特許第6844946号(P6844946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844946
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20210308BHJP
   B21D 53/08 20060101ALI20210308BHJP
   F24F 1/18 20110101ALI20210308BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20210308BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   F28F1/32 X
   F28F1/32 P
   B21D53/08 L
   F24F1/18
   F25B39/00 E
   F28D1/053 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-255686(P2015-255686)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120134(P2017-120134A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年5月31日
【審判番号】不服2019-15610(P2019-15610/J1)
【審判請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】安藤 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】前迫 賢司
【合議体】
【審判長】 林 茂樹
【審判官】 山崎 勝司
【審判官】 山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−31483(JP,A)
【文献】 実開昭54−105065(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F1/32
B21D53/08
F24F1/18
F28D1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲部を有するL型の熱交換器であって、
冷媒が流通する扁平管と、
前記扁平管を嵌合する嵌合部を有し前記扁平管と交差する方向に延在し前記扁平管の長さ方向に積層される複数のフィンと、
前記フィンの一部を切り起こして形成され隣り合う前記フィンとの間隔を保持する第1スペーサと、を備え、
前記第1スペーサは、その先端部と根本部の間で優先的に座屈する座屈部を有し、前記湾曲部の内側に位 置する場合は座屈部が折れ曲がった状態である第1姿勢を取り、前記湾曲部以外に位置す る場合は座屈部が折れ曲がっていない状態である第2姿勢を取ることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記座屈部が、前記第1スペーサの先端部と前記第1スペーサの根元部の間で最もフィン 表面の幅が狭い狭幅部、前記第1スペーサの先端部と前記第1スペーサの根元部の間で最も板厚の薄い薄肉部の何れかにより形成されることを特徴とする請求項に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記フィンの一部を切り起こして形成され隣り合う前記フィンとの間隔を保持する第2スペーサを備え、
前記第2スペーサの先端部に切欠きを有し、前記第1スペーサは、前記熱交換器のL型曲げ加工後に前記扁平管よりも内側となる位置に配置され、前記第2スペーサは前記熱交換器のL型曲げ加工後に前記扁平管よりも外側となる位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記切欠きが、前記第2スペーサの前記先端部の中央において、少なくとも1つの凹部から形成されることを特徴とする請求項3に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等に用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィンチューブ熱交換器のフィン(放熱板)には、フィン同士の間隔を適正に保つために、フィンの一部を切り起こして形成されるスペーサが設けられている(例えば、特許文献1参照)。例えば、図10に示すフィン101は、扁平管102と嵌合される複数の嵌合部103を有するとともに、上下が嵌合部103で区画される領域の前端部及び後端部にスペーサ104を備えている。
