(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を表面に有するウェーハを該分割予定ラインに沿って分割するウェーハの加工方法であって、
ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線によって該分割予定ラインに沿った分割起点をウェーハの内部に形成する分割起点形成工程と、
エキスパンドテープを介して環状のフレームの開口にウェーハが支持されたウェーハユニットを準備するウェーハユニット準備工程と、
該ウェーハユニットのウェーハを、該エキスパンドテープを介してチャックテーブルの保持面に載置するとともに、該フレームをフレーム保持手段により保持する拡張準備工程と、
該エキスパンドテープの該フレームとウェーハとの間の領域に拡張調整部材を貼着する拡張調整工程と、
該フレームと該チャックテーブルとを相対的に離反させて該エキスパンドテープを拡張し、該分割起点を起点にウェーハを該分割予定ラインに沿って複数のチップに分割しつつ該チップの間隔を拡張する拡張工程と、を備え、
該拡張調整工程では、複数の該拡張調整部材がウェーハの周縁に沿って間隔をあけて貼着される
ウェーハの加工方法。
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を表面に有するウェーハを該分割予定ラインに沿って分割するウェーハの加工方法であって、
ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線によって該分割予定ラインに沿った分割起点をウェーハの内部に形成する分割起点形成工程と、
エキスパンドテープにウェーハが支持されたウェーハユニットを準備するウェーハユニット準備工程と、
該分割起点形成工程及び該ウェーハユニット準備工程を実施した後、該ウェーハユニットのウェーハを、該エキスパンドテープを介して保持テーブルの保持面に載置するとともに、該エキスパンドテープを挟持手段により挟持する拡張準備工程と、
該エキスパンドテープの該挟持手段とウェーハとの間の領域に拡張調整部材を貼着する拡張調整工程と、
該挟持手段によって該エキスパンドテープを拡張し、該分割起点を起点にウェーハを該分割予定ラインに沿って複数のチップに分割しつつ該チップの間隔を拡張する拡張工程と、
を備え、
該拡張調整工程では、複数の該拡張調整部材がウェーハの周縁に沿って間隔をあけて貼着される
るウェーハの加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1の拡張装置においては、エキスパンドテープを拡張するときに、フレームとウェーハとの間の露出した部分がウェーハ側の露出してない部分よりも先に伸びてしまい、デバイス間の距離が拡がらないという問題がある。また、上記の特許文献2の拡張装置においても、エキスパンドテープを拡張するときに、挟持手段とウェーハとの間の露出した部分がウェーハ側の露出してない部分よりも先に伸びてしまい、デバイス間の距離が広がらないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、エキスパンドテープを拡張してウェーハを分割する際に隣接するチップの間隔を拡張できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を表面に有するウェーハを該分割予定ラインに沿って分割するウェーハの加工方法であって、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線によって該分割予定ラインに沿った分割起点をウェーハの内部に形成する分割起点形成工程と、エキスパンドテープを介して環状のフレームの開口にウェーハが支持されたウェーハユニットを準備するウェーハユニット準備工程と、該ウェーハユニットのウェーハを、該エキスパンドテープを介してチャックテーブルの保持面に載置するとともに、該フレームをフレーム保持手段により保持する拡張準備工程と、該エキスパンドテープの該フレームとウェーハとの間の領域に拡張調整部材を貼着する拡張調整工程と、該フレームと該チャックテーブルとを相対的に離反させて該エキスパンドテープを拡張し、該分割起点を起点にウェーハを該分割予定ラインに沿って複数のチップに分割しつつ該チップの間隔を拡張する拡張工程と、を備え
、該拡張調整工程では、複数の該拡張調整部材がウェーハの周縁に沿って間隔をあけて貼着される。
