(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
[実施形態]
本発明は、例えば、以下の課題を解決することも意図している。
(1)立体画像の形成時の膨張高さは、環境温度(室温)に応じて変化する。従来の立体画像形成システムは、標準モードで立体画像を形成した後に、その立体画像の膨張高さをオペレータに目視確認させている。そして、従来の立体画像形成システムは、膨張高さが不十分な場合(例えば、膨張高さが高過ぎたり、又は、低過ぎたりする場合)に、オペレータに設定条件を変更させ、設定条件が変更された非標準モードで再度立体画像を形成していた。このような従来の立体画像形成システムは、設定条件の変更操作を避けるために、一定な室温環境下で立体画像の形成を行う必要があった。
そこで、本実施形態では、一定な室温環境下でなくても立体画像の形成を行うことができるように、室温に応じて熱膨張性シートの搬送速度を変更することによって、所望の膨張高さの立体画像を安定して形成する立体画像形成システム1を提供することも意図している。
【0013】
(2)また、立体画像の形成では、前回の立体画像が形成された際の余熱が残り、光加熱手段の周囲の温度が高い状態で次回の立体画像を形成すると、所望の膨張高さが得られなくなる可能性がある。
そこで、本実施形態では、前回の立体画像が形成された際の余熱が残らずに、光加熱手段の周囲の温度が十分に冷えた温度であることを検知した後に、次回の立体画像を形成することによって、所望の膨張高さの立体画像を安定して形成する立体画像形成システム1を提供することも意図している。
【0014】
<立体画像形成システムの構成>
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る立体画像形成システム1の構成につき説明する。
図1は、立体画像形成システム1の構成を示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る立体画像形成システム1は、タッチパネルディスプレイ2、コンピュータ3、光照射ユニット4を備えている。
【0016】
コンピュータ3は、不図示のCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)や記憶手段を備え、光照射ユニット4を制御する。
タッチパネルディスプレイ2は、液晶表示パネルにタッチパネルが張り合わされて構成され、コンピュータ3の操作に用いられる。
【0017】
光照射ユニット4は、熱膨張性シート7を搬送しながら、熱膨張性シート7に可視光及び近赤外光を照射するユニットである。熱膨張性シート7は、吸収した熱量に応じて膨張する膨張層を内部に有する媒体である。熱膨張性シート7の裏面には、カーボンブラックによる濃淡画像(電磁波熱変換層)が形成されている。可視光及び近赤外光が熱膨張性シート7の濃淡画像が形成された部分に照射されると、その部分で近赤外光が熱に変換されて、熱が発生する。これに応じて、その部分の膨張層が膨張して盛り上がり、その結果、立体画像が形成される。
【0018】
光照射ユニット4は、光照射制御回路41、冷却ファン42、温度センサ43、ランプヒータ44、反射板441、バーコードリーダ45、鏡451、モータ48、挿入ローラ51,52、排出ローラ53,54、室温センサ49の各部を備える。
【0019】
光照射制御回路41は、冷却ファン42、ランプヒータ44、挿入ローラ51,52、排出ローラ53,54の動作を制御する制御手段である。光照射制御回路41は、例えば不図示のCPUとメモリとを備え、コンピュータ3の指示に基づき、光照射ユニット4を統括制御する。光照射制御回路41は、バーコードリーダ45と入口センサ46と出口センサ47とからの入力信号に基づき、冷却ファン42を制御する。また、光照射制御回路41は、温度センサ43からの入力信号に基づき、ランプヒータ44の点灯及び消灯を制御する。また、光照射制御回路41は、バーコードリーダ45と入口センサ46と出口センサ47とからの入力信号に基づき、挿入ローラ51,52及び排出ローラ53,54を駆動するモータ48の回転を制御する。なお、光照射制御回路41は、任意のタイミングに応じて熱膨張性シート7の搬送速度を変更する機能を有している。
【0020】
