特許第6844663号(P6844663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6844663-水量調整装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844663
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】水量調整装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20210308BHJP
   F24F 11/87 20180101ALI20210308BHJP
   F25B 39/04 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   F25B1/00 381H
   F25B1/00 399Y
   F24F11/87
   F25B39/04 H
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-127955(P2019-127955)
(22)【出願日】2019年7月9日
(65)【公開番号】特開2021-12009(P2021-12009A)
(43)【公開日】2021年2月4日
【審査請求日】2020年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大浦 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小谷 拓也
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0363337(US,A1)
【文献】 特開昭53−090641(JP,A)
【文献】 特開2019−020090(JP,A)
【文献】 特開平05−280819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/87
F25B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と出口の差圧が所定範囲内になるように回転数制御される循環ポンプ(51)によって、水配管中の水を循環させ、冷媒回路(2)を流れる冷媒と、水配管を流れる水との間で熱交換器(23)において熱交換を行わせる冷凍サイクル装置(1)において、水配管を流れる水量を制御する水量調整装置(10)であって、
水配管を流れる水量を調整する水量調整弁(11)と、
前記熱交換器の入口の水配管の温度を測定する第1温度センサ(12)と、
前記熱交換器の出口の水配管の温度を測定する第2温度センサ(13)と、
前記第1温度センサの測定温度と前記第2温度センサの測定温度の差に基づいて、前記水量調整弁の開度を制御する制御部(40)と、
を備え、
前記制御部が前記水量調整弁の開度を調整することにより、水配管の水量を変化させ、前記循環ポンプの入口と出口の差圧を変化させることによって、前記循環ポンプの回転数を変化させる、
水量調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1温度センサの測定温度と前記第2温度センサの測定温度の差が、所定範囲内に入るように、前記水量調整弁の開度を制御する、
請求項1に記載の水量調整装置。
【請求項3】
前記制御部は、水配管を流れる水量が所定範囲内になるように、前記水量調整弁の開度を調整する、
請求項1または2に記載の水量調整装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記水量を、前記冷媒の冷媒側能力に基づいて演算する、
請求項3に記載の水量調整装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記冷媒の冷媒側能力を、前記冷媒の循環量と、前記熱交換器の冷媒配管の入口と出口におけるエンタルピ変化とに基づいて演算する、
請求項4に記載の水量調整装置。
【請求項6】
前記制御部は、水配管を流れる水量が所定範囲内になるように、前記水量調整弁の開度を調整した後で、
前記第1温度センサの測定温度と前記第2温度センサの測定温度の差に基づいて、前記水量調整弁の開度を制御する、