【0008】
また、本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を表面に有するウェーハを該分割予定ラインに沿って分割するウェーハの加工方法であって、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線によって該分割予定ラインに沿った分割起点をウェーハの内部に形成する分割起点形成工程と、エキスパンドテープにウェーハが支持されたウェーハユニットを準備するウェーハユニット準備工程と、該分割起点形成工程及び該ウェーハユニット準備工程を実施した後、該ウェーハユニットのウェーハを、該エキスパンドテープを介して保持テーブルの保持面に載置するとともに、該エキスパンドテープを挟持手段により挟持する拡張準備工程と、該エキスパンドテープの該挟持手段とウェーハとの間の領域に拡張調整部材を貼着する拡張調整工程と、該挟持手段によって該エキスパンドテープを拡張し、該分割起点を起点にウェーハを該分割予定ラインに沿って複数のチップに分割しつつ該チッ
プの間隔を拡張する拡張工程と、を備え
、該拡張調整工程では、複数の該拡張調整部材がウェーハの周縁に沿って間隔をあけて貼着される。
【0009】
上記拡張調整部材は、弾性部材からなることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるウェーハの加工方法は、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線によって分割予定ラインに沿った分割起点をウェーハの内部に形成する分割起点形成工程と、エキスパンドテープを介して環状のフレームの開口にウェーハが支持されたウェーハユニットを準備するウェーハユニット準備工程と、ウェーハユニットのウェーハを、エキスパンドテープを介してチャックテーブルの保持面に載置するとともに、フレームをフレーム保持手段により保持する拡張準備工程と、エキスパンドテープのフレームとウェーハとの間の領域に拡張調整部材を貼着する拡張調整工程と、フレームとチャックテーブルとを相対的に離反させてエキスパンドテープを拡張し、分割起点を起点にウェーハを分割予定ラインに沿って複数のチップに分割しつつチップの間隔を拡張する拡張工程とを備えたため、拡張調整部材によってフレームとウェーハとの間の露出した部分が伸びにくくなり、かかる部分がウェーハ側の露出してない部分よりも先に伸張することを防ぎ、隣接するチップの間隔を十分に拡張することができる。
【0011】
また、本発明にかかるウェーハの加工方法は、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線によって分割予定ラインに沿った分割起点をウェーハの内部に形成する分割起点形成工程と、エキスパンドテープにウェーハが支持されたウェーハユニットを準備するウェーハユニット準備工程と、分割起点形成工程及びウェーハユニット準備工程を実施した後、ウェーハユニットのウェーハを、エキスパンドテープを介して保持テーブルの保持面に載置するとともに、エキスパンドテープを挟持手段により挟持する拡張準備工程と、エキスパンドテープの挟持手段とウェーハとの間の領域に拡張調整部材を貼着する拡張調整工程と、挟持手段によってエキスパンドテープを拡張し、分割起点を起点にウェーハを分割予定ラインに沿って複数のチップに分割しつつチップの間隔を拡張する拡張工程とを備えたため、拡張調整部材によって挟持手段とウェーハとの間の露出した部分が伸びにくくなり、かかる部分がウェーハ側の露出してない部分よりも先に伸張するのを防ぐことができ、隣接するチップの間隔を十分に拡張することができる。
【0012】
上記拡張調整部材は、弾性部材からなるため、上記フレームとウェーハとの間の露出した部分又は上記挟持手段とウェーハとの間の露出した部分をより伸びにくくすることができ、エキスパンドテープの拡張量を調整して、隣接するチップの間隔をより十分に拡張することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1 ウェーハの加工方法の第1例
図1に示すウェーハWは、被加工物の一例であって、円形板状の基板を有し、その表面Waには、格子状の分割予定ラインSによって区画されたそれぞれの領域にデバイスDが形成されたデバイス領域Wdと、デバイス領域Wdを囲繞する外周余剰領域Wcとを有している。ウェーハWの表面Waと反対側の面である裏面Wbには、後述するエキスパンドテープ2が貼着される。以下では、ウェーハWを個々のデバイスDを有するチップに分割するウェーハの加工方法の第1例について説明する。
