特許第6844931号(P6844931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6844931ヒドロホルミル化混合物のクロムおよびニッケル不要の水素化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844931
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】ヒドロホルミル化混合物のクロムおよびニッケル不要の水素化
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/141 20060101AFI20210308BHJP
   C07C 31/125 20060101ALI20210308BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210308BHJP
   B01J 23/72 20060101ALN20210308BHJP
   B01J 35/10 20060101ALN20210308BHJP
   B01J 37/02 20060101ALN20210308BHJP
   B01J 37/08 20060101ALN20210308BHJP
   B01J 37/18 20060101ALN20210308BHJP
   B01J 37/00 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   C07C29/141
   C07C31/125
   !C07B61/00 300
   !B01J23/72 Z
   !B01J35/10 301G
   !B01J37/02 101C
   !B01J37/08
   !B01J37/18
   !B01J37/02 101B
   !B01J37/00 F
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-214836(P2017-214836)
(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公開番号】特開2018-158915(P2018-158915A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2020年3月18日
(31)【優先権主張番号】16197935.6
(32)【優先日】2016年11月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン クラソヴォスキ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト フランケ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ゲイレン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ジェス
(72)【発明者】
【氏名】ウルフガング コルス
(72)【発明者】
【氏名】トマス クヴァント
(72)【発明者】
【氏名】アルネ レインスドルフ
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04677234(US,A)
【文献】 特開2000−354770(JP,A)
【文献】 特公昭46−004249(JP,B1)
【文献】 特公昭46−014355(JP,B1)
【文献】 特開平07−232067(JP,A)
【文献】 特開2016−153389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
C07B 31/00− 61/00
B01J 21/00− 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドの水素化によりアルコールを製造する方法であって、少なくとも1種のアルデヒドおよび少なくとも1種の付随成分を含む供給混合物を、水素の存在下で不均一触媒と接触させて、水素化されるアルデヒドに対応する少なくともアルコール、および少なくとも1種の副生物を含む生成混合物をもたらし、前記触媒が、担体材料およびそれに付与された銅を含む方法において、
担体材料が、二酸化ケイ素であり;
活性化形態の触媒が、合計して100重量%になる以下の組成:
二酸化ケイ素:86重量%から90重量%;
銅:10重量%から14重量%;
ニッケル:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
クロム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
酸化アルミニウム:重量比で0ppmから重量比で1000ppm;および
他の物質:重量比で0ppmから1重量%
を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
活性化形態の触媒が、合計して100重量%になる以下の組成:
二酸化ケイ素:87重量%から89重量%;
銅:11重量%から13重量%;
ニッケル:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
