(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のような交通移動体では、太陽光がフロントガラスを通じて車両本体の収容空間に侵入する。この太陽光の侵入に起因して収容空間の入熱量が増大する問題がある。
【0005】
本開示は、光の侵入に起因する収容空間の入熱量を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、人(H)を収容する収容空間(S)を形成する移動体本体(20)を備えた交通移動体であって、前記移動体本体(20)は、該移動体本体(20)の移動方向前側から入射する光を遮る遮光部材(40)を有し、移動体本体(20)の移動方向前方への前記人(H)の視界が前記遮光部材(40)によって遮断された状態において、前記移動体本体(20)の運転を可能とする運転補助部(60,70)を備え、前記遮光部材(40)の内面には、前記収容空間(S)に露出する伝熱部材
を構成する輻射パネル(90)が設けられ、前記
輻射パネル(90)には、冷却用又は加熱用の熱媒体が流れる流路(91)が形成されることを特徴とする交通移動体である。
【0007】
第1の態様では、遮光部材(40)が光を遮るため、光が収容空間(S)に侵入することを抑制できる。光の侵入が抑制されると、収容空間の入熱量が低減される。遮光部材(40)によって人(H)の視界が遮断された状態であっても、運転補助部(60,70)により移動体本体(20)の運転が可能となる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記移動体本体(20)は、前記移動体本体(20)の移動方向の前側に形成されるとともに前記移動方向前方に進むにつれて下方に傾斜する傾斜部(d)を有し、前記遮光部材(40)は、前記傾斜部(d)を含んでいることを特徴とする交通移動体である。
【0009】
第2の態様では、傾斜部(d)により移動体本体(20)の空気抵抗が低減される。傾斜部(d)は面積が比較的広い。面積が広い傾斜部(d)を遮光部材(40)とすると、光の遮光量が多くなる。
【0010】
第3の態様は、第1又は2の態様において、前記遮光部材(40)は、前記収容空間(S)における前記移動方向の前側の略全域を覆っていることを特徴とする交通移動体である。
【0011】
第3の態様では、収容空間(S)の前側の略全域を覆う遮光部材(40)が、外部から収容空間(S)への光の侵入を抑制する。
【0012】
第4の態様は、第1乃至3の態様のいずれか1つにおいて、前記遮光部材(40)は、前記収容空間(S)の全体を覆っていることを特徴とする交通移動体である。
【0013】
第4の態様では、収容空間(S)の全体を覆う遮光部材(40)が、外部から収容空間(S)への光の侵入を抑制する。
【0014】
第5の態様は、第1乃至4の態様のいずれか1つにおいて、前記遮光部材(40)は、断熱性を有する材料で構成されることを特徴とする交通移動体である。
【0015】
第5の態様では、断熱部材である遮光部材(40)が、収容空間(S)の入熱量を低減する。
【0016】
第6の態様は、第1乃至5の態様のいずれか1つにおいて、前記運転補助部は、視界補助装置(60)で構成され、前記視界補助装置(60)は、前記移動体本体(20)の移動方向前方を撮像する撮像装置(61)と、前記人(H)が視認可能な位置に設けられ、前記撮像装置(61)で撮像した画像を表示する表示部(62)と、前記移動体本体(20)の運転を前記人(H)が操作する操作部(34,35,36)とを備えていることを特徴とする交通移動体である。
【0017】
第6の態様では、撮像装置(61)で撮像した移動方向前方の外部環境の画像が表示部(62)に表示される。人(H)の視界が遮光部材(40)に遮断された状態において、人(H)は、表示部(62)の画像により外部環境を認識する。人(H)は、この認識結果に基づいて操作部(34,35,36)を操縦し、移動体本体(20)の運転を操作する。
【0018】
第7の態様は、第1乃至6の態様のいずれか1つにおいて、前記運転補助部は、前記移動体本体(20)の運転を自動制御する制御装置(70)を備えていることを特徴とする交通移動体である。
【0019】
第7の態様では、人(H)の視界が遮光部材(40)に遮断された状態において、制御装置(70)の自動制御により移動体本体(20)が運転される。
