(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラが前記冷媒サイクルに前記油戻し運転を実行させている際に、前記判断部が前記油戻し運転を継続しないと判断する場合、前記コントローラは前記圧縮機を停止させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の空調システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
空調システムにおいて、電源が遮断された室内機に対して電源を供給するために、給電ユニットが設置されることがある。しかし、そのような給電ユニットが供給できる電力には制限がある。室外ユニットにおける圧縮機の破損、又は、室内ユニットにおけるドレン水のあふれなどの問題が発生するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点に係る空調システムは、冷媒サイクルと、給電ユニットと、コントローラと、判断部と、を備える。冷媒サイクルは、室外ユニット、及び複数の室内ユニットを含む。室外ユニットは、圧縮機を含む。給電ユニットは、複数の室内ユニットの少なくとも一部への電源が遮断される場合に、少なくとも一部へ補助電源の供給を行う。コントローラは、少なくとも圧縮機を制御する。判断部は、複数の室内ユニットの少なくとも一部への電源が遮断される場合に、圧縮機を停止させる、及び、圧縮機に運転を継続させる、の一方の判断を行う。判断部は、判断に対応する指令をコントローラに送る。
【0005】
第2観点に係る空調システムは、第1観点に係る空調システムにおいて、判断部が、圧縮機が吸入する冷媒の湿り度合又は湿り度合いの予測、及び、複数の室内ユニットの少なくとも一部におけるドレン水量又はドレン水量の予測、の少なくとも一方に基づいて判断を行う。
【0006】
第3観点に係る空調システムは、第2観点に係る空調システムにおいて、判断部が、複数の室内ユニットの少なくとも一部におけるドレン水量又はドレン水量の予測、及び、給電ユニットの給電容量、に基づいて判断を行う。
【0007】
第4観点に係る空調システムは、第1観点から第3観点のいずれか1つに係る空調システムにおいて、コントローラが、少なくとも圧縮機に、冷媒サイクルにおける油戻し運転又はデフロスト運転を実行させる。判断部は、給電ユニットが少なくとも一部に補助電源を供給する場合において、油戻し運転又はデフロスト運転を継続するか否かを判断する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の空調システム。
【0008】
第5観点に係る空調システムは、第4観点に係る空調システムにおいて、コントローラが冷媒サイクルに油戻し運転を実行させている際に、判断部が油戻し運転を継続しないと判断する場合、コントローラは圧縮機を停止させる。
【0009】
第6観点に係る空調システムは、第5観点に係る空調システムにおいて、コントローラは、圧縮機が吸入する冷媒の湿り度合に基づいて、圧縮機を停止させる。
【0010】
第7観点に係る空調システムは、第4観点に係る空調システムにおいて、複数の室内ユニットの各々は膨張弁を含む。コントローラは、複数の室内ユニットを少なくとも2つのグループに分ける。コントローラが冷媒サイクルに油戻し運転を実行させている際に、判断部が油戻し運転を継続すると判断する場合、コントローラは、第1グループ閉鎖制御と、第2グループ閉鎖制御と、を順に実行する。第1グループ閉鎖制御では、第1グループに属する室内ユニットの膨張弁を閉じ、かつ、第2グループに属する室内ユニットの膨張弁を開ける。第2グループ閉鎖制御では、第1グループに属する室内ユニットの膨張弁を開け、かつ、第2グループに属する室内ユニットの膨張弁を閉じる。
【0011】
第8観点に係る空調システムは、第4観点から第7観点のいずれか1つに記載の空調システムにおいて、室外ユニットは、四路切換弁をさらに含む。コントローラが冷媒サイクルにデフロスト運転を実行させている際に、判断部がデフロスト運転を継続しないと判断する場合、コントローラは圧縮機を停止させる。
【0012】
