(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
《導電性高分子分散液》
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びスルホン酸基含有ポリビニルアルコールを有する導電性複合体と、前記導電性複合体を分散させる水系分散媒とを含有する導電性高分子分散液である。
前記導電性高分子分散液は、必要に応じて、高導電化剤、バインダ成分、その他の添加剤を含有してもよい。
【0009】
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0010】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
【0011】
<スルホン酸基含有ポリビニルアルコール>
スルホン酸基含有ポリビニルアルコールのスルホン酸基は、水素原子が結合した中性状態{−S(=O)
2−OH}であってもよいし、水素原子が解離して負電荷を有する荷電状態{−S(=O)
2−O
−}であってもよい。スルホン酸基のpKaは負であるため、通常の水系溶媒中では、荷電状態にあると考えられる。
前記導電性複合体において、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールとπ共役系導電性高分子との結合力を高める観点から、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールのスルホン酸基が荷電状態にあり、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールがポリアニオンの形態であることが好ましい。
なお、前記導電性複合体において、荷電状態のスルホン酸基の一部に、ナトリウムイオンやカリウムイオン等の陽イオンがカウンターカチオンとして結合し、スルホン酸塩基が部分的に存在していても構わない。
【0012】
スルホン酸基(又はスルホン酸塩基)含有ポリビニルアルコールは、試薬会社から購入することはできるが、例えば、ポリビニルアルコールが有する水酸基をスルホン酸基に置換する化学反応、又は、酢酸ビニルとアリルスルホン酸ナトリウム等の化合物を共重合する化学反応等の公知方法によって得ることもできる。
原料として用いるポリビニアルコールは、ポリ酢酸ビニルのアセチル基を鹸化することによって製造されることがあり、この場合、一部のアセチル基が鹸化されずに残ることがある。このため、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールには、酢酸ビニル単位が含まれることがある。原料として用いるポリビニルアルコールの鹸化度は、70%以上100%以下であることが好ましい。
原料として用いるポリビニルアルコールの質量平均分子量は、1000以上100000以下であることが好ましく、1300以上60000以下であることがより好ましい。ポリビニルアルコールの質量平均分子量が1000以上であると、導電層の延伸性を充分に向上させることができ、10万以下であると、水への溶解性を向上させることができる。
本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、標準物質をポリスチレンとして求めた値である。
【0013】
スルホン酸基含有ポリビニルアルコールは、酸素含有官能基として、スルホン酸基以外に、水酸基及びアセチル基の一方又は両方を有していてもよい。スルホン酸基含有ポリビニルアルコールが有する酸素含有官能基の合計を100モル%としたときの、スルホン酸基の含有割合は、0.1モル%以上20モル%以下が好ましく、0.5モル%以上10モル%以下がより好ましく、1モル%以上5モル%以下がさらに好ましい。
スルホン酸基の前記含有割合が0.1モル%以上であると、π共役系導電性高分子に対する結合力が高まり、導電性複合体の導電性をより向上させることができる。
スルホン酸基の前記含有割合が20モル%以下であると、導電性複合体を含む導電性高分子分散液を塗布してなる導電層のフィルム基材に対する密着性をより向上させることができる。
【0014】
スルホン酸基含有ポリビニルアルコールの質量平均分子量は、1,000以上1000,000以下であることが好ましく、5,000以上50,0000以下であることがより好ましい。
前記質量平均分子量が1,000以上であると、導電層の延伸性をより向上させることができる。
前記質量平均分子量が1000,000以下であると、水系分散媒水に対する分散性をより向上させることができる。
【0015】
導電性複合体中のスルホン酸基含有ポリビニルアルコールの含有割合は、π共役系導電性高分子10質量部に対して1質量部以上10000質量部以下の範囲であることが好ましく、20質量部以上1000質量部以下の範囲であることがより好ましく、30質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。
スルホン酸基含有ポリビニルアルコールの含有割合が前記下限値以上であると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなり、導電性が高まり易くなる。また、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性がより向上する。
スルホン酸基含有ポリビニルアルコールの含有割合が前記上限値以下であると、π共役系導電性高分子の含有量とのバランスが良好になり、充分な導電性が得られ易くなる。
導電性複合体に含まれるスルホン酸基含有ポリビニルアルコールは、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0016】