【0020】
第8の態様は、第1乃至7の態様のいずれか1つにおいて、前記遮光部材(40)と厚さ方向に重なるとともに、透明又は半透明の材料で構成される可視部材(45)を備えていることを特徴とする交通移動体である。
【0021】
第8の態様では、可視部材(45)を設けた構成においても、遮光部材(40)が外部から収容空間(S)への光の侵入を抑制する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態
は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0024】
《参考形態1》
本開示の交通移動体は、自動車(10)で構成される。自動車(10)は、移動体本体である車両本体(20)を備える。
【0025】
〈車両本体の基本構成〉
図1に示すように、車両本体(20)は、ルーフ(21)、フロントボンネット(22)、2つのフロントピラー(23)、トランクリッド(24)、2つのリアピラー(25)、及びアンダーボディ(26)を含む。
図2に示すように、車両本体(20)の内部には、人(H)が収容される収容空間(S)が形成される。
【0026】
ルーフ(21)は、収容空間(S)の上方に形成される。フロントボンネット(22)は、収容空間(S)の前方に形成される。2つのフロントピラー(23)は、収容空間(S)の前寄りの左側及び右側にそれぞれ形成される。トランクリッド(24)は、収容空間(S)の後方に形成される。2つのリアピラー(25)は、収容空間(S)の後寄りの左側及び右側にそれぞれ形成される。左側のフロントピラー(23)と左側のリアピラー(25)との間には、サイドドア(27)が設けられる。右側のフロントピラー(23)と右側のリアピラー(25)との間には、サイドドア(図示省略)が設けられる。車両本体(20)の下部には、4つのホイール(28)が設けられる。
【0027】
図2に示すように、収容空間(S)には、フロア(31)と、シート(32)と、インテリアパネル(33)と、ハンドル(34)と、ペダル(35,36)とが設けられる。フロア(31)は、収容空間(S)の下方に設けられる。シート(32)は、フロア(31)の上面に設置される。本例のシート(32)は1つである。シート(32)は、左右方向に2つ以上設けられてもよい。シート(32)は、前後方向に2列以上設けられてもよい。インテリアパネル(33)は、シート(32)の前方に配置される。インテリアパネル(33)の内部には、空調装置(A)が設けられる。空調装置(A)は、収容空間(S)の冷房及び暖房を行う。空調装置(A)で冷却又は加熱された空気は、吹出口(図示省略)を通じて収容空間(S)に供給される。
【0028】
ハンドル(34)は、シート(32)の前方に配置される。ハンドル(34)は、シート(32)に座る人(H)が手で握る位置にある。ハンドル(34)は、車両本体(20)の移動方向を調節する操作部である。ハンドル(34)は、操舵装置に連結される。
【0029】
ペダル(35,36)は、ハンドル(34)の下方に配置される。ペダル(35,36)は、アクセルペダル(35)と、ブレーキペダル(36)とを含む。アクセルペダル(35)は、車両本体(20)の移動速度を調節する操作部である。アクセルペダル(35)は、加速装置に連結される。ブレーキペダル(36)は、車両本体(20)の移動速度を低下させる、あるいは車両本体(20)を静止させるための操作部である。ブレーキペダル(36)は、制動装置に連結される。
【0030】
車両本体(20)には、収容空間(S)の内部を照らす照明装置(38)が設けられる。照明装置(38)は、ルーフ(21)の下面に取り付けられる。
【0031】
〈遮光部材〉
本例の車両本体(20)は、遮光部材(40)を有する。遮光部材(40)は、第1遮光部材(41)及び第2遮光部材(42)を含む。
図1及び
図2に示すように、第1遮光部材(41)は、車両本体(20)の前側に形成される。第2に示すように、第2遮光部材(42)は、車両本体(20)の後側に形成される。
【0032】
第1遮光部材(41)は、車両本体(20)の傾斜部(d)を構成している。傾斜部(d)は、ルーフ(21)の前端と、一対のフロントピラー(23)と、フロントボンネット(22)の後端との間に形成される。傾斜部(d)は、移動方向の前方に進むにつれて下方に傾斜している。傾斜部(d)は、車両本体(20)の前方への移動時の空気抵抗を低減するように傾斜している。