【0003】
図11の(a)には、熱交換器100を空気調和機の室外機筐体内に収めるために、平面視L型に形成されたものが示されている。この種の熱交換器100は、表面にロウ材が塗布された部材で平型の熱交換器100を組み立てる組み立て工程と、組み立てられた平型の熱交換器100を炉に入れてロウ付けするロウ付け工程と、ロウ付けされた平型の熱交換器100をL型に曲げ加工する曲げ工程と、を経て製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−163318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スペーサ104は、その先端側が隣り合うフィン101にロウ付けされることになるが、図11の(b)に示すように、平型の熱交換器100をL型に曲げ加工する際、湾曲部105の内側となる位置、言い換えると曲げ加工時にフィン間隔が狭まる位置において、スペーサ104が座屈しない箇所が部分的に発生し、結果として、湾曲部105の内側においてフィン101の間隔が一定とならず、熱交換効率が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、フィンの一部を切り起こして形成されるスペーサを備える熱交換器であり、L字曲げ加工後において湾曲部の内側におけるフィンの間隔を一定とし、熱交換効率を向上させることができる熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、湾曲部を有するL型の熱交換器であって、冷媒が流通する扁平管と、前記扁平管を嵌合する嵌合部を有し前記扁平管と交差する方向に延在し前記扁平管の長さ方向に積層されるフィンと、前記フィンの一部を切り起こして形成され隣り合う前記フィンとの間隔を保持する第1スペーサと、を備え、前記第1スペーサは、前記湾曲部の内側に位置し、その先端部と根元部の間で優先的に座屈する座屈部を有することを特徴とする。
この構成によれば、ロウ付け後の曲げ加工に際し、湾曲部の内側においては、第1スペーサが座屈するので、湾曲部の内側におけるフィンの間隔を一定とし、熱交換効率を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の熱交換器において、前記座屈部が、前記第1スペーサの先端部と前記第1スペーサの根元部の間で最もフィン表面の幅が狭い狭幅部、前記第1スペーサの先端部と前記第1スペーサの根元部の間で最も板厚の薄い薄肉部の何れかにより形成されることを特徴とする。
この構成によれば、ロウ付け後の曲げ加工に際し、湾曲部の内側においてスペーサを確実に座屈させる座屈部が得られる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の熱交換器において、前記熱交換器は、前記フィンの一部を切り起こして形成され隣り合う前記フィンとの間隔を保持する第2スペーサをさらに備え、前記第2スペーサは先端部に切欠きを有し、前記第1スペーサは、前記熱交換器のL型曲げ加工後に前記扁平管よりも外側となる位置に配置され、前記第2スペーサは前記熱交換器のL型曲げ加工後に前記扁平管よりも内側となる位置に配置されることを特徴とする。
この構成によれば、従来に比べて第2スペーサの先端側と隣り合うフィンとのロウ付け面積が縮小されて外れやすくなるので、ロウ付け後の曲げ加工に際し、湾曲部の外側においては、第2スペーサの先端側が隣り合うフィンから外れることになり、その結果、湾曲部の外側におけるフィンの間隔を一定とし、熱交換効率を向上させることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の熱交換器において、前記切欠きが、前記第2スペーサの先期先端部の中央において、少なくとも1つの凹部から形成されることを特徴とする。
この構成によれば、第2スペーサの先端側と隣り合うフィンとのロウ付け面積が対称に縮小されるので、ロウ付け後の曲げ加工に際し、湾曲部の外側においては、スペーサの先端側を隣り合うフィンから確実に外すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィンの一部を切り起こして形成されるスペーサを備える熱交換器であり、L字曲げ加工後において湾曲部のフィンの間隔を一定とし、熱交換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る熱交換器が適用された空気調和機の構成を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