第9観点に係る空調システムは、第7観点に係る空調システムにおいて、室外ユニットは、四路切換弁をさらに含む。コントローラが冷媒サイクルにデフロスト運転を実行させている際に、判断部がデフロスト運転を継続すると判断する場合、コントローラは四路切換弁を切り替える。
【0013】
第10観点に係る空調システムは、第9観点に係る空調システムにおいて、コントローラが四路切換弁を切り替える際、複数の膨張弁の少なくとも1つが開かれており、圧縮機は運転している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)空調システム100の構成
図1は、本実施形態の空調システム100の概略構成図である。空調システム100は、家屋、ビル、工場又は公共施設等の建物内に含まれる対象空間において冷房及び暖房等の空気調和を実現するシステムである。
【0016】
空調システム100は、冷媒が循環する冷媒回路RCを含む。空調システム100は、冷媒回路RCにおいて冷媒を循環させて蒸気圧縮方式の冷凍サイクルを行うことにより、対象空間の冷房又は暖房を行う。冷媒回路RCには、R410A、R32又はアンモニア等の冷媒が封入されている。
【0017】
空調システム100は、主として、熱源ユニットとしての1台の室外ユニット10と、利用ユニットとしての複数台(
図1では3台)の室内ユニット30(30a,30b,30c)と、1台の給電ユニット40と、複数台(
図1では3台)のリモコン50と、コントローラ60とを備えている。空調システム100の冷媒回路RCは、室外ユニット10と各室内ユニット30とがガス連絡配管GP及び液連絡配管LPによって接続されることで構成されている。言い換えると、空調システム100は、同一冷媒系統に複数の室内ユニット30が接続された、マルチタイプ(マルチテナント)の空調システムである。
【0018】
(1−1)室外ユニット10
室外ユニット10は、室外(対象空間外)に設置される室外機である。室外ユニット10は、主として、複数の冷媒配管(第1配管P1〜第5配管P5)と、圧縮機11と、四路切換弁12と、室外熱交換器13と、室外ファン15と、室外ユニット制御部17と、判断部90と、を有している。
【0019】
第1配管P1は、ガス連絡配管GPと四路切換弁12とを接続する冷媒配管である。第2配管P2は、四路切換弁12と圧縮機11の吸入ポート(図示省略)とを接続する吸入配管である。第3配管P3は、圧縮機11の吐出ポート(図示省略)と四路切換弁12とを接続する吐出配管である。第4配管P4は、四路切換弁12と室外熱交換器13のガス側とを接続する冷媒配管である。第5配管P5は、室外熱交換器13の液側と液連絡配管LPとを接続する冷媒配管である。
【0020】
圧縮機11は、低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮して吐出する機構である。圧縮機11は、圧縮機モータ11aが内蔵された密閉式の構造を有している。圧縮機11では、圧縮機ケーシング(図示省略)内に収容されたロータリ式又はスクロール式等の圧縮要素(図示省略)が、圧縮機モータ11aを駆動源として駆動される。圧縮機モータ11aは、運転中、インバータ制御され、状況に応じて回転数が調整される。圧縮機11は、駆動時に、吸入ポートから冷媒を吸入し、圧縮し、吐出ポートから吐出する。
【0021】
四路切換弁12は、冷媒回路RCにおいて冷媒の流れる方向を切り換えるための弁である。四路切換弁12は、第1配管P1、第2配管P2、第3配管P3及び第4配管P4と個別に接続されている。四路切換弁12は、冷房運転時には、第1配管P1と第2配管P2とが接続されるとともに、第3配管P3と第4配管P4とが接続されるように、流路を切り換える(
図1の四路切換弁12の実線を参照)。四路切換弁12は、暖房運転時には、第1配管P1と第3配管P3とが接続されるとともに、第2配管P2と第4配管P4とが接続されるように、流路を切り換える(
図1の四路切換弁12の破線を参照)。
【0022】
