特許第6844982号(P6844982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844982
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】分散剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/66 20060101AFI20210308BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20210308BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20210308BHJP
   B01F 17/42 20060101ALI20210308BHJP
   B01F 17/56 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C08G63/66
   C08L67/02
   B01F17/52
   B01F17/42
   B01F17/56
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-203128(P2016-203128)
(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公開番号】特開2018-62635(P2018-62635A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柿倉 友華
(72)【発明者】
【氏名】村島 健司
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−025630(JP,A)
【文献】 特開平04−222881(JP,A)
【文献】 特開平06−122759(JP,A)
【文献】 特表昭58−500221(JP,A)
【文献】 特開平11−322914(JP,A)
【文献】 米国特許第06174965(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0123552(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル脂肪族飽和ジカルボン酸、脂肪族不飽和ジカルボン酸、及び、これらの無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種との反応生成物からなる分散剤。
【請求項2】
請求項1に記載の分散剤と分散物を含有することを特徴とする分散組成物。
【請求項3】
請求項に記載の分散組成物を含有することを特徴とする塗料、インク、化粧料、農薬、又は、電子材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤、これを配合した分散組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料やインクに用いられる無機・有機顔料は、溶媒に対する親和性が低いため、水中に均一に分散させ安定な分散体を調製するために分散剤が使用されている。分散剤にはスチレン−アクリル酸共重合体などの高分子系顔料分散剤(特許文献1)やポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの界面活性剤系顔料分散剤(特許文献2)がある。しかし、高分子系顔料分散剤は橋掛け凝集が起こり、顔料粒子の凝集、沈降を引き起こす可能性があり、界面活性剤系顔料組成物でも長期保存時には顔料粒子の凝集や沈降が起こる可能性があることから、顔料の初期分散性、顔料分散体の長期保存安定性のさらなる改善が求められている。
【0003】
さらに、化粧品分野では顔料だけでなく、紫外線遮蔽材、抗菌剤、パール化剤などの微粒子の分散性が問題となっている。紫外線遮蔽材に使用されている酸化チタンや酸化亜鉛の微粒子は粒子径が小さい為、一次粒子が凝集して二次粒子となりやすく、微粒子の特性が阻害されるという問題がある。その課題を解決するため、金属酸化物微粒子を内包させた樹脂粉体を乳液に配合した化粧料が開示されている(特許文献3)。しかしこの方法では、金属酸化物が樹脂粉体の表面に存在している場合に金属酸化物の親水部分が凝集し、配合安定性が悪くなると共に紫外線遮蔽効果が十分に発揮されないことがある。
【0004】
また、農薬分野では水難溶性の固体原体、界面活性剤、湿潤剤、増粘剤、水から構成されるフロアブル剤において、長期保存中に固体原体が分離、沈降することが問題になっている。この問題を解決するため、HLBが1〜9の非イオン性界面活性剤及びHLBが10〜20の非イオン性界面活性剤の共存下に、水難溶性の固状生理活性成分を液体媒体中に微粒子状に分散させることにより、懸濁安定性及び自己分散性に優れた懸濁状組成物が提案されている(特許文献4)。しかしながら、より汎用的で分散性の高い分散剤の要望は依然として存在する。
【0005】
