特許第6844932号(P6844932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844932
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20210308BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20210308BHJP
   H02M 7/487 20070101ALI20210308BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M7/12 F
   H02M7/12 H
   H02M7/487
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-237594(P2017-237594)
(22)【出願日】2017年12月12日
(65)【公開番号】特開2019-106784(P2019-106784A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2019年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐司
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−059132(JP,A)
【文献】 特開2005−278296(JP,A)
【文献】 特開平09−205779(JP,A)
【文献】 特開2005−185003(JP,A)
【文献】 特開2016−019336(JP,A)
【文献】 米国特許第05982136(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/12
H02M 7/487
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子と、電荷蓄積素子と、を有し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、交直変換を行う電圧型の主回路部と、
前記主回路部と並べて設けられ、前記主回路部の全体に流れる電流の変化にともなう空間の所定の点の磁束量の変化を検出することにより、前記電荷蓄積素子の短絡を検出する1つの磁束センサと、
前記主回路部の前記交直変換の動作を制御するとともに、前記磁束センサによる短絡の検出に応じて、前記主回路部の保護動作を行う制御部と、
を備えた電力変換装置。
【請求項2】
前記主回路部は、上アーム用の前記電荷蓄積素子と、下アーム用の前記電荷蓄積素子と、を有し、
前記磁束センサは、前記上アーム用の電荷蓄積素子及び前記下アーム用の前記電荷蓄積素子に対して1つ設けられる請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記主回路部は、正電位端子、負電位端子、及び中性点端子の3つの直流端子と、複数の交流端子と、を有し、前記複数の交流端子から供給された交流電力を、正電位、負電位、及び中性点電位の3レベルを有する直流電力に変換可能である請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷蓄積素子(例えば直流コンデンサ)と複数のスイッチング素子とを有する電圧型の主回路部を備えた電力変換装置(例えば電圧型インバータ)が知られている。こうした電圧型の電力変換装置において、電荷蓄積素子の短絡(直流短絡)を検出する短絡検出回路を設けることが行われている。短絡検出回路は、主回路部のメインの電荷蓄積素子よりも小容量の短絡検出コンデンサと、電流センサと、を有し、メインの電荷蓄積素子の短絡時に短絡検出コンデンサから流れ出る電流を電流センサで検出することにより、短絡を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、短絡検出回路を設けると、部品点数が増加し、電力変換装置の大型化やコスト増を招いてしまう。また、短絡検出回路は、メインの電荷蓄積素子と同じ電位であるため、周囲との絶縁を考慮する必要があり、絶縁の構造が複雑である。さらに、メインの電荷蓄積素子に流れる短絡電流と、短絡検出コンデンサに流れる短絡電流とは、各素子の容量比で決まるが、実際には、短絡検出コンデンサに流れる電流は、回路の寄生インダクタンスやスイッチング素子のスイッチングなどに影響され、設計が複雑である。また、定常時と短絡時の電流の差も小さく、保護協調の確保に労力を要する。
【0004】
