特許第6844716号(P6844716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844716
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】インバータ制御基板
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20210308BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   H02M1/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-554242(P2019-554242)
(86)(22)【出願日】2018年11月14日
(86)【国際出願番号】JP2018042082
(87)【国際公開番号】WO2019098217
(87)【国際公開日】20190523
【審査請求日】2020年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-222220(P2017-222220)
(32)【優先日】2017年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】六浦 圭太
(72)【発明者】
【氏名】仁田 麻衣子
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−039683(JP,A)
【文献】 特開2013−038894(JP,A)
【文献】 特開2017−060371(JP,A)
【文献】 特開2017−060255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42 − 7/98
H02M 1/00 − 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータに接続されて、前記インバータを駆動制御する駆動制御回路が形成されたインバータ制御基板であって、
前記インバータは、交流1相分のアームが、直流の正極に接続される上段側スイッチング素子と、直流の負極に接続される下段側スイッチング素子との直列回路により構成され、
基板上には、回路が配置される領域として、低電圧領域と、前記低電圧領域に比べて動作電圧が高い回路が配置される高電圧領域であって各相の前記上段側スイッチング素子に接続される複数の上段側高電圧領域と、前記高電圧領域であって各相の前記下段側スイッチング素子に接続される複数の下段側高電圧領域と、が形成され、
さらに、前記低電圧領域と、それぞれの前記上段側高電圧領域と、それぞれの前記下段側高電圧領域と、を電気的に絶縁する絶縁領域が形成され、
前記低電圧領域の回路とそれぞれの前記上段側高電圧領域の回路とは、前記絶縁領域を挟んで配置される接続回路であって、電気的に絶縁された状態で信号を伝達する上段側接続回路によって接続され、
前記低電圧領域の回路とそれぞれの前記下段側高電圧領域の回路とは、前記接続回路であって、電気的に絶縁された状態で信号を伝達する下段側接続回路によって接続され、
前記インバータの直流側の電圧を検出する電圧検出回路が、互いに隣り合う前記上段側接続回路と前記下段側接続回路との間に配置されている、インバータ制御基板。
【請求項2】
前記電圧検出回路は、前記下段側高電圧領域における基準電位を基準として、前記インバータの直流側の電圧を検出する請求項1に記載のインバータ制御基板。
【請求項3】
複数相の前記上段側接続回路と前記下段側接続回路とが、一列に並んで配置されている請求項1又は2に記載のインバータ制御基板。
【請求項4】
それぞれの前記上段側接続回路及び前記下段側接続回路は、少なくとも前記低電圧領域から前記高電圧領域へスイッチング制御信号を伝達する駆動回路と、前記駆動回路に電力を供給する駆動電源と、を含み、前記駆動回路と前記駆動電源とは、前記上段側接続回路と前記下段側接続回路との並び方向に沿って並んで配置されている請求項3に記載のインバータ制御基板。
【請求項5】
前記上段側高電圧領域には、前記上段側スイッチング素子のコレクタ端子又はドレイン端子に接続される正極側接続端子が少なくとも配置され、
前記下段側高電圧領域には、前記下段側スイッチング素子のエミッタ端子又はソース端子に接続される負極側接続端子が少なくとも配置され、
それぞれの前記上段側高電圧領域において、前記正極側接続端子は、前記絶縁領域を挟んで隣接する何れか1つの前記下段側高電圧領域の側に配置され、
それぞれの前記下段側高電圧領域において、前記負極側接続端子は、前記絶縁領域を挟んで隣接する何れか1つの前記上段側高電圧領域の側に配置され、
前記電圧検出回路は、前記絶縁領域を挟んで隣接する前記正極側接続端子及び前記負極側接続端子に接続される請求項1から4の何れか一項に記載のインバータ制御基板。
【請求項6】
前記インバータをスイッチング制御するスイッチング制御信号を生成するスイッチング制御信号生成回路が前記低電圧領域に配置され、
前記電圧検出回路は、前記上段側接続回路と前記下段側接続回路との間に位置する複数箇所の内、前記スイッチング制御信号生成回路に最も近い位置に配置されている請求項1から5の何れか一項に記載のインバータ制御基板。
【請求項7】
前記電圧検出回路は、同一相の前記上段側接続回路と前記下段側接続回路との間に配置されている請求項1から6の何れか一項に記載のインバータ制御基板。
【請求項8】
