特許第6844591号(P6844591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6844591-ポリ乳酸共重合体及びその製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844591
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】ポリ乳酸共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/46 20060101AFI20210308BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C08G63/46
   C08G63/78
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-130660(P2018-130660)
(22)【出願日】2018年7月10日
(65)【公開番号】特開2020-7468(P2020-7468A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2020年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成志
(72)【発明者】
【氏名】片山 傳喜
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/129501(WO,A1)
【文献】 特開2010−116482(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/145539(WO,A1)
【文献】 特開2014−134090(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/083044(WO,A1)
【文献】 特開2008−247956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 − 63/91
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸と、加水分解により乳酸以外の酸を放出し得る酸放出性エステルポリマーとの共重合により得られるポリ乳酸共重合体において、
DSC測定による2回目昇温時の融解熱量ΔHが20J/g以下の範囲にあり、前記酸放出性エステルポリマーに由来する共重合単位の含有率が0.5〜35質量%且つ共重合体の重量平均分子量が15,000〜40,000の範囲にあるとともに、
前記酸放出性エステルポリマーがシュウ酸またはグリコール酸を放出するポリマーであるポリ乳酸共重合体。
【請求項2】
レーザー回折法散乱法により測定したメジアン粒径(D50)が20μm以下の粒状物となった際のメタノールを用いたフロータビリティ濃度が50質量%未満である請求項1に記載のポリ乳酸共重合体。
【請求項3】
前記酸放出性エステルポリマーがポリオキサレートである請求項1または2に記載のポリ乳酸共重合体。
【請求項4】
レーザー回折法散乱法により測定したメジアン粒径(D50)が20μm以下の粒状物の形態を有している請求項1〜3の何れかに記載のポリ乳酸共重合体。
【請求項5】
土壌改質剤として使用される請求項1〜4の何れかに記載のポリ乳酸共重合体。
【請求項6】
地下資源採掘用水分散液に使用される請求項1〜5の何れかに記載のポリ乳酸共重合体。
【請求項7】
重量平均分子量が50,000〜300,000のポリ乳酸と、加水分解によりシュウ酸またはグリコール酸を放出する酸放出性エステルポリマーと、塩基性無機化合物とを、200℃以上の温度で溶融混練することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のポリ乳酸共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸共重合体及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、ポリ乳酸の親水性が高められたポリ乳酸共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、環境に優しい生分解性樹脂として知られているが、近年では、この特性を活かして、シェールガス等の資源採掘分野では、粉体や繊維の形態で、フラクチュアリング流体などに添加しての使用が提案されている(特許文献1)。即ち、地中に残存した場合いも、速やかに分解するため、例えば、地表から浅い層に存在するシェールガス等の採掘に利用した場合にも、環境に悪影響を与えないためである。
【0003】
また、最近では、微生物を活用した土壌浄化法(バイオレメディエーションと呼ばれる)にポリ乳酸を利用することも提案されている(特許文献2)。ポリ乳酸が加水分解して生成する乳酸は、微生物の栄養源となるため、ポリ乳酸を散布して土壌に浸透させることにより、微生物の繁殖や活動を促進することができるというものである。
