(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る回転装置、工作機械及び機械加工品の製造方法について添付図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る回転装置の構成図である。
【0016】
回転装置1は、回転運動の方向を変える装置である。従って、回転装置1は、カム装置であるということもできる。回転装置1は、例えば、工作機械の主軸やテーブルの傾斜駆動軸又は回転駆動軸を構成するための回転機構として用いることができる。
【0017】
回転装置1は、モータ2、第1のローラギアカム3、ターレット4及び第2のローラギアカム5を有する。第1のローラギアカム3は、回転シャフト3Aに螺旋状に第1のテーパリブ3Bを設けた構造を有する。第1のテーパリブ3Bは、先端に向かってテーパする螺旋状のリブである。第2のローラギアカム5も、回転シャフト5Aに螺旋状に第2のテーパリブ5Bを設けた構造を有する。第2のテーパリブ5Bも、先端に向かってテーパする螺旋状のリブである。ターレット4は、円環状、円柱状又は円板状の回転体である。ターレット4の円周上には、等間隔に複数のカムフォロア6が回転自在に取付けられる。
【0018】
モータ2は、出力軸の回転方向を変えることができるモータである。すなわち、モータ2の回転方向を反転させることができる。モータ2は、第1のローラギアカム3にトルクを付与する動力源である。従って、モータ2の出力軸は、第1のローラギアカム3を構成する回転シャフト3Aの一端と連結される。
【0019】
第1のローラギアカム3を構成する回転シャフト3Aの両端は、それぞれベアリング7Aを有する円筒状の第1の保持部7によって回転可能に保持される。また、モータ2側の第1の保持部7は、モータ2の非回転部であるケーシングに固定される。このため、第1のローラギアカム3は、2つの第1の保持部7によって両端を回転可能に保持された状態でモータ2により回転する。従って、第1のローラギアカム3の回転シャフト3Aは、回転運動の入力軸となる。また、第1のローラギアカム3の回転方向は、モータ2の回転方向を変えることによって、変えることができる。
【0020】
尚、モータ2の出力軸を回転シャフト3Aと直接連結せずに、ギアや回転ベルト等を介して回転運動をモータ2の出力軸から回転シャフト3Aに伝達できるようにしてもよい。
【0021】
ターレット4の外周に設けられる複数のカムフォロア6は、第1のローラギアカム3の回転によって第1のテーパリブ3Bと順次係合するように配置される。従って、ターレット4の回転軸と、第1のローラギアカム3を構成する回転シャフト3Aの回転軸がねじれの関係となり、かつ各カムフォロア6の回転軸と、回転シャフト3Aの回転軸が同一平面上となるように、ターレット4及び第1のローラギアカム3が配置される。
【0022】
また、第1のローラギアカム3の第1のテーパリブ3Bは、回転シャフト3Aを回転させた場合に、隣接するカムフォロア6間の隙間にフィットしながらカムフォロア6をターレット4の回転方向に移動させることができるような形状に設計されている。例えば、第1のテーパリブ3Bの高さが、概ねターレット4の円弧状の外周面に沿って変化するように第1のテーパリブ3Bの形状が設計される。また、第1のテーパリブ3B間における回転シャフト3Aの太さが、概ねカムフォロア6の円弧状の軌跡に沿って変化するように回転シャフト3Aの形状が設計される。
【0023】
図1に示す例では、第1のテーパリブ3Bが、連続する複数のカムフォロア6間に形成される複数箇所の隙間に同時にフィットするように設計されている。このため、第1のテーパリブ3Bから複数のカムフォロア6に同時に圧力を負荷することができる。その結果、第1のローラギアカム3と、複数のカムフォロア6をギア状に設けたターレット4との間におけるバックラッシュを無くすことができる。
【0024】
各カムフォロア6は、第1のローラギアカム3の第1のテーパリブ3Bと接触して転がりながら、ターレット4の回転方向に移動するローラである。従って、第1のローラギアカム3を回転させると、第1のテーパリブ3B及び各カムフォロア6の係合によって回転運動が第1のローラギアカム3からターレット4に伝達される。すなわち、第1のローラギアカム3の回転運動を、ターレット4の回転運動に変換することができる。このため、ターレット4が回転運動の出力軸となる。