【0033】
第1遮光部材(41)は、移動方向前側から収容空間(S)に向かって入射する光を遮る。第1遮光部材(41)は、不透光性の材料で構成される。第1遮光部材(41)は、断熱材料で構成される。第1遮光部材(41)の断熱性は、自動車の一般的なフロントガラスの断熱性よりも高い。
【0034】
第2遮光部材(42)は、ルーフ(21)の後端と、一対のリアピラー(25)と、トランクリッド(24)の前端との間に形成される。第2遮光部材(42)は、後方に進むにつれて下方に傾斜している。
【0035】
第2遮光部材(42)は、車両本体(20)の後側から収容空間(S)に向かって入射する光を遮る。第2遮光部材(42)の断熱性は、自動車の一般的なリアガラスの断熱性よりも高い。
【0036】
本例の右側及び左側のサイドドア(27)は、サイドウインドウ及びサイドガラスを有さず、その全体が遮光部材を構成している。サイドドア(27)は、車両本体(20)の側方から収容空間(S)に向かって入射する光を遮る。
【0037】
厳密にいうと、車両本体(20)のうち収容空間(S)を区画する他の部品の全てが遮光部材(40)を構成する。他の部品は、 ルーフ(21)、アンダーボディ(26)、フロントピラー(23)、及びリアピラー(25)を含む。本例では、遮光部材(40)が収容空間(S)の全体を覆っている。この車両本体(20)の構成により、太陽光の収容空間(S)への侵入に起因する入熱量を低減できる。
【0038】
〈視界補助装置〉
図3に模式的に示すように、参考形態1の自動車(10)は、視界補助装置(60)を備えている。視界補助装置(60)は、運転補助部を構成する。視界補助装置(60)は、移動方向前方への人(H)の視界が遮光部材(40)によって遮断された状態において、移動体本体(20)の運転を可能とする。
【0039】
具体的には、視界補助装置(60)は、撮像装置(61)と、モニタ(62)と、操作部を備える。操作部は、上述したハンドル(34)、アクセルペダル(35)、及びブレーキペダル(36)を含む。操作部は、車両本体(20)の運転を人が操作するための装置である。
【0040】
撮像装置(61)は、車両本体(20)の外部に配置される。撮像装置(61)は、車両本体(20)の外部環境を撮像する。撮像装置(61)は、少なくとも撮像装置(61)の移動方向の前方を撮像する。撮像装置(61)は、前方を向いたレンズを有する動作撮影用のガメラで構成される。
【0041】
モニタ(62)は、人(H)が視認可能な位置に設けられる。本例のモニタ(62)は、シート(32)とハンドル(34)との間に配置される。モニタ(62)は、シート(32)に座る人(H)に向かって画像を表示する表示部である。モニタ(62)には、撮像装置(61)で撮像された外部環境の画像が表示される。
【0042】
〈運転動作〉
図3に示すように、自動車(10)の運転時には、人(H)の移動方向前方の外部環境に対する視界(e)が第1遮光部材(41)によって遮断される。この状態では、人(H)の視界(e)により移動方向前方の外部環境を直接的に視認できない。自動車(10)の運転時には、視界補助装置(60)が作動する。撮像装置(61)で撮像した移動方向前方の外部環境は、モニタ(62)に表示される。人(H)は、モニタ(62)に表示された画像を確認することで、車両本体(20)の移動方向前方の外部環境を間接的に認識できる。人(H)は、モニタ(62)に表示された外部環境の画像に応じてハンドル(34)、アクセルペダル(35)、及びブレーキペダル(36)を操作する。この結果、人(H)の移動方向前方の外部環境に対する視界(e)が第1遮光部材(41)によって遮断された状態において、自動車(10)の運転が可能となる。
【0043】
−参考形態1の効果−
参考形態1は、人(H)を収容する収容空間(S)を形成する車両本体(20)を備えた自動車であって、車両本体(20)は、車両本体(20)の移動方向前側から入射する光を遮る遮光部材(40)を有し、車両本体(20)の移動方向前方への人(H)の視界が遮光部材(40)によって遮断された状態において、移動体本体(20)の運転を可能とする運転補助部(60,70)を備えている。
【0044】