室外熱交換器13は、冷房運転時には冷媒の凝縮器又は放熱器として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器又は吸熱器として機能する熱交換器である。室外熱交換器13は、冷媒が流れる伝熱管(図示省略)と、伝熱面積を増大する伝熱フィン(図示省略)とを含む。室外熱交換器13は、運転時において、伝熱管内の冷媒と、室外ファン15によって生成される空気流とが熱交換可能なように配置されている。
【0023】
室外ファン15は、例えばプロペラファンである。室外ファン15は、室外ファンモータ15aの出力軸に接続されており、室外ファンモータ15aに連動して駆動する。室外ファン15は、駆動すると、外部から室外ユニット10内に流入し室外熱交換器13を通過してから室外ユニット10外へ流出する空気流を生成する。
【0024】
室外ユニット制御部17は、CPU及びメモリ等から構成されるマイクロコンピュータである。室外ユニット制御部17は、室外ユニット10の各アクチュエータの動作を制御する。室外ユニット制御部17は、各室内ユニット30の室内ユニット制御部34(後述)と、通信線cb1,cb2及び給電ユニット40を介して接続されており、相互に信号の送受信を行う。
【0025】
判断部90は、CPU及びメモリ等から構成されるマイクロコンピュータである。判断部90は、室外ユニット制御部17と通信可能である。判断部90は、給電ユニット40が作動する場合において、油戻し運転又はデフロスト運転を継続するか否かを判断する。判断部90の動作については後述する。
【0026】
(1−2)室内ユニット30
室内ユニット30(30a,30b,30c)は、対象空間に設置される室内機である。室内ユニット30は、室外ユニット10とともに冷媒回路RCを構成している。室内ユニット30は、主として、室内熱交換器31と、膨張弁32(32a,32b,32c)と、室内ファン33と、室内ユニット制御部34とを有している。
【0027】
室内熱交換器31は、冷房運転時には冷媒の蒸発器又は吸熱器として機能し、暖房運転時には冷媒の凝縮器又は放熱器として機能する熱交換器である。室内熱交換器31は、例えばクロスフィンチューブ熱交換器である。室内熱交換器31の液側は、膨張弁32(32a,32b,32c)まで延びる冷媒配管に接続されている。室内熱交換器31のガス側は、ガス連絡配管GPまで延びる冷媒配管に接続されている。室内熱交換器31は、運転時において、伝熱管(図示省略)内の冷媒と、室内ファン33によって生成される空気流とが熱交換可能なように配置されている。
【0028】
膨張弁32(32a,32b,32c)は、開度調整が可能な電動弁である。膨張弁32は、運転時において、状況に応じて開度が適宜調整され、開度に応じて冷媒を減圧する。各室内ユニット30は、1つの膨張弁32を有している。具体的には、室内ユニット30aは、膨張弁32aを有し、室内ユニット30bは、膨張弁32bを有し、室内ユニット30cは、膨張弁32cを有している。膨張弁32a,32b,32cは、それぞれ、対応する室内ユニット30a,30b,30cの運転状況に応じて開度が適宜調整される。
【0029】
膨張弁32は、室内熱交換器31の液側まで延びる冷媒配管、及び、液連絡配管LPまで延びる冷媒配管に接続されている。液連絡配管LPは、室外ユニット10の第5配管P5と、各膨張弁32とを接続する。液連絡配管LPの一端は、第5配管P5と接続され、液連絡配管LPの他端は、膨張弁32の数に応じて分岐して各膨張弁32と個別に接続されている。
【0030】
室内ファン33は、例えばターボファン、シロッコファン、クロスフローファン又はプロペラファン等の送風機である。室内ファン33は、室内ファンモータ33aの出力軸に接続されている。室内ファン33は、室内ファンモータ33aに連動して駆動する。室内ファン33は、駆動すると、室内ユニット30内に吸い込まれて室内熱交換器31を通過した後に対象空間へと吹き出される空気流を生成する。
【0031】
室内ユニット制御部34は、CPU及びメモリ等から構成されるマイクロコンピュータである。室内ユニット制御部34は、室内ユニット30の各アクチュエータの動作を制御する。各室内ユニット制御部34は、室外ユニット制御部17と、通信線cb1,cb2及び給電ユニット40を介して接続されており、相互に信号の送受信を行う。室内ユニット制御部34は、リモコン50と無線通信を行う。