請求項3から5のいずれか1項に記載の水量調整装置。
【請求項7】
前記熱交換器(23)は、前記冷凍サイクル装置(1)の熱源側熱交換器であり、
前記制御部(40)および前記熱交換器は、前記冷凍サイクル装置の熱源ユニット(20)に配置されている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の水量調整装置。
【請求項8】
入口と出口の差圧が所定範囲内になるように回転数制御される循環ポンプ(51)を有し、前記循環ポンプによって、水配管中の水を循環させる水回路(5)と、
冷媒回路(2)と、水配管を流れる水との間で熱交換を行う熱交換器(23)と、を有する冷凍サイクル装置(1)と、
水配管を流れる水量を制御する水量調整装置(10)と、を備え、
前記水量調整装置は、
水配管を流れる水量を調整する水量調整弁(11)と、
前記熱交換器の入口の水配管の温度を測定する第1温度センサ(12)と、
前記熱交換器の出口の水配管の温度を測定する第2温度センサ(13)と、
前記第1温度センサの測定温度と前記第2温度センサの測定温度の差に基づいて、前記水量調整弁の開度を制御する制御部(40)と、を含み、
前記制御部が前記水量調整弁の開度を調整することにより、水配管の水量を変化させ、前記循環ポンプの入口と出口の差圧を変化させることによって、前記循環ポンプの回転数を変化させる、
水量調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冷凍サイクル装置における水量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒を用いて室内の空気調和を行う空気調和装置において、水を用いて熱源側熱交換器を冷却(または加熱)する、水冷式の空気調和装置が知られている。特許文献1(特開2008−75948号公報)は、水冷式の空気調和装置において、冷媒回路の高圧圧力が最適圧力となるように、冷却水の供給流量を調節することを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、水冷式の空気調和装置では、熱交換を行う冷却水を循環させる水配管および水配管内の冷却水の循環を制御する循環ポンプは現地調達であり、循環ポンプを水冷式の空気調和装置が直接制御することはできない。本開示では、循環ポンプを直接制御することなく、水配管中の冷却水の循環量を制御する制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の水量調整装置は、冷凍サイクル装置において、水配管を流れる水量を制御する。冷凍サイクル装置は、入口と出口の差圧が所定範囲内になるように回転数制御される循環ポンプによって、水配管中の水を循環させ、冷媒回路を流れる冷媒と、水配管を流れる水との間で熱交換器において熱交換を行わせる。水量調整装置は、水配管を流れる水量を調整する水量調整弁と、熱交換器の入口の水配管の温度を測定する第1温度センサと、熱交換器の出口の水配管の温度を測定する第2温度センサと、第1温度センサの測定温度と第2温度センサの測定温度の差に基づいて、水量調整弁の開度を制御する制御部と、を備える。
【0005】
第1観点の水量調整装置は、水量調整弁によって、水配管を流れる水量を制御するので、循環ポンプを直接制御することなく、水配管中の冷却水の循環量を制御することができる。
【0006】
第2観点の水量調整装置は、第1観点の水量調整装置であって、制御部は、第1温度センサの測定温度と第2温度センサの測定温度の差が、所定範囲内に入るように、水量調整弁の開度を制御する。
【0007】
第3観点の水量調整装置は、第1観点または第2観点の水量調整装置であって、制御部は、水配管を流れる水量が所定範囲内になるように、水量調整弁の開度を調整する。
【0008】
第4観点の水量調整装置は、第3観点の水量調整装置であって、制御部は、水量を、冷媒の冷媒側能力に基づいて演算する。
【0009】
第4観点の水量調整装置においては、制御部は、冷媒の冷媒側能力に基づいて演算して水量を所定範囲内になるように、水量調整弁の開度を調整するので、水量を適正な範囲に制御することができる。
【0010】
第5観点の水量調整装置は、第4観点の水量調整装置であって、制御部は、冷媒の冷媒側能力を、冷媒の循環量と、熱交換器の冷媒入口と出口におけるエンタルピ変化とに基づいて演算する。
