(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の制御技術では、利用者は、自身の乗場呼びに対して割当変更が行われた場合に、その割当変更に気付かないことがある。即ち、その利用者は、割当変更先の乗りかごが出発階に到着した場合でも、その乗りかごに乗車しないことがある。このとき、当該利用者が登録した乗場呼びの割当て(即ち、割当変更先への割当変更後の仮割当て)は、当該割当変更先の乗りかごに別の利用者が誰も乗車しなかった場合にはキャンセルされるが、その一方で、行先階は異なるが出発階が同じである別の利用者が乗車した場合には確定されてしまう。
【0007】
この様に、割当変更先の乗りかごに利用者が乗車しなかった場合において、その利用者の乗場呼びの割当てが確定されてしまうと、当該乗場呼びの行先階に乗りかごが到着した場合であっても利用者が誰も降車せず、その行先階での乗りかごの停止が無駄になる。この場合、乗りかごに乗車している利用者にとっては、自身の行先階に到着するまでの乗車時間が長くなってしまう。
【0008】
そこで本発明の目的は、複数の乗りかごが設けられたエレベータにおいて、乗場呼びが割当変更されたことに利用者が気付かなかった場合でも、乗りかごに無駄な動作が発生することを防止できる制御技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベータの制御システムは、複数の乗りかごが設けられたエレベータの制御システムであって、登録装置と、制御装置と、を備える。登録装置は、エレベータの乗場に設置され、利用者ごとに出発階及び行先階を乗場呼びとして登録する。制御装置は、登録装置で登録された乗場呼びを複数の乗りかごの何れか1つに割り当てる。そして、制御装置は、乗場呼びの割当先を、当該乗場呼びが割り当てられている第1の乗りかごから第2の乗りかごへ変更することが可能であり、当該割当先の変更を行う場合には、第2の乗りかごとして、所定条件に該当する乗りかごを除いた他の乗りかごの何れか1つを選択する。ここで、所定条件は、第1の乗りかごに割り当てられている乗場呼び(変更対象乗場呼び)の出発階及び行先階をそれぞれ変更対象出発階及び変更対象行先階とした場合に、変更対象出発階と同じ出発階と、当該出発階から見た場合に変更対象行先階と同方向に位置する行先階のうちの当該変更対象行先階とは異なる行先階と、が乗場呼びとして既に割り当てられているという条件である。
【0010】
上記制御システムによれば、所定条件に該当する乗りかごを除いた他の乗りかごには、以下の第1〜第4の変更条件に該当する乗りかごが含まれる。
(1)第1の変更条件:変更対象出発階及び変更対象行先階とそれぞれ同じ出発階及び行先階が乗場呼びとして既に割り当てられていること
(2)第2の変更条件:乗場呼びが全く割り当てられていないこと
(3)第3の変更条件:既に割り当てられている乗場呼びの
出発階が変更対象出発階と異なること
(4)第4の変更条件:変更対象出発階と同じ出発階と、当該出発階から見た場合に変更対象行先階とは逆方向に位置する行先階と、が乗場呼びとして既に割り当てられていること
【0011】
第1の変更条件に合致する乗りかごを第2の乗りかごとして、当該乗りかごに乗場呼び(変更対象乗場呼び)が割当変更された場合には、利用者が、自身の乗場呼びに対して割当変更が行われたことに気付かず、当該乗場呼びの出発階に到着した第2の乗りかごに乗車しなかった場合でも、同じ出発階から別の利用者が乗車することになる。この場合、乗車しなかった利用者の乗場呼び(変更対象乗場呼び)の第2の乗りかごへの割当てが、別の利用者の乗車を以て確定されてしまうが、そのときに乗車した別の利用者の乗場呼びの割当ても一緒に確定され、且つ、別の利用者の乗場呼びには同じ行先階のものが必ず存在する。このため、割当変更された利用者が第2の乗りかごに乗車しなかった場合でも、確定された乗場呼びの行先階での第2の乗りかごの停止が無駄になることがない。
【0012】
第2の変更条件の何れかに合致する乗りかごを第2の乗りかごとした場合、当該乗りかごには、変更対象乗場呼びのみが割り当てられることになる。又、第3の変更条件の何れかに合致する乗りかごを第2の乗りかごとした場合、当該乗りかごには、既に割り当てられている乗場呼びの何れとも出発階が異なる変更対象乗場呼びが、割当変更によって新たに割り当てられることになる。更に、第4の変更条件の何れかに合致する乗りかごを第2の乗りかごとした場合、当該乗りかごには、既に割り当てられている乗場呼びの何れとも行先階方向(出発階から見た場合の行先階の位置する方向)が異なる変更対象乗場呼びが、割当変更によって新たに割り当てられる。
【0013】
よって、何れの場合でも、利用者が、自身の乗場呼びに対して割当変更が行われたことに気付かず、当該乗場呼びの出発階に到着した第2の乗りかごに乗車しなかった場合でも、別の利用者が乗車することはない。従って、誰も乗車しなかったことを以て第2の乗りかごへの変更対象乗場呼びの割当てをキャンセルすることができ、これにより、第2の乗りかごの無駄な動き(降車する利用者がいない階に停止するといった動き)を防止することができる。
【0014】
この様に、所定条件に該当する乗りかごを除いた他の乗りかご(即ち、上記第1〜第4の変更条件の何れかに合致する乗りかご)を第2の乗りかごとして探し出すことにより、乗場呼びが割当変更されたことに利用者が気付かなかった場合でも、第2の乗りかごに無駄な動作が発生することを防止することができる。
【0015】
上記制御システムにおいて、制御装置は、第2の乗りかごとして上記他の乗りかごの何れか1つを選択する場合、既に割り当てられている乗場呼びの出発階が変更対象出発階と異なる乗りかごを、既に割り当てられている乗場呼びの出発階が変更対象出発階と同じである乗りかごより優先して選択してもよい。即ち、制御装置は、上記第3の変更条件に該当する乗りかごを、上記第4の変更条件に該当する乗りかごより優先させる。なぜなら、第4の変更条件よりも第3の変更条件に該当する乗りかごの方が、変更対象出発階に、その階から変更対象行先階へ向かう方向で到着するのが早くなり易いからである。よって、この様に割当変更先(第2の乗りかご)となる乗りかごに優先度を設けることにより、利用者が行先階に到着するまでの時間が割当変更によって長期化することを抑制することができる。