冷却ファン42は、反射板441を空気冷却する冷却手段である。温度センサ43は、後記する光加熱手段の周囲の温度として、反射板441の温度TH1を計測する計測手段である。ランプヒータ44は、可視光及び近赤外光を発生する部材である。本実施形態では、ランプヒータ44がハロゲンランプによって構成されているものとして説明する。反射板441は、ランプヒータ44で発生した可視光及び近赤外光を反射する部材である。反射板441は、ランプヒータ44の背面を覆う形状になっており、ランプヒータ44の背面側に配置されている。反射板441の正面は、鏡面状になっており、光を反射する反射面として機能する。反射板441の背面には、温度センサ43が取り付けられている。ランプヒータ44と反射板441とは、可視光及び近赤外光を熱膨張性シート7に照射して、熱膨張性シート7の濃淡画像(電磁波熱変換層)が形成されている部分を近赤外光で加熱する光加熱手段として機能する。本実施形態では、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)が搬送路6の上方に配置されているものとして説明する。ただし、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)は、搬送路6の下方に配置することもできる。
【0021】
バーコードリーダ45は、熱膨張性シート7の裏面の端部に印刷されたバーコードを読み取る装置である。鏡451は、熱膨張性シート7の裏面が上方向を向くように給紙部50内にセットされているときに、熱膨張性シート7のバーコードを反射して、バーコードリーダ45から読み取れるようにする。立体画像形成システム1は、バーコードリーダ45がバーコードを読み取ることにより、熱膨張性シート7の表面と裏面の向きを判別することができる。
【0022】
モータ48は、挿入ローラ51,52、排出ローラ53,54の駆動源である。挿入ローラ51,52は、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)よりも上流側に配置された搬送手段である。排出ローラ53,54は、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)よりも下流側に配置された搬送手段である。室温センサ49は、立体画像形成システム1が設置されている部屋の温度(室温)TH2を計測する計測手段である。
【0023】
光照射ユニット4の内部には、一点鎖線で示す搬送路6が形成されている。搬送路6は、熱膨張性シート7が挿入される挿入部5から熱膨張性シート7が排出される排出部(不図示)に亘って形成されている。挿入部5の内側には、給紙部50が配置されている。光照射ユニット4は、搬送路6に沿って、給紙部50、入口センサ46、挿入ローラ51,52、下ガイド55、上ガイド56、排出ローラ53,54、出口センサ47を備える。
【0024】
給紙部50は、熱膨張性シート7を光加熱手段に供給する部位である。光照射ユニット4は、熱膨張性シート7が挿入部5から内部に挿入されて給紙部50にセットされ、タッチパネルディスプレイ2から光照射が指示されると、熱膨張性シート7の搬送と光照射とを開始する。この搬送は、給紙部50が備える不図示の搬送機構によって開始される。
【0025】
入口センサ46は、熱膨張性シート7を検出する検出センサである。入口センサ46は、熱膨張性シート7の前端が挿入ローラ51,52の直前の位置に到達したことや、熱膨張性シート7の後端が挿入ローラ51,52の直前の位置を通過したことを検知する。
【0026】
挿入ローラ51,52は、それぞれ搬送路6の左右に分かれて設けられ、熱膨張性シート7の端部を上下から挟み込んで搬送する。これら挿入ローラ51,52は、図示せぬ動力伝達機構を介してモータ48と接続されており、モータ48によって駆動される。
【0027】
下ガイド55と上ガイド56とは、熱膨張性シート7の搬送をガイドするガイド部材である。本実施形態では、下ガイド55と上ガイド56とは、長尺な平板状の形状を呈しており、搬送路6の下と上とから熱膨張性シート7をガイドする。下ガイド55は、熱膨張性シート7の搬送の支障にならないように、前端部及び後端部が下方向に屈曲された形状になっている。下ガイド55は、好ましくは、頑丈な金属材で構成するとよい。また、上ガイド56は、熱膨張性シート7の搬送の支障にならないように、前端部及び後端部が上方向に屈曲された形状になっている。上ガイド56は、好ましくは、透明なガラスやプラスチック材等で構成するとよい。
【0028】
なお、本実施形態では、下ガイド55と上ガイド56の「前端」及び「後端」は、搬送媒体である熱膨張性シート7を基準にしている。図示例では、排出ローラ53,54に近い側(つまり、搬送方向における下流側)が下ガイド55と上ガイド56の前端側となり、挿入ローラ51,52に近い側(つまり、搬送方向における上流側)が下ガイド55と上ガイド56の後端側となっている。
【0029】
排出ローラ53,54は、熱膨張性シート7を上下から挟み込んで搬送する。これら排出ローラ53,54も、図示せぬ動力伝達機構を介してモータ48と接続されており、モータ48によって駆動される。
【0030】
