(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力小売り事業者が電力を販売する販売先である需要家ごとの需要電力量と、前記電力の購入先である電源ごとの前記電力の購入価格と、前記電源ごとの供給可能な電力量とを記憶する記憶部と、
前記需要家と前記電源との組み合わせの入力を受け付ける受付部と、
前記組み合わせと、前記需要家ごとの需要電力量と、前記電源ごとの前記電力の購入価格と、前記電源ごとの供給可能な電力量とに基づいて、前記組み合わせに含まれた前記電源から購入した電力を、前記組み合わせに含まれた前記需要家に販売した場合における、電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標を出力する出力部と、
を備え、
前記記憶部はさらに、前記需要家または前記電源に設置される分散型電源による電力供給についての情報を記憶し、
前記受付部は、前記需要家と前記電源と前記分散型電源との組み合わせの入力を受け付け、
前記出力部は、前記組み合わせと、前記分散型電源による電力供給についての情報とに基づいて、前記分散型電源の設置による収益の変動量と、前記収益が増加する前記分散型電源の容量とを出力する、
電力小売り事業評価装置。
前記記憶部は、前記需要家ごとの需要電力量と、前記電源ごとの前記電力の購入価格と、前記電源ごとの供給可能な電力量とを地域ごとに記憶し、さらに、異なる地域間を接続する複数の連系線ごとの時間単位あたりに、一方の地域から他方の地域に供給可能な電力量のうち前記電力小売り事業者が利用可能な電力量についてのデータである連系線利用計画データと、前記電力の供給にかかる前記地域ごとの託送料金とを記憶し、
前記出力部は、前記組み合わせと、前記地域ごとに記憶された前記需要家ごとの需要電力量と、前記電源ごとの前記電力の購入価格と、前記電源ごとの供給可能な電力量と、前記連系線利用計画データと、前記地域ごとの託送料金とに基づいて、前記電力小売り事業評価指標を出力する、
請求項1に記載の電力小売り事業評価装置。
前記出力部は、前記組み合わせと、前記地域ごとに記憶された前記需要家ごとの需要電力量と、前記電源ごとの前記電力の購入価格と、前記電源ごとの供給可能な電力量と、前記連系線利用計画データとに基づいて、前記組み合わせに含まれた前記電源から購入する電力量を変えて複数回算出された電力の購入費用のうち、前記購入費用の値がより小さくなる場合における前記電源ごとの購入電力量と、前記連系線別の送電量とを出力する、
請求項2に記載の電力小売り事業評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態1)
図1は、本実施形態にかかる電力小売り事業評価装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。
図1に示すように、電力小売り事業評価装置1は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102と、HDD(Hard Disk Drive)103と、表示装置104と、入力装置105と、通信インタフェース(I/F)106と、バス107とを備える。
【0009】
CPU101は、電力小売り事業評価装置1の全体的な制御を行う制御装置である。例えば、CPU101は、メモリ102に記憶されているプログラム等を実行することで、様々な構成を実現する。
【0010】
メモリ102は、読み出し可能なデータを記憶するメモリであり、例えばROMである。また、電力小売り事業評価装置1は、書込み可能なRAM等のメモリをさらに備える構成を採用しても良い。
【0011】
HDD103は、外部記憶装置(補助記憶装置)である。電力小売り事業評価装置1は、HDD103の代わりに、フラッシュメモリ等の記憶媒体を備える構成を採用しても良い。
【0012】
表示装置104は、液晶パネル等からなるディスプレイ等である。
【0013】
入力装置105は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル等であり、ユーザの操作を受け付ける装置である。
【0014】
通信インタフェース106は、ネットワーク等を介して電力小売り事業評価装置1が送受信を行うためのインタフェースである。
【0015】
また、バス107は、電力小売り事業評価装置1の内部のデータ伝送路である。
【0016】
図1に示す電力小売り事業評価装置1の構成は一例であり、一般的なコンピュータの機能を備えるものであれば良い。また、電力小売り事業評価装置1は、不図示のプリンタ等に接続していても良い。
【0017】
図2は、本実施形態にかかる電力小売り事業評価装置1の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の電力小売り事業評価装置1は、受付部111と、ケース生成部112と、算出部113と、出力部114と、記憶部115とを備える。
【0018】
本実施形態においては、電力小売り事業者、または電力小売り事業者からの要求に応じて収益性の評価に関する処理を行う者を、ユーザと称する。本実施形態のユーザは、当該電力小売り事業者が電力の販売先となる需要家を選択する。また、ユーザは、需要家に電力を供給するための電源を選択する。そして、電力小売り事業評価装置1は、ユーザにより選択された需要家と電源との組み合わせの入力を受け付ける。そして、電力小売り事業評価装置1は、入力を受け付けた当該組み合わせにおける収益性の評価を行う。以降、電力小売り事業評価装置1における、収益性の評価を行うために必要な構成について説明する。
【0019】
記憶部115は、例えばHDD103によって構成される。記憶部115は、電力エリアデータベース(DB)121と、連系線データベース(DB)122と、連系線利用計画データベース(DB)123と、販売価格データベース(DB)130と、需要想定データベース(DB)131と、購入価格データベース(DB)140と、供給電力量データベース(DB)141と、託送データベース(DB)150と、想定スポット価格データベース(DB)151とを記憶する。
【0020】
電力エリアデータベース121と、連系線データベース122と、連系線利用計画データベース123とは、電力エリアまたは連系線に関する情報を保存する。
【0021】
具体的には、電力エリアデータベース121は、電力小売り事業評価装置1を使用する電力小売り業者が電力を購入および販売する電力エリアについての情報が登録されたデータベースである。電力エリアは、電力を供給する電力会社の管轄地域の範囲である。電力エリアは、本実施形態における地域の一例である。
【0022】
図3は、本実施形態にかかる電力エリアデータベース121のテーブル構成の一例を示す図である。
図3に示すように、例えば、本実施形態における電力エリアデータベース121は、電力エリアを識別するエリア名を保存する。また、電力エリアデータベース121は、電力エリアを識別する番号(No.)や、コード等を保存しても良い。
【0023】
図4は、本実施形態にかかる電力エリアおよび連系線の概要を説明する図である。
図4に示すように、本実施形態にかかる電力エリアは、北海道エリアa1から、九州エリアa9までの9つのエリアとする。
図4に示す電力エリアは一例であり、電力エリアの区分けはこれに限定されるものではない。
【0024】
また、
図4に示すように、各電力エリア間は、連系線l(L)1〜l10により接続される。連系線は、異なる電力エリア間で電力の送電をするための線である。連系線l1〜l10を区別しない場合は、単に連系線lと称する。
【0025】
例えば、電力小売り事業評価装置1を使用する電力小売り事業者が、複数の電力エリアを跨って電力の購入および供給を行う場合がある。また、ある電力エリアへ、連系線を通って他の電力エリアから流入した電力量を、連系線の潮流とも称する。
【0026】
連系線データベース122は、連系線lについての情報を保存するデータベースである。
図5は、本実施形態にかかる連系線データベース122のテーブル構成の一例を示す図である。
図5に示すように、連系線データベース122は、連系線lの名称が登録される項目「連系線名称」と、連系線lが接続する電力エリアを示す項目「接続エリア1」および「接続エリア2」とを含む。また、連系線データベース122は、連系線lを識別する番号(No.)や、コード等を保存しても良い。