【0016】
上記制御システムにおいて、制御装置は、第2の乗りかごとして上記他の乗りかごの何れか1つを選択する場合、乗場呼びが全く割り当てられていない乗りかごを、既に割り当てられている乗場呼びの出発階が変更対象出発階と異なる乗りかごより優先して選択してもよい。即ち、制御装置は、上記第2の変更条件に該当する乗りかごを、上記第3の変更条件に該当する乗りかごより優先させる。なぜなら、第2の変更条件に該当する乗りかごには乗場呼びが割り当てられていないため、他の利用者の乗場呼びに影響を与えずに、又、当該他の利用者の乗場呼びによる影響を受けずに、割当変更先の乗りかご(第2の乗りかご)を変更対象乗場呼びに応答させることができるからである。よって、この様に割当変更先(第2の乗りかご)となる乗りかごに優先度を設けることにより、利用者が行先階に到着するまでの時間が割当変更によって長期化することを抑制することができる。
【0017】
上記制御システムにおいて、制御装置は、第2の乗りかごとして上記他の乗りかごの何れか1つを選択する際に、選択できる乗りかごの候補が複数存在する場合、第1の乗りかごに対応付けて予め設定されている当該第1の乗りかご以外の乗りかごに関する優先順位に基づいて、当該優先順位の高いものを選択してもよい。優先順位は、例えば、乗場呼びの割当先が第1の乗りかごから変更された場合に、当該乗場呼びを行った利用者が割当変更に気付き易い順番である。この構成によれば、利用者は、自身の乗場呼びに対して割当変更が行われたことに気付き易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の乗りかごが設けられたエレベータにおいて、乗場呼びが割当変更されたことに利用者が気付かなかった場合でも、乗りかごに無駄な動作が発生することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の制御システムは、複数の乗りかごが設けられたエレベータに適用される。以下、本発明の制御システムを、3つの乗りかごG(
図1参照。
図1では符号A〜Cで区別されている)が設けられたエレベータに適用した実施形態について、具体的に説明する。尚、本発明の制御システムは、3つに限定されない複数の乗りかごGを備えたエレベータにも、その乗りかごGの数に応じて各部構成(制御処理等を含む)を適宜変更することによって適用することができる。
【0021】
[1]制御システムの構成
図1は、実施形態に係る制御システムを示した概念図である。
図1に示される様に、制御システムは、エレベータの各乗場Hに設置される登録装置1と、3つのエレベータ制御装置2と、群管理制御装置3と、を備える。尚、
図1では、3つのエレベータ制御装置2が符号A〜Cで区別されている。
【0022】
登録装置1は、利用者ごとに出発階Fm及び行先階Fnを乗場呼びKとして登録する。本実施形態では、登録装置1は、読取部11と、登録処理部12と、表示部13と、を有する。
【0023】
読取部11は、利用者が所持する記録媒体Q(ICカードや磁気カード等)から当該利用者の情報を読み取る。具体的には、記録媒体Qに、利用者(記録媒体Qの所有者)を識別するための識別情報Piが記録されており、その識別情報Piを読取部11は読み取る。尚、読取部11による記録媒体Qの読取り方法は、接触式のものであってもよいし、NFC(Near Field Communication)等の近距離通信で情報を読み取る非接触式のものであってもよく、特に限定されるものではない。又、記録媒体Qは、カード状のものに限らず、スティック状やチップ状のものであってもよい。更に、読取部11との近距離通信(NFC等)が可能なスマートフォン等の携帯情報端末が、記録媒体Qとして用いられてもよい。
【0024】
登録処理部12は、読取部11が読み取った識別情報Piを用いて記録媒体Qの認証を行う(認証処理)。そして、その認証に成功した場合、登録処理部12は、エレベータに対する乗場呼びKの登録を実行する(呼び登録処理)。具体的には、登録処理部12は、読取部11で読み取られた識別情報Piと、当該識別情報Piの読取りが実行された階(出発階Fm)と、当該識別情報Piに対応付けられている行先階Fnと、を互いに関連付けて、乗場呼びKとして登録する。ここで、識別情報Piと行先階Fnとは、対応データにおいて互いに対応付けられている。具体的には、当該対応データにおいて、記録媒体Qに記録される識別情報Piごとに、その識別情報Piで識別される利用者(記録媒体Qの所有者)に許可する行先階Fnが対応付けられている。そして、登録処理部12は、乗場呼びKの登録時に対応データを参照する。尚、対応データでは、識別情報Piごとに、その識別情報Piで識別される利用者(一般利用者、視覚障害者、色覚障害者、車椅子利用者、VIP、台車等を運搬する利用者など)に関する属性を含んだ属性情報が更に対応付けられていてもよい。
【0025】
表示部13は、記録媒体Qの認証が成功して登録処理部12で乗場呼びKが登録された場合に、乗車すべき乗りかごGを利用者に通知するための情報(乗りかごGを識別するための乗りかご情報Pjであって、例えば数字、文字、記号など)を表示する。表示部13には、例えば、液晶ディスプレイやLEDディスプレイなど、表示する画像(数字、文字、記号などを含む)を自在に変化させることが可能な様々なディスプレイが用いられる。尚、表示部13は、その様なディスプレイに限らず、乗りかご情報Pjを表す数字、文字、記号などの形をした発光部を有したものであってもよい。又、乗車すべき乗りかごGを利用者に通知する手段として、表示部13に代えて、或いは表示部13に加えて、スピーカ等の音声出力部が用いられてもよい。
