(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られる予測対象の成形品モデルの、前記所定の成形条件に対応する樹脂成形解析から計算された成形履歴情報を取得する成形履歴取得部と、
成形品の成形履歴情報から前記成形品の成形中の冷却による複数の方向の各々の収縮率を予測するための予め学習された予測モデルに基づいて、前記成形履歴取得部によって取得された前記成形履歴情報に対する、前記成形品の前記複数の方向の各々の収縮率を予測する収縮率予測部と、
を含む収縮率予測装置。
前記成形履歴情報は、成形中に前記樹脂材料が受ける履歴を表すものであり、樹脂の温度変化、成形終了時の繊維配向テンソル、及び線収縮率を含む請求項1記載の収縮率予測装置。
所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品の、前記所定の成形条件に対応する樹脂成形解析から計算された成形履歴情報を取得する成形履歴取得部と、
前記実際の成形品について測定した、成形中の冷却による複数の方向の各々の収縮率と、前記成形履歴取得部によって取得された成形履歴情報とに基づいて、成形品の成形履歴情報から前記成形品の前記複数の方向の各々の収縮率を予測するための予測モデルを学習する学習部と
を含む収縮率予測モデル学習装置。
前記成形履歴情報は、成形中に樹脂材料が受ける履歴を表すものであり、樹脂の温度変化、成形終了時の繊維配向テンソル、及び線収縮率を含む請求項5記載の収縮率予測モデル学習装置。
金型により成形品に付与したけがき線の間隔の変化を測定することにより、又は金型により成形品に付与したシボ模様の変化を画像相関法で処理することにより、実際の成形品について前記複数の方向の各々の収縮率を測定する請求項5又は6記載の収縮率予測モデル学習装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂流れのシミュレーションを行い、熱硬化性樹脂の収縮ひずみを、硬化反応、温度変化および圧力変化を考慮して予測できるようにした技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、平板のような基本形状の成形品を対象に、事前に実験や解析により、ゲートからの流動長、板厚、成形温度、保持圧力、保圧時間の関数として収縮ひずみを求め、本関数により収縮ひずみの予測を行う技術が知られている(特許文献2)。
【0004】
また、事前に平板などを使って計測した樹脂流動方向とそれに垂直な方向の収縮率を用いて、樹脂流れシミュレーションと組み合わせることで、方向による収縮率の違い(異方性)を予測可能にした技術が知られている(特許文献3)。
【0005】
樹脂流動方向とそれに垂直な方向に加えて、板厚方向の収縮率も実測し、それらを使った実験式より収縮率を予測する技術が知られている(特許文献4)。
【0006】
また、平板成形品などで事前に、分子配向の強さを表す複屈折度と収縮率の関係を測定し、その関係と樹脂流れシミュレーションを組み合わせ、収縮率の異方性を予測する技術が知られている(特許文献5)。
【0007】
また、任意の結晶化度におけるPVT特性を用いて、成形品内の結晶化度の違いを考慮した収縮率予測を行う技術が知られている(特許文献6)。
【0008】
また、PVT特性を板厚と金型温度の関数として表し、これを用いて体積収縮率の予測精度を向上させた技術が知られている(特許文献7)。
【0009】
また、PVT特性より計算された体積収縮率を基に、冷却速度依存性を考慮するための補正式を提案した技術が知られている(特許文献8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、熱可塑性樹脂の収縮率予測に直接適用できない。
【0012】
上記特許文献2に記載の技術では、繊維配向を考慮していないため、配向による収縮率の異方性を予測できない。
【0013】
上記特許文献3に記載の技術で扱う異方性は、樹脂の流れ方向を基準にしたものであり、繊維配向による異方性を表すことができない。
【0014】
上記特許文献4に記載の技術で扱う異方性は、上記特許文献3と同様に、樹脂の流れ方向を基準にしたものであり、繊維配向による異方性を表すことができない。
【0015】
また、分子配向と繊維配向は異なるため、上記特許文献5に記載の技術でも、繊維配向による異方性を表すことができない。
【0016】