【0027】
例えば、
図4,5に示すように、連系線l1は北海道エリアと東北エリアとの間を接続する。また、連系線l2は東北エリアと東京エリアとの間を接続し、連系線l3は東京エリアと中部エリアとの間を接続する。その他の連系線l4〜l10も同様に、異なるエリア間を接続する。
【0028】
連系線lごとの時間単位あたりに、一方の電力エリアから他方の電力エリアに供給可能な電力量のうち各電力小売り事業者が利用可能な電力量は予め上限が定められている。本実施形態において、連系線lごとの時間単位あたりに一方の電力エリアから他方の電力エリアに供給可能な電力量のうち電力小売り事業者による利用可能な電力量を示すデータを、連系線利用計画データという。
【0029】
連系線利用計画データベース123は、連系線利用計画データを保存するデータベースである。
図6は、本実施形態にかかる連系線利用計画データベース123のテーブル構成の一例を示す図である。
図6に示すように、連系線利用計画データベース123は、日付と、時刻と、各連系線によって一方の電力エリアから他方の電力エリアに供給可能な電力量のうち電力小売り事業者が利用可能な電力量と、を対応付けて保存する。連系線利用計画データベース123は将来の計画を保存するため、
図6に示す項目「日付」および「時刻」に設定される日時は、未来の日付および時刻である。また、当該日時は、後述の算出部113により実行されるシミュレーションの電力小売り事業の収益性を評価する評価対象期間である。評価対象期間については、後述する。
【0030】
図6に示す例では、連系線利用計画データベース123は、東京エリアと中部エリアとを接続する連系線l3(“東京‐中部”)における30分ごとに電力小売り事業者が利用可能な電力量を保存する。例えば、日付“2016/4/1”の時刻“0:00”から“0:30”の間の30分間に連系線l3(“東京‐中部”)によって東京エリアから中部エリアへ供給可能な電力量のうち、当該電力小売り事業者が利用可能な電力量は、1000kwhである。
【0031】
また、
図4に示すように、日本国内において、東日本では周波数が50Hzの交流電力が用いられ、西日本では周波数が60Hzの交流電力が用いられる。東日本に含まれる電力エリアは、北海道エリアa1、東北エリアa2、東京エリアa3である。また、西日本に含まれる電力エリアは、中部エリアa4、北陸エリアa5、関西エリアa6、中国エリアa7、四国エリアa8、九州エリアa9である。
【0032】
東京エリアと中部エリアとの間で電力の送電をする場合は周波数を変換するため、東京エリアと中部エリアとの間を接続する連系線l3は、特に時間当たりに送電可能な電力量が他の連系線lよりも少ない。このため、
図6では特に連系線l3を例示したが、連系線利用計画データベース123は、連系線l3だけではなく他の連系線lについても連系線利用計画データを保存しても良い。
【0033】
また、販売価格データベース130と、需要想定データベース131とは、需要家に関する情報を保存する。
【0034】
需要家は、電力小売り事業者が電力を販売する販売先である。本実施形態における需要家は、例えば工場や企業等である。また、需要家には、個人で契約をする一般家庭が含まれても良い。
【0035】
具体的には、販売価格データベース130は、需要家ごとの電力の販売料金に関する情報を保存するデータベースである。
図7は、本実施形態にかかる販売価格データベース130のテーブル構成の一例を示す図である。
図7に示すように、販売価格データベース130は、項目「需要家名称」と、「電力エリア」と、「契約電力」と、「基本料金」と、「従量料金」とに設定されたデータを対応付けて保存する。また、販売価格データベース130は、各需要家を識別する番号(No.)や、コード等を保存しても良い。
【0036】
需要家名称は、需要家を識別する名称である。また、電力エリアは、当該需要家が所在する電力エリアである。また、契約電力は、当該需要家に電力小売り事業者が供給する電力と契約した、一月当たりの電力量である。月ごとに契約電力が変化する場合は、販売価格データベース130は、月ごとに分けて契約電力を保存してもよい。
【0037】
また、販売価格データベース130に登録された基本料金と従量料金とは、需要家が電力小売り事業者に支払う料金である。基本料金は、月ごとの契約電力量に応じて定められる料金である。また、従量料金は、需要家が電力小売り事業者から購入した電力量に応じて加算される料金の1kWh当たりの単価である。従量料金は、さらに、時間帯等の条件によって異なる金額であってもよい。この場合、販売価格データベース130は、時間帯等の条件が登録される項目をさらに含む構成を採用してもよい。販売価格データベース130に登録された基本料金と従量料金とは、電力の販売価格とも称されうる。
【0038】
また、需要想定データベース131は、需要家ごとの想定される需要電力量を、電量エリアごとに保存するデータベースである。
図8は、本実施形態にかかる需要想定データベース131のテーブル構成の一例を示す図である。
図8に示すように、需要想定データベース131は、日付と、時刻と、各需要家ごとの想定される需要電力量とを対応付けて保存する。
【0039】
例えば、日付“2016/4/1”の時刻“0:00”から“0:30”の間の30分間に、“北海道エリア需要家1”の電力需要量は100kwhである。一方、2016/4/1”の時刻“0:00”から“0:30”の間の30分間に、“東北エリア需要家1”の電力需要量は200kwhである。
【0040】
需要想定データベース131は将来の想定される需要電力量を保存するため、
図8に示す項目「日付」および「時刻」に設定された日時は、未来の日付および時刻である。また、当該日時は、後述の算出部113により実行されるシミュレーションの電力小売り事業の収益性を評価する評価対象期間である。評価対象期間については、後述する。
【0041】
需要想定データベース131は、需要家ごとに想定される電力需要量を保存し、各需要家は
図7に示した販売価格データベース130によって所在地である各電力エリアと対応付けられている。このため、記憶部115は、需要家ごとの需要電力量を電力エリアごとに記憶するともいえる。
【0042】
また、購入価格データベース140と、供給電力量データベース141とは、電源に関する情報を保存する。
【0043】
電源は、電力小売り事業者が電力を購入する購入先である。本実施形態における電源は、例えば東京電力等の電力会社や発電事業者である。あるいは、電源は、発電事業者が所有する発電所の単位としてもよい。
【0044】
具体的には、購入価格データベース140は、電源ごとの電力の購入価格を保存するデータベースである。
図9は、本実施形態にかかる購入価格データベース140のテーブル構成の一例を示す図である。
図9に示すように、購入価格データベース140は、項目「電源名称」と、「電力エリア」と、「種別」と、「基本料金」と、「従量料金」とに設定されたデータを対応付けて保存する。
【0045】
電源名称は、電源を識別する名称である。また、電力エリアは、当該電源が所在する電力エリアである。種別は、各電源の電力供給形態の種別を示す。例えば、種別“常時バックアップ”は、電力小売り事業者が需要家に対して電力を供給する(小売りする)際に、電力会社から電力を継続的に購入する(卸供給を受ける)形態をいう。一般に、電源が電力会社である場合は、種別は“常時バックアップ”となる。また、種別“固定”は、当該電源の電力の供給量が時間ごとに固定されていることを示す。例えば、一般に、新電力の発電事業者は、決まった発電スケジュールで発電を行うため、電力の供給量が時間ごとに固定されている。このため、電源が新電力の発電事業者である場合は、電力供給形態の種別は“固定”となる。
【0046】
また、購入価格データベース140に登録された基本料金と従量料金とは、電力小売り事業者が電源に支払う料金である。基本料金は、月ごとの契約電力量に応じて定められる料金である。また、従量料金は、電力小売り事業者が当該電源から購入した電力量に応じて加算される料金の1kWh当たりの単価である。従量料金は、さらに時間帯等の条件によって異なる金額であってもよい。この場合、購入価格データベース140は、時間帯等の条件が登録される項目をさらに含む構成を採用してもよい。購入価格データベース140に登録された基本料金と従量料金とは、本実施形態における電力の購入価格の一例である。