前記電圧検出回路は、直流の正極と負極との間に直列接続された複数の分圧用の抵抗器を備え、複数の前記抵抗器の全てが、前記下段側高電圧領域に配置されている請求項1から7の何れか一項に記載のインバータ制御基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータに接続されて、インバータを駆動制御する駆動制御回路が形成されたインバータ制御基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017−60372号公報には、直流電圧を検出し、検出した電圧に基づいて、直流電力と交流電力との間で電力を変換する電力変換装置(11)が開示されている(図1図8、[0016]〜[0019]、[0047]等参照。)尚、背景技術の説明において括弧内に示す符号は参照する文献のものである。ここで、高電圧バッテリ(12)から供給される直流電圧は、概ね100ボルト以上であり、制御装置(40)の動作電圧(一般的に3.3〜5ボルト程度)に対して、遥かに高電圧である。そこで、検出対象の直流電圧を制御装置(40)の入力可能電圧に変換するための差動増幅回路(20,30)が備えられている。差動増幅回路(20,30)に備えられるオペアンプ(21,31)には、分圧用の複数の抵抗体を介して直流電圧が入力される。例えば、1つの差動増幅回路(20)を構成するオペアンプ(21)の1つの端子には、複数の高抵抗体(23)と1つの低抵抗体(24)とにより、検出対象の直流電圧が分圧された電圧が入力される。
【0003】
複数の高抵抗体(23)は、回路基板(50c)において、電力変換装置(11)を構成するスイッチング素子(SWp1〜SWp4,SWn1〜SWn4)を駆動する駆動回路(Dp1〜DP4,Dn1〜Dn4)が形成された領域の外に配置されている。このため、回路基板(50c)を小型化する上では、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−60372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景に鑑みて、直流と交流との間で電力を変換するインバータの直流側の電圧を検出する検出回路を適切にインバータ制御基板に配置することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様として、上記に鑑みたインバータ制御基板は、直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータに接続されて、前記インバータを駆動制御する駆動制御回路が形成されたインバータ制御基板であって、
前記インバータは、交流1相分のアームが、直流の正極に接続される上段側スイッチング素子と、直流の負極に接続される下段側スイッチング素子との直列回路により構成され、
基板上には、回路が配置される領域として、低電圧領域と、前記低電圧領域に比べて動作電圧が高い回路が配置される高電圧領域であって各相の前記上段側スイッチング素子に接続される複数の上段側高電圧領域と、前記高電圧領域であって各相の前記下段側スイッチング素子に接続される複数の下段側高電圧領域と、が形成され、
さらに、前記低電圧領域と、それぞれの前記上段側高電圧領域と、それぞれの前記下段側高電圧領域と、を電気的に絶縁する絶縁領域が形成され、
前記低電圧領域の回路とそれぞれの前記上段側高電圧領域の回路とは、前記絶縁領域を挟んで配置される接続回路であって、電気的に絶縁された状態で信号を伝達する上段側接続回路によって接続され、
前記低電圧領域の回路とそれぞれの前記下段側高電圧領域の回路とは、前記接続回路であって、電気的に絶縁された状態で信号を伝達する下段側接続回路によって接続され、
前記インバータの直流側の電圧を検出する電圧検出回路が、互いに隣り合う前記上段側接続回路と前記下段側接続回路との間に配置されている。
【0007】
上段側接続回路及び下段側接続回路は、絶縁領域を挟んで低電圧領域の回路と高電圧領域の回路とを接続するように配置されている。つまり、上段側接続回路及び下段側接続回路の一部は、低電圧領域に配置され、他の一部は高電圧領域に配置される。そして、電圧検出回路は、互いに隣り合う上段側接続回路と下段側接続回路との間に配置されている。従って、電圧検出回路の一部は、低電圧領域に配置され、他の一部は高電圧領域に配置される。電圧検出回路においても、低電圧領域に配置される回路と、高電圧領域に配置される回路とを絶縁することが必要な場合があるが、別途絶縁領域を設定しなくても、電圧検出回路の両隣の接続回路が跨ぐ絶縁領域を共用することができる。従って、電圧検出回路をインバータ制御基板に配置しても、インバータ制御基板が大型化することを抑制することができる。即ち、本構成によれば、直流と交流との間で電力を変換するインバータの直流側の電圧を検出する検出回路を適切にインバータ制御基板に配置することができる。
【0008】
インバータ制御基板のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回転電機駆動装置の模式的回路ブロック図
図2】電圧検出回路の模式的回路ブロック図
図3】インバータユニットの模式的な分解斜視図
図4】駆動電源回路の模式的回路ブロック図
図5】駆動回路の構成例を示す模式的ブロック図
図6】電圧検出回路の基板上における配置例を模式的に示す図
図7】電圧検出回路の基板上における配置例を模式的に示す拡大図
図8】電圧検出回路の基板上における他の配置例を模式的に示す図
図9】電圧検出回路の基板上における他の配置例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、回転電機駆動装置に適用される形態を例としてインバータ制御基板の実施形態を図面に基づいて説明する。図1の回路ブロック図は、回転電機駆動装置100のシステム構成を模式的に示している。回転電機駆動装置100は、直流電源11(高圧直流電源)に接続されて直流電力と複数相の交流電力との間で電力を変換するインバータ10を介して回転電機80を駆動する。図1に示すように、インバータ10は、上段側スイッチング素子31と下段側スイッチング素子32との直列回路により構成された交流1相分のアーム3Aを複数本(ここでは3本)備えている。インバータ10は、直流電力を複数相(nを自然数としてn相、ここでは3相)の交流電力に変換して回転電機80に供給する。本実施形態では、回転電機80のU相、V相、W相に対応するステータコイル8のそれぞれに一組の直列回路(アーム3A)が対応したブリッジ回路としてインバータ10が構成されている。
【0011】