また、冷却速度の違いにより、結晶化度も変化することから、上記特許文献6に記載の技術は、冷却速度依存を考慮した予測技術の一つである。また、板厚や金型温度により冷却速度も変化することから、上記特許文献7に記載の技術も、冷却速度依存を考慮した予測技術の一つである。
【0017】
以上より、従来技術では、冷却速度に依存した収縮率予測の提案はいくつか見られるが、繊維配向に基づく、収縮率の異方性予測の提案は見られない。収縮率の異方性予測については、流れ方向を基準にした異方性の予測、分子配向に起因した異方性予測が見られるだけである。なお、上記特許文献8では、配向解析を実施し、その結果に基づき各方向の収縮ひずみの分配、つまり異方性の考慮を行うとの記述も見られるが、具体的な方法は示されていない。充填材の配向度と収縮ひずみの関係は、単純な関係(例えば、配向度が2倍になれば、収縮ひずみが1/2になる、など)ではないことから、上記特許文献8のような簡単な記述だけからでは異方性の考慮は難しいと考える。
【0018】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたもので、成形品の成形中の冷却による収縮率を精度よく予測することができる収縮率予測装置、収縮率予測モデル学習装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る収縮率予測装置は、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られる予測対象の成形品モデルの、前記所定の成形条件に対応する樹脂成形解析から計算された成形履歴情報を取得する成形履歴取得部と、成形品の成形履歴情報から前記成形品の成形中の冷却による
複数の方向の各々の収縮率を予測するための予め学習された予測モデルに基づいて、前記成形履歴取得部によって取得された前記成形履歴情報に対する、前記成形品の前記
複数の方向の各々の収縮率を予測する収縮率予測部と、を含んで構成されている。
【0020】
第2の発明に係るプログラムは、コンピュータを、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られる予測対象の成形品モデルの、前記所定の成形条件に対応する樹脂成形解析から計算された成形履歴情報を取得する成形履歴取得部、及び成形品の成形履歴情報から前記成形品の成形中の冷却による
複数の方向の各々の収縮率を予測するための予め学習された予測モデルに基づいて、前記成形履歴取得部によって取得された前記成形履歴情報に対する、前記成形品の前記
複数の方向の各々の収縮率を予測する収縮率予測部として機能させるためのプログラムである。
【0021】
第1の発明及び第2の発明によれば、成形履歴取得部が、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られる予測対象の成形品モデルの、前記所定の成形条件に対応する樹脂成形解析から計算された成形履歴情報を取得する。そして、収縮率予測部が、成形品の成形履歴情報から前記成形品の成形中の冷却による
複数の方向の各々の収縮率を予測するための予め学習された予測モデルに基づいて、前記成形履歴取得部によって取得された前記成形履歴情報に対する、前記成形品の前記
複数の方向の各々の収縮率を予測する。
【0022】
このように、成形品の成形履歴情報から前記成形品の成形中の冷却による
複数の方向の各々の収縮率を予測するための予測モデルに基づいて、取得された前記成形履歴情報に対する、前記成形品の前記
複数の方向の各々の収縮率を予測することにより、成形品の成形中の冷却による収縮率を精度よく予測することができる。
【0023】
第3の発明に係る収縮率予測モデル学習装置は、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品の、前記所定の成形条件に対応する樹脂成形解析から計算された成形履歴情報を取得する成形履歴取得部と、前記実際の成形品について測定した、成形中の冷却による
複数の方向の各々の収縮率と、前記成形履歴取得部によって取得された成形履歴情報とに基づいて、成形品の成形履歴情報から前記成形品の
複数の方向の各々の収縮率を予測するための予測モデルを学習する学習部とを含んで構成されている。
【0024】
第4の発明に係るプログラムは、コンピュータを、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品の、前記所定の成形条件に対応する樹脂成形解析から計算された成形履歴情報を取得する成形履歴取得部、及び前記実際の成形品について測定した、成形中の冷却による