【0004】
ところで、上記のような用途では、適度な加水分解性と共に、何れも水に対して高い親和性が要求される。即ち、資源採掘分野で使用される用途では、採掘現場で多量の水にポリ乳酸を投入した時、速やかに水に分散することが要求される。また、土壌浄化法では、速やかに土壌中に浸透することが要求される。このような要求を満足するために、水に対して高い親和性(即ち、親水性)が要求されるわけである。
【0005】
しかしながら、従来公知のポリ乳酸は、加水分解性がそれほど高くなく、また、親水性も十分とは言えず、例えば、水に投入した時に沈降せずに、水面に浮いてしまうという問題を有している。
【0006】
ポリ乳酸の特性を改善するために、他のポリエステルと共重合するという手段は、従来から採用されている。
【0007】
例えば、特許文献3には、ポリ乳酸ブロックとポリオキサレートブロックから構成され、ポリ乳酸ブロックの数平均分子量がそれぞれ2000〜50000の範囲である乳酸−オキサレートブロック共重合体が開示されている。この共重合体は、高い結晶性を持たせることにより、ポリ乳酸に比して、高いタフネスを有している。
【0008】
また、本出願人が提案している特許文献4には、難加水分解性生分解性樹脂(A)と、易加水分解性ポリマーからなるエステル分解促進剤(B)及びエステル分解促進助剤(C)を含む生分解性樹脂組成物が開示されている。この特許文献4には、難加水分解性生分解性樹脂(A)としてポリ乳酸を使用することが記載されており、エステル分解促進剤(B)としてポリオキサレートなどの酸放出性ポリエステルを使用することが記載され、さらに、エステル分解促進助剤(C)として、炭酸カルシウムや炭酸ナトリウム等の塩基性無機化合物を使用することが記載されている。
この特許文献4の技術では、ポリ乳酸等の難加水分解性樹脂の加水分解性が向上している。
【0009】
特許文献3の乳酸−オキサレートブロック共重合体及び特許文献4の生分解性樹脂組成物は、何れもポリ乳酸と、他の成分とを溶融混練することにより得られるものであり、ポリ乳酸の機械的特性や加水分解性を向上させたものであるが、ポリ乳酸の親水性を高めるものではない。即ち、ポリ乳酸の親水性を改善するという試みは、ほとんど検討されていないというのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,833,950号
【特許文献2】特開2011−104551号
【特許文献3】特開2008−101032号
【特許文献4】特許第5633291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、ポリ乳酸に比して、加水分解性及び親水性が向上したポリ乳酸共重合体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等はポリ乳酸の加水分解性や親水性について、多くの実験を行った結果、ある程度分子量の低いポリ乳酸を使用し、このポリ乳酸と酸放出性ポリエステルとを溶融混練してのエステル交換による共重合させたときには、非晶性が高められ、親水性や加水分解性が向上したポリ乳酸共重合体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明によれば、ポリ乳酸と、加水分解により乳酸以外の酸を放出し得る酸放出性エステルポリマーとの共重合により得られるポリ乳酸共重合体において、
DSC測定による2回目昇温時の融解熱量ΔHが20J/g以下の範囲にあり、前記酸放出性エステルポリマーに由来する共重合単位の含有率が0.5〜35質量%且つ共重合体の重量平均分子量が15,000〜40,000の範囲にあるとともに、
前記酸放出性エステルポリマーがシュウ酸またはグリコール酸を放出するポリマーであるポリ乳酸共重合体が提供される。
【0014】
本発明のポリ乳酸共重合体においては、次の態様が好適である。
(1)前記酸放出性エステルポリマーに由来する共重合単位の含有率が0.5〜35質量%且つ重量平均分子量が15,000〜40,000の範囲にあること。
(2)レーザー回折法散乱法により測定したメジアン粒径(D50)が20μm以下の微粉体となった際に、メタノールを用いたフロータビリティ濃度が50質量%未満であること。
(3)前記酸放出性エステルポリマーがポリオキサレートであること。
(4)メジアン粒径(D50)が20μm以下の粒状物の形態を有していること。
(5)土壌改質剤として使用されること。
(6)地下資源採掘用水分散液に使用されること。
【0015】