尚、回転電機80は、発電機として機能してもよい。回転電機80が発電機としても機能する場合には、回転電機80が発電した交流電力を直流電力に変換して直流電源11に供給する。直流電源11は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されていると好適である。
【0012】
回転電機80は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車等の車両の駆動力源とすることができる。回転電機80が車両の駆動力源の場合、インバータ10の直流側の電圧(直流リンク電圧Vdc)は、例えば200〜400ボルトである。インバータ10の直流側には、回転電機80の消費電力の変動に応じて変動する直流リンク電圧Vdcを平滑化する平滑コンデンサ(直流リンクコンデンサ4)が備えられている。
【0013】
図1に示すように、インバータ10は、複数のスイッチング素子3を有して構成される。スイッチング素子3には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC−MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC−SIT(SiC-Static Induction Transistor)、GaN−MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などのパワー半導体素子を適用すると好適である。図1に示すように、本実施形態では、スイッチング素子3としてIGBTが用いられる形態を例示している。尚、各スイッチング素子3には、負極から正極へ向かう方向(下段側から上段側へ向かう方向)を順方向として、不図示のフリーホイールダイオードが、スイッチング素子3に対して並列に備えられている。
【0014】
尚、スイッチング素子3は、フリーホイールダイオードや素子温度を検出する温度センサ、過電流を検出する過電流センサ等を内蔵したスイッチング素子モジュール3Mとして構成されてもよい(図3参照)。また、スイッチング素子モジュール3Mは、複数のスイッチング素子3を有して構成されてもよい。例えば、2つのスイッチング素子3を備えて1つのアーム3Aがスイッチング素子モジュール3Mとして構成されてもよいし、図3に示すように、6つのスイッチング素子3を備えてインバータ10の全体がスイッチング素子モジュール(インバータモジュール10M)として構成されてもよい。
【0015】
インバータ10は、インバータ制御装置(CTRL)1により制御される。インバータ10のスイッチング素子3をスイッチング制御するスイッチング制御信号SWを生成するスイッチング素子生成回路に相当するインバータ制御装置1は、マイクロコンピュータ等の論理プロセッサを中核部材として構築されている。例えば、インバータ制御装置1は、不図示の車両制御装置などの他の制御装置から提供される回転電機80の目標トルクに基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ10を介して回転電機80を制御する。インバータ10の直流側の電圧(直流リンク電圧Vdc)は、電圧検出回路(DC)6によって検出され、インバータ制御装置1はその検出結果を取得する。回転電機80の各相のステータコイル8を流れる実電流は電流センサ14により検出され、インバータ制御装置1はその検出結果を取得する。また、回転電機80のロータの各時点での磁極位置や回転速度は、レゾルバなどの回転センサ15により検出され、インバータ制御装置1はその検出結果を取得する。
【0016】
インバータ制御装置1は、電圧検出回路6、電流センサ14、回転センサ15の検出結果を用いて、例えばベクトル制御法を用いて電流フィードバック制御を実行する。インバータ制御装置1は、モータ制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。ベクトル制御及び電流フィードバック制御については、公知であるのでここでは詳細な説明は省略する。
【0017】
図2に示すように、電圧検出回路6は、例えば電圧検出IC(DCIC)61などのアナログASSP(Application Specific Standard Product)などを中核として構成されている。このような素子の動作電圧は、一般的に10数ボルト以下(概ね15ボルト以下)程度である。このため、図2に示すように、電圧検出回路6は、直流の正極Pと負極Nとの間に直列接続された複数の抵抗器(分圧抵抗62)を備える。尚、各分圧抵抗62の抵抗値は同一とは限らない。電圧検出IC61は、200〜400ボルトの直流リンク電圧Vdcが抵抗分圧された電圧値(電圧検出IC61の動作電圧未満まで分圧された電圧値)を検出する。分圧比は既知であるから、検出結果を取得したインバータ制御装置1は、検出結果と分圧比とに基づいて直流リンク電圧Vdcの値を演算することができる。図7を参照して後述するように、1つの態様として、電圧検出回路6は、直流の正極Pと負極Nとの間に直列接続された複数の分圧用の抵抗器(分圧抵抗62)を備え、複数の分圧抵抗62の全てが、下段側高電圧領域A32に配置されていると好適である。
【0018】
また、スイッチング制御信号SWを生成するインバータ制御装置1は、マイクロコンピュータなどを中核とした電子回路であり、その動作電圧は、5ボルトや3.3ボルトである。多くの場合、車両には、直流電源11の他に、直流電源11よりも低電圧(例えば12ボルト〜24ボルト)の電源である低圧直流電源(不図示)も搭載されている。インバータ制御装置1は、低圧直流電源の電力に基づいてこのような動作電圧を生成する不図示の電圧レギュレータなどの電源回路から電力を供給されて動作する。インバータ10など、相対的に動作電圧が高い回路を高電圧回路と称し、インバータ制御装置1など、相対的に動作電圧の低い回路を低電圧回路と称する。
【0019】