導電性高分子分散液の総質量に対する、前記導電性複合体の含有量は、例えば、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1.0質量%以上15質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
本態様における水系分散媒は、導電性複合体を分散させる液体であり、水、又は水と有機溶剤との混合液である。
水系分散媒における水の含有割合は、水系分散媒の総質量(100質量%)に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。水系分散媒における水の含有割合が前記下限値以上であると、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性がより向上する。
ここで、後述するバインダ成分の水分散性エマルションが導電性高分子分散液に含まれる場合、水分散性エマルションを構成する水分と前記導電性高分子を分散する水分とは区別されない。つまり、導電性高分子分散液に含まれる水分は全て水系分散媒を構成する。また、その水系分散媒がバインダ成分のエマルションを形成していても構わない。
【0018】
前記有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
前記有機溶剤は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロプレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0019】
本発明の導電性高分子分散液は任意成分としてバインダ成分を含んでいてもよい。バインダ成分は、π共役系導電性高分子及びスルホン酸基含有ポリビニルアルコール以外の高分子を有する。バインダ成分を含ませることにより、導電性高分子分散液をフィルム基材に塗布してなる塗膜の強度を高めることができる。
前記高分子の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
バインダ成分は、導電性高分子分散液中に分散可能な水分散性樹脂が好ましく、分散媒中でエマルションにされた水分散性エマルションであることがより好ましい。
【0020】
水分散性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの水分散性樹脂が有する官能基、例えばカルボキシ基やスルホ基等の酸基は、カウンターカチオンと結合した塩を形成していてもよい。前記水分散性樹脂は水溶性であってもよい。ここで、水溶性とは、25℃の蒸留水(100質量%)に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、溶解する性質をいう。
水分散性エマルションとしては、前記水分散性樹脂がエマルションにされたものが挙げられる。
導電性高分子分散液をポリエステルフィルム基材に塗布する場合には、塗膜の密着性が高くなることから、バインダ成分はポリエステルエマルションであることが好ましい。
バインダ成分は、1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
【0021】
バインダ成分の固形分の含有割合は、導電性複合体の固形分100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上1000質量部以下であることがより好ましく、20量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
バインダ成分の含有割合が前記下限値以上であると、製膜性と膜強度を向上させることができる。バインダ成分の含有割合が前記上限値以下であると、充分な導電性が得られ易い。
【0022】
導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。ここで、前述したπ共役系導電性高分子、スルホン酸基含有ポリビニルアルコール、及びバインダ成分は、高導電化剤に分類されない。ただし、前記有機溶剤がここで説明する高導電化剤に該当していても構わない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
高導電化剤は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0023】
導電性高分子分散液が高導電化剤として塩基性化合物を含むと、その導電性が向上するため好ましい。
ここで「塩基性化合物」とは、プロトンを結合可能な孤立電子対(ローンペア)を有する炭素原子以外の原子(ヘテロ原子)を含む化合物をいう。
塩基性化合物としては、窒素含有化合物が好ましく、窒素含有芳香族性環式化合物がより好ましい。
【0024】
窒素含有芳香族性環式化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
【0025】
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、N−ビニルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、4−ピリジンメタノール、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジンジメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0026】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール(N−ヒドロキシエチルイミダゾール)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルベンズイミダゾール、2−ヒドロキシベンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0027】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0028】
