特許第6844737号(P6844737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6844737活性エネルギー線硬化型コーティング剤、硬化物、及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6844737
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型コーティング剤、硬化物、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20210308BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20210308BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20210308BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20210308BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20210308BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20210308BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210308BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C09D4/02
   C09D183/07
   C09D171/00
   C09D7/61
   C09D127/12
   B05D3/06 Z
   B05D7/24 301T
   B05D7/24 302P
   B05D7/24 302Y
   B05D7/24 302L
   B05D7/24 303H
   B05D7/24 303A
   B32B27/16 101
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-121783(P2020-121783)
(22)【出願日】2020年7月16日
【審査請求日】2020年7月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中橋 和之
(72)【発明者】
【氏名】大江 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁宣
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 浩壽
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−133843(JP,A)
【文献】 特開2009−029979(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/017396(WO,A1)
【文献】 特開平08−244178(JP,A)
【文献】 特開2010−254950(JP,A)
【文献】 特開2010−143092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 4/02
B05D 3/06
B05D 7/24
B32B 27/16
C09D 127/12
C09D 183/07
C09D 171/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)、
中空粒子(B)、
エチレン性不飽和基含有ポリシロキサン(C)及び
(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテル(D)
を含む活性エネルギー線硬化型コーティング剤。
【請求項2】
水酸基と反応可能な基及び少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含有する化合物と水酸基含有フッ素重合体とを反応させて得られるエチレン性不飽和基含有フッ素重合体(E)を含む請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型コーティング剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物。
【請求項4】
基材と請求項3に記載の硬化物を有する積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は活性エネルギー線硬化型コーティング剤、硬化物、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、パーソナルコンピュータ等の表示装置として、液晶表示装置が使用されている。かかる液晶表示装置において、外光の映りを防止して画質を向上させるために、低屈折率層を含有する反射防止膜を使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−085383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の液晶表示装置に使用される反射防止膜のうち樹脂、シリカ粒子、表面改質剤を含むコーティング剤を硬化させるものは、表面改質剤を膜表面に遍在させることが十分にできておらず、表面改質剤の効果を十分に発揮させることができていなかった。
【0005】
本開示で解決しようとする課題は、表面改質剤の効果を良好に奏することのできる活性エネルギー線硬化型コーティング剤、硬化物、及び積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討の結果、所定の活性エネルギー線硬化型コーティング剤によって、上記課題が解決されることを見出した。なお、本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0007】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)、
中空粒子(B)、
エチレン性不飽和基含有ポリシロキサン(C)及び
(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテル(D)
を含む活性エネルギー線硬化型コーティング剤。
(項目2)
水酸基と反応可能な基及び少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含有する化合物と水酸基含有フッ素重合体とを反応させて得られるエチレン性不飽和基含有フッ素重合体(E)を含む項目1に記載の活性エネルギー線硬化型コーティング剤。
(項目3)
項目1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物。
(項目4)
基材と項目3に記載の硬化物を有する積層体。
【発明の効果】
【0008】
本開示で提供する硬化物及び積層体は、耐擦傷性を有する。また、本開示で提供する硬化物及び積層体は、好ましい程度の滑り性を示すことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの上限がA1、A2、A3等が例示され、数値αの下限がB1、B2、B3等が例示される場合、数値αの範囲は、A1以下、A2以下、A3以下、B1以上、B2以上、B3以上、A1〜B1、A1〜B2、A1〜B3、A2〜B1、A2〜B2、A2〜B3、A3〜B1、A3〜B2、A3〜B3等が例示される。なお、本開示において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
<カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)>
カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)(本開示において、「(A)成分」ともいう。)は、カルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものを指す。(A)成分は、ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートのヒドロキシ基に対して二塩基酸無水物基を有する化合物を反応させてカルボキシル基を導入する等の方法で得ることが可能である。
【0011】