る熱交換器が適用された室外機の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る熱交換器が適用された室外機の内部斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る熱交換器を示す図であり、(a)は熱交換器の平面図、(b)は熱交換器の正面図、(c)は熱交換器の側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る熱交換器の要部側面断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る熱交換器のフィンに形成された外側スペーサを示す図であり、(a)は外側スペーサを示すフィンの要部側面図、(b)は外側スペーサを示すフィンの要部斜視図、(c)は外側スペーサのA−A断面図、(d)は外側スペーサを示すフィンの要部正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る熱交換器のフィンに形成された内側スペーサを示す図であり、(a)は内側スペーサを示すフィンの要部側面図、(b)は内側スペーサを示すフィンの要部斜視図、(c)は内側スペーサのB−B断面図、(d)は内側スペーサを示すフィンの要部正面図である。
図8】本発明の実施形態に係る熱交換器のフィンに形成された内側スペーサの作用説明図であり、(a)は曲げ加工前の内側スペーサを示すフィンの要部正面図、(b)は曲げ加工前の内側スペーサを示すフィンの要部平面図、(c)は曲げ加工後の内側スペーサを示すフィンの要部正面図、(d)は曲げ加工後の内側スペーサを示すフィンの要部平面図である。
図9】変形例に係る外側スペーサを示す図であり、(a)は変形例に係る外側スペーサを示すフィンの要部側面図、(b)は変形例に係る外側スペーサのC−C断面図、(c)は変形例に係る外側スペーサを示すフィンの要部正面図である。
図10】従来例に係る熱交換器のフィンに形成されたスペーサを示す説明図である。
図11】従来例に係る熱交換器を示す図であり、(a)は曲げ加工前の熱交換器を示す平面図、(b)は曲げ加工後の熱交換器を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。
【0014】
[空気調和機]
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器が適用された空気調和機の構成を示す説明図である。
図1に示すように、空気調和機1は、室内機2と室外機3とを備えている。室内機2には、室内用の熱交換器4が設けられ、室外機3には、室外用の熱交換器5の他に、圧縮機6、膨張弁7、四方弁8等が設けられている。
【0015】
暖房運転時には、室外機3の圧縮機6から吐出した高温高圧のガス冷媒が四方弁8を介して室内機2の熱交換器4に流入する。熱交換器4(凝縮器)で空気と熱交換した高圧のガス冷媒は凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機3の膨張弁7を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり熱交換器5へ流入する。熱交換器5(蒸発器)で外気と熱交換した冷媒はガス化する。その後、低圧のガス冷媒は、四方弁8を介して圧縮機6に吸入される。
【0016】
冷房運転時には、室外機3の圧縮機6から吐出した高温高圧のガス冷媒が四方弁8を介して熱交換器5に流入する。熱交換器5(凝縮器)で外気と熱交換した高圧のガス冷媒は凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機3の膨張弁7を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり、室内機2の熱交換器4へ流入する。熱交換器4(蒸発器)で空気と熱交換した冷媒はガス化する。その後、低圧のガス冷媒は、四方弁8を介して圧縮機6に吸入される。
【0017】
[室外機]
図2は、本発明の実施形態に係る熱交換器が適用された室外機の斜視図である。
図2に示すように、室外機3の外部は、背面に吸込口(図示せず)を有し、且つ正面に吹出口9aを有するケース9と、ケース9の下面部に設けられる脚部10と、ケース9の吹出口9aを覆うファンガード11と、配線接続部12及び配管接続部13を覆う着脱自在なカバー14と、を備えている。
【0018】
図3は、本発明の実施形態に係る熱交換器が適用された室外機の内部斜視図である。