本発明によれば、また、重量平均分子量が50,000〜300,000のポリ乳酸と、加水分解によりシュウ酸またはグリコール酸を放出する酸放出性エステルポリマーと、塩基性無機化合物とを、200℃以上の温度で溶融混練することを特徴とする上記ポリ乳酸共重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリ乳酸共重合体は、ポリ乳酸に酸放出性エステルセグメントが共重合されたものであり、DSC測定による2回目昇温時の融解熱量ΔHが20J/g以下の範囲にあり、高い非晶性を有している。即ち、このポリ乳酸共重合体は、比較的低分子量のポリ乳酸を酸放出性エステルポリマーと溶融混練してのエステル交換により製造されるものであり、溶融混練によりポリ乳酸が低分子量化されながらエステル交換による共重合が行われる、この結果として、高い非晶性が確保されているわけである。なお、1回目昇温時の融解熱量ΔHでは、熱履歴の有無或いは程度により、融解熱量にバラツキを生じるため、本発明では、2回目昇温時の融解熱量ΔHにより非晶性を特定している。
【0017】
また、このようなポリ乳酸共重合体は、酸放出性エステルポリマーに由来する共重合単位の含有率が0.5〜35質量%であると共に、共重合に供するポリ乳酸の低分子量化に伴い、その重量平均分子量が15,000〜40,000と低い範囲にある。即ち、本発明のポリ乳酸共重合体は、高次の規則構造を有しておらず、このため、結晶の分解が速く、しかも従来公知のポリ乳酸或いはポリ乳酸共重合体に比して、極めて高い親水性を示す。
【0018】
また、本発明のポリ乳酸共重合体は、後述する実施例に示されているように、単位日数当りの徐放TOC量(有機物徐放量)から計算される材料のTOC放出寿命が短く、X線回折により結晶化度を測定すると、経時と共にその結晶化度は低下していく。
さらに、このポリ乳酸共重合体は、微粉体となった際にも静水中に速やかに沈降するという性質を示す。従来公知のポリ乳酸の微粉体は、静水中に投入した時に浮遊してしまう。
【0019】
このように、本発明のポリ乳酸共重合体は、高い親水性(水分散性)と分解性を有しているため、土壌改質剤や地下資源採掘用水分散液の用途に極めて適している。
【0020】
さらに、本発明のポリ乳酸共重合体は、非晶性が高いにも関わらず、機械的粉砕性に優れ、例えばメジアン粒径(D50)が20μm以下の粒状物の形態として使用することができる。即ち、このような粒状形態としての使用は、土壌への浸透や加水分解速度の制御において極めて有利であり、特に土壌改質剤として使用する時の散布や、水に投入しての地下資源採掘用水分散液の調製作業等において、大きな利点となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1および比較例3で得られたポリ乳酸共重合体のDSCによる2回目昇温曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<ポリ乳酸共重合体の製造>
本発明のポリ乳酸共重合体は、ポリ乳酸と酸放出性エステルのポリマーとを、塩基性無機化合物との存在下で溶融混練することにより製造される。即ち、このような溶融混練により、ポリ乳酸の低分子量化と酸放出性エステルポリマーとのエステル交換による共重合が生じ、目的とするポリ乳酸共重合体を得ることができる。
【0023】
ポリ乳酸;
用いるポリ乳酸は、100%ポリ−L−乳酸或いは100%ポリ−D−乳酸の何れであってもよいし、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の溶融ブレンド物でもよく、また、L−乳酸とD−乳酸とのランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。このようなポリ乳酸は、凍結粉砕し粉体化した試料で、10mg/10ml濃度の水分散液を作製し、45℃で一週間インキュベート後、残液のTOC(総有機炭素量)が5ppm以下であり、加水分解性はさほど高くない。また、その重量平均分子量が50,000〜300,000、特に150,000〜250,000の範囲にあることが望ましい。この重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、ポリスチレンを標準物質として算出される。
【0024】
また、かかるポリ乳酸は、後述する酸放出性エステルポリマーとのエステル交換性が損なわれない限りにおいて、各種の脂肪族多価アルコール、脂肪族多塩基酸、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが少量共重合されていてもよい。
このような多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ポリエチレングリコールなどを例示することができる。
多塩基酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸を例示することができ、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、マンデル酸を挙げることができる。