図3の分解斜視図は、インバータ10とインバータ制御基板9とを含む、インバータユニット90を模式的に示している。ここでは、インバータ10が1つのインバータモジュール10Mとして構成されている形態を例示している。インバータ制御装置1は、インバータ制御基板9の上に形成されており、インバータ制御基板9とインバータモジュール10Mとが電気的に接続されることによって、インバータ制御装置1とインバータ10とが電気的に接続される。詳細は後述するが、インバータ制御基板9には、低電圧回路であるインバータ制御装置1が形成される低電圧領域A1と、高電圧回路であるインバータ10のスイッチング素子3が接続される高電圧領域A3と、両者を電気的に絶縁して分離する絶縁領域A5とが設けられている。
【0020】
ところで、動作電圧が3.3〜5ボルト程度の低電圧回路と、動作電圧が200〜400ボルト程度の高電圧回路とでは、動作電圧が大きく異なる。このため、回転電機駆動装置100には、各スイッチング素子3に対するスイッチング制御信号SW(スイッチング素子3がMOSFETやIGBTの場合、ゲート駆動信号)の電力を増幅する駆動回路2(DRV)が備えられている。換言すれば、駆動回路2は、スイッチング制御信号SWの駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めて、対応するスイッチング素子3に伝達する。
【0021】
駆動回路2は、複数のスイッチング素子3のそれぞれに対応して複数個備えられている。図1に示すように、本実施形態では、インバータ10には駆動対象となるスイッチング素子3が6つ備えられており、それらに対応する駆動回路2も6つ備えられている。駆動回路2は、上段側スイッチング素子31にスイッチング制御信号SWを伝達する上段側駆動回路21と、下段側スイッチング素子32にスイッチング制御信号SWを伝達する下段側駆動回路22とを含むが、特に区別する必要が無い場合は、単に駆動回路2と称する。
【0022】
高電圧回路に属するスイッチング素子3を駆動するため、駆動回路2には低電圧回路よりも高い動作電圧が必要である。駆動回路2に電力を供給するために、駆動電源回路(PW)7が設けられている。図4は、駆動電源回路7の一例を示している。6つのスイッチング素子3及び6つの駆動回路2に対応して、駆動電源回路7は6つのトランスL(駆動電源)を備えている。具体的には、駆動電源回路7は、3つの上段用トランス71(上段用駆動電源:U相上段用トランスL2、V相上段用トランスL4、W相上段用トランスL6)と、3つの下段用トランス72(下段用駆動電源:U相下段用トランスL1、V相下段用トランスL3、W相下段用トランスL5)とを有している。各トランス(L1〜L6)は同じ構成であり、ほぼ同電圧の二次側電圧(出力電圧V2)が出力される尚、各トランスLに共通する一次側電圧(入力電圧V1)は、電圧レギュレータ等による電源回路から供給されると共にフィルタコンデンサCfも備えられており、安定している。このため、二次側の出力電圧V2が一次側にフィードバックされることなく、トランスLの変圧比によって二次側の出力電圧V2が決定されている。
【0023】
本実施形態では、各トランスLの一次側コイルLpは低電圧回路に属し、二次側コイルLsは高電圧回路に属している。つまり、図5に示すように、トランスLは、低電圧領域A1と高電圧領域A3との境界部分に配置され、絶縁状態で低電圧回路と高電圧回路とを接続している。尚、駆動回路2も、図5に示すように、光によって信号を伝達するフォトカプラや磁気によって信号を伝達する磁気カプラなど、電気的に絶縁された状態で信号を伝達する絶縁素子20を備えている。この絶縁素子20も、低電圧領域A1と高電圧領域A3との境界部分に配置されている。
【0024】
図2に示すように、一次側コイルLpには、一次側コイルLpに印加される電圧をスイッチングするトランス駆動用スイッチング素子Mが接続されている。ここでは、プッシュプル型のスイッチング電源回路を例示しており、一次側コイルLpには相補的にスイッチング制御される2つのトランス駆動用スイッチング素子M(トランス駆動用第1スイッチング素子M1,トランス駆動用第2スイッチング素子M2)が接続されている。これらのトランス駆動用スイッチング素子Mは、電源制御回路(PW-CTRL)70によってスイッチング制御される。
【0025】
尚、駆動電源回路7は、ハーフブリッジ方式やフルブリッジ方式のスイッチング電源であってもよい。また、駆動電源回路7の方式は、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、フルブリッジ方式などのように、相補的にスイッチング制御される複数のトランス駆動用スイッチング素子Mを有する方式に限るものでもない。駆動電源回路7は、単一のトランス駆動用スイッチング素子Mにより制御されるシングルフォワード方式やフライバック方式のスイッチング電源であってもよい。
【0026】
上述したように、駆動回路2及び駆動電源回路7は、共に、絶縁領域A5を挟んで低電圧領域A1と高電圧領域A3とに亘って配置されて、電気的に絶縁された状態で信号を伝達する接続回路5と称することができる。尚、この場合の「信号」には、スイッチング制御信号SWや、電圧検出回路6の検出結果、温度センサの検出結果、過電流センサの検出結果などに限らず、電力を伝達する電力信号も含む。
【0027】
また、高電圧領域A3に属する高電圧回路には、上段側スイッチング素子31に対応する回路と、下段側スイッチング素子32に対応する回路とがある。従って、高電圧領域A3は、上段側高電圧領域A31と、下段側高電圧領域A32とを含む(図3図6等参照)。上段側高電圧領域A31は、上段側駆動回路21の一部や上段用トランス71の一部など、上段側スイッチング素子31に対応する回路が配置され、上段側スイッチング素子31が接続される領域である。また、下段側高電圧領域A32は、下段側駆動回路22の一部や下段用トランス72の一部など、下段側スイッチング素子32に対応する回路が配置され、下段側スイッチング素子32が接続される領域である。
【0028】