【0025】
ターレット4の回転方向は、モータ2及び第1のローラギアカム3の回転方向を変えることによって、変えることができる。すなわち、モータ2の回転方向を制御することによって、回転運動の出力軸となるターレット4を双方向に回転させることができる。
【0026】
尚、
図1に例示されるようにターレット4が円環状である場合には、回転シャフトを回転軸として設けるようにしてもよい。その場合には、ターレット4とともに回転する回転シャフトが回転運動の出力軸となる。
【0027】
第1のテーパリブ3Bを設けた回転運動の入力側の第1のローラギアカム3及び複数のカムフォロア6を外周に設けた回転運動の出力側のターレット4で構成されるカム装置は、ローラドライブ(登録商標)という商品名で市販されている。このような第1のローラギアカム3と、複数のカムフォロア6を外周に設けたターレット4で構成される回転装置1は、従来のギアとは異なりバックラッシュを無くすことができる。このため、位置決め精度が要求される工作機械の回転駆動機構として用いることができる。
【0028】
但し、回転運動の出力側となるターレット4側に大きな負荷がかかると、ターレット4には無視できない振動が生じる。特に、工作機械を用いて金属チタンやチタン合金等の難削材の機械加工を行う場合や金属部品の高速切削を行う場合には、工作機械の主軸側及びワークをセットするためのテーブル側に大きな切削抵抗が負荷される。このため、難削材の機械加工を行う場合や高速切削を行う場合には、振動を抑制することが課題となる。
【0029】
そこで、回転装置1には、少なくともターレット4の振動を抑制するための第2のローラギアカム5が備えられる。第2のローラギアカム5の構造も、ターレット4に設けられた複数のカムフォロア6と第2のテーパリブ5Bを順次係合させて回転するように設計される。
【0030】
従って、部品の共通化を図る観点から、
図1に例示されるように、第2のローラギアカム5の構造を、第1のローラギアカム3の構造と同一にすることもできる。逆に、制振用の第2のローラギアカム5については、第2のテーパリブ5Bと同時に接触する複数のカムフォロア6の数が、第1のテーパリブ3Bと同時に接触する複数のカムフォロア6の数よりも少なくなるように第2のテーパリブ5B及び回転シャフト5Aの形状を決定してもよい。従って、第2のローラギアカム5の長さ及び太さを、第1のローラギアカム3の長さ及び太さと異なる長さ及び太さに設計してもよい。
【0031】
また、設計の容易化を図る観点から、
図1に例示されるように第1のローラギアカム3の回転軸と、第2のローラギアカム5の回転軸が互いに平行となり、かつ第1のローラギアカム3の回転軸と第2のローラギアカム5の回転軸を含む平面がターレット4の回転軸と垂直となるように第1のローラギアカム3、ターレット4及び第2のローラギアカム5を配置することができる。
【0032】
但し、他の部品との干渉を回避する等の理由により、第1のローラギアカム3の回転軸と、第2のローラギアカム5の回転軸が互いに平行とならないように第1のローラギアカム3及び第2のローラギアカム5を配置するようにしてもよい。また、第2のローラギアカム5の他に更に振動の抑制用のローラギアカムを設けるようにしてもよい。以降では、振動の抑制用のローラギアカムが第2のローラギアカム5のみである場合を例に説明する。
【0033】
第2のローラギアカム5を構成する回転シャフト5Aの両端は、第1のローラギアカム3と同様に、それぞれベアリング8Aを有する円筒状の第2の保持部8によって回転可能に保持される。但し、第1のローラギアカム3とは異なり、第2のローラギアカム5を回転させるためのモータは設けられない。すなわち、第1のローラギアカム3の回転シャフト3Aを両端で回転可能に保持する2つの第1の保持部7のうち一方はモータ2を介して壁面に固定され、他方はモータを介さずに壁面に固定されるのに対して、第2のローラギアカム5の回転シャフト5Aを両端で回転可能に保持する2つの第2の保持部8の双方がモータを介さずに壁面に固定される。
【0034】
