特許第6844989号(P6844989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6844989生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液及びそれを用いた生食用生肉の風味改良変質防止法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844989
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液及びそれを用いた生食用生肉の風味改良変質防止法
(51)【国際特許分類】
   A23B 4/023 20060101AFI20210308BHJP
   A23B 4/20 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A23B4/023 Z
   A23B4/20 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-212067(P2016-212067)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2020-10601(P2020-10601A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-218997(P2015-218997)
(32)【優先日】2015年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594034876
【氏名又は名称】小川 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100071973
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 良隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 博衛
(72)【発明者】
【氏名】小川 明宏
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−075387(JP,A)
【文献】 特開2002−000246(JP,A)
【文献】 特開2012−213380(JP,A)
【文献】 特開平11−221065(JP,A)
【文献】 品質改良剤の使い方,食品と科学, 1982, 増刊315号, p.133-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ナトリウム(a)を2.5〜28.0重量%、リン酸及び酸性リン酸塩の少なくとも1種(b)を0.025〜10.0重量%、グリシン及びDL−アラニンの少なくとも1種(c)を0.02〜10.0重量%溶解し、且つ(a)に対する(b)の割合が0.01〜0.67重量倍、(a)に対する(c)の割合が0.008〜1.0重量倍であり、pHが5.5〜7.5であり、1年以上澄明な水溶液である薄味又は調味しない生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液。
【請求項2】
酸性リン酸塩がリン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム又は酸性メタリン酸ナトリウムである請求項1記載の1年以上澄明な水溶液である生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液。
【請求項3】
さらに糖類を含有する請求項1または2記載の1年以上澄明な水溶液である生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液。
【請求項4】
糖類がトレハロース、キシロース、アラビノース、グルコース、パラチノース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、蔗糖、乳糖、マルトース、デキストリン、マルチトール、パラチニット、ラクトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、還元澱粉加水分解物の少なくとも1種である請求項3記載の1年以上澄明な水溶液である生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は品質の改良された生食用の食肉風味改良変質防止剤、特に液体のままで長期保存が可能な食肉風味改良変質防止用水性浸漬液およびそれを用いた生食用生肉の風味改良変質防止法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介、畜肉などの生食用の食肉は、加熱食品と比べ初発菌数が極めて高いため鮮度が低下しやすく、室温下では、1日以上風味を損なわず、安全に摂食しうる状態に保存することが困難であった。しかし、コンビニエンスストアーやスーパーなどの流通形態の多様化や食に対するエコロジーの観点からも、今まで以上の長時間に亘って生食用食肉の保存性向上が求められている。特に刺身、寿司ネタなどの場合にその要望が強かった為、本発明者らは生食用魚介、畜肉などの生肉の変質を起こさせず、生肉の食感、味質を損なわせず、室温(1〜30℃)保存下でこれまで以上の長期に亘って安全性を確保することができる生肉の風味改良、変質防止剤およびその方法を確立した。(特許文献1)
【0003】
しかし本発明者らが確立した生食用生肉の風味改良変質防止剤及びその方法、それを含有する生肉で使用する風味品質改良剤(特許文献1)を水に溶解させて瓶詰にすると、水の温度や溶質の濃度にもよるが、数週間で瓶の底辺に「おり」のようなものが析出することを見つけた。この「おり」は一度析出すると再度溶解させることが困難である。