クロム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
ルテニウム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
パラジウム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
白金:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
酸化アルミニウム:重量比で0ppmから重量比で100ppm;
水:重量比で0ppmから重量比で100ppm;
炭酸塩:重量比で0ppmから重量比で100ppm;
水酸化物:重量比で0ppmから重量比で100ppm;および
他の物質:重量比で0ppmから0.5重量%
を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
担体材料の比細孔容積が、シクロヘキサン浸漬法により決定して0.8cm/gから1.2cm/gの間であり、担体材料の比表面積(BET表面積)が、ISO法9277により決定して130m/gから170m/gの間であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
その方法が、1510Paから2510Paの間の圧力および、140℃から180℃の間の温度で行われ、前記圧力および温度が供給混合物および生成混合物が液相中にあるように選択されることを特徴とする、請求項1、または請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
水素が、超化学量論量で存在し、水素の濃度は、水素の少なくとも一部が液相に溶解するように選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
供給混合物が、ヒドロホルミル化に由来し、したがって同じ炭素原子数nを有する複数のアルデヒド、ならびに対応するアルコールおよび高沸点物質を含み、nが3から18の間の自然数であることを特徴とする、請求項1、または請求項2から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
供給混合物が、合計して100重量%になる以下の組成:
9個の炭素原子を有するアルデヒドの総分率:25重量%から75重量%;
9個の炭素原子を有するアルコールの総分率:10重量%から55重量%;
アセタールの総分率:0.5重量%から5.5重量%;
更なる炭化水素の総分画:0重量%から40重量%;および
水:0重量%から3重量%
を有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
供給混合物が、合計して100重量%になる以下の組成:
9個の炭素原子を有するアルデヒドの総分率:15重量%から65重量%;
9個の炭素原子を有するアルコールの総分率:20重量%から65重量%;
アセタールの総分率:0.5重量%から5.5重量%;
更なる炭化水素の総分率:0重量%から40重量%;および
水:0重量%から1重量%
を有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
以下のステップ:
a)少なくとも99重量%の二酸化ケイ素を含有する担体材料を用意するステップ;
b)ヒドロキシ炭酸銅(II)、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウム、アンモニアならびに水を用意するステップ;
c)溶液が、10重量%から15重量%の間で銅含量を有するように、ヒドロキシ炭酸銅(II)、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウム、アンモニアならびに水から溶液を製造するステップであって、溶液中のクロムの比率が、重量比で0ppmから重量比で50ppmの間であり、溶液中のニッケル比率が、重量比で0ppmから重量比で50ppmの間である、ステップ;
d)担体材料を、溶液に含浸させるステップ;
e)50℃から150℃の間の温度で、含浸した担体材料を乾燥させるステップ;
f)300℃から600℃の間の温度で、含浸乾燥させた担体材料をか焼させて、前駆体を得るステップ、
g)前駆体を反応器に移動させるステップ;
h)水素を用いた還元により反応器中の前駆体を活性化させて、活性触媒を得るステップ、ならびに
i)水素の存在下で、反応器中の活性触媒を、少なくとも1種のアルデヒドおよび少なくとも1種の付随成分を含む供給混合物と接触させるステップ
を含み、
担体材料を含浸のためにドラムに導入し、ドラムを回転させ、溶液をドラム内に噴霧し、乾燥フェーズの間に、50℃から100℃の間の温度で気流をドラム中に通過させるように、含浸および乾燥の少なくとも一部をドラム中で行う、アルデヒドの水素化の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒドの水素化によりアルコールを製造する方法であって、少なくとも1種のアルデヒドおよび少なくとも1種の付随成分を含む供給混合物を、水素の存在下で不均一触媒と接触させて、水素化されるアルデヒドに対応する少なくともアルコールおよび少なくとも1種の副生物を含む生成混合物をもたらし、触媒が、担体材料およびそれに付与された銅を含む、方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、対応の触媒および対応の前駆体の製造、前駆体の任意選択の活性化、およびプロセスでの活性触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