従って、第2のローラギアカム5は、ターレット4の回転運動を動力として回転する。すなわち、第2のローラギアカム5は、ターレット4からの回転の伝達のみによってターレット4の回転に追従して回転するように構成される。このため、第2のローラギアカム5を回転させるための動力源は不要である。
【0035】
このように、ターレット4を第1のローラギアカム3及び第2のローラギアカム5で2方向から挟み込んで接触支持する構成にすると、第2のローラギアカム5を設けない場合と比較して、ターレット4の回転軸に垂直な方向、特に第1のローラギアカム3から離れる方向へのターレット4のずれの発生を飛躍的に抑制することができる。しかも、第2のローラギアカム5には動力源が無いため、第2のローラギアカム5の第2のテーパリブ5Bからカムフォロア6に、ターレット4の回転方向と反対方向の反力を負荷することができる。
【0036】
その結果、ターレット4、第1のローラギアカム3及び第2のローラギアカム5を含む回転装置1の回転運動に伴う振動を抑制することができる。また、回転装置1全体を平行移動又は回転移動させる場合においても、ターレット4の振動を抑制することができる。
【0037】
このため、回転装置1を高負荷がかかる工作機械の回転機構に使用することができる。すなわち、回転装置1を、工具を保持する主軸側及びワークをセットするテーブル側の少なくとも一方の回転機構として用いた工作機械を提供することができる。
【0038】
図2は、工作機械の主軸側を傾斜させるための回転機構として回転装置1を用いた例を示す図である。
【0039】
図2に例示されるように工具Tを保持するための主軸10と、ワークをセットするためのテーブル11を備えた工作機械12において、2つの回転装置1で主軸10の傾斜機構13を構成することができる。すなわち、主軸10を2つの回転装置1で両側から回転可能に保持することによって主軸10を傾斜させることができる。もちろん、テーブル11の回転機構又は傾斜機構並びに主軸10の他の回転機構として回転装置1を用いることもできる。
【0040】
工作機械において特に大きな負荷がかかる場合の例として、金属チタン又はチタン合金等の難削材の機械加工を行う場合や高速切削を行う場合が挙げられる。高速切削の対象となる素材の例としては、アルミニウム合金が挙げられる。一方、難削材の例としては、金属チタンやチタン合金の他、インコネル(登録商標)やハステロイ(登録商標)等のニッケル基合金が挙げられる。金属チタンは、純チタンとして酸素O,窒素N,炭素C,鉄Fe,水素Hといった不純物の含有量に応じて1種から4種まで規格化されている。一方、チタン合金としては、6−4合金、3−2−5合金、15−3−3−3合金と呼ばれるものが代表的である。
【0041】
金属チタン及びチタン合金は、ステンレス鋼等の合金鋼と同等の強度を有する金属であり、難削材として知られている。すなわち、大きい強度を有する金属チタン又はチタン合金を素材とする切削加工を行うと、工具を通じて工作機械の主軸に加工反力として切削抵抗がかかる。このため、主軸の剛性が小さいと振動が生じ、加工品質の劣化に繋がる。
【0042】
そこで、
図2に例示されるように工具軸に概ね垂直となり得ることから、ワークから大きな切削抵抗が負荷される可能性がある主軸10の傾斜方向における回転機構を、回転装置1で構成することができる。これにより、金属チタン及びチタン合金等の難削材の切削加工を行う場合やアルミニウム合金等の金属材料の高速切削を行う場合であっても、振動を抑制し、良好な加工品質で機械加工品を製造することができる。特に、
図2に例示されるように回転装置1を備えた工作機械12を用いて金属材料の機械加工を行うことによって機械加工品を良好な品質で製造することができる。すなわち、チタン加工品等の機械加工品の品質を向上させることができる。
【0043】
以上のような回転装置1は、第1のローラギアカム3と、複数のカムフォロア6を外周に設けたターレット4で構成されるカム装置に、動力の無い制振用の第2のローラギアカム5を追加したものである。
【0044】
(効果)
このため、回転装置1によれば、簡易な構造でターレット4の振動を抑制し、安定した回転運動の伝達を行うことができる。また、回転装置1全体を平行移動又は回転移動させる場合においても、ターレット4の振動を抑制することができる。このため、回転装置1を工作機械の回転駆動軸として用いれば、振動の抑制によって金属チタン及びチタン合金等の難削材の高品質な機械加工が可能となる。また、アルミニウム合金等の金属の高速切削を行う場合においても、高品質な機械加工が可能となる。