このため、電圧型の電力変換装置では、電荷蓄積素子の短絡を簡単に検出できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−19336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、電荷蓄積素子の短絡を簡単に検出できる電圧型の電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、電圧型の主回路部と、1つの磁束センサと、制御部と、を備えた電力変換装置が提供される。前記主回路部は、複数のスイッチング素子と、電荷蓄積素子と、を有し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、交直変換を行う。前記1つの磁束センサは、前記主回路部と並べて設けられ、前記主回路部の全体に流れる電流の変化にともなう空間の所定の点の磁束量の変化を検出することにより、前記電荷蓄積素子の短絡を検出する。前記制御部は、前記主回路部の前記交直変換の動作を制御するとともに、前記磁束センサによる前記短絡の検出に応じて、前記主回路部の保護動作を行う。
【発明の効果】
【0008】
電荷蓄積素子の短絡を簡単に検出できる電圧型の電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2】第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、第2の実施形態に係る電力変換装置の一部を模式的に表すブロック図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、第2の実施形態に係る電力変換装置の一部を模式的に表す平面図及び断面図である。
図5】第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【0010】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、主回路部12と、磁束センサ14と、制御部16と、を備える。
【0012】
主回路部12は、第1変換器21と、第2変換器22と、を有する。第1変換器21は、2つの交流端子21a、21bと、3つの直流端子21p、21n、21cと、を有する。各交流端子21a、21bは、例えば、変圧器4を介して交流電源2に接続される。これにより、第1変換器21には、交流電源2からの交流電力が供給される。
【0013】
交流電源2は、例えば、種々の発電装置や商用の電力系統などである。交流電源2から供給される交流電力は、例えば、単相交流電力である。交流電源2の交流電力は、単相交流電力に限ることなく、三相交流電力などでもよい。変圧器4は、電力変換装置10に設けてもよいし、電力変換装置10とは別に設けてもよい。
【0014】
第1変換器21は、入力された交流電力(第1交流電力)を正電位P、負電位N及び中性点電位Oの3レベルを有する直流電力に変換にする。以下では、各直流端子21p、21n、21cを、それぞれ正電位端子21p、負電位端子21n、中性点端子21cと称す。
【0015】
第1変換器21は、正電位端子21pを正電位Pに設定し、負電位端子21nを負電位Nに設定し、中性点端子21cを中性点電位Oに設定する。中性点電位Oは、正電位Pと負電位Nとの中間の電位である。これにより、第1変換器21は、正電位端子21pと中性点端子21cとの間に直流電圧VPO(第1直流電圧)を発生させ、中性点端子21cと負電位端子21nとの間に直流電圧VON(第2直流電圧)を発生させる。従って、正電位端子21pと負電位端子21nとの間の直流電圧VDCは、VDC=VPO+VONである。
【0016】
第2変換器22は、各直流端子21p、21n、21cに接続されるとともに、変圧器6を介して交流負荷8に接続される。交流負荷8は、例えば、交流電源2とは異なる電力系統である。第2変換器22は、第1変換器21から入力された直流電力を、交流負荷8に応じた所望の周波数及び電圧値の交流電力(第2交流電力)に変換し、その交流電力を交流負荷8に供給する。
【0017】
このように、電力変換装置10は、交流電源2の交流電力を一度直流電力に変換し、その直流電力を別の交流電力に変換して交流負荷8に供給する。電力変換装置10は、例えば、BTB(Back To Back)方式の系統連系設備に用いられる。第1変換器21は、いわゆる3レベル式のコンバータである。第2変換器22は、3レベル式のインバータである。第1変換器21は、2レベル式のコンバータでもよい。第2変換器22は、2レベル式のインバータでもよい。第1変換器21及び第2変換器22は、3レベル以上のマルチレベルの変換器でもよい。
【0018】
また、電力変換装置10では、交流負荷8側の交流電力を交流電源2に応じた交流電力に変換して交流電源2に供給することもできる。この場合には、第1変換器21がインバータとして機能し、第2変換器22がコンバータとして機能する。
【0019】
交流負荷8は、電力系統に限ることなく、例えば、誘導電動機などでもよい。電力変換装置10は、誘導電動機の駆動制御などに用いてもよい。
【0020】
第1変換器21は、複数のスイッチング素子41と、複数の整流素子42、43と、複数の電荷蓄積素子44、45と、を有する。この例において、第1変換器21は、8個のスイッチング素子41と、8個の整流素子42と、4個の整流素子43と、2個の電荷蓄積素子44と、2個の電荷蓄積素子45と、を有する。各スイッチング素子41は、ブリッジ接続されている。各整流素子42は、各スイッチング素子41に逆並列に接続されている。