【0032】
室内ユニット30の室内ユニット制御部34は、当該室内ユニット30の膨張弁32と通信線(図示省略)を介して接続されており、当該膨張弁32の開度を調整することができる。
【0033】
(1−3)給電ユニット40
給電ユニット40は、室外ユニット制御部17及び各室内ユニット制御部34と、通信線cb1,cb2を介して接続されている。具体的には、通信線cb1は、給電ユニット40と室外ユニット制御部17とを接続しており、通信線cb2は、室内ユニット制御部34の数に応じて分岐し、給電ユニット40と各室内ユニット制御部34とを接続している。通信線cb1は、給電ユニット40を介して通信線cb2に接続されている。
【0034】
各室内ユニット30は、建物に設置されている外部の商用電源(図示省略)に接続されている。室内ユニット30は、正常運転時には商用電源から供給された電力によって稼動している。給電ユニット40は、複数の室内ユニット30の少なくとも一部への商用電源が遮断された場合、言い換えると、少なくとも1つの室内ユニット30への商用電源からの電力供給が停止した場合に、商用電源(以下、単に「電源」と呼ぶ。)が遮断された室内ユニット30に電力を供給するための補助電源である。通信線cb2は、室外ユニット制御部17と各室内ユニット制御部34との間で送受信される信号の他に、給電ユニット40から各室内ユニット30に供給される電力を伝送する。
【0035】
(1−4)リモコン50
リモコン50は、CPU及びメモリ等から構成されるマイクロコンピュータを含むリモコン制御部(図示省略)と、空調システム100へ各種コマンドを入力するための入力キーを含むリモコン入力部(図示省略)とを有するデバイスである。
【0036】
空調システム100は、室内ユニット30と同数のリモコン50を有している。リモコン50は、いずれかの室内ユニット30と一対一で対応づけられている。リモコン50は、対応する室内ユニット30の室内ユニット制御部34と、赤外線及び電波等を用いて無線通信を行う。リモコン50は、ユーザ及び管理者等によってリモコン入力部へコマンドが入力されると、入力されたコマンドに応じて、所定の信号を室内ユニット制御部34に送信する。
【0037】
(1−5)コントローラ60
空調システム100では、室外ユニット10の室外ユニット制御部17と、各室内ユニット30(30a,30b,30c)の室内ユニット制御部34とが通信線cb1,cb2及び給電ユニット40を介して接続されることで、コントローラ60が構成されている。コントローラ60は、空調システム100の動作を制御する。
【0038】
(2)空調システム100の運転
いずれかのリモコン50に運転開始コマンドが入力され、コントローラ60によって冷房運転又は暖房運転に係る制御が実行されると、四路切換弁12が所定の状態に切り換えられ、圧縮機11及び室外ファン15が起動する。その後、運転開始コマンドが入力されたリモコン50に対応する室内ユニット30が運転状態(室内ファン33が稼動している状態)となる。
【0039】
(2−1)冷房運転
冷房運転時には、四路切換弁12が冷房サイクル状態(
図1の四路切換弁12の実線で示された状態)に切り換えられる。この状態で各アクチュエータが起動すると、冷媒が、第2配管P2を介して圧縮機11に吸入され、圧縮される。圧縮機11から吐出された冷媒は、第3配管P3、四路切換弁12、及び第4配管P4を通過して室外熱交換器13に流入する。
【0040】
室外熱交換器13に流入した冷媒は、室外ファン15が生成する空気流と熱交換して凝縮(又は放熱)する。室外熱交換器13から流出した冷媒は、第5配管P5及び液連絡配管LPを通過して、各室内ユニット30に流入する。
【0041】
室内ユニット30に流入した冷媒は、膨張弁32に流入する。膨張弁32に流入した冷媒は、膨張弁32の開度に応じて減圧される。膨張弁32から流出した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内ファン33によって生成される空気流と熱交換して蒸発(又は吸熱)する。室内熱交換器31から流出した冷媒は、ガス連絡配管GPを通過して室外ユニット10に流入する。
【0042】