出口センサ47は、入口センサ46と同様に、熱膨張性シート7を検出する検出センサである。出口センサ47は、熱膨張性シート7の前端が排出ローラ53,54の直後の位置に到達したことや、熱膨張性シート7の後端が排出ローラ53,54の直後の位置を通過したことを検知する。
【0031】
光照射ユニット4の内部の機構は、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)の直下の熱膨張性シート7を加熱する加熱領域部HSと、加熱領域部HSよりも上流側の上流側機構部USと、加熱領域部HSよりも下流側の下流側機構部LSとに大別される。
【0032】
なお、本実施形態では、上ガイド56は、搬送路6の幅方向(
図1の紙面に対して垂直方向)に沿って並べて配置された複数本の長尺な板状の部材によって構成されている。それぞれの上ガイド56は、搬送方向と平行に配置されることで熱膨張性シート7に強い影を落とさないように、側面視で斜め方向に傾斜して設けられている。具体的には、それぞれの上ガイド56は、搬送路6と光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)との間で、後端側が搬送路6から離間するように傾斜して配置されている。これによりランプヒータ44の直下において、上ガイド56と熱膨張性シート7とは所定距離だけ離れているので、強い影を落とすことはない。また、上ガイド56は、搬送方向と平行に配置されることで熱膨張性シート7の同じ箇所に影を落とさないように、上面視で斜め方向に傾斜して設けられている。
【0033】
なお、温度センサ43は、仮にその影が熱膨張性シート7に落ちてしまった場合に、影が落ちた部分での電磁波の熱への変換効率を低下させてしまう。そのため、本実施形態では、温度センサ43は、その影が熱膨張性シート7に落ちないように、反射板441の背面に取り付けられている。しかしながら、反射板441の正面の温度は、反射板441の背面の温度よりも大きくなる傾向にある。そして、反射板441の正面の温度と反射板441の背面の温度とが大きく異なることがある。その結果、光加熱手段から照射される光の照射方向の温度と温度センサ43で計測された反射板441の背面の計測温度TH1とが大きく異なることがある。このような反射板441の正面の温度と反射板441の背面の温度とが大きく異なる現象は、特に、温度の上昇時に発生し易い。そこで、立体画像形成システム1は、このような現象の影響を解消するために、以下の「立体画像形成システムの動作」の章で説明する方法で立体画像の形成を行う。
【0034】
<立体画像形成システムの動作>
以下、
図2A、
図2B、及び
図3を参照して、立体画像形成システム1の動作につき説明する。
図2A及び
図2Bは、それぞれ、立体画像形成システム1の動作を示すフローチャートである。
図3は、立体画像形成システム1の動作例を示すシーケンス図である。
【0035】
図3は、立体画像形成システム1の温度制御のグラフを上側に示し、ランプヒータ44と冷却ファン42とモータ48と出口センサ47のオン/オフ状態のシーケンス例を下側に示している。
図3のグラフでは、横軸が時間(s)を示しており、縦軸が温度(℃)を示している。
図3のグラフ中、一点鎖線は反射板441の正面の温度LH(つまり、光の照射方向の温度)を示しており、実線は反射板441の背面の計測温度TH1を示している。
【0036】
図3から分かるように、一点鎖線で示す反射板441の正面の温度LHと実線で示す反射板441の背面の計測温度TH1とは、温度の上昇時に大きく異なった値になり易い。しかしながら、一点鎖線で示す反射板441の正面の温度LHと実線で示す反射板441の背面の計測温度TH1とは、温度が下降すると、近似した値となる。そこで、立体画像形成システム1は、立体画像の形成時に、光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)の周囲を予め決められた予熱温度T1(
図3参照)に予熱させた後に、搬送手段(挿入ローラ51,52及び排出ローラ53,54)に熱膨張性シート7を搬送させるものとする。
【0037】
なお、本実施形態では、光照射制御回路41は、光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)の動作を制御する光加熱制御手段として、また、搬送手段(挿入ローラ51,52及び排出ローラ53,54)の動作を制御する搬送制御手段として機能する。
【0038】
また、立体画像形成システム1は、図示せぬタイマによって計測された時間に基づいて動作する。また、立体画像形成システム1の動作は、光照射制御回路41の図示せぬ記憶部に読み出し自在に予め格納されたプログラムによって規定されており、光照射制御回路41によって実行される。以下、これらの点については、情報処理では常套手段であるので、その詳細な説明を省略する。