図3に示すように、室外機3の内部は、仕切板15により機械室16と熱交換室17とに区画されている。機械室16には、圧縮機6や図示しないアキュムレータ等が配置され、熱交換室17には、熱交換器5及び送風ファン18が配置されている。熱交換器5は、ケース9の背面及び一側面に沿う平面視L型であり、送風ファン18により背面の吸込口から吸い込まれた空気と冷媒の間で熱交換を行う。
【0019】
L型の熱交換器5は、平型に形成された熱交換器5を曲げ加工することで得られる。具体的には、表面にロウ材が塗布された部材で平型の熱交換器5を組み立てる組み立て工程と、組み立てられた平型の熱交換器5を炉に入れてロウ付けするロウ付け工程と、ロウ付けされた平型の熱交換器5をL型に曲げ加工する曲げ工程と、を経てL型の熱交換器5が製造される。まず、平型の熱交換器5について説明する。
【0020】
[熱交換器]
図4は、本発明の実施形態に係る熱交換器を示す図であり、(a)は熱交換器の上面図、(b)は熱交換器の正面図、(c)は熱交換器の側面図である。
図4に示すように、熱交換器5は、冷媒が流通する複数の扁平管19と、扁平管19の両端に取り付けられる一対のヘッダ20と、扁平管19と交差する方向に延在し扁平管19の長さ方向に積層される複数のフィン21と、を備えている。
【0021】
図5は、本発明の実施形態に係る熱交換器の要部側面断面図である。
図5に示すように、扁平管19は、矢印で示す空気流通方向に延びた扁平な形状を有し、その内部には、空気流通方向に直交する複数の冷媒流路19aが形成されている。
【0022】
扁平管19は、空気が通過するための隙間を介して上下に並列に配置され、その両端部が一対のヘッダ20に接続される。例えば、図4の(b)に示す熱交換器5では、左右方向に沿う複数の扁平管19を上下方向に所定の隙間を介して並列させ、それぞれ扁平管19の両端部をヘッダ20に接続している。
【0023】
ヘッダ20は、円筒形状を有しており、その内部には、熱交換器5に供給された冷媒を複数の扁平管19に分岐状に流入させたり、複数の扁平管19から流出した冷媒を合流させる。
【0024】
フィン21は、図5の正面視において扁平管19と交差する方向に延在する平板形状を有しており、扁平管19の長さ方向に空気が通過するための隙間を介して並列に積層して配置されている。例えば、図4の(b)に示す熱交換器5では、上下方向に沿う複数のフィン21が左右方向に所定の隙間を介して並列に配置されている。
【0025】
図5に示すように、フィン21には、扁平管19と嵌合される複数の嵌合部21aが形成されており、これらの嵌合部21aを扁平管19と嵌合させた状態でロウ付けすることにより、フィン21と扁平管19とが一体的に接合される。なお、本実施形態の嵌合部21aは、風上側が開口した切り欠き溝形状であるが、打ち抜き孔形状であってもよい。
【0026】
[スペーサ]
つぎに、本発明の要部であるフィン21のスペーサ22、23について、図5図8を参照して説明する。
【0027】
図6は、本発明の実施形態に係る熱交換器のフィンに形成された外側スペーサ22(第2スペーサ)を示す図であり、(a)は外側スペーサ22を示すフィンの要部側面図、(b)は外側スペーサ22を示すフィンの要部斜視図、(c)は外側スペーサ22のA−A断面図、(d)は外側スペーサ22を示すフィンの要部正面図であり、図7は、本発明の実施形態に係る熱交換器のフィンに形成された内側スペーサ23(第1スペーサ)を示す図であり、(a)は内側スペーサ23を示すフィンの要部側面図、(b)は内側スペーサ23を示すフィンの要部斜視図、(c)は内側スペーサ23のB−B断面図、(d)は内側スペーサ23を示すフィンの要部正面図である。
図5図7に示すように、フィン21には、隣り合うフィン21同士の間隔(例えば、1mm〜数mm)を適正に保つために、フィン21の一部を切り起こして形成される2種類のスペーサ22、23が設けられている。
【0028】
の外側スペーサ22は、平型の熱交換器5をL型に曲げ加工する際、湾曲部の外側となる位置、言い換えると曲げ加工時にフィン間隔が広がる位置に設けられており、具体的には、上下が嵌合部21aで区画される領域の前端側(風上側)に外側スペーサ22が設けられている。
【0029】
内側スペーサ23は、平型の熱交換器5をL型に曲げ加工する際、湾曲部の内側となる位置、言い換えると曲げ加工時にフィン間隔が狭まる位置に設けられており、具体的には、上下が嵌合部21aで区画される領域の後端側(風下側)に内側スペーサ23が設けられている。なお、スペーサ22、23を設ける位置や個数は適宜変更することができる。
【0030】