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0029】
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0030】
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、チオジエタノール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類;セルロース、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール;1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等の芳香族化合物、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0031】
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
【0032】
アミド基を有する化合物は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素及び尿素誘導体などが挙げられる。
アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0033】
また、アミド化合物として、アクリルアミドを使用することもできる。アクリルアミドとしては、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。
アミド化合物の分子量は46以上10,000以下であることが好ましく、46以上5,000以下であることがより好ましく、46以上1,000以下であることが特に好ましい。
【0034】
アミド化合物としては、導電性がより高くなることから、イミド結合を有する単分子化合物(以下、イミド化合物という。)が好ましい。イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
【0035】
また、イミド化合物は両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等に分類されるが、溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。
さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有さない飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。
飽和脂肪族イミド化合物は、R
1−CO−NH−CO−R
2で表される化合物であり、R
1,R
2の両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。
不飽和脂肪族イミド化合物は、R
1−CO−NH−CO−R
2で表される化合物であり、R
1,R
2の一方又は両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。具体例は、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
イミド化合物の分子量は60以上5,000以下であることが好ましく、70以上1,000以下であることがより好ましく、80以上500以下であることが特に好ましい。
【0036】
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR−(Rは水素又は任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。
ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
【0037】
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。
【0038】
高導電化剤の含有割合は導電性複合体の100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上1000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下であることがさらに好ましい。
高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
【0039】
導電性高分子分散液の総質量(100質量%)に対する、高導電化剤の合計の含有量は、例えば、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0040】
導電性高分子分散液には、公知の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、スルホン酸基含有ポリビニルアルコール、バインダ成分、及び高導電化剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0041】
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、通常、導電性複合体の固形分100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲内であることが好ましい。
【0042】
導電性高分子分散液の総質量(100質量%)に対する、前記導電性複合体、前記バインダ成分、及び前記高導電化剤を除いた残部は、その他の任意成分を含んでいてもよい分散媒であることが好ましい。