【0039】
立体画像形成システム1は、オペレータが熱膨張性シート7(用紙)を挿入部5から内部に挿入して給紙部50にセットし、タッチパネルディスプレイ2に表示されているスタートボタン(不図示)を押下(タップ)することによって、動作を開始する。
【0040】
図2Aに示すように、立体画像形成システム1の光照射制御回路41は、バーコードリーダ45により熱膨張性シート7の挿入を検知する(ステップS105)。このとき、光照射制御回路41は、バーコードリーダ45の出力信号に基づいて熱膨張性シート7の表裏の向きを判別する。そして、熱膨張性シート7の裏面が上を向くようにセットされていれば、光照射制御回路41は、温度センサ43で計測された反射板441の背面の計測温度TH1が予熱温度T1(
図3参照)未満であるか否かを判定する(ステップS110)。予熱温度T1は、光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)の周囲を予熱するために予め決められた温度である。
【0041】
ステップS110の判定で、反射板441の背面の計測温度TH1が予熱温度T1未満であると判定された場合(Yesの場合)に、光照射制御回路41は、計測温度TH1を上昇させるために、ランプヒータ44をオンにして光の照射を開始する(ステップS115)。これにより、光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)の周囲の温度が上昇する。
【0042】
例えば、
図3に示す例では、立体画像形成システム1は、時刻A1のときに、光の照射を開始している。そして、時刻が時刻A1から時刻A2に進むことにより、反射板441の正面の温度LHと反射板441の背面の計測温度TH1とが上昇している。このとき、反射板441の正面の温度LHと反射板441の背面の計測温度TH1とが大きく異なった値になる。具体的には、反射板441の正面の温度LHが反射板441の背面の計測温度TH1よりも比較的大きな値になる。
【0043】
この後、光照射制御回路41は、反射板441の背面の計測温度TH1が加熱温度T2(
図3参照)以上に上昇したか否かを判定する(ステップS120)。加熱温度T2は、予熱温度T1(
図3参照)よりも高い値に予め設定されている。
【0044】
ステップS120の判定で、反射板441の背面の計測温度TH1が加熱温度T2(
図3参照)以上に上昇したと判定された場合(Yesの場合)に、光照射制御回路41は、以下の制御を行う。すなわち、光照射制御回路41は、ランプヒータ44をオフにして光の照射を停止するとともに、冷却ファン42をオンにして光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)への送風を開始する(ステップS125)。これにより、光照射制御回路41は、反射板441の背面の計測温度TH1を下降させる。その結果、光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)の周囲の温度が下降する。
【0045】
例えば、
図3に示す例では、時刻が時刻A2から時刻A3に進むことにより、反射板441の正面の温度LHと反射板441の背面の計測温度TH1とが下降する。このとき、反射板441の正面の温度LHと反射板441の背面の計測温度TH1とが近似した値になる。具体的には、反射板441の正面の温度LHが反射板441の背面の計測温度TH1よりも少しだけ大きな値になる。
【0046】
この後、光照射制御回路41は、反射板441の背面の計測温度TH1が予熱温度T1(
図3参照)以下に下降したか否かを判定する(ステップS130)。反射板441の背面の計測温度TH1が予熱温度T1(
図3参照)以下に下降したと判定された場合(Yesの場合)に、光照射制御回路41は、冷却ファン42をオフにして光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)への送風を停止する(ステップS150)。この後、処理は、ステップS155(
図2B参照)に進む。
【0047】
一方、ステップS110の判定で、反射板441の背面の計測温度TH1が予熱温度T1未満でない(つまり、予熱温度T1以上である)と判定された場合(Noの場合)に、光照射制御回路41は、以下の制御を行う。すなわち、光照射制御回路41は、冷却ファン42をオンにして光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)への送風を開始する(ステップS140)。これにより、光照射制御回路41は、反射板441の背面の計測温度TH1を下降させる。その結果、光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)の周囲の温度が下降する。