二塩基酸無水物基を有する化合物として、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸等が例示される。二塩基酸無水物基を有する化合物として例示された物質及び二塩基酸無水物基を有する化合物として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートとして、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、 ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が例示される。ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートとして例示された物質及びヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートとして公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
(A)成分は市販品であってもよい。当該製品として、アロニックスM510(酸価:80〜120mgKOH/g、東亞合成(株)製)、アロニックスM520(酸価:20〜40mgKOH/g、東亞合成(株)製)等が例示される。
【0014】
(A)成分は、硬化物の耐擦傷性が良好であることから、好ましくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの酸付加物又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの酸付加物であり、より好ましくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの酸付加物であり、さらにより好ましくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸付加物である。
【0015】
(A)成分として例示された物質及び(A)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
(A)成分の分子量(g/mol)の上限は、50,000、40,000、30,000、20,000、10,000、5,000、1,000、500、250等が例示され、下限は40,000、30,000、20,000、10,000、5,000、1,000、500、250、100、50等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の分子量(g/mol)は50〜50,000程度が好ましい。
【0017】
(A)成分の酸価の上限は、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30mgKOH/g等が例示され、下限は、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態として、カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの酸価は、10〜300mgKOH/g程度が好ましい。カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの酸価は、高いほど表面改質剤の性能を効果的に発現させることができる。
【0018】
(A)成分の(メタ)アクリロイル基の数の上限は、30、28、26、24、22、20、18、16、14、12、10、8、6、4個等が例示され、下限は28、26、24、22、20、18、16、14、12、10、8、6、4、2個等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の(メタ)アクリロイル基の数は、2〜30個程度が好ましい。
【0019】
(A)成分のカルボキシル基の数の上限は、10、8、6、4、2個等が例示され、下限は、8、6、4、2、1個等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分のカルボキシル基の数は1〜10個程度が好ましい。
【0020】
(A)成分の炭素数の上限は、200、150、100、80、60、50、40、30、20、10個等が例示され、下限は100、80、60、50、40、30、20、10、8、6、4個等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の炭素数は4〜200個程度が好ましい。
【0021】
本開示の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(A)成分の含有量(固形分換算)の上限は、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20質量%等が例示され、下限は、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(A)成分の含有量(固形分換算)は、15〜70質量%程度が好ましい。
【0022】
<中空粒子(B)>
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤に中空粒子(B)(本開示において、「(B)成分」ともいう。)を含むことにより、得られる硬化物の屈折率を低下させることができる。中空粒子は、内部に空孔を有していれば特に制限されない。
【0023】
中空粒子として、無機粒子、有機粒子が例示される。無機粒子として、アルミノシリケート粒子、アルミナ粒子、シリカ粒子、ムライト粒子、フライアッシュバルーン、酸化チタン粒子、フッ化マグネシウム粒子等が例示される。有機粒子として、アクリル粒子、アクリル−スチレン共重合粒子等が例示される。(B)成分は、好ましくは中空無機粒子であり、より好ましくは中空シリカ粒子である。
【0024】
(B)成分は、エチレン性不飽和基を有していてもよい。本開示において、エチレン性不飽和基として、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が例示される。(B)成分は、エチレン性不飽和基を有することで特に耐擦傷性に優れる。
【0025】
中空粒子は、変性剤で変性されたものであってもよい。変性剤として、エチレン性不飽和基および加水分解性シリル基を有する化合物、アルキル基を有する変性剤、シリコーン鎖を有する変性剤等が例示される。なお、加水分解性シリル基とは、水と反応してシラノール基(Si−OH)を生成するものであって、例えば、ケイ素に1以上のメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシル基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子が結合したものをいう。エチレン性不飽和基および加水分解性シリル基を有する化合物として、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が例示される。中空粒子を変性させるためには、中空粒子と変性剤とを混合し、加水分解させることにより両者を結合させればよい。
【0026】
中空粒子への変性剤の結合量の上限は、変性後の中空粒子を100質量%として、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.1質量%等が例示され、下限は、35、30、25、20、15、10、5、1、0.1、0.01質量%等が例示される。1つの実施形態において、中空粒子への変性剤の結合量は、変性後の中空粒子を100質量%として、0.01〜40質量%程度が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量%、さらにより好ましくは1〜20質量%である。中空粒子への変性剤の結合量を上記範囲とすることで、活性エネルギー線硬化型コーティング剤中における中空粒子の分散性を向上させることができるだけでなく、得られる硬化物の透明性や耐擦傷性を高める効果も期待できる。
【0027】
(B)成分は、市販された製品であってもよい。当該製品として、シリカ粒子(製品名「スルーリア5320」、「スルーリア4320」、「スルーリア4110」、「スルーリア2320」、「スルーリア1110」、「JX1008SIV」、「JX1009SIV」(日揮触媒化成工業(株)製)、製品名「シリナックス」(日鉄鉱業(株)製))、有機粒子(製品名「テクポリマー NHシリーズ」)等が例示される。
【0028】
(B)成分として例示された物質及び(B)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
(B)成分の透過型電子顕微鏡により測定した粒子の数平均粒子径の上限は、100、90、80、70、60、50、40、30、20nm等が例示され、下限は、90、80、70、60、50、40、30、20、10nm等が例示される。1つの実施形態において、(B)成分の透過型電子顕微鏡により測定した粒子の数平均粒子径は、10〜100nm程度が好ましく、より好ましくは5〜60nmである。
【0030】