【0011】
第6観点の水量調整装置は、第3観点〜第5観点のいずれかの水量調整装置であって、制御部は、水配管を流れる水量が所定範囲内になるように、水量調整弁の開度を調整する。その後、制御部は、第1温度センサの測定温度と第2温度センサの測定温度の差に基づいて、水量調整弁の開度を制御する。
【0012】
第6観点の水量調整装置においては、制御部は、水量が所定範囲内になるように、水量調整弁の開度を調整した後で、第1温度センサの測定温度と第2温度センサの測定温度の差に基づいて、水量調整弁の開度を制御するので、より適切に水量調整弁の開度を制御できる。
【0013】
第7観点の水量調整装置は、第1観点〜第6観点のいずれかの水量調整装置であって、熱交換器は、冷凍サイクル装置の熱源側熱交換器である。制御部および熱交換器は、冷凍サイクル装置の熱源ユニットに配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】冷凍サイクル装置1および水量調整装置10の全体構成と冷媒回路を示す図である。
図2】水量調整弁11の開度制御の流れを示すフローチャートである。
図3図2のステップS102(冷媒能力の演算)をさらに説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
(1)冷凍サイクル装置1の構成
第1実施形態の冷凍サイクル装置1の全体構成の概略を図1に示す。図1は、冷媒回路2を中心に記載している。冷凍サイクル装置1は、冷暖房を行う空気調和装置、冷温水器などに用いることができる。冷凍サイクル装置1は、水冷式である。冷媒回路2を流れる冷媒は、熱源側熱交換器23において、水回路5を流れる水と熱交換を行う。
【0016】
本実施形態の冷凍サイクル装置1は、熱源ユニット20と、利用ユニット30a、30bと、制御部40と、を有している。利用ユニット30a、30bは、1台または複数台である。図1では、2台の利用ユニット30a、30bが例示されている。
【0017】
熱源ユニット20は、圧縮機21と、アキュムレータ26と、四方切換弁22と、熱源側熱交換器23と、第2電動弁24と、高圧レシーバ25と、バイパス回路27と、第3電動弁28と、複数の温度センサ12〜17と、圧力センサ18と、液側閉鎖弁61と、ガス側閉鎖弁62とを含んでいる。熱源ユニット20においては、四方切換弁22と、熱源側熱交換器23と、第2電動弁24と、高圧レシーバ25と、液側閉鎖弁61とは、順に冷媒配管によって接続されている。ここで、第2電動弁24と液側閉鎖弁61との間の冷媒配管を液管29と呼ぶ。
【0018】
圧縮機21は、冷媒を圧縮する。四方切換弁22は、図1の破線(暖房)と、実線(冷房)とで冷媒の流れを切り換える。熱源側熱交換器23は、冷媒回路2を流れる冷媒と、水回路5を流れる水とで熱交換させる。熱源側熱交換器23は、プレート式熱交換器である。第2電動弁24は、冷媒配管を流れる冷媒の流量を調整する。高圧レシーバ25、アキュムレータ26は、冷媒を一時貯留する。
【0019】
圧力センサ18は、圧縮機21の吐出側に接続され、高圧圧力を計測する。温度センサ14は、熱源側熱交換器23の四方切換弁22側の冷媒配管に配置され、熱源側熱交換器23の冷媒配管の入口温度を測定する。温度センサ15は、熱源側熱交換器23の第2電動弁24側の冷媒配管に配置され、熱源側熱交換器23の冷媒配管の出口温度を測定する。温度センサ16は、熱源側熱交換器23上に配置され、気液2相状態の冷媒温度を測定する。温度センサ17は、液管29上に配置され、冷媒配管の温度を測定する。
【0020】
バイパス回路27は、圧縮機21の吐出側の冷媒配管と、第2電動弁24と高圧レシーバ25との間の冷媒配管(液管29)とを接続している。第3電動弁28(バイパス電動弁)は、バイパス回路27上に配置されている。第3電動弁28の開度は、閉から全開まで、連続的にまたは段階的に変更可能である。第3電動弁28の開度を変更することにより、バイパス回路27を流れる冷媒の流量が変化する。バイパス回路27は、冷房運転時(利用側熱交換器を蒸発器として運転させた場合)に、液管29の圧力が低下した時に、液管29に圧縮機21の吐出側の高圧冷媒を供給し、液管29の圧力を維持する役割をもつ。バイパス回路27は、圧縮機21の吐出側の冷媒配管から、第2電動弁24と高圧レシーバ25との間の冷媒配管に接続されているが、これに限らず、第2電動弁24と利用ユニット30a、30bの液側閉鎖弁61との間の冷媒配管に接続されていればよい。また、圧縮機21から吐出された高圧冷媒は、第2電動弁24と後述する第1電動弁31a、31bとの間に供給される構成であればよい。