【0026】
尚、登録装置1の登録処理部12は、後述するエレベータ制御装置2や群管理制御装置3に含まれていてもよい。又、上記対応データは、登録処理部12が設けられている装置自身が有していてもよいし、制御システムが備える記憶装置(不図示)に記憶されていてもよい。更に、記録媒体Qには、利用者(記録媒体Qの所有者)に許可する行先階Fnが、識別情報Piと共に記録されていてもよい。この場合、登録処理部12は、読取部11が記録媒体Qから読み取った行先階Fnを、乗場呼びKの行先階Fnとする。
【0027】
エレベータ制御装置2(2A〜2C)は、乗りかごG(GA〜GC)のそれぞれに1つずつ対応させて設けられており、各エレベータ制御装置2は、これに対応する乗りかごGの動作を制御する。そして、エレベータ制御装置2(2A〜2C)は、群管理制御装置3によって一元的に管理及び制御される。具体的には、各エレベータ制御装置2は、群管理制御装置3によって割り当てられた乗場呼びKの出発階Fm及び行先階Fnに基づいて、乗りかごGの動作を制御する。
【0028】
群管理制御装置3は、登録装置1で新規に登録された乗場呼びKを複数の乗りかごG(GA〜GC)の何れか1つに割り当てる(割当処理)。具体的には、登録装置1で乗場呼びKが新規に登録された場合、群管理制御装置3は、エレベータの輸送効率等を考慮して、当該乗場呼びKの割当先を複数の乗りかごG(GA〜GC)から選択し、選択した割当先に対して上記乗場呼びKを仮に割り当てる(仮割当て)。
【0029】
そして、群管理制御装置3は、乗場呼びKを仮割当てした乗りかごGを識別するための乗りかご情報Pjを登録装置1に表示させる(表示処理)。尚、各乗場Hには、乗りかごG(GA〜GC)にそれぞれ対応させて表示装置(不図示)が設置されていてもよく、この場合、群管理制御装置3は、乗場呼びKの行先階Fnを、当該乗場呼びKを仮割当てした乗りかごGに対応する表示装置に表示させてもよい。
【0030】
更に、エレベータの制御システムでは、乗りかごGに対して乗場呼びKが仮割当てされている場面において、当該乗りかごGが故障等で使用できなくなることや、専用運転や戸開延長等の割込みによって乗場Hへの当該乗りかごGの到着が遅れることがある。この様な状況が生じた場合、群管理制御装置3は、乗場呼びKの割当先(仮割当ての対象)を、当該乗場呼びKを割り当てている乗りかごG1(第1の乗りかご)から別の乗りかごG2(第2の乗りかご)へ変更することができる(割当変更処理)。
【0031】
エレベータ制御装置2は、これに対応する乗りかごGに乗場呼びKが仮割当てされた場合、当該乗場呼びKの出発階Fmへ乗りかごGを移動させる。その後、乗場呼びKの出発階Fmに乗りかごGが到着した場合、群管理制御装置3は、当該乗りかごGに利用者が乗車したか否かを判断する。そして、群管理制御装置3は、「乗車した」と判断した場合、その乗りかごGへの乗場呼びKの割当てを確定させることにより、当該乗場呼びKの割当状態を仮の状態から確定状態へ移行させる(割当確定処理)。一例として、乗りかごGの乗降口(乗場H側の乗降口でもよい)には、乗降時の利用者を検出することが可能な検出部(光学センサなど。不図示)が設けられており、群管理制御装置3は、当該検出部による検出結果に基づいて、乗りかごGに利用者が乗車したか否かを判断する。
【0032】
一方、乗りかごGに利用者が「乗車していない」と群管理制御装置3が判断した場合、当該群管理制御装置3は、その乗りかごGへの乗場呼びKの割当てをキャンセルする。尚、乗降の検出にどのような方法を用いるかにより、どの利用者が乗降したかまでは区別して検出することができない場合がある。この場合、ある利用者が乗りかごGの到着に気付かず乗車しなかった場合でも、別の利用者が乗車することで、乗車しなかった利用者の乗場呼びKの割当てまでもが確定されてしまう。
【0033】
そして、エレベータ制御装置2は、これに対応する乗りかごGへの乗場呼びKが確定された場合、当該乗場呼びKの行先階Fnへ乗りかごGを移動させる。
【0034】
より具体的には、群管理制御装置3は、上述した各種処理を実行する処理部として、割当処理部31と、表示処理部32と、割当変更処理部33と、割当確定処理部34と、を含む(
図1参照)。各処理部で実行される具体的な処理の詳細については、後述する。尚、これらの処理部は、群管理制御装置3内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよいし、群管理制御装置3が備えるCPU(Central Processing Unit)やマイクロコンピュータ等の処理装置にプログラムを実行させることによってソフトウェアで実現されてもよい。そして、その様なプログラムは、読取り可能な状態で記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に記憶されてもよいし、制御システムが備える記憶部(不図示)に記憶されてもよい。
【0035】
[2]制御システムで実行される制御処理
制御処理には、呼び登録時に実行される割当処理及び表示処理と、割当変更が必要になった場合に実行される割当変更処理と、乗りかごGの到着時に実行される割当確定処理と、が含まれる。そして、これらの処理は、主に群管理制御装置3で実行される。尚、表示処理及び割当確定処理については、群管理制御装置3に限らず、エレベータ制御装置2で実行されてもよいし、他の制御装置で実行されてもよい。
【0036】
[2−1]割当処理及び表示処理
図2は、割当処理及び表示処理を示したフローチャートである。割当処理及び表示処理は、登録装置1で乗場呼びKが新規に登録されたか否か(即ち、乗場呼びKが群管理制御装置3に入力されたか否か)を群管理制御装置3が判断し、当該群管理制御装置3によって「登録された(Yes)」と判断される都度、実行される。
【0037】