複数の方向の各々の収縮率と、前記成形履歴取得部によって取得された成形履歴情報とに基づいて、成形品の成形履歴情報から前記成形品の
複数の方向の各々の収縮率を予測するための予測モデルを学習する学習部として機能させるためのプログラムである。
【0025】
第3の発明及び第4の発明によれば、成形履歴取得部が、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品の、前記所定の成形条件に対応する樹脂成形解析から計算された成形履歴情報を取得する。そして、学習部が、前記実際の成形品について測定した、成形中の冷却による
複数の方向の各々の収縮率と、前記成形履歴取得部によって取得された成形履歴情報とに基づいて、成形品の成形履歴情報から前記成形品の
複数の方向の各々の収縮率を予測するための予測モデルを学習する。
【0026】
このように、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品について測定した、成形中の冷却による収縮率と、前記所定の成形条件に対応する成形品の樹脂成形解析から計算された成形履歴情報とに基づいて、成形品の成形履歴情報から前記成形品の
複数の方向の各々の収縮率を予測するための予測モデルを学習することにより、成形品の成形中の冷却による
複数の方向の各々の収縮率を精度よく予測することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の収縮率予測装置、収縮率予測モデル学習装置、及びプログラムによれば、成形品の成形中の冷却による
複数の方向の各々の収縮率を精度よく予測することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0030】
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態では、実測の収縮率を用いて予測式を作成していることから、高精度な収縮率の予測が可能となる。
【0031】
一方、収縮率の実測値を用いても、適切な成形履歴のパラメータを使わなければ、実測値へのフィッティング精度が低下し、高精度な収縮率予測は困難である。そこで、本発明の実施の形態では次の考え方に基づき、成形履歴パラメータの選択を行った。
【0032】
樹脂成形解析より得られる線収縮率は、成形中の温度履歴、圧力履歴を反映して、PVT特性に基づき計算されている。従って、収縮率の計算方法としては妥当なものである。しかし、PVT特性データが徐冷条件で測定されていることから、実成形での急冷状態の予測には精度低下が生じる。また、体積収縮率より等方性を仮定して線収縮率を計算するため、繊維強化樹脂などの異方性材料では各方向の比率が不明で、それぞれの方向の収縮率を求めることができない。しかし、上記の2点以外の大きな精度低下要因は見当たらないことから、解析より得られた線収縮率に対して、それらを補正することで実測の収縮率は表現可能であると考える。
【0033】
そこで、補正対象となる基準のパラメータとして、線収縮率を用いる。
【0034】
次に、急冷を考慮した補正は以下の方針で行った。すなわち、収縮率の絶対値の補正はその実測値を用いて行う。そこで、急冷を表すパラメータでは、成形品内の部位ごとの相対的な冷却速度の差異を表現できればよい。この目的のため、本発明の実施の形態では充填直後の温度変化をパラメータとして用いた。これ以外にも、部位ごとでの冷却速度の違いを表すことができるパラメータであれば構わない。ただし、樹脂温度が高い方が部位ごとでの差が生じやすいことから、充填直後の温度変化が好適である。
【0035】
また、異方性の補正を行うため、つまり等方性を仮定して得られた線収縮率を補正して、各方向の収縮率を求めるために、パラメータとして繊維配向テンソルを用いた。本テンソルは、繊維配向解析の結果として得られる、繊維の配向状態を表す量であるから、繊維配向に基づく異方性を表すためには最適である。本テンソルの適用に当たっては、固有値解析を行い、各主軸方向での固有値つまり配向度を求めた。そして、一般座標系では収縮時にひずみのせん断成分も生じ得るが、主軸座標系では各座標軸の方向が繊維配向の主軸方向であることから、収縮ひずみにせん断成分は生じないと仮定し、収縮ひずみの法線成分つまり主軸方向の収縮率がその主軸方向の配向度により表現できると考えた。
【0036】