【0021】
利用ユニット30aは、利用側熱交換器32aと、第1電動弁31aとを含んでいる。利用ユニット30bは、利用側熱交換器32bと、第1電動弁31bとを含んでいる。第1電動弁31a、31bと利用側熱交換器32a、32bとは冷媒配管で接続され、さらに、第1電動弁31a、31bは冷媒配管で液側閉鎖弁61に、利用側熱交換器32a、32bは、冷媒配管で、ガス側閉鎖弁62に接続されている。
【0022】
第1電動弁31a、31bは、冷媒を減圧し、また、冷媒流量の調整を行う。利用側熱交換器32a、32bは、冷媒と室内の空気とで熱交換を行う。
【0023】
制御部40は、コンピュータである。制御部40は、プロセッサとメモリとを有している。本実施形態においては、制御部40は、熱源ユニット20に配置されている。制御部40は、別の位置に配置されていても良い。制御部40は複数のコンピュータから構成され、複数のコンピュータが別の位置に配置され連携して制御を行っても良い。制御部40は、熱源ユニット20、利用ユニット30a、30b内の各機器を制御する。制御部40は、熱源ユニット20、利用ユニット30a、30b内の各機器、および、温度センサ12〜17と、接続されている。制御部40は、各機器の稼動の状態、各センサの測定値などの情報を入手して、その情報に基づいて各機器を制御する。
【0024】
暖房運転時には、圧縮機21から吐出した冷媒は、利用側熱交換器32a、32b、第1電動弁31a、31b、高圧レシーバ25、第2電動弁24、熱源側熱交換器23、アキュムレータ26を経由して、再び圧縮機21に吸入される。言い換えると、暖房時には、利用側熱交換器32a、32bが、凝縮器(放熱器)として、熱源側熱交換器23が、蒸発器として機能する。
【0025】
冷房運転時には、圧縮機21から吐出した冷媒は、熱源側熱交換器23、第2電動弁24、高圧レシーバ25、第1電動弁31a、31b、利用側熱交換器32a、32b、アキュムレータ26を経由して、再び圧縮機21に吸入される。言い換えると、冷房時には、熱源側熱交換器23が、凝縮器(放熱器)として、利用側熱交換器32a、32bが、蒸発器として機能する。
【0026】
(2)水回路5と水量調整装置10の構成
水量調整装置10は、水量調整弁11と、第1温度センサ12と、第2温度センサ13と、制御部40とを備える。
【0027】
上述したように、冷凍サイクル装置1の冷媒は、熱源側熱交換器23において水と熱交換する。この水は、水回路5内を循環している。水回路5は、熱源側熱交換器23、水量調整弁11、循環ポンプ51、水熱源(図示せず)が水配管で接続されている。水配管上には、第1温度センサ12と、第2温度センサ13が配置されている。第1温度センサ12は、熱源ユニット20の外側であって、熱源側熱交換器23の入口の水配管上に配置されている。第2温度センサ13は、熱源ユニット20の外側であって、熱源側熱交換器23の出口の水配管上に配置されている。第1温度センサ12及び第2温度センサ13は、上述した位置に限定されず、それぞれ熱源ユニット20内の熱源側熱交換器23の入口の水配管上、出口の水配管上に配置されていてもよい。
【0028】
循環ポンプ51は、水を水回路5内で循環させる。循環ポンプ51は、ポンプの入口と出口の差圧が所定範囲内になるように回転数制御される。本実施形態においては、循環ポンプ51の回転数は、制御部40とは、独立に制御される。循環ポンプ51は、図1では、水回路5の熱源側熱交換器23の出口側に接続されている。循環ポンプ51は、水回路5の熱源側熱交換器23の入口側に接続されていてもよく、水回路5内に配置されていれば、他の位置であっても良い。
【0029】