【0045】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態に係る回転装置の構成図である。
【0046】
図3に示された第2の実施形態における回転装置1Aでは、制振用の第2のローラギアカム5にトルクを負荷するためのモータ20及びモータ制御回路21を設けた点が第1の実施形態における回転装置1と相違する。第2の実施形態における回転装置1Aの他の構成及び作用については第1の実施形態における回転装置1と実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0047】
第2の実施形態における回転装置1Aには、第1のローラギアカム3に動力を与える動力源としての第1のモータ2の他に、第2のローラギアカム5に動力を与える動力源として第2のモータ20が設けられる。すなわち、第2のローラギアカム5を構成する回転シャフト5Aの一端が第2のモータ20の出力軸と連結される。そして、第2のローラギアカム5の回転シャフト5Aの一端を回転可能に保持する第2の保持部8が第2のモータ20のケーシングを介して壁面に固定される。
【0048】
第2のモータ20の回転方向は、常に第1のローラギアカム3の回転方向と同じ方向となるように制御される。すなわち、第2のモータ20から第2のローラギアカム5に負荷されるトルクは、第1のモータ2から第1のローラギアカム3に負荷されるトルクと常に同一の方向である。従って、第1のモータ2の出力軸の回転方向に第1のローラギアカム3が回転し、第1のローラギアカム3の回転方向と同じ回転方向に第2のローラギアカム5が回転する。
【0049】
但し、第1のモータ2から第1のローラギアカム3に負荷されるトルクよりも小さいトルクが第2のモータ20から第2のローラギアカム5に負荷される。従って、第2のローラギアカム5の第2のテーパリブ5Bからカムフォロア6に、ターレット4の回転方向と反対方向の反力が負荷される。
【0050】
第2のモータ20から第2のローラギアカム5に負荷されるトルクは、第2のモータ20の出力を適切に決定することによって調節することができる。例えば、第2のモータ20として、第1のモータ2の定格出力よりも小さい定格出力を有するモータを使用することができる。これにより、第1のモータ2から第1のローラギアカム3に負荷されるトルクよりも小さい一定のトルクを第2のモータ20から第2のローラギアカム5に常に負荷することができる。この場合、第2のモータ20の出力及びトルクに合わせて第2のローラギアカム5の回転シャフト5Aの太さを、第1のローラギアカム3の回転シャフト3Aの太さよりも細くするようにしてもよい。
【0051】
或いは、第1のモータ2及び第2のモータ20の少なくとも一方を、出力を可変制御できるモータで構成することができる。この場合、第2のモータ20から第2のローラギアカム5に負荷されるトルクが、第1のモータ2から第1のローラギアカム3に負荷されるトルクよりも常に小さくなるように調整することができる。その場合においても、
図3に例示されるように、第2のモータ20の出力及びトルクに合わせて第2のローラギアカム5の回転シャフト5Aの太さを、第1のローラギアカム3の回転シャフト3Aの太さよりも細くするようにすることができる。
【0052】
モータ制御回路21は、第1のモータ2及び第2のモータ20を制御する回路である。モータ制御回路21によって、第1のモータ2の回転方向及び第2のモータ20の回転方向を常に同一の方向に制御することができる。すなわち、モータ制御回路21によって、第1のモータ2の回転方向及び第2のモータ20の回転方向を同期させることができる。
【0053】
また、第1のモータ2及び第2のモータ20の少なくとも一方の出力を可変制御できる場合には、モータ制御回路21により第1のモータ2及び第2のモータ20の少なくとも一方の出力を可変制御することができる。具体的には、第2のモータ20から第2のローラギアカム5に負荷されるトルクが、第1のモータ2から第1のローラギアカム3に負荷されるトルクよりも常に小さくなるように第1のモータ2及び第2のモータ20の少なくとも一方の出力を制御することができる。
【0054】