そして、導電性付与剤、あるいは導電パスとして利用される錫含有酸化インジウム(ITO)やカーボンナノチューブ(CNT)など導電性フィラーも分散性が問題になっている。例えば、導電膜は分散媒体中に無機酸化物を分散し、ガラス板やプラスチック板(プラスチックフィルム)等の基盤に塗工されることにより形成される。近年、導電膜の平滑性や透明性向上の点から、より粒径の小さな無機酸化物が使用されるようになり、安定な分散体を得ることが困難となっている。従来、無機酸化物を分散させる技術としてアミン類のエチレンオキサイド(EO)・プロピレンオキサイド(PO)付加体が提案されている(特許文献5、特許文献6)。しかし、安定な分散体を得るために分散剤の添加量を多くすると導電性が低下するという問題を有する。そのため、無機酸化物の分散安定性、塗膜の透明性及び導電性の両立が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−140646号公報
【特許文献2】特開2010−121034号公報
【特許文献3】特許3205249号明細書
【特許文献4】特許3606897号明細書
【特許文献5】特許4127873号明細書
【特許文献6】特開平10−235807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
塗料、インク、化粧料、農薬、電子材料などで用いられる分散物の初期分散性及び分散安定性に優れる分散剤、これを配合した分散組成物を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
多価アルコール多塩基酸エステルを用いた分散剤が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分散剤は、幅広い分野で用いられる分散物の初期分散性及び分散安定性を向上させることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の分散剤は、多価アルコールと、多塩基酸の少なくとも1種とのエステル化合物である。
【0011】
本発明で使用する多価アルコールとしては、グリセリン、ポリグリセリン、(ポリ)アルキレングリコール、グルコース、フルクトース、ソルビトール、マルチトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、及び、これらの共重合体等が挙げられる。本発明の効果の点からポリグリセリン、(ポリ)アルキレングリコール、及び、それらの共重合体が好ましく、ポリグリセリンとポリアルキレングリコールの共重合体がより好ましい。
【0012】
本発明で使用する多塩基酸は特に制限はない。このような多塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、エイコサン二酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;ダイマー酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;クエン酸、ヒドロキシクエン酸、イソクエン酸、アセチルクエン酸、トリメリット酸等のトリカルボン酸;1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸等のテトラカルボン酸が挙げられる。また、これらの酸無水物や酸ハロゲン化物を用いてもよい。
【0013】
多価アルコールと多塩基酸とを反応させてなるエステル化反応は、特に制限されるものではなく、従来のエステル化の方法を用いることができる。すなわち、窒素雰囲気下において多価アルコールと多塩基酸を仕込み、加熱攪拌することによって反応生成物が得られる。反応温度は80℃〜250℃である。反応時間は4〜12時間である。
【0014】
本発明のエステル化物の末端基は特に限定されないが、多塩基酸に由来するカルボキシル基であることが好ましい。
【0015】
本発明の分散組成物で使用される分散物として顔料、紫外線遮蔽材、抗菌剤、パール化剤、農薬原体、導電性フィラー等が挙げられる。
【0016】
顔料は有機系顔料でも無機系顔料であっても良い。有機系顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、アゾ系顔料等が挙げられる。また、無機系顔料としては、例えば、アルミナ、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0017】
紫外線遮蔽材としては酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の金属酸化物が挙げられ、分散組成物の透明性及び紫外線遮蔽能の観点から、粒子径が0.1μm以下の超微粒子金属酸化物が好ましい。
【0018】
抗菌剤、パール化剤としては、2−メルカプトピリジン−N−オキシド多価金属塩、二硫化セレン、エチレングリコールジステアレート等が挙げられる。
【0019】
農薬原体としては、ニテンピラム、バリダマイシンA、プロベナゾール、トリシクラゾール、フェリムゾン、イマゾスルフロン、ベンスルタップ、エトフェンプロックス、フルシトリネート、フサライド、イミダクロプリド等が挙げられる。
【0020】
導電性フィラーとしては、アンチモン含有酸化錫(ATO)、リン含有酸化錫(PTO)、フッ素が乳酸化錫(FTO)、錫含有酸化インジウム(ITO)、アルミニウム含有酸化亜鉛(AZO)、カリウム含有酸化亜鉛(GZO)、アンチモン含有酸化インジウム(AIO)等の金属酸化物系フィラー;導電性カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ(CNT)等のカーボン系フィラー;金、銀、ニッケル、銅等の金属系フィラー;マイカ、炭酸カルシウム、炭素繊維にアルミニウムやニッケルなどを被覆した金属被覆系フィラー等が挙げられる。