アルコールからの水素の脱離(脱水素化)は、アルデヒドを生じさせる。逆に、アルコールは、水素化(水素の添加)によりアルデヒドから製造することができる。
【0004】
水素化は一般に、工業で非常に頻繁に行われる反応である。工業的規模で実施される別の特定の反応は、アルデヒドの水素化、すなわち、いわゆるオキソ法アルコールの製造における水素化である。
【0005】
オキソ法アルコールは、ヒドロホルミル化(オキソ反応)を介して製造されるアルコールである。ヒドロホルミル化では、オレフィン(アルケン)を、合成ガス(一酸化炭素と水素の混合物)と反応させて、アルデヒドを得る。後続の水素化が、実際のオキソ法アルコールを生じさせる。オキソ法アルコールは、樹脂用の界面活性剤および/または可塑剤の生産のための中間体として役立つ。数百万メートルトンのオキソ法アルコールが、年毎に世界中で生産される。
【0006】
ヒドロホルミル化により得られるアルデヒドの水素化が、オキソ法アルコールの製造における必須段階であるので、本発明は、工業的規模での関連のプロセスに関係している。
【0007】
工業的操作では、オキソ法アルデヒドは、不均一固定床触媒上の液相で一般に水素化される。大きな処理量容積のために、触媒は、水素化の反応速度、さらに選択性も決定するので、触媒は、そのプロセスにとって決定的に重要なものである。適切な触媒の選択は、水素化されるべきアルデヒドが、純粋な形態で決して生じず、第一に水素化で望まれない二次反応をもたらし、第二に、水素化触媒に損傷を与える多数の厄介な付随成分を常に伴う構造的に異性体のアルデヒドの混合物として生じるので、ささいなことでない。水素化されるべきアルデヒドを含む供給混合物の組成が、上流のヒドロホルミル化により決定されるので、水素化触媒は、特定のヒドロホルミル化に関して正確に調節されなければならない。
【0008】
オキソ法アルデヒドの水素化については、有用な触媒が、銅、クロムおよびニッケルが活性成分として付与された担体材料を含むものであることが分かった。
【0009】
対応の触媒が、DE19842370A1に開示されている。それは、銅およびニッケルを含み、各々、0.3重量%から15重量%の濃度範囲で含み、クロムは、0.05重量%から3.5重量%の重量比での比率で含む。使用される担体材料は、多孔性二酸化ケイ素または酸化アルミニウムである。
【0010】
米国特許第4677234号には、担体付の銅触媒の存在下でエチレングリコールを製造する方法が記載されている。
【0011】
これらの触媒は、オキソ法アルデヒドの工業的に実施される水素化で有用であることが証明されたが、代替物の必要性がなおある。この理由は、これらの触媒のクロム含量である。
【0012】
Annex XIV of the REACH directiveによれば、上に記載された触媒のようなクロム含有物質は、委員会による認可後にのみ、欧州連合では使用されなければならない。認可の付与は、非常な複雑さおよび高い費用を伴う。その上、認可の付与は事前に予測できない。その上、申請手続きを5年毎にくり返さなければならない。
【0013】
これらの厳密な条件についての理由は、使用されるクロムの疑いのない発癌性である。これは、第一に、水素化触媒が、以下の脱活性化を処理しなければならない場合、第二に、それが、アルカリ金属クロメートまたはアルカリ金属ジクロメートを用いた含浸により新たに生成される場合に、関連性があるものである。
【0014】
クロム問題は、EP3037400A1に開示される触媒で解決されてきたが、それは、実質的にクロム不含である。しかし、ニッケル、およびクロム不含触媒の生産で使用されるニッケル化合物は、同様に発癌性であるので、このシステムでの改善の更なる必要性がある。
【0015】
この点において、取り扱われる問題は、アルデヒドの工業的水素化に適した触媒システムを特定するものであり、それは、クロムを含まないこと、およびニッケルを含まないことの両方である。
【0016】
EP2488478B1には、C10アルデヒドの2段階水素化が記載されており、ここで銅、クロムおよびニッケルを含まないが、ルテニウムを含有する触媒が、第2の水素化段階で使用される。Ruは、比較的費用がかかり、その理由のため、このプロセスは、工業的規模で常に経済的に実行可能であるというわけではない。さらに、ニッケル含有触媒が、許容しうる水素化結果を達成するために、第1の段階で使用されなければならないので、そのプロセスは、ニッケル不含でもない。
【0017】
WO95/32171A1には、クロムを含めた更なる元素の存在または不在下のいずれかで、銅および二酸化ケイ素を含む種々の水素化触媒が記載されている。特定のクロム不含の変異体は、非常に高いCuO含量(20重量%より十分に上)のため注目される。そのような銅リッチ触媒の原材料費用は、相当高い。
【0018】