水量調整弁11は、水回路5内を流れる水の水量を調整する。水量調整弁11は、開度の調整の可能な電動弁である。水量調整弁11は、制御部40によって制御される。水回路5内の水量は、原始的に循環ポンプ51の回転数で決まるが、循環ポンプ51は制御部40によって制御できないので、制御部40は、水量調整弁11によって、水回路5の水量を制御する。水量調整弁11の制御により水回路5の水量が変化すると、循環ポンプ51の入口と出口に差圧が生じる。循環ポンプ51は、生じた差圧に基づき、水回路5の水の循環量を制御する。水量調整弁11は、図1では、水回路5の熱源側熱交換器23の入口側に接続されている。水量調整弁11は、水回路5の熱源側熱交換器23の出口側に接続されていてもよく、水回路5内に配置されていれば、他の位置であっても良い。
【0030】
水熱源は、水回路5を流れる水を冷却するものであり、たとえば、クーリングタワーである。
【0031】
第1温度センサ12は、熱源側熱交換器23の入口の水配管の温度を測定する。第2温度センサ13は、熱源側熱交換器23の出口の水配管の温度を測定する。第1温度センサ12および第2温度センサ13は、サーミスタである。第1温度センサ12および第2温度センサ13で測定した温度の測定値は、制御部40に送られる。
【0032】
冷凍サイクル装置1の制御部40は、第1温度センサ12および第2温度センサ13で測定した温度の測定値やその他の情報を基にして、水量調整弁11の開度の調整を行う。
【0033】
(3)水量調整弁11の開度制御
水量調整弁11の開度制御フローを、図2を用いて説明する。
【0034】
初期状態として、冷凍サイクル装置1が運転中であり、かつ、循環ポンプ51が運転され水回路5に水が流れている状態を想定する。ここで、冷凍サイクル装置1は冷房運転を行っているものとする。言い換えると、熱源側熱交換器23は、凝縮器として機能しているものとする。この状態において、制御部40は、水量調整弁11の開度調整を行う。
【0035】
まず、ステップS101では、第1温度センサ12は、熱源側熱交換器23の入口の水配管の温度を測定する。第2温度センサ13は、熱源側熱交換器23の出口の水配管の温度を測定する。温度の測定値は、温度センサ12、13から制御部40に送られる。
【0036】
次に、ステップS102とS103では、制御部40は、熱源側熱交換器23を単位時間当たりに通過する水量を演算する。
【0037】
ステップS102では、制御部40は、水量を演算するための準備として、冷媒の冷媒側能力を演算する。このステップS102の冷媒側能力の演算をより詳細に説明するフローを図3に示す。
【0038】
本実施形態では、制御部40は、冷媒側能力を演算するために、熱源側熱交換器23の入口と出口の比エンタルピ差と、冷媒循環量とを算出する。
【0039】
ステップS1021、S1022では、制御部40は、熱源側熱交換器23の入口と出口の比エンタルピ差を計算する。ステップS1021では、温度センサ14、15は、熱源側熱交換器23の冷媒配管の入口温度および出口温度を測定する。また、圧力センサ18は、凝縮圧力(吐出圧力)を測定する。凝縮圧力を直接測定する代わりに、温度センサ16により熱源側熱交換器23における気液2相状態の冷媒温度(凝縮温度)を測定して、冷媒の物性値を用いて凝縮圧力を推定しても良い。
【0040】
次に、制御部40は、ステップS1021で測定した測定値を用いて、熱源側熱交換器23の入口と出口の比エンタルピ差を演算する(S1022)。より具体的には、次のようにする。まず、制御部40は、熱源側熱交換器23の入口の比エンタルピを冷媒配管の入口温度及び凝縮圧力から、冷媒毎のモリエル線図を用いて算出する。次に、制御部40は、熱源側熱交換器23の出口の比エンタルピを冷媒配管の出口温度及び凝縮圧力から、冷媒毎のモリエル線図を用いて算出する。そして、制御部40は、熱源側熱交換器23の入口と出口の比エンタルピ差を(1)式で求める。
(熱交換器の入口と出口の比エンタルピ差[kJ/kg])=(熱交換器の入口の比エンタルピ[kJ/kg])−(熱交換器の出口の比エンタルピ[kJ/kg])・・・(1)
【0041】
次に、ステップS1023では、制御部40は、冷媒循環量の推定を行う。制御部40は、冷媒循環量の推定のために、予め作成した回帰式を記憶している。回帰式は以下のようにして作成される。冷凍サイクル装置の運転条件を変えて運転を行い、パラメータ値を測定する。パラメータとは、凝縮圧力、蒸発圧力、吸入温度、圧縮機回転数である。凝縮圧力、蒸発圧力については、上記と同様に、それぞれ、凝縮温度、蒸発温度を用いてもよい。回帰式は、これらのパラメータを変化させて実測した冷媒循環量から作成される。ステップS1023においては、制御部40は、これのパラメータ値を測定した結果を用い、予め作成しておいた回帰式に入力し、冷媒循環量[kg/s]を算出する。
