(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のかご形誘導電動機を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、略同じまたは類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また以下に示すいくつかの図面では、説明の便宜上、電動機のハウジングの図示を省略している。
【0008】
(第1の実施形態)
図1から
図3を参照して、第1の実施形態のかご形誘導電動機1について説明する。
図1は、本実施形態のかご形誘導電動機1を示す断面図である。
本実施形態のかご形誘導電動機1(以下、単に「電動機1」という。)は、例えば鉄道車両の台車などに取り付けられて車輪を駆動する電動機である。本実施形態の電動機1は、例えば三相6極の電動機である。ただし、電動機1の極数は、4極でもよく、8極でもよく、これら以外の極数でもよい。
【0009】
なお以下の説明では、電動機1の回転中心軸(以下、中心軸Oという。)に沿う方向を軸方向Zといい、中心軸Oに直交する方向を径方向Rといい、中心軸O回りに周回する方向を周方向θという。なお、軸方向Z、径方向R、および周方向θは、後述するヨーク25の軸方向、径方向、および周方向と称されてもよく、または回転子鉄心21の軸方向、径方向、および周方向と称されてもよい。
【0010】
まず、電動機1の全体構成について説明する。
図1に示すように、電動機1は、ハウジング5と、固定子10と、回転子20と、軸受50A,50Bと、ブロワ―60と、を備えている。
【0011】
ハウジング5は、固定子10および回転子20を収容するとともに、第1通風口5aと、第2通風口5bとを有する。第1通風口5aおよび第2通風口5bは、それぞれハウジング5の外部に開口している。例えば、第1通風口5aは、ハウジング5の軸方向Zの一端部に設けられ、ブロワ―60から冷却風が供給される吸気口である。一方で、第2通風口5bは、ハウジング5の軸方向Zの他端部に設けられ、ハウジング5の内部を流れた冷却風がハウジング5の外部に排気される排気口である。このような電動機1では、ブロワ―60が駆動されることで、ハウジング5の内部を冷却風が流れ、固定子10および回転子20が冷却される。これにより、電動機1の強制風冷(強制空冷)方式の冷却構造が実現されている。ただし、電動機1は、強制風冷方式の電動機に限らず、シャフト23(後述)にファンが取り付けられた自己通風方式や、自然冷却方式の電動機でもよい。
【0012】
固定子10は、固定子鉄心11と、固定子コイル13と、を備えている。
固定子鉄心11は、例えば環状の磁性鋼板が軸方向Zに複数枚積層されることで、軸方向Zに延びた筒状に形成されている。固定子鉄心11は、回転子20の外側に配置されている。固定子鉄心11の内周部分には、軸方向Zに延びた複数の固定子スロット15が設けられている。複数の固定子スロット15は、周方向θに等間隔で形成されている。
固定子コイル13は、固定子スロット15内に挿入されている。
【0013】
回転子20は、回転子鉄心21と、シャフト23と、押さえ板24A,24Bと、を備えている。
回転子鉄心21は、例えば環状の磁性鋼板が軸方向Zに複数枚積層されることで、軸方向Zに延びた筒状に形成されている。回転子鉄心21の外周面は、固定子鉄心11の内周面に対して径方向Rに隙間gをあけて対向している。
シャフト23は、電動機1の中心軸Oと同軸に配置されるとともに、軸受50A,50Bによって回転可能に支持されている。シャフト23には、回転子鉄心21が固定されている。これにより、回転子鉄心21は、電動機1の中心軸Oと同軸に配置されるとともに、中心軸O回りに回転可能に設けられている。
押さえ板24A,24Bは、シャフト23に固定されている。押さえ板24A,24Bは、例えば回転子鉄心21の軸方向Zの端面に沿う板状に形成されている。押さえ板24A,24Bは、軸方向Zにおいて、回転子鉄心21の両側に分かれて位置し、回転子鉄心21を両側から保持している。
【0014】
次に、本実施形態の回転子鉄心21について詳しく説明する。
図2は、
図1中に示された電動機1のF2−F2線に沿う断面図である。
図2に示すように、本実施形態の回転子鉄心21は、ヨーク25と、支持部27と、複数のスポーク29と、を有している。
【0015】
ヨーク25は、軸方向Zから見た場合に円環状(円筒状)に形成され、複数のロータバー35(導体)を支持している。詳しく述べると、ヨーク25の外周部分には、軸方向Zに延びた複数の回転子スロット33が形成されている。複数の回転子スロット33は、互いに径方向Rの同じ位置に設けられ、周方向θに等間隔で配置されている。各回転子スロット33には、ロータバー35が挿入されている。なお、回転子スロットは、図面に示されたような全閉スロットに限らず、半閉スロットでも構わない。ロータバー35は、アルミニウムや銅などの金属材料により形成されている。ロータバー35の軸方向Zの両端部は、回転子鉄心21の軸方向Zの両端面から軸方向Zに張り出している。回転子鉄心21から張り出したロータバー35の端部は、図示しない環状のエンドリングにより一体に接続されている。
【0016】
支持部27は、ヨーク25の径方向Rの内側に配置され、ヨーク25を支持している。詳しく述べると、支持部27は、円筒状に形成され、中心軸Oと同軸に配置されている。支持部27の内側には、上述したシャフト23が配置されている。シャフト23は、支持部27に対して圧入や焼嵌めなどにより固定されている。
【0017】
複数のスポーク29は、ヨーク25とシャフト23との間に設けられ、シャフト23に対してヨーク25を支持する。なお本願でいう「ヨークとシャフトとの間に設けられ」とは、スポーク29がシャフト23に直接に接続されている場合に限らず、スポーク29とシャフト23との間に別要素(例えば本実施形態では支持部27)が存在する場合なども含む。例えば本実施形態では、複数のスポーク29は、ヨーク25と支持部27との間に設けられ、ヨーク25と支持部27とを接続している。また本願でいう「シャフトに対してヨークを支持する」とは、スポーク29がシャフト23に直接に接続されてヨーク25を支持する場合に限らず、シャフト23に取り付けられた別要素(例えば本実施形態では支持部27)にスポーク29が接続されることで、シャフト23に対してヨーク25が支持される場合なども含む。