換言すると、参考形態1は、人(H)を収容する収容空間(S)を形成する移動体本体(20)を備えた自動車であって、移動体本体(20)は、運転中の該移動体本体(20)の移動方向前方への人(H)の視界を遮断する遮光部材(40)を有し、前記移動方向前方への人(H)の視界が前記遮光部材(40)によって遮断された状態であるにも拘わらず、前記移動体本体(20)の運転を可能とする運転補助部(60,70)を備えていることを特徴とする交通移動体である。
【0045】
この構成では、遮光部材(40)によって収容空間(S)への光の侵入を防止できるので、光の侵入に起因する収容空間(S)の入熱量を低減できる。この結果、人(H)の快適性を向上したり、空調装置(A)の空調負荷を低減したりできる。例えば冬季に収容空間(S)の室内湿度が高くなると、フロントガラスが結露して視界が不良となるため、室内湿度に制約を設けるか、もしくはデフロスター等のフロントガラスの防曇手段が必要であった。本構成では、結露による運転への制約がなくなるため、人の快適な湿度条件を提供することができる。
【0046】
参考形態1は、車両本体(20)が、車両本体(20)の移動方向の前側に形成されるとともに移動方向前方に進むにつれて下方に傾斜する傾斜部(d)を有し、遮光部材(40)は、前記傾斜部(d)を含んでいる。
【0047】
傾斜部(d)により車両本体(20)の移動時における空気抵抗を低減できる。傾斜部(d)は、比較的広い面積を有するため、この領域をフロントガラスにすると、前側からの光の入射量が多くなる。本参考形態1では、傾斜部(d)を第1遮光部材(41)によって構成するため、光の入射量を効果的に低減できる。これに伴い収容空間(S)の入熱量を効果的に低減できる。
【0048】
第1遮光部材(41)は、収容空間(S)における前記移動方向の前側の略全域を覆っている。この構成により、収容空間(S)の前側からの光の入射を確実に防止できる。収容空間(S)の前側を遮光部材(40)にすると、フロントガラスのようにワイパーが不要となり、結露に起因してガラスが曇ることもない。
【0049】
遮光部材(40)は、収容空間(S)の全体を覆っている。この構成により、あらゆる方向、角度から収容空間(S)への光の入射を防止でき、光の入射に起因する入熱量を実質的になくすことができる。
【0050】
遮光部材(40)は、断熱性を有する材料で構成される。この構成により、光以外の熱の移動に起因する収容空間(S)の入熱量を確実に低減できる。
【0051】
運転補助部は視界補助装置(60)で構成され、視界補助装置(60)は、車両本体(20)の移動方向前方を撮像する撮像装置(61)と、人(H)が視認可能な位置に設けられ、撮像装置(61)で撮像した画像を表示する表示部(62)と、車両本体(20)の運転を人(H)が操作する操作部(34,35,36)とを備えている。この構成により、第1遮光部材(41)によって人(H)の視界(e)が遮断された状態であっても、表示部(62)に表示された画像に基づいて車両本体(20)の運転を操作できる。
【0052】
〈参考形態1の変形例〉
図4に示す例は、上記参考形態1と視界補助装置(60)の構成が異なる。変形例の視界補助装置(60)は、撮像装置(61)で撮像した画像を出力する投影装置(63)と、投影装置(63)で出力された画像が投影されるスクリーン(64)とを備える。スクリーン(64)は、撮像装置(61)で撮像した画像を表示する表示部である。本例のスクリーン(64)は、第1遮光部材(41)である傾斜部(d)の内面に形成される。第1遮光部材(41)の内面は、スクリーン(64)ないし表示部を兼用している。
【0053】
人(H)は、スクリーン(64)に表示された外部環境の画像に応じてハンドル(34)、アクセルペダル(35)、及びブレーキペダル(36)を操作する。この結果、人(H)の移動方向前方の外部環境に対する視界(e)が第1遮光部材(41)によって遮断された状態において、自動車(10)の運転が可能となる。第1遮光部材(41)の内面をスクリーン(64)として利用すると、スクリーン(64)に投影される画像と実際の外部環境の見た目とが近くなり、自動車(10)の操作性を向上できる。
【0054】
《参考形態2》
参考形態2の自動車(10)は、参考形態1と運転補助部の構成が異なる。
図5に示すように、参考形態2の運転補助部は、車両本体(20)の自動運転を制御するための制御装置(70)で構成される。
【0055】