ラクトンとしては、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトン、グリコリド、マンデライドなどを挙げることができる。
【0025】
酸放出性エステルポリマー;
上記のポリ乳酸に共重合すべき成分として用いる酸放出性エステルポリマーは、加水分解により乳酸以外の酸を放出するポリエステルであり、このような酸の放出により加水分解が促進される。即ち、酸放出性エステルポリマーをポリ乳酸の共重合成分として使用することにより、溶融混練時のポリ乳酸の低分子量化を促進させ、さらには、エステル交換により得られるポリ乳酸共重合体に、有機物徐放性(乳酸放出性)を与えることができる。
【0026】
このようなエステルポリマーから放出される酸は、シュウ酸、グリコール酸であり、特に溶融混練時でのポリ乳酸の低分子量化を促進させ且つポリ乳酸共重合体に高い有機物徐放性を与え、さらには環境に悪影響を与えないという点で、シュウ酸が最も好適である。
【0027】
従って、本発明では、上記の酸放出性エステルポリマーとしては、シュウ酸を酸単位として有するポリオキサレートが最も好適に使用される。
このポリオキサレートは、シュウ酸を酸単位として有している限り、特に制限されず、例えば、アルコール単位として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ビスフェノールA、ポリエチレングリコールなどの多価アルコールを有するホモポリマーもしくは共重合体を使用できるが、特に環境に対する影響を考えると、ビスフェノールAなどの芳香族アルコールを含んでいないホモポリマーもしくは共重合体が好ましく、特に、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールをアルコール単位として含むものが最も好適である。
【0028】
また、上記の酸放出性エステルポリマーは、ポリ乳酸の分解による低分子量化を効果的に促進し得ると同時に、非晶質性が高く且つ親水性も高い低分子量のポリ乳酸共重合体を得ることができるという観点から、その還元粘度が0.4乃至1.0dL/g程度のものが好適に使用され、その使用量は、前述したポリ乳酸100質量部当り、1〜50質量部、特に2〜20質量部となる量で、酸放出性エステルポリマーを使用することが好ましい。
なお、酸放出性エステルポリマーの還元粘度は、クロロホルムや1,1,1,2,2,2,−ヘキサフルオロ 2−プロパノールなどといった該酸放出性エステルポリマーを溶解する溶媒を用いて、溶液粘度測定によって測定される。
【0029】
塩基性無機化合物;
本発明では、前記酸放出性エステルポリマーと共に、塩基性無機化合物が使用され、この塩基無機化合物の存在下で、ポリ乳酸と塩基性無機化合物との溶融混練が行われる。
この塩基性無機化合物は、ポリ乳酸と酸放出性エステルポリマーの分解を促進するための成分であり、これにより、溶融混練に際して、各ポリマー成分の低分子量化が生じる。
【0030】
このような塩基性無機化合物としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む塩基性化合物や、アルカリ金属やアルカリ土類金属のイオンを放出するゼオライトやイオン放出性フィラーが代表的である。
アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む塩基性化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0031】
また、上記のゼオライトとしては、交換性イオンとしてアルカリ金属やアルカリ土類金属イオンを含む天然或いは合成の各種ゼオライトを使用することができ、イオン放出性のフィラーとしては、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含むアルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、ソータ石灰ガラス等の酸化物ガラスや、フッ化ジルコニウムガラス等のフッ化物ガラスを挙げることができる。
【0032】
これらの塩基性無機化合物は、単独で使用しても、2種以上を併用することもできる。
【0033】
本発明においては、環境に対する影響が少なく、また、生成するポリ乳酸共重合体の特性に悪影響を与えず、しかも、溶融混練時に分解等を生じないという観点から、上記で例示した中でも、カルシウムおよび/またはナトリウムを含有する塩基性化合物、カルシウムイオンおよび/またはナトリウムイオンを放出し得るゼオライト、カルシウムイオンおよび/またはナトリウムイオン放出性フィラーが好ましく、特に、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムが最適である。
【0034】
また、上記の塩基性無化合物は、溶融混練時に均一に分散させるという観点から、その平均粒度(レーザ回折散乱法による体積換算での平均粒径D50)が10μm以下、特に、0.01μm乃至5μmの範囲にあるものが好ましい。