高電圧領域A3が、上段側高電圧領域A31と下段側高電圧領域A32とを含むため、低電圧領域A1の回路と高電圧領域A3の回路との間で、電気的に絶縁された状態で信号を伝達する接続回路5も、上段側接続回路51と下段側接続回路52とを含む。上段側接続回路51は、上段側駆動回路21及び上段用トランス71を含み、下段側接続回路52は、下段側駆動回路22及び下段用トランス72を含む。低電圧領域A1の回路とそれぞれの上段側高電圧領域A31の回路とは、上段側接続回路51によって接続され、低電圧領域A1の回路とそれぞれの下段側高電圧領域A32の回路とは、下段側接続回路52によって接続される。
【0029】
図6は、電圧検出回路6、駆動電源としてのトランスL(駆動電源回路7)、駆動回路2などのインバータ制御基板9上における配置例を示している。尚、インバータ制御装置1(スイッチング制御信号生成回路)、電圧検出回路6、駆動電源回路7、駆動回路2など、インバータ10を駆動制御する回路を「駆動制御回路」と総称する。つまり、インバータ制御基板9には、インバータ10を駆動制御するために駆動制御回路が形成されている。
【0030】
図6には、図3に示すように、スイッチング素子3が、1列に並ぶ状態でインバータ制御基板9に接続される場合の配置例を示している。このため、基板上において、上段側高電圧領域A31及び下段側高電圧領域A32は、スイッチング素子3の並び方向に沿って交互に一列に並ぶように形成されている。また、全ての上段側高電圧領域A31及び下段側高電圧領域A32は、スイッチング素子3の並び方向(複数の高電圧領域A3の並び方向)に直交する方向において、絶縁領域A5を挟んで低電圧領域A1と隣接している。低電圧領域A1とそれぞれの上段側高電圧領域A31との間には、上段側接続回路51(上段側駆動回路21及び上段用トランス71)が配置され、低電圧領域A1とそれぞれの下段側高電圧領域A32との間には、下段側接続回路52(下段側駆動回路22及び下段用トランス72)が配置されている。
【0031】
電圧検出回路6は、互いに隣り合う上段側接続回路51と下段側接続回路52との間に配置されている。図6に示す形態では、W相上段側高電圧領域W31(上段側高電圧領域A31)と、W相下段側高電圧領域W32(下段側高電圧領域A32)との間に電圧検出回路6が配置されている形態を例示している。ここでは、W相に電圧検出回路6が配置される形態を例示したが、当然ながら電圧検出回路6はU相やV相に配置されてもよい。
【0032】
図6に示すように、各スイッチング素子3に対応する接続回路5(複数相の上段側接続回路51と下段側接続回路52)は、一列に並んで配置されている。隣り合う上段側接続回路51と下段側接続回路52との間に配置されている電圧検出回路6も、接続回路5の並び方向に並んで配置されている。このように、電圧検出回路6、駆動電源回路7、駆動回路2が一列に並んで配置されることにより、効率良くこれらの回路をインバータ制御基板9に配置することができる。
【0033】
図2を参照して上述したように、電圧検出回路6は、直流の正極Pと負極Nとの間に直列接続された複数の分圧抵抗62を備える。電圧検出IC61は、直流リンク電圧Vdcが抵抗分圧された電圧値を検出する。図7は、上段側高電圧領域A31と、下段側高電圧領域A32と、絶縁領域A5とに亘って配置される電圧検出回路6の回路構成を模式的に示している(低電圧領域A1側の回路(伝信号配線等)は省略している)。電圧検出回路6は、上段側高電圧領域A31において正極Pと接続され、下段側高電圧領域A32において負極Nと接続される。電圧検出回路6の基準電位(グラウンド)は、下段側高電圧領域A32の基準電位(負極N)である。このため、図7には、絶縁素子63を備えた電圧検出IC61が、下段側高電圧領域A32と低電圧領域A1とに亘って配置される形態を例示している。また、ここでは、複数の分圧抵抗62の全てが下段側高電圧領域A32に配置される形態を例示しているが、分圧抵抗62の一部が上段側高電圧領域A31に配置されることを妨げるものではない。電圧検出IC61による検出結果は、電圧検出IC61に内蔵された絶縁素子63を介して低電圧領域A1のインバータ制御装置1に伝達される。
【0034】
ところで、インバータ10の直流側は、一般的にバスバーなどによって直流電源11と接続されている。スイッチング素子3がIGBTの場合、上段側スイッチング素子31のコレクタ端子が、正極Pのバスバーに接続され、下段側スイッチング素子32のエミッタ端子が、負極Nのバスバーに接続される。
【0035】
また、図1に示すように、インバータ10の各スイッチング素子3は、スイッチング素子3がIGBTの場合には、ゲート端子(制御端子)とエミッタ端子(基準端子)との間に規定電圧を印加されることによってオン状態となる。つまり、IGBTを用いたスイッチング素子3は、ゲート端子及びエミッタ端子がインバータ制御基板9と接続されれば、スイッチング制御される。つまり、各スイッチング素子3のコレクタ端子は、スイッチング制御のために、インバータ制御基板9と接続されなくてもよい。
【0036】
負極Nは、下段側スイッチング素子32のエミッタ端子に接続されているため、負極Nは、下段側スイッチング素子32のエミッタ端子を介してインバータ制御基板9と接続される。しかし、正極Pは、上段側スイッチング素子31のコレクタ端子に接続されているため、必ずしもインバータ制御基板9とは接続されないことになる。このため、インバータ制御基板9の上段側高電圧領域A31の全て、或いは少なくとも電圧検出回路6が配置される上段側高電圧領域A31には、上段側スイッチング素子31のコレクタ端子が接続される端子(正極側接続端子T1)が設けられている。
【0037】
尚、上記においては、スイッチング素子3がIGBTの場合について説明したが、バイポーラトランジスタの場合には、ゲート端子をベース端子と読み替えれば同様である。また、スイッチング素子3が電界効果トランジスタなどの場合には、エミッタ端子をソース端子、コレクタ端子をドレイン端子と読み替えれば同様である。
【0038】