(B)成分の屈折率の上限は、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1等が例示され、下限は1.4、1.3、1.2、1.1等が例示される。1つの実施形態において、(B)成分の屈折率は、1.1〜1.5程度が好ましい。(B)成分の屈折率が上記上限以下である場合、反射防止性に優れた硬化物を得ることができることから好ましい。(B)成分の屈折率が上記下限以上である場合、硬化物の硬度や耐擦傷性に優れることから好ましい。この場合の屈折率は粒子全体の屈折率であり、粒子が中空粒子である場合、中空粒子を形成している外殻のみの屈折率を表すものではない。本開示において(B)成分の屈折率は、活性エネルギー線硬化型樹脂中に、(B)成分を、固形比で1質量%、10質量%、20質量%含有させてなる組成物を成膜し、アッベ屈折計(製品名「NAR−1T SOLID」、(株)アタゴ製)を用いて、JIS K7142:2014に準拠し、ナトリウムのD線の波長に対する屈折率を測定し、固形比100質量%に外挿した値をいう。
【0031】
(A)成分と(B)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(B)成分])の上限は、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65等が例示され、下限は、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分と(B)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(B)成分])は、30/70〜70/30程度が好ましい。
【0032】
本開示の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(B)成分の含有量(固形分換算)の上限は、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25質量%等が例示され、下限は、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(B)成分の含有量(固形分換算)は、20〜80質量%程度が好ましい。
【0033】
<エチレン性不飽和基含有ポリシロキサン(C)>
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤にエチレン性不飽和基含有ポリシロキサン(C)(本開示において、「(C)成分」ともいう。)を含むことで、耐擦傷性に優れる。本開示においてポリシロキサンとは、−ケイ素(Si)−酸素(O)−[−ケイ素(Si)−酸素(O)−]−ケイ素(Si)−(Lは1以上の整数である。)で表される構造である。(C)成分として、一般式(1)で示されるものが例示される。
【0034】
一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、
χ〜χ、χ〜χは、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素数1以上4以下のアルキレン基を有していてもよいエチレン性不飽和基であり、
χ〜χは、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素数1以上4以下のアルキレン基を有していてもよいエチレン性不飽和基であり、繰返し単位毎に同一であっても異なっていてもよく、
ψ〜ψは、それぞれ独立に、エーテル結合を有していてもよい炭素数1以上20以下の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基であり、
mは、1以上300以下の整数であり、
ω〜ωは、それぞれ独立に、水素原子又はエチレン性不飽和基である。)
【0035】
一般式(1)のχ〜χの炭素数の上限は、それぞれ独立に、4、3、2等が例示され、下限は、3、2、1等が例示される。1つの実施形態において、一般式(1)のχ〜χの炭素数は、それぞれ独立に、1以上4以下程度が好ましい。一般式(1)のχ〜χの炭素数1以上4以下のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリブチル基、イソブチル基、または、セカンダリーブチル基が例示される。一般式(1)のχ〜χの炭素数1以上4以下のアルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、エチルエチレン基等が例示される。
【0036】
一般式(1)のψ及びψの「エーテル結合を有していてもよい炭素数1以上20以下の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基」とは、エーテル結合を有していてもよい炭素数1以上20以下の直鎖状炭化水素基若しくはエーテル結合を有していてもよい炭素数1以上20以下の分岐状炭化水素基のことを指す。一般式(1)のψ及びψの炭素数の上限は、それぞれ独立に、20、18、16、14、12、10、8、6、4、2等が例示され、下限は、18、16、14、12、10、8、6、4、2、1等が例示される。1つの実施形態において、一般式(1)のψ及びψの炭素数は、それぞれ独立に、1以上20以下程度が好ましい。一般式(1)のψ及びψの炭素数1以上20以下の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基として、Cα2α、Cα2α−1(αは、1以上20以下の整数である。)で表される構造が例示される。
【0037】
一般式(1)のmの上限は、300、275、250、225、200、175、150、125、100、75、50、25、10、5、3等が例示され、下限は、275、250、225、200、175、150、125、100、75、50、25、10、5、3、1等が例示される。1つの実施形態において、一般式(1)のmは、1以上300以下の整数である。
【0038】
一般式(1)のχ〜χ、ω〜ωのうち、少なくとも1個はエチレン性不飽和基である。すなわち、(C)成分は、ポリシロキサンの片末端にエチレン性不飽和基を有していてもよく、両末端にエチレン性不飽和基を有していてもよく、側鎖にエチレン性不飽和基を有していてもよい。(C)成分は、側鎖にエチレン性不飽和基を有していることで、表面改質効果に加え、架橋密度も向上し、硬度も上昇することから、好ましい。また、(C)成分は、片末端にエチレン性不飽和基を有していることで、特に表面改質効果に優れることから、好ましい。
【0039】
(C)成分の具体例として、ポリシロキサン両末端に(メタ)アクリロイル基を含む成分(製品名「X−22−164」、「X−22−164AS」、「X−22−164A」、「X−22−164B」、「X−22−164C」、「X−22−164E」、「KP−410」、「KP−411」、「KP−412」、「KP−413」、「KP−414」、「KP−415」、「KP−423」(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン片末端に(メタ)アクリロイル基を含む成分(製品名「X−22−174ASX」、「X−22−174BX」、「KF−2012」、「X−22−2426」、「X−22−2404」、「KP−416」、「KP−418」、「KP−422」(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン側鎖に(メタ)アクリロイル基を含む成分(製品名「KP−420」(信越化学工業(株)製))等が例示される。
【0040】
(C)成分は、反応性官能基(例えば、COOH基等)及びポリシロキサンを有する成分(C−1)(本開示において、「(C−1)成分」ともいう。)とその反応性官能基に反応する官能基(例えば、OH基等)と(メタ)アクリロイル基を有する成分(C−2)(本開示において、「(C−2)成分」ともいう。)とを反応させることで、得ることも可能である。反応性官能基として、−OH基、−COOH基、−COOCO−基、−NCO基、−SH基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基、エチレン性不飽和基等が例示される。アミノ基として、一級アミノ基(−NH)、二級アミノ基(−NH)等が例示される。(C−1)成分及び(C−2)成分における反応性官能基の組み合わせとして、−OH基及び−COOH基、−アミノ基及びエチレン性不飽和基、−SH基及びエチレン性不飽和基、−OH基及び−NCO基等が例示される。
【0041】