上記より、各主軸方向の収縮率(これは実測の収縮率よりひずみの座標変換により導出できる)は、対応する主軸方向の配向度、充填直後の温度変化および等方性を仮定して得られた収縮率の3つのパラメータで表現できるとして、予測式を決定した。さらに、線収縮率を補正する役割を担う配向度および温度変化の寄与は線形であるとは考えにくい。そこで、予測式の中では配向度および温度変化を使った多項式により、それらの寄与を表し、収縮率の予測性能を向上させる。
【0037】
また、成形品の各部位において、樹脂成形解析により、主軸方向の配向度、充填直後の温度変化および等方性を仮定して得られた線収縮率を計算し、それらを用いて予測式により収縮率を計算することから、成形品内の収縮率の分布を高精度に予測することができる。
【0038】
<本発明の実施の形態の収縮率予測モデル学習装置の構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る収縮率予測モデル学習装置10は、CPU12、ROM14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス22を備えている。
【0039】
CPU12は、各種プログラムを実行する。ROM14には、各種プログラムやパラメータ等が記憶されている。RAM16は、CPU12による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。記録媒体としてのHDD18には、後述する収縮率予測モデル学習処理ルーチンを実行するためのプログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0040】
本実施の形態における収縮率予測モデル学習装置10を、収縮率予測モデル学習処理ルーチンを実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、
図2に示すようになる。収縮率予測モデル学習装置10は、入力部20、演算部30、及び出力部50を備えている。
【0041】
入力部20は、所定の成形条件の各々についての、当該所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品について測定した、成形中の冷却による収縮率と、形状データ、当該所定の成形条件および樹脂の材料特性を示す情報とを入力として受け付ける。
【0042】
入力される、実際の成形品の成形中の冷却による収縮率は、例えば、金型に施したけがき線の間隔の変化を測定したものである。
【0043】
ここで、ガラス繊維(20wt%)強化ポリプロピレンを対象に、収縮率を測定した結果の例を示す。
【0044】
例えば、
図3(A)に示すような、けがき線付き平板を標準の成形条件(樹脂温度:230℃、金型温度:70℃、充填時間:0.75sec、保持圧力:20MPa、保圧時間:7sec、冷却時間:20sec)にて射出成形する。さらに、冷却時間以外の条件を変化させた成形条件でも射出成形を行い、平板を成形する。
【0045】
けがき線で囲まれた各マス目(
図3(B))ごとにx,y方向のけがき線間距離および板厚を計測し、各方向の収縮率を求める。測定結果の一例として、
図3(A)中のA-A’におけるx方向収縮率の測定結果を
図4に示す。
【0046】
なお、入力される、実際の成形品の成形中の冷却による収縮率は、金型に施したシボ模様の変化を画像相関法で処理することにより測定したものであってもよい。
【0047】
演算部30は、成形解析部32、固有値解析部34、及び予測モデル学習部36を備えている。なお、成形解析部32が、成形履歴取得部の一例である。
【0048】
成形解析部32は、所定の成形条件に対応して、上記実際の成形品をモデル化した成形品モデルの有限要素の樹脂成形解析を行い、有限要素毎に、成形履歴情報を計算する。成形履歴情報は、成形中に樹脂材料が受ける履歴を表すものであり、樹脂の温度変化、成形終了時の繊維配向テンソル、及び線収縮率を含む。
【0049】
例えば、平板成形品を有限要素で分割した形状モデルを成形品モデルとして用いて、樹脂成形解析ソフト3DTIMON(東レエンジニアリング(R))により、各成形条件に対応した樹脂成形解析を行う。これにより、各成形条件ごとの平板内での繊維配向テンソルD、線収縮率ε
0、および充填直後の温度変化ΔTの分布を得る。
【0050】
固有値解析部34は、成形品モデルの有限要素毎に、当該有限要素について得られた成形終了時の繊維配向テンソルに対して固有値解析を行い、3つの主軸方向(固有ベクトル)と各軸方向の配向度(固有値)λ