【0035】
本発明において、このような塩基性無機化合物は、ポリ乳酸100重量部当り、3乃至20重量部、特に5乃至15重量部の量で使用することが好ましい。この無機化合物の量が多すぎると、溶融混練時のポリ乳酸の低分子量化が過度に促進されてしまい、得られるポリ乳酸共重合体の機械的粉砕性等が損なわれてしまい、粒状化等が困難となるおそれがある。また、この無機化合物の量が少なすぎると、ポリ乳酸の低分子量化が不十分となり、これに伴い、得られるポリ乳酸共重合体の非晶質化が不十分となり、目的とする高い親水性等を確保することが困難となるおそれが生じる。
【0036】
溶融混練;
本発明においては、ポリ乳酸と酸放出性エステルポリマーとを、上記の塩基性無機化合物の存在下で溶融混練し、これにより、塩基性無機化合物の存在によるポリ乳酸や酸放出性エステルポリマーの分解が生じ、生じた酸によってさらにポリ乳酸の分解が生じ、さらに、酸が放出されたエステルポリマーと残基とポリ乳酸との反応(エステル交換)が生じ、これにより、目的とするポリ乳酸共重合体が得られる。
【0037】
上記の溶融混練は、例えば押出機等の混練部で容易に行うことができ、特に、ポリ乳酸や酸放出性エステルポリマーの熱分解が生じない程度の温度、例えば200℃以上、特に220〜250℃の温度で行われ、上記の全ての反応が完了するように、少なくとも2分間以上、特に3〜10分間程度、溶融混練が行われる。これにより、ポリ乳酸および酸放出性ポリエステルの低分子量化および共重合反応を有効に行うことができる。
【0038】
<ポリ乳酸共重合体>
かくして得られるポリ乳酸共重合体は、低分子量化されたポリ乳酸によるポリ乳酸ブロックと、酸放出性エステルポリマーとのエステル交換に由来する共重合ブロックとを有している。例えば、ポリ乳酸ブロックは、下記式(1)で表され、酸放出エステルポリマーによる共重合ブロックは、ポリオキサレートを使用した場合を例に取って、下記式(2)で表される。
−CH(CH)−COO− (1)
−CO−CO−O−R−O− (2)
【0039】
本発明において、このポリ乳酸共重合体は、DSCの2回目昇温時曲線より測定される融解熱量ΔHが、20J/g以下、特に10J/g以下の範囲にある。
一般に、DSCの1回目昇温時曲線では、融解熱量ΔHは、下記式で表される。
ΔHm=ΔHm’−ΔHc
式中、ΔHm’は、昇温中の結晶化を含む融解熱量(J/g)であり、
ΔHcは、結晶化による発熱量(J/g)である。
結晶化度に注目する場合は△Hmの数値で議論すべきであるが、本発明では結晶の形成しやすさに注目するため、2回目昇温時の中でも特に△H’mの数値で議論する。この値が小さい程低結晶性であり、長期の水中分解でも結晶を形成しにくいことを意味している。従って、本発明のポリ乳酸共重合体は、長期の水中分解でも結晶化度が上がりにくいことが理解される。
【0040】
また、本発明のポリ乳酸共重合体は、公知のポリ乳酸を低分子量化してのエステル交換による共重合によって得られたものであるため、この重量平均分子量は、15,000〜40,000の範囲にあり、且つ酸放出性エステルポリマーに由来する共重合単位、例えば前記式(2)で示される共重合単位の含有率が0.5〜35質量%の範囲にある。
なお、上記のポリ乳酸共重合体の重量平均分子量は、GPCを用いて、ポリスチレンを標準物質として測定され、また、共重合体の生成は、H NMRにより確認することができる。
【0041】
このような本発明のポリ乳酸共重合体は、高次の規則構造を有しておらず、このため、結晶の分解が速い。高次の規則構造を有している場合と異なり結晶のいかなる部分からも分解を受けやすく、乳酸を放出し易く、後述する実施例に示されているように、単位日数当りの徐放TOC量(有機物徐放量)から予想されるTOC放出寿命が短い。また、このような分解に伴い、X線による結晶化度も経時と共に低下していくことが確認されている。
【0042】
また、上記のような低分子量化により、このポリ乳酸共重合体は、機械的粉砕性に優れ、例えば機械的粉砕により、メジアン粒径(D50)が20μm以下、特に10μm以下の粒状物に成形することができる。
【0043】
さらに、親水性の著しい向上により、このポリ乳酸共重合体の粒状物を静水中に投入した時、このポリ乳酸共重合体は、速やかに沈降する。しかも、ポリ乳酸共重合体が投入された水を撹拌し、ポリ乳酸共重合体の粒状物を分散させ、その後、1時間静置したとき、粒子の沈降或いは浮遊を生じることなく、この分散状態が安定に保持される。例えば、従来公知のポリ乳酸では、静水中への投入により沈降せず、また、撹拌後1時間静置した時には、粒子は沈降分離してしまう。
【0044】
このように、本発明のポリ乳酸共重合体は、機械的粉砕性に優れているため、機械的粉砕として粒状物とすることにより、その取り扱いや輸送性(梱包性)に優れている。