(C−1)成分は、市販された製品であってもよい。当該製品として、ポリシロキサン両末端にアミノ基を含む成分(製品名「X−22−161A」、「X−22−161B」、「KF−8012」、「KF−8008」(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン両末端にエポキシ基を含む成分(製品名「X−22−163」、「X−22−163A」、「X−22−163B」、「X−22−163C」(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン両末端に−OH基を含む成分(製品名「KF−6000」、「KF−6001」、「KF−6002」、「KF−6003」、(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン両末端に−SH基を含む成分(製品名「X−22−167B」、「X−22−167C」(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン両末端に−COOH基を含む成分(製品名「X−22−162C」(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン片末端にエポキシ基を含む成分(製品名「X−22−173BX」、「X−22−173DX」(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン片末端に−OH基を含む成分(製品名「X−22−170BX」、「X−22−170DX」、「X−22−176DX」、「X−22−176F」、「X−22−176GX−A」(信越化学工業(株)製))(製品名「サイラプレーンFM−0411」、「サイラプレーンFM−0421」、「サイラプレーンFM−0425」、「サイラプレーンFM−DA11」、「サイラプレーンFM−DA21」、「サイラプレーンFM−DA26」(JNC(株)製))、ポリシロキサン片末端に−COOH基を含む成分(製品名「X−22−3710」(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン両末端に(メタ)アクリロイル基を含む成分(製品名「X−22−164」、「X−22−164AS」、「X−22−164A」、「X−22−164B」、「X−22−164C」、「X−22−164E」(信越化学工業(株)製))、ポリシロキサン片末端に(メタ)アクリロイル基を含む成分(製品名「X−22−174ASX」、「X−22−174BX」、「KF−2012」、「X−22−2426」、「X−22−2404」(信越化学工業(株)製))等が例示される。
【0042】
(C−1)成分として例示された物質及び(C−1)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
(C−2)成分として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、(メタ)アクリル酸、こはく酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイル−オキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノ−2−メチル−1−プロペン、2−(2−プロピニルオキシ)エチルアミン、3−アミノ−1−プロピン、ジアリルアミン、ジ(2−プロピニル)アミン、アミノフェニルアセチレン、3−ビニルアニリン、N−tert−ブチルアリルアミン、オレイルアミン、1−((メタ)アクリロイルオキシ)−3−(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、 ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0044】
(C−2)成分として、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(東京化成工業(株)製)、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(三菱ケミカル(株)製)、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(東京化成工業(株)製)、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(東京化成工業(株)製)、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸(新中村化学工業(株)製)、こはく酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)(東京化成工業(株)製)、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(製品名「カレンズBEI」、昭和電工(株)製)、2−ヒドロキシ−3−アクリロイル−オキシプロピル(メタ)アクリレート(製品名「ブレンマーGAM」、「ブレンマーGAM−R」、日油(株)製)、ジアリルアミン(東京化成工業(株)製)等が例示される。
【0045】
(C−2)成分として例示された物質及び(C−2)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
(C)成分として例示された物質及び(C)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
(A)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(C)成分])の上限は、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15、80/20等が例示され、下限は、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15、80/20、75/25等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(C)成分])は、75/25〜99/1程度が好ましい。
【0048】
(B)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(C)成分])の上限は、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15、80/20等が例示され、下限は、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15、80/20、75/25等が例示される。1つの実施形態において、(B)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(C)成分])は、75/25〜99/1程度が好ましい。
【0049】
本開示の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(C)成分の含有量(固形分換算)の上限は、10、8、6、4、2、1、0.5、0.1質量%等が例示され、下限は、8、6、4、2、1、0.5、0.1、0.05質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(C)成分の含有量(固形分換算)は、0.05〜10質量%程度が好ましい。
【0050】
<(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテル(D)>
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤に(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテル(D)(本開示において、「(D)成分」ともいう。)を含むことで、滑り性及び耐擦傷性に優れる。すなわち、(D)成分を含むことで、本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物表面に撥水撥油性、滑り性、耐指紋付着性、耐擦傷性を付与することができる。(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテルとは、パーフルオロポリエーテルに(メタ)アクリロイル基が1つ以上結合したものである。
【0051】
(D)成分は、市販された製品であってもよい。当該製品として、(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテル(製品名「KY−1203」、「KY−1207」(信越化学工業(株)製))等が例示される。なお、(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテルとは、パーフルオロポリエーテル鎖の片末端、あるいは両末端に(メタ)アクリロイル基が存在するものをいう。
【0052】
硬化物表面に、さらにより撥水撥油性、滑り性、耐指紋付着性を付与することができることから、(D)成分中にケイ素原子を含むことが好ましい。製品名「KY−1203」にはケイ素原子が含まれる。
【0053】
(D)成分として例示された物質及び(D)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