室外ユニット10に流入した冷媒は、第1配管P1、四路切換弁12、及び第2配管P2を通過して、再び圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0043】
(2−2)暖房運転
暖房運転時には、四路切換弁12が暖房サイクル状態(
図1の四路切換弁12の破線で示された状態)に切り換えられる。この状態で各アクチュエータが起動すると、冷媒が、第2配管P2を介して圧縮機11に吸入され、圧縮される。圧縮機11から吐出された冷媒は、第3配管P3、四路切換弁12、第1配管P1及びガス連絡配管GPを通過して各室内ユニット30に流入する。
【0044】
室内ユニット30に流入した冷媒は、室内熱交換器31に流入し、室内ファン33が生成する空気流と熱交換して凝縮(又は放熱)する。室内熱交換器31から流出した冷媒は、膨張弁32に流入し、膨張弁32の開度に応じて減圧される。膨張弁32から流出した冷媒は、液連絡配管LPを通過して室外ユニット10に流入する。
【0045】
室外ユニット10に流入した冷媒は、第5配管P5を通過して室外熱交換器13に流入する。室外熱交換器13に流入した冷媒は、室外ファン15によって生成される空気流と熱交換して蒸発(または吸熱)する。室外熱交換器13から流出した冷媒は、第4配管P4、四路切換弁12、及び第2配管P2を通過して、再び圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0046】
(2−3)油戻し運転
油戻し運転は、冷媒回路RC内に分散した潤滑油を、圧縮機11の中へ戻すために、冷媒を循環させるものである。油戻し運転においては、冷媒を循環させるため、膨張弁32が開かれる。油戻し運転時には、室内ファン33を停止させてもよい。
【0047】
(2−4)デフロスト運転
デフロスト運転は、暖房運転に起因して室外熱交換器13に生じた霜を、融解させるものである。デフロスト運転時には、四路切換弁12を冷房サイクル状態に切り換える。デフロスト運転時には、室内ファン33を停止させる。
【0048】
(3)通常制御モードとM/T制御モード
図2は、空調システム100全体の運転の制御フローを表す。
図2に示されるように、空調システム100全体は、通常制御モード、又は、マルチテナント制御モード(以下、「M/T制御モード」と呼ぶ。)で運転する。
【0049】
通常制御モードでは、1台の室外ユニットと1台の室内ユニットとからなる従来のシステムでも採用されている、通常時における運転制御が行われる。通常制御モードでは、空調システム100の全ての室内ユニット30の電源は遮断されておらず、外部の電源から電力の供給を受けている。通常制御モードでは、空調システム100は、リモコン50の操作等によって、空調運転を開始して停止状態から定常状態(通常時における運転制御が行われている状態)に移行したり、空調運転を停止して定常状態から停止状態に移行したりする。定常状態から停止状態に移行する際には、必要に応じて、油戻し運転及びデフロスト運転が行われる。
【0050】
通常制御モードで運転している空調システム100は、室内ユニット30の少なくとも一部の電源が遮断された場合、M/T制御モードに移行する(
図2の実線の矢印を参照)。M/T制御モードでは、少なくとも1台の室内ユニット30は、電源が遮断されて運転停止状態となっている。M/T制御モードでは、電源が遮断された室内ユニット30(以下、「電源遮断室内ユニット30」と呼ぶ)は、給電ユニット40から補助電力の供給を受ける。
【0051】
(4)M/T制御モードの詳細
各運転において電源遮断室内ユニット30が発生した場合のコントローラ60及び判断部90の動作について説明する。
【0052】
(4−1)油戻し運転
図3は、油戻し運転中に電源遮断室内ユニット30が発生した場合のM/T制御モードのフローチャートである。判断部90は、油戻し運転を継続するか否かを、電源遮断室内ユニット30の数、油戻し運転の残り所要時間、給電ユニットの給電可能電力、などに基づいて判断する(S101)。
【0053】