加えて、第2のモータ20から第2のローラギアカム5に負荷されるトルクと、第1のモータ2から第1のローラギアカム3に負荷されるトルクとの間における比又は差を調節することもできる。このため、第2のローラギアカム5の第2のテーパリブ5Bからカムフォロア6に負荷される反力の大きさを調節することができる。
【0055】
以上の第2の実施形態における回転装置1Aは、制振用の第2のローラギアカム5にも動力を付与できるようにしたものである。このため、第2の実施形態における回転装置1Aによれば、第1の実施形態における回転装置1によって得られる効果と同様の効果に加えて、制振用の第2のローラギアカム5からカムフォロア6を介して回転運動の出力軸であるターレット4に負荷される反力の大きさを可変制御することができるという効果を得ることができる。すなわち、第2の実施形態における回転装置1Aによれば、制振用の第2のローラギアカム5による回転装置1Aの制振効果を制御することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
図4は本発明の第3の実施形態に係る回転装置の構成図である。
【0057】
図4に示された第3の実施形態における回転装置1Bでは、制振用の第2のローラギアカム5にロードを掛けてスライドできるようにした点が第1の実施形態における回転装置1と相違する。第3の実施形態における回転装置1Bの他の構成及び作用については第1の実施形態における回転装置1と実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0058】
第3の実施形態における回転装置1Bの第2のローラギアカム5は、スライド機構30でスライド可能に保持される。
図4に例示されるように、第2のローラギアカム5を構成する回転シャフト5Aの両端をスライドできるようにする場合には、リニアガイド、レール或いはラックアンドピニオン等の直線的な移動を行うことが可能な一対の機械要素部品でスライド機構30を構成することができる。そして、回転シャフト5Aの両端を回転可能に保持する2つの第2の保持部8をそれぞれスライド機構30に固定することによって、回転シャフト5Aの両端をスライド可能に保持することができる。
【0059】
この場合、それぞれ第2の保持部8を介して回転シャフト5Aの両端を保持する2つのスライド機構30によって、第2のローラギアカム5を平行移動させることができる。具体的には、第2のローラギアカム5をターレット4に押し付ける方向又はターレット4から引離す方向、つまりターレット4の半径方向に平行移動させることができる。
【0060】
或いは、2つの第2の保持部8をシャフト等の連結部材で連結し、直線的な移動を行うことが可能なリニアガイド等の単一のスライド機構30で連結部材の重心付近をスライドさせることができるようにすることもできる。この場合においても、第2のローラギアカム5をターレット4の半径方向に平行移動させることができる。
【0061】
一方、第2のローラギアカム5を構成する回転シャフト5Aの一端のみをスライド可能とし、回転シャフト5Aの他端をターレット4の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に保持することもできる。この場合には、円弧に沿って曲線的な移動を行うことが可能なレール等の機械要素部品と、機械要素部品同士を回転可能に連結するジョイントでスライド機構30を構成することができる。そして、回転シャフト5Aの両端を保持する2つの第2の保持部8の一方に、レール等の円弧部品に沿って曲線的な移動を行うことが可能なころ又は車輪等の機械要素部品を取付け、他方の第2の保持部8をジョイントに連結することができる。或いは、回転シャフト5Aの両端を保持する2つの第2の保持部8の一方を固定せずに自由端とし、他方の第2の保持部8をジョイントに連結することもできる。
【0062】
そうすると、ジョイントを回転軸として第2のローラギアカム5をターレット4に押し付ける方向又はターレット4から引離す方向に回転移動させることができる。すなわち、ターレット4の回転軸に垂直な平面内において、第2のローラギアカム5を回転移動させることができる。
【0063】
また、第3の実施形態における回転装置1Bには、上述したスライド機構30に加えて、ロード付与機構31、ロード制御装置32及び振動センサ33が備えられる。