さらに、その優れた水分散性により、土壌改質剤や地下資源採掘用水分散液として、極めて有用である。例えば、このポリ乳酸共重合体を地表に散布した時、速やかに浸透し且つ微生物の栄養源となる有機成分(乳酸)を安定して放出できる。また、このポリ乳酸共重合体を水に投入した場合、速やかに分散させることができ、しかも一定時間経過後は速やかに加水分解していくため、この分散液を、地下資源採掘用水分散液、例えばフラクチュアリング流体として、有効に使用することができる。
【0045】
また、このような本発明のポリ乳酸共重合体は、使用量以下の量で塩基性無化合物を含んだ形態で得られるが、このような塩基性無機化合物は、上述したポリ乳酸共重合体の水分散性、有機物徐放性、機械的粉砕性等に悪影響を与えるものではないため、これを分離せず、そのままの形で上記用途に使用することができる。水での洗浄などによって分離することもできる。
【0046】
さらに、本発明のポリ乳酸共重合体は、熱成形により、種々の形態に成形することができるため、例えば、用途に応じて、各種のポリマーとブレンドして、所定の形成に成形して使用することもできる。また、用途に応じた各種の添加剤、例えば、公知の可塑剤、カルボキシル基封止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、顔料、フィラー、充填剤、離型剤、帯電防止剤、香料、滑剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、層状硅酸塩、酵素などを配合して使用に供することもできる。
【実施例】
【0047】
本発明を次の実験例で説明する。
【0048】
<材料の合成方法>
<PEOxの合成>
熱媒によって加熱可能な150L容の反応釜にシュウ酸ジメチル40kg(339モル)、エチレングリコール23.2kg(374モル)、1,4−ブタンジオールを2.9kg(32.2モル)、ジブチルスズオキシド8.4gを入れ、窒素気流下で反応釜内の液温を110℃に加温し、常圧重合を行った。メタノールの留去が始まった後、そのまま1時間30分保温し反応させた。1時間30分後から10℃/時間の昇温速度で130℃まで昇温し、さらに20℃/時間で190℃まで昇温させた。回収した液量は21.2kgであった。
その後、フラスコ内の液温を190℃、0.1kPa〜0.8kPaの減圧度で減圧重合し、得られたポリマーを取り出した。90℃で2時間、120℃で2時間加熱処理した。
【0049】
<PBOxの合成>
上記と同様の反応釜にシュウ酸ジメチル40kg(339モル)、1,4−ブタンジオールを30.5kg(339モル)、ジブチルスズオキシド5.7gを入れ、窒素気流下で反応釜内の液温を100℃に加温し、常圧重合を行った。メタノールの留去が始まった後、そのまま1時間保温し反応させた。1時間後から10℃/時間の昇温速度で110℃まで昇温し、さらに20℃/時間で180℃まで昇温させた。回収した液量は21.9kgであった。
その後、フラスコ内の液温を200℃、0.1kPa〜0.8kPaの減圧度で減圧重合させ得られたポリマーを取り出した。90℃で2時間、120℃で2時間加熱処理した。
【0050】
<各種評価方法>
<PEOxおよびPBOxの還元粘度の測定>
装置:キャノンフェンスケ型粘度計
溶媒:1,1,1,2,2,2、−ヘキサフルオロ 2−プロパノール(PEOx)
クロロホルム(PBOx)
温度:25℃
試料調製:試料40mgに溶媒10mLを加え、室温で緩やかに攪拌した。目視で溶解していることを確認した後、0.45μmフィルターにて濾過して測定試料とした。
【0051】
<PLAおよびPLA共重合体の分子量測定>
以下に示す条件下で測定し、PLA及びPLA共重合体の分子量を測定した。
装置:東ソー製 高速GPC装置 HLC−8320
検出器:示差屈折率検出器RI
カラム:SuperMultipore HZ−M(2本)
溶媒:クロロホルム
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
試料調製:試料約10mgに溶媒3mLを加え、室温で放置した。目視で溶解していることを確認した後、0.45μmフィルターにて濾過した。スタンダードはポリスチレンを用いた。
【0052】
HNMRによるPLA中の共重合率の定量方法>
PLA中の酸放出性エステル共重合率は、溶媒による再沈殿によりコンパウンドポリマーを除いた後、モノマーに分解した水溶液をH NMRで定量することで算出した。以下にサンプルの調整方法とNMR測定条件を記す。
試料1gをクロロホルム15mL中に落とし溶解させた。目視で溶解状態に変化が見られなくなった後、0.45μmのフィルターで濾過した。ろ液を300mLのメタノールに落とすと、ひも状の沈殿物または液の白濁が見られた。ひも状の沈殿物の場合は吸引濾過によって、白濁物の場合は遠心分離によってそれぞれ回収した。回収物を水で洗浄した後40℃で真空乾燥し、20mL容の耐圧バイアル瓶中で水1gと共に120℃で熱処理した。熱処理は固形分が完全に分解し見えなくなるまで行った。分解した水溶液を試料としてNMR測定を行った。