判断部90が、油戻し運転を継続すると判断した場合(S101:YES)、コントローラ60は油戻し運転を継続する(S102)。一方、判断部90が、油戻し運転を継続しないと判断した場合(S101:NO)、コントローラ60は圧縮機11が吸入する冷媒の湿り度合を取得する(S103)。
【0054】
次いで、コントローラ60は、取得した冷媒の湿り度合に基づいて、圧縮機11を停止させるか否かを決定する(S104)。コントローラ60が圧縮機11を停止させないと判断した場合(S104:NO)、コントローラ60は、ステップS103へ戻る。一方、コントローラ60が圧縮機11を停止させると判断した場合(S104:YES)、コントローラは圧縮機11を停止させる。
【0055】
(4−2)デフロスト運転
図4は、デフロスト運転中に電源遮断室内ユニット30が発生した場合のフローチャートである。判断部90は、デフロストを継続するか否かを、電源遮断室内ユニット30の数、デフロスト運転の残り所要時間、給電ユニットの給電可能電力などに基づいて判断する(S201)。
【0056】
判断部90が、デフロスト運転を継続すると判断した場合(S201:YES)、コントローラ60はデフロスト運転を継続する(S202)。一方、判断部90が、デフロスト運転を継続しないと判断した場合(S201:NO)、コントローラ60は圧縮機11を停止させる。
【0057】
なお、デフロスト運転を継続する場合(S202)、通常制御モードと同様のデフロスト運転が行われる。例えば、暖房運転中においてまず膨張弁32が閉じられ、次いで四路切換弁12が冷房サイクル状態に切り換えられる。次いで、膨張弁32が開けられる。こうすることで、四路切換弁の切換による騒音がユーザに聞こえる事態を抑制できる。
【0058】
(5)特徴
(5−1)
判断部90が、油戻し運転又はデフロスト運転を継続するか否かを判断する。したがって、油戻し運転又はデフロスト運転の実行中に、電源遮断室内ユニット30が発生した場合であっても、空調システム100が損傷しないと考えられる場合は、油戻し運転又はデフロスト運転を実行し続けることができる。
【0059】
(5−2)
判断部90が油戻し運転又はデフロスト運転を継続しないと判断する場合、コントローラ60は圧縮機11を停止させる。したがって、電源遮断室内ユニット30の発生時に空調システム100全体の運転を停止することにより、空調システム100の損傷を抑制することができる。
【0060】
(5−3)
コントローラ60は、圧縮機11が吸入する冷媒の湿り度合に基づいて圧縮機11を停止させる。したがって、圧縮機11が多量の液冷媒を吸入することを抑制し、圧縮機11の損傷を低減できる。
【0061】
(6)変形例
以下に上述の実施形態の変形例について説明する。複数の実施形態を組み合わせてもよい。
【0062】
(6−1)変形例A
上記実施形態では、電源遮断室内ユニット30の発生時に油戻し運転を継続する場合、すべての室内ユニット30(30a〜30c)について同時に油戻し運転を行う。これに代えて、室内ユニット30を複数のグループに分け、それぞれのグループに対して順次油戻し運転を実行してもよい。
図5では、室内ユニット30は第1グループG1(30a、30b)及び第2グループ(30c)に分けられる。
【0063】
図6に示すように、判断部90が油戻し運転を継続すると判断する場合(S101:YES)、コントローラ60は第1グループ閉鎖制御(S102−1)を実行する。第1グループ閉鎖制御では、第1グループG1に属する室内ユニット30(30a、30b)の膨張弁32(32a、32b)が閉じられるとともに、第2グループG2に属する室内ユニット30(30c)の膨張弁32(32c)が開けられる。この状態で、油戻し運転が実行される。
【0064】
次いで、コントローラ60は第2グループ閉鎖制御(S102−2)を実行する。第2グループ閉鎖制御では、第1グループG1に属する室内ユニット30(30a、30b)の膨張弁32(32a、32b)が開けられるとともに、第2グループG2に属する室内ユニット30(30c)の膨張弁32(32c)が閉められる。この状態で、油戻し運転が実行される。
【0065】
(6−2)変形例B
上記実施形態では、電源遮断室内ユニット30の発生時にデフロスト運転を継続する場合、通常制御モードと同様のデフロスト運転を実行する。これに代えて、M/T制御モードにおいては通常制御モードとは異なるデフロスト運転を実行してもよい。