【0021】
スイッチング素子41は、一対の主端子と、制御端子と、を有する。制御端子は、各主端子間に電流が流れるオン状態と、各主端子間に実質的に電流が流れないオフ状態と、の切り替えに用いられる。スイッチング素子41には、例えば、GTO(Gate Turn Off thyristor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの自己消弧素子が用いられる。制御端子は、例えば、ゲート端子である。
【0022】
各電荷蓄積素子44は、正電位端子21pと中性点端子21cとの間に設けられる。各電荷蓄積素子44は、正電位端子21pと中性点端子21cとの間に電気的に接続される。各電荷蓄積素子45は、中性点端子21cと負電位端子21nとの間に設けられる。各電荷蓄積素子45は、中性点端子21cと負電位端子21nとの間に電気的に接続される。各電荷蓄積素子44、45は、直流電圧VPO、VONを平滑化する。各電荷蓄積素子44、45は、換言すれば、平滑コンデンサ又は直流コンデンサである。
【0023】
第1変換器21は、単相ブリッジ接続された電圧型のコンバータであり、4つのアームAA、AB、AX、AYを有する。各交流端子21a、21bに接続される各相のアームAA、AB、AX、AYのそれぞれの構成は、実質的に同じである。従って、ここでは例示として交流端子21aに接続される2つのアームAA、AXについて説明する。
【0024】
正側の上アームAAは、直列に接続された2つのスイッチング素子SA1、SA2と、これらのスイッチング素子SA1、SA2のそれぞれに逆並列に接続された整流素子DA1、DA2と、各スイッチング素子SA1、SA2の直列接続点と中性点端子21cとの間に接続された整流素子DA3と、スイッチング素子SA1と正電位端子21pとの接続点と中性点端子21cとの間に接続された電荷蓄積素子CA1と、を有する。
【0025】
負側の下アームAXは、直列に接続された2つのスイッチング素子SX1、SX2と、これらのスイッチング素子SX1、SX2のそれぞれに逆並列に接続された整流素子DX1、DX2と、各スイッチング素子SX1、SX2の直列接続点と中性点端子21cとの間に接続された整流素子DX3と、スイッチング素子SX2と負電位端子21nとの接続点と中性点端子21cとの間に接続された電荷蓄積素子CA2と、を有する。
【0026】
上アームAA及び下アームAXは、正電位端子21pと負電位端子21nとの間に直列に接続され、上アームAA及び下アームAXの直列接続点が交流端子21aに接続される。スイッチング素子SA1、SA2の直列接続点の電位は、整流素子DA3を介して中性点電位Oにクランプされる。同様に、スイッチング素子SX1、SX2の直列接続点の電位は、整流素子DX3を介して中性点電位Oにクランプされる。整流素子DA1、DA2、DX1、DX2(各整流素子42)は、いわゆる還流ダイオードである。整流素子DA3、DX3(各整流素子43)は、いわゆるクランプダイオードである。
【0027】
上アームABの構成は、上アームAAの構成と実質的に同じである。下アームAYの構成は、下アームAXの構成と実質的に同じである。これにより、各スイッチング素子41のスイッチングに応じて、交流端子21a、21bの電位が、正電位端子21p、負電位端子21n、及び中性点端子21cの3レベルのいずれかの電位にクランプされる。第1変換器21は、いわゆる中性点クランプ(NPC:Neutral-Point-Clamped)型の変換器(コンバータ)である。
【0028】
第2変換器22は、複数のスイッチング素子51と、複数の整流素子52、53と、複数の電荷蓄積素子54、55と、を有する。第2変換器22は、第1変換器21と同様に、中性点クランプ型の変換器(インバータ)である。第2変換器22の構成は、第1変換器21の構成と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。第2変換器22においては、正電位端子21p、負電位端子21n、中性点端子21cと接続された側が直流側となり、交流負荷8と接続された側が交流側(交流端子22a、22b)となる。
【0029】
このように、主回路部12は、複数のスイッチング素子41、51と、複数の電荷蓄積素子44、45、54、55と、を有し、複数のスイッチング素子41、51のスイッチングにより、交直変換を行う。この例では、主回路部12が、複数の電荷蓄積素子44、45、54、55を有している。例えば、主回路部12が、2レベル式のインバータなどである場合には、電荷蓄積素子の数は、1つでもよい。
【0030】
磁束センサ14は、主回路部12と並べて設けられる。磁束センサ14は、例えば、主回路部12に近接して配置される。磁束センサ14は、主回路部12の動作にともなう空間の磁束量の変化により、電荷蓄積素子44、45、54、55の短絡を検出する。磁束センサ14は、例えば、主回路部12の全体に流れる電流の変化にともなう空間の磁束量の変化を検出する。磁束センサ14は、制御部16と接続されている。磁束センサ14は、検出結果を制御部16に入力する。