制御装置(70)は、外部環境取得部(71)、入力部(72)、演算部(73)、及び出力部(74)を備える。外部環境取得部(71)は、GPS(Global Positioning System)、レーダ、カメラなどに構成され、車両本体(20)の外部環境情報を取得する。外部環境取得部(71)で取得された情報は、入力部(72)に入力された後、演算部(73)で処理される。演算部(73)は、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを含む。
【0056】
演算部(73)は、外部環境情報に基づいて車両本体(20)の加速装置(51)、制動装置(52)、及び操舵装置(53)の最適な制御値を求める。演算部(73)は、AI(Artificial intelligence)を利用したものであってもよい。この場合、演算部(73)は、外部環境情報を入力パラメータとする。演算部(73)は、加速装置(51)、制動装置(52)、操舵装置(53)の制御値を出力パラメータとする。演算部(73)のAI処理においては、ディープラーニング技術、強化学習、深層強化学習を用いることができる。
【0057】
演算部(73)で求められた制御値は、出力部(74)を介して加速装置(51)、制動装置(52)、及び操舵装置(53)に適宜出力される。車両本体(20)では、これらの制御値に基づき自動運転の制御が行われる。この結果、人(H)の移動方向前方の外部環境に対する視界が第1遮光部材(41)によって遮断された状態において、自動車(10)の運転が可能となる。
【0058】
参考形態2において常に自動運転を行う構成とするのであれば、操作部(ハンドル(34)、アクセルペダル(35)、ブレーキペダル(36))を省略してもよい。
【0059】
《参考形態の変形例》
上述した参考形態1及び2においては、以下のような各変形例の構成としてもよい。
【0060】
〈参考例1〉
図6及び
図7に示す参考例1の自動車(10)は、切換機構(80)を備えている。切換機構(80)は、第1遮光部材(41)を第1状態と第2状態とに切り換える。
図6に示す第1状態の第1遮光部材(41)は、車両本体(20)の移動方向前方への人(H)の視界(e)を遮断する。
図7に示す第2状態の第1遮光部材(41)は、車両本体(20)の移動方向前方への人(H)の視界(e)の遮断を解除する。
【0061】
切換機構(80)は、日射量センサ(81)と、駆動装置(82)と、駆動制御部(83)とを備える。
【0062】
日射量センサ(81)は、外部から照射される光(太陽光)の日射量を検出する検知部である。検知部は、収容空間(S)の外部から内部への入熱量を示す指標を検出できるものであれば、他のセンサであってもよい。検知部を検出される他の指標としては、光の強度、室外空気の温度、室内空気の温度などがある。日射量センサ(81)は、車両本体(20)の前側に配置される。日射量センサ(81)は、フロントボンネット(22)、フロントピラー(23)、ルーフ(21)の前側寄りの部分などに取り付けられる。
【0063】
駆動装置(82)は、第1遮光部材(41)を駆動させる。具体的には、本例の駆動装置(82)は、電動機によって回転駆動され、第1遮光部材(41)を巻き取るように構成される。駆動装置(82)は、第1遮光部材(41)の上端が駆動装置(82)からルーフ(21)に亘って延びる状態(
図6に示す第1状態)と、第1遮光部材(41)の上端が駆動装置(82)の近傍に位置する状態(
図7に示す第2状態)との間で、第1遮光部材(41)の長手方向の長さを調節する。駆動装置(82)は、第1遮光部材(41)を第1状態と第2状態とに切り換えるものであれば、巻き取り方式でなくてもよい。駆動装置(82)は、第1遮光部材(41)を他の位置に変位させる方式、第1遮光部材(41)を折り畳む方式。第1遮光部材(41)を旋回させる方式であってもよい。
【0064】
駆動制御部(83)は、日射量センサ(81)の検出値に基づいて駆動装置(82)を制御する。駆動制御部(83)は、日射量センサ(81)で検出した日射量が第1値よりも大きくなると、第1遮光部材(41)が第1状態となるように駆動装置(82)を制御する。この制御により、日射量が比較的大きい状況において、収容空間(S)の前側が第1遮光部材(41)によって閉塞される。第1状態の第1遮光部材(41)は、収容空間(S)の内部への光の侵入を防止する。