【0015】
(1)ウェーハユニット準備工程
まず、
図1に示すように、中央部が開口した環状のフレーム4の下面に伸張可能なエキスパンドテープ2を貼着し、フレーム4の中央部から露出したエキスパンドテープ2にウェーハWの裏面Wb側を貼着して表面Waを上向きに露出させる。このようにして、エキスパンドテープ2を介して環状のフレーム4の開口にウェーハWが支持されたウェーハユニット1を準備する。ウェーハユニット1において、ウェーハWの外周余剰領域Wcとフレーム4との間の領域が露出したリング状の露出部3となっている。
【0016】
(2)分割起点形成工程
図2に示すように、ウェーハユニット1を、例えばウェーハWの内部に分割起点となる改質層を形成するレーザー加工装置10に搬送する。レーザー加工装置10は、ウェーハWを保持する保持面11aを有し自転可能な保持テーブル11と、保持テーブル11の周囲に配設されフレーム4を保持するフレーム保持手段12と、保持テーブル11の上方側に配設されたレーザー加工ヘッド13とを少なくとも備えている。保持テーブル11の下方には、保持テーブル11とレーザー加工ヘッド13とを鉛直方向と直交する水平方向に相対移動させる移動手段が接続されている。フレーム保持手段12は、フレーム4が載置されるフレーム載置台120と、フレーム載置台120に載置されたフレーム4を固定するクランプ部121とにより構成されている。
【0017】
レーザー加工ヘッド13には、ウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザー光線14を発振する図示しない発振器が接続されている。レーザー加工ヘッド13の内部には、発振器から発振されたレーザー光線14を集光するための集光レンズが内蔵されている。レーザー加工ヘッド13は、鉛直方向に移動可能となっており、集光レンズの位置をずらしてレーザー光線14の集光位置を調整することができる。
【0018】
レーザー加工装置10においてウェーハWの内部に分割起点を形成する際には、ウェーハユニット1のうち、エキスパンドテープ2を介してウェーハWの裏面Wbを保持テーブル11の保持面11aに載置するとともに、フレーム4をフレーム載置台120に載置する。その後、図示しない吸引源の吸引力の作用を受けた保持面11aでウェーハWを吸引保持するとともに、クランプ部121によってフレーム4の上面を押さえて固定する。
【0019】
レーザー加工ヘッド13は、集光器をウェーハWに接近する方向に下降させ、レーザー光線14の集光点を所望の位置に調整する。続いて、保持テーブル11を移動手段によって例えばY方向に水平移動させることにより、レーザー加工ヘッド13と保持テーブル11とを相対的にウェーハWの表面Waに対して平行な方向に移動させつつ、レーザー加工ヘッド13からレーザー光線14をウェーハWの表面Wa側から
図1に示した分割予定ラインSに沿って照射することにより、ウェーハWの内部に分割起点Gを形成する。全ての分割予定ラインSに沿ってレーザー光線14を照射して分割起点Gを形成したら、分割起点形成工程が完了する。
【0020】
本実施形態に示す分割起点Gは、ウェーハWの内部の強度が低下した改質層であるが、これに限られない。例えば、全ての分割予定ラインSに沿ってレーザー光線14を複数回照射することによりウェーハWを完全切断(フルカット)した溝を形成し、かかる溝を分割起点としてもよい。第1例では、ウェーハW及びフレーム4を保持することができる保持テーブル11を備えるレーザー加工装置10を用いたため、ウェーハユニット準備工程の後に分割起点形成工程を実施した場合を説明したが、レーザー加工装置10以外のレーザー加工装置を用いて先に分割起点形成工程を実施してから、ウェーハユニット準備工程を実施してウェーハユニット1を準備してもよい。
【0021】
(3)拡張準備工程
図3に示すように、ウェーハユニット1を、エキスパンドテープ2を拡張してウェーハWを個々のチップに分割するとともに各チップの間隔を拡張する拡張装置20に搬送する。拡張装置20は、ウェーハWを吸引保持するチャックテーブル21と、チャックテーブル21の周囲に配設されフレーム4を保持する複数(例えば4つ)のフレーム保持手段26と、チャックテーブル21を上下に昇降させる昇降機構27とを備えている。