【0018】
また本願でいう「スポーク」とは、ヨーク25とシャフト23との間に設けられた線状部を意味し、中心軸Oを中心とする放射方向(ヨーク25の径方向R)に沿って延びたものに限らず、前記放射方向に対して交差する方向に沿って延びたものでもよい。なお「線状部」とは、直線状に延びたものに限らず、曲線状に延びたものや、屈曲したもの、幅が徐々に変化するものなども該当する。
【0019】
本実施形態では、各スポーク29は、中心軸Oを中心とする放射方向(ヨーク25の径方向R)に沿って直線状に延びている。各スポーク29は、例えばヨーク25および支持部27と一体に設けられたスポーク状のリブである。複数のスポーク29は、周方向θに沿って互いに離間して配置されている。スポーク29は、軸方向Zから見て、径方向Rに沿って一定の幅Wで延びるとともに、径方向Rの両端部においてヨーク25の内周面および支持部27の外周面と滑らかに接続している。スポーク29は、周方向θに等間隔で複数(本実施形態では6本)配置されている。
【0020】
スポーク29の本数は、例えば電動機1の極数の整数倍の数に設定されている。なお「整数倍」とは、1倍を含む。例えば本実施形態では、スポーク29の本数は、電動機1の極数と同数に設定されている。ただし、スポーク29の本数は、電動機1の極数の整数倍とは異なる数でもよい。なお、スポーク29の本数が電動機1の極数の整数倍とは異なる場合については後述する。
【0021】
次に、隣り合うスポーク29の間の空隙31について詳述する。
本実施形態では、各空隙(空間部)31は、例えばそれぞれ略同一形状に形成されている。本実施形態では、空隙31の軸方向Zから見た断面形状は、略台形状に形成されている。なお本願でいう「略台形状」とは、辺が曲線状の台形状や、角に丸みを持つ台形状を含む。
【0022】
本実施形態では、空隙31の軸方向Zから見た断面形状は、弧状部31a,31bと、直状部31c,31dと、隅アール部31e,31e,31f,31fと、により囲まれて形成されている。弧状部31aは、ヨーク25の内周縁であって、例えば中心軸Oを中心とする円弧状に形成されている。弧状部31bは、支持部27の外周縁であって、例えば中心軸Oを中心とする円弧状に形成されている。弧状部31bは、弧状部31aよりも径方向Rの内側において、周方向θにおける同じ位置に設けられている。直状部31c,31dは、各弧状部31a,31bの端部同士を接続するように直線状に延びている。
【0023】
各隅アール部31eは、弧状部31aと直状部31c,31dとが接続される隅部(角部)に設けられている。各隅アール部31eは、例えば円弧状に形成され、弧状部31aと直状部31c,31dとを滑らかに接続している。なお隅アール部31eは、「円弧部」と称されてもよい。一方で、他の各隅アール部31fは、弧状部31bと直状部31c,31dとが接続される隅部に設けられている。隅アール部31fは、例えば円弧状に形成され、弧状部31bと直状部31c,31dとを滑らかに接続している。これらにより、上記隅部における応力集中が抑制されている。
【0024】
図3は、本実施形態の電動機1の磁束線の一例を示す断面図である。
図3に示すように、固定子コイル13が通電されることで発生する磁束は、固定子コイル13回りに閉ループを形成する。具体的に、磁束は、周方向θで隣り合う固定子コイル13の間、および周方向θで隣り合うロータバー35の間を通った後、ヨーク25において空隙31とロータバー35との間を通る。言い換えると、磁束は、スポーク29よりも径方向Rの外側を通る。空隙31とロータバー35との間を通った磁束は、周方向θで隣り合うロータバー35の間、および周方向θに隣り合う固定子コイル13の間を通った後、固定子鉄心11において固定子コイル13よりも径方向Rの外側を流れる。このようにして磁束の閉ループが形成されている。そして、固定子コイル13回りの磁束を周方向θに回転させることで、回転子20を連れ回して回転させる。
【0025】
このような構成の電動機1によれば、軽量化を図ることができる。すなわち本実施形態の回転子鉄心21は、環状のヨーク25とシャフト23との間に設けられてヨーク25を支持する複数のスポーク29を有する。このような構成によれば、隣り合うスポーク29の間に比較的大きな空隙31を設けることができる。これにより、電動機1の軽量化を図ることができる。また、磁束がスポーク29よりも径方向Rの外側を通る場合、スポーク29を設けた場合でも電動機1の磁気特性の低下を抑制することができる。
【0026】
本実施形態では、スポーク29は、直線状に形成されている。このような構成によれば、電動機1の機械的強度を確保しつつ、スポーク29の間の空隙31を大きくしやすい。このため、電動機1のさらなる軽量化を図りやすくなる。
【0027】
ここで、回転子20において磁束が流れる経路は、すべり周波数で回転子20内の相対位置が変化する。このため、スポーク29の本数が電動機1の極数で割り切れない本数であると、スポーク29の有無によって、スポーク29を通ってシャフト23付近まで磁束が流れる部分と、スポーク29よりも径方向Rの外側のみで磁束流路が形成される部分とが生じることがある。このため、回転子20と固定子10との間の流れる磁束が偏り、固定子10に対する回転子20のトルク脈動などが生じる可能性がある。
【0028】
しかしながら本実施形態では、スポーク29は、電動機1の極数と同数の6本形成されている。これにより、スポーク29の位置に関わらず、固定子10から回転子20に作用する力を均等にすることができる。これにより、回転子20にトルク脈動などが生じることを抑制することができる。これは、スポーク29の本数が、電動機1の極数の整数倍である場合も同様である。
【0029】
例えば本実施形態では、ブロワ―60からハウジング5内に供給された冷却風(またはシャフト23に取り付けられたファンから送られた冷却風)の一部は、空隙31の内部に流入してもよい。これにより、冷却効率面でも優れた電動機1を提供することができる。なお、空隙31は、例えば軽量化を目的とした穴であり、冷却風が流れなくてもよい。
【0030】
次に、第1の実施形態のいくつかの変形例について説明する。これらのような構成によっても、第1の実施形態と同様に、電動機1の軽量化を図ることができる。
(第1変形例)
図4は、第1変形例の電動機1を示す断面図である。