【0031】
磁束センサ14には、例えば、ホール素子や磁気インピーダンス素子などが用いられる。磁束センサ14は、導体を挿通するための貫通孔などを有しない非貫通型のセンサである。磁束センサ14は、例えば、貫通型のCT(Current Transformer)などの貫通型のセンサとは異なる。
【0032】
制御部16は、主回路部12の交直変換の動作を制御する。制御部16は、主回路部12の各スイッチング素子41、51のそれぞれの制御端子と接続されている。これにより、制御部16は、各スイッチング素子41、51のスイッチングを制御し、主回路部12の交直変換の動作を制御する。
【0033】
また、制御部16は、主回路部12の交直変換の動作を制御するとともに、磁束センサ14による短絡の検出に応じて、主回路部12の保護動作を行う。制御部16は、磁束センサ14によって検出された磁束量が所定値以上となった場合に、各電荷蓄積素子44、45、54、55のいずれかが短絡したと判断し、主回路部12の交直変換の動作の制御から主回路部12の保護動作の制御に移行する。
【0034】
主回路部12の保護動作は、例えば、主回路部12の停止である。制御部16は、例えば、磁束センサ14による短絡の検出に応じて、主回路部12の動作を保護停止させる。これにより、例えば、各スイッチング素子41、51の故障の拡大などを抑制することができる。
【0035】
主回路部12の保護動作は、例えば、各変換器21、22の出力電圧の低下や、第2変換器22から出力する第2交流電力の有効電力の低下などでもよい。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10では、磁束センサ14による電荷蓄積素子44、45、54、55の短絡の検出に応じて、主回路部12の保護動作を行う。これにより、電力変換装置10では、例えば、短絡検出コンデンサなどを用いた短絡検出回路を設ける場合と比べて、追加回路のボリュームを小さくすることができる。電力変換装置10では、部品点数の増加にともなう装置の大型化やコスト増を抑制することができる。
【0037】
また、短絡検出回路を用いた場合には、周囲との絶縁を考慮する必要があったが、電力変換装置10では、磁束センサ14を主回路部12から空間的に離した位置に設置できるため、構造的な絶縁設計を容易にすることができる。
【0038】
また、短絡検出回路を用いた場合、短絡検出回路に流れる電流は、回路の寄生インダクタンスやスイッチング素子のスイッチングに影響され、設計が複雑であった。さらに、定常時と短絡時の電流の差が小さく、保護協調の確保に労力を要していた。これに対して、電力変換装置10では、「磁束量B(=μH)∝近傍の電流I」となるため、定常時と短絡時の主回路部12に流れる電流の差が、そのまま磁束量の差となる。定常時と短絡時の主回路部12の電流差は、例えば10倍〜100倍程度と大きいため、検出レベルをシビアに調整しなくとも保護協調を確保することができ、設計を容易とすることができる。
【0039】
このように、本実施形態に係る電力変換装置10では、電荷蓄積素子44、45、54、55の短絡を簡単に検出することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、電力変換装置10aは、複数の磁束センサ14a、14bを有する。なお、上記第1の実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0041】
磁束センサ14aは、上アームAA用の電荷蓄積素子CA1に対応して設けられる。磁束センサ14bは、下アームAX用の電荷蓄積素子CA2に対応して設けられる。このように、電力変換装置10aでは、磁束センサ14が、上アームAA用の電荷蓄積素子CA1及び下アームAX用の電荷蓄積素子CA2のそれぞれに対応して複数設けられる。
【0042】
図3(a)及び図3(b)は、第2の実施形態に係る電力変換装置の一部を模式的に表すブロック図である。
例えば、故障などでスイッチング素子SA1、SA2、SX1が同時にオン状態となった場合には、図3(a)に表したように、上アームAAの電荷蓄積素子CA1が短絡し、スイッチング素子SA1、SA2、SX1及び整流素子DX3に短絡電流IS1が流れる。
【0043】
また、例えば、スイッチング素子SA2、SX1、SX2が同時にオン状態となった場合には、図3(b)に表したように、下アームAXの電荷蓄積素子CA2が短絡し、整流素子DA3及びスイッチング素子SA2、SX1、SX2に短絡電流IS2が流れる。
【0044】
磁束センサ14aは、電荷蓄積素子CA1の短絡時に短絡電流IS1の流れる配線61と並べて設けられ、配線61に流れる電流の変化にともなう空間の磁束量の変化を検出する。
【0045】
同様に、磁束センサ14bは、電荷蓄積素子CA2の短絡時に短絡電流IS2の流れる配線62と並べて設けられ、配線62に流れる電流の変化にともなう空間の磁束量の変化を検出する。
【0046】