【0022】
チャックテーブル21は、ポーラス部材により形成される保持部22と、保持部22が嵌合された枠体23とにより構成されている。保持部22の上面は、ウェーハWを吸引保持する保持面21aとなっている。チャックテーブル21の下方には、バルブ24を介して吸引源25が接続されている。フレーム保持手段26は、フレーム4が載置されるフレーム載置台260と、フレーム載置台260を下方から支持する支持部261と、フレーム載置台260に載置されたフレーム4を固定するクランプ部262とを備えている。昇降機構27は、シリンダ270と、シリンダ270により昇降駆動されるピストン271とにより構成され、ピストン271が上下方向に昇降することにより、チャックテーブル21を昇降させることができる。
【0023】
図3に示すように、ウェーハユニット1のウェーハWを、エキスパンドテープ2を介してウェーハWの裏面Wb側をチャックテーブル21の保持面21aに載置するとともに、フレーム4をフレーム載置台260に載置する。次いで、バルブ24を開くことにより吸引源25の吸引力を保持面21aに作用させてウェーハWを吸引保持するとともに、クランプ部262によってフレーム4の上面を押さえて固定する。このようにして、エキスパンドテープ2の拡張準備が完了する。
【0024】
(4)拡張調整工程
拡張準備工程を実施した後、
図4に示すように、エキスパンドテープ2は、チャックテーブル21の保持面21aと水平な状態で伸張され、露出部3はチャックテーブル21とフレーム保持手段26との間に位置づけられている。かかる露出部3に複数の拡張調整部材5を貼着する。具体的には、
図5に示すように、エキスパンドテープ2の露出部3に複数の拡張調整部材5を全体としてリング状となるように満遍なく貼着するとよい。拡張調整部材5は、例えば、弾性部材から構成されている。そのため、エキスパンドテープ2を放射方向に拡張する際に、露出部3に加えられる外力が拡張調整部材5に吸収され露出部3が伸びにくくなる。なお、拡張調整工程は、拡張準備工程と同時に実施してもよいし、同時に実施しなくてもよい。
【0025】
拡張調整部材5の露出部3への貼着の仕方としては、例えば作業者が手動でエキスパンドテープ2の露出部3に貼着してもよいし、図示してないが、貼着手段などによって自動でエキスパンドテープ2の露出部3に貼着してもよい。拡張調整部材5は、拡張装置20や別の装置(例えばテープ貼着装置)の内部に複数ストックされており、繰り返し使用可能となっている。また、拡張調整部材5は、弾性部材によって構成されているため、後述の拡張工程を実施した後に、拡張調整部材5を曲げてエキスパンドテープ2の露出部3から剥がしやすく、作業負担が軽減される。拡張調整部材5の個数、厚み及び大きさは特に限定されない。
【0026】
(5)拡張工程
次いで、
図6に示すように、昇降機構27によってシリンダ270においてピストン271が上昇することにより、チャックテーブル21が上昇し、フレーム4とチャックテーブル21とを相対的に離反させてエキスパンドテープ2が放射方向に拡張されると、ウェーハWに対して水平方向に引っ張る外力が加わる。
【0027】
このとき、エキスパンドテープ2の露出部3は、チャックテーブル21の外周側からフレーム4に向けて傾斜した状態で伸張されるが、拡張調整部材5が貼着された部分の露出部3は、エキスパンドテープ2のウェーハWが貼着された部分が伸張する前に伸張することが抑止される。つまり、露出部3に加えられる外力が拡張調整部材5によって吸収されるため、エキスパンドテープ2の拡張量を所望の拡張量に調整することができる。その結果、
図5に示した分割起点Gが起点となって、分割予定ラインSに沿ってウェーハWを破断して複数のチップCに分割しつつ、各チップCの間隔6を拡張することができる。このようにして、分割された個々のチップCはエキスパンドテープ2からピックアップされる。そして、拡張調整部材5は、エキスパンドテープ2から引き剥がされて、次のウェーハWの分割時に繰り返し使用される。
【0028】
本実施形態の第1例では、昇降機構27によってチャックテーブル21を上昇させることにより、フレーム4とチャックテーブル21とを相対的に離反させてエキスパンドテープ2を拡張した場合を説明したが、これに限られず、例えば、フレーム保持手段26側に昇降機構を設けてフレーム4側を引き下げることで、フレーム4とチャックテーブル21とを相対的に離反させてエキスパンドテープ2を拡張するようにしてもよい。