米国特許第3,677,969号には、有機金属水素化触媒が記載されている。このシステムの欠点は、それが、追加の硫化を必要とし、それが、非常に高い温度(400°Fから1000°F)で加熱処理されなければならないので、その生産が、比較的高価であることである。さらに、クロムおよびニッケルの任意選択の含量が推奨される。
【0019】
上記の全てを考慮すると、工業的規模でのヒドロホルミル化混合物の水素化に適切なクロムおよびニッケル不含触媒を見出すことは、今まで可能でなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
この先行技術を考慮して、本発明により取り扱われる問題は、クロムまたはニッケルのいずれも含まない触媒を開発することである。発癌性があることが知られている他の物質も同様に存在すべきでない。さらに、それは、工業的規模で、工業的オキソ法に由来するアルデヒド混合物の経済的に実行可能な水素化を可能にすることである。このために、触媒は、Ru、PdまたはPtのような費用的に高価な金属に頼るべきでない。触媒の銅含量は、原材料の費用を低減するために最小限であるべきである。その製造を低温で達成できること、さらに触媒を硫化する必要がないことは、触媒の生産費用のためでもある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この問題は、銅のみが、その担体材料上に水素化活性成分として生じ、クロムまたはニッケルは生じない触媒が得られるように、従来のCu/Ni/Crシステムの製造でクロムおよびニッケルを除くことにより解決された。ここで驚くべきことは、3種の水素化活性金属のうち2種が除かれても、意図する目的のための機能性触媒がとにかく依然として生じることである。しかし、これは、使用される担体材料が、二酸化ケイ素であること、および活性触媒でのCuおよびSiOの含量が、非常に厳しい制限内に正確に設定されていることが必須条件として必要とする。SiOが担体として特に適切である理由は、おそらく、それが、ほとんどブレンステッド酸性またはブレンステッド塩基性部位を含有せず、その部位が副生物形成を促進するからである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
したがって、本発明は、アルデヒドの水素化によりアルコールを製造する方法であって、少なくとも1種のアルデヒドおよび少なくとも1種の付随成分を含む供給混合物を、水素の存在下で不均一触媒と接触させて、水素化されるアルデヒドに対応する少なくともアルコール、および少なくとも1種の副生物を含む生成混合物をもたらす方法であり、
触媒が、担体材料およびそれに付与された銅を含み、担体材料が二酸化ケイ素であり、かつ活性化形態の触媒が、合計して100重量%になる以下の組成:
二酸化ケイ素:86重量%から90重量%;
銅:10重量%から14重量%;
ニッケル:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
クロム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
酸化アルミニウム:重量比で0ppmから重量比で1000ppm;および
他の物質:重量比で0ppmから1重量%
を有する、方法を提供する。
【0023】
「他の物質」とは、この関連で、触媒中に存在するが、一覧表で明確に言及される化学元素またはその化合物を意味すると常に理解されることを引用している。したがって、上の組成物の場合には、「他の物質」とは、SiO、Cu、Ni、Cr、Alを除く全ての成分の総称である。
【0024】
「他の物質」の例は、炭酸塩、水酸化物、または単に挿入された水の場合もある。Pt、RuまたはPdなどの微量で検出可能な高価な金属は、用語「他の物質」により同様に網羅される。費用のため、本発明により、触媒の製造での高価な金属の慎重な添加は、なしですまされる。しかし、微量のPt、RuまたはPdは、近頃利用可能な分析的選択肢で製造される触媒で検出されうることは、排除され得ない。しかし、その後、これらは、ちょうど、ニッケルおよびクロムの残渣のように、意図的でない汚染(装置から得られる材料、または人により摩耗したジュエリーによる)として分類される。理想的には、「他の物質」の含量は、ゼロである。
【0025】
水素化作業のための特に適切な触媒は、活性化形態で、合計して100重量%になる以下の組成:
二酸化ケイ素:87重量%から89重量%;
銅:11重量%から13重量%;
ニッケル:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
クロム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
水酸化物:重量比で0ppmから重量比で100ppm;
ルテニウム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
パラジウム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
白金:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
酸化アルミニウム:重量比で0ppmから重量比で100ppm;
水:重量比で0ppmから重量比で100ppm;