【0048】
この後、光照射制御回路41は、反射板441の背面の計測温度TH1が予熱温度T1(
図3参照)以下に下降したか否かを判定する(ステップS145)。反射板441の背面の計測温度TH1が予熱温度T1(
図3参照)以下に下降したと判定された場合(Yesの場合)に、処理は、ステップS150に進む。その結果、ステップS150で、光照射制御回路41は、冷却ファン42をオフにして光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)への送風を停止する。
【0049】
図2Bに示すように、ステップS150の後、光照射制御回路41は、熱膨張性シート7に立体画像を形成するために、ランプヒータ44をオンにして光の照射を開始する(ステップS155)。そして、光照射制御回路41は、予め決められた設定時間分だけ時間が経過するまで待つ(ステップS160)。これにより、例えば、
図3に示す例では、時刻が時刻A3から時刻A4に進む。この設定時間は、熱膨張性シート7の膨張層(不図示)を膨張させることが可能な形成温度まで、反射板441の背面の計測温度TH1を上昇させるための時間である。また、
図3に示す時刻A4は、反射板441の背面の計測温度TH1が形成温度に到達した時刻である。時刻A4は、立体画像の形成開始時刻となる。
【0050】
設定時間が経過したら、光照射制御回路41は、以下の式(1)に基づいて、熱膨張性シート7の搬送速度を決定する(ステップS165)。
V=a+b×TH2 …(1)
ここで、各記号の意味は、以下の通りである。
V :搬送速度
a :定数
b :温度係数
TH2:室温
定数aと温度係数bは、事前に室温を変更しながら立体画像の形成実験を行うことによって得ることができる。室温TH2は、立体画像の形成時に室温センサ49で室温を計測することによって得ることができる。
【0051】
ここで、搬送速度Vを決定する理由は、以下に説明するように、室温に応じて搬送速度Vを変更することによって、近赤外光の強さの変化を相殺するためである。すなわち、立体画像の形成時に照射される近赤外光の強さは、室温に応じて変化する。そのため、立体画像の膨張高さが、室温によって大きく変化する。そこで、本実施形態では、立体画像形成システム1は、室温に応じて搬送速度Vを変更して、近赤外光の強さの変化を相殺している。このような立体画像形成システム1は、室温が変化しても、所望の膨張高さの立体画像を安定して形成することができる。
【0052】
なお、ステップS165の処理は、ステップS160の処理と並行して行ってもよいし、又は、ステップS160の処理よりも前に行ってもよい。
【0053】
この後、光照射制御回路41は、モータ48をオンにする(ステップS170)。このとき、熱膨張性シート7は、給紙部50から繰り出され、搬送手段(挿入ローラ51,52及び排出ローラ53,54)によってステップS165で決定された搬送速度Vで下流側に向けて搬送される。これにより、熱膨張性シート7の先端部分は、入口センサ46上を通過し、上流側機構部USから加熱領域部HSに進入する。このとき、加熱領域部HSでは、熱膨張性シート7の裏面に可視光及び近赤外光が照射され、その結果、熱膨張性シート7に立体画像が形成される。
【0054】
なお、
図3に示す例では、期間FIは、立体画像が形成される立体画像形成期間を示している。例えば、
図3に示す例では、期間FIの開始時刻である時刻A4において、立体画像の形成が開始される。この後、期間FIの終了時刻である時刻A5で熱膨張性シート7の後端が出口センサ47上を通過したことが検知されるまで、立体画像の形成が行われる。そして、時刻A5で熱膨張性シート7の後端が出口センサ47上を通過したことが検知されると、立体画像の形成が終了する。以下、時刻A5等における立体画像の形成時の温度を「形成温度」と称する。
【0055】
光照射制御回路41は、熱膨張性シート7の後端が出口センサ47上を通過したか否かを監視する(ステップS175)。そして、熱膨張性シート7の後端が出口センサ47上を通過したら(Yesの場合)、光照射制御回路41は、以下の制御を行う。すなわち、光照射制御回路41は、ランプヒータ44をオフにして光の照射を停止するとともに、冷却ファン42をオンにして光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)への送風を開始する。更に、光照射制御回路41は、モータ48をオフにして熱膨張性シート7の搬送を停止する(ステップS180)。これにより、光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)の周囲の温度が下降する。また、熱膨張性シート7が光照射ユニット4の排出部(不図示)に排出される。