【0047】
また、供給電力量データベース141は、電源ごとの供給可能な電力量を保存するデータベースである。
図10は、本実施形態にかかる供給電力量データベース141のテーブル構成の一例を示す図である。
図10に示すように、供給電力量データベース141は、日付と、時刻と、各電源ごとの供給可能な電力量とを対応付けて保存する。
図10に示す項目「日付」および「時刻」に設定された日時は、未来の日付および時刻である。また、当該日時は、後述の算出部113により実行されるシミュレーションの電力小売り事業の収益性を評価する評価対象期間である。評価対象期間については、後述する。
【0048】
例えば、日付“2016/4/1”の時刻“0:00”から“0:30”の間の30分間に、電源“北海道エリア電源1”が供給可能な電力量は100kwhである。
【0049】
また、託送データベース150は、電力の供給にかかる電力エリアごとの損失率と、託送料金とを記憶するデータベースである。
【0050】
託送は、送配電網を保有する送配電事業者が、電力を電源から需要家へ運ぶことをいう。電力小売り事業者は、電源から購入した電力を需要家へ供給するために送配電網を使用するため、送配電事業者に託送料金を支払う。託送料金の金額は、電力エリアごとに異なる。また、電力が託送される際の損失率もまた、電力エリアごとに異なる。
【0051】
図11は、本実施形態にかかる託送データベース150のテーブル構成の一例を示す図である。
図11に示すように、託送データベース150は、項目「電力エリア」と、「損失率」と、「基本料金」と、「従量料金」とに設定されたデータを対応付けて保存する。
【0052】
例えば、北海道エリア内で電力を託送する場合、損失率は“3.00%”である。この場合、電源から送電された電力の3.00%が、需要家に届かずに失われる。このため、電力小売り事業者は、需要家に販売する電力量に対して、予め損失分の電力を上乗せして、電源から購入する。
【0053】
また、託送データベース150に登録された基本料金と従量料金とは、電力小売り事業者が送配電事業者に支払う料金である。また、基本料金は、月ごとの契約電力量に応じて定められる料金である。また、従量料金は、電力小売り事業者が託送を依頼した電力量に応じて加算される料金の1kWh当たりの単価である。託送データベース150に登録された基本料金と従量料金とは、本実施形態における託送料金の一例である。
【0054】
また、
図4に示すように、電力小売り事業者は、電力市場Mから購入した電力を各電力エリアに所在する需要家に販売したり、電源から購入した電力を電力市場Mで販売したりする。
【0055】
電力市場Mは、具体的には日本卸電力取引所(JEPX)等の電力の取引を行う市場である。本実施形態では、電力市場Mとして、翌日の電力について取引を行う一日前市場(電力スポット市場)の場合について説明するが、他の電力市場であっても良い。当該電力市場Mにおける予め設定された時間帯ごとの電力の価格をスポット価格という。また、本実施形態において、スポット価格は、電力エリアごとに異なるものとする。本実施形態の電力市場Mにおいては、1コマ30分単位で取引が行われるものとする。
【0056】
想定スポット価格データベース151は、想定されるスポット価格の金額を保存するデータベースである。想定スポット価格データベース151に保存されるスポット価格は、例えば、一年前の同じ日時のスポット価格であってもよい。また、天候や燃料価格等の要因によりスポット価格が上下する場合がある。このため、想定スポット価格データベース151に保存されるスポット価格は、各種の要因に基づいて予め算出されたものであってもよい。
【0057】
図12は、本実施形態にかかる想定スポット価格データベース151のテーブル構成の一例を示す図である。
図12に示すように、想定スポット価格データベース151は、日付と、時刻と、各電力エリアごとの想定されるスポット価格とを対応付けて保存する。想定スポット価格は、1kWh当たりの価格であるため、単位は¥/kWhである。また、
図12に示す項目「日付」および「時刻」に設定された日時は、未来の日付および時刻である。また、当該日時は、後述の算出部113により実行されるシミュレーションの電力小売り事業の収益性を評価する評価対象期間である。評価対象期間については、後述する。
【0058】
例えば、日付“2016/4/1”の時刻“0:00”から“0:30”の間の30分間に、北海道エリアにおける想定スポット価格は“8.66¥/kWh”である。
【0059】
本実施形態の想定スポット価格は、電力市場Mから電力を購入する価格も、電力市場Mに電力を販売する価格も、同一の金額としたが、これに限定されるものではない。例えば、電力市場Mからの購入価格と、販売価格とはそれぞれ異なる金額であってもよい。この場合、想定スポット価格データベース151は、購入価格と販売価格とを別の項目で保持する構成としてもよい。あるいは、記憶部115は、購入価格と販売価格とをそれぞれ異なるデータベースで記憶してもよい。また、想定スポット価格は、電力エリアに関わらず、同一の価格であってもよい。
【0060】
なお、上述の電力エリアデータベース121、連系線データベース122、連系線利用計画データベース123、販売価格データベース130、需要想定データベース131、購入価格データベース140、供給電力量データベース141、託送データベース150、想定スポット価格データベース151に保存されるデータおよび値は一例であり、これに限定されるものではない。
【0061】
図2に戻り、出力部114は、実行する処理の選択肢を示すメニュー画面を表示装置104に出力する。
図13は、本実施形態にかかるメニュー画面の一例を示す図である。例えば、表示装置104には“データ入力”、“シミュレーションケース設定”、“シミュレーション実行”、“終了”等の選択肢が選択可能に表示される。これらの選択肢のいずれかをユーザが選択して実行ボタン900をマウスでクリック等することにより、後述の受付部111がユーザの操作を受け付ける。
図13に示す画面構成は一例であり、これに限定されるものではない。
【0062】
例えば、受付部111が、
図13に示したメニュー画面の選択肢“データ入力”の選択をユーザから受け付けた場合に、出力部114は、例えば、入力先のデータベースと、データファイル等の格納場所のパスとを入力する画面をさらに表示してもよい。あるいは、出力部114は、データの手動入力を受け付けるための画面を表示してもよい。入力先のデータベースとは、例えば、電力エリアデータベース(DB)121、連系線データベース(DB)122、連系線利用計画データベース(DB)123、販売価格データベース(DB)130、需要想定データベース(DB)131、購入価格データベース(DB)140、供給電力量データベース(DB)141、託送データベース(DB)150、又は想定スポット価格データベース(DB)151とする。そして、これらのデータベースに情報の登録する場合に、“データ入力”が選択される。
【0063】
また、受付部111が、選択肢“シミュレーションケース設定”の選択をユーザから受け付けた場合、出力部114は、例えば、シミュレーションケースの設定画面をさらに表示する。シミュレーションケースの設定画面については、ケース生成部112の機能の説明にて後述する。本実施形態の“シミュレーションケース設定”とは、収益性の評価シミュレーションのための必要な条件の設定とし、例えば、電力小売り事業者が電力を供給する対象となる需要家、および、当該電力小売り事業者が電力の購入する対象となる電源の組み合わせを設定する。
【0064】
また、出力部114は、後述の算出部113によって算出された電力の需給計画や、シミュレーションケースごとに電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標を表示装置104に出力する。例えば、出力部114は、後述の算出部113によって生成された需給計画や電力小売り事業の収益性を示すグラフ等を表示装置104に出力する。電力の需給計画や、電力小売り事業評価指標の詳細については後述する。
【0065】
図2に戻り、受付部111は、ユーザの操作を受け付ける。例えば、