インバータ制御基板9に電圧検出回路6を配置するため、図7に示すように、上段側高電圧領域A31には、上段側スイッチング素子31のコレクタ端子又はドレイン端子に接続される正極側接続端子T1が少なくとも配置される。また、下段側高電圧領域A32には、下段側スイッチング素子32のエミッタ端子又はソース端子に接続される負極側接続端子T2が少なくとも配置される。好ましくは、それぞれの上段側高電圧領域A31において、正極側接続端子T1は、絶縁領域A5を挟んで隣接する何れか1つの下段側高電圧領域A32の側に配置される。また、それぞれの下段側高電圧領域A32において、負極側接続端子T2は、絶縁領域A5を挟んで隣接する何れか1つの上段側高電圧領域A31の側に配置される。電圧検出回路6は、絶縁領域A5を挟んで隣接する正極側接続端子T1及び負極側接続端子T2に接続される。
【0039】
ところで、図6には、W相上段側高電圧領域W31(上段側高電圧領域A31)と、W相下段側高電圧領域W32(下段側高電圧領域A32)との間に電圧検出回路6が配置されている形態を例示している。つまり、図6には、複数相の内、同一相の上段側接続回路51と下段側接続回路52との間に電圧検出回路6が配置されている形態を例示した。図1に示すように、同一相の上段側スイッチング素子31と下段側スイッチング素子32とは、インバータ10において1つのアーム3Aを構成するため、一般的に近傍に配置される。従って、スイッチング素子3が接続されるインバータ制御基板9上においても、同一相の上段側スイッチング素子31と下段側スイッチング素子32とは、近接して配置されることになる。当然ながら、それぞれのスイッチング素子3に対応する上段側高電圧領域A31及び下段側高電圧領域A32も近接して設けられる。このため、上段側高電圧領域A31と下段側高電圧領域A32との間に配置される電圧検出回路6も効率良くインバータ制御基板9に配置することができる。
【0040】
但し、図3に示すように、インバータ10を構成する全相のスイッチング素子3がほぼ等間隔で直線的に1列に並んで配置され、さらに、その並び方向に沿って上段側スイッチング素子31と下段側スイッチング素子32とが交互に配置されているような場合には、互いに異なる相の上段側接続回路51と下段側接続回路52との間に電圧検出回路6が配置されてもよい。図6に破線で示すように、V相上段側高電圧領域V31(上段側高電圧領域A31)と、W相下段側高電圧領域W32(下段側高電圧領域A32)との間に電圧検出回路6が配置されてもよい。
【0041】
尚、このように互いに異なる相の上段側接続回路51と下段側接続回路52との間に電圧検出回路6が配置可能であるのは、並び方向が直線の場合には限らない。例えば、インバータ10を構成する全相のスイッチング素子3がほぼ等間隔で円周上に並んで配置されている場合にも、適用することができる。
【0042】
また、図6には、接続回路5を構成する駆動回路2とトランスL(駆動電源)とが、並び方向に沿って同じ並び順で並んで配置されている形態を例示した。つまり、図6に例示した形態では、並び方向に沿って、同一相の下段側接続回路52と上段側接続回路51とが、下段側駆動回路22、下段用トランス72、上段側駆動回路21、上段用トランス71の順に配置されている。しかし、駆動回路2とトランスL(駆動電源)とは、図8に例示するように、同一相の上段側接続回路51と下段側接続回路52との間を対称軸として、線対称となるように配置されていてもよい。つまり、並び方向に沿って、同一相の下段側接続回路52と上段側接続回路51とが、下段側駆動回路22、下段用トランス72、上段用トランス71、上段側駆動回路21の順に配置されていてもよい。
【0043】
図4を参照して上述したように、上段用トランス71及び下段用トランス72の一次側の回路は共通である。従って、上段用トランス71と下段用トランス72とを近傍に配置することによって、一次側の回路の配線が長くなることを抑制してインバータ制御基板9の実装効率を向上させることができる可能性がある。
【0044】
スイッチング素子3に駆動回路2の出力が接続されること、並びに図7を参照して説明したような電圧検出回路6の回路構成を考慮して、図8には、V相の上段側駆動回路21とW相の下段側駆動回路22との間に電圧検出回路6が配置される形態を例示している。つまり、図8には、互いに異なる相の上段側接続回路51と下段側接続回路52との間に電圧検出回路6が配置される形態を例示している。しかし、当然ながら図8に破線で示すように、同一相の上段側接続回路51と下段側接続回路52との間に電圧検出回路6が配置される形態を妨げるものではない。
【0045】
ところで、インバータ制御装置1は、電圧検出回路6の検出結果(直流リンク電圧Vdc)、電流センサ14の検出結果(交流電流値)、回転センサ15の検出結果(回転電機80の回転速度及び磁極位置)に基づいて、スイッチング制御信号SWを生成する。電圧検出回路6の検出結果がノイズ等の影響を受けると、スイッチング制御信号SWにも影響する。従って、電圧検出回路6の検出結果をインバータ制御装置1に伝達する基板上の配線などの伝送経路は短い方が好ましい。インバータ制御装置1に近い位置に電圧検出回路6が配置されていると、伝送経路を短くすることができる。
【0046】
図3図6図8等に示すように、インバータ10を構成する全相のスイッチング素子3がほぼ等間隔で直線的に1列に並んで配置され、さらに、その並び方向に沿って上段側スイッチング素子31と下段側スイッチング素子32とが交互に配置されているような場合、上段側接続回路51と下段側接続回路52との間に相当する箇所が複数存在する。図6及び図8に例示しているように、電圧検出回路6は、上段側接続回路51と下段側接続回路52との間に位置する複数箇所の内、インバータ制御装置1に最も近い位置に配置されていると好適である。但し、電圧検出回路6が、インバータ制御装置1との距離に拘わらずに配置されることを妨げるものではない。特に上述したようなノイズの影響が軽微な場合には、他の回路等の配置を優先してもよい。
【0047】