(A)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(D)成分])の上限は、98/2、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15、80/20、75/25等が例示され、下限は、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(D)成分])は、70/30〜98/2程度が好ましい。
【0055】
(B)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(D)成分])の上限は、98/2、95/5、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30等が例示され、下限は、95/5、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35等が例示される。1つの実施形態において、(B)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(D)成分])は、65/35〜98/2程度が好ましい。
【0056】
(C)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(C)成分/(D)成分])の上限は、50/50、45/55、40/60、35/65、34/66、33/67、32/68、31/69、30/70、25/75、20/80等が例示され、下限は、45/55、40/60、35/65、34/66、33/67、32/68、31/69、30/70、25/75、20/80、15/85等が例示される。1つの実施形態において、(C)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(C)成分/(D)成分])は、15/85〜50/50程度が好ましい。本願の効果が特に優れることから、より好ましくは25/75〜35/65であり、さらにより好ましくは30/70〜35/65であり、特に好ましくは33/67〜34/66である。
【0057】
本開示の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(D)成分の含有量(固形分換算)の上限は、20、15、10、8、6、4、2、1、0.5質量%等が例示され、下限は、15、10、8、6、4、2、1、0.5、0.1質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(D)成分の含有量(固形分換算)は、0.1〜20質量%程度が好ましい。
【0058】
<水酸基と反応可能な基及び少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含有する化合物と水酸基含有フッ素重合体とを反応させて得られるエチレン性不飽和基含有フッ素重合体(E)>
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤には、水酸基と反応可能な基及び少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含有する化合物(E−1)(本開示において、「(E−1)成分」ともいう。)と水酸基含有フッ素重合体(E−2)(本開示において、「(E−2)成分」ともいう。)とを反応させて得られるエチレン性不飽和基含有フッ素重合体(E)(本開示において、「(E)成分」ともいう。)を含んでもよい。(E)成分は、フッ素系オレフィンの重合物である。(E)成分を含むことで、本開示の積層体の滑り性を調節することが可能である。そのことにより、例えばタッチパネル等の用途で本開示の積層体を用いる場合、タッチペン等による書き心地を良好にすることが可能である。
【0059】
<(E−1)成分>
(E−1)成分の水酸基と反応可能な基として、カルボキシル基、イソシアネート基、酸クロリド基等が例示される。(E−1)成分のエチレン性不飽和基として、炭素−炭素二重結合が例示され、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が例示される。
【0060】
(E−1)成分として、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルクロライド等が例示される。
【0061】
(E−1)成分として例示された物質及び(E−1)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
(E−1)成分のエチレン性不飽和基の数の上限は、10、8、6、4、2個等が例示され、下限は8、6、4、2、1個等が例示される。1つの実施形態において、(E−1)成分のエチレン性不飽和基の数は、1〜10個程度が好ましい。
【0063】
(E−1)成分の水酸基と反応可能な基の数の上限は、10、8、6、4、2個等が例示され、下限は8、6、4、2、1個等が例示される。1つの実施形態において、(E−1)成分の水酸基と反応可能な基の数は、1〜10個程度が好ましい。
【0064】
(E−1)成分の分子量(g/mol)の上限は、1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100等が例示され、下限は900、800、700、600、500、400、300、200、100、50等が例示される。1つの実施形態において、(E−1)成分の分子量(g/mol)は50〜1,000程度が好ましい。
【0065】
<(E−2)成分>
(E−2)成分は、水酸基を含有するフッ素重合体であれば特に限定されない。(E−2)成分として、例えば、エチレン性不飽和基を有する有機フッ素化合物であるモノマー(E−2−1)(本開示において、「(E−2−1)成分」ともいう。)とエチレン性不飽和基及び水酸基を有するモノマー(E−2−2)(本開示において、「(E−2−2)成分」ともいう。)の重合体等が例示される。
【0066】
(E−2−1)成分として、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロ(n−プロピルビニルエーテル)等が例示される。
【0067】
(E−2−2)成分として、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が例示される。
【0068】
(E−2)成分を構成するモノマーには、(E−2−1)成分及び(E−2−2)成分以外のモノマーを含んでもよい。そのようなモノマーとして、エチルビニルエーテル等が例示される。
【0069】
(E−2)成分を合成する際には、上記(E−2−1)成分、上記(E−2−2)成分、および必要に応じて上記のその他のモノマー、重合開始剤や反応性界面活性剤等を配合し、公知の方法で重合することが考えられる。
【0070】
(E−2)成分として例示された物質及び(E−2)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
(E−2)成分の数平均分子量の上限は、500,000、400,000、300,000、200,000、100,000、50,000、10,000、9,000、8,000、7,000、6,000等が例示され、下限は400,000、300,000、200,000、100,000、50,000、10,000、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000等が例示される。1つの実施形態において、(E−2)成分の数平均分子量は5,000〜500,000程度が好ましい。本開示において数平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値である。
【0072】
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(E)成分の含有量(固形分換算)の上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05質量%等が例示され、下限は、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(E)成分の含有量(固形分換算)は、0.01〜10質量%程度が好ましい。
【0073】
<光重合開始剤(F)>
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤には光重合開始剤(F)(本開示において、「(F)成分」ともいう。)を含んでもよい。光重合開始剤として、ラジカル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤、アニオン系光重合開始剤等が例示される。
【0074】
ラジカル系光重合開始剤として、アルキルフェノン型光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤、オキシムエステル型光重合開始剤等が例示される。
【0075】