【0004】
「おり」が発生した浸漬液は、使用に際しての性能、つまり生食用生肉の日持ち効果や生肉の味、外観、風味には全く影響がないが、瓶詰の液体を1カ月以上商品棚に陳列した場合「おり」が出ていると商品価値が著しく損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2012−75387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は生食用の食肉の食感、味質を損なわず、より優れた保存性を有し、水溶液として長期保存しても澄明性を保つ生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特許文献1に記載の有機酸に代えてリン酸又は酸性リン酸塩を用いることにより生食用生肉の液体風味改良変質防止剤が一年以上の長期にわたり澄明な水溶液として保存することが出来うる事を発見した。勿論生食用魚介、畜肉などの生肉の風味に変質を起こさせず、室温(1〜30℃)保存下でこれまで以上の長期に亘って安全性を確保することができる生食用生肉の風味改良、変質防止用水性浸漬液を完成した。
【0008】
即ち本発明は、
(1)酢酸ナトリウム(a)を2.5〜28.0重量%、リン酸及び酸性リン酸塩の少なくとも1種(b)を0.025〜10.0重量%、グリシン及びDL−アラニンの少なくとも1種(c)を0.02〜10.0重量%溶解し、且つ(a)に対する(b)の割合が0.01〜0.67重量倍、(a)に対する(c)の割合が0.008〜1.0重量倍であり、pHが5.5〜7.5である、薄味又は調味しない生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液。
(2)酸性リン酸塩が、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム又は酸性メタリン酸ナトリウムである(1)記載の生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液。
(3)さらに糖類を含有する(1)または(2)記載の生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液。
(4)糖類がトレハロース、キシロース、アラビノース、グルコース、パラチノース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、蔗糖、乳糖、マルトース、デキストリン、マルチトール、パラチニット、ラクトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、還元澱粉加水分解物の少なくとも1種である(3)記載の生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液。
(5)生食用生肉に対し0.5〜5重量倍の(1)〜(4)のいずれかに記載の浸漬液に生肉を10秒〜1時間浸漬し、水切りをして30℃以下の温度下に保存する生食用生肉の風味改良変質防止法。
【0009】
本発明の生食用生肉の風味改良変質防止用浸漬液において、酢酸ナトリウム(a)に対するリン酸及び酸性リン酸塩の少なくとも1種(b)の混合割合は、0.01〜0.67重量倍、好ましくは0.04〜0.47重量倍、さらに好ましくは0.1〜0.32重量倍である。
【0010】
本発明の風味改良変質防止用浸漬液において、酢酸ナトリウム(a)に対するグリシン及びDL−アラニンの少なくとも1種(c)の合計量の混合割合は、0.008〜1.0重量倍、好ましくは0.01〜0.5重量倍、さらに好ましくは0.05〜0.3重量倍である。
【0011】
本発明の生食用生肉の風味改良変質防止剤を含有させ安定化した水溶液は、浸漬用の生食用生肉の風味改良変質防止用の製剤水溶液として便宜に使用することができる。
【0012】
この製剤水溶液中、即ち水性浸漬液中の成分(溶質)の含有割合は、5.0〜35.0重量%、好ましくは10.0〜31.0重量%、さらに好ましくは12.0〜30.5重量%である。原料として用いた成分が水和物の場合は、無水物換算した値を溶質分とする。
【0013】
又、この水性浸漬液中の酢酸ナトリウム(a)の濃度は、通常2.5〜28.0重量%、好ましくは5.0〜25.0重量%、さらに好ましくは10.0〜20.0重量%である。
【0014】
浸漬液中のリン酸及び酸性リン酸塩の少なくとも1種(b)の濃度は、通常0.025〜10.0重量%、好ましくは0.2〜8.0重量%、さらに好ましくは1.0〜6.0重量%である。
又、浸漬液中のグリシンおよびDL−アラニンの少なくとも1種(c)の合計量の濃度は、通常0.02〜10.0重量%、好ましくは0.05〜8.0重量%、さらに好ましくは0.5〜6.0重量%である。
本発明における生食用食肉に含浸される風味改良変質防止用浸漬液中の溶質は、生食用食肉に対して、通常0.1〜6.5重量%、好ましくは0.5〜5.5重量%、さらに好ましくは1〜4.5重量%である。
【0015】
本発明の風味改良変質防止水性製剤のpHは添加量、酸濃度及び食肉の種類にもよるが溶質1%の水溶液として5.5〜7.5、好ましくは5.7〜7.0、さらに好ましくは5.8〜6.8である。液のpHがこれらの範囲に収まらない場合は、酸性物質やアルカリ性物質を加えて、pHがその範囲になるよう調節することができる。
酢酸ナトリウムには無水物と三水和物が存在するが、本明細書において質量を論ずる場合は、無水物換算で行う。
【0016】