i (i=1,2,3)を求める。
【0051】
予測モデル学習部36は、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品について測定した、成形中の冷却による収縮率と、所定の成形条件に対応する成形品モデルの樹脂成形解析から計算された成形履歴情報とに基づいて、成形品の成形履歴情報から成形品の収縮率を予測するための予測モデルを学習する。
【0052】
ここで、予測モデルとしての予測式の係数を学習する原理について説明する。
【0053】
上記の本発明の実施の形態の概要で述べたように、各主軸方向の収縮率ε
iは、λ
i、ΔTおよびε
0により多項式を使って、(1)式で表現できるとする。ここで、a
k(k=0〜25)は係数である。また、主軸座標系では収縮時にひずみのせん断成分が生じないと仮定すると、成形品全体で定義された全体座標系での収縮率ε
X(X=x,y,z)は、ひずみの座標変換により(2)式で表される。
【0055】
さらに、成形品中のマス目単位で測定される収縮率E
X(X=x,y,z)は、マス目を構成する各有限要素のε
Xを使って、(3)式のように体積平均で得られるとすると、樹脂成形解析より各要素単位で計算されるλ
i、ΔTおよびε
0とマス目単位で実測されるE
Xは(1)〜(3)式で関連付けられるので、重回帰分析により係数a
kが求められる。
【0057】
ここで、l
1は、主軸1と x軸との間の方向余弦を表し、l
2 は、主軸2とx軸との間の方向余弦を表し、l
3 は、主軸3と x軸との間の方向余弦を表し、m
1は、主軸1と y軸との間の方向余弦を表し、m
2 は、主軸2とy軸との間の方向余弦を表し、m
3 は、主軸3と y軸との間の方向余弦を表し、n
1は、主軸1と z軸との間の方向余弦を表し、n
2 は、主軸2とz軸との間の方向余弦を表し、n
3 は、主軸3と z軸との間の方向余弦を表す。また、V
kは有限要素kの体積を表す。
【0058】
上記で説明した原理に従って、予測モデル学習部36は、マス目単位毎に、当該マス目について実測された収縮率と、上記(3)式により当該マス目について計算される収縮率とが一致するように、重回帰分析により係数a
k(k=0〜25)を学習し、学習結果を出力部50により出力する。
【0059】
ここで、上記(3)式により当該マス目について計算される収縮率は、当該マス目に含まれる、各有限要素についての、上記の予測式と、当該有限要素について得られた樹脂の温度変化、及び線収縮率と、当該有限要素についての成形終了時の繊維配向テンソルの固有値解析より得られた3つの主軸方向(固有ベクトル)と各軸方向の配向度(固有値)λ
i (i=1,2,3)とに基づいて計算される。
【0060】
<本発明の実施の形態の収縮率予測装置の構成>
上記
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る収縮率予測装置60は、CPU12、ROM14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス22を備えている。
【0061】
CPU12は、各種プログラムを実行する。ROM14には、各種プログラムやパラメータ等が記憶されている。RAM16は、CPU12による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。記録媒体としてのHDD18には、後述する収縮率予測処理ルーチンを実行するためのプログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0062】
本実施の形態における収縮率予測装置60を、収縮率予測処理ルーチンを実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、
図5に示すようになる。収縮率予測装置60は、入力部70、演算部80、及び出力部90を備えている。
【0063】
入力部70は、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られる予測対象の成形品における形状データ、当該所定の成形条件および樹脂の材料特性を示す情報を入力として受け付ける。
【0064】
演算部80は、成形解析部82、固有値解析部84、及び収縮率予測部86を備えている。なお、成形解析部82が、成形履歴取得部の一例である。
【0065】