アルキルフェノン型光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルジメチルケタール、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン等が例示される。
【0076】
アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が例示される。
【0077】
水素引き抜き型光重合開始剤として、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が例示される。
【0078】
オキシムエステル型光重合開始剤として、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等が例示される。
【0079】
カチオン系光重合開始剤として、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)]4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)及びプロピレンカーボネートの混合物、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリアリールスルフォニウム テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が例示される。
【0080】
アニオン系光重合開始剤として、コバルトアミン系錯体、o−ニトロベンジルアルコールカルバミン酸エステル、オキシムエステル等が例示される。
【0081】
光重合開始剤は、硬化速度が優れるため、好ましくはラジカル系光重合開始剤であり、より好ましくはアルキルフェノン型光重合開始剤であり、さらに好ましくはα−アミノアルキルフェノン及び/又はα−ヒドロキシアルキルフェノンであり、特に好ましくは2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン及び/又は2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンである。
【0082】
光重合開始剤として、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(製品名「Omnirad(以下、「オムニラッド」ともいう。) 651」、IGM Resins社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(製品名「オムニラッド 2959」、IGM Resins社製)、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名「オムニラッド 127」、IGM Resins社製)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名「オムニラッド 907」、IGM Resins社製)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(製品名「オムニラッド TPO H」、IGM Resins社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(製品名「オムニラッド 819」、IGM Resins社製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(製品名「オムニラッド MBF」、IGM Resins社製)、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](製品名「IRGACURE OXE 01」、BASFジャパン(株)製)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(製品名「IRGACURE OXE 02」、BASFジャパン(株)製)、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)]4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)及びプロピレンカーボネートの混合物(製品名「Omnicat(以下、「オムニキャット」ともいう。) 250」、IGM Resins社製)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート(製品名「オムニキャット 270」、IGM Resins社製)、トリアリールスルフォニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート(製品名「IRGACURE 290」、BASFジャパン(株)製)等が例示される。
【0083】
光重合開始剤として例示された物質及び光重合開始剤として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(F)成分の含有量(固形分換算)の上限は、20、15、10、8、6、4、2、1、0.5質量%等が例示され、下限は、15、10、8、6、4、2、1、0.5、0.1質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の固形分換算の全構成単位100質量%に占める(F)成分の含有量(固形分換算)は、0.1〜20質量%程度が好ましい。
【0085】
(C)成分及び(D)成分と(F)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[{(C)成分+(D)成分}/(F)成分])の上限は、75/25、70/30、65/35、64/36、63/37、62/38、61/39、60/40、59/41、58/42、57/43、56/44、55/45、50/50等が例示され、下限は、70/30、65/35、64/36、63/37、62/38、61/39、60/40、59/41、58/42、57/43、56/44、55/45、50/50、45/55等が例示される。1つの実施形態において、(C)成分及び(D)成分と(F)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[{(C)成分+(D)成分}/(F)成分])は、45/55〜75/25程度が好ましい。本願の効果が特に優れることから、より好ましくは50/50〜70/30であり、さらにより好ましくは55/45〜65/35であり、特に好ましくは59/41〜61/39である。
【0086】
<その他配合可能な剤>
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤には、さらに、必要に応じて上記例示した成分以外のバインダー樹脂(アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等)、防滑剤、スリップ剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、顔料、染料、滑剤、レベリング剤、触媒、消泡剤、光増感剤(アミン類、キノン類等)等の各種添加剤を配合することもできる。
【0087】
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤には必要に応じて、有機溶媒(G)(本開示において、「(G)成分」ともいう。)を配合し、粘度を調整して使用することも可能である。有機溶媒は、各種公知のものであってもよい。有機溶媒として、ケトン溶媒、芳香族溶媒、アルコール溶媒、グリコール溶媒、グリコールエーテル溶媒、エステル溶媒、石油系溶媒、ハロアルカン溶媒、アミド溶媒等が例示される。
【0088】
ケトン溶媒として、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が例示される。
【0089】
芳香族溶媒として、トルエン、キシレン等が例示される。
【0090】
アルコール溶媒として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が例示される。
【0091】
グリコール溶媒として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。
【0092】
グリコールエーテル溶媒として、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル等が例示される。
【0093】
エステル溶媒として、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が例示される。
【0094】
石油系溶媒として、ソルベッソ#100(エクソン社製)、ソルベッソ#150(エクソン社製)等が例示される。
【0095】
ハロアルカン溶媒として、クロロホルム等が例示される。
【0096】
アミド溶媒として、ジメチルホルムアミド等が例示される。