【0042】
制御部40は、ステップS1022で算出した熱源側熱交換器23の入口と出口の比エンタルピ差[kJ/kg]と、ステップS1023で求めた冷媒循環量[kg/s]より、(2)式を用いて、冷媒側能力[kW]を演算する(S1024)。
(冷媒側能力[kW])=(冷媒循環量[kg/s])×(熱交換器の入口と出口の比エンタルピ差[kJ/kg])・・・(2)
【0043】
ここまでの測定、演算を行うことにより、制御部40は、ステップS102の冷媒側能力の演算を終える。
【0044】
次に、制御部40は、ステップS101で行った熱源側熱交換器23の入口と出口の水配管の温度の測定値と、ステップS102で行った冷媒側能力の演算結果を用いて、水量の演算を行う。まず、制御部40は、ステップS101で測定した水配管の入口温度から水の物性値を用いて、入口水比熱[kJ/(kg・K)]と入口水密度[kg/m]を求める。制御部40は、同様にして、ステップS101で測定した水配管の出口温度から水の物性値を用いて、出口水比熱[kJ/(kg・K)]と出口水密度[kg/m]を求める。次に、制御部40は、ステップS101で求めた水配管の出口温度[℃]と水配管の入口温度[℃]と、ステップS102で求めた冷媒側能力[kW]を用い、(3)式を用いて、水量[m/s]を計算する。
(水量[m/s])=(冷媒側能力[kW])/((出口水比熱[kJ/(kg・K)])×(出口水密度[kg/m])×(水配管の出口温度[℃])−(入口水比熱[kJ/(kg・K)])×(入口水密度[kg/m])×(水配管の入口温度[℃]))・・・(3)
【0045】
次に、ステップS104では、制御部40は、演算された現在の水量が、水量の許容範囲内か否かを判断する。制御部40は、現在の水量が許容範囲内のときは、ステップS105に進む。水量が許容範囲の上限を超えているときは、ステップS112に進み、水量調整弁11の開度を小さくするように制御して、制御を終了する。制御部40は、水量が許容範囲の下限を下回っているときは、ステップS111に進み、水量調整弁11の開度を大きくするように制御して、制御を終了する。
【0046】
ステップS105に進んだときは、制御部40は、ステップS101で測定した熱源側熱交換器23の入口と出口の水温差が目標範囲内にあるか否かを判断する。制御部40は、測定した水温差が目標範囲内のときは、水量調整弁11の開度を維持(S110)し、制御を終了する。測定した水温差が目標範囲内の上限を超えるときは、制御部40は、水量調整弁11の開度を大きく(S111)し、制御を終了する。制御部40は、測定した水温差が目標範囲内の下限を下回るときは、水量調整弁11の開度を小さく(S112)し、制御を終了する。
【0047】
以上のように、制御部40は、ステップS101〜S110(またはS111、またはS112)を実行することによって、1回の制御を終了する。好ましくは、ステップS104で水量が許容範囲に、かつ、ステップS105で水温差が目標範囲内になり、ステップS110の水量調整弁の開度が保持されるようになるまで、制御部40は、ステップS101〜S110(またはS111、またはS112)を繰り返す。また、制御部40は、ステップS104で水量が許容範囲に、かつ、ステップS105で水温差が目標範囲内になり、ステップS110の水量調整弁の開度が保持されるようになった後であっても、所定時間ごとに、ステップS101〜S110(またはS111、またはS112)を繰り返して、水量調整弁11の開度を適切な状態に保ってもよい。
【0048】
(4)特徴
(4−1)
本実施形態の水量調整装置10は、入口と出口の差圧が所定範囲内になるように回転数制御される循環ポンプ(51)によって、水回路5の水配管中の水を循環させ、冷媒回路(2)を流れる冷媒と、水配管を流れる水との間で熱交換器(23)において熱交換を行わせる冷凍サイクル装置(1)に備えられ、水配管を流れる水量を制御する。水量調整装置10は、水配管を流れる水量を調整する水量調整弁11と、熱交換器23の入口の水配管の温度を測定する第1温度センサ12と、熱交換器23の出口の水配管の温度を測定する第2温度センサ13と、第1温度センサ12の測定温度と第2温度センサ13の測定温度の差に基づいて、水量調整弁11の開度を制御する制御部40とを備える。