【0029】
このように、ウェーハの加工方法の第1例は、ウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザー光線14によって分割予定ラインSに沿った分割起点GをウェーハWの内部に形成する分割起点形成工程と、エキスパンドテープ2を介して環状のフレーム4の開口にウェーハWが支持されたウェーハユニット1を準備するウェーハユニット準備工程と、ウェーハユニット1のウェーハWを、エキスパンドテープ2を介してチャックテーブル21の保持面21aに載置するとともに、フレーム4をフレーム保持手段26により保持する拡張準備工程と、エキスパンドテープ2のフレーム4とウェーハWとの間の領域の露出部3に拡張調整部材5を貼着する拡張調整工程と、フレーム4とチャックテーブル21とを相対的に離反させてエキスパンドテープ2を拡張し、分割起点Gを起点にウェーハWを分割予定ラインSに沿って複数のチップCに分割しつつチップCの間隔6を拡張する拡張工程とを備えたため、拡張調整部材5によってフレーム4とウェーハWとの間の露出部3が伸びにくくなり、かかる露出部3がウェーハW側の露出してない部分よりも先に伸張することを防ぐことができる。これにより、隣接するチップCの間隔6を十分に拡張することができ、隣接するチップC同士が接触するおそれを低減できる。
【0030】
2 ウェーハの加工方法の第2例
次に、ウェーハの加工方法の第2例について説明する。第2例では、エキスパンドテープの四辺を挟持して引っ張ることができる
図7に示す拡張装置30を用いて、
図8に示すウェーハW1を個々のデバイスDを有するチップCに分割する。拡張装置30は、装置ベース300を有しており、装置ベース300の上面には、エキスパンドテープを介してウェーハW1を保持する保持面31aを有する保持テーブル31がテーブル支持部310によって支持されている。
【0031】
装置ベース300には、エキスパンドテープを第一方向に拡張する第一挟持手段32Aと第二挟持手段32Bとが第一方向において保持テーブル31を挟んで互いに対向して配設され、エキスパンドテープを第二方向に拡張する第三挟持手段32Cと第四挟持手段32Dとが第二方向において保持テーブル31を挟んで互いに対向して配設されている。
【0032】
第一挟持手段32A,第二挟持手段32B,第三挟持手段32C及び第四挟持手段32Dは、エキスパンドテープの下面を押圧する下側挟持機構33と、エキスパンドテープの上面を押圧する上側挟持機構34と、装置ベース300の上面に形成された凹部301に沿って移動可能に配設された可動基台35とを備えている。第一挟持手段32A及び第二挟持手段32Bは、第一方向において互いに接近及び離反する向きに移動させる第一方向移動手段36aとをそれぞれ備え、第三挟持手段32C及び第四挟持手段32Dは、第二方向において互いに接近及び離反する向きに移動させる第二方向移動手段36bとをそれぞれ備えている。
【0033】
下側挟持機構33は、直方体の下側挟持部330と、一端が下側挟持部330に連結されたアーム部331とを備えている。第一挟持手段32A及び第二挟持手段32Bの下側挟持部330の上面には、複数のローラ332が第二方向と平行な方向に整列して配設され、かかる複数のローラ332は第一方向と平行な回転軸を中心として回転可能であり、下側挟持部330の上面から外周面の半分程度が突出して装着されている。また、第三挟持手段32C及び第四挟持手段32Dの下側挟持部330の上面には、複数のローラ332が第一方向と平行な方向に整列して配設され、かかる複数のローラ332は第二方向と平行な回転軸を中心として回転可能であり、下側挟持部330の上面から外周面の半分程度が突出して装着されている。
【0034】
上側挟持機構34は、下側挟持部330と平行に延在する上側挟持部340と、一端が上側挟持部340に連結されたアーム部341とを備えている。第一挟持手段32A及び第二挟持手段32Bの上側挟持部340の下面側には複数のローラ(図示せず)が第二方向と平行な方向に整列して配設され、かかる複数のローラは第一方向と平行な回転軸を中心として回転可能であり、上側挟持部340の下面から外周面の半分程度が突出して装着されている。また、第三挟持手段32C及び第四挟持手段32Dの上側挟持部340の下面には、複数のローラが第一方向と平行な方向に整列して配設され、かかる複数のローラが第二方向と平行な回転軸を中心として回転可能であり、上側挟持部340の下面から外周面の半分程度が突出して装着されている。