成形解析部82は、入力された形状データ、所定の成形条件および樹脂の材料特性を示す情報に基づいて、当該所定の成形条件に対応して、当該所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られる予測対象の成形品モデルの有限要素の樹脂成形解析を行い、有限要素毎に、成形履歴情報を計算する。成形履歴情報は、成形中に樹脂材料が受ける履歴を表すものであり、樹脂の温度変化、成形終了時の繊維配向テンソル、及び線収縮率を含む。成形履歴情報として、更に、樹脂の圧力変化、せん断速度変化、粘度変化などを含んでもよい。
【0066】
固有値解析部84は、予測対象の成形品モデルの有限要素毎に、当該有限要素について得られた成形終了時の繊維配向テンソルに対して固有値解析を行い、3つの主軸方向(固有ベクトル)と各軸方向の配向度(固有値)λ
i (i=1,2,3)を求める。
【0067】
収縮率予測部86は、予測対象の成形品モデルの有限要素毎に、収縮率予測モデル学習装置10により学習された予測モデルとしての予測式と、当該有限要素について得られた樹脂の温度変化、及び線収縮率と、当該有限要素についての成形終了時の繊維配向テンソルの固有値解析より得られた3つの主軸方向(固有ベクトル)と各軸方向の配向度(固有値)λ
i (i=1,2,3)とに基づいて、上記(1)式〜(2)式に従って、成形履歴情報に対する、当該有限要素の収縮率を予測することにより、予測対象の成形品の収縮率分布を予測する。
【0068】
具体的には、予測対象の成形品モデルの有限要素毎に、繊維配向テンソルの固有値解析により得られる主軸座標系にて、冷却による収縮時にせん断成分が生じないと仮定することにより、上記(1)式に従って、主軸座標系での収縮ひずみの各成分を求め、主軸座標系での収縮ひずみの各成分に基づいて、上記(2)式に従って、全体座標系での収縮ひずみの各成分を求め、全体座標系での収縮ひずみの各成分に基づいて、当該有限要素の収縮率を予測する。
【0069】
出力部90は、予測対象の成形品モデルの有限要素毎に予測された収縮率を、収縮率分布の予測結果として出力する。そして、予測対象の成形品モデルの収縮率分布から、例えば、成形品の反り変形が予測される。反り変形の予測時に、全体座標系での収縮ひずみのせん断成分(γ
yz,γ
zx,γ
xy)が必要な場合は、(4)式より、それらを求めることができる。なお、予測対象の成形品モデルの収縮率分布の予測結果は、反り変形以外の変形予測に用いられてもよい。
【数3】
(4)
【0070】
<収縮率予測モデル学習装置の動作>
次に、本発明の実施の形態に係る収縮率予測モデル学習装置10の動作について説明する。
【0071】
入力部20によって、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品について測定した、成形中の冷却による収縮率と、形状データ、当該所定の成形条件および樹脂の材料特性を示す情報とを入力として受け付けると、収縮率予測モデル学習装置10によって、
図6に示す収縮率予測モデル学習処理ルーチンが実行される。
【0072】
まず、ステップS100において、成形解析部32は、所定の成形条件に対応して、上記実際の成形品をモデル化した成形品モデルの有限要素の樹脂成形解析を行い、有限要素毎に、成形履歴情報を計算する。
【0073】
ステップS102において、固有値解析部34は、成形品モデルの有限要素毎に、当該有限要素について得られた成形終了時の繊維配向テンソルに対して固有値解析を行い、3つの主軸方向(固有ベクトル)と各軸方向の配向度(固有値)λ
i (i=1,2,3)を求める。
【0074】
ステップS104において、予測モデル学習部36は、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品について測定した、成形中の冷却による収縮率と、所定の成形条件に対応する成形品モデルの樹脂成形解析から計算された成形履歴情報と、固有値解析結果とに基づいて、成形品の成形履歴情報から成形品の収縮率を予測するための予測モデルを学習し、出力部50により出力し、収縮率予測モデル学習処理ルーチンを終了する。
【0075】
<収縮率予測装置の動作>
次に、本発明の実施の形態に係る収縮率予測装置60の動作について説明する。
【0076】
入力部70によって、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られる予測対象の成形品における形状データ、当該所定の成形条件および樹脂の材料特性を示す情報を入力として受け付けると、収縮率予測装置60によって、
