り付ける際には、まず、集塵部17の凹部を本体の凸部36に引っかける。そして、この凹部と凸部36の接点を支点にして、集塵部17を回動させ、レバー部94をケース部18側に掛けることで、集塵部17が本体3に固定される。
【0018】
図5に示すように、集塵部17は、全体として円柱状の外観を有する。後述するように、この実施の形態に係る集塵部17は、サイクロン分離装置を有している。サイクロン分離装置とは、電動送風機23が生成した空気流により含塵空気を内部で旋回させて含塵空気からごみを分離する装置である。
【0019】
図2に示すように、外郭部16は、排気部21を備える。排気部21は、外郭部16に形成された開口である。集塵部17にて塵埃が取り除かれた気流は、排気部21から本体3の外部へ排出される。
【0020】
電動送風機23は、ハンドル15に設けられた操作部22に対する操作に応じて駆動する。電動送風機23が駆動すると、集塵部17及び接続管部20の内部に吸引力が作用し、接続口29から含塵空気が吸い込まれる。接続口29に吸い込まれた含塵空気は、接続管部20を通過して集塵部17の内部に取り込まれる。集塵部17では、含塵空気から塵埃が分離される。集塵部17から排出された清浄空気は、電動送風機23を通過する。電動送風機23を通過した清浄空気は、排気部21から本体3の外部に排出される。
【0021】
次に、この実施の形態に係る集塵装置である集塵部17の構成について説明する。
図6に示すように、集塵部17は、主要な構成部材として、フィルタ体81、流入部ケース82、仕切部材83、排出部84、円錐部85、隔壁部86及び集塵容器87を備えている。
【0022】
図7及び
図8に示すように、流入部ケース82には、流入口101が形成されている。流入部ケース82の側面は、円弧面102とストレート面103とからなる。流入部ケース82は、特に
図8に示すように、上面視でD字状を呈する。流入口101は、ストレート面103に配置される。流入口101は、含塵空気を集塵部17の内部に流入させるための開口である。流入部ケース82には、レバー部94が設けられている。レバー部94は、集塵部17を本体3に取り付けた際に本体3のケース部18と係合する部位である。
【0023】
フィルタ体81は、流入部ケース82内の上部に形成されたフィルタ室89内に着脱可能に収容される。
図8に示すように、フィルタ体81は、枠体92、プリーツフィルタ91及びパッキン93を備える。枠体92は、上面視で流入部ケース82と相似なD字状を呈する。パッキン93は、枠体92の上面外周に配置されている。パッキン93は、本体3の吸引動作時に本体の後述するケース部18に密着する。
【0024】
仕切部材83は、流入部ケース82内におけるフィルタ体81の下方に着脱可能に収容される。仕切部材83は、集塵部17を適切に組み立てた状態で、フィルタ室89と後述する旋回室111とを仕切る部材である。また、仕切部材83は、流入部ケース82の流入口101から流入した含塵空気を円錐部85に導くための部材でもある。
【0025】
仕切部材83は、
図9から
図14に示すように、案内板106、天面部107及びシール部材120を備える。案内板106は、流入口101から流入した含塵空気を後述する旋回室111に導く部位である。天面部107は、集塵部17を適切に組み立てた状態で、後述する旋回室111の上面となる。シール部材120は、天面部107の上面外周に配置されている。シール部材120は、集塵部17を適切に組み立てた状態で、流入部ケース82の内壁に密着する。天面部107とシール部材120により、後述する旋回室111内の含塵空気が後述する排出部84を通過することなくフィルタ体81側へと漏出することを防いでいる。
【0026】
図9、
図10、
図12及び
図13に示すように、集塵部17を適切に組み立てた状態で、流入部ケース82と仕切部材83との間には、流入口101と旋回室111の内部とを連通する流入風路104が形成される。
【0027】
図10に示すように、円錐部85は、主に旋回室111の側壁となる部材である。円錐部85は、集塵部17を適切に組み立てた状態で、仕切部材83の下側に配置される。旋回室111は、流入口101から流入した含塵空気を旋回させて含塵空気から塵埃を遠心分離するための室である。円錐部85は、主要部分は倒立した円錐形状を呈する。円錐部85の側壁には、第1の開口112が形成されている。円錐部85の底部には、第2の開口113が形成されている。なお、円錐部85の底部とは、前述した倒立した円錐形状の頂点部分にあたる。第1の開口112及び第2の開口113は、含塵空気から遠心分離された塵埃を旋回室111の外部に排出するための開口である。
【0028】
排出部84は、円筒もしくは円錐形状、又は、円筒形と円錐形とを組み合わせた形状を呈する。集塵部17を適切に組み立てた状態で、排出部84は、円錐部85の内側に配置される。排出部84の下側の側壁の一部には、複数の微細孔が形成されている。排出部84の上端部には、排出口105が形成されている。排出口105は、旋回室111の内部の空気を旋回室111の外部に排出するための開口である。集塵部17を適切に組み立てた状態で、排出部84の排出口105は、仕切部材83の天面部107の中央に配置される。仕切部材83の天面部107及び排出部84の排出口105と、フィルタ体81との間には、スポンジフィルタ90が配置される。