割当処理が開始されると、割当処理部31は、複数の乗りかごG(GA〜GC)の中から、新規に登録された乗場呼びKの割当てが可能な乗りかごGを抽出する(ステップS101)。このとき、割当処理部31は、割当禁止データDqを参照する。ここで、割当禁止データDqには、割当てを禁止するための乗りかごGの情報である乗りかご情報Pj、出発階Fm、及び行先階Fnが、互いに関連付けられて1つの禁止情報(Pj,Fm,Fn)として記録されている。尚、これらの禁止情報(Pj,Fm,Fn)が割当禁止データDqに対してどのように記録されるのかについては、後述する(
図3のステップS20参照)。そして、割当処理部31は、割当禁止データDqに記録されている乗りかご情報Pjで識別される乗りかごGを除いた残りの乗りかごGを、割当てが可能なものとして抽出する。
【0038】
その後、割当処理部31は、ステップS101で抽出した乗りかごGの何れか1つを、新規の乗場呼びKの割当先として決定する(
図2のステップS102)。このとき、割当処理部31は、エレベータの輸送効率等を考慮して割当先を決定する。一例として、割当処理部31は、ステップS101で抽出した乗りかごGのそれぞれについて、それらが乗場呼びKの出発階Fmへ到着するのに要する時間(到着時間)を予測し、予測した到着時間が最も短いものを割当先として決定する。尚、割当先の決定方法は、これに限らず、既に仮割当てされている乗場呼びKの数などに基づいて決定する方法などへ適宜変更することができる。
【0039】
ステップS102での決定後、割当処理部31は、割当先として決定した乗りかごGに対して、新規の乗場呼びKの仮割当てを実行する(
図2のステップS103)。その後、表示処理部32は、割当処理で仮割当てされた乗りかごGを識別するための乗りかご情報Pjを登録装置1に表示させる(
図2のステップS104)。
【0040】
[2−2]割当変更処理
図3は、割当変更処理を示したフローチャートである。割当変更処理は、割当変更する必要のある乗りかごG1(第1の乗りかご)が発生したか否かを群管理制御装置3が判断し、当該群管理制御装置3によって「発生した(Yes)」と判断される都度、実行される。以下では、割当変更する必要のある乗りかごG1(第1の乗りかご)を乗りかごGAとして説明する。
【0041】
割当変更処理が開始されると、割当変更処理部33は、乗りかごGA(第1の乗りかご)に仮割当てされている乗場呼びKを抽出する(
図3のステップS10)。このとき、割当変更処理部33は、抽出した乗場呼びK(以下、「変更対象乗場呼びKt」と称す)を例えば抽出順にナンバリングして抽出データDrに記録する。尚、
図3では、ナンバリングによって付される番号がパラメータk(1以上の整数)で示されている。
【0042】
その後、割当変更処理部33は、抽出した変更対象乗場呼びKtの割当先を、以下に説明する処理に従って別の乗りかごG2(第2の乗りかご)へ変更する。ここで、乗りかごGA(第1の乗りかご)に複数の乗場呼びKが仮割当てされていて、ステップS10にて複数の変更対象乗場呼びKtが抽出された場合には、割当変更処理部33は、当該複数の変更対象乗場呼びKtについて個々に割当変更を行ってもよいし、出発階Fm及び行先階Fnが何れも同じものをグループ化してグループごとに割当変更を行ってもよい。
【0043】
ステップS10での変更対象乗場呼びKt(k)の抽出後、割当変更処理部33は、変更対象乗場呼びKt(k)(又は、出発階Fm及び行先階Fnが何れも同じグループ)について、1番目(k=1)から順に、その割当変更先となる乗りかごG2(第2の乗りかご)を探す。具体的には、割当変更処理部33は、変更対象乗場呼びKt(k)の割当変更先として、乗りかごGA(第1の乗りかご)以外の乗りかごG(本実施形態では、GB及びGC)の中から優先度の高いものを探す。本実施形態では、割当変更処理部33は、第1の変更条件(詳細については後述)に合致する乗りかごGを最も優先度の高いものとして、当該第1の変更条件に合致するものを探す。そして、割当変更処理部33は、第1の変更条件に合致するものを探し出すことができかった場合には、優先度を下げて別の変更条件に合致するものを探す。即ち、割当変更処理部33は、第1〜第4の変更条件(詳細については後述)に合致するものを優先度の高いものから順に探していく。より具体的には以下の通りである。
【0044】
割当変更処理部33は、変更対象乗場呼びKt(k)の割当変更先として、第1の変更条件に合致する乗りかごGが乗りかごGB及びGCの中に存在するか否かを判断する(
図3のステップS11)。ここで、第1の変更条件は、変更対象乗場呼びKt(k)の出発階Fm及び行先階Fnをそれぞれ変更対象出発階Fmt(k)及び変更対象行先階Fnt(k)とした場合に、変更対象出発階Fmt(k)及び変更対象行先階Fnt(k)とそれぞれ同じ出発階Fm及び行先階Fnが乗場呼びKとして既に仮割当てされているという条件である。尚、
図4(A)及び(B)は、第1の変更条件に該当する乗りかごGが存在する場合における、割当変更の前後での割当状態の変化を示した図である。
図4(A)及び(B)では、乗りかごGBが、第1の変更条件に該当する乗りかごGである。一方、乗りかごGCは、第1の変更条件よりも優先度の低い第2の変更条件に該当する乗りかごGである。
【0045】
割当変更処理部33は、ステップS11にて「存在する(Yes)」と判断した場合(
図4(A)参照)、第1の変更条件に合致した乗りかごGへの新規の乗場呼びKの割当てを禁止するための禁止フラグを立てる(
図3のステップS15。禁止フラグ=ON)。その後、割当変更処理部33は、第1の変更条件に合致した乗りかごGを、割当変更先の候補が記録される候補データDcに追加する(
図3のステップS16A)。そして、ステップS16Aでの候補の追加後、割当変更処理部33は、候補データDcに追加された候補が複数であるか否かを判断する(
図3のステップS17)。
【0046】