炭酸塩:重量比で0ppmから重量比で100ppm;および
他の物質:重量比で0ppmから0.5重量%
を有するものであることが分かった。
【0026】
本発明により使用される担体材料は、二酸化ケイ素である。担体材料として、フュームドSiOまたは沈殿シリカのいずれかを使用することが可能である。SiO合成に関係なく、触媒は、常に、担体材料中に多かれ少なかれ結晶成分を有する固形形態で使用される。したがって、水素化での触媒は、それが反応混合物中で溶解されないが、別の相で存在するので、不均一触媒である。
【0027】
シクロヘキサン浸漬法により測定される0.8cm/gから1.2cm/gの間の比細孔容積を有し、ISO法9277により測定される130m/gから170m/gの間の比表面積(BET表面積)を有する担体材料を使用することが優先される。この種類の材料は、Evonik Resource Efficiency GmbHから得られるAerolyst(登録商標)3041として利用可能である。それは、フュームド二酸化ケイ素に基づく。
【0028】
高いプロセス強度のため、水素化は、1510Paから2510Paの間の圧力で、140℃から180℃の間の温度で行われる。圧力および温度は、供給混合物および生成混合物が液相中にあるように本明細書で選択されるべきである。
【0029】
好ましくは、水素は、実質的に全部の水素化を確実にするために、超化学量論量で供給される。しかし、水素の濃度は、少なくともある程度の水素が、液相に溶解されるように設定されるべきである。ある程度の水素は、気相にもあり、したがって、反応混合物中に気泡を形成しうる。その場合に、反応は、「トリクルベッド」操作と呼ばれるもので行われる。
【0030】
本発明による触媒システムは、ヒドロホルミル化に由来し、したがって同じ炭素原子数nを有する複数のアルデヒド、ならびに対応するアルコールおよび高沸点物質を含有し、nが3から18の間の自然数である、供給混合物の水素化のために開発された。
【0031】
それは、合計して100重量%になる以下の指定値:
9個の炭素原子を有するアルデヒドの総分率:25重量%から75重量%;
9個の炭素原子を有するアルコールの総分率:10重量%から55重量%;
アセタールの総分率:0.5重量%から5.5重量%;
更なる炭化水素の総分率:0重量%から40重量%;および
水:0重量%から3重量%
を有するCアルデヒド混合物の水素化のために特に最適化された。
【0032】
このような供給混合物は、典型的には、Cオレフィンのコバルトで触媒されるヒドロホルミル化で形成される。
【0033】
それは、合計して100重量%になる以下の指定値:
9個の炭素原子を有するアルデヒドの総分率:15重量%から65重量%;
9個の炭素原子を有するアルコールの総分率:20重量%から65重量%;
アセタールの総分率:0.5重量%から5.5重量%;
更なる炭化水素の総分率:0重量%から40重量%;および
水:0重量%から1重量%
を有するCアルデヒド混合物の水素化に特に適している。
【0034】
このような供給混合物は、典型的には、Cオレフィンのロジウムで触媒されるヒドロホルミル化で形成される。
【0035】
触媒の化学的および物理的特性、したがって水素化作業についてのその適合性は、その製造により重大な程度まで測定される。
【0036】
したがって、触媒の製造は、本発明の必須の態様である。これは、以下のステップ:
a)少なくとも99重量%の二酸化ケイ素を含有する担体材料を用意するステップ;
b)ヒドロキシ炭酸銅(II)、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウム、アンモニアならびに水を用意するステップ;
c)溶液が、10重量%から15重量%の間で銅含量を有するように、ヒドロキシ炭酸銅(II)、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウム、アンモニアならびに水から溶液を製造するステップであって、溶液中のクロムの比率が、重量比で0ppmから重量比で50ppmの間であり、溶液中のニッケルの比率が、重量比で0ppmから重量比で50ppmの間である、ステップ;
d)担体材料を、溶液に含浸させるステップ;
e)50℃から150℃の間の温度で、含浸した担体材料を乾燥させるステップ;
f)300℃から600℃の間の温度で、含浸乾燥させた担体材料をか焼させて、前駆体を得るステップ;および
g)水素を用いた還元により前駆体を活性化して、活性触媒を得るステップ
により基本的に特許請求の範囲(claim)により達成される。
【0037】
さらに詳細には、ステップa)からf)は、前駆体の製造に、ステップg)は、その前駆体から実際の触媒の製造に関する。
【0038】
この特徴は、活性化が、前駆体の製造から様々な場所でしばしば達成されるので、重要である。活性化は、通常、元の位置で、すなわち、水素化が後に達成される場所で、さらに詳細には反応器中で達成される。このような場合には、触媒的に不活性な前駆体を、水素化反応器に設置し、その後還元のために水素と接触させ、したがって活性化される。これは、酸化銅が、雰囲気的酸素との接触により再度形成されない利点を有する。
【0039】