【0029】
集塵容器87は、有底の円筒形状を呈する。集塵容器87は、集塵部17を適切に組み立てた状態で、円錐部85の外側に配置される。集塵容器87の底面の外側には、図示しない凹部が形成されている。集塵部17を適切に組み立てた状態で、レバー部94と凹部とは、集塵部17の中心に対して反対側に配置される。円錐部85と集塵容器87とは、着脱可能に組み合わされる。
【0030】
集塵容器87の内側で、かつ、円錐部85の外側の空間は、集塵室になっている。集塵室は、旋回室111で含塵空気から遠心分離された塵埃を捕集する空間である。集塵容器87の内側で、かつ、円錐部85の外側には、隔壁部86が配置される。集塵室は、この隔壁部86により、第1の集塵室114及び第2の集塵室115の2つに区画されている。第1の集塵室114は、第2の集塵室115の外側に配置される。したがって、第2の集塵室115は、第1の集塵室114の内側に配置される。
【0031】
第1の集塵室114は、第1の開口112を介して旋回室111と通じている。第2の集塵室115は、第2の開口113を介して旋回室111と通じている。なお、集塵容器87は少なくとも一部に透明な素材を用いるとよい。このようにすることで、外側からの集塵容器87内の視認性に優れ、塵埃の蓄積量を確認できるため、ごみ捨て時期を把握しやすい。
【0032】
排出部84、円錐部85及び集塵容器87は、いずれもそれぞれの中心軸に垂直な断面が円形である。そして、排出部84、円錐部85及び集塵容器87の各中心軸は、全てが平行になるように配置される。排出部84と円錐部85の中心軸は一致するが、集塵容器87の中心軸とは一致しない。
【0033】
前述したように、本体3の電動送風機23が動作すると、吸引風が発生し、接続口29及び接続管部20から集塵部17内に含塵空気が吸い込まれる。この際、含塵空気は流入口101から集塵部17内に流入する。流入口101を通過した含塵空気は、流入風路104を通り旋回室111内に流入する。この際、含塵空気は、円錐部85の内面、すなわち旋回室111を形成する側壁に沿うように旋回室111にその接線方向又は円周方向から流入する。
【0034】
旋回室111に流入した空気は、旋回室111の側壁に沿って予め設定された旋回方向に回り、旋回室111内で旋回気流を形成する。この旋回気流は、中心軸近傍の強制渦領域とその外側の自由渦領域とを形成しながら、その経路構造と重力とによって下向きに流れていく。
【0035】
旋回室111内の空気、すなわち前述の旋回気流に含まれるごみには、遠心力が作用する。例えば繊維ごみ及び毛髪といった比較的嵩の大きなごみαは、作用する遠心力によって円筒部に押し付けられながら落下する。このため、ごみαは、第1の開口112の高さに達すると第1の開口112を通過する。第1の開口112を通過したごみαは、第1の集塵室114に送られる。第1の集塵室114には、ごみαとともにわずかながら旋回気流の一部も流入する。流入した気流は第1の集塵室114内を旋回する。
【0036】
第1の開口112から第1の集塵室114に進入しなかったごみは、旋回室111内の気流に乗って旋回しながら下方に移動する。砂ごみ及び細かい繊維ごみといった比較的嵩の小さなごみβは、第2の開口113を通過する。そして、ごみβは、第2の集塵室115に落下して捕捉される。
【0037】
旋回室111内の旋回気流は、旋回室111の最下部に達するとその進行方向を上向きに変え、旋回室111の中心軸に沿って上昇する。この上昇気流を形成する空気からはごみα及びごみβが除去されている。ごみα及びごみβが取り除かれた清浄空気は、排出部84の微細口を通過して旋回室111から流出する。排出部84を通過した空気は、排出口105からフィルタ室89内へと流入する。フィルタ室89内へと流入した空気は、スポンジフィルタ90とプリーツフィルタ91とをこの順序で通過して、集塵部17の外へ排出される。
【0038】
その後、清浄空気は、外郭部16内の電動送風機23を通過する。そして、清浄空気は、排気部21から本体3の外部に吹き出される。この際、排気部21からの空気の吹き出し方向は、接続管部20と平行な方向となる。
【0039】
以上のように構成された集塵部17(集塵装置)について、旋回室111よりも下流側に着目して、さらに詳しく説明する。
【0040】
図10及び
図13に示すように、流入部ケース82は、旋回室111の上側部分及びフィルタ室89の外郭を形成する。流入部ケース82の内側には、仕切部材83が配置される。この仕切部材83の特に天面部107により、旋回室111とフィルタ室89とが仕切られている。
【0041】