装置:日本電子製 JNM−ECA
溶媒:重水
積算回数:16回
測定温度:室温
試料調製:試料約0.1mLをNMR試料管に滴下し、次に重水を0.5mL滴下しサンプルとした。
定量方法:乳酸の主鎖CH基の水素に由来するピーク面積を1.00とした時のエチレングリコールまたはブタンジオールのメチレン基水素由来ピーク面積をAEG、ABDOとし、以下の式(1),(2)により定量した。ブタンジオールのメチレン基水素由来ピークは2箇所に等面積で観測されるため、2箇所の総面積をABDOとした。
(PEOx共重合率)=(29×AEG)/(72+29×AEG)・・・ (1)
(PBOx共重合率)=(18×ABDO)/(72+18×ABDO)・・ (2)
【0053】
H NMRと溶解残渣量によるPLA中の共重合率の定量方法>
後述の実施例5のみ、本項の方法で酸放出性エステル共重合率を測定した。
(非共重合PEOx成分):
試料0.05gをクロロホルム/1,1,1,2,2,2、−ヘキサフルオロ 2−プロパノール = 9/1溶液1.5mLに溶解し、4時間静置した。その後濾過により不溶成分を回収し、40℃減圧下で乾燥した。得られた固形分を非共重合PEOx成分とし、質量を測定した。
(共重合および非共重合PEOx成分):
試料0.1gを20mL容の耐圧バイアル瓶中で水1gと共に120℃で熱処理した。
熱処理は固形分が完全に分解し見えなくなるまで行った。分解した水溶液を試料としてH NMR測定を行った。
装置:日本電子製 JNM−ECA
溶媒:重水
積算回数:16回
測定温度:室温
試料調製:試料約0.1mLをNMR試料管に滴下し、次に重水を0.5mL滴下しサンプルとした。
定量方法:前記式(1)により共重合および非共重合PEOx成分を定量した。
(共重合PEOx成分の算出):
上記で得られた共重合および非共重合PEOx成分率から非共重合PEOx成分率を減算することにより、共重合PEOx率を算出した。
【0054】
<50℃、30日後の結晶化度の測定>
長期間水浸漬後の結晶化度の変化は、加速試験として50℃30日間水浸漬後の結晶化度を用い評価した。
カッターミルにより粗大な粉体とした試料1gと純水約2gを、20mL容のバイアル瓶で混合し、50℃に設定したオーブンに静置した。30日後に混合物を取り出し、純水で洗浄しながら遠心分離により粉体試料を取り出した。遠心分離後の試料は40℃、減圧下で4時間乾燥した。乾燥した試料をDSCにより評価した。
装置:セイコーインスツルメント株式会社製 EXTAR6000
評価:0℃から10℃/分の昇温速度で昇温したときの1回目の昇温曲線で観測される吸熱ピークのピーク面積から算出される融解熱量(△H)を、ポリ乳酸結晶の融解熱量値94J/gで除し、100倍した値を結晶化度(%)とした。
【0055】
<2回目昇温時の融解熱量△Hの測定>
装置:セイコーインスツルメント株式会社製 EXTAR6000
評価:0℃から10℃/分の昇温速度で昇温したときの1回目の昇温曲線で吸熱ピークを観測したのち、170℃〜180℃で1分間保持した後、10℃/分の降温速度で0℃まで冷却する。その後、再度上記と同様の昇温速度で昇温した時の2回目昇温曲線で観測される吸熱ピークのピーク面積を2回目昇温時の融解熱量(△H)とした。
【0056】
<単位日数あたりの徐放TOC量の測定>
試料150mgを純水30mLに浸し、25℃で静置した。サンプルは1週間ごとに純水を新しいものに取り替えた。4週間目の純水をTOC測定し、これを元に以下の式(3)で単位日数あたりの徐放TOCを算出した。
C=B×(1/5)×(1/7)・・・(3)
ただし、Cは1日あたり、試料1g当りの有機炭素放出量(mg)、Bは調整した試料が示したTOC値(ppm)である。
また、4週間目以降もこの一定値で有機炭素が徐放されると仮定し、さらに放出された有機炭素が全て乳酸モノマーであると仮定することで、各試料が徐放によって消滅する日、すなわち材料のTOC放出寿命X(日)を以下の式(4)で評価した。
X=1000/(C×6)・・・(4)
TOCは以下に示す条件で測定した。
装置:株式会社島津製作所製TOC―L
キャリアガス:高純度空気
キャリアガス流量:150mL/min
測定項目:TC(全炭素)/IC(無機炭素)/TOC(=TC−IC)
キャリブレーション物質:フタル酸水素ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム
燃焼温度:680℃
測定試料調製:浸漬液約20mLを直接試料バイアルにとり測定した。
【0057】
<X線回折測定による結晶化度の評価>
装置:リガク社製 X線回折装置 SmartLab9kW
電圧・電流:45kV・200mA
X線波長:CuKα
光学系:平行ビーム法 カウンターモノクロ法
結晶化度算出方法:結晶性ピークの面積と非晶性ピークの面積を用いて以下の式(5)で算出した。
Xc=100×Ac/(Ac+Aa)・・・(5)