導電性高分子分散液の総質量(100質量%)に対する、固形分を除いた前記水系分散媒の含有量は、例えば、60質量%以上99.9質量%以下が好ましく、80質量%以上98質量%以下がより好ましい。60質量%以上であると、導電性複合体の分散性がより良好となり、99.9質量%以下であると、フィルム基材に対する塗工性がより良好となる。
【0043】
《導電性高分子分散液の製造方法》
本発明の第二態様は、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールと水系分散媒を含む溶液中で、π共役系導電性高分子のモノマーを重合することによって、前記π共役系導電性高分子及び前記スルホン酸基含有ポリビニルアルコールを有する導電性複合体と、前記導電性複合体を分散させる水系分散媒とを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法である。
上記の製造方法で得られる導電性高分子分散液は、本発明の第一態様の導電性高分子分散液と同じである。
【0044】
スルホン酸基含有ポリビニルアルコールは、スルホン酸塩基含有ポリビニルアルコールのカウンターカチオンを除去して得ることができる。
スルホン酸塩基含有ポリビニルアルコールを試薬会社から購入することはできるが、例えば、前述した公知の合成によって得ることもできる。
スルホン酸塩基含有ポリビニルアルコールは、本発明の第一態様におけるスルホン酸基含有ポリビニルアルコールのスルホン酸基とカウンターカチオンとが塩を形成したものである。カウンターカチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等の1価の陽イオンが挙げられる。また、前記塩を形成するならば、マグネシウム、カルシウム等の2価以上の陽イオンであっても構わない。
【0045】
スルホン酸塩基含有ポリビニルアルコールからカウンターカチオンを除去する方法としては、例えば、陽イオン交換樹脂を用いる方法が挙げられる。具体的には、水系分散媒中に分散又は溶解されたスルホン酸塩基含有ポリビニルアルコールを陽イオン交換樹脂に接触させることにより、陽イオン交換樹脂にカウンターカチオンを結合させる方法が挙げられる。ここで用いられる陽イオン交換樹脂は特に限定されず、目的に適した市販品を適用することができる。
【0046】
本態様が目的とする導電性高分子分散液は、前記水系分散媒に前記スルホン酸基含有ポリビニルアルコールを含む溶液に、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを添加し、その溶液(反応液)中で、前記モノマー同士を重合することによって得ることができる。
重合してなるπ共役系導電性高分子とスルホン酸基含有ポリビニルアルコールとは、前記反応液中で自然に結合し、導電性複合体を形成する。
【0047】
前記反応液を構成する水系分散媒としては、第一態様の水系分散媒と同じものを例示できる。形成される導電性複合体の分散性を向上させる観点から、水であることが好ましい。
【0048】
前記π共役系導電性高分子は、第一態様のπ共役系導電性高分子と同じである。その重合に用いられる前記モノマーとしては、公知のモノマーを適用することができる。
前記重合には、公知の触媒を適用してもよい。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の酸化剤を触媒として用いることができる。
【0049】
前記反応液の総質量(100質量%)に対する、反応前の各材料の仕込み量としては、例えば以下が挙げられる。
前記スルホン酸基含有ポリビニルアルコールの仕込み量としては、例えば、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上20質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
前記モノマーの仕込み量は、例えば、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.8質量%以下がさらに好ましい。
前記触媒の仕込み量は、従来の重合反応に添加する量と同様に、モノマーの仕込み量に応じて適宜設定され、例えば、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.8質量%以下がさらに好ましい。
前記反応液における重合反応の条件は、従来のπ共役系導電性高分子を得る条件と同様にすることができる。
【0050】
目的の導電性高分子分散液を構成する水系分散媒は、前記反応液を構成する水系分散媒のままであってもよいし、他の水系分散媒に置換されてもよい。
【0051】
《帯電防止フィルムの製造方法》
本発明の第三態様は、π共役系導電性高分子及びスルホン酸基含有ポリビニルアルコールを含有する導電性複合体が水系分散媒中に含まれる導電性高分子分散液を、フィルム基材の少なくとも一方の面に塗工して塗工フィルムを得る塗工工程と、前記塗工フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程と、を有する、帯電防止フィルムの製造方法である。
【0052】
[塗工工程]
フィルム基材の少なくとも一方の面に第一態様の導電性高分子分散液を塗工することにより、その塗工面に塗膜(導電層)を形成する。
【0053】
塗工工程において使用するフィルム基材としては、プラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂の中でも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
前記フィルム基材を構成する樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。何れであっても後段の任意の結晶化工程において結晶性のフィルム基材となり得るが、延伸性が良好である観点から非晶性フィルムであることが好ましい。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよいが、後段の延伸工程で延伸する場合には、少なくとも一方向において未延伸であるものが好ましい。