図4に示すように、第1変形例の電動機1では、各スポーク29は、少なくとも1つ(例えば複数)の曲がり部71を有した波型に形成されている。各スポーク29は、曲がり部71において周方向θに湾曲している。
【0031】
(第2変形例)
図5は、第2変形例の電動機1を示す断面図である。
図5に示すように、第2変形例の電動機1では、空隙31の軸方向Zから見た断面形状は、略三角形状に形成されている。すなわち本変形例では、複数のスポーク29に含まれる少なくとも一部のスポーク29は、隣り合うスポーク29の間の空隙31が略三角形状となるように配置されている。なお本願でいう「略三角形状」とは、辺が曲線状の三角形状や、角に丸みを持つ三角形状を含む。
【0032】
別の観点で見ると、本変形例の複数のスポーク29は、中心軸Oを中心とする放射方向(ヨーク25の径方向R)に対して交差する方向に沿って延びている。また、本変形例の複数のスポーク29は、中心軸Oを中心とする放射方向に対して、周方向θで第1側に傾いた第1傾斜スポーク29Aと、周方向θで第1側とは反対側である第2側に傾いた第2傾斜スポーク29Bとを含む。第1傾斜スポーク29Aと第2傾斜スポーク29Bとは、周方向θにおいて例えば交互に配置されている。
【0033】
このような構成によれば、互いに異なる方向に延びた複数のスポーク29によって空隙31が囲まれるため、電動機1の機械的強度を高めることができる場合がある。このため、例えば電動機1の振動(騒音)や寿命の面で優れた電動機1を提供することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、
図6を参照して、第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、スポーク29の本数が電動機1の極数の整数倍とは異なる数に設定された点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0035】
図6は、第2の実施形態の電動機1を示す断面図である。
図6に示すように、本実施形態では、スポーク29の本数は、電動機1の極数の整数倍とは異なる数に設定されている。すなわち、スポーク29の本数は、電動機1の極数で割り切れない数に設定されている。例えば本実施形態では、電動機1が6極であり、スポーク29の本数は7本である。ただし、実施形態の構成は、上記例に限定されない。
【0036】
ここで、スポーク29の本数が電動機1の極数で割り切れる数であると、回転子20と固定子10との間を流れる磁束の大きさが時間的に変化し、トルク脈動の原因となる場合がある。しかしながら本実施形態では、スポーク29の本数は、電動機1の極数で割り切れない数に設定されている。このような構成によれば、電動機1の生じるトルク脈動を抑制することができる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、
図7を参照して、第3の実施形態について説明する。
本実施形態は、スポーク29がシャフト23に直接に固定されている点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0038】
図7は、第3の実施形態の電動機1を示す断面図である。
図7に示すように、本実施形態の回転子鉄心21は、支持部27を有さずに、スポーク29がシャフト23に直接に固定されている。詳しく述べると、シャフト23には、それぞれスポーク29をシャフト23に固定する複数の固定部80が設けられている。本実施形態では、各固定部80は、シャフト23に設けられた一対の突出部82A,82B(キー構造)を有する。本実施形態では、一対の突出部82A,82Bは、シャフト23と一体に設けられて、シャフト23から径方向Rの外側に向けて突出している。一対の突出部82A,82Bの各々は、軸方向Zに沿って延びている。各スポーク29は、一対の突出部82A,82Bの間に挿入されて、一対の突出部82A,82Bによって両側から挟まれている。これにより、スポーク29は、シャフト23に固定されている。なお本願で言う「固定」とは、回転子鉄心21の回転に伴ってシャフト23が回転する接続関係を意味し、スポーク29と固定部80との間に僅かな遊びがある場合なども含む。
【0039】
一対の突出部82A,82Bの各々は、周方向θでスポーク29を支持する支持面84を有する。支持面84は、回転子鉄心21が回転する際に、例えばスポーク29が当接することで回転子鉄心21の回転方向(周方向θ)の力を受ける。これにより、回転子鉄心21が回転する場合、回転子鉄心21の回転に伴ってシャフト23が回転する。
【0040】
例えば第1の実施形態の構造において、スポーク29の間の空隙31を比較的大きく形成すると、径方向Rにおける支持部27の厚みが薄くなる場合がある。径方向Rにおける支持部27の厚みが薄くなると、圧入や焼嵌めなどによって支持部27をシャフト23に取り付けても、シャフト23に対する回転子鉄心21の固定が緩くなる可能性がある。シャフト23に対する回転子鉄心21の固定が緩くなると、シャフト23と回転子鉄心21との間で滑りが生じ、電動機1の効率が低下する場合がある。
【0041】
そこで本実施形態では、それぞれスポーク29をシャフト23に固定する複数の固定部80が設けられ、各固定部80が周方向θでスポーク29を支持する支持面84を有することで、回転子鉄心21の回転に伴ってシャフト23が確実に回転する。このため、支持部27の厚みなどに制約されずに、空隙31を大きく形成することができる。空隙31を大きく形成することができると、電動機1のさらなる軽量化を図ることができる。また本実施形態の構成によれば、支持部27を省略することができる。この観点でも、電動機1のさらなる軽量化を図ることができる。
【0042】
次に、第3の実施形態のいくつかの変形例について説明する。
(第1変形例)
図8は、第1変形例の電動機1を示す断面図である。
図8に示すように、本変形例の固定部80は、シャフト23に設けられた溝(キー溝)86A,86Bと、溝86A,86Bに挿入された係合部材(キー)88A,88Bとを有する。係合部材88A,88Bは、溝86A,86Bに挿入された状態で、シャフト23の表面から径方向Rの外側に向けて突出した一対の突出部82A,82Bを形成している。溝86A,86Bおよび係合部材88A,88Bの各々は、軸方向Zに延びている。各スポーク29は、一対の突出部82A,82Bの間に挿入されて、一対の突出部82A,82Bによって両側から挟まれている。これにより、スポーク29は、シャフト23に固定されている。