仕切部材83の天面部107の中央には開口が形成されている。この天面部107には開口には、排出部84が取り付けられる。したがって、仕切部材83の天面部107の中央には、排出部84の上端に形成された排出口105が配置される。排出口105は、旋回室111の内部の空気を排出するための開口である。したがって、フィルタ室89は、排出口105の下流側に設けられる。
【0042】
そして、フィルタ室89の内部には、フィルタ体81が収容される。前述したように、フィルタ体81は、枠体92を備えている。枠体92は中空な筒状の部材である。枠体92の外径は、フィルタ室89の内径より小さい。枠体92の内側には、プリーツフィルタ91が挿入されている。
【0043】
図11に示すように、仕切部材83の天面部107には、シール部材120が取り付けられている。シール部材120は環状の弾性体で構成されている。シール部材120は、流入部ケース82の形状に合わせた形状である。前述したように流入部ケース82は、円形の一部が直線状に切り欠かれたD形状を呈している。このため、シール部材120もD形の環状を呈する。
【0044】
図11及び
図12に示すように、シール部材120は、第1のシール部121と第2のシール部122とを備えている。つまり、この実施の形態では、第1のシール部121及び第2のシール部122は、一体に形成されている。
【0045】
第1のシール部121は、第1の外径寸法を有するD形の環状を呈する。第2のシール部122は、第2の外径寸法を有するD形の環状を呈する。そして、第2の外径寸法は、第1の外径寸法より小さい。
【0046】
図13に示すように、以上のように構成されたシール部材120を有する仕切部材83が流入部ケース82内に入れられると、第1のシール部121の外縁部が流入部ケース82の内周面に密着する。第1のシール部121が密着する流入部ケース82の内周面は、フィルタ室89の内壁でもある。したがって、第1のシール部121は、仕切部材83とフィルタ室89の内壁との間をシールする。また、フィルタ室89内にフィルタ体81が配置されると、第2のシール部122の先端側は、フィルタ体81の枠体92の下端部に密着する。したがって、第2のシール部122は、仕切部材83とフィルタ体81との間をシールする。
【0047】
つまり、まず、第1のシール部121によって、旋回室111から直接的にフィルタ室89内のフィルタ体81の外周に気流及び細塵が漏れることを抑制している。そして、さらに、第2のシール部122により、排出口105を通過した細塵を含む気流がフィルタ体81の外周に回り込むことを抑制している。したがって、これらの第1のシール部121と第2のシール部122とにより、旋回室111の排出口105より下流側にあるフィルタ体81の外周へ気流発生を抑制して、圧損を低滅できるとともにフィルタ体81の外周への細塵の付着を抑制可能である。このため、清潔に使用でき、使い勝手がよい。
【0048】
また、この際、第1のシール部121と第2のシール部122とは、シール部材120として一体に形成されている。このため、1つのシール部材120で旋回室111からの直接的なフィルタ室89内への気流の漏洩と、旋回室111の排出口105を通過した気流のフィルタ体81の外周への漏洩の両方を抑制できる。
【0049】
特に
図13に示すように、第1のシール部121の先端部は、仕切部材83からフィルタ室89側に斜めに突出してフィルタ室89の内壁に当接している。電気掃除機1の動作中には、フィルタ室89内よりも旋回室111内の方が負圧になる。したがって、この圧力差により第1のシール部121に働く力は、第1のシール部121をフィルタ室89の内壁により強く密着させるように作用する。このため、第1のシール部121によるシール性能をより向上できる。
【0050】
なお、本実施の形態では第1のシール部121を直線状の形状で図示したが、直線状に限定するものではなく、外側に膨らむような湾曲状であってもよい。
【0051】
また、特に
図13に示すように、第2のシール部122の先端部は、仕切部材83からフィルタ体81の外周側に斜めに突出してフィルタ体81に当接している。電気掃除機1の動作中には、フィルタ体81の外側よりフィルタ体81の内側の方が負圧になる。したがって、この圧力差により第2のシール部122に働く力は、第2のシール部122をフィルタ体81の下端部の外周により強く密着させるように作用する。このため、第2のシール部122によるシール性能をより向上できる。
【0052】
なお、
図14及び
図15に示すように、旋回室111の側壁として仕切部材83と流入部ケース82とが接合される部分にはめ合い構造を設けるようにしてもよい。具体的に例えば、
図14に示すように、仕切部材83の案内板106の下端面には、線状突起部131が形成されている。また、この線状突起部131に対応して、流入部ケース82には溝部132が形成されている。
【0053】
そして、
図13に示すように、流入部ケース82内に仕切部材83が適切に配置されると、案内板106の線状突起部131が流入部ケース82の溝部132の内側にはまる。このようにすることで、仕切部材83と流入部ケース82とが接合されて形成される旋回室111の側壁に隙間ができることを抑制できる。