また、前記導電性高分子分散液をフィルム基材に塗工することによって形成される導電層の密着性を向上させるために、フィルム基材には、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理を施してもよい。
【0054】
フィルム基材の平均厚みとしては、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
本明細書における厚さは、任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0055】
前記導電性高分子分散液を塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
前記導電性高分子分散液のフィルム基材への塗工量は特に制限されないが、固形分として、0.1g/m
2以上10.0g/m
2以下の範囲であることが好ましい。
【0056】
塗工工程において、フィルム基材の片面のみに前記導電性高分子分散液を塗工して片面のみに塗膜を形成してもよいし、フィルム基材の両面に前記導電性高分子分散液を塗工して両面に塗膜を形成してもよい。フィルム基材上に塗膜が形成されたものを塗工フィルムと称する。
【0057】
塗膜を乾燥する処理は、塗工工程後、厚み方向での均一性を良好にするために、延伸工程前に、又は延伸工程において延伸するとともに加熱しながら、乾燥することが好ましい。
【0058】
乾燥後の前記導電層の平均厚さとしては、10nm以上5000nm以下であることが好ましく、20nm以上1000nm以下であることがより好ましく、30nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
【0059】
塗工フィルムを乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
【0060】
[延伸工程]
塗工工程で得た塗工フィルムを延伸して、延伸フィルムを得る。塗工フィルムを延伸することにより、前記導電性高分子分散液の塗工面積を小さくしても大面積の帯電防止フィルムを得ることができ、帯電防止フィルムの生産性が向上する。
【0061】
前記塗工フィルムが有する塗膜(導電層)は、乾燥していてもよいし、乾燥していなくてもよい。
ただし、延伸における導電層の追従性を高めて、導電層の割れや剥がれを確実に防止する観点から、乾燥していない前記塗工フィルムを加熱して、その導電層を乾燥させると共に延伸して延伸フィルムを得ることが好ましい。
【0062】
延伸工程において、塗工フィルムを加熱すると同時に延伸してもよいし、塗工フィルムを加熱した直後に延伸してもよい。加熱と同時に延伸、又は、加熱直後に延伸すれば、塗工フィルムを軟化させて延伸が容易になる。この延伸のための加熱を乾燥のためにも利用すれば、エネルギー効率を一層高められる。
なお、加熱によってスルホン酸基含有ポリビニルアルコールの一部が分解して消失する場合があるので、前記導電性高分子分散液に含まれていたスルホン酸基含有ポリビニルアルコールの全部が導電層に含まれるとは限らない。
【0063】
延伸工程において塗工フィルムを加熱する際の温度は、使用するフィルム基材の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、50℃以上150℃以下とすることができる。延伸工程における加熱温度は、後段の結晶化工程でフィルム基材を結晶化する目的で加熱する温度よりも低いことが好ましい。ここで、加熱温度は、加熱装置の設定温度である。
【0064】
延伸は一軸延伸でもよいし、二軸延伸でもよいが、フィルム基材として一軸延伸フィルムを用いた場合には、既に延伸されている方向に対して垂直な方向に延伸することが好ましい。例えば、長手方向に沿って延伸された一軸延伸フィルムをフィルム基材として用いた場合には、幅方向(短手方向)に沿って延伸することが好ましい。
塗工フィルムの延伸倍率は2倍以上20倍以下にすることが好ましい。延伸倍率を前記下限値以上にすれば、帯電防止フィルムの生産性をより高くでき、前記上限値以下であれば、フィルムの破断を防止できる。
【0065】
[結晶化工程]
結晶化工程は任意の工程である。延伸工程で得た延伸フィルムを加熱した後に冷却することによって、前記フィルム基材を構成する樹脂を結晶化させることができる。通常、結晶化したフィルムの方が、非結晶のフィルム(非晶性フィルム)よりも機械的強度が強い。
【0066】
延伸フィルムを加熱する温度は、フィルム基材の種類にもよるが、200℃以上であることが好ましい。200℃以上に加熱すると、フィルム基材を構成する樹脂の少なくとも一部が融解し始める。その融解後、樹脂の結晶化温度未満の温度まで冷却すると、融解した樹脂が結晶化して固化する。これにより、フィルム基材を結晶性の樹脂からなる結晶性フィルム基材にすることができる。
【0067】
加熱した後に冷却する降温温度としては、フィルム基材の種類にもよるが、例えば、1℃/分以上200℃/分以下が好ましく、10℃/分以上100℃/分以下がより好ましい。
上記範囲であると、フィルム基材の機械的強度を容易に向上させることができる。
【0068】
フィルム基材を構成する樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。結晶性PETフィルムからなるフィルム基材は、引張強度等の機械的物性に優れる。
以上で説明した結晶化工程により、結晶性フィルム基材の片面又は両面に導電層を備えた帯電防止フィルムが得られる。
【0069】
《帯電防止フィルム》