【0056】
この後、光照射制御回路41は、反射板441の背面の計測温度TH1が形成温度(時刻A5等における立体画像の形成時の温度)から予め決められた終了温度T0(
図3参照)以下に下降したか否かを判定する(ステップS185)。終了温度T0(
図3参照)は、一連のルーチンの処理(立体画像の形成処理)を終了するために予め決められた温度である。
【0057】
ステップS185の判定で、反射板441の背面の計測温度TH1が終了温度T0(
図3参照)以下に下降したと判定された場合(Yesの場合)に、光照射制御回路41は、冷却ファン42をオフにして光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)への送風を停止する(ステップS190)。
これにより、一連のルーチンの処理(立体画像の形成処理)が終了する。
【0058】
なお、
図3に示す例では、時刻A6で、反射板441の背面の計測温度TH1が終了温度T0まで下降している。そのため、光照射制御回路41は、時刻A6で、冷却ファン42をオフにして光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)への送風を停止している。これにより、時刻A6以降において、反射板441の正面の温度LHと反射板441の背面の計測温度TH1とがゆっくりと下降している。
【0059】
そして時刻A6以降において、再び、熱膨張性シート7が給紙部50にセットされ、タッチパネルディスプレイ2から光照射が指示されている。これに応答して、立体画像形成システム1は、立体画像の形成を再開している。その結果、時刻B1〜時刻B6の期間で、前記した時刻A1〜時刻A6で行った処理と同様の処理を行っている。
【0060】
その際に、時刻B5〜時刻B6の期間で、反射板441の背面の計測温度TH1が終了温度T0に下降する前に、再び、熱膨張性シート7が給紙部50にセットされ、タッチパネルディスプレイ2から光照射が指示されている。これに応答して、立体画像形成システム1は、立体画像の形成を終了せずに、次回の立体画像の形成を連続して行っている。その結果、時刻C1〜時刻C6の期間で、前記した時刻A1〜時刻A6で行った処理と同様の処理を行っている。ただし、時刻B6と時刻C1は同じ時刻である。また、時刻C1〜時刻C2の期間は、前回の立体画像を形成した際の時刻B1〜時刻B2の期間よりも短くなっている。
【0061】
なお、熱膨張性シート7は、光照射ユニット4の中を繰り返し搬送させることができる。これにより、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7に対して
図2A及び
図2Bに示すルーチンの処理を繰り返し行うことができる。
【0062】
その搬送に伴い、熱膨張性シート7の断面形状は、例えば、
図4〜
図6に示す熱膨張性シート7A,7b,7Cのように変化する。
図4〜
図6は、熱膨張性シート7を2回搬送して、
図2A及び
図2Bに示すルーチンの処理を表面と裏面の2回行った場合における熱膨張性シート7の断面形状の変化を示している。
【0063】
図4は、搬送前の熱膨張性シート7Aの断面形状を示す断面図である。
図4に示す熱膨張性シート7Aは、基材71と発泡樹脂層(膨張層)72とインク受容層73とが順に積層されている。
基材71は、紙、キャンバス地などの布、プラスチックなどのパネル材などからなり、材質は特に限定されるものではない。
【0064】
発泡樹脂層(膨張層)72には、基材71上に設けられた熱可塑性樹脂であるバインダ内に熱発泡剤(熱膨張性マイクロカプセル)が分散配置されている。これにより、発泡樹脂層(膨張層)72は、吸収した熱量に応じて発泡膨張する。
【0065】
インク受容層73は、発泡樹脂層(膨張層)72の上面全体を覆うように、例えば、10μmの厚さに形成されている。インク受容層73は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザ方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペンや万年筆のインク、鉛筆の黒鉛などを受容して、その表面に定着させるために好適な材料で構成される。
【0066】
熱膨張性シート7Aは更に、表面(インク受容層73側)に電磁波熱変換層74とカラーインク層75a,75bが印刷され、裏面(基材71側)に電磁波熱変換層76が印刷されている。電磁波熱変換層74,76は、例えばカーボンブラックを含むインクで印刷された層であり、可視光や近赤外光(電磁波)を熱に変換する。また、カラーインク層75a,75bは、シアン・マゼンタ・イエローなどのインクで印刷された画像層の一例である。