【0043】
(第2変形例)
図9は、第2変形例の電動機1を示す断面図である。
図9に示すように、本変形例の固定部80は、シャフト23に設けられた溝86である。溝86は、シャフト23の表面に対して径方向Rの内側に窪んでいる。溝86は、軸方向Zに沿って延びている。溝86は、周方向θでスポーク29に対応する位置に設けられている。スポーク29の端部は、溝86に挿入されている。これにより、スポーク29は、シャフト23に固定されている。各溝86は、周方向θでスポーク29を支持する支持面84を有する。支持面84は、固定子鉄心11に対して回転子鉄心21が回転する際に、例えばスポーク29が当接することで回転子鉄心21の回転方向(周方向θ)の力を受ける。これにより、回転子鉄心21の回転に伴ってシャフト23が回転する。
【0044】
これら第1変形例および第2変形例の構成によっても、第3の実施形態と同様に、回転子鉄心21の回転に伴ってシャフト23を確実に回転させることができる。このため、空隙31を大きく形成することができ、電動機1のさらなる軽量化を図ることができる。
【0045】
(第4の実施形態)
次に、
図10を参照して、第4の実施形態について説明する。
本実施形態は、複数のスポーク29が周方向θで少なくとも部分的に互いにずれた位置に配置されている点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0046】
図10は、第4の実施形態の回転子鉄心21を一部分解して示す斜視図である。
図10に示すように、本実施形態の回転子鉄心21は、軸方向Zに互いに重ねられるとともにそれぞれヨーク25の一部を形成している複数の部材90を有する。各部材90は、例えば回転子鉄心21を形成するように軸方向Zに積層された磁性鋼板である。本実施形態では、複数の部材90は、複数の第1部材91と、複数の第2部材92とを含む。第1部材91と第2部材92とは、例えば周方向θにおけるスポーク29の配置位置が異なることを除き、互いに略同じである。本実施形態では、複数の第1部材91が軸方向Zに連続して積層されることで第1部材91のセットが形成されている。同様に、複数の第2部材92が軸方向Zに連続して積層されることで第2部材92のセットが形成されている。そして、第1部材91のセットと第2部材92のセットとが軸方向Zに交互に積層されている。第1部材91のセットと第2部材92のセットは、カシメ固定や溶接などで互いに連結されている。なお、第1部材91と第2部材92とは、1枚ずつ交互に配置されてもよい。
【0047】
そして本実施形態では、複数のスポーク29は、第1部材91によって形成された複数の第1スポーク95と、第2部材92によって形成された複数の第2スポーク96とを有する。そして、各第1スポーク95の少なくとも一部と各第2スポーク96の少なくとも一部とは、周方向θで互いに異なる位置に配置されている。
【0048】
図11は、本実施形態の電動機1を示す断面図である。
図11に示すように、本実施形態では、各第1スポーク95は、周方向θの位置として、隣り合う第2スポーク96の間に対応した位置に配置されている。言い換えると、第1スポーク95は、軸方向Zから見た場合に、隣り合う第2スポーク96の間の空隙31と重なる位置に配置されている。同様に、各第2スポーク96は、周方向θの位置として、隣り合う第1スポーク95の間に対応した位置に配置されている。言い換えると、第2スポーク96は、軸方向Zから見た場合に、隣り合う第1スポーク95の間の空隙31に重なる位置に配置されている。
【0049】
このような構成によれば、第1スポーク95の間の空隙31の周囲が第2スポーク96によって補強されている。同様に、第2スポーク96の間の空隙31の周囲が第1スポーク95によって補強されている。これにより、電動機1の機械的強度を高めることができる。また別の観点で見ると、周方向θにおいて少なくとも部分的に互いに異なる位置に配置された第1スポーク95と第2スポーク96とによって電動機1の機械的強度を高めることができると、第1スポーク95および第2スポーク96の幅Wを細くすることができる。これにより、電動機1のさらなる軽量化を図ることができる。
なお、回転子鉄心21の複数のスポーク29は、周方向θにおいて、少なくとも部分的に互いに異なる位置に配置された3種類以上のスポーク29を有してよい。
【0050】
次に、第4の実施形態のいくつかの変形例について説明する。
(第1変形例)
図12は、第1変形例の電動機1を示す断面図である。
図12に示すように、本変形例では、第1スポーク95および第2スポーク96の各々は、中心軸Oを中心とする放射方向(ヨーク25の径方向R)に対して交差する方向に沿って延びている。例えば、第1スポーク95は、中心軸Oを中心とする放射方向に対して、周方向θで第1側に傾いた第1傾斜スポーク29Aである。一方で、第2スポーク96は、周方向θで第1側とは反対側である第2側に傾いた第2傾斜スポーク29Bである。第1スポーク95および第2スポーク96は、軸方向Zから見た場合に、互いに交差するように配置されている。
このような構成によれば、第1スポーク95と第2スポーク96とによって複数の方向に対する剛性が向上し、電動機1の全体としての機械的強度をさらに高めることができる。
【0051】
(第2変形例)
図13は、第2変形例の電動機1を示す断面図である。
図13に示すように、本変形例では、第1スポーク95および第2スポーク96の各々は、中心軸Oを中心とする放射方向(ヨーク25の径方向R)に対して交差する方向に沿って延びている。本変形例では、第1部材91および第2部材92の各々が、複数の第1傾斜スポーク29Aと、複数の第2傾斜スポーク29Bとを含む。すなわち、第1部材91において、第1傾斜スポーク29Aと第2傾斜スポーク29Bとが周方向θで交互に配置されている。同様に、第2部材92において、第1傾斜スポーク29Aと第2傾斜スポーク29Bとが周方向θで交互に配置されている。
このような構成によれば、第1変形例と同様に、電動機1の全体としての機械的強度を高めることができる。
【0052】
(第5の実施形態)
次に、
図14を参照して、第5の実施形態について説明する。