本発明の第四態様は、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層と、を有する帯電防止フィルムであって、前記導電層にπ共役系導電性高分子及びスルホン酸基含有ポリビニルアルコールが含まれる、帯電防止フィルムである。
第四態様の帯電防止フィルムは、第三態様の製造方法によって得られたものであってもよいし、他の製造方法によって得られたものであってもよい。
【0070】
本態様の帯電防止フィルムにおける前記導電層の総質量(100質量%)に対する前記π共役系導電性高分子の含有量としては、例えば、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上6質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。上記範囲であると良好な帯電防止性が発揮され易くなる。
本態様の帯電防止フィルムにおける前記導電層の総質量(100質量%)に対する前記スルホン酸基含有ポリビニルアルコールの含有量としては、例えば、0.01質量%以上99.9質量%以下が好ましく、0.1質量%以上99.9質量%以下がより好ましい。上記範囲であるとより優れた耐水性、耐熱性、延伸性及び帯電防止性が発揮され易くなる。
【0071】
<作用効果>
従来の導電性複合体は、π共役系導電性高分子にポリアニオンをドープした導電性複合体である。例えばPEDOT−PSSは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸をドープした導電性複合体である。特許文献1で用いられるポリビニルアルコールは、この導電性複合体に対して、電子的に結合してはおらず(PEDOTの正電荷に対してイオン結合しておらず)、主にファンデルワールス力や水素結合によって接触していると考えられる。このため、特許文献1の導電層が、水に接触したり、延伸されたりすると、導電層中のポリビニアルコールが前記導電性複合体から容易に解離して、導電層の耐水性が低下し、表面抵抗値が導電層の部位ごとにバラつく(相違する)問題が生じることがあった。
【0072】
一方、本発明の各態様で用いられる導電性複合体は、π共役系導電性高分子に、従来はドープ剤として用いられていないスルホン酸基含有ポリビニルアルコールをドープした導電性複合体である。この導電性複合体におけるπ共役系導電性高分子とスルホン酸基含有ポリビニルアルコールの結合形態は特に限定されず、従来の導電性複合体におけるπ共役系導電性高分子とポリアニオンとの結合形態と同じでもよいし、異なっていてもよい。
π共役系導電性高分子とスルホン酸基含有ポリビニルアルコールの結合形態の詳細は未解明であるが、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールは多数のスルホン酸基を有するため、従来のポリアニオンと同様に、π共役系導電性高分子に対して電子的に結合していると推測される。この結合形態により、前記導電性複合体を構成するスルホン酸基含有ポリビニルアルコールの水に対する溶解性が低下していると考えられる。また、前記導電性複合体が形成する導電層が水に接触しても、前記導電性複合体からスルホン酸基含有ポリビニルアルコールが解離することは殆ど無く、導電層の耐水性が向上していると考えられる。
スルホン酸基含有ポリビニルアルコールは、π共役系導電性高分子の導電性を高めるとともに、導電性複合体の分散剤として機能し得る。このため、本発明の第一態様の導電性高分子分散液によって形成された導電層は、フィルムの延伸に追従し易く、割れや剥がれ等が発生し難くなり、部位ごとに表面抵抗値がバラつくことが少ない。
上記のメカニズムによって、本発明の第四態様の帯電防止フィルムは優れた帯電防止性及び耐水性を発揮していると考えられる。
【0073】
本発明の第三態様の帯電防止フィルムの製造方法では、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールを含む導電層(帯電防止層)を形成するので、延伸しているにもかかわらず、割れや剥がれ等の欠陥を防止できる。製造された帯電防止フィルムは、帯電防止機能を果たす充分な導電性を有する。
また、前記導電層はスルホン酸基含有ポリビニルアルコールを有するため、延伸によって導電層の表面抵抗が急上昇することを抑制できる。この詳細なメカニズムは未解明であるが、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールがポリアニオンとして導電性複合体に組み込まれていることによって、前記導電性複合体がなす導電層の柔軟性(延伸に対する追従性)が向上していると推測される。
さらに、前記導電層はスルホン酸基含有ポリビニルアルコールを有するため、結晶化を目的とする加熱処理によって導電層の表面抵抗が上昇することを抑制できる。この詳細なメカニズムは未解明であるが、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールがポリアニオンとして導電性複合体に組み込まれていることによって、前記導電性複合体の熱安定性が向上していると推測される。
【実施例】
【0074】
(製造例1)
ASF−05(日本酢ビポバール社製、スルホン酸ナトリウム変性ポリビニルアルコール)10gを、水90gに溶解し、デュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)10gを加えて常温で16時間攪拌した。次に、100メッシュのフィルターを用いてデュオライトC255LFHを除去し、ASF−05のスルホン酸ナトリウム変性をスルホン酸変性とした溶液を製造した。(以下、ASF−05スルホン酸溶液という。)このASF−05スルホン酸溶液(固形分10質量%)のpHは2.20であった。
なお、スルホン酸変性ポリビニルアルコールは、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールである。