代わりに、触媒は、その場外で活性化され、すなわち、水素化反応器の外部で還元され、活性形態で供給および設置される。しかし、その後これは、保護的雰囲気下で行われなければならず、それは、相当に費用がかかり、不都合である。
【0040】
銅は、水素化活性金属として触媒で必要とされる。しかし、触媒費用のため、銅含量は、必要最小限まで減少されるべきである。このため、ステップc)での溶液の製造で、銅含量が、10.5重量%から11.5重量%の間であるように溶液を製造することが望ましい。最適な溶液が、11重量%の銅含量を有するものであることが分かった。
【0041】
溶液を用いた担体材料の含浸は、様々な方法で行われうる。溶液は、細孔に浸透し、非常に実質的に充填するものである。含浸での以下の手段は有用であることが分かった。担体を、回転ドラムに導入する。溶液を、担体に噴霧し、細孔を充填する。噴霧フェーズの間、暖かい空気を、含浸した担体の回転床に通過させうる。暖かい空気は、概して、周囲温度の範囲にある温度の空気である。
【0042】
したがって、ステップd)での含浸、およびステップe)での含浸した担体材料の乾燥の少なくともある程度は、担体材料を含浸のためにドラムに導入し、ドラムを回転させ、溶液をドラム内に噴霧し、乾燥フェーズの間に、50℃から100℃の間の温度、好ましくはおよそ80℃の温度で気流をドラム中に通過させるように、ドラム中で本発明により行われる。ステップd)およびe)は、このようにして装置(ドラム)でほとんど手動の労力なしに始められる。これは、生産費用を低減する。
【0043】
本発明の更なる実施形態では、乾燥が完了される前にドラムから含浸した担体材料を取り除くこと、および100℃から150℃の温度範囲内で気流中で、乾燥機でそれを完全に乾燥させることも同様に可能である。ドラムから乾燥機への移動は、追加のプロセス段階であるが、低い水分含量を導きうる。
【0044】
その製造での、および反応器への据え付けでの触媒の取り扱いは、供給された担体材料が、1mmから2mmの間の直径を有する円筒状押出成形物を含むときに極めて助長される。その後、触媒は、バルク材料のように取り扱われうる。液相水素化では、円筒状押出成形物は、流動力学の点で有益である。Evonikから得られるAerolyst(登録商標)3014は、この望ましい表示形態で利用可能である。触媒の代替的形態として、1mmから2mmの間の直径範囲で球体を使用することも可能である。
【0045】
活性化の前に、前駆体は、好ましくは、合計して100重量%になる以下の組成:
二酸化ケイ素:84重量%から86重量%;
酸化銅:14重量%から16重量%;
ニッケル:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
クロム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
酸化アルミニウム:重量比で0ppmから重量比で1000ppm;および
他の物質:重量比で0ppmから1重量%
を有する。
【0046】
この前駆体中の銅は、なお酸化形態にあることが重要である。結合した酸素のため、活性触媒と、前駆体の総重量で差があり、その理由のため、上記の相対量でも差がある。
【0047】
活性化で、CuOは、HでCuに還元される。同時に形成される水は、取り除かれる。銅触媒は、なお金属性であるので、触媒は、なお水素化活性である。活性化の条件で、酸素が除去され、そのため活性触媒は、本発明の組成を有する。好ましくは、触媒は、液体水素で、元の位置で還元される。代わりに、触媒は、気相で有効に活性化されうる。
【0048】
本発明は、本発明によるアルデヒドの水素化によりアルコールを製造する方法でこの手段で製造された触媒の使用も同様に提供する。
【0049】
前駆体の上記製造、その活性化および同時にアルデヒドの水素化での活性触媒の使用は、上記の問題を解決する。
【0050】
したがって、本発明は、前駆体を製造するため、前駆体を活性化して、活性触媒を得ること、およびアルデヒドの水素化についての触媒を使用することの組み合わせ方法も提供する。したがって、アルデヒドの水素化についての本発明による方法は、以下のステップ:
a)少なくとも99重量%の二酸化ケイ素を含有する担体材料を用意するステップ;
b)ヒドロキシ炭酸銅(II)、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウム、アンモニアならびに水を用意するステップ;
c)溶液が、10重量%から15重量%の間で銅含量を有するように、ヒドロキシ炭酸銅(II)、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウム、アンモニアならびに水を含む溶液を製造するステップであって、溶液中のクロムの比率が、重量比で0ppmから重量比で50ppmの間であり、溶液中のニッケルの比率が、重量比で0ppmから重量比で50ppmの間である、ステップ;
d)担体材料を溶液に含浸させるステップ;
e)50℃から150℃の間の温度で、含浸した担体材料を乾燥させるステップ;
f)300℃から600℃の間の温度で、含浸乾燥させた担体材料をか焼して、合計して100重量%になる以下の組成:
二酸化ケイ素:84重量%から86重量%;
酸化銅:14重量%から16重量%;
ニッケル:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