【0035】
第一方向移動手段36aは、装置ベース300にそれぞれ配設され、第一方向に延在するボールネジ360と、それぞれのボールネジ360の一端を回転可能に支持する軸受部361と、それぞれのボールネジ360の他端に接続されたモータ362とを備えている。第二方向移動手段36bは、装置ベース300にそれぞれ配設され、第二方向に延在するボールネジ360と、それぞれのボールネジ360の一端を回転可能に支持する軸受部361と、それぞれのボールネジ360の他端に接続されたモータ362とを備えている。
【0036】
それぞれの可動基台35は、断面略L字形に形成されており、移動部350と、移動部350の端部から鉛直方向に立設され下側挟持部330及び上側挟持部340を支持する支持部351と、支持部351の一方の面側に形成されたガイドレール352と、支持部351の一方の面側から他方の面側に貫通して形成されたガイド溝353とを備えている。移動部350の内部に形成されたナットにはボールネジ360が螺合している。そして、第一挟持手段32A及び第二挟持手段32Bにおけるモータ362によりボールネジ360を駆動することで移動部350を第一方向に往復移動させることができ、第三挟持手段32C及び第四挟持手段32Dにおけるモータ362によりボールネジ360を駆動することで移動部350を第二方向に往復移動させることができる。
【0037】
それぞれの可動基台35には、下側挟持機構33を昇降させる下側昇降手段37と、上側挟持機構34を昇降させる上側昇降手段38とがガイド溝353に沿って配設されている。下側昇降手段37は、鉛直方向に延在するボールネジ370と、ボールネジ370の一端に接続された軸受部371と、ボールネジ370の他端に接続されたモータ372とを備えている。ボールネジ370は、アーム部331の基端部331aに形成されたナットに螺合しており、モータ372によってボールネジ370を駆動することにより、下側挟持機構33を鉛直方向に昇降させることができる。
【0038】
上側昇降手段38も下側昇降手段37と同様の構成となっており、鉛直方向に延在するボールネジ380と、ボールネジ380の一端に接続された軸受部381と、ボールネジ380の他端に接続されたモータ382とを備えている。ボールネジ380は、アーム部341の基端部341aに形成されたナットに螺合しており、モータ382によってボールネジ380を駆動することにより、上側挟持機構34を鉛直方向に昇降させることができる。
【0039】
(1)分割起点形成工程
図8に示すように、ウェーハW1の内部に分割起点Gを形成する際には、第1例と同様に、ウェーハW1を図示しない保持テーブルで保持した後、ウェーハW1の上方側に配設されたレーザー加工ヘッド13Aによって、集光器をウェーハW1に接近する方向に下降させ、ウェーハW1に対して透過性の波長を有するレーザー光線15の集光点を所望の位置に調整する。続いて、保持テーブルを水平移動させることにより、レーザー加工ヘッド13Aと保持テーブルとを相対的にウェーハWの表面Waに対して平行な方向に移動させつつ、レーザー加工ヘッド13Aからレーザー光線15をウェーハWの表面Wa側から分割予定ラインSに沿って照射することにより、ウェーハWの内部に分割起点Gを形成する。全ての分割予定ラインSに沿ってレーザー光線15を照射して分割起点Gを形成したら、分割起点形成工程が完了する。第2例においても、分割起点Gは改質層に限られず、例えば、全ての分割予定ラインSに沿ってレーザー光線15を複数回照射することによりウェーハW1を完全切断(フルカット)した溝を形成し、かかる溝を分割起点としてもよい。
【0040】
(2)ウェーハユニット準備工程
図9に示すように、ウェーハW1よりも大きい矩形状に切り出されたエキスパンドテープ2Aの上面中央にウェーハW1を貼着する。このようにして、エキスパンドテープ2AにウェーハW1が支持されたウェーハユニット1Aを準備する。ウェーハユニット1Aは、ウェーハW1の外周側からエキスパンドテープ2Aがはみ出ており、このはみ出た部分が露出部3Aとなっている。
【0041】
(3)拡張準備工程
分割起点形成工程及びウェーハユニット準備工程を実施した後、ウェーハユニット1AのウェーハW1を、エキスパンドテープ2Aを介してウェーハW1の裏面Wbを