【0064】
ロード付与機構31は、制振用の第2のローラギアカム5にロードを付与する装置である。ロード付与機構31は、エアシリンダ、油圧シリンダ、ボールねじ、電動シリンダ或いはラックアンドピニオン等の動力を持って直線的に移動することが可能な機械要素部品で構成することができる。従って、ロード付与機構31及びスライド機構30を、ラックアンドピニオン等の動力を持って移動する共通の機械要素部品で構成してもよい。また、スプリングをロード付与機構31の構成要素としてもよい。
【0065】
第2のローラギアカム5にロードを付与する位置は、自由に決定することができる。
図4に示す例では、第2のローラギアカム5を構成する回転シャフト5Aの両端にロードを付与することができるように2つのエアシリンダがロード付与機構31として設けられている。すなわち、リニアガイド等のスライド機構30でスライド可能に保持された2つの第2の保持部8にそれぞれロードを付与するためのエアシリンダがロード付与機構31として設けられている。
【0066】
もちろん、第2のローラギアカム5の一端側がジョイントで回転可能に保持されているような場合には、第2のローラギアカム5の他端側のみに、ロード付与機構31でロードを付与できるようにすることもできる。また、2つの第2の保持部8がシャフト等の連結部材で連結されている場合には、連結部材の重心付近にロードを付与するようにしてもよい。
【0067】
ロード制御装置32は、ロード付与機構31を制御することによって、第2のローラギアカム5に付与されるロードを可変制御する装置である。このため、ロード付与機構31から第2のローラギアカム5に付与されるロードを調節することができる。ロード制御装置32は、ロード付与機構31のメカニズムに応じてロード付与機構31に空気圧信号、油圧信号又は電気信号等の制御信号を出力する信号生成回路で構成される。
【0068】
具体例として、ロード付与機構31がエアシリンダであれば、ロード制御装置32からエアシリンダに空気圧信号を出力することによってエアシリンダの伸縮量を調整することができる。ロード付与機構31が油圧シリンダである場合も、同様にロード制御装置32から油圧シリンダに油圧信号を出力することによって油圧シリンダの伸縮量を調整することができる。一方、ロード付与機構31がボールねじ、電動シリンダ或いはラックアンドピニオン等のモータで直線駆動する機械要素であれば、ロード制御装置32からロード付与機構31に電気信号を出力することによってロード付与機構31の直線的な移動量を調整することができる。
【0069】
振動センサ33は、対象物の振動を検出するためのセンサである。振動センサ33は、第1のローラギアカム3、第2のローラギアカム5及びターレット4の少なくとも1つの振動を検出できるように配置される。
図4に示す例では、第2のローラギアカム5の両端を保持する各第2の保持部8にそれぞれ振動センサ33が取付けられている。従って、第2のローラギアカム5を構成する回転シャフト5Aの両端における振動を、それぞれ第2の保持部8を介して間接的に振動センサ33で検出することができる。
【0070】
尚、第2のローラギアカム5にはターレット4に取付けられたカムフォロア6が接触しており、ターレット4に取付けられたカムフォロア6には第1のローラギアカム3が接触している。このため、第1のローラギアカム3及びターレット4の振動も、カムフォロア6を介して第2のローラギアカム5に伝搬する。従って、第1のローラギアカム3及びターレット4の振動も、第2のローラギアカム5の振動と重なって間接的に振動センサ33によって検出されることになる。
【0071】
もちろん、ターレット4又は第1のローラギアカム3に振動センサ33を直接又は間接的に取付け、主としてターレット4又は第1のローラギアカム3の振動を振動センサ33で検出するようにしてもよい。
【0072】