割当変更処理部33は、ステップS11にて「存在しない(No)」と判断した場合、変更対象乗場呼びKt(k)の割当変更先(第2の乗りかご)として、次に、第2の変更条件に合致する乗りかごGが乗りかごGB及びGCの中に存在するか否かを判断する(ステップS12)。ここで、第2の変更条件は、乗場呼びKが全く仮割当てされていないという条件である。尚、
図5(A)及び(B)は、第2の変更条件に該当する乗りかごGが存在する場合における、割当変更の前後での割当状態の変化を示した図である。
図5(A)及び(B)では、乗りかごGCが、第2の変更条件に該当する乗りかごGである。一方、乗りかごGBは、第2の変更条件よりも優先度の低い第3の変更条件に該当する乗りかごGである。
【0047】
割当変更処理部33は、ステップS12にて「存在する(Yes)」と判断した場合(
図5(A)参照)、第2の変更条件に合致した乗りかごGへの新規の乗場呼びKの割当てを禁止するための禁止フラグを立てる(
図3のステップS15。禁止フラグ=ON)。その後、割当変更処理部33は、第2の変更条件に合致した乗りかごGを候補データDcに追加する(
図3のステップS16A)。そして、ステップS16Aでの候補の追加後、割当変更処理部33は、ステップS17の判断を行う。
【0048】
割当変更処理部33は、ステップS12にて「存在しない(No)」と判断した場合、変更対象乗場呼びKt(k)の割当変更先(第2の乗りかご)として、次に、第3の変更条件に合致する乗りかごGが乗りかごGB及びGCの中に存在するか否かを判断する(ステップS13)。ここで、第3の変更条件は、既に仮割当てされている乗場呼びKの
出発階Fmが変更対象出発階Fmt(k)と異なるという条件である。尚、
図6(A)及び(B)は、第3の変更条件に該当する乗りかごGが存在する場合における、割当変更の前後での割当状態の変化を示した図である。
図6(A)及び(B)では、乗りかごGBが、第3の変更条件に該当する乗りかごGである。一方、乗りかごGCは、第3の変更条件よりも優先度の低い第4の変更条件に該当する乗りかごGである。
【0049】
割当変更処理部33は、ステップS13にて「存在する(Yes)」と判断した場合(
図6(A)参照)、第3の変更条件に合致した乗りかごGへの新規の乗場呼びKの割当てを禁止するための禁止フラグを立てる(
図3のステップS15。禁止フラグ=ON)。その後、割当変更処理部33は、第3の変更条件に合致した乗りかごGを候補データDcに追加する(
図3のステップS16A)。そして、ステップS16Aでの候補の追加後、割当変更処理部33は、ステップS17の判断を行う。
【0050】
割当変更処理部33は、ステップS13にて「存在しない(No)」と判断した場合、変更対象乗場呼びKt(k)の割当変更先(第2の乗りかご)として、次に、第4の変更条件に合致する乗りかごGが乗りかごGB及びGCの中に存在するか否かを判断する(ステップS14)。ここで、第4の変更条件は、変更対象出発階Fmt(k)と同じ出発階Fmと、当該出発階Fmから見た場合に変更対象行先階Fnt(k)とは逆方向に位置する行先階Fnと、が乗場呼びKとして既に仮割当てされているという条件である。尚、
図7(A)及び(B)は、第4の変更条件に該当する乗りかごGが存在する場合における、割当変更の前後での割当状態の変化を示した図である。
図7(A)及び(B)では、乗りかごGCが、第4の変更条件に該当する乗りかごGである。一方、乗りかごGBは、第1〜第4の変更条件の何れにも該当しない乗りかごGである。
【0051】
割当変更処理部33は、ステップS14にて「存在する(Yes)」と判断した場合(
図7(A)参照)、第4の変更条件に合致した乗りかごGへの新規の乗場呼びKの割当てを禁止するための禁止フラグを立てる(
図3のステップS15。禁止フラグ=ON)。その後、割当変更処理部33は、第4の変更条件に合致した乗りかごGを候補データDcに追加する(
図3のステップS16A)。そして、ステップS16Aでの候補の追加後、割当変更処理部33は、ステップS17の判断を行う。
【0052】
割当変更処理部33は、ステップS14にて「存在しない(No)」と判断した場合、割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)として、割当変更元である乗りかごGA以外の全ての乗りかごG(GB及びGC)を候補データDcに追加する(
図3のステップS16B)。このとき、割当変更処理部33は、乗りかごGA以外の何れの乗りかごG(GB及びGC)についても禁止フラグを立てない(禁止フラグ=OFF)。そして、ステップS16Bでの候補の追加後、割当変更処理部33は、ステップS17の判断を行う。
【0053】
上述した第1〜第4の変更条件を用いて割当変更先の候補を選択する処理によれば、優先度の高い乗りかごGから順に割当変更先の候補が選択される。そして、この様に選択された候補は、次の様な所定条件に該当する乗りかごGを除いた他の乗りかごGの何れかに該当することになる。ここで、所定条件は、変更対象出発階Fmt(k)と同じ出発階Fmと、当該出発階Fmから見た場合に変更対象行先階Fnt(k)と同方向に位置する行先階のうちの変更対象行先階Fnt(k)とは異なる行先階Fnと、が乗場呼びKとして既に仮割当てされているという条件である。
【0054】
又、第2及び第3の変更条件にそれぞれ該当する乗りかごGの優先度に関して、次の様に把握することができる。即ち、割当変更処理部33によって変更対象乗場呼びKt(k)の割当変更先(第2の乗りかご)が選択される場合に、乗場呼びKが全く仮割当てされていない乗りかごGが、既に仮割当てされている乗場呼びKの出発階Fmが変更対象出発階Fmt(k)と異なる乗りかごGよりも優先される。
【0055】
更に、第3及び第4の変更条件にそれぞれ該当する乗りかごGの優先度に関して、次の様に把握することができる。即ち、割当変更処理部33によって変更対象乗場呼びKt(k)の割当変更先(第2の乗りかご)が選択される場合、既に仮割当てされている乗場呼びKの出発階Fmが変更対象出発階Fmt(k)と異なる乗りかごGが、既に仮割当てされている乗場呼びKの出発階Fmが変更対象出発階Fmt(k)と同じである乗りかごGよりも優先される。