本実施形態は、回転子鉄心21または回転子鉄心21の周囲の少なくとも一方に制風構造100が設けられた点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0053】
図14は、本実施形態の電動機1を示す断面図である。
図14に示すように、第1押さえ板24Aは、ハウジング5内の風の流れ方向(第1通風口5aから第2通風口5bに向かう方向)において、回転子鉄心21よりも上流側に位置する。一方で、第2押さえ板24Bは、ハウジング5内の風の流れ方向において、回転子鉄心21よりも下流側に位置する。
【0054】
図15は、本実施形態の回転子20を一部分解して示す斜視図である。なお説明の便宜上、
図15では、ロータバー35およびエンドリングの図示を省略している。
図15に示すように、本実施形態では、回転子鉄心21の周囲に制風構造100が設けられる場合の一例として、第1押さえ板24Aに制風構造100が設けられている。本実施形態の制風構造100は、回転子鉄心21の空隙31の少なくとも一部を軸方向Zから覆うカバー102と、カバー102に設けられた複数の貫通穴104とを有する。複数の貫通穴104は、回転子鉄心21の空隙31に連通する。個々の貫通穴104は、軸方向Zから見た場合、回転子鉄心21の空隙31に比べて小さい。また、複数の貫通穴104の開口面積の合計は、回転子鉄心21の複数の空隙31の開口面積の合計に比べて小さい。一方で、第2押さえ板24Bには、複数の空隙31が設けられている。第2押さえ板24Bの空隙31は、例えば回転子鉄心21の空隙31と略同じ形状に形成されている。
【0055】
次に、本実施形態の制風構造100の作用について説明する。
図14に示すように、ハウジング5内を流れて回転子鉄心21の空隙31に向かう冷却風の一部は、第1押さえ板24Aにおいて、貫通穴104から回転子鉄心21の空隙31に流入する。一方で、ハウジング5内を流れて回転子鉄心21の空隙31に向かう冷却風の残りの一部は、第1押さえ板24Aにおいてカバー102に衝突し、流れ方向が変化する。そして、流れ方向が変化した冷却風の一部は、固定子鉄心11と回転子鉄心21との間の隙間gに流入する。例えば、制風構造100は、貫通穴104から回転子鉄心21の空隙31に流入する冷却風の量よりも固定子鉄心11と回転子鉄心21との間の隙間gに流入する冷却風の量が多くなるように、ハウジング5内を流れる冷却風の流れ方向を変化させる。
【0056】
回転子鉄心21の空隙31に流入した冷却風は、回転子鉄心21の内部を流れることで、回転子鉄心21を冷却する。回転子鉄心21の内部を流れた冷却風は、第2押さえ板24Bの空隙31を通り、第2通風口5bからハウジング5の外部に排気される。一方で、固定子鉄心11と回転子鉄心21との間の隙間gに流入した冷却風は、固定子鉄心11と回転子鉄心21との間の隙間gを流れることで、固定子鉄心11および回転子鉄心21およびの両方を冷却する。そして、固定子鉄心11と回転子鉄心21との間の隙間gを流れた冷却風は、第2通風口5bからハウジング5の外部に排気される。
【0057】
ここで、電動機1の駆動時には、固定子10の固定子コイル13や回転子20のロータバー35などの近傍において温度が特に高くなる。このため、なるべく多くの冷却風が、固定子鉄心11と回転子鉄心21との間の隙間gに供給されることが望ましい。
しかしながら、軽量化を目的として、回転子鉄心21の隣り合うスポーク29の間に比較的大きな空隙31が設けられた場合、ハウジング5内を流れる冷却風の大部分がスポーク29の間の空隙31に流入し、固定子鉄心11と回転子鉄心21との間の隙間gに冷却風が供給されにくくなる可能性がある。
【0058】
そこで本実施形態では、制風構造100は、隣り合うスポーク29の間の空隙31に向かう冷却風の少なくとも一部の流れを回転子鉄心21と固定子鉄心11との間の隙間gに向けて変化させる。これにより、スポーク29の間に比較的大きな空隙31を設けた場合であっても、電動機1の冷却性能を高めることができる。
【0059】
次に、第5の実施形態のいくつかの変形例について説明する。
(第1変形例)
図16は、第1変形例の電動機1を示す断面図である。
図16に示すように、本変形例では、制風構造100は、回転子鉄心21の一部を形成する磁性鋼板(積層鋼板)106に設けられている。詳しく述べると、本変形例の制風構造100は、冷却風の流れ方向において回転子鉄心21の上流側端部に位置する1枚または複数枚の磁性鋼板106に設けられている。この磁性鋼板106は、例えば第5の実施形態の第1押さえ板24Aと同様に、カバー102と、貫通穴104とを有する。
【0060】
一方で、本変形例では、第1押さえ板24Aにも複数の空隙31が設けられている。第1押さえ板24Aの空隙31は、例えば回転子鉄心21の空隙31と略同じ形状に形成されている。ここで、一般的に、第1押さえ板24Aは、軸方向Zの厚さにおいて、磁性鋼板106よりも厚い。このため、磁性鋼板106にカバー102を設けるとともに、第1押さえ板24Aに比較的大きな空隙31を設けることで、電動機1のさらなる軽量化を図ることができる。
【0061】
(第2変形例)
図17は、第2変形例の電動機1を示す断面図である。
図17に示すように、本変形例の回転子鉄心21は、第4の実施形態と同様に、軸方向Zに互いに重ねられるとともにそれぞれヨーク25の一部を形成している複数の部材90を有する。各部材90は、例えば回転子鉄心21を形成するように軸方向Zに積層された磁性鋼板である。複数の部材90の各々は、スポーク29を有する。そして、複数の部材90のスポーク29は、周方向θで少なくとも部分的に互いに異なる位置に配置されている。これにより、スポーク29の間の空隙31は、別のスポーク29によって覆われ、軸方向Zから見た場合の実質的な開口面積が小さくなっている。言い換えると、空隙31を軸方向Zから覆うスポーク29は、カバー102の一例を形成している。このため、スポーク29の間の空隙31には、冷却風が流入しにくくなっている。すなわち本変形例では、周方向θで少なくとも部分的に互いに異なる位置に配置された複数のスポーク29によって制風構造100の一例が形成されている。
【0062】
(第3変形例)
図18は、本実施形態の回転子20を一部分解して示す斜視図である。なお説明の便宜上、
図18では、ロータバー35およびエンドリングの図示を省略している。