図6の状態では、参考形態1の視界補助装置(60)、あるいは参考形態2の制御装置(70)の自動運転制御により、車両本体(20)の運転が可能である。
【0065】
駆動制御部(83)は、日射量センサ(81)で検出した日射量が第2値よりも小さくなると、第1遮光部材(41)が第2状態となるように駆動装置(82)を制御する。第2値は、第1値と等しい、あるいは第1値より小さい。この制御により、日射量が比較的小さい状況において、収容空間(S)の前側が外部に開放される。
【0066】
車両本体(20)には、ルーフ(21)の前端、一対のフロントピラー(23)、及びフロントボンネット(22)の後端の間に、開放部(O)が形成される。開放部(O)は、人(H)の移動方向前方への視界(e)に対応する位置に形成される。人(H)は、開放部(O)を通じて移動方向前方の外部環境を直接的に視認することができる。この状態では、人(H)が操作部を操作することで車両本体(20)の運転を行うことができる。
【0067】
参考形態2において参考例1の切換機構(80)を採用する場合、人(H)の操作による運転と、上述した自動制御の運転との切換に応じて第1遮光部材(41)を第1状態と第2状態とに切り換えるようにしてもよい。人(H)の操作による運転時には、第1遮光部材(41)が第2状態となるように駆動装置(82)を制御する。この状態では、人(H)が外部環境を直接視認しながら操作部を操作する。自動制御の運転時には、第1遮光部材(41)が第1状態となるように駆動装置(82)を制御する。この状態では、人(H)の視線(e)が第1遮光部材(41)によって遮断された状態で、車両本体(20)の運転が自動制御される。
【0068】
〈参考例2〉
図8及び
図9に示す参考例2の自動車(10)は、可視部材であるフロントガラス(45)を備えている。フロントガラス(45)は、第1遮光部材(41)と厚さ方向に重なるとともに、透明又は半透明の材料で構成される。フロントガラス(45)は、第1遮光部材(41)である傾斜部(d)に沿うように傾斜している。本例では、第1遮光部材(41)の外側にフロントガラス(45)が設けられる。第1遮光部材(41)の内側にフロントガラス(45)を設けてもよい。
【0069】
図示を省略するが、自動車(10)は、可視部材であるリアガラスを備えていてもよい。リアガラスは、第2遮光部材(42)と厚さ方向に重なるとともに透明又は半透明の材料で構成される。
【0070】
第1遮光部材(41)は、フロントガラス(45)よりも断熱性が高い。自動車(10)の衝突時における第1遮光部材(41)の強度は、自動車(10)の衝突時におけるフロントガラス(45)の強度よりも大きい。第1遮光部材(41)の厚みは、フロントガラス(45)の厚みと同じ、あるいはフロントガラス(45)の厚みよりも大きい。
【0071】
参考例2の自動車(10)は、変形例1と同様の切換機構(80)を備えている。第1遮光部材(41)は、フロントガラス(45)に沿うように変位することで、第1状態と第2状態とに切り換わる。
【0072】
日射量センサ(81)で検出した日射量が第1値よりも大きくなると、第1遮光部材(41)が
図8に示す第1状態になる。この状態では、フロントガラス(45)の全域が第1遮光部材(41)によって覆われる。第1状態の第1遮光部材(41)は、収容空間(S)の内部への光の侵入を防止する。
図8の状態では、参考形態1の視界補助装置(60)、あるいは参考形態2の制御装置(70)の自動運転制御により、車両本体(20)の運転が可能である。
【0073】
日射量センサ(81)で検出した日射量が第2値よりも小さくなると、第1遮光部材(41)が
図9に示す第2状態になる。この状態では、フロントガラス(45)の内側に参考例1と同様に開放部(O)が形成される。開放部(O)は、人(H)の移動方向前方への視界(e)に対応する位置形成される。人(H)は、開放部(O)及びフロントガラス(45)を通じて移動方向前方の外部環境を直接的に視認することができる。この状態では、人(H)が操作部を操作することで車両本体(20)の運転を行うことができる。この運転では、走行風が収容空間(S)に入り込むことをフロントガラス(45)によって防止できる。
【0074】
参考例2の切換機構(80)を採用する場合にも、人(H)の操作による運転時に第1遮光部材(41)を第2状態とし、自動制御の運転時に第1遮光部材(41)を第1状態としてもよい。