図7に示した保持テーブル31の保持面31aに載置する。このとき、縦横に形成された分割予定ラインSを、第一方向,第二方向と平行にする。続いて、第一方向においてウェーハW1を挟んで互いに対向した第一挟持手段32Aと第二挟持手段32Bとによりエキスパンドテープ2Aを挟持するとともに、第一方向に直交する第二方向においてウェーハW1を挟んで互いに対向した第三挟持手段32Cと第四挟持手段32Dとによりエキスパンドテープ2Aを挟持する。
【0042】
具体的には、
図7に示した2つの第一方向移動手段36aによって、第一挟持手段32Aと第二挟持手段32Bとが互いに接近するように各移動部350を第一方向に水平移動させる。また、2つの第二方向移動手段36bによって、第三挟持手段32Cと第四挟持手段32Dとが互いに接近するように各移動部350を第二方向に水平移動させる。このようにして、第一挟持手段32A,第二挟持手段32B,第三挟持手段32C及び第四挟持手段32Dを互いに接近させる。
【0043】
第一方向に延在するエキスパンドテープ2Aは、第一挟持手段32A,第二挟持手段32B,第三挟持手段32C及び第四挟持手段32Dにおける
図7に示した各下側挟持部330と各上側挟持部340との間に位置づけられている。次いで、各下側昇降手段37によって各下側挟持部330を上昇させるとともに、各上側昇降手段38によって各上側挟持部340を下降させる。下側挟持部330のローラ332がエキスパンドテープ2Aの下面を押圧するとともに、上側挟持部340のローラ342(
図12において図示)がエキスパンドテープ2Aの上面を押圧することによって、エキスパンドテープ2Aの上下面を挟持する。このようにして、エキスパンドテープ2Aの拡張準備が完了する。
【0044】
また、
図7に示した拡張装置30においてエキスパンドテープ2Aを第一方向又は第二方向に引き出して保持テーブル31の保持面31aに水平に載置してから、かかるエキスパンドテープ2Aの上面中央にウェーハW1を貼着することによりウェーハユニット1Aを準備するとともに、上記の拡張準備工程を並行して行ってもよい。
【0045】
(4)拡張調整工程
図10に示すように、第一挟持手段32A〜第四挟持手段32Dによって四辺が挟持されたエキスパンドテープ2Aは、
図7に示した保持テーブル31の保持面31aと水平な状態で伸張され、ウェーハW1の外周と第一挟持手段32A〜第四挟持手段32Dとの間の領域に露出部3Aが位置づけられている。かかる露出部3Aに複数の拡張調整部材5AをウェーハW1の周縁に沿って全体としてリング状となるように満遍なく貼着するとよい。拡張調整部材5Aは、第1例の拡張調整部材5と同様の構成のものを使用する。なお、拡張調整工程は、拡張準備工程と同時に実施してもよいし、同時に実施なくてもよい。
【0046】
(5)拡張工程
次に、
図11に示すように、第一方向及び第二方向においてエキスパンドテープ2Aを外側に向けて拡張する。具体的には、第一挟持手段32Aと第二挟持手段32Bとがエキスパンドテープ2Aを挟持した状態で第一挟持手段32Aと第二挟持手段32Bとを第一方向において互いに離反するように移動させる。すなわち、
図7に示した2つの第一方向移動手段36aにより、第一挟持手段32Aと第二挟持手段32Bとが互いに離反するように各移動部350を第一方向に水平移動させ、
図12(a)に示すように、各下側挟持部330のローラ332と各上側挟持部340のローラ342とによって挟持されたエキスパンドテープ2Aをそれぞれ第一方向において外側に引っ張る。
【0047】
このとき、エキスパンドテープ2Aの露出部3Aは、第一方向において伸張されるが、拡張調整部材5Aが貼着された部分の露出部3Aは、エキスパンドテープ2AのウェーハW1が貼着された部分が伸張する前に伸張することが抑止される。つまり、露出部3Aに加えられる外力が拡張調整部材5Aによって吸収されるため、エキスパンドテープ2Aの拡張量を所望の拡張量に調整することができる。その結果、
図8に示した分割起点Gが起点となって、第二方向と平行に位置づけられた分割予定ラインSに沿ってウェーハW1を破断して複数のチップCに分割しつつ、各チップCの間隔7を拡張することができる。
【0048】
続いて、第三挟持手段32Cと第四挟持手段32Dとがエキスパンドテープ2Aを挟持した状態で第三挟持手段32Cと第四挟持手段32Dとを第二方向において互いに離反するように移動させる。すなわち、