図18に示すように、本変形例では、第1押さえ板24Aに、別部材としての制風板108が取り付けられている。制風板108は、カバー102と、貫通穴104とを有し、制風構造100の一例を形成している。一方で、本変形例の第1押さえ板24Aには、複数の空隙31が設けられている。第1押さえ板24Aの空隙31は、例えば回転子鉄心21の空隙31と略同じ形状に形成されている。
【0063】
これら第1から第3変形例の構成によっても、第5の実施形態と同様に、スポーク29の間に比較的大きな空隙31を設けた場合であっても、電動機1の冷却性能を高めることができる。
【0064】
(第6の実施形態)
次に、
図19から
図21を参照して、第6の実施形態について説明する。
本実施形態は、回転子鉄心21に肉抜部40が設けられた点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0065】
図19は、本実施形態の電動機1を示す断面図である。
図19に示すように、回転子鉄心21における各スポーク29の延長線上には、肉抜部40が形成されている。なお「回転子鉄心におけるスポークの延長線上」とは、例えばスポーク29の中心線C(
図20参照)の延長線上である。なお、スポーク29の中心線Cとは、周方向θにおけるスポーク29の中心を通るとともに、スポーク29の長手方向(本実施形態では径方向Rと略平行)に延びた中心線である。ただし、「回転子鉄心におけるスポークの延長線上」とは、上記例に限らず、スポーク29のなかで中心線Cを外れた部分をスポーク29の長手方向に延長した延長線上でもよい。
【0066】
図20は、
図19中に示された電動機1のF20線で囲まれた領域を拡大して示す断面図である。
図20に示すように、本実施形態では、肉抜部40のうちロータバー35側に位置する部分、すなわち径方向Rの外側に位置する部分は、空隙31よりも径方向Rの外側に位置する。また本実施形態では、肉抜部40は、隣り合う2つの空隙31の弧状部31aの間を繋ぐ仮想線ILよりも、径方向Rの外側に位置する。言い換えると、肉抜部40は、スポーク29に入り込まずに、スポーク29よりも径方向Rの外側の位置(すなわちヨーク25)に設けられている。なお、肉抜部40の形成位置は、上記例に限らない。例えば十分な剛性が確保できる場合などでは、肉抜部40の一部は、スポーク29に設けられてもよい。
【0067】
一方で、肉抜部40は、回転子鉄心21を通る磁束を阻害しないように、ロータバー35から十分な距離を離して配置されている。例えば、肉抜部40は、ヨーク25において、ロータバー35に対してよりもスポーク29に対して近い位置に配置されている。本実施形態では、肉抜部40は、スポーク29の近傍に配置されている。そして、肉抜部40とロータバー35との間には、磁束が通ることができる鉄心部分が設けられている。
【0068】
各肉抜部40は、回転子鉄心21を軸方向Zに貫通している。肉抜部40は、軸方向Zから見てスポーク29の中心線Cに対して対称となるように形成されている。本実施形態では、肉抜部40は、径方向Rの外側の部分が周方向θに沿うように形成され、径方向Rの内側の部分が周方向θの中央部において径方向Rの内側に向かって膨出するように形成されている。言い換えると、本実施形態の肉抜部40は、略三角形状に形成されている。本願でいう「略三角形状」とは、辺が曲線状の三角形や、角に丸みを持つ三角形を含む。
【0069】
本実施形態では、肉抜部40は、スポーク29に対して1つの凸部(角部)41を向けて配置されている。すなわち、肉抜部40は、ヨーク25の径方向Rの内側に凸部41を向けて配置されている。なお本願でいう「凸部」とは、例えば多角形状(本実施形態では略三角形状)の角部を意味する。本実施形態では、肉抜部40の凸部41は、例えばスポーク29の中心線Cの延長線上に位置する。
【0070】
ここで、ヨーク25に対する各スポーク29の接続部29a(根本部)は、ヨーク25の径方向Rの外側に向けて進むに従いスポーク29の中心線Cから離れる方向(周方向θ)に膨らむ一対の膨らみ部30A,30B(第1膨らみ部30Aおよび第2膨らみ部30B)を有する。すなわち、第1膨らみ部30Aは、弧状部31aと直状部31dとが接続される空隙31の隅部に隅アール部31eが設けられることで形成された膨らみ部である。同様に、第2膨らみ部30Bは、弧状部31aと直状部31cとが接続される空隙31の隅部に隅アール部31eが設けられることで形成された膨らみ部である。本実施形態では、肉抜部40の凸部41は、ヨーク25に対するスポーク29の接続部29aの一対の膨らみ部30A,30Bの間の領域32に向けて配置されている。
【0071】
また別の観点で見ると、肉抜部40は、周方向θにおける該肉抜部40の最大幅W1が径方向Rにおける該肉抜部40の最大幅(最大厚さ)W2に比べて大きな扁平形状である。例えば本実施形態では、周方向θにおける肉抜部40の最大幅W1は、周方向θにおけるスポーク29の幅Wよりも大きい。
【0072】
図21は、本実施形態の電動機1の磁束線の一例を示す図である。
図21に示すように、固定子コイル13が通電されることで発生する磁束は、固定子コイル13回りに閉ループを形成する。具体的に、磁束は、周方向θで隣り合う固定子コイル13の間、および周方向θで隣り合うロータバー35の間を通った後、空隙31とロータバー35との間に向かう。空隙31とロータバー35との間を流れる磁束の一部は、ヨーク25においてロータバー35と肉抜部40との間を通り、残りは、空隙31と肉抜部40との間を通る。ロータバー35と肉抜部40との間を通った磁束、および空隙31と肉抜部40との間を通った磁束は、周方向θで隣り合うロータバー35の間、および周方向θで隣り合う固定子コイル13の間を通った後、固定子鉄心11において固定子コイル13よりも径方向Rの外側を流れる。このようにして磁束の閉ループが形成されている。
【0073】
このような構成の電動機1によれば、磁気特性の低下を抑制しつつ、軽量化を図ることができる。ここで比較例として、特定の位置を考慮せずに回転子鉄心21に肉抜部40を設けた場合について考える。この比較例の構造では、肉抜部40が設けられることでヨーク25における磁束流路が肉抜部40の周囲で限定され、磁束の飽和による磁気抵抗の上昇が生じる。磁気抵抗の上昇が生じると、電動機1の磁気特性が低下し、電動機1の効率やトルクが低下する可能性がある。
【0074】