図7に示す収縮率予測処理ルーチンが実行される。
【0077】
まず、ステップS110において、成形解析部82は、入力された形状データ、所定の成形条件および樹脂の材料特性を示す情報に基づいて、当該所定の成形条件に対応して、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られる予測対象の成形品モデルの有限要素の樹脂成形解析を行い、有限要素毎に、成形履歴情報を計算する。
【0078】
ステップS112において、固有値解析部84は、予測対象の成形品モデルの有限要素毎に、当該有限要素について得られた成形終了時の繊維配向テンソルに対して固有値解析を行い、3つの主軸方向(固有ベクトル)と各軸方向の配向度(固有値)λ
i (i=1,2,3)を求める。
【0079】
ステップS114において、収縮率予測部86は、予測対象の成形品モデルの有限要素毎に、収縮率予測モデル学習装置10により学習された予測モデルとしての予測式と、当該有限要素について得られた樹脂の温度変化、及び線収縮率と、当該有限要素についての成形終了時の繊維配向テンソルの固有値解析より得られた3つの主軸方向(固有ベクトル)と各軸方向の配向度(固有値)λ
i (i=1,2,3)とに基づいて、上記(1)式〜(2)式に従って、成形履歴情報に対する、当該有限要素の収縮率を予測することにより、予測対象の成形品の収縮率分布を予測して、出力部90により出力し、収縮率予測処理ルーチンを終了する。
【0080】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る収縮率予測装置によれば、成形品の成形履歴情報から成形品の成形中の冷却による収縮率を予測するための予測モデルに基づいて、取得された成形履歴情報に対する、成形品の前記収縮率を予測することにより、成形品の成形中の冷却による収縮率を精度よく予測することができる。
【0081】
ここで、収縮率予測モデル学習装置により求めたa
kを使って、上記(1)〜(3)式から計算したE
Xが、実測値をどの程度再現できるかを検討した。その結果を
図8に示す。両者の相関係数は0.92であり、(1)〜(3)式を用いて実測の収縮率をほぼ予測できることがわかる。
【0082】
また、本発明の実施の形態に係る収縮率予測モデル学習装置によれば、所定の成形条件での樹脂材料の射出成形により得られた実際の成形品について測定した、成形中の冷却による収縮率と、所定の成形条件に対応する成形品モデルの樹脂成形解析から計算された成形履歴情報とに基づいて、成形品の成形履歴情報から前記成形品の収縮率を予測するための予測モデルを学習することにより、成形品の成形中の冷却による収縮率を精度よく予測することができる。
【0083】
また、一般的な樹脂成形解析ソフトより計算される収縮率は線収縮率であるために、等方性で、しかも徐冷の場合しか正確な値を与えない。本発明の実施の形態では、実測の収縮率と樹脂成形解析から計算される繊維配向テンソルおよび充填後の温度変化により線収縮率を補正するために、異方性で、実成形時の急冷に対応した収縮率を予測することができる。
【0084】
また、樹脂成形品の反り変形は、成形品内の各部位の収縮が全体として生じた結果として発現する。本発明の実施の形態により、成形品の収縮率分布を高精度に予測できることから、その結果として成形品の反り変形解析の精度向上を図ることができる。
【0085】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0086】
例えば、上記の実施の形態において、実測された収縮率と計算された成形履歴情報から、線形の重回帰分析により、収縮率の予測式を学習する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ニューラルネットワーク法などを使った非線形の重回帰分析を用いて、収縮率の予測モデルを学習するようにしてもよい。
【0087】
また、収縮率予測モデル学習装置と収縮率予測装置とを別の装置として構成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、収縮率予測モデル学習装置と収縮率予測装置とを一つの装置として構成するようにしてもよい。
【0088】
また、平板以外の成形品に対して本発明を適用してもよい。また、本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供するようにしてもよい。