【0097】
有機溶媒として例示された物質及び有機溶媒として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0098】
<活性エネルギー線硬化型コーティング剤の製造方法>
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、さらに必要に応じて、(E)成分、(F)成分、(G)成分を混合することで得られる。
【0099】
<積層体>
基材と本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物とを含む積層体も、本開示では提供する。また、本開示において、基材の少なくとも片面に塗工した本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を、活性エネルギー線で硬化する工程を含む、積層体の製造方法も、本開示では提供する。本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物は、低屈折率層として好ましい効果を奏する。
【0100】
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を用いて製造された積層体における低屈折率層の屈折率の上限は、1.50、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25等が例示され、下限は、1.45、1.40、1.35、1.30、1.25、1.20等が例示される。1つの実施形態において、本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を用いて製造された積層体における低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.50程度が好ましい。
【0101】
本開示の積層体における低屈折率層の静摩擦係数(μs)の上限は、0.3、0.28、0.26、0.24、0.22、0.20、0.18、0.16、0.14、0.12、0.10、0.08、0.06等が例示され、下限は0.28、0.26、0.24、0.22、0.20、0.18、0.16、0.14、0.12、0.10、0.08、0.06、0.04等が例示される。1つの実施形態において、本開示の積層体における低屈折率層の静摩擦係数(μs)は、0.3以下程度が好ましい。本開示の積層体における低屈折率層の静摩擦係数(μs)が上記上限以下であることで、積層体の滑り性が良好となり、例えばフィルムロールを形成する際にフィルムの張り付きが抑制され、接触相手面のフィルムにキズをつけてしまう可能性が低くなることから好ましい。本開示の積層体における低屈折率層の静摩擦係数(μs)が上記下限以上であることで、積層体の滑りすぎを抑えることができるため、例えば本開示の積層体をタッチパネル等に使用した場合のタッチペン等による書き心地が良好となることから好ましい。
なお、静摩擦係数はJIS K7125に規定された方法により、テンシロン万能試験機RTC−1250A((株)エー・アンド・デイ製)を用いて測定される静摩擦係数である。
【0102】
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を塗工する基材として、ガラス基材、金属基材、プラスチック基材等が例示される。プラスチック基材として、熱可塑性プラスチック基材、熱硬化性プラスチック基材等が例示される。熱可塑性プラスチック基材として、汎用プラスチック基材、エンジニアリングプラスチック基材等が例示される。汎用プラスチック基材として、オレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、ビニル系、ポリスチレン系等が例示される。オレフィン系として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン等が例示される。ポリエステル系として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が例示される。アクリル系として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が例示される。ビニル系として、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等が例示される。ポリスチレン系として、ポリスチレン(PS)樹脂、スチレン・アクリロニトリル(AS)樹脂、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル(ABS)樹脂等が例示される。エンジニアリングプラスチック基材として、汎用エンプラ、スーパーエンプラ等が例示される。汎用エンプラとして、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)等が例示される。スーパーエンプラとして、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が例示される。熱硬化性プラスチック基材として、ポリイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が例示される。その他のプラスチック基材として、トリアセチルセルロース樹脂等が例示される。また、基材は、表面処理(コロナ放電等)がなされているものであってよい。また、基材の片面あるいは両面に、本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤が形成する層との間にその他の層(例えば易接着層、アンカー層等)が設けられたものであってよい。基材は、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐薬品性等に優れることから、好ましくはポリエステル系であり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。なお、基材の厚みは、特に限定されず、通常、1〜125μm程度であればよい。
【0103】
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を基材上に塗工する方法として、ロールコーター塗工、リバースロールコーター塗工、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が例示される。なお、塗工量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の質量が0.01〜20g/mになる範囲であり、好ましくは0.025〜10g/mであり、より好ましくは0.05〜5g/mである。また、本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物の膜厚は0.01〜10μm程度である。
【0104】
活性エネルギー線照射により硬化させる方法として、150nm波長域以上450nm波長域以下の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ又はLED等を用いて、10mJ/cm以上10,000mJ/cm以下程度照射する方法が例示される。活性エネルギー線照射前は、必要に応じて加熱を行って乾燥させてもよい。活性エネルギー線照射後は、必要に応じて加熱を行って完全に硬化させてもよい。加熱の条件として、60〜150℃程度で、30秒〜30分程度が例示され、好ましくは70〜130℃で、50秒〜10分程度が例示される。
【0105】
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤は以下のように使用することが想定される。
(1)本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物、粘接着層、基材
(2)本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物、ハードコート層、基材
(3)本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物、基材
【0106】
本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物は低屈折率層として使用することが好ましいが、本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤が奏する効果を発揮できるような各種の用途に用いることも可能である。
【実施例】
【0107】
以下に、実施例を挙げて本開示の具体例を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中、部及び%は特記しない限り全て固形分質量基準である。
【0108】
<実施例1:活性エネルギー線硬化型コーティング剤(1)の調製>