図13に示したメニュー画面の選択肢“データ入力”が選択されたとする。この場合、出力部114によってさらに、入力先のデータベースと、データファイル等の格納場所のパスとを入力する画面が表示される。受付部111は、当該入力されたパスに従って、データファイル等を読み込み、記憶部115に記憶された入力先のデータベースに登録する。また、記憶部115に記憶されたデータベースへのデータの入力方法はこれに限定されるものではない。
【0066】
また、
図13に示したメニュー画面の選択肢“シミュレーションケース設定”がユーザによって選択されたとする。この場合、出力部114によってさらに、シミュレーション対象の電源および需要家を設定するための設定画面が表示される。受付部111は、ユーザによって入力(設定)された需要家と電源との組み合わせを受け付けて、ケース生成部112に送出する。
【0067】
また、
図13に示したメニュー画面の選択肢“シミュレーション実行”がユーザによって選択されたとする。この場合、受付部111は、シミュレーション実行操作を受け付けたことを、後述の算出部113に通知する。
【0068】
また、
図13に示した選択肢“終了”がユーザによって選択されたとする。この場合、受付部111は、当該メニュー画面を閉じるように、出力部114に通知する。
【0069】
図2に戻り、ケース生成部112は、電力小売り事業の収益評価のシミュレーションで用いられるシミュレーションケースを生成する。具体的には、ケース生成部112は、ユーザによって設定された需要家と電源との組み合わせを、受付部111を介して取得する。
【0070】
図14は、本実施形態にかかるシミュレーション対象の電源を設定するための設定画面の一例を示す図である。また、
図15は、本実施形態にかかるシミュレーション対象の需要家を設定するための設定画面の一例を示す図である。
【0071】
図14に示すように、本実施形態におけるシミュレーション対象、換言すれば電力の購入対象となる電源を設定するための設定画面(以下、電源設定画面という)は、表示欄として「電源No.」と、「電源名称」とを含む。また、電源設定画面は、入力欄として「基準」と、「追加/削除」とを含む。表示欄「電源No.」および「電源名称」には、
図9に示した購入価格データベース140の「No.」と「電源名称」のデータが、出力部114によって表示される。
【0072】
また、
図15に示すように、本実施形態におけるシミュレーション対象、換言すれば電力の供給対象となる需要家を設定するための設定画面(以下、需要家設定画面という)は、表示欄として「需要家No.」と、「需要家名称」とを含む。また、需要家設定画面は、入力欄として「基準」と、「追加/削除」と、を含む。表示欄「需要家No.」および「需要家名称」には、
図7に示した販売価格データベース130の「No.」と「需要家名称」のデータが、出力部114によって表示される。
【0073】
図14,15に示す入力欄「基準」は、シミュレーションケースの基準となる電源または需要家がユーザによって設定される欄である。
図14,15の例では、入力欄「基準」に丸が入力された需要家および電源の組み合わせは、収益性のシミュレーションを行う際に、他の組み合わせの収益性と対比等を行うための基準として定められたものとする。当該組み合わせを、シミュレーションケースの基準と称する。
【0074】
そして、シミュレーションケースの基準として設定された電源および需要家の組み合わせに対して調整を行うための項目として、入力欄「追加/削除」が設けられている。
図14,15に示す入力欄「追加/削除」は、シミュレーションケースの基準となる電源または需要家の組み合わせに対して、電源または需要家の追加又は削除の設定を受け付けるための欄である。
図14,15の例では、受付部111が、任意の電源又は需要家の入力欄「追加/削除」に“+”の設定を受け付けた場合に、“+”が設定された電源または需要家が、シミュレーションケースの基準に対して追加されたケースが生成される。また、受付部111が、任意の電源又は需要家の入力欄「追加/削除」の設定を受け付けた場合に、“−”が設定された電源または需要家が、シミュレーションケースの基準に対して削除されたケースが生成される。
【0075】
ケース生成部112は、受付部111が受け付けた需要家と電源との組み合わせから、シミュレーションケースを生成する。
図14,15に示す例では、シミュレーションケースの基準を含めて、電源と需要家との組み合わせが異なるシミュレーションケースが8種類(2の3乗(東北エリア電源3の有無、東京エリア電源4の有無、および東京エリア需要家2の有無の組み合わせ))生成される。
【0076】
本実施形態では電源設定画面と需要家設定画面とを個別の画面として説明したが、これらは同一画面上に表示されてもよい。
図14,15に示す設定画面の構成は一例であり、ユーザが電源と需要家との組み合わせにかかるシミュレーションケースを設定可能な画面であれば、表示欄および入力欄はこれらに限定されるものではない。
【0077】
図2に戻り、算出部113は、生成されたシミュレーションケースに基づいて、シミュレーションを実行し、電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標を算出する。具体的には、算出部113は、ユーザがシミュレーション実行操作をしたことを受付部111から通知された場合に、電力小売り事業の電力購入コストを最小化するための最適化モデル(最適化問題)を用いて、設定されたシミュレーションケースにおけるシミュレーションを実行する。電力小売り事業の電力購入コストは、本実施形態における電力の購入費用の一例である。
【0078】
算出部113は、シミュレーションにおいて、下記の式(1)と式(2−1)〜(2−4)とを用いる。式(1)は、電力小売り事業における電力購入コストの金額を示す目的関数である。また、後述の式(2−1)〜(2−4)は、式(1)の制約条件を示す式である。式(2−1)〜(2−4)は、需給バランス等、電小売り事業者が電力小売り事業を運用する上で順守する制約である。
【0079】
算出部113は、式(2−1)〜(2−4)に示される制約条件下で、式(1)の目的関数を最小化する最適化問題(線形計画問題)を解く。例えば、算出部113は、単体法や内点法等の手法を用いてもよい。
【0081】
式(1)の“t”は、電力小売り事業の収益性を評価する評価対象期間が30分ごとに分割された時間単位である。また、式(1)の“g”は、上述の各シミュレーションケースに含まれる電源である。また、式(1)の“a”は、上述の各シミュレーションケースに含まれる電源または需要家が所在する電力エリアである。
【0082】
また、式(1)のc
g(g,t)、c
Jb(a,t)、c
Js(a,t)は、記憶部115に記憶された各データベースに保存されたデータから、算出部113によって式(1)に入力されるパラメータである。
【0083】
パラメータc
g(g,t)は、時刻tにおける電源gからの電力購入価格の従量料金とする。具体的には、算出部113は、
図9に示す購入価格データベース140から取得した1kWh当たりの従量料金をc
g(g,t)に入力する。
【0084】
パラメータc
Jb(a,t)は、時刻tにおける電力エリアaの想定スポット価格(購入価格)とする。また、パラメータc
Js(a,t)には、時刻tにおける電力エリアaの想定スポット価格(販売価格)が入力される。具体的には、算出部113は、
図12に示す想定スポット価格データベース151から取得した1kWh当たりの想定スポット価格をc
Jb(a,t)とc
Js(a,t)とに入力する。
【0085】
変数P
g(g,t)は、時刻tにおける電源gからの購入電力量である。変数P
Jb(a,t)は、時刻tに電力エリアaにおいて電力市場Mから購入する電力量である。変数P
Js(a,t)は、時刻tに電力エリアaにおいて電力市場Mに販売する電力量である。P
g(g,t)、P
Jb(a,t)、P
Js(a,t)の値の単位はkWhである。
【0086】
式(1)の第1項は、評価対象期間における電源からの電力購入金額の和を示す。また、式(1)の第2項は、評価対象期間における電力市場Mからの電力の購入金額から、評価対象期間における電力市場Mへの電力の販売金額を減算した金額を示す。言い換えれば、式(1)の第2項は、評価対象期間における電力小売り事業が電力市場Mへ支払う金額を示す。式(1)の第1項と第2項とを加算した金額が、評価対象期間における電力購入コストの従量料金に相当する金額となる。電力購入コストのうち、基本料金に相当する部分は、需要が変わらないため一定であり、計算結果に影響しないため、ここでは目的関数には含めない。なお、最適化モデルに電力購入コスト基本料金を含める構成を採用しても良い。