また、上記においては、図3図6図8等に示すように、インバータ10を構成する全相のスイッチング素子3がほぼ等間隔で直線的に1列に並んで配置される形態を例示して説明した。しかし、例えば図9に例示するように、1つのアーム3Aを構成する2つのスイッチング素子3のみが隣り合って配置される形態であってもよい。このような場合にも、図9に示すように、同一相(この場合はU相)の上段側接続回路51(U相上段側高電圧領域U31)と下段側接続回路52(U相下段側高電圧領域U32)との間に電圧検出回路6を配置することができる。
【0048】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明したインバータ制御基板(9)の概要について簡単に説明する。
【0049】
1つの好適な態様として、直流と複数相の交流との間で電力を変換するインバータ(10)に接続されて、前記インバータ(10)を駆動制御する駆動制御回路が形成されたインバータ制御基板(9)は、
前記インバータ(10)は、交流1相分のアーム(3A)が、直流の正極(P)に接続される上段側スイッチング素子(31)と、直流の負極(N)に接続される下段側スイッチング素子(32)との直列回路により構成され、
基板上には、回路が配置される領域として、低電圧領域(A1)と、前記低電圧領域(A1)に比べて動作電圧が高い回路が配置される高電圧領域(A3)であって各相の前記上段側スイッチング素子(31)に接続される複数の上段側高電圧領域(A31)と、前記高電圧領域(A3)であって各相の前記下段側スイッチング素子(32)に接続される複数の下段側高電圧領域(A32)と、が形成され、
さらに、前記低電圧領域(A1)と、それぞれの前記上段側高電圧領域(A31)と、それぞれの前記下段側高電圧領域(A32)と、を電気的に絶縁する絶縁領域(A5)が形成され、
前記低電圧領域(A1)の回路とそれぞれの前記上段側高電圧領域(A31)の回路とは、前記絶縁領域(A5)を挟んで配置される接続回路(5)であって、電気的に絶縁された状態で信号を伝達する上段側接続回路(51)によって接続され、
前記低電圧領域(A1)の回路とそれぞれの前記下段側高電圧領域(A32)の回路とは、前記接続回路(5)であって、電気的に絶縁された状態で信号を伝達する下段側接続回路(52)によって接続され、
前記インバータ(10)の直流側の電圧(Vdc)を検出する電圧検出回路(6)が、互いに隣り合う前記上段側接続回路(51)と前記下段側接続回路(52)との間に配置されている。
【0050】
上段側接続回路(51)及び下段側接続回路(52)は、絶縁領域(A5)を挟んで低電圧領域(A1)の回路と高電圧領域(A3)の回路とを接続するように配置されている。つまり、上段側接続回路(51)及び下段側接続回路(52)の一部は、低電圧領域(A1)に配置され、他の一部は高電圧領域(A3)に配置される。そして、電圧検出回路(6)は、互いに隣り合う上段側接続回路(51)と下段側接続回路(52)との間に配置されている。従って、電圧検出回路(6)の一部は、低電圧領域(A1)に配置され、他の一部は高電圧領域(A3)に配置される。電圧検出回路(6)においても、低電圧領域(A1)に配置される回路と、高電圧領域(A3)に配置される回路とを絶縁することが必要な場合があるが、別途絶縁領域(A5)を設定しなくても、電圧検出回路(6)の両隣の接続回路(5)が跨ぐ絶縁領域(A5)を共用することができる。従って、電圧検出回路(6)をインバータ制御基板(9)に配置しても、インバータ制御基板(9)が大型化することを抑制することができる。即ち、本構成によれば、直流と交流との間で電力を変換するインバータ(10)の直流側の電圧(Vdc)を検出する検出回路(6)を適切にインバータ制御基板(9)に配置することができる。
【0051】
ここで、前記電圧検出回路(6)は、前記下段側高電圧領域(A32)における基準電位を基準として、前記インバータ(10)の直流側の電圧(Vdc)を検出すると好適である。
【0052】
インバータ(10)の基準電位は、下段側スイッチング素子(32)が接続される負極(N)であり、下段側高電圧領域(A32)の回路の基準電位は負極(N)である。また、インバータ(10)の直流側の電圧(Vdc)は、負極(N)に対する正極(P)の電位差である。従って、下段側高電圧領域(A32)における基準電位である負極(N)の電位を基準とすることによって、電圧検出回路(6)は適切にインバータ(10)の直流側の電圧(Vdc)を検出することができる。
【0053】
また、複数相の前記上段側接続回路(51)と前記下段側接続回路(52)とが、一列に並んで配置されていると好適である。
【0054】
この構成によれば、複数相の上段側接続回路(51)と下段側接続回路(52)とが効率良く、インバータ制御基板(9)に配置されることになる。従って、上段側接続回路(51)と下段側接続回路(52)との間に電圧検出回路(6)が配置される場合にも、その場所を確保し易い。
【0055】
また、複数相の前記上段側接続回路(51)と前記下段側接続回路(52)とが、一列に並んで配置されている場合、それぞれの前記上段側接続回路(51)及び前記下段側接続回路(52)は、少なくとも前記低電圧領域(A1)から前記高電圧領域(A3)へスイッチング制御信号(SW)を伝達する駆動回路(2)と、前記駆動回路(2)に電力を供給する駆動電源(L)と、を含み、前記駆動回路(2)と前記駆動電源(L)とは、前記上段側接続回路(51)と前記下段側接続回路(52)との並び方向に沿って並んで配置されていると好適である。
【0056】
多くの場合、接続回路(5)には駆動回路(2)と駆動電源(L)とが含まれる。駆動回路(2)と駆動電源(L)とが、上段側接続回路(51)と下段側接続回路(52)との並び方向に沿って並んで配置されていると、駆動回路(2)及び駆動電源(L)が効率良く、インバータ制御基板(9)に配置されることになる。従って、上段側接続回路(51)と下段側接続回路(52)との間に電圧検出回路(6)が配置される場合にも、その場所を確保し易い。
【0057】