クロム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
酸化アルミニウム:重量比で0ppmから重量比で1000ppm;
他の物質:重量比で0ppmから1重量%
を特に有する前駆体を得るステップ、
g)前駆体を反応器に移動させるステップ;
h)水素を用いた還元により反応器中の前駆体を活性化させて、合計して100重量%になる以下の組成:
二酸化ケイ素:86重量%から90重量%;
銅:10重量%から14重量%;
ニッケル:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
クロム:重量比で0ppmから重量比で50ppm;
酸化アルミニウム:重量比で0ppmから重量比で1000ppm;および
他の物質:重量比で0ppmから1重量%
を特に有する活性触媒を得るステップ、および
i)水素の存在下で、反応器中の活性触媒を、少なくとも1種のアルデヒドおよび少なくとも1種の付随成分を含む供給混合物と接触させて、水素化されるアルデヒドに対応する少なくともアルコールおよび少なくとも1種の副生物を含む生成混合物を特にもたらすステップ
を含み、
担体材料を含浸のためにドラムに導入し、ドラムを回転させ、溶液をドラム内に噴霧し、乾燥フェーズの間に、50℃から100℃の間の温度の気流をドラム中に通過させるように、上記含浸および上記乾燥の少なくとも一部をドラム中で行う。
【0051】
本発明を、実施例を参照して詳細にこれから説明する。このために、図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】使用される高圧バッチ式水素化装置のプラントフロー図である。
図2】クロムおよびニッケル含有触媒を用いたC9アルデヒド混合物のバッチ式水素化での変換および選択性プロットを示すグラフである。
図3】クロムおよびニッケル不含触媒(「触媒A」)を用いたC9アルデヒド混合物のバッチ式水素化での変換および選択性プロットを示すグラフである。
図4】クロムおよびニッケル含有触媒Aならびにクロムおよびニッケル不含触媒Cを用いたC9アルデヒド混合物の連続水素化での変換および選択性プロットを示すグラフである。
【0053】
実施例0
クロム不含およびニッケル不含のCu/SiO触媒の前駆体の製造
SiO担体を、周囲温度で、テトラアンミン銅炭酸塩水溶液(ヒドロキシ炭酸銅(II)、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウム、アンモニアならびに水から本発明により製造される)に含浸する。これは、中程度の温度で気流での乾燥により行われる。最終的に、か焼は、空気中で、450℃で行われる。
【0054】
使用される担体材料は、Evonikから得られるAerolyst(登録商標)3041である。その典型的な特性は、99%より大きなSiO含量であり、円筒状押出成形物は、およそ1.7mmの直径、約1cm/gの細孔容積および約150m/gのBET表面積を有する。
【0055】
ヒドロキシ炭酸銅、濃厚アンモニア溶液、炭酸水素アンモニウムおよび/または炭酸アンモニウムならびに水を、約13重量%の銅を含有するテトラアンミン銅溶液を製造するために使用する。その溶液を、再度1回、約11重量%の銅になるまで水で希釈した。
【0056】
含浸のために、その後、テトラアンミン銅炭酸塩希釈溶液を、担体材料に噴霧した。この含浸では、担体がドラム内で回転する。噴霧操作中に、一定量の空気を固定床中に通過させた。施される噴霧溶液の量は、含浸の後、実質的に全ての細孔が液体で充填され、銅塩溶液が全粒子にわたり分配されるようなものである。
【0057】
乾燥を同じドラムで行った。このために、ドラムおよび固定床を通過させた気流を、約75℃の温度に加熱した。この特定の場合に、か焼の前に触媒を、120℃で、気流中で更なる反応器中でさらに乾燥にかけた。
【0058】
銅塩が、基本的に酸化銅に変換されるか焼が、連続気流が流れたオーブンで行われた。GHSV(気体時空間速度)は2000h−1であった。触媒を、空気中で10時間、450℃で仮焼した。
【0059】
原則として、触媒は、担体の細孔を、溶液で充填する任意の含浸プロセスにより製造されうる。これらの例としては、真空含浸、または過剰溶液を用いた担体の浸漬も挙げられる。
【0060】
乾燥は、他の慣例の工業的ユニット(シャフト乾燥機、チャンバーオーブン、ベルト乾燥機、ドラム乾燥機、真空乾燥機)でも行われうる。典型的な乾燥温度は、50℃から150℃の間である。
【0061】
か焼で様々なユニットを使用することも可能である:シャフト炉、チャンバー炉、ロータリー炉などである。450℃の温度は、もちろん、いずれも極めて厳しくはない。いくぶんか低い温度または高い温度も、ここで考えられる。
【0062】
この方法で製造される前駆体は、15重量%のCuOおよび約85重量%のSiOを含有した。
【0063】
活性化して触媒を得る目的のために、前駆体を、1010Paで、60L/h(STP)で気体状水素流と接触させる。ここで温度を60℃から180℃まで毎時30K刻みで増加させ、12時間一定に維持した。
【実施例1】
【0064】
(非発明性):180℃で、クロムおよびニッケル含有触媒を用いた共触媒でのヒドロホルミル化からのCアルデヒドの水素化