【0067】
熱膨張性シート7Aは、発泡樹脂層(膨張層)72を加熱により膨張させる前の状態なので、この発泡樹脂層(膨張層)72の厚さは一様である。熱膨張性シート7Aは、
図1に示すように、光照射ユニット4の給紙部50に、電磁波熱変換層74が印刷されたインク受容層73を上に向けてセットされる。そののち熱膨張性シート7Aは、搬送路6で可視光や近赤外光(電磁波)を照射されることで発泡樹脂層(膨張層)72が加熱により膨張し、
図5に示した熱膨張性シート7Bが形成される。
【0068】
図5は、1回目の搬送後における熱膨張性シート7Bの断面形状を示す断面図である。
電磁波熱変換層74は、第1回目の搬送において、図の上側から光の照射を受けて熱に変換する、この電磁波熱変換層74は、熱膨張性シート7に細かな立体パターンを形成するために設けられている。この電磁波熱変換層74の直下の発泡樹脂層(膨張層)72は、熱を受けて発泡膨張する。インク受容層73、電磁波熱変換層74、カラーインク層75bは、それぞれ伸縮性を有し、発泡樹脂層(膨張層)72の発泡膨張に追従して変形する。このようにして熱膨張性シート7Bが形成される。
【0069】
なお、これらの層間に隙間が生じると、電磁波熱変換層74から発泡樹脂層(膨張層)72への熱伝導量が抑制されるおそれがある。
【0070】
この熱膨張性シート7Bは更に、光照射ユニット4の給紙部50に、電磁波熱変換層76が印刷された基材71を上に向けてセットされたのち、搬送路6で可視光や近赤外光(電磁波)を照射されることで発泡樹脂層(膨張層)72が加熱により膨張し、
図6に示した熱膨張性シート7Cが形成される。熱膨張性シート7Bは、1回目の加熱により、熱膨張性シート7Aよりも用紙の水分量が減少している。この熱膨張性シート7Bの2回目の加熱は、その水分減少を見込んで、加熱における搬送速度を上げている。更に1回目の加熱終了から2回目の加熱までの経過時間により、2回目の加熱における搬送速度を変化させている。
【0071】
図6は、2回目の搬送後における熱膨張性シート7Cの断面形状を示す断面図である。
電磁波熱変換層76は、第2回目の搬送において、図の下側から光の照射を受けて熱に変換する、この電磁波熱変換層76は、粗い立体パターンを形成するために設けられている。この電磁波熱変換層76の近傍の発泡樹脂層(膨張層)72は、熱を受けて発泡膨張する。インク受容層73、電磁波熱変換層74、カラーインク層75aは、それぞれ伸縮性を有し、発泡樹脂層(膨張層)72の発泡膨張に追従して変形する。このようにして、立体画像を含む熱膨張性シート7Cが形成される。
【0072】
<立体画像形成システムの主な特徴>
係る構成において、本実施形態に係る立体画像形成システム1は、以下のような特徴を有している。
【0073】
(1)立体画像形成システム1の光照射制御回路41は、立体画像の形成時に、光加熱手段の周囲を予め決められた予熱温度T1(
図3参照)に予熱させた後に、搬送手段に熱膨張性シート7を搬送させる。このような立体画像形成システム1は、予熱温度T1(
図3参照)に基づいて立体画像を形成することができるため、所望の膨張高さの立体画像を安定して形成することができる。
【0074】
(2)立体画像形成システム1の光照射制御回路41は、光加熱手段の周囲の温度を予熱温度T1(
図3参照)よりも高い加熱温度T2(
図3参照)まで上昇させてから予熱温度T1まで下降させた後に、搬送手段に熱膨張性シート7を搬送させる。これにより、立体画像形成システム1は、反射板441の正面の温度を所望の温度に制御することができる。その結果、立体画像形成システム1は、所望の膨張高さの立体画像を安定して形成することができる。
【0075】
(3)立体画像形成システム1の光照射制御回路41は、立体画像の形成時に、熱膨張性シート7の搬送を開始する直前に室温センサ49で計測された室温TH2に応じた搬送速度Vで熱膨張性シート7を搬送して立体画像を形成する。このような立体画像形成システム1は、一定な室温環境下でなくても、つまり、環境温度(室温TH2)の変化に影響されることなく、所望の膨張高さの立体画像を安定して形成することができる。
【0076】
(4)立体画像形成システム1の光照射制御回路41は、熱膨張性シート7の断続挿入(
図3に示す時刻A1〜時刻A6の処理)又は連続挿入(
図3に示す時刻B1〜時刻C6の処理)においても、ランプヒータ44の予熱制御を行い、その後に、室温センサ49で計測された室温TH2に応じた搬送速度Vで熱膨張性シート7を搬送して立体画像を形成する。このような立体画像形成システム1は、立体画像の膨張高さに影響する環境温度(室温TH2)の変化がある場合であっても、断続挿入(