【0021】
その他、セラミックコンデンサに利用されるアルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム;フィルター部材、高ガスバリア包装部材等への利用が期待されるセルロースナノファイバー(CNT)等も挙げられる。
【0022】
本発明の分散物を分散させる溶媒としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、ケトン類(アセトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、へプタン等)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、ハロゲン系溶剤(エチレンジクロライド等)、炭化水素油(流動パラフィン、スクワラン等)、植物油脂類(アボガド油、オリーブ油、トウモロコシ油等)、アミノ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン及びこれらの混合物等が挙げられ、水もしくは水とアルコールの混合物が好ましい。
【0023】
本発明の分散組成物を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、各種溶剤に本発明の分散剤を溶解又は分散し、それに分散物を添加してペイントシェイカー(ロッキングミル)、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の分散機器で混合する方法などによって容易に得ることができる。
【0024】
本発明の分散剤の使用量は、分散物の量に対して0.01〜5.0wt%が好ましい。
【0025】
本発明の分散剤と分散物を添加して作成する本発明の分散組成物は、その製品形態が特に限定されるものではなく、塗料、インク、化粧料、農薬、電子材料など様々な分野の製品を例示することができる。
【0026】
本発明の分散組成物は、前記に例示された分散剤、分散物、溶媒の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で塗料、インク、化粧料、農薬、電子材料などに配合される成分を配合する事ができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。また、実施例中の表の単位は特に断らない限り「g」とした。
【0028】
(合成例)
温度計、撹拌機、窒素吹込み管、還流管を備えた反応器に、POE(20)ジグリセリルエーテル(SC−E1000、阪本薬品工業(株)製)202.5gと無水コハク酸(キシダ化学(株)製)を77.5g、MEK(キシダ化学(株)製)を70.0g仕込み、窒素雰囲気下、95℃で12時間反応を行った。その後、減圧下でMEKを留去して、酸価が155.2のサンプルAを得た。以下同様に、多価アルコールと多塩基酸の種類を変えて反応を行い、サンプルB、C、Dを得た。各々のサンプルの原料と酸価を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例1)
100mLのポリ瓶にITO粉末を1.5g、合成例で得られたサンプルAを0.3g入れ、分散液の総量が30gとなるようイオン交換水を加えた。これに、ジルコニアビーズ(YTZボール、直径1mm)を60g加えた後、ロッキングミル(RM−05S:セイワ技研製)を用いて600rpmで15分間分散し、5wt%分散液を調製した。
【0031】
(実施例2〜8)
実施例1にて使用したサンプル、粉体の種類を変えたこと以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。
【0032】
(比較例1)
100mLのポリ瓶にITO粉末を1.5g入れ、分散液の総量が30gとなるようイオン交換水を加えた。これに、ジルコニアビーズ(YTZボール、直径1mm)を60g加えた後、ロッキングミル(RM−05S:セイワ技研製)を用いて600rpmで15分間分散し、5wt%分散液を調製した。
【0033】
(比較例2〜4)
比較例1にて使用した粉体の種類を変えたこと以外は比較例1と同様にして分散液を調製した。
【0034】
上記により得られた5wt%分散液をサンプル管に移し、分離率を指標として分散性、安定性を評価した結果を表2に示した。なお、分離率は(式1)より算出した。
(分散性の評価)
分散直後の分離率が1%未満のものを◎、1%以上10%未満のものを○、10%以上20%未満のものを△、20%以上のものを×とした。
(分散安定性の評価)
常温で1日保存後の分離率が1%未満のものを◎、1%以上10%未満のものを○、10%以上20%未満のものを△、20%以上のものを×とした。

(式1)分離率(%)=(分離部分の液面の高さ/分散液の液面の高さ)×100
【0035】
【表2】
【0036】
本発明に係る分散剤を使用した実施例1〜4では、分散直後の分離率が1%未満となり、比較例1に比べて分散性に優れていた。さらに、実施例1〜4の分散1日後の分離率は10%未満となり、比較例1に比べて分散安定性に優れていた。また、実施例5〜8にあるように、粉体の種類を変えた場合でも本発明に係る分散剤は、分散性及び分散安定性に優れていた。