【0087】
評価対象期間は、このシミュレーションによって電力小売り事業の収益性を評価する対象となる期間である。本実施形態における評価対象期間は、記憶部115に登録された電源、需要家、連系線、スポット価格等に関する想定データが登録されている期間である。具体的には、評価対象期間は、
図6に示す連系線利用計画データベース123、
図8に示す需要想定データベース131、
図10に示す供給電力量データベース141、
図12に示す想定スポット価格データベース151の項目「日付」および「時刻」に登録された日時である。例えば、本実施形態においては、上述の各データベースが1年間分の未来日付のデータを保持している場合、評価対象期間は、将来1年間分の期間となる。
【0088】
また、各データベースに登録された日時から評価対象期間をさらに限定することが可能な入力欄を、上述の電源設定画面と需要家設定画面とにさらに設ける構成としてもよい。
【0089】
以下の式(2−1)〜(2−4)に示される制約条件下で、式(1)の値が最小となる場合におけるこれらの変数の値は、最適化問題の解として出力される。言い換えれば、算出部113は、シミュレーションケースごとに、式(1)の値を最小化する電源ごとの時刻ごとの購入電力量と、電力市場Mからの時刻ごとの購入電力量と、電力市場Mへの時刻ごとの販売電力量と、を算出する。
【0091】
式(2−1)の“d”は、需要家を示す。式(2−1)に入力される需要家は、上述の各シミュレーションケースに含まれる需要家である。
【0092】
式(2−1)のG
aは、電力エリアaにおける電源の集合を示す。また、L
aは、電力エリアaと接続する連系線の集合を示す。式(2−1)のD
aは、電力エリアaにおける需要家の集合を示す。
【0093】
P
d(d,t)と、η
aとは、値の入力を受け付けるパラメータである。
【0094】
パラメータP
d(d,t)には、算出部113によって、
図8に示す需要想定データベース131から取得した時刻tにおける需要家dの需要電力量が入力される。P
d(d,t)の値の単位はkWhである。
【0095】
パラメータη
aには、算出部113によって、
図11に示す託送データベース150から取得した電力エリアaにおける損失率が入力される。
【0096】
変数P
flow(l,t)は、時刻tにおける連系線lを用いて他の電力エリアとの間で流入または流出する電力量(潮流)である。P
flow(l,t)の値の単位はkWhである。式(1)に含まれる変数に加えて、変数P
flow(l,t)の値もまた、算出部113によって最適化問題の解として出力される。また、変数P
flow(l,t)は、他の電力エリアとの間で流入する場合は+(プラス)、流出する場合は−(マイナス)の値をとる。
【0097】
式(2−1)は、電力エリアごとの需給バランスが一致するという制約条件を示す式である。
【0098】
式(2−1)の左辺は、電力エリアaに供給される電力量を示す。具体的には、式(2−1)の左辺は、時刻tにおける、電力エリアaにおける電源gから供給される電力量と、他の電力エリアとの間で流入または流出する電力量と、電力市場Mから購入する電力量とを加算し、電力市場Mに販売する電力量を減算した値を示す。
【0099】
また、式(2−1)の右辺は、電力エリアaにおける電力需要量を示す。具体的には、式(2−1)の右辺は、時刻tにおける、電力エリアaにおける需要家dの需要電力量に、電力エリアaにおける送電時に損失する電力量を上乗せした値を示す。
【0100】
式(2−1)の左辺と右辺の値が等しくなる場合、電力エリアごとの需給バランスが一致する。
【0101】
式(2−2)は、電源ごとかつ時刻ごとの供給電力の上限の制約条件を示す式である。
【0102】
式(2−2)のP
gmax(g)は、値の入力を受け付けるパラメータである。パラメータP
gmax(g)には、算出部113によって、
図10に示す供給電力量データベース141から取得した、電源gが供給可能な電力量の値が入力される。電源gの種別が“常時バックアップ”である場合には、供給電力の上限制約はP
g(g,t)≦P
gmax(g)となる。また、電源gの種別が“固定”である場合には、供給電力の上限制約はP
g(g,t)=P
gmax(g)となる。
【0103】
式(2−2)に示すように、時刻tにおける電源gからの購入電力量は、電源gが供給可能な電力量以下、または等しくならなければならない。
【0104】
式(2−3)は、種別が“常時バックアップ”である電源の、電力エリアごとの供給電力量の制約条件を示す式である。BU
aは、電力エリアaに所在する種別が“常時バックアップ”である電源の集合を示す。
【0105】
式(2−3)に示すように、電力エリアaにおいて、時刻tにおける電源gからの購入電力量は、時刻tにおける需要家dの需要電力量以下でなければならない。
【0106】
式(2−4)は、連系線ごとかつ時刻ごとの、連系線の潮流量の上限の制約条件を示す式である。
【0107】
P
flowmax(l)は、連系線lの潮流量(連系線lを通って他の電力エリアとの間で流入または流出する電力量)の上限値が入力されるパラメータである。パラメータP
flowmax(l)には、算出部113によって、
図6に示す連系線利用計画データベース123から取得した、連系線lごとの電力小売り事業者が利用可能な電力量が入力される。また、電力が連系線lを通って他の電力エリアに流出する場合は、P
flow(l,t)は−(マイナス)の値を取るため、−P
flowmax(l)は、潮流量の下限値となる。
【0108】
式(2−4)に示すように、時刻tにおける連系線lを通って他の電力エリアとの間で流入または流出する電力量は、連系線lごとの電力小売り事業者が利用可能な電力量以下でなければならない。
【0109】
算出部113は、上述の式(1)および式(2−1)〜(2−4)により、シミュレーションケースごとに、目的関数である式(1)の値が最小となる変数P
g(g,t)、P
Jb(a,t)、P
Js(a,t)、P
flow(l,t)の値を算出する。言い換えれば、算出部113は、シミュレーションケースごとに、評価対象期間における電力購入コストを最小化する電源ごとの時刻ごとの購入電力量と、電力市場Mからの時刻ごとの購入電力量と、電力市場Mへの時刻ごとの販売電力量と、他の電力エリアとの間で流入または流出する連系線別の電力量(送電量)と、を算出する。
【0110】
例えば、各シミュレーションケースごとに、目的関数である式(1)の値が最小となる変数の値が特定されるまで、各変数の値が複数回算出され、算出された変数のうち、電力購入コストが最小となる変数の値が解として算出される。
【0111】
算出部113は、各シミュレーションケースごとの算出結果をシミュレーションケースと対応付けて記憶部115に保存する。
【0112】
また、算出部113は、算出した電源ごとの時刻ごとの購入電力量と、電力市場Mからの時刻ごとの購入電力量と、電力市場Mへの時刻ごとの販売電力量と、他の電力エリアとの間で流入または流出する連系線別の電力量(送電量)と、パラメータP
d(d,t)に入力した時刻tにおける需要家dの需要電力量と、から、評価対象期間における電力の需給計画を生成する。
【0113】
図16は、本実施形態にかかるシミュレーションケースごとの需給計画の一例を示すグラフである。
図16に示すグラフには、ある1つのシミュレーションケースにおける、需要家への供給電力量と、電源からの購入電力量と、電力市場Mとの間で売買する電力量とが、電力エリアごとに表示されている。
【0114】
図16に示す需給計画は、評価対象期間中のある1日の需給計画である。
図16の横軸は30分刻みの時刻を示す。横軸の値“48”は、24時間に相当する。また、縦軸は中央を境として、上半分が需要家または電力市場Mへの販売電力量を示し、下半分が電源または電力市場Mからの購入電力量を示す。言い換えれば、縦軸の上半分は電力の需要、縦軸の下半分は電力の供給を示す。
【0115】
また、