スペーサ22、23は、その先端面が隣り合うフィン21の表面に当接することで、フィン21同士の間隔を適正に保つことができる。一方、スペーサ22、23が隣り合うフィン21の切り起こし孔24、25に嵌り込んだ場合、フィン21同士の間隔を適正に保つことができないだけでなく、その後の修正に手間がかかるため、切り起こし孔24、25に対するスペーサ22、23の嵌り込みを防止することが要求される。
【0031】
図6及び図7に示すように、本実施形態のスペーサ22、23は、根元側の第1辺22a、23a(幅寸法W1、W3)と、先端側の第2辺22b、23b(幅寸法W2、W4)と、第1辺22a、23aの端点と第2辺22b、23bの端点とを結ぶ向かい合った側辺22c、23cと、を備えるにあたり、第1辺22a、23aよりも第2辺22b、23bを長くすることで、隣り合うフィン21の切り起こし孔24、25に対する嵌り込みを抑制している。以下、外側スペーサ22と内側スペーサ23の相違点について詳細に説明する。
【0032】
[外側スペーサ22]
図6に示すように、外側スペーサ22は、根元側の第1辺22a(幅寸法W1)と、先端側の第1辺22bよりも長い第2辺22b(幅寸法W2)と、第1辺22aの端点と第2辺22bの端点とを直線的に結ぶ向かい合った側辺22cと、を備え、基本的には逆台形状であるが、外側スペーサ22の先端部(第2辺22b)には、切欠き22dが形成されている。
【0033】
切欠き22dは、外側スペーサ22の第2辺22bにおいて、隣り合うフィン21との接触面積を減少させるためのものである。つまり、このような切欠き22dによれば、熱交換器5をロウ付けした後の曲げ加工に際し、湾曲部の外側となる位置に設けられた外側スペーサ22の隣り合うフィン21に対するロウ付け面積を縮小し、ロウ付けの剥がれ荷重(引っ張り荷重)が低減されて外れやすくなるので、曲げ加工に際し、湾曲部105の外側となる位置に設けられた外側スペーサ22の第2辺22bが隣り合うフィン21から外れることになり、その結果、湾曲部の外側におけるフィン21の間隔を一定にすることが可能になる。
【0034】
本実施形態の外側スペーサ22に設けられる切欠き22dは、第2辺22bの中央において1つの凹部(例えば、逆台形状の凹部)から形成されている。このような切欠き22dによれば、外側スペーサ22の先端部(第2辺22b)と隣り合うフィン21とのロウ付け面積が先端部(第2辺22b)の中央を通る外側スペーサ22の高さ方向に平行な直線Mに対して対称に縮小される。その結果、ロウ付け後の曲げ加工に際し、湾曲部105の外側においては、外側スペーサ22の先端側を隣り合うフィン21から確実に外すことが可能になる。
【0035】
[内側スペーサ23]
図7に示すように、内側スペーサ23は、根元側の第1辺23a(幅寸法W3)と、先端側の第1辺23bよりも長い第2辺23b(幅寸法W4)と、を備える点で外側スペーサ22と共通するが、第1辺23a(根元部)と第2辺23b(先端部)の間で外力により座屈する座屈部23dを有する点が外側スペーサ22と相違している。
【0036】
図8は、本発明の実施形態に係る熱交換器のフィンに形成された内側スペーサの熱交換器の曲げ加工前後の作用説明図であり、(a)は曲げ加工前の内側スペーサを示すフィンの要部正面図、(b)は曲げ加工前の内側スペーサを示すフィンの要部平面図、(c)は曲げ加工後の内側スペーサを示すフィンの要部正面図、(d)は曲げ加工後の内側スペーサを示すフィンの要部平面図である。
図8に示すように、座屈部23dは、内側スペーサ23に座屈荷重が加わったとき、第1辺23aと第2辺23bの間において座屈するものである。つまり、このような座屈部23dによれば、熱交換器5をロウ付けした後の曲げ加工に際し、図8の(c)、(d)に示すように、湾曲部105の内側となる位置に設けられた内側スペーサ23が隣り合うフィン21から外れることなく座屈することになり、その結果、湾曲部105の内側におけるフィン21の間隔を一定にすることが可能になる。
【0037】
図7及び図8に示すように、本実施形態の内側スペーサ23に設けられる座屈部23dは、第1辺23a及び第2辺23bよりも幅狭に絞り込まれ内側スペーサ23の最も幅が狭い幅狭部(幅寸法W5の部分)により形成されている。具体的に説明すると、内側スペーサ23の側辺23cは、第1辺23aの切り起こし端から垂直に立ち上がる第1側辺23eと、第1側辺23eの先端から内側方に直角に折れ曲がる第2側辺23fと、第2側辺23fの内端から外側方に向かって傾斜して延在し、第2辺23bの端点に至る第3側辺23gと、を備えており、第2側辺23fと第3側辺23gの間で座屈部23dとなる狭幅部(幅寸法W5の部分)が形成される。このような座屈部23dによれば、熱交換器5をロウ付けした後の曲げ加工に際し、湾曲部の内側となる位置に設けられた内側スペーサ23を仮想座屈線Lに沿って座屈させることが可能になる。