【0075】
(製造例2)
ゴーセノールCKS−50(日本合成化学社製、スルホン酸ナトリウム変性ポリビニルアルコール)10gを水90gに溶解し、デュオライトC255LFH10gを加えて常温で16時間攪拌した。次に、100メッシュのフィルターを用いてデュオライトC255LFHを除去し、ゴーセノールCKS−50のスルホン酸ナトリウム変性をスルホン酸変性とした溶液を製造した。(以下、ゴーセノールCKS−50スルホン酸溶液とする。)このゴーセノールCKS−50スルホン酸溶液(固形分10質量%)のpHは1.52であった。
【0076】
(製造例3)
ゴーセノールL−3266(日本合成化学社製、スルホン酸ナトリウム変性ポリビニルアルコール)10gを水90gに溶解し、デュオライトC255LFH10gを加えて常温で16時間攪拌した。次に、100メッシュのフィルターを用いてデュオライトC255LFHを除去し、ゴーセノールL−3266のスルホン酸ナトリウム変性をスルホン酸変性とした溶液を製造した。(以下、ゴーセノールL−3266スルホン酸溶液とする。)このゴーセノールL−3266スルホン酸溶液(固形分10質量%)のpHは1.37であった。
【0077】
(実施例1)
ASF−05スルホン酸溶液75gと水75gと3,4−エチレンジオキシチオフェン0.5gを混合し、25℃で10分間攪拌した。次に、硫酸第二鉄0.3gを水4.7gに混合した溶液を添加し、さらに、過硫酸アンモニウム1.1gを水8.9gとを混合した溶液を添加し25℃で8時間攪拌した。次に、デュオライトC255LFH13.2gとデュオライトA368S(住化ケムテックス社製、陰イオン交換樹脂)13.2gを加え、16時間静置した後、100メッシュのフィルターを用いてデュオライトC255LFHとデュオライトA368S除去し、得られた溶液を高圧ホモジナイザーを用いて分散し、導電性高分子分散液を得た。
得られた溶液を、#12のバーコーターを用いて非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム(A−PETフィルム)上に塗布し、100℃で1分間乾燥して塗工フィルムを得た。得られた塗工フィルムの表面抵抗値を、抵抗率計(三菱化学アナリティック社製ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。その結果を表1に示す。
さらに、耐水性試験を次のように行った。すなわち、水で湿らした不織布を用いて、前記塗工フィルムの乾燥後の塗膜を10g/cm
2の圧力で10往復擦り、外観の変化の具合を確認した。その結果を表1に示す。
次に、二軸延伸装置(株式会社井元製作所製、11A9)を用い、塗工フィルムを2倍に延伸して延伸フィルムを得た。延伸フィルムの表面抵抗値を上記と同様に測定した結果を表1に示す。
【0078】
(実施例2)
実施例1における(ASF−05スルホン酸溶液75gと水75g)をASF−05スルホン酸溶液150gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表1に示す。
【0079】
(実施例3)
実施例1におけるASF−05スルホン酸溶液75gをゴーセノールCKS−50スルホン酸溶液75gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表1に示す。
【0080】
(実施例4)
実施例1における(ASF−05スルホン酸溶液75gと水75g)をゴーセノールCKS−50スルホン酸溶液150gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表1に示す。
【0081】
(実施例5)
実施例1における(ASF−05スルホン酸溶液75gと水75g)を(ゴーセノールL−3266スルホン酸溶液18.75gと水131.25g)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表1に示す。
【0082】
(実施例6)
実施例1における(ASF−05スルホン酸溶液75gと水75g)を(ゴーセノールL−3266スルホン酸溶液37.5gと水112.5g)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表1に示す。
【0083】
(実施例7)
実施例1における(ASF−05スルホン酸溶液75gと水75g)を(ゴーセノールL−3266スルホン酸溶液75gと水75g)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表1に示す。
【0084】
(実施例8)
実施例1における(ASF−05スルホン酸溶液75gと水75g)をゴーセノールL−3266スルホン酸溶液150gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表1に示す。
【0085】
(実施例9)
実施例4で得た導電性高分子分散液30gと水55gとプロピレングリコール10gとプラスコートZ−690(互応化学社、水分散性のポリエステルエマルション、固形分25%)5gを混合した。
得られた混合液を、#12のバーコーターを用いてA‐PETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して塗工フィルムを得た。得られた塗工フィルムの表面抵抗値を上記と同様に測定した。その結果を表2に示す。
次に、二軸延伸装置(株式会社井元製作所製、11A9)を用い、塗工フィルムを2倍に延伸して延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの表面抵抗値を上記と同様に測定した。その結果を表2に示す。