そこで本実施形態では、回転子鉄心21におけるスポーク29の延長線上に、肉抜部40が形成されている。この場合、肉抜部40が設けられることでヨーク25における磁束流路が肉抜部40の周囲で限定される場合であっても、ヨーク25を通る一部の磁束は、肉抜部40の周囲でスポーク29の一部(例えばスポーク29の接続部29a)を通って肉抜部40を迂回することで、肉抜部40の周囲を飽和することなく通ることができる。このため、本実施形態の構成によれば、肉抜部40を設けた場合であっても、電動機1の磁気特性が低下しにくい。これにより、電動機1の磁気特性の低下を抑制しつつ、電動機1の軽量化を図ることができる。
【0075】
ここで、ヨーク25に対するスポーク29の接続部29aは、空隙31の隅部などに生じる応力集中などを避けるために膨らみ部30A,30Bを有する。このような膨らみ部30A,30Bが設けられると、その分だけ電動機1が重くなる。しかしながら本実施形態の構成よれば、その膨らみ部30A,30Bを利用してスポーク29の近傍に肉抜部40が設けられることで、電動機1の軽量化が図られている。また別の観点で見ると、回転子鉄心21に肉抜部40が設けられた場合でも、膨らみ部30A,30Bによって回転子鉄心21の機械的強度が高く保たれる。これにより、機械的強度と、軽量化の両面で優れた電動機1を提供することができる。
【0076】
本実施形態では、肉抜部40は、略三角形状である。このような構成によれば、磁束は、肉抜部40の両側に分岐して通りやすい。このため、肉抜部40を設けた場合であっても、電動機1の磁気特性の低下をさらに抑制することができる。
【0077】
本実施形態では、肉抜部40は、スポーク29に対して向いた凸部41を含む形状である。このような構成によれば、肉抜部40に凸部41を設けることで肉抜部40の面積を比較的大きくした場合でも、凸部41が存在することになる肉抜部40とスポーク29との間において、磁束の一部はスポーク29の接続部29aを通ることで肉抜部40を迂回することができる。これにより、肉抜部40の面積を大きくすることで電動機1のさらなる軽量化を図るとともに、電動機1の磁気特性の低下を抑制することができる。
【0078】
本実施形態では、肉抜部40は、スポーク29に対して凸部41が向いた略三角形状である。このような構成によれば、肉抜部40とロータバー35との間には、肉抜部40の凸部(角部)が存在しないため、肉抜部40とロータバー35との間において磁束の飽和がより生じにくい。一方で、凸部41が存在することになる肉抜部40とスポーク29との間では、磁束の一部はスポーク29の接続部29aを通ることで肉抜部40を迂回することができる。これにより、電動機1の磁気特性の低下をさらに抑制することができる。
【0079】
本実施形態では、肉抜部40の凸部41は、一対の膨らみ部30A,30Bの間の領域32に向いている。このような構成によれば、肉抜部40の凸部41が存在することになる肉抜部40とスポーク29との間において、磁束の一部は、スポーク29の膨らみ部30A,30Bを通ることで、スポーク29の一部を通って肉抜部40を迂回することができる。これにより、肉抜部40の周囲で磁束がさらに飽和しにくく、電動機1の磁気特性の低下をさらに抑制することができる。
【0080】
本実施形態では、肉抜部40は、周方向θの最大幅W1が径方向Rの最大幅W2に比べて大きな扁平形状である。このような構成によれば、肉抜部40の径方向Rの最大幅W2が比較的小さいため、肉抜部40が磁束を阻害しにくくなる。一方で、肉抜部40の周方向θの最大幅W1が比較的大きいため、電動機1のさらなる軽量化を図ることができる。これにより、磁気特性と軽量化の両面でさらに優れた電動機1を提供することができる。
【0081】
本実施形態では、肉抜部40は、スポーク29に入り込まずに、スポーク29よりも径方向Rの外側の位置(すなわちヨーク25)に設けられている。このような構成によれば、スポーク29の機械的強度を確保しやすくなる。これにより、強度面でも優れた電動機1を提供することができる。
【0082】
例えば本実施形態では、ブロワ―60からハウジング5内に供給された冷却風(またはシャフト23に取り付けられたファンから送られた冷却風)の一部は、肉抜部40の内部に流入してもよい。これにより、冷却効率面でも優れた電動機1を提供することができる。なお、肉抜部40は、例えば軽量化を目的とした穴であり、冷却風が流れなくてもよい。
【0083】
(第7の実施形態)
次に、
図22を参照して、第7の実施形態について説明する。
本実施形態は、肉抜部40が略円形に形成された点で、第6の実施形態とは異なる。なお、以下に説明する以外の構成は、第6の実施形態と同様である。
【0084】
図22は、第7の実施形態の電動機1を示す断面図である。
図22に示すように、本実施形態の肉抜部40は、軸方向Zから見た断面形状において、略円形に形成されている。本願でいう「略円形」とは、例えば真円形であるが、これに代えて、楕円形などでもよい。また「略円形」とは、周方向θにおける該肉抜部40の最大幅W1が径方向Rにおける該肉抜部40の最大幅W2に比べて大きな扁平形状な円形でもよい。
【0085】
このような構成によれば、第6の実施形態と同様に、磁気特性の低下を抑制しつつ、電動機1の軽量化を図ることができる。さらに本実施形態では、肉抜部40が略円形に形成されている。このような構成によれば、肉抜部40の面積を比較的大きく確保することができる。これにより、電動機1のさらなる軽量化を図ることができる。
【0086】
(第8の実施形態)
次に、
図23を参照して、第8の実施形態について説明する。
本実施形態は、肉抜部40の配置位置が所定の条件を満たすように設定された点で、第6の実施形態とは異なる。ここでは、1つの肉抜部40の配置位置を代表して説明するが、回転子鉄心21に設けられる全ての肉抜部40が以下に示す条件を満たすように設定されてもよい。なお、以下に説明する以外の構成は、第6の実施形態と同様である。
【0087】
図23は、第8の実施形態の電動機1の一部を拡大して示す断面図である。
図23に示すように、本実施形態の肉抜部40は、軸方向Zから見て、空隙31と肉抜部40との最短離間距離をDとし、周方向θにおけるスポーク29の幅をWとしたとき、D≧W/2(以下、条件1という。)を満たすように形成されている。
【0088】