【0075】
参考例2において切換機構(80)を省略した構成としてもよい。
【0076】
〈実施形態〉
図10に示す実施形態の自動車(10)は、第1遮光部材(41)に空調装置(A)が設けられる。本例の空調装置(A)は、略板状の伝熱部材(90)と、伝熱部材(90)の内部に形成される流路(91)とを有する。伝熱部材(90)は、第1遮光部材(41)の内面に取り付けられる。伝熱部材(90)は、収容空間(S)に露出する。流路(91)には、収容空間(S)の冷房や暖房を行うための熱媒体が流れる。伝熱部材(90)は、流路(91)を流れる熱媒体と、収容空間(S)の空気との間で熱を移動させる。
【0077】
空調装置(A)の冷房時には、流路(91)の内部を冷却用の熱媒体が流れる。熱媒体は例えば冷水である。収容空間(S)の空気の熱は、伝熱部材(90)を介して流路(91)内の熱媒体に移動する。空調装置(A)の暖房時には、流路(91)の内部を加熱用の熱媒体が流れる。熱媒体は例えば温水である。流路(91)の熱媒体の熱は、伝熱部材(90)を介して収容空間(S)の空気に移動する。暖房時には、伝熱部材(90)から輻射熱が放出される。換言すると、伝熱部材(90)は輻射パネルを構成する。
【0078】
実施形態では、空調装置(A)の伝熱部材(90)が遮光部材を兼用する。第1遮光部材(41)は伝熱部材(90)の取付面を兼用する。
【0079】
空調装置(A)は、圧縮した冷媒が冷媒回路を循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷凍サイクル式冷凍機であってもよい。空調装置(A)は、2つの吸着材熱交換器、蒸発器、及び凝縮器を有し、2つの吸着剤熱交換器で交互に吸着と脱着とを繰り返す吸着式冷凍機であってもよい。吸着材熱交換器の吸着材の再生には、自動車(10)の排熱を利用できる。空調装置(A)は、シート(32)などに配置されるヒータであってもよい。
【0080】
〈参考例3〉
図11に示すように、自動車(10)は、第1遮光部材(41)の全体が太陽光パネル(P)で構成される。換言すると、太陽光パネル(P)が遮光部材を兼用している。第1遮光部材(41)は傾斜部(d)に構成されており、その面積が比較的広い。面積の広い第1遮光部材(41)を太陽光パネル(P)とすることで、太陽光の受光面積を十分に確保できるとともに太陽光パネル(P)を利用して収容空間(S)への光・熱の侵入を防止できる。太陽光パネル(P)の発電電力は自動車(10)のエネルギーとして利用される。遮光部材(40)の一部を太陽光パネル(P)で構成してもよい。
【0081】
《その他の実施形態》
上述した実施形態、変形例、他の形態においては、以下の構成としてもよい。
【0082】
遮光部材は、必ずしも収容空間(S)の全体を覆う必要はない。遮光部材は、移動体本体の移動方向の前側の略全域だけを覆っていてもよい。ここでいう、「移動方向の前側」とは、移動体本体が前方に移動する場合、移動体本体の前側を意味する。「移動方向の前側」とは、移動体本体が後方に移動する場合、移動体本体の後側(リアピラー(25)側)を意味する。移動体本体が後方に移動する場合、リアピラー(25)側に第2遮光部材(42)があると、人の後方(移動方向の前方)の視界が第2遮光部材(42)によって遮断される。この状態においても、運転補助部(60,70)により移動体本体の後方への運転が可能となる。
【0083】
自動車(10)のサイドドア(27)にサイドウインドウやサイドガラスを設けてもよい。フロントピラー(23)にサイドミラーを設けてもよい。
【0084】
移動体本体に換気装置を設けてもよい。換気装置は、外部の空気を収容空間(S)に給気する給気部と、収容空間(S)の空気を外部に排出する排気部とを含む。
【0085】
移動体本体に気体処理装置を設けてもよい。気体処理装置は、収容空間(S)の二酸化炭素や、他の臭気成分などを除去する。気体処理装置は、放電式、吸着式、分離膜式などがある。
【0086】
移動体本体に収容空間(S)の湿度を調節する調湿装置を設けてもよい。
【0087】
交通移動体は、自動車(10)に限られない。交通移動体は、鉄道車両、船舶、飛行体、人搭載型のドローンなどを含む。
【0088】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。