本発明に用いるリン酸及び酸性リン酸塩は、例えばリン酸、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム又は酸性メタリン酸ナトリウムであり、好ましくはリン酸、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウムである。特に好ましいのは、リン酸とリン酸一ナトリウムである。酸性リン酸塩にも、無水物と水和物が存在するが、本明細書において質量を論ずる場合は、無水物換算で行う。
なお、本発明の目的、効果を損なわない限り、適当量の有機酸、及びその酸性塩類、好ましくはフマル酸、フマル酸一ナトリウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酒石酸水素カリウム、乳酸、アスコルビン酸、フィチン酸、グルコン酸(グルコノデルタラクトンを含む)さらに好ましくはフマル酸一ナトリウム、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸、フィチン酸、グルコン酸(グルコノデルタラクトンを含む)を加えてもよい。
【0017】
本発明では風味改良変質防止のためにさらにアルカリ剤を適宜用いてもよい。アルカリ剤としては、食品への添加が許可されており、且つその水溶液がアルカリ性を呈するものをいい、たとえばピロ、メタ、ポリリン酸等の重合リン酸塩、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩や、焼成カルシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の酸化物等が挙げられる。
【0018】
本発明で用いる糖類としてはトレハロース、キシロース、アラビノース、グルコース、パラチノース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、蔗糖、乳糖、マルトース、デキストリン、マルチトール、パラチニット、ラクトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、還元澱粉加水分解物等が挙げられる。糖類の中で好ましくはトレハロース、パラチノース、マルトース、デキストリン、マルチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、還元澱粉加水分解物、さらに好ましくはトレハロース、マルチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、還元澱粉加水分解物である。
【0019】
本発明品の調製方法は特に制限するものではなく、秤量した各原料を浄水に溶解する事によって調製する事が出来る。実際製造する際は攪拌機の付いたタンクで製造するのが望ましい。またその際原料個々では溶けにくい場合がある。一部の成分が吸水時に凝集し難溶解性の固体を生じさせると考えられるが、一旦これらが生じると容易に溶かすことができない。その際予め原料の必要量を計量し、必要により篩過、粉砕し均一に混合し製剤化しておく事で大幅に改善する事が出来る。本発明品の製造に用いる水は浄水ならば特に制限はないが、ミネラル成分の少ない浄水が望ましい。浄水の温度も特に制限はないが、温水ならば各原料が溶けやすいので望ましい。また本発明品は再結晶しない程度の濃厚溶液を調製し、これを希釈して必要な濃度に調整することもできる。
【0020】
本発明における生食用の食肉への風味改良変質防止剤の添加法としては、常圧又は陰圧下で、必要により冷却、解凍などの温度調節を行った食肉を浸漬液に浸漬する、漬け込む、塗布する方法や、タンブラー等でタンブリングやインジェクトで浸漬液を浸入させる方法等があるが、特に生肉の原木や柵を包丁で捌いて食べやすくした、例えばスライス状、刺身状、一口大にカット、フィレ状又はミンチ状にカットしたもの等を浸漬液に漬け込む方法が良い。
【0021】
また、生肉の水性製剤への浸漬時の食肉と浸漬液の混合割合は、生肉が重ならない状態で、十分に漬かる量が望ましい。重量比でいえば、浸漬液が食肉の0.5倍から10倍、好ましくは0.7倍から5倍、より好ましくは等倍から3倍である。
【0022】
生食用の生肉に対する本発明の浸漬液の浸漬時間は、生肉の種類、その大きさ、浸漬液の種類や濃度にもよるが、通常−5〜30℃下で10秒〜1時間、好ましくは20秒〜40分、より好ましくは30秒〜20分である。
保存温度は、なるべく30℃以下、できれば0〜25℃とするのがよい。又急速冷凍して保存することもでき、解凍後使用してもよい。
本発明の生食用生肉の風味改良変質防止剤を含浸させた生肉は、他の保存条件にもよるが、30℃以下では処理後24時間以上、10℃以下では72時間以上、良好な風味を維持し、食の安全性を保持することができる。
【0023】
本発明の生食用の食肉には、畜肉類、鳥肉類、魚介類があげられる。畜肉類としては例えば牛、豚、馬、羊、カンガルーなどの獣肉、鳥肉類としては鶏、鴨、鳩、アヒル、七面鳥、ガチョウなどの家禽の肉類等があげられる。魚介類の肉としては、例えば鯛、ひらめ、たら等の白身魚やマグロ等の赤身魚、サバ、アジ、ブリ、かんぱち等の青物、鯰、うなぎ、サーモン等の魚肉、ハマグリ、アサリ、とり貝、赤貝、ホタテ貝等の貝類(貝柱を含む)、エビ、カニ等の甲殻類、いか、たこ等の軟体動物の肉や鯨肉等があげられる。これらに風味改良変質防止剤を添加する場合、生肉を刃物で切ったり刻んだりするなどの捌きをした、例えばスライス状、刺身状、一口大にカット、フィレ状又はミンチ状にしたものを、短時間に均一に行き渡る様製剤を含浸させるのがよい。
【0024】