(A)成分として多塩基酸変性多官能アクリレート(製品名「アロニックスM510」、東亞合成(株)製)を51質量部、(B)成分として中空シリカ粒子(製品名「スルーリア4320」、日揮触媒化成工業(株)製)を39質量部、(C)成分としてポリシロキサン側鎖に(メタ)アクリロイル基を含む成分(製品名「KP−420」、信越化学工業(株)製)を2質量部、(D)成分として片末端(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテル(製品名「KY−1203」(信越化学工業(株)製))を4質量部、開始剤として2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名「オムニラッド 127」、IGM Resins社製)を4質量部混合するとともに、メチルイソブチルケトンにて希釈し、固形分2質量%の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を調製した。
【0109】
<実施例2〜3及び比較例1〜10:活性エネルギー線硬化型コーティング剤(2)〜(3)及び(C1)〜(C10)の調製>
実施例2〜3及び比較例1〜10は、表1及び表2に記載の組成に変更したことを除き、実施例1と同様の手法により行い、活性エネルギー線硬化型コーティング剤(2)〜(3)及び(C1)〜(C10)を得た。
【0110】
<評価例1:積層体(1)の作製>
高硬度ハードコート剤(製品名「OPSTAR Z7537」)を乾燥後の膜厚が4.0μmとなるように、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「ルミラー 50U483」、東レ(株)製、膜厚:50μm)に塗布し、80℃で1分乾燥後、空気雰囲気下で活性エネルギー線を照射し(紫外線照射:550mW/cm、100mJ/cm)、硬化させた。当該ハードコート面に活性エネルギー線硬化型コーティング剤(1)を乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥後、空気雰囲気下で活性エネルギー線を照射し(紫外線照射:550mW/cm、100mJ/cm)、硬化させ、積層体(1)を得た。
【0111】
<評価例2〜3及び比較評価例1〜10:積層体(2)〜(3)及び(C1)〜(C10)の作製>
評価例2〜3及び比較評価例1〜10は、活性エネルギー線硬化型コーティング剤(1)をそれぞれ活性エネルギー線硬化型コーティング剤(2)〜(3)又は(C1)〜(C10)に変更したことを除き、評価例1と同様の手法により行い、積層体(2)〜(3)及び(C1)〜(C10)を得た。
【0112】
<性能評価(1):屈折率(nD)>
得られた各積層体の低屈折率層に対して、JIS K7142:2014に準拠し、アッベ屈折計(製品名「NAR−1T SOLID」、(株)アタゴ製)を用いてナトリウムのD線の波長に対する屈折率を測定した。
【0113】
<性能評価(2):静摩擦係数>
JIS K 7125:1999に準じ、得られた各積層体の低屈折率層の静摩擦係数を測定した。
【0114】
<性能評価(3):耐擦傷性>
得られた各積層体の低屈折率層が上方を向くようにしてスチールウール試験機に設置し、#0000のスチールウールを1cm×1cmの面に固定し、1kg/cmの荷重で50往復擦ることで試験を実施した。外観変化を、目視にて確認し、下記基準に沿って評価した。
○:傷が10本以下
△:傷が10本超20以下
×:傷が20本超
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
表1及び表2中の用語の意味は下記のとおりである。なお、表中の各成分の数値は固形分の重量を示している。
M510:多塩基酸変性多官能アクリレート(製品名「アロニックスM510」、東亞合成(株)製)
A−DPH:ジペンタエリスリトールポリアクリレート(製品名「NKエステルA−DPH」、新中村化学工業(株)製)
A−TMMT:ペンタエリスリトールポリアクリレート(製品名「NKエステルA−TMMT」、新中村化学工業(株)製)
MT−3548:ペンタエリスリトールポリアクリレート(製品名「アロニックスMT−3548」、東亞合成(株)製)
PU610:脂肪族ウレタンアクリレート(製品名「Miramer PU610」、MIWON社製)
4320:中空シリカ粒子(製品名「スルーリア4320」、日揮触媒化成工業(株)製)
KP−418:ポリシロキサンの片末端に(メタ)アクリロイル基を含む成分(製品名「KP−418」、信越化学工業(株)製)
KP−420:ポリシロキサン側鎖に(メタ)アクリロイル基を含む成分(製品名「KP−420」、信越化学工業(株)製)
KY−1203:片末端(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテル(製品名「KY−1203」(信越化学工業(株)製))
KY−1207:片末端(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテル(製品名「KY−1207」(信越化学工業(株)製))
F Polymer:下記製造例1により得た重合体を使用した。
Omni127D:2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名「オムニラッド 127」、IGM Resins社製)
【0118】
(製造例1)
内容積2.0リットルの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル11544g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)3464g、エチルビニルエーテル938g、ヒドロキシエチルビニルエーテル1145g、過酸化ラウロイル37.5g、アゾ基含有ポリジメチルシロキサン(VPS1001(商品名)、和光純薬工業(株)製)225g及びノニオン性反応性乳化剤(ER−30(商品名)、旭電化工業(株)製を予め溶媒をすべて留去した固体組成としたもの)1125gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。次いでヘキサフルオロプロピレン1953gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は5.3×105Paを示した。その後、70℃で20時間攪拌下に反応を継続し、圧力が1.7×105Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、オートクレーブを開放し、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い約5kgの水酸基含有フッ素重合体を得た。電磁攪拌機、ガラス製冷却管及び温度計を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、水酸基含有フッ素重合体を120g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.02g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)862gを仕込み、20℃で水酸基含有フッ素重合体がMIBKに溶解して、溶液が透明、均一になるまで攪拌を行った。次いで、この系に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート32.1gを添加し、溶液が均一になるまで攪拌した後、ジブチルチンジラウレート0.3gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間攪拌を継続することにより、(F)成分のMIBK溶液を得た。固形分含量は、15.0質量%であった。
【0119】
上記実施例より(A)成分にカルボキシル基を有することで、本開示の所望の効果、特に耐擦傷性が良好となることが明らかとなった。このように本開示の活性エネルギー線硬化型コーティング剤に(A)成分を含ませることで、(C)成分及び(D)成分が、(B)成分よりも活性エネルギー線硬化型コーティング剤の硬化物表面に偏在することによって、本開示の所望の効果を奏するものと考えている。これは、(A)成分がカルボキシル基を有することにより、活性エネルギー線硬化型コーティング剤中の(C)成分及び(D)成分の相溶性に影響を与えたことが原因と考えている。

【要約】
【課題】活性エネルギー線硬化型コーティング剤、硬化物、及び積層体を提供すること。
【解決手段】本開示は、
カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)、
中空粒子(B)、
エチレン性不飽和基含有ポリシロキサン(C)及び
(メタ)アクリレート変性パーフルオロポリエーテル(D)
を含む活性エネルギー線硬化型コーティング剤を提供する。
【選択図】なし