【0038】
なお、本実施形態の座屈部23dは、第1辺23a及び第2辺23bよりも幅狭に絞り込まれ内側スペーサ23の最も幅が狭い幅狭部により形成されているが、内側スペーサ23の高さ方向に垂直な仮想座屈線Lに沿う最もスペーサ表面の幅が狭い狭幅部の代わりに仮想座屈線Lに沿って板厚を薄く形成した薄肉部により座屈部を形成してもよい。具体的には、仮想座屈線に沿うようにスペーサの表面に孔部や薄肉部を設けたり、仮想座屈線Lに沿うように側辺23cに溝(Vカット等)を設けたりしてもよい。
【0039】
以上に述べた本発明の実施形態によれば、熱交換器5であって、冷媒が流通する扁平管19と、扁平管19を嵌合する嵌合部21aを有し扁平管19と交差する方向に延在し扁平管19の長さ方向に積層される複数のフィン21と、フィン21の一部を切り起こして形成され隣り合うフィン21との間隔を保持する外側スペーサ22及び内側スペーサ23と、を備え、外側スペーサ22の先端部に切欠き22dを有するので、従来に比べ外側スペーサ22の先端側と隣り合うフィン21とのロウ付け面積が縮小される。そのため、ロウ付け後の曲げ加工に際し、湾曲部105の外側においては、外側スペーサ22の先端側が隣り合うフィン21から外れることになり、その結果、湾曲部105の外側におけるフィン21の間隔を一定とし、熱交換効率を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態の切欠き22dは、外側スペーサ22の先端部(第2辺22b)の中央において、少なくとも1つの凹部から形成されるので、外側スペーサ22の先端部(第2辺22b)と隣り合うフィン22とのロウ付け面積が先端部(第2辺22b)の中央を通り外側スペーサ22の高さ方向に平行な直線に対して対称に縮小されることになり、その結果、ロウ付け後の曲げ加工に際し、湾曲部105の外側においては、外側スペーサ22の先端側を隣り合うフィン21から確実に外すことができる。
【0041】
内側スペーサ23は、第2辺23b(先端部)と第1辺23a(根元部)の間に座屈部23dを有するので、ロウ付け後の曲げ加工に際し、湾曲部105の内側においては、内側スペーサ23がフィン21から外れることなく座屈することになり、その結果、湾曲部105の内側におけるフィン21の間隔を一定とし、熱交換効率を向上させることができる。
【0042】
[変形例]
つぎに、外側スペーサ22の変形例について、図9を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通する部分は、前記実施形態と同じ符号を用いることにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0043】
図9は、変形例に係る外側スペーサを示す図であり、(a)は変形例に係る外側スペーサを示すフィンの要部側面図、(b)は変形例に係る外側スペーサのC−C断面図、(c)は変形例に係る外側スペーサを示すフィンの要部正面図である。
図9に示すように、変形例に係る外側スペーサ22Bは、先端部の第2辺22bに、複数の凹部から形成される切欠き22eを備える点が前記実施形態の外側スペーサ22と相違している。具体的には、外側スペーサ22Bの第2辺22bに、三角形状の凹部を4つ並べて形成された切欠き22eを備える。このような切欠き22eによれば、スペーサとしての機能や強度を低下させることなく、隣り合うフィン21とのロウ付け面積を縮小させることが可能になる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…空気調和機、2…室内機、3…室外機、4…熱交換器、5…熱交換器、6…圧縮機、7…膨張弁、8…四方弁、9…ケース、9a…吹出口、10…脚部、11…ファンガード、12…配線接続部、13…配管接続部、14…カバー、15…仕切板、16…機械室、17…熱交換室、18…送風ファン、19…扁平管、19a…冷媒流路、20…ヘッダ、21…フィン、21a…嵌合部、22、22B…外側スペーサ、22a…第1辺、22b…第2辺、22c…側辺、22d、22e…切欠き、23…内側スペーサ、23a…第1辺、23b…第2辺、23c…側辺、23d…座屈部、23e…第1側辺、23f…第2側辺、23g…第3側辺、24、25…切り起こし孔、L…仮想座屈線
図1
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