振動センサ33において振動の時間波形信号等として取得される振動の検出信号は、ロード制御装置32に出力される。従って、ロード制御装置32では、振動センサ33によって検出された振動の最大値等の指標値に基づいて、ロード付与機構31から第2のローラギアカム5に付与されるロードを可変制御することができる。すなわち、振動センサ33によって検出された振動の指標値が許容値以下又は許容値未満となるように、ロード付与機構31から第2のローラギアカム5に付与されるロードをフィードバック制御することができる。理想的には、第1のローラギアカム3、第2のローラギアカム5及びターレット4の各振動が最小となるようにロード付与機構31から第2のローラギアカム5に付与されるロードをフィードバック制御することが望ましい。
【0073】
但し、ロード付与機構31から第2のローラギアカム5に付与されるロードの制御アルゴリズムを容易にする観点から、ロードの値をプリセットできるようにしてもよい。すなわち、回転運動の出力軸となるターレット4に負荷される荷重に応じて振動を効果的に抑制することが可能なロードの値を予め試験によって決定しておくことができる。そして、ユーザが選択できるように、回転装置1Bの用途に合わせて複数のロード値をプリセットしておくことができる。この場合には、振動センサ33を省略してもよい。
【0074】
具体例として、
図2に例示されるような工作機械12における主軸10の傾斜機構13を構成するために回転装置1Bを用いる場合であれば、切削加工の対象となる素材の強度に応じてロードの値をプリセットすることができる。これにより、大きい機械的強度を有する金属チタンやチタン合金等の難削材の機械加工を行う場合には、振動の発生を一層抑制できるように大きなロード値を設定する一方、アルミニウムやマグネシウム等の機械的強度が比較的小さい材料の機械加工を行う場合には、第2のローラギアカム5の回転によるエネルギ損失を低減するために小さなロード値を設定することができる。
【0075】
以上の第3の実施形態における回転装置1Bは、スライド機構30を用いて制振用の第2のローラギアカム5を直線軸又は円弧軸に沿ってスライド可能とする一方、ロード付与機構31を用いて第2のローラギアカム5にロードをかけることができるようにしたものである。
【0076】
このため、第3の実施形態における回転装置1Bによれば、第1の実施形態における回転装置1によって得られる効果と同様の効果に加えて、第2のローラギアカム5からカムフォロア6及びターレット4にターレット4の半径方向における成分を含む押付力を付与することができるという効果を得ることができる。このため、第2のローラギアカム5による回転装置1Bの制振効果を一層向上させることができる。
【0077】
しかも、第2のローラギアカム5からカムフォロア6を介してターレット4に付与される押付力を調整することができる。このため、振動センサ33で検出された振動の大きさに応じて第2のローラギアカム5による回転装置1Bの制振効果を調整することができる。具体例として、振動センサ33で検出された振動を最小とするフィードバック制御によって、第2のローラギアカム5による回転装置1Bの制振効果を最適化することができる。或いは、第2のローラギアカム5による回転装置1Bの制振効果を目的別に変えることができる。
【0078】
(第4の実施形態)
図5は本発明の第4の実施形態に係る回転装置の構成図である。
【0079】
図5に示された第4の実施形態における回転装置1Cでは、制振用の第2のローラギアカム5にトルクを負荷するためのモータ40及びモータ制御回路41を設けた点が第3の実施形態における回転装置1Bと相違する。第4の実施形態における回転装置1Cの他の構成及び作用については第3の実施形態における回転装置1Bと実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0080】
第4の実施形態における回転装置1Cには、第1のローラギアカム3に動力を与える動力源としての第1のモータ2の他に、第2のローラギアカム5に動力を与える動力源として第2のモータ40が設けられる。すなわち、第4の実施形態における回転装置1Cは、第2の実施形態における回転装置1Aが有する特徴と、第3の実施形態における回転装置1Bが有する特徴の双方を有している。
【0081】
但し、第4の実施形態における回転装置1Cでは、第3の実施形態における回転装置1Bとは異なり、第1のローラギアカム3のトルクと、第2のローラギアカム5のトルクを同一にすることもできる。このため、第1のモータ2及び第2のモータ40として、同じものを用いてもよい。同様に、第1のローラギアカム3及び第2のローラギアカム5についても、同じものを用いることができる。