本発明の風味改良変質防止剤及びこれを含む生食用の食肉は、目的に応じ各種の添加物、例えば甘味料、多価アルコール、調味料、糊料、油脂、香辛料及びその抽出物、ポリリジン、プロタミン、ナイシン、リゾチーム等の抗菌剤、保存料や酸化防止剤を製剤に加えてもよいし、製剤使用時に併用してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の風味改良変質防止剤はリン酸及び酸性リン酸塩の少なくとも1種を用いることで、水溶液にした際の「おり」を生じさせず、常温常圧下でも長期間に渡り安定な水溶液を提供する事が可能となった。それ故生食用生肉の風味改良変質防止用水性浸漬液の長期保存や飽和点付近まで溶解させた生食用生肉の風味改良変質防止剤の澄明な液体化が可能となり、商品価値を従来にまして高めることとなった。
【0026】
またこれを含む生食用の食肉は、初発菌数を低減させるための一次処理として、食品の殺菌剤としての使用が許可されている殺菌剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素などの殺菌剤で処理することができる。一次処理した後は、液切り、水洗いの直ぐ後に本発明の製剤、特に浸漬液に浸漬して引き上げ、液切りして30℃以下の温度で保存するだけで、少なくとも24時間以上、通常2日以上の長期に亘り、生食用生肉の風味を改善すると共に、安全に品質劣化を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0028】
風味改良変質防止剤(製剤)の調製
粉末製剤(A)、は、表1に掲げた各原料を秤量、篩過し、合わせて均一に混合し粉末製剤とした。
液体製剤(B)、(C)および(D)、(E)は、各原料を秤量、混合し、その所定量を水に溶解させ、液体製剤とした。
【0029】
【表1】
【実施例2】
【0030】
粉末製剤(A)を水道水で3.3倍希釈したもの(A´)と液体製剤(B)、(C)、(D)、(E)をそれぞれペットボトルに入れ密封し、0℃及び37℃にて保存し、各液体製剤の安定性試験を行った。
【0031】
【表2】
(評価)
◎:沈殿なし
○:沈殿殆どなし
△:沈殿僅かにあり
×:沈殿あり
【実施例3】
【0032】
マグロ(生)の柵(約15×5cm、約170g)を50ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に常温で30秒間浸漬し、水洗後柵を一枚10〜15g程度の刺身用にカットした。実施例1の製剤(A)で3%水溶液、製剤(B)(C)(D)(E)で10%水溶液を調製し、マグロの切り身を製剤溶液に常温で1:3の重量比率で1分間浸漬した。マグロの切り身を浸漬液から引き上げ、液切り後、10名からなる熟練したパネリストが無添加品を対照とし、それぞれ風味、外観を比較した。続いて10℃で保存試験を行った。結果は表4の通りであった。
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
各生肉の加工直後に行ったパネラー(10名)による官能テスト結果
3−1生臭い:10名
3−2生臭さが消えて風味良好。外観は3−1と変わらない:10名
3−3生臭さが消えて風味良好。外観は3−1と変わらない:10名
3−4生臭さが消えて風味良好。外観は3−1と変わらない:10名
3−5生臭みが消えているが3−2、3−3と比べ有機酸味が僅かにある:10名
3−6生臭みが消えているが3-2 3-3と比べ有機酸味が少し残る:10名
【実施例4】
【0036】
サーモンの柵(約15×5cm、約170g)を一枚10〜15g程度の刺身用にカットする。実施例1の粉末製剤(A)の18%水溶液及び液体製剤(B)、(C)、(D)、(E)でそれぞれ60重量%の水溶液を調製し、サーモンの切り身と製剤溶液を常温で1:3の重量比率で5分間浸漬する。液切り後、10名からなる熟練したパネリストが無添加品を対照とし、それぞれ風味、外観を比較する。続いて25℃で保存試験を行った。
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
各生肉の加工直後に行ったパネラー(10名)による官能テスト結果
4−1 生臭い:10名
4−2 生臭さが取れて風味良好。僅かに塩味。外観は4−1の対照と変わらない:10名
4−3 生臭さが取れて風味良好。僅かに塩味。外観は4−1の対照と変わらない:10名
4−4 生臭さが取れて風味良好。少し塩味。外観は4−1の対照と変わらない:9名
生臭さが取れて風味良好。僅かに塩味。外観は4−1の対照と変わらない:1名
4−5 生臭さが取れて風味良好。僅かに塩味と少し有機酸味が残った。外観は4−1の対照と変わらない:10名
4−6 生臭さが取れて風味良好。僅かに塩味と有機酸味が残った。外観は4−1の対照と変わらない:10名
4−2、4−3、4−4(本発明)は4−1(無添加)と比べ生臭さが取れパネラー10人共に風味良好との評価であった。4−5、4−6(比較例)の生臭さは取れていたが、独特の有機酸味が残り、日持ち向上効果も本発明品と比してやや劣っていた。
【実施例5】
【0040】
風味改良変質防止剤(製剤)の調製
本発明品液体製剤(1)〜(10)および対照液体製剤(11)〜(20)は、各原料を秤量、混合し、その所定量を水に溶解させ、液体製剤とした。
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【実施例6】
【0043】
本発明液体製剤(1)〜(10)と対照液体製剤(11)〜(20)をそれぞれペットボトルに入れ密封し、0℃及び37℃にて保存し、各液体製剤の安定性試験を行った。
【0044】
【表9】
(評価)
◎:沈殿なし
○:沈殿殆どなし
△:沈殿僅かにあり
×:沈殿あり
【産業上の利用可能性】
【0045】
生食用の生肉、特に刺身状、スライス状、一口大カット状、フィレ状又はミンチ状にカットした魚肉、生肉を扱うすべての調理現場において、生肉を本発明の風味改良変質防止用浸漬液で処理することにより、生肉本来の風味をいささかも損することなく日持ちを長引かせることができるので、それらの生肉を取扱う業者にとって待望の日持ち剤である。