図16に示す需給計画は、周波数が50Hzの電力エリアと、周波数が60Hzの電力エリアに所在する需要家と電源が選択されたシミュレーションケースにおいて、周波数が50Hzの電力エリアに関する需給計画を示したものである。周波数が50Hzの電力エリアである東京エリアと東北エリアおよび北海道エリアに所在する需要家と電源に加えて、周波数が60Hzの電力エリアに所在する電源から連系線を通って供給される連系線潮流が示されている。また、
図16に示すように、電力市場Mとの間で売買する電力量についても需給計画に含まれる。
【0116】
図16に示すように、需給計画において、時刻ごとの電力の需要と供給の量は一致する。これは、上述の式(2−1)により、需給バランスが一致するという制約条件を満たした電源ごとの時刻ごとの購入電力量と、電力市場Mからの時刻ごとの購入電力量と、電力市場Mへの時刻ごとの販売電力量とが算出部113によって算出されているためである。
【0117】
また、
図16に示す需給計画において、異なる電力エリア間で送電される電力量は、各連系線によって一方の電力エリアから他方の電力エリアに供給可能な電力量のうち、電力小売り事業者が利用可能な電力量以下となる。これは、上述の式(2−4)により、連系線ごとかつ時刻ごとの、連系線の潮流量の上限の制約条件を満たした電源ごとの時刻ごとの購入電力量が算出部113によって算出されているためである。
【0118】
算出部113は、上述の式(1)と式(2−1)〜(2−4)を用いてシミュレーションを行うことにより、各シミュレーションケースごとに、制約条件を満たした上で評価対象期間における電力購入コストを最小化する需給計画を算出することができる。
【0119】
算出部113は、シミュレーションケースに応じて、
図16に示す電力エリアだけではなく、他の電力エリアについての需給計画も算出することができる。
【0120】
また、
図16に示す需給計画の表示形式は一例であり、これに限定されるものではない。例えば算出部113は、グラフではなく、表や数値の一覧等を生成しても良い。算出部113は、生成したグラフ等をシミュレーションケースと対応付けて記憶部115に保存する。または、算出部113は、ユーザからの操作を受付部111が受け付けた場合等にグラフ等を生成するものとしてもよい。算出部113が生成したグラフ等は、上述の出力部114が表示装置104に出力する。また、出力部114は、不図示のプリンタ等にグラフ等を出力してもよい。
【0121】
そして、算出部113は、シミュレーションケースごとに、下記の式(3−1)〜(3−3)を実行し、評価対象期間における電力小売り事業における売上、利益、費用を算出する。
【0123】
式(3−1)は、評価対象期間における電力小売り事業の利益を算出するための式である。Pは利益、Sは売上(収入)、Eは費用(支出、原価)を示す。
【0124】
また、式(3−2)は、評価対象期間における売上を算出するための式である。
【0125】
SRは、需要家へ電力を販売することによって電力小売り事業者が得る売上である。具体的には、算出部113は、
図7に示す販売価格データベース130に登録された基本料金および従量料金と、
図8に示す需要想定データベース131に保存された想定される需要電力量とに基づいて、シミュレーションケースに含まれる各需要家に対する売上金額の合計値を算出する。算出部113は、算出した売上金額の合計値をSRに入力する。
【0126】
SMは、電力市場Mへ電力を販売することによって電力小売り事業者が得る売上である。具体的には、算出部113は、
図12に示す想定スポット価格データベース151に保存された想定されるスポット価格と、式(1)で算出されたP
Js(a,t)の値(時刻tに電力エリアaにおいて電力市場Mに販売する電力量)とに基づいて、電力市場Mに対する売上金額の合計値を算出する。算出部113は、算出した売上の値をSMに入力する。
【0127】
また、式(3−3)は、評価対象期間における費用を算出するための式である。
【0128】
EPは、電源から電力を購入することによって電力小売り事業者が支払う費用(仕入金額、購入金額)である。具体的には、算出部113は、
図9に示す購入価格データベース140に登録された基本料金および従量料金と、式(1)で算出されたP
g(g,t)の値(時刻tにおける電源gからの購入電力量)とに基づいて、シミュレーションケースに含まれる各電源に支払う購入金額の合計値を算出する。算出部113は、算出した電源購入金額の合計値をEPに入力する。
【0129】
ECは、電力小売り事業者が送配電網を使用するために送配電事業者に支払う託送料金である。具体的には、算出部113は、
図11に示す託送データベース150に登録された基本料金および従量料金と、
図8に示す需要想定データベース131に保存された想定される需要電力量とに基づいて、託送料金を算出する。算出部113は、算出した託送料金をECに入力する。
【0130】
EMは、電力市場Mから電力を購入することによって電力小売り事業者が支払う費用(仕入金額、購入金額)である。具体的には、算出部113は、
図12に示す想定スポット価格データベース151に保存された想定されるスポット価格と、式(1)で算出されたP
Jb(a,t)の値(時刻tに電力エリアaにおいて電力市場Mから購入する電力量)とに基づいて、電力市場Mからの購入金額の合計値を算出する。算出部113は、算出した電源購入金額の合計値をEMに入力する。
【0131】
上述の売上、利益、費用の算出手法は一例であり、算出部113は、上述した以外の収入や費用等をさらに考慮してもよい。
【0132】
そして、算出部113は、算出した売上と、利益とに基づいて、各シミュレーションケースごとに、利益率を算出する。利益率は、売上に占める利益の割合である。
【0133】
利益および利益率は、本実施形態における電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標の一例である。電力小売り事業評価指標はこれに限定されるものではなく、売上や、費用等であってもよい。
【0134】
算出部113は、算出した各シミュレーションケースごとの利益率をシミュレーションケースと対応付けて記憶部115に保存する。また、算出部113は、シミュレーションケースごとの利益と利益率とを表示するグラフを生成する。
【0135】
図17は、本実施形態にかかるシミュレーションケースごとの収益性を比較したグラフの一例である。
図17に示すグラフは、横軸が利益、縦軸が利益率を示す。また、
図17に示すグラフは、シミュレーションケースの基準(「基準」に丸が入力された需要家および電源の組み合わせの利益、および利益率)を原点として、基準に対する利益と利益率との差に応じて各シミュレーションケースを示す点C1〜C7(例えば、点C1を、「基準」に丸が入力された需要家および電源の組み合わせに、東北エリア電源3を追加した場合の利益、および利益率とする。他の点C2〜C7も、シミュレーションケースで示された需要家および電源の組み合わせに応じた利益、および利益率とする)を配置する。
【0136】
例えば、点C1が示すシミュレーションケースは、利益と利益率とが共にシミュレーションケースの基準の利益と利益率よりも高い。また、点C7が示すシミュレーションケースは、利益と利益率とが共にシミュレーションケースの基準の利益と利益率よりも低い。算出部113は、
図17のように各シミュレーションケースごとの利益と利益率とを比較することで、電力小売り事業者に対して、より収益性が優れた電源と需要家の組み合わせを選択するための支援をすることができる。
【0137】
従来技術では、需要家の違いによる収益性の変化等を算出していた。これに対して、本実施形態の電力小売り事業評価装置1は、電源の違いによる利益や利益率等を算出するため、より高精度な収益性評価をすることができる。本実施形態の電力小売り事業評価装置1は、異なる電力エリア間で電力の送電が行われる場合に、連系線ごとの送電量の上限を制約条件として考慮する。このため、電力小売り事業者が、複数の電力エリアに所在する需要家または電源を含む電力小売り事業を行う場合においても、高精度な収益性評価をすることができる。
【0138】
また、本実施形態の電力小売り事業評価装置1は、式(3−3)の費用の算出において、託送料金(EC)を含めた費用を算出するため、電力の購入費用のみに基づく収益性評価と比較して、より高精度な収益性評価をすることができる。