ただし、Xcは結晶化度(%)、Acは結晶性ピークの面積、Aaは非晶性ピークの面積である。
【0058】
<メタノールを用いたフロータビリティ濃度の測定>
微粉体試料の水への分散性を評価するために、フロータビリティ濃度の測定を行った。
ジェットミルにて微粉砕し、レーザー回折散乱法により測定した平均粒径(D50)が20μm以下となった試料0.5gを、100mL容ガラス瓶中のメタノール水溶液に落とし、マグネティックスターラーで280rpm、3分間攪拌した。その後3分間静置し、水面に粉体の浮遊物が残っているか確認した。粉体の浮遊物が見られている場合は沈殿していないと判定し、メタノールを5g追加し同様の実験を行った。水50g、メタノール30gから測定を開始し、粉体の浮遊物が見られなくなった際のメタノール濃度をフロータビリティ濃度と定義し、水分散性を比較検討した。
【0059】
<使用材料>
PLA(ポリ乳酸樹脂)は海正生物材料製REVODE101を用いた。原料として用いる際の分子量は、120000<Mw<170000の範囲であった。
酸放出性エステル樹脂の一種であるPEOxおよびPBOxは、上記項で重合されたものを用いた。それぞれの還元粘度は、PEOxで0.84dL/g、PBOxで0.49dL/gであった。
炭酸ナトリウムは和光純薬工業製炭酸ナトリウム(純度99.8+%)を、50%乳酸は武蔵野化学研究所製ムサシノ乳酸50F(50質量%)を、重水はシグマ・アルドリッチ製重水(“100%”99.96atom%D)を、メタノールは和光純薬工業製メタノール(99.7+%高速液体クロマトグラフ用)、クロロホルムは和光純薬工業製クロロホルム(99.7+%高速液態クロマトグラフ用)を用いた。
【0060】
<ポリ乳酸共重合体の合成>
(実施例1〜4)
PLA、酸放出性エステル、炭酸ナトリウムを、それぞれ定量フィーダーによって連続式の二軸押出機に定量供給し溶融混練した。各実施例での条件は以下の表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
(実施例5)
PLA100g、PEOx100g、炭酸ナトリウム20gをそれぞれ秤量し、バッチ式の二軸押出機で溶融混練した。樹脂の温度が230℃に到達し、炭酸ナトリウムを投入した時刻を反応時間の開始点とし2分間混練した後、試料を取り出した。
【0063】
(比較例1)
PLAと炭酸ナトリウムを、実施例1〜4と同様にして定量フィーダーで連続式押出機に定量供給し溶融混練した。各条件は以下の表2に示した。
【0064】
【表2】
【0065】
(比較例2)
PLA180g、PEOx20g、炭酸ナトリウム20gをそれぞれ秤量し、実施例5と同様のバッチ式二軸押出機で溶融混練した。樹脂の温度が230℃に到達し、炭酸ナトリウムを投入した時刻を反応時間の開始点とし、5分間混練後に試料を取り出した。
【0066】
(比較例3)
PLAとPEOxをコイルフィーダーで連続式の二軸押出機に定量供給し溶融混練した。PLAとPEOxの供給速度はそれぞれ45kg/時間、5kg/時間、混練温度は230℃であった。さらに混練後の材料250kgを2000L容の反応釜に投入し、50%乳酸500kgを加えた後、100℃で5時間加熱することで低分子量化した。その後溶媒をろ別し水で洗浄、70℃で減圧乾燥した。
【0067】
<ポリ乳酸共重合体の物性>
得られた試料の重量平均分子量Mw、酸放出性エステル共重合率、2回目昇温時融解熱量△H、50℃30日水中保管後の結晶化度、粉体沈殿時のメタノール濃度、およびTOC放出寿命を表3に示した。
実施例1〜4おいて、50℃30日水中保管後の結晶化度が30%以下と低い値を示した。またメタノール濃度45%以下の水溶液に粉体が沈殿し、良好な水分散性を示した。さらに実施例1〜3では、30日後のTOC放出量から計算されるTOC放出寿命が300〜900日の範囲となり、酸放出性エステルを共重合しない比較例1および比較例3と比べて高い加水分解性を示した。実施例5は実施例1〜4と比較して酸放出性エステル共重合率が非常に高く、水分散性に特に優れることが予想され、TOC放出寿命が短いことから高い加水分解性を有することがわかった。比較例2は高分子量ゆえに20μm以下に粉砕することができなかった。
【0068】
【表3】
【0069】
実施例1および比較例3で得られた試料のDSCによる2回目昇温曲線を図1に示した。比較例3では2回目昇温時でも結晶融解のピークが検出されているのに対し、実施例1では結晶融解のピークは観察されなかった。
【0070】
実施例1および比較例3で得られた試料を水中に浸し、25℃で180日間保管する前後の結晶化度を広角X線回折測定により定量した。結果を表4に示す。
比較例3では水浸漬開始時、すなわちサンプル作成時にすでに高い結晶化度を示したが、180日間の水浸漬でさらに結晶化度が上昇した。一方で実施例1では、サンプル作成時の結晶化度も比較例3と比較して低く、180日間の水浸漬で結晶化度が減少し20%を下回った。
【0071】
【表4】
図1