図3に示す時刻A1〜時刻A6の処理)又は連続挿入(
図3に示す時刻B1〜時刻C6の処理)に拘わらず、所望の膨張高さの立体画像を安定して形成することができる。
【0077】
(5)立体画像形成システム1は、前回の立体画像が形成された際の余熱が残らずに、光加熱手段の周囲の温度が十分に冷えた温度であることを検知した後に、次回の立体画像を形成する。このような立体画像形成システム1は、立体画像形成システム1の状態に影響されることなく、所望の膨張高さの立体画像を安定して形成することができる。なお、前記した「十分に冷えた温度」とは、例えば、連続挿入(
図3に示す時刻B1〜時刻C6の処理)を行う場合の時刻C1のときの温度を意味している。立体画像形成システム1は、時刻C1のときの温度以下であれば、次回の立体画像を形成することができる。
【0078】
以上の通り、本実施形態に係る立体画像形成システム1によれば、所望の膨張高さの立体画像を安定して形成することができる。
【0079】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、ある構成要素に他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に変更したりすることができる。また、本発明は、一部の構成要素を削除することもできる。
【0080】
また、例えば、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の両面に近赤外光を照射して、熱膨張性シート7の両面に立体画像を形成することも可能である。この場合に、
図2A及び
図2Bに示す立体画像形成システム1の動作や、前記した式(1)の搬送速度等は、状況に応じて変更される可能性がある。
【0081】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
[付記]
<請求項1>
搬送路に沿って熱膨張性シートを搬送する搬送手段と、
前記熱膨張性シートに光を照射して加熱する光加熱手段と、
前記光加熱手段の周囲の温度を計測する温度センサと、
前記光加熱手段及び前記搬送手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記光加熱手段の周囲を予め決められた予熱温度に予熱させた後に、前記搬送手段に前記熱膨張性シートを搬送させることを特徴とする立体画像形成システム。
<請求項2>
前記制御手段は、前記光加熱手段の周囲の温度を前記予熱温度よりも高い加熱温度まで上昇させてから前記予熱温度まで下降させた後に、前記搬送手段に前記熱膨張性シートを搬送させることを特徴とする請求項1に記載の立体画像形成システム。
<請求項3>
前記制御手段は、
前記搬送手段に前記熱膨張性シートの搬送を実行させるとともに、前記光加熱手段に光の照射を実行させることによって立体画像の形成を行い、
立体画像の形成が終了すると、前記光加熱手段に光の照射を停止させて、立体画像の形成時に光の照射によって前記予熱温度よりも高い形成温度に上昇した前記光加熱手段の周囲の温度を下降させ、かつ、
前記光加熱手段の周囲の温度が前記予熱温度よりも低い予め決められた終了温度に下降する前に次の前記熱膨張性シートのセットが検知されたときに、次の立体画像の形成を連続して行うことを特徴とする請求項2に記載の立体画像形成システム。
<請求項4>
前記制御手段は、前記光加熱手段の周囲の温度が前記終了温度に下降した後に次の前記熱膨張性シートのセットが検知されたときに、立体画像の形成を一時的に終了し、前記光加熱手段の周囲を前記加熱温度まで上昇させてから前記予熱温度まで下降させた後に、前記搬送手段に前記熱膨張性シートを搬送させて、立体画像の形成を再開することを特徴とする請求項3に記載の立体画像形成システム。
<請求項5>
前記光加熱手段の背面側には、光を反射させる反射板が配置されており、
前記温度センサは、前記反射板の背面に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の立体画像形成システム。
<請求項6>
前記光加熱手段に送風するファンを更に有しており、
前記制御手段は、前記搬送手段に前記熱膨張性シートを搬送させる前に、前記ファンによる送風を制御することで、予め決められた温度まで前記光加熱手段の周囲を冷却させることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の立体画像形成システム。
<請求項7>
室温を計測する室温センサを更に有しており、
前記制御手段は、前記室温センサによって計測された室温に応じて前記搬送手段の搬送速度を決定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の立体画像形成システム。