【0139】
また、
図17に示すシミュレーションケースごとの収益性の比較に関する表示形式は一例であり、これに限定されるものではない。例えば算出部113は、グラフではなく、表や数値の一覧等を生成しても良い。算出部113は、生成したグラフ等をシミュレーションケースと対応付けて記憶部115に保存する。または、算出部113は、ユーザからの操作を受付部111が受け付けた場合等にグラフ等を生成するものとしてもよい。算出部113が生成したグラフ等は、上述の出力部114が表示装置104に出力する。また、出力部114は、不図示のプリンタ等にグラフ等を出力してもよい。
【0140】
次に、以上のように構成された本実施形態のシミュレーションケースの生成処理の流れについて説明する。
【0141】
図18Aは、本実施形態にかかるシミュレーションケースの生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、
図13に示したメニュー画面の選択肢“シミュレーションケース設定”がユーザによって選択され、
図14,15に示した設定画面が出力部114によって表示された場合に開始する。
【0142】
まず、受付部111は、電力小売り事業者が電力を供給する対象となる需要家、および、当該電力小売り事業者が電力の購入する対象となる電源の組み合わせの入力を受け付ける(S1)。受付部111は、受け付けた需要家と電源との組み合わせを、ケース生成部112に送出する。
【0143】
ケース生成部112は、入力された需要家と電源との組み合わせから、電力小売り事業の収益評価のシミュレーションで用いられるシミュレーションケースを生成する。また、ケース生成部112は、生成したシミュレーションケースを記憶部115に保存する(S2)。
【0144】
次に、本実施形態の収益性評価のシミュレーション処理の流れについて説明する。
図18Bは、本実施形態にかかる収益性評価のシミュレーション処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、
図13に示したメニュー画面の選択肢“シミュレーション実行”がユーザによって選択された場合に開始する。
【0145】
算出部113は、記憶部115に保存された複数のシミュレーションケースから、1つめのシミュレーションケースを選択する(S11)。
【0146】
そして、算出部113は、選択したシミュレーションケースに基づいて、式(1)と式(2−1)〜(2−4)のパラメータP
gmax(g)、P
flowmax(l)、P
d(d,t)、η
a、c
g(g,t)、c
Jb(a,t)、c
Js(a,t)に、記憶部115の各データベースから取得した値を設定する(S12)。
【0147】
次に、算出部113は、式(2−1)〜(2−4)の制約条件を満たした上で、目的関数である式(1)の値(電力購入コスト)が最小となる変数P
g(g,t)、P
Jb(a,t)、P
Js(a,t)、P
flow(l,t)の値を算出する(S13)。
【0148】
また、算出部113は、算出した変数P
g(g,t)、P
Jb(a,t)、P
Js(a,t)、P
flow(l,t)の値と、パラメータP
d(d,t)に入力した時刻tにおける需要家dの需要電力量とに基づいて、
図16に示したシミュレーションケースごとの需給計画を生成する(S14)。
【0149】
次に、算出部113は、シミュレーションケースごとに、式(3−1)〜(3−3)を実行し、評価対象期間における電力小売り事業における売上と、利益と、費用とを算出する(S15)。
【0150】
算出部113は、算出した変数P
g(g,t)、P
Jb(a,t)、P
Js(a,t)、P
flow(l,t)の値と、需給計画のデータまたはグラフと、売上と、利益と、費用とを、シミュレーションケースと対応付けて記憶部115に保存する(S16)。
【0151】
ここで、算出部113は、全てのシミュレーションケースについて、シミュレーション処理が終了したか否かを判断する(S17)。
【0152】
全てのシミュレーションケースについて、シミュレーション処理が終了していない場合(S17“No”)、算出部113は、次のシミュレーションケースを選択する(S18)。
【0153】
全てのシミュレーションケースについて、シミュレーション処理が終了するまで、算出部113は、S12〜S18の処理を繰り返す。
【0154】
全てのシミュレーションケースについて、シミュレーション処理が終了した場合(S17“Yes”)、算出部113は、各シミュレーションケースの売上と、利益とに基づいて、利益率を算出する(S19)。また、算出部113は、利益と利益率とに基づいて、
図17に示すように、シミュレーションケースごとの収益性を比較したグラフを生成する。また、算出部113は、算出した利益率および生成したグラフを、シミュレーションケースと対応付けて記憶部115に保存する。
【0155】
出力部114は、算出部113が算出したシミュレーション結果を表示装置104に出力する(S20)。例えば、出力部114は、シミュレーションケースごとの利益と利益率とを比較したグラフを表示装置104に出力する。また、出力部114は、さらに、シミュレーションケースごとの需給計画を示すグラフをさらに出力しても良い。
【0156】
図18A,18Bでは、シミュレーションケースの設定とシミュレーション処理の実行はそれぞれ別個の処理として開始されるものとしたが、処理の手順はこれに限定されるものではない。例えば、シミュレーションケースの設定とシミュレーション処理の実行は、一連の処理として続けて行われるものであってもよい。
【0157】
また、
図18Bでは、算出部113は、個々のシミュレーションケースごとのループ処理(S12〜S18)が終了した後に、各シミュレーションケースの利益率の算出の処理(S19)を行うものとしたが、利益率の算出もループ処理内で行うものとしてもよい。
【0158】
このように、本実施形態の電力小売り事業評価装置1の記憶部115は、需要想定データベース131と、購入価格データベース140と、供給電力量データベース141とを記憶する。また、受付部111は、需要家と電源との組み合わせの入力を受け付ける。そして、出力部114は、需要家と電源との組み合わせと記憶部115に記憶されたデータベースのデータとに基づいて、組み合わせに含まれた電源から購入した電力を、組み合わせに含まれた需要家に販売した場合における利益と利益率とを、電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標として出力する。このため、本実施形態の電力小売り事業評価装置1によれば、電力小売り事業について、より高精度な収益性評価をすることができる。
【0159】
また、本実施形態の電力小売り事業評価装置1の記憶部115は、販売価格データベース130に需要家の所在する電力エリアを記憶し、購入価格データベース140に電源の所在する電力エリアを記憶することにより、需要家ごとの需要電力量と、電源ごとの前記電力の購入価格と、電源ごとの供給可能な電力量とを地域ごとに記憶する。さらに、記憶部115は、連系線利用計画データと、電力の供給にかかる電力エリアごとの託送料金とを記憶する。このため、本実施形態の電力小売り事業評価装置1によれば、複数の電力エリアに所在する需要家または電源を含む電力小売り事業に対しても、高精度な収益性評価をすることができる。
【0160】
また、本実施形態の電力小売り事業評価装置1の出力部114は、組み合わせに含まれた電源から購入する電力量を変えて複数回算出された電力購入コストのうち、電力購入コストの値が最小となる場合における電源ごとの購入電力量と、連系線別の送電量とを出力する。しかしながら、電力購入コストが最小となる場合の出力に制限するものではなく、電力購入コストの値がより少なくなる場合における電源ごとの購入電力量と、連系線別の送電量とを出力しても良い。
【0161】
本実施形態の電力小売り事業評価装置1の出力部114は、電力エリアごとに記憶された需要家ごとの需要電力量と、電源ごとの電力の購入価格と、電源ごとの供給可能な電力量と、連系線利用計画データとに基づいて、組み合わせに含まれた電源から購入する電力量を変えて複数回算出された電力購入コストのうち、電力購入コストの値がより少なくなる場合における電源ごとの購入電力量と、連系線別の送電量とを出力する。このため、本実施形態の電力小売り事業評価装置1によれば、電力購入コストがより小さくなる需給計画を出力することができる。