また、インバータ制御基板(9)は、前記上段側高電圧領域(A31)には、前記上段側スイッチング素子(31)のコレクタ端子又はドレイン端子に接続される正極側接続端子(T1)が少なくとも配置され、前記下段側高電圧領域(A32)には、前記下段側スイッチング素子(32)のエミッタ端子又はソース端子に接続される負極側接続端子(T2)が少なくとも配置され、それぞれの前記上段側高電圧領域(A31)において、前記正極側接続端子(T1)は、前記絶縁領域(A5)を挟んで隣接する何れか1つの前記下段側高電圧領域(A32)の側に配置され、それぞれの前記下段側高電圧領域(A32)において、前記負極側接続端子(T2)は、前記絶縁領域(A5)を挟んで隣接する何れか1つの前記上段側高電圧領域(A31)の側に配置され、前記電圧検出回路(6)は、前記絶縁領域(A5)を挟んで隣接する前記正極側接続端子(T1)及び前記負極側接続端子(T2)に接続されると好適である。
【0058】
上段側スイッチング素子(31)のコレクタ端子又はドレイン端子は、インバータ(10)の直流側において直流の正極(P)に接続される。また、下段側スイッチング素子(32)のエミッタ端子又はソース端子は、インバータ(10)の直流側において直流の負極(N)に接続される。上段側スイッチング素子(31)が接続される上段側高電圧領域(A31)に、コレクタ端子又はドレイン端子に接続される正極側接続端子(T1)を設けることによって、インバータ制御基板(9)に直流の正極(P)を接続することができる。同様に、下段側スイッチング素子(32)が接続される下段側高電圧領域(A32)に、エミッタ端子又はソース端子に接続される負極側接続端子(T2)を設けることによって、インバータ制御基板(9)に直流の負極(N)を接続することができる。互いに隣接する上段側接続回路(51)と下段側接続回路(52)との間に配置される電圧検出回路(6)は、互いに隣接する上段側高電圧領域(A31)と下段側高電圧領域(A32)との間に配置されることにもなる。即ち、本構成によれば、電圧検出回路(6)が、互いに接近して配置された正極側接続端子(T1)と負極側接続端子(T2)とに接続されるため、比較的短い接続経路で、電圧検出回路(6)を正極(P)及び負極(N)に接続することができる。
【0059】
また、前記インバータ(10)をスイッチング制御するスイッチング制御信号(SW)を生成するスイッチング制御信号生成回路(1)が前記低電圧領域(A1)に配置され、前記電圧検出回路(6)は、前記上段側接続回路(51)と前記下段側接続回路(52)との間に位置する複数箇所の内、前記スイッチング制御信号生成回路(1)に最も近い位置に配置されていると好適である。
【0060】
スイッチング制御信号生成回路(1)は、電圧検出回路(6)の検出結果を用いて適切なスイッチング制御信号(SW)を生成する。電圧検出回路(6)の検出結果がノイズ等の影響を受けると、スイッチング制御信号(SW)にも影響する。従って、電圧検出回路(6)の検出結果をスイッチング制御信号生成回路(1)に伝達する伝送経路は短い方が好ましい。スイッチング制御信号生成回路(1)に近い位置に電圧検出回路(6)が配置されていると、伝送経路を短くすることができる。
【0061】
また、前記電圧検出回路(6)は、同一相の前記上段側接続回路(51)と前記下段側接続回路(52)との間に配置されていると好適である。
【0062】
同一相の上段側スイッチング素子(31)と下段側スイッチング素子(32)とは、インバータ(10)において1つのアーム(3A)を構成するため、一般的に近傍に配置される。従って、同一相の上段側スイッチング素子(31)及び下段側スイッチング素子(32)に対応する上段側高電圧領域(A31)及び下段側高電圧領域(A32)も多くの場合隣り合って設けられる。このため、上段側高電圧領域(A31)と下段側高電圧領域(A32)との間に配置される電圧検出回路(6)も効率良くインバータ制御基板(9)に配置することができる。
【0063】
また、前記電圧検出回路(6)は、直流の正極(P)と負極(N)との間に直列接続された複数の分圧用の抵抗器(62)を備え、複数の前記抵抗器(62)の全てが、前記下段側高電圧領域(A32)に配置されていると好適である。
【0064】
インバータ(10)の基準電位は、下段側スイッチング素子(32)が接続される負極(N)であり、下段側高電圧領域(A32)の回路の基準電位は負極(N)である。また、インバータ(10)の直流側の電圧(Vdc)は、負極(N)に対する正極(P)の電位差である。従って、下段側高電圧領域(A32)における基準電位である負極(N)の電位を基準とすることによって、電圧検出回路(6)は適切にインバータ(10)の直流側の電圧(Vdc)を検出することができる。また、上段側高電圧領域(A31)に比べて下段側高電圧領域(A32)の電圧は低いため、上段側高電圧領域(A31)に比べて下段側高電圧領域(A32)の方が他の回路との絶縁距離を短くすることができる傾向がある。このため、上段側高電圧領域(A31)に比べて下段側高電圧領域(A32)の方が部品を実装する余裕を持ち易い。従って、複数の抵抗器(62)の全てが、下段側高電圧領域(A32)に配置されているとインバータ制御基板(9)に適切に電圧検出回路(6)を配置することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 :インバータ制御装置(スイッチング制御信号生成回路)
2 :駆動回路
21 :上段側駆動回路
22 :下段側駆動回路
3 :スイッチング素子
3A :アーム
31 :上段側スイッチング素子
32 :下段側スイッチング素子
5 :接続回路
51 :上段側接続回路
52 :下段側接続回路
6 :電圧検出回路
62 :分圧抵抗(分圧用の抵抗器)
7 :駆動電源回路
9 :インバータ制御基板
10 :インバータ
A1 :低電圧領域
A3 :高電圧領域
A31 :上段側高電圧領域
A32 :下段側高電圧領域
A5 :絶縁領域
L :トランス(駆動電源)
N :負極
P :正極
SW :スイッチング制御信号
T1 :正極側接続端子
T2 :負極側接続端子
Vdc :直流リンク電圧(インバータの直流側の電圧)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9