磁束センサ14a、14bは、制御部16と接続されている。磁束センサ14a、14bは、検出結果を制御部16に入力する。制御部16は、複数の磁束センサ14a、14bのいずれかによる短絡の検出に応じて、主回路部12の保護動作を行う。
【0047】
図4(a)及び図4(b)は、第2の実施形態に係る電力変換装置の一部を模式的に表す平面図及び断面図である。
図4(a)及び図4(b)に表したように、この例において、配線61は、所定の幅を有する導体板70である。導体板70は、例えば、第1絶縁部72aと、第1絶縁部72aの上に設けられた第1導電部74aと、第1導電部74aの上に設けられた第2絶縁部72bと、第2絶縁部72bの上に設けられた第2導電部74bと、第2導電部74bの上に設けられた第3絶縁部72cと、を有する。
【0048】
第1導電部74aは、スイッチング素子SA1の一方の主端子41aと接続されている。第2導電部74bは、スイッチング素子SA1の他方の主端子41bと接続されている。このように、配線61として導体板70を用いることにより、配線61の電気抵抗を低くすることができる。また、第1導電部74aと第2導電部74bとを積層することにより、配線61の寄生インダクタンスを低くすることができる。導体板70は、例えば、平行平板ラミネートブスバーである。
【0049】
磁束センサ14aは、導体板70と対向して設けられる。磁束センサ14aは、例えば、第3絶縁部72cの上に設けられる。磁束センサ14aは、例えば、第1絶縁部72a側に設けてもよい。磁束センサ14aは、導体板70の表面に接した状態で配置してもよいし、導体板70の表面から離間した状態で配置してもよい。
【0050】
また、図示は省略するが、配線62も、配線61と同様に、導体板70である。磁束センサ14bは、磁束センサ14bと同様に、導体板70と対向して設けられる。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10aでは、磁束センサ14が、上アームAA用の電荷蓄積素子CA1及び下アームAX用の電荷蓄積素子CA2のそれぞれに対応して複数設けられる。これにより、例えば、電荷蓄積素子44、45、54、55の短絡をより確実に検出することができる。
【0052】
また、電力変換装置10aでは、磁束センサ14aが、配線61に流れる電流の変化にともなう空間の磁束量の変化を検出し、磁束センサ14bが、配線62に流れる電流の変化にともなう空間の磁束量の変化を検出する。これにより、例えば、電荷蓄積素子44、45、54、55の短絡をより確実に検出することができる。
【0053】
一方、第1の実施形態に関して説明したように、主回路部12の全体に流れる電流の変化にともなう空間の磁束量の変化を1つの磁束センサ14で検出するようにした場合には、より簡単な構成で電荷蓄積素子44、45、54、55の短絡を検出することができる。
【0054】
また、例えば、貫通型のCTなどは、導体板70に挿通することが難しい。これに対して、電力変換装置10aでは、非貫通型の磁束センサ14a、14bを導体板70と対向させて設けることで、導体板70に流れる電流の変化にともなう空間の磁束量の変化を検出することができる。従って、配線61、62を導体板70とした場合にも、簡単な構成で確実に電荷蓄積素子44、45、54、55の短絡を検出することができる。
【0055】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図5に表したように、電力変換装置10bでは、磁束センサ14が、中性点端子21cに接続された配線63と並べて設けられる。配線63は、例えば、導体板である。磁束センサ14は、第2の実施形態の磁束センサ14a、14bと同様に、導体板である配線63と対向して設けられる。
【0056】
配線63には、電荷蓄積素子CA1の短絡時の短絡電流IS1及び電荷蓄積素子CA2の短絡時の短絡電流IS2の双方が流れる(図3(a)及び図3(b)参照)。従って、磁束センサ14は、配線63に流れる電流の変化にともなう空間の磁束量の変化を検出する。これにより、電力変換装置10bでは、上アームAAの電荷蓄積素子CA1の短絡及び下アームAXの電荷蓄積素子CA2の短絡を、1つの磁束センサ14で検出することができる。従って、電力変換装置10bでは、より簡単な構成で電荷蓄積素子44、45、54、55の短絡を検出することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
2…交流電源、 4、6…変圧器、 8…交流負荷、 10、10a、10b…電力変換装置、 12…主回路部、 14、14a、14b…磁束センサ、 16…制御部、 21…第1変換器、 21a、21b…交流端子、 21c、21p、21n…直流端子、 22…第2変換器、 41、51…スイッチング素子、 42、43、52、53…整流素子、 44、45、54、55…電荷蓄積素子、 61〜63…配線、 70…導体板、 72a…第1絶縁部、 72b…第2絶縁部、 72c…第3絶縁部、 74a…第1導電部、 74b…第2導電部、 AA、AB、AX、AY…アーム
図1
図2
図3
図4
図5