例えば本実施形態では、ヨーク25に対するスポーク29の接続部29aは、第6の実施形態と同様に、一対の膨らみ部30A,30Bを有する。そして、肉抜部40は、スポーク29の第1膨らみ部30Aと向かい合う第1辺42Aと、スポーク29の第2膨らみ部30Bと向かい合う第2辺42Bとを有する。第1辺42Aおよび第2辺42Bは、肉抜部40の凸部41の両側に分かれて形成されている。
【0089】
そして本実施形態では、隅アール部31eによって規定された第1膨らみ部30Aの縁と、肉抜部40の第1辺42Aとの間の距離が、空隙31と肉抜部40との最短離間距離Dに該当する。また、隅アール部31eによって規定された第2膨らみ部30Bの縁と、肉抜部40の第2辺42Bとの間の距離が、空隙31と肉抜部40との最短離間距離Dに該当する。
【0090】
また本実施形態では、肉抜部40は、空隙31と肉抜部40との最短離間距離をDとし、周方向θにおけるスポーク29の幅をWとしたとき、上記条件1を満たすとともに、D<Wを満たすように形成されている。
【0091】
また本実施形態では、肉抜部40は、空隙31とロータバー35との最短離間距離をKとし、ロータバー35と肉抜部40との最短離間距離をQとしたとき、Q+D≧K(以下、条件2という。)を満たすように形成されている。なお、肉抜部40は、条件1および条件2の両方を満たすように形成されてもよく、条件1および条件2のいずれか一方のみを満たすように形成されてもよい。
【0092】
本実施形態では、空隙31と回転子スロット33(ロータバー35)との最短離間距離Kは、磁気飽和に起因する回転子20の磁気特性の低下が生じない距離に設定されている。例えば、最短離間距離Kは、ヨーク25に肉抜部40が形成されてない構成において、固定子コイル13に所定の電圧が印加されたときに、空隙31とロータバー35との間を流れる磁束の磁束密度が飽和磁束密度と同等以下になるように設定されている。
【0093】
このような構成によれば、第6の実施形態と同様に、磁気特性の低下を抑制しつつ、電動機1の軽量化を図ることができる。
【0094】
さらに本実施形態では、軸方向Zから見て、周方向θにおけるスポーク29の幅をWとし、空隙31と肉抜部40との最短離間距離をDとしたとき、D≧W/2となっている。このような構成によれば、回転子鉄心21が回転する際に、肉抜部40と空隙31との間の鉄心部分に作用する応力は、スポーク29に作用する応力に比べて過大に大きくなりにくい。これにより、電動機1の信頼性や寿命を向上させることができる。またこのような構成によれば、肉抜部40よりも径方向Rの内側を通る磁束が肉抜部40によって阻害され、空隙31と肉抜部40との間で磁気飽和が生じることをさらに確実に抑制することができる。
【0095】
本実施形態では、空隙31と肉抜部40との最短離間距離D、および前記スポークの幅Wは、D<Wをさらに満たすように設定されている。このような構成によれば、ロータバー35に対して肉抜部40を比較的離して配置することができる。これにより、ロータバー35と肉抜部40との間における磁束の飽和をさらに抑制することができる。
【0096】
ここで、空隙31とロータバー35との間を流れる磁束は、空隙31と肉抜部40との間、およびロータバー35と肉抜部40との間に分岐する。このため、空隙31と肉抜部40との間、またはロータバー35と肉抜部40との間において磁気飽和が生じると、肉抜部40が形成されていない場合と比較して、空隙31とロータバー35との間の磁束密度が低下する。本実施形態では、空隙31とロータバー35との最短離間距離をKとし、ロータバー35と肉抜部40との最短離間距離をQとしたとき、Q+D≧Kとなっている。このような構成によれば、磁束の流れに対する幅を、ロータバー35と肉抜部40との間において十分に確保できる。よって、例えばロータバー35と肉抜部40との間において磁気飽和が生じ、空隙31とロータバー35との間において磁束密度が低下することを抑制することができる。
【0097】
以上、いくつかの実施形態に係る電動機1について説明したが、実施形態の構成は、上記例に限定されない。例えば上述した実施形態および変形例の構成は、互いに組み合わせて適用することができる。また上述の実施形態では、電動機1は、鉄道車両に適用されるものとしたが、例えば自動車などの車両用や、エレベータの巻上機などの産業用であってもよい。また上記実施形態では、スポーク29が6本設けられているが、これに限定されず、スポークの本数は、任意に設定可能である。
【0098】
肉抜部40は、例えば凸部41が径方向Rの外側に向いた略三角形状でもよい。また、肉抜部40は、略三角形状や略円形以外の形状でもよい。また、回転子鉄心21は、支持部27を有さずに、スポーク29がシャフト23に直接に固定されてもよい。また、肉抜部40の一部(例えば凸部41の少なくとも一部)は、隣り合う2つの空隙31の弧状部31aの間を繋ぐ仮想線ILよりも、径方向Rの内側に位置してもよい(
図24参照)。言い換えると、肉抜部40の一部は、スポーク29に入り込み、スポーク29に設けられてもよい。この場合、肉抜部40の一部は、スポーク29の接続部29aにおいて、一対の膨らみ部30A,30Bの間の領域32に設けられてもよい。このような構成によれば、肉抜部40の面積をさらに大きくすることができる。その結果、電動機1のさらなる軽量化を図ることができる。
【0099】
また、空隙31の内部に冷却風が供給される場合、空隙31の内面には、フィン62が設けられてもよい(
図25参照)。なお、フィン62は、軸方向Zに延びた板状部でもよく、空隙31の内面に設けられた突起でもよい。フィン62が設けられた場合、放熱面積の増加により冷却性能の向上を図ることができる。
【0100】
また、肉抜部40の内部に冷却風が供給される場合、肉抜部40の内面には、フィン64が設けられてもよい(
図26参照)。なお、フィン64は、軸方向Zに延びた板状部でもよく、肉抜部40の内面に設けられた突起でもよい。フィン64が設けられた場合、放熱面積の増加により冷却性能の向上を図ることができる。
【0101】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ヨークの周方向に沿って離間して配置され、前記ヨークとシャフトとの間に設けられてヨークを支持した複数のスポークを回転子鉄心が持つことにより、電動機の軽量化を図ることができる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。