【0056】
上述した候補の選択後(即ち、ステップS16A又は16Bでの候補の追加後)、割当変更処理部33は、候補データDcに追加された候補が複数であるか否かを判断する(ステップS17)。このステップS17は、候補データDcに何らかの候補が追加された状態で実行されるため、ステップS17にて候補が「複数でない(No)」と判断された場合、候補データDcに含まれている候補は1つだけであることが分かる。従って、割当変更処理部33は、ステップS17にて「複数でない(No)」と判断した場合、候補データDcに含まれている候補を、そのまま、割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)として決定する(
図3のステップS18A。
図4(B)、
図5(B)、
図6(B)、及び
図7(B)参照)。
【0057】
割当変更処理部33は、ステップS17にて候補が「複数である(Yes)」と判断した場合、乗りかごGA(第1の乗りかご)に対応付けて予め設定されている当該乗りかごGA以外の乗りかごG(GB及びGC)に関する優先順位に基づいて、当該優先順位の高いものを割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)として決定する(
図3のステップS18B)。
【0058】
ここで、上記優先順位は、例えば、乗場呼びKの割当先が乗りかごGA(第1の乗りかご)から変更された場合に、当該乗場呼びKを行った利用者が割当変更に気付き易い順番である。
図1に示される様に3つの乗りかごG(GA及びGC)が配置されている場合、乗りかごGA(第1の乗りかご)以外の乗りかごG(GB及びGC)に関する優先順位は、例えばGB→GCとなる。乗りかごGBは乗りかごGAに隣接しているため、利用者は、乗りかごGBは、割当変更されたときに利用者が最も気付き易い乗りかごGである、と考えられる。そして、乗りかごGCは乗りかごGAと同じ壁側に設けられているため、乗りかごGCは、割当変更されたときに利用者が乗りかごGBの次に気付き易い乗りかごGである、と考えられる。
【0059】
そして、この様な優先順位は、乗りかごGごとに優先データDpに記録されていてもよい。この場合、割当変更処理部33は、ステップS18Bの決定を行う際に優先データDpを参照する。又、割当変更処理部33は、ステップS18Bの決定を行う際に、乗りかごGの配置情報等に基づいて、割当変更先として最適な乗りかごGを算出してもよい。
【0060】
ステップS18A又はS18Bでの決定後、割当変更処理部33は、割当変更先として決定した乗りかごGについて禁止フラグが立っているか否か(禁止フラグ=ON又はOFF)を判断する(
図3のステップS19)。ステップS19にて「立っている(Yes)」(即ち、禁止フラグ=ON)と判断した場合、割当変更処理部33は、禁止フラグが立っている乗りかごGの乗りかご情報Pjと、当該乗りかごGに割当変更しようとしている乗場呼びKの出発階Fm及び行先階Fn(即ち、変更対象出発階Fmt(k)及び変更対象行先階Fnt(k))と、を割当禁止データDqに追加する(
図3のステップS20。禁止情報(Pj、Fm、Fn)の追加)。
【0061】
その後、割当変更処理部33は、その時点で立てられている全ての禁止フラグをオフにする(
図3のステップS21。禁止フラグ=OFF)。それから、割当変更処理部33は、ステップS18A又はS18Bで決定した乗りかごG2への割当変更を実行する(
図3のステップS22)。
【0062】
割当変更処理部33は、ステップS19にて「立っていない(No)」(即ち、禁止フラグ=OFF)と判断した場合、割当禁止データDqに情報を追加することなく、ステップS18A又はS18Bで決定した乗りかごG2への割当変更を実行する(ステップS22)。
【0063】
そして、割当変更処理部33は、変更対象乗場呼びKt(k)(又は、出発階Fm及び行先階Fnが何れも同じグループ)の全てについて割当変更が完了するまで、上述した処理を繰り返し実行する(ステップS23A及びS23B)。即ち、割当変更処理部33は、変更対象乗場呼びKt(k)(又は、グループ)の全てについて、1つずつ、割当変更先(第2の乗りかご)を決定して、その割当変更先への割当変更を実行していく。これにより、変更対象乗場呼びKt(k)(又は、グループ)ごとに、選択し得る中で最も優先度の高いものに割当変更することができ、その結果として、乗りかごGの動作に生じる無駄が少なくなる最も効率の良い割当変更を実現することができる。
【0064】
[2−3]割当確定処理
図8は、割当確定処理を示したフローチャートである。割当確定処理は、割当変更された変更対象乗場呼びKtの出発階Fm(変更対象出発階Fmt)に割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)が到着したか否かを群管理制御装置3が判断し、当該群管理制御装置3によって「到着した(Yes)」と判断される都度、実行される。
【0065】
割当確定処理が開始されると、割当確定処理部34は、割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)に利用者が乗車したか否かを判断する(
図8のステップS201)。そして、ステップS201にて「乗車した(Yes)」と判断した場合、割当確定処理部34は、その乗りかごG2(第2の乗りかご)への変更対象乗場呼びKtの割当てを確定させることにより、当該変更対象乗場呼びKtの割当状態を仮の状態から確定状態へ移行させる(
図8のステップS202)。一方、ステップS201にて「乗車していない(No)」と判断した場合、割当確定処理部34は、割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)が到着した時点から所定時間Tが経過したか否かを判断する(