続いて、延伸フィルムを240℃で30秒間加熱した後、降温速度が80℃〜100℃/分になるようにゆっくりと冷却して、延伸フィルムの基材を構成するA−PETフィルムを結晶化して、結晶性PETフィルムを得た。得られた結晶化フィルムの表面抵抗値を上記と同様に測定した。この結果を表2に示す。
【0086】
(実施例10)
延伸フィルムを得る際に4倍に延伸したこと以外は、実施例9と同様にして塗工フィルム、延伸フィルム及び結晶化フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表2に示す。
【0087】
(実施例11)
実施例9における(実施例4で得た導電性高分子分散液)を(実施例8で得た導電性高分子分散液)に変更したこと以外は、実施例9と同様にして塗工フィルム、延伸フィルム及び結晶化フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表2に示す。
【0088】
(実施例12)
延伸フィルムを得る際に4倍に延伸したこと以外は、実施例11と同様にして塗工フィルム、延伸フィルム及び結晶化フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表2に示す。
【0089】
(比較例1)
実施例1における(ASF−05スルホン酸溶液75gと水75g)を{ポリスチレンスルホン酸(10%水溶液)18.75gと水131.25g}に変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表1に示す。
比較例1で得た導電性高分子分散液には、PEDOT−PSSが含まれる。
【0090】
(比較例2)
比較例1においてPEDOT−PSSを合成する材料の溶液に、さらにクラレポバールPVA210(ポリビニルアルコールクラレ社製)2.5gを添加したこと以外は、比較例1と同様にして、塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。塗工フィルムについては耐水性試験を行った。各フィルムの結果を表1に示す。
【0091】
(比較例3)
実施例1における(ASF−05スルホン酸溶液75gと水75g)を{ポリスチレンスルホン酸(10%水溶液)37.5gと水112.5g}に変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表1に示す。
比較例3で得た導電性高分子分散液には、PEDOT−PSSが含まれる。
【0092】
(比較例4)
比較例3においてPEDOT−PSSを合成する材料の溶液に、さらにクラレポバールPVA210(ポリビニルアルコールクラレ社製)2.5gを添加したこと以外は、比較例3と同様にして、塗工フィルムの耐水性と塗工フィルム及び延伸フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。塗工フィルムについては耐水性試験を行った。各フィルムの測定結果を表1に示す。
【0093】
(比較例5)
実施例1における(ASF−05スルホン酸溶液75gと水75g)を{ポリスチレンスルホン酸(10%水溶液)75gと水75g}に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得る目的で反応を行った。しかし、反応中に溶液がゲル化したため、導電性高分子分散液を得られず、塗工フィルムの作製を中止した。
【0094】
(比較例6)
実施例9における(実施例4で得た導電性高分子分散液)を(比較例1で得た導電性高分子分散液)に変更したこと以外は、実施例9と同様にして塗工フィルム、延伸フィルム及び結晶化フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表2に示す。
【0095】
(比較例7)
実施例9における(実施例4で得た導電性高分子分散液)を(比較例3で得た導電性高分子分散液)に変更したこと以外は、実施例9と同様にして塗工フィルム、延伸フィルム及び結晶化フィルムを得て、それらの表面抵抗値を測定した。各フィルムの測定結果を表2に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
<考察>
以上の結果において、各実施例の帯電防止フィルムは、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールを導電層に含むことによって、延伸後の表面抵抗値の上昇は延伸前の1〜35倍以内に抑制されている。このことは、実施例の帯電防止フィルムを構成する導電層は、基材フィルムに対する追従性に優れることを意味している。
また、各実施例の帯電防止フィルムは、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールを導電層に含むことによって、水を含む不織布で擦られても外観に変化は無かった。このことは、実施例の帯電防止フィルムを構成する導電層は、耐水性に優れることを意味している。
さらに、各実施例の帯電防止フィルムは、スルホン酸基含有ポリビニルアルコールを導電層に含むことによって、結晶化を目的とする比較的高温の加熱処理の後の表面抵抗値の上昇は延伸前の1〜2.5倍程度に抑制されている。このことは、実施例の帯電防止フィルムを構成する導電層は、耐熱性に優れることを意味している。
【0099】
一方、各比較例の帯電防止フィルム(比較例2,4を除く)は、スルホン酸変性ポリビニルアルコールを導電層に含まないので、延伸後の導電層の表面抵抗値の上昇が1万倍を遥かに超えてしまう。
比較例2,4の帯電防止フィルムは、ポリビニルアルコールを導電層に含むので、その延伸後の表面抵抗値の上昇は、他の比較例に比べて緩和されているが、依然として100倍を超えている。また、ポリビニルアルコールを含む影響で、耐水性が明らかに低下している。
以上から、本発明の帯電防止フィルムは、延伸しても、延伸に加えて加熱しても、表面抵抗値の上昇を低く抑えられる、という優れた性能を有する。