使用される触媒Aは、DE19842370A1で記載される実験のためにも使用されるとおりクロム含有触媒である。
【0065】
バッチ式水素化実験の実行のために、外部回路により撹拌される1L高圧ステンレス鋼製反応器を使用した。反応器は、4cmの直径および30cmの長さを有する触媒充填のための挿入物を有する。プラントの簡素化されたフロー図面は、図1に示される。
【0066】
反応器および導管を、巻線加熱テープを用いて加熱し、温度を、PT100熱電対を用いて制御および調節した。液相は、45L/hの循環速度でGather社のDS2X30ギアーポンプを用いて循環させた。液相の温度を、LAUDA LTH350sサーモスタットの支援で制御した。使用した加熱キャリアは、MARLOTHERM SHであった。相の分離のために、ステンレス鋼容器(最大容積2L)を、設置し、水で連続して冷却した。相分離容器は、液体反応剤のための貯留層としても同時に役立った。水素および窒素供給は、BronkhorstのF231MまたはF231Cマスフローメーターを用いて制御された。バッチ実験の実行の前に、90mLの触媒A(乾燥)を触媒バスケットに導入し、反応器に設置した。新たな水素化触媒は、1010Paで、60L(STP)/hで水素流で還元された。ここで温度を60℃から180℃まで毎時30K刻みで増加させ、12時間一定に維持した。相分離容器に、1Lの反応剤を充填し、液相を、反応器バイパスを通して循環して加熱した。所望の反応温度の達成で、バイパスサンプルを取り、反応は、反応器栓を開放することにより開始された。反応の間、サンプルを規定の時間に取り出し、オフラインGC(7890B GC;Agilent Technologiesから得る)により分析した。
【0067】
この実験で達成される変換および選択性は、図2でグラフの形態で示される。
【実施例2】
【0068】
(発明性):クロムおよびニッケル不含触媒を用いた180℃での共触媒でのヒドロホルミル化からのCアルデヒドの水素化
実施例0から得られるクロムおよびニッケル不含の触媒(「触媒C」)を用いたバッチ式水素化は、実施例1で記載されるとおりに行われる。触媒Aは、ここで触媒Cに交換される。変換および選択性プロットは、より高いアルコール選択性が、触媒Cで達成されうることを示す。
【実施例3】
【0069】
クロムおよびニッケル含有触媒とクロムおよびニッケル不含触媒との長期比較
代替の水素化触媒の平行評価は、不均一触媒システムの試験のための連続して操作される16−チャネルシステムで行われた。そのシステムは、長さ96cmおよび内径5mmを有する16個の個別のステンレス鋼反応器を有する中央反応器ブロックを有する。反応器ブロックを、電気で加熱し、±1℃の精度での反応器の等温操作を可能にする。毛管リストリクターのシステムは、液体および気体反応剤を分配および測定するために使用される。反応器の圧力保持は、Equilibarから得られる背圧膜モジュールに基づく。水素化触媒の評価のために、実施例1および2に記載されるバッチ式実験から触媒活性を評価した後、0.2gから0.6gの触媒(乾燥形態で)を、シーブ分率(0.2mmから0.4mm)の形態で使用し、破砕石英(0.3mmから0.5mm)で薄めた。使用された触媒は、10cmの触媒的に活性な一定の長さの床を生じるように常に薄めた。液相水素化は、トリクルベッド操作で行われる。水素は、ここで気体状形態で供給されなければならない。その後、水素は、液相に部分的に溶解され、気相で気泡の形態で部分的に溶解される。さらに、気体状副生物の蓄積を避けるために、オフガスフローがある。したがって、試験は、180℃の温度で、6h−1のLHSV(液時空間速度)で2510Paの水素圧および2000h−1のGHSV(気体状水素の気体時空間速度)で行われた。全ての測定は、二重測定として行われた。生成物サンプルを、実施例1および実施例2による水素化実験と同様に、オフラインGC(7890B GC;Agilent Technologiesから得られる)により分析した。
【0070】
図4で示されるこの比較の変換および選択性プロットに示されるとおり、実験の全期間にわたりクロムおよびニッケル含有の比較触媒Aのものより常に高いアルコール選択性を達成することは、独創性のあるクロムおよびニッケル不含触媒Cで可能である。同時に、触媒Cは、触媒Aと比較した変換の程度で非常に小さな減少が特徴的である。
【0071】
結論
実施例の比較によって、本発明によるCrおよびNi不含のCu触媒を使用して、工業的ヒドロホルミル化から得られるC、C、C13およびC17アルデヒド混合物を水素化し、同時に、高い比率の対応するアルデヒドを含有する一方で、不要な副生物の比率が小さい生成混合物を得ることが可能であることが示される。
【0072】
長期間にわたり見ると、クロムおよびニッケルを用いない実験から得られるアルデヒド収率は、従来のNi/Cu/Crシステムを用いた比較実験より有意に乏しくはない。
【0073】
クロムおよびニッケル不含触媒の製造で、発癌物質を取り扱うことを避けることが可能である。高価な金属の使用は不必要である。触媒の製造で追加の稼動段階、例えば、硫化は必要とされなかった。製造で、高温は必要とされなかった。水素化の結果は、完全に満足のゆくものである。触媒は、産業界で経済的に利用可能であるように見える。
図1
図2
図3
図4