【0049】
本実施形態の水量調整装置10は、水量調整弁11で水回路5の水配管の水量を調整することにより、冷凍サイクル装置1の負荷に応じて循環ポンプ51の回転数を間接的に制御でき、装置全体として省エネ性を向上させることができる。
【0050】
また、制御部40は、第1温度センサ12の測定温度と第2温度センサ13の測定温度の差が所定範囲内に入るように水量調整弁11の開度を制御するため、水回路5の水量を適量に制御することができる。
【0051】
また、本実施形態の水量調整弁11の開度の制御は、冷暖房運転のような通常運転時に行われるので、通常運転時に、水回路5の水量を適量に制御することができる。さらに、制御を所定時間おきに繰り返すことにより、通常運転中、水量を適量に保つことができる。
【0052】
(4−2)
本実施形態の水量調整装置10においては、制御部40は、水回路5の水配管を流れる水量が所定範囲内になるように、水量調整弁11の開度を調整する(S104)。この水量は、直接測定したものではなく、演算により算出された(S103)ものである。
【0053】
本実施形態の水量調整装置10は、熱源側熱交換器23の入口と出口の水配管の温度差だけでなく、演算された水量に基づいて、水量調整弁11の開度を調整するので、より適切に、水量を制御できる。また、水量を演算により算出しているため、高価な水量センサを用いる必要がない。
【0054】
(4−3)
さらに、上記水量の演算(S103)は、冷媒の冷媒側能力(S102において演算)に基づいて演算されたものである。
【0055】
言い換えると、冷凍サイクル装置1の熱交換量に依存して水量が演算され、その水量に基づいて、水回路5の水量が制御されるため、より適切に、水量を制御できる。
【0056】
本実施形態においては、冷媒の冷媒側能力は、冷媒の循環量と、熱源側熱交換器23の冷媒入口と出口における比エンタルピ差とに基づいて演算されている(式(2))。
【0057】
(4−4)
本実施形態の水量調整装置10においては、水回路5の水配管を流れる水量が所定範囲内になるように、水量調整弁11の開度を調整(S104)した後で、熱源側熱交換器23の入口と出口の水配管の温度差に基づいて、水量調整弁11の開度を制御する(S105)。このように制御することにより、適切に、水回路5の水配管を流れる水量を制御できる。
【0058】
(5)変形例
(5−1)変形例1A
変形例1Aの水量調整装置10の構成は、第1実施形態と同じである。変形例1Aの水量調整弁11の開度制御方法は、ステップS1023の冷媒循環量の演算方法を除いて、第1実施形態と同じである。変形例1Aの冷媒循環量の演算方法について、説明する。
【0059】
変形例1Aでは、冷媒循環量を算出するパラメータとして、冷凍サイクル装置1の運転状態を示すパラメータと、圧縮機21の特性を示すパラメータとを用いる。
【0060】
冷凍サイクル装置1の運転状態を示すパラメータとして、冷媒の蒸発圧力と圧縮機21への冷媒吸入温度を測定する。まず、冷媒の蒸発圧力と、吸入温度から、冷媒の吸入密度(kg/m)を算出する。次に圧縮機21の特性を示すパラメータとして、容積効率[%]、ピストン押しのけ量[m/rev]を用い、さらに、現在の圧縮機21の回転数[rps]を用いて、(4)式で、冷媒循環量[kg/s]を計算する。
(冷媒循環量[kg/s])=(容積効率[%])×(ピストン押しのけ量[m/rev])×(圧縮機回転数[rps])・・・(4)
【0061】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0062】
1・・・・・・・冷凍サイクル装置
2・・・・・・・冷媒回路
5・・・・・・・水回路
10・・・・・・水量調整装置
11・・・・・・水量調整弁
12・・・・・・第1温度センサ
13・・・・・・第2温度センサ
20・・・・・・熱源ユニット
23・・・・・・熱源側熱交換器
30a、30b・利用ユニット
40・・・・・・制御部
51・・・・・・循環ポンプ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2008−75948号公報
図1
図2
図3