【0082】
従って、モータ制御回路41は、第1のモータ2の回転方向と、第2のモータ40の回転方向を同期させる制御を行う他、第1のモータ2及び第2のモータ40の少なくとも一方の出力を可変制御できる場合には、第1のモータ2及び第2のモータ40のトルクを所望の値に制御するように構成される。このため、モータ制御回路41による第1のモータ2及び第2のモータ40の制御によって、第2の実施形態と同様に第1のモータ2のトルクよりも第2のモータ40のトルクを小さくすることもできるし、第1のモータ2のトルクと第2のモータ40のトルクを同一にすることもできる。
【0083】
第1のモータ2のトルクよりも第2のモータ40のトルクを小さくすれば、第2の実施形態において説明したように、トルク間の差に応じた反力を、第2のローラギアカム5の第2のテーパリブ5Bからカムフォロア6に負荷することができる。従って、トルク間の差に起因する第2のローラギアカム5の回転軸方向における反力と、ロード付与機構31によって第2のローラギアカム5から付与されるターレット4の半径方向における成分を含む押付力の双方を、カムフォロア6及びターレット4に負荷することができる。
【0084】
逆に、第1のモータ2のトルクと第2のモータ40のトルクを同一にすれば、第2のローラギアカム5の第2のテーパリブ5Bからカムフォロア6に負荷される、第2のローラギアカム5の回転軸方向における反力を、概ねゼロにすることができる。従って、ロード付与機構31によって第2のローラギアカム5から付与されるターレット4の半径方向における成分を含む押付力を、選択的にカムフォロア6及びターレット4に負荷することができる。
【0085】
また、
図5に例示されるように、振動センサ33において取得される振動の検出信号を、ロード制御装置32のみならず、モータ制御回路41にも出力することができる。そうすると、モータ制御回路41において、振動センサ33において取得される振動の検出信号に基づいて、第1のモータ2及び第2のモータ40の少なくとも一方の出力をフィードバック制御することが可能となる。従って、第1のローラギアカム3、第2のローラギアカム5及びターレット4の各振動が最小となるように、第1のモータ2と第2のモータ40との間におけるトルクの差又は比をフィードバック制御によって最適化することができる。
【0086】
以上の第4の実施形態における回転装置1Cは、第2のローラギアカム5からカムフォロア6に負荷される第2のローラギアカム5の回転軸方向における反力を調整できるようにしつつ、ロード付与機構31からカムフォロア6にターレット4の半径方向における成分を含む押付力を負荷できるようにしたものである。
【0087】
このため、第4の実施形態における回転装置1Cによれば、第3の実施形態における回転装置1Bによって得られる効果と同様の効果に加えて、第2のローラギアカム5からカムフォロア6に負荷される第2のローラギアカム5の回転軸方向における反力を調整することができるという効果を得ることができる。特に、ロード付与機構31によって第2のローラギアカム5からカムフォロア6に負荷されるターレット4の半径方向における成分を含む押付力と、第2のローラギアカム5からカムフォロア6に負荷される第2のローラギアカム5の回転軸方向における反力の双方を調整及び最適化することもできる。また、第2のローラギアカム5からカムフォロア6に負荷される第2のローラギアカム5の回転軸方向における反力をオフに切換えることもできる。
【0088】
その結果、第2のローラギアカム5による回転装置1Cの制振効果を一層向上させることができる。また、第2のローラギアカム5による回転装置1Cの制振効果を、回転装置1Cの目的別により細かく制御することができる。
【0089】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【0090】
例えば、各実施形態における機械要素部品を組合わせて回転装置を構成することができる。具体例として、第2の実施形態において、第4の実施形態と同様な振動センサ33を設け、モータ制御回路21において、振動センサ33において取得される振動の検出信号に基づいて、第1のモータ2及び第2のモータ20の少なくとも一方の出力をフィードバック制御できるようにすることもできる。