図8のステップS203)。尚、経過時間の計測を開始する時点は、乗りかごG2(第2の乗りかご)が到着した時点に限らず、ドアが開いた時点等、適宜変更することができる。
【0066】
割当確定処理部34は、ステップS203にて「経過していない(No)」と判断した場合、再びステップS201の判断を実行し、その後、ステップS201にて「乗車した(Yes)」と判断するか、又は、ステップS203にて「経過した(Yes)」と判断するまで、ステップS201及びS203を繰り返し実行する。そして、割当確定処理部34は、ステップS203にて「経過した(Yes)」と判断した場合、割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)への変更対象乗場呼びKtの割当てをキャンセルする(
図8のステップS204)。
【0067】
その後、割当確定処理部34は、ステップS202での割当ての確定又はステップS204での割当てのキャンセルを行った変更対象乗場呼びKtの出発階Fm及び行先階Fnと、当該変更対象乗場呼びKtが仮割当てされていた乗りかごG2(第2の乗りかご)を識別するための乗りかご情報Pjと、が割当禁止データDqに1つの禁止情報(Pj、Fm、Fn)として含まれているか否かを判断する(
図8のステップS205)。そして、ステップS205にて「含まれている(Yes)」と判断した場合、割当確定処理部34は、その禁止情報(Pj、Fm、Fn)を割当禁止データDqから削除する(
図8のステップS206)。これにより、割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)に対して、新規の乗場呼びKとして、禁止されていた出発階Fm及び行先階Fnを割り当てることが可能になる。一方、ステップS205にて「含まれていない(No)」と判断した場合、割当確定処理部34は、割当確定処理を終了させる。
【0068】
上述した制御システムで実行される制御処理によれば、変更対象乗場呼びKt(k)の割当変更先(第2の乗りかご)として、第1〜第4の変更条件に合致する乗りかごGが優先度の高いものから順に選択される。そして、第1の変更条件に合致する乗りかごGの優先度が最も高い理由は、以下の通りである。
【0069】
第1の変更条件に合致する乗りかごGを割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)として、当該乗りかごG2に変更対象乗場呼びKtが割当変更された場合には、利用者が、自身の乗場呼びKに対して割当変更が行われたことに気付かず、当該乗場呼びKの出発階Fmに到着した乗りかごG2(第2の乗りかご)に乗車しなかった場合でも、同じ出発階Fmから別の利用者が乗車することになる。この場合、乗車しなかった利用者の乗場呼びK(変更対象乗場呼びKt)の乗りかごG2(第2の乗りかご)への割当てが、別の利用者の乗車を以て確定されてしまうが、そのときに乗車した別の利用者の乗場呼びKの割当ても一緒に確定され、且つ、別の利用者の乗場呼びKには同じ行先階Fnのものが必ず存在する。このため、割当変更された利用者が乗りかごG2に乗車しなかった場合でも、確定された乗場呼びKの行先階Fnでの乗りかごG2の停止が無駄になることがない。
【0070】
又、利用者が、自身の乗場呼びKに対して割当変更が行われたことに気付いて、乗りかごG2(第2の乗りかご)に乗車した場合には、当該利用者の乗場呼びK(変更対象乗場呼びKt)の割当てが確定されるが、その乗場呼びKは、乗りかごG2に既に割り当てられている乗場呼びKと行先階Fnが同じであるため、乗りかごG2の動作に新たな動作(途中の階での停止など)が追加されることがない。
【0071】
第2の変更条件に合致する乗りかごGを割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)とした場合、当該乗りかごG2には、変更対象乗場呼びKtのみが仮割当てされることになる。よって、利用者が、自身の乗場呼びKに対して割当変更が行われたことに気付かず、当該乗場呼びKの出発階Fmに到着した乗りかごG2(第2の乗りかご)に乗車しなかった場合でも、別の利用者が乗車することはなく、従って、誰も乗車しなかったことを以て乗りかごG2への変更対象乗場呼びKtの仮割当てがキャンセルされる。よって、乗りかごG2が無駄な動きをすることがない。
【0072】
第3の変更条件に合致する乗りかごGを割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)とした場合、当該乗りかごG2には、既に仮割当てされている乗場呼びKの何れとも出発階Fmが異なる変更対象乗場呼びKtが、割当変更によって新たに仮割当てされることになる。よって、利用者が、自身の乗場呼びKに対して割当変更が行われたことに気付かず、当該乗場呼びKの出発階Fmに到着した乗りかごG2(第2の乗りかご)に乗車しなかった場合でも、その出発階Fmには当該乗りかごG2の到着を待つ別の利用者がおらず、従って別の利用者が乗車することがない。その結果、誰も乗車しなかったことを以て乗りかごG2への変更対象乗場呼びKtの仮割当てがキャンセルされる。よって、その後、別の利用者のために乗りかごG2が動作した場合でも、当該乗りかごG2は、仮割当てがキャンセルされた変更対象乗場呼びKtの行先階Fnには停止することがなく、従って、降車する利用者がいない階に停止するといった無駄な動きが防止される。
【0073】