【0066】
例えば、
図7に示すように、暖房運転中に判断部90がデフロスト運転を継続すると判断する場合(S201:YES)、コントローラ60は、室内ユニット30の膨張弁を開いたまま、四路切換弁12を冷房サイクル状態に切り換える(S202−1)。
【0067】
この構成によれば、騒音処理のために膨張弁を閉じる動作が省かれるので、給電ユニット40が膨張弁32に供給する電力が少なくてすむ。
【0068】
(6−3)変形例C
室外ユニット10は、
図1に示されていない他の構成要素をさらに有してもよい。
図8は、本変形例における空調システム100の概略構成図である。
図8において、室外ユニット10は、オイルセパレータ14、膨張弁16、レシーバ18及びアキュームレータ19をさらに有する。
【0069】
オイルセパレータ14は、第3配管P3に取り付けられる。オイルセパレータ14は、圧縮機11から吐出された高圧のガス冷媒から、冷媒の中に混入している潤滑油を除去する。
【0070】
膨張弁16は、第5配管P5に取り付けられる。膨張弁16は、開度調整が可能な電動弁である。膨張弁16は、空調システム100の運転時において、状況に応じて開度が適宜調整され、開度に応じて冷媒を減圧する。
【0071】
レシーバ18は、第5配管P5に取り付けられる。レシーバ18は、膨張弁16と液連絡配管LPとの間に取り付けられる。レシーバ18は、空調システム100の運転状況に応じて、室外熱交換器13及び室内熱交換器31内の冷媒量の変化を吸収するために、冷媒を一時的に貯留する。レシーバ18は、冷媒回路RCを循環する冷媒に含まれる水分及び異物を除去するための機構を有してもよい。
【0072】
アキュームレータ19は、第2配管P2に取り付けられる。アキュームレータ19は、冷媒回路RCを流れる気液混合冷媒を、ガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを圧縮機11の吸入ポートに送る。
【0073】
なお、
図8において、室外ユニット10は、レシーバ18又はアキュームレータ19を有していなくてもよい。
【0074】
実施形態及び変形例A〜Bにおいて説明した内容は、
図8に示される空調システム100においても適用可能である。
【0075】
(6−4)変形例D
図9は変形例Dに係る空調システム100の動作である。
【0076】
いかなる運転中であれ、電源遮断室内ユニット30が発生した場合に、M/T制御モードは開始する(S300)。次いで、コントローラ60は圧縮機11が吸入する冷媒の湿り度合を取得する(S301)。次いで、判断部90は、取得した冷媒の湿り度合、又は、それに基づく湿り度合いの将来的な予測が異常であるか否かを判断する(S302)。異常である場合(S302:YES)、判断部90はコントローラ60に対し、圧縮機11を停止させる旨の指令を送る(S305)。これは、圧縮機11の破損を防ぐためである。湿り度合い等が正常である場合(S302:NO)、コントローラ60は、電源遮断室内ユニット30の膨張弁の開度の情報を取得する(S303)。判断部90は、取得した開度の情報から、電源遮断室内ユニット30おけるドレン水量、又はドレン水量の将来的な予測を導出する。次いで、判断部90は、導出された値に基づいて、電源遮断室内ユニット30においてドレン水があふれるおそれの有無を判断する(S304)。ドレン水あふれのおそれがある場合(S304:YES)、判断部90はコントローラ60に対し、圧縮機11を停止させる旨の指令を送る(S305)。これは、電源遮断室内ユニット30においてドレン水をあふれさせないためである。ドレン水あふれのおそれがない場合(S304:NO)、これまでに説明した実施形態又は変形例におけるステップS100又はステップS200へ移行する。
【0077】
実施形態及び変形例A〜Cにおいて説明した内容は、
図9のフローチャートを用いて説明した空調システム100においても適用可能である。
【0078】
<むすび>
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。