図7に示した2つの第二方向移動手段36bにより、第三挟持手段32Cと第四挟持手段32Dとが互いに離反するように、各移動部350を第二方向に水平移動させ、
図12(b)に示すように、各下側挟持部330のローラ332と各上側挟持部340のローラ342とによって挟持されたエキスパンドテープ2Aをそれぞれ第二方向において外側に引っ張る。
【0049】
このとき、エキスパンドテープ2Aの露出部3Aは、第二方向において伸張されるが、拡張調整部材5Aが貼着された部分の露出部3Aは、エキスパンドテープ2AのウェーハW1が貼着された部分が伸張する前に伸張することが抑止される。つまり、露出部3Aに加えられる外力が拡張調整部材5Aによって吸収されるため、エキスパンドテープ2Aの拡張量を所望の拡張量に調整することができる。その結果、
図8に示した分割起点Gが起点となって、第一方向と平行に位置づけられた分割予定ラインSに沿ってウェーハW1を破断して複数のチップCに分割しつつ、各チップCの間隔7を拡張することができる。このようにして、分割された個々のチップCはエキスパンドテープ2Aからピックアップされる。そして、拡張調整部材5Aは、エキスパンドテープ2Aから引き剥がされて、次のウェーハW1の分割時に繰り返し使用される。
【0050】
第2例の拡張工程では、エキスパンドテープ2Aを第一方向,第二方向の順に拡張した場合を説明したが、この場合に限られず、第一方向と第二方向とにおいてエキスパンドテープ2Aを同時に拡張してもよいし、エキスパンドテープ2Aの第二方向の拡張をしてから、第一方向の拡張を行ってもよい。
【0051】
このように、ウェーハの加工方法の第2例は、ウェーハW1に対して透過性を有する波長のレーザー光線15によって分割予定ラインSに沿った分割起点GをウェーハW1の内部に形成する分割起点形成工程と、エキスパンドテープ2AにウェーハW1が支持されたウェーハユニット1Aを準備するウェーハユニット準備工程と、分割起点形成工程及びウェーハユニット準備工程を実施した後、ウェーハユニット1AのウェーハW1を、エキスパンドテープ2Aを介して保持テーブル31の保持面31aに載置するとともに、エキスパンドテープ2Aを第一挟持手段32A〜第四挟持手段32Dにより挟持する拡張準備工程と、エキスパンドテープ2Aの第一挟持手段32A〜第四挟持手段32DとウェーハW1との間の領域の露出部3Aに拡張調整部材5Aを貼着する拡張調整工程と、第一挟持手段32A〜第四挟持手段32Dによってエキスパンドテープ2Aを拡張し、分割起点Gを起点にウェーハW1を分割予定ラインSに沿って複数のチップCに分割しつつチップCの間隔7を拡張する拡張工程とを備えたため、拡張調整部材5Aによって第一挟持手段32A〜第四挟持手段32DとウェーハW1との間の露出部3Aが伸びにくくなり、かかる露出部3AがウェーハW1側の露出してない部分よりも先に伸張することを防ぐことができる。これにより、隣接するチップCの間隔7を十分に拡張することができ、隣接するチップC同士が接触するおそれを低減できる。
【符号の説明】
【0052】
1,1A:ウェーハユニット 2,2A:エキスパンドテープ 3,3A:露出部
4:フレーム 5,5A:拡張調整部材 6,7:間隔
10:レーザー加工装置 11:保持テーブル 11a:保持面
12:フレーム保持手段 120:フレーム載置台 121:クランプ部
13,13A:レーザー加工ヘッド 14,15:レーザー光線
20:拡張装置 21:チャックテーブル 21a:保持面 22:保持部
23:枠体 24:バルブ 25:吸引源
26:フレーム保持手段 260:フレーム載置台 261:支持部
262:クランプ部 27:昇降機構 270:シリンダ 271:ピストン
30:拡張装置 300:装置ベース 301:凹部
31:保持テーブル 310:テーブル支持部
32A:第一挟持手段 32B:第二挟持手段 32C:第三挟持手段
32D:第四挟持手段
33:下側挟持機構 330:下側挟持部 331:アーム部
331a:基端部 332:ローラ
34:上側挟持機構 340:上側挟持部 341:アーム部
341a:基端部 342:ローラ
35:可動基台 350:移動部 351:支持部 352:ガイドレール
353:ガイド溝
36a:第一方向移動手段 36b:第二方向移動手段
360:ボールネジ 361:軸受部 362:モータ
37:下側昇降手段 370:ボールネジ 371:軸受部 372:モータ
38:上側昇降手段 380:ボールネジ 381:軸受部 382:モータ