第4の変更条件に合致する乗りかごGを割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)とした場合、当該乗りかごG2には、既に仮割当てされている乗場呼びKの何れとも行先階方向(出発階Fmから見た場合の行先階Fnの位置する方向)が異なる変更対象乗場呼びKtが、割当変更によって新たに仮割当てされることになる。よって、利用者が、自身の乗場呼びKに対して割当変更が行われたことに気付かず、当該乗場呼びKの出発階Fmに到着した乗りかごG2(第2の乗りかご)に乗車しなかった場合でも、その乗りかごG2が到着したときには、当該利用者の行先階Fnとは逆方向に位置する行先階に別の利用者を搬送した後である。このため、別の利用者が乗車することはなく、従って、誰も乗車しなかったことを以て乗りかごG2への変更対象乗場呼びKtの仮割当てがキャンセルされる。よって、乗りかごG2が無駄な動きをすることがない。
【0074】
この様に、割当変更先(第2の乗りかご)として第1〜第4の変更条件に合致する乗りかごGを探し出すことにより、乗場呼びKが割当変更されたことに利用者が気付かなかった場合でも、乗りかごG2に無駄な動作が発生することを防止することができる。
【0075】
更に、上述した制御システムで実行される制御処理では、第2の変更条件に該当する乗りかごGが、第3の変更条件に該当する乗りかごGより優先される。なぜなら、第2の変更条件に該当する乗りかごGには乗場呼びKが割り当てられていないため、他の利用者の乗場呼びKに影響を与えずに、又、当該他の利用者の乗場呼びKによる影響を受けずに、割当変更先の乗りかごG2(第2の乗りかご)を変更対象乗場呼びKtに応答させることができるからである。よって、この様に割当変更先(第2の乗りかご)となる乗りかごGに優先度を設けることにより、利用者が行先階Fnに到着するまでの時間が割当変更によって長期化することを抑制することができる。
【0076】
又、上記制御処理では、第3の変更条件に該当する乗りかごGが、第4の変更条件に該当する乗りかごGより優先される。なぜなら、第4の変更条件よりも第3の変更条件に該当する乗りかごGの方が、変更対象出発階Fmtに、その階から変更対象行先階Fntへ向かう方向で到着するのが早くなり易いからである。よって、この様に割当変更先(第2の乗りかご)となる乗りかごGに優先度を設けることにより、利用者が行先階Fnに到着するまでの時間が割当変更によって長期化することを抑制することができる。
【0077】
[3]変形例
[3−1]第1変形例
上述した制御システムが実行する割当変更処理において、割当変更処理部33は、変更対象乗場呼びKt(k)について、第1〜第4の変更条件を用いて優先度の高い乗りかごGから順に割当変更先の候補を選択する場合に限らず、上述した所定条件に該当する乗りかごGを除いた他の乗りかごGを、割当変更先の候補として選択してもよい。即ち、割当変更処理部33は、第1〜第4の変更条件の何れかに該当する全ての乗りかごGを探し出すことにより、優先度を考慮せずに、割当変更先の候補になり得るものを選択してもよい。
【0078】
この場合、割当変更処理部33は、優先度を考慮せずに選択した候補の中から、例えば上述した第1〜第4の変更条件を用いて最も優先度の高いものを割当変更先(第2の乗りかご)として決定してもよいし、乗りかごGごとに優先データDpに記録されている優先順位に基づいて割当変更先を決定してもよい。
【0079】
第1変形例で選択される割当変更先の候補(即ち、所定条件に該当する乗りかごGを除いた他の乗りかごG)には、第1〜第4の変更条件の何れかに該当する全ての乗りかごGが含まれる。従って、何れか1つの候補が割当変更先として決定されることで当該割当変更先となった乗りかごG2(第2の乗りかご)は、第1〜第4の変更条件の何れかに該当したものとなる。そして、その様な乗りかごG2に変更対象乗場呼びKt(k)が割当変更されることにより、上記実施形態で説明した様に、利用者が割当変更に気付かなかった場合でも、乗りかごG2に無駄な動作が発生すること防止することができる。
【0080】
[3−2]第2変形例
上述した制御システムにおいて、乗降時の利用者を検出することが可能な検出部(不図示)は、乗車と降車とを区別して検出できるものであってもよいし、その様な区別ができないものであってもよい。乗車と降車とを区別して検出できる検出部として、例えば、乗りかごGの乗降口(乗場H側の乗降口でもよい)において利用者が乗降する方向についての前後に2つの光学センサを配置したものを用いることができる。乗車と降車とを区別できない検出部としては、例えば、1つの光学センサで利用者を検出する場合が考えられる。
【0081】
そして、利用者の乗車と降車とを区別して検出できる場合には、利用者が自身の行先階Fnで降車した場合や当該行先階Fnとは別の階で誤って降車した場合に、その利用者の降車を検出することにより、降車を以て乗りかごGへの乗場呼びKの割当てが確定されてしまうといったことを防ぐことができる。即ち、利用者が乗車した場合にのみ、乗りかごGへの乗場呼びKの割当てを確定させることができる。
【0082】
この様に乗車と降車とを区別して検出することを利用することにより、割当変更処理部33は、割当変更先の候補として、既に仮割当てされている乗場呼びKの行先階Fnが変更対象出発階Fmt(k)と同じ階である乗りかごGを選択してもよい。これにより、利用者が、自身の乗場呼びKに対して割当変更が行われたことに気付かず、当該乗場呼びKの出発階Fmに到着した乗りかごG2(第2の乗りかご)に乗車しなかった場合に、そその階で別の利用者が降車した場合でも、乗車しなかった利用者の乗場呼びK(変更対象乗場呼びKt)の乗りかごG2(第2の乗りかご)への割当てが別の利用者の降車を以て確定されてしまうことがない。よって、乗りかごG2は、降車する利用者がいない階(ここでは、変更対象乗場呼びKtの行先階Fn)へ向かうといった無駄な動きをすることがない。又、乗場呼びKの出発階Fmに到着した乗りかごG2に利用者が乗車しなかった場合でも、その階で降車する利用者がいるため、当該出発階Fmへの乗りかごG2の到着が無駄になることがない。
【0083】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。