【0162】
また、本実施形態の電力小売り事業評価装置1の記憶部115は、はさらに、電力市場Mにおける時刻ごとの想定スポット価格を記憶し、出力部114は、需要家と電源との組み合わせに含まれた電源または電力市場Mから購入した電力を、組み合わせに含まれた需要家または電力市場Mに販売した場合における、利益と利益率とを、電力小売り事業評価指標として出力する。このため、本実施形態の電力小売り事業評価装置1によれば、電力市場Mのとの間の電力の売買取引を含めた利益と利益率を評価することができるため、より高精度な収益性評価をすることができる。
【0163】
なお、本実施形態においては、電力小売り事業者は、複数の電力エリアを跨って電源から需要家へ電力を供給するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、一つの電力エリア内で電源から需要家へ電力を供給する電力小売り事業者に対しても、本実施形態の電力小売り事業評価装置1を適用することができる。
【0164】
(実施形態2)
上述の実施形態1の電力小売り事業評価装置1では、電力小売り事業者が電源または電力市場Mから購入した電力を需要家または電力市場Mに販売することを前提として、収益性を評価するためのシミュレーションを行っていた。本実施形態の電力小売り事業評価装置1は、さらに、電力小売り事業者が分散型電源を需要家または電源に設置した場合における収益性を評価するためのシミュレーションを行う。
【0165】
図19は、実施形態2にかかる分散型電源の一例を示す図である。本実施形態における分散型電源は、PV(Photovoltaics、太陽光発電装置)または蓄電池である。
図19に示すように、電力小売り事業者は、需要家4に、PV50または蓄電池51を設置する。
【0166】
図19に示す送電線41によって電源から送電された電力は、変圧器40によって所定の電圧まで下げられた後に、配電線42を通じて需要家4に供給される。PV50と蓄電池51とは、変圧器40よりも需要家4側に設置される。PV50により発電された電力や、蓄電池51から放電される電力は、配電線42を通じて需要家4に供給される。また、蓄電池51は、送電線41によって電源から送電された電力およびPV50により発電された電力のうち、少なくとも1つ以上を配電線42を通じて取得して、蓄電する。なお、電源から送電された電力は、電力市場Mから購入された電力を含む。
【0167】
図19では、需要家4に対してPV50と蓄電池51の両方が設置されているが、いずれか一方のみが設置されてもよい。
【0168】
また、
図19では、需要家4に対して分散型電源が設置されているが、電源側に蓄電池51が設置される場合もある。ただし、本実施形態においては、電源側にPV50を設置することは想定しないものとする。
【0169】
電力小売り事業者が、送電線41を使用して需要家4に電力を供給する場合、託送料金が発生する。一方、電力小売り事業者が、配電線42を使用して需要家4に電力を供給する場合は、託送料金は発生しない。このため、分散型電源を需要家4に設置することにより、電力小売り事業者が支払う託送料金が減少する。また、蓄電池51を電源に設置することにより、電力需要が少ない時間帯(あるいは、電力の購入金額が他の時間帯と比べて安い時間帯)に蓄電池51に蓄電し、電力の需要量が多い時間帯に当該蓄電された電力を使用することにより、電力の購入費用が減少する。
【0170】
このように分散型電源を設置することにより、電力小売り事業における収益性が変化する。このため、本実施形態の電力小売り事業評価装置1は、
図19に示すように分散型電源を設置した場合における、電力小売り事業の収益性を評価するシミュレーションを行う。
【0171】
また、本実施形態の電力小売り事業評価装置1は、2種類の収益性評価のシミュレーションを実行可能である。1つめは、分散型電源を設置したことによる増分利益を含めて、電力小売り事業の収益性を評価するためのシミュレーションである。2つめは、分散型電源を設置したことによる増分利益に加えて、分散型電源を設置した場合における分散型電源の購入価格(初期投資、初期費用)を回収するためのコストと、初期投資の回収にかかる期間とを評価するためのシミュレーションである。以下、1つめのシミュレーションを第1のシミュレーション、2つめのシミュレーションを第2のシミュレーションと称する。
【0172】
次に、本実施形態における電力小売り事業評価装置1の構成を説明する。電力小売り事業評価装置1のハードウェア構成は、
図1で説明した実施形態1のハードウェア構成と同様である。
【0173】
図20は、本実施形態にかかる電力小売り事業評価装置1の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図20に示すように、本実施形態の電力小売り事業評価装置1は、受付部1111と、ケース生成部1112と、算出部1113と、出力部1114と、記憶部1115とを備える。
【0174】
記憶部1115は、例えばHDD103によって構成される。記憶部115は、電力エリアデータベース(DB)121と、連系線データベース(DB)122と、連系線利用計画データベース(DB)123と、販売価格データベース(DB)130と、需要想定データベース(DB)131と、購入価格データベース(DB)140と、供給電力量データベース(DB)141と、託送データベース(DB)150と、想定スポット価格データベース(DB)151と、PV属性データベース(DB)171と、PV想定出力比データベース(DB)172と、蓄電池属性データベース(DB)173と、を記憶する。
【0175】
電力エリアデータベース121と、連系線データベース122と、連系線利用計画データベース123と、販売価格データベース130と、需要想定データベース131と、購入価格データベース140と、供給電力量データベース141と、託送データベース150と、想定スポット価格データベース151とは、実施形態1と同様である。
【0176】
また、PV属性データベース171と、PV想定出力比データベース172と、蓄電池属性データベース173とは、本実施形態における需要家または電源に設置される分散型電源による電力供給についての情報の一例である。
【0177】
図21は、本実施形態にかかるPV属性データベース171のテーブル構成の一例を示す図である。
図21に示すように、PV属性データベース171は、PVNo.と、PV50ごとの想定価格と、償却期間とを対応付けて保存する。
【0178】
項目「PVNo.」は、PV50を識別する番号である。PV属性データベース171は、番号に限らず、PV50を特定できるコード等を保存してもよい。
【0179】
項目「想定価格」は、PV50の定格容量1kWあたりの想定される購入価格が登録される項目である。想定価格は、本実施形態における分散型電源の初期費用の一例である。
【0180】
また、項目「償却期間」は、PV50の会計上の償却期間が登録される項目である。償却期間は、例えば、固定資産の減価償却において定められた法定耐用年数であってもよい。
【0181】
図22は、本実施形態にかかるPV想定出力比データベース172のテーブル構成の一例を示す図である。
図22に示すように、PV想定出力比データベース172は、日付と、時刻と、各電力エリアごとのPV想定出力比と、を対応付けて保存する。
【0182】
PV想定出力比は、PV50の定格容量に対して、PV50が発電すると想定される発電量の割合である。PV想定出力比の単位は、kWh/kWとする。
【0183】
PV50の定格容量は、PV50が発電可能な最大発電量である。PV50の定格容量は、後述するシミュレーション実行時にユーザにより設定される。あるいは、PV50の定格容量は、後述する算出部1113により、算出される。定格容量についての詳細は後述する。
【0184】
図22に示す項目「日付」および「時刻」に設定された日時は、未来の日付および時刻である。また、当該日時は、後述の算出部1113により実行されるシミュレーションの電力小売り事業の収益性を評価する評価対象期間である。
【0185】
また、PV想定出力比は、PV50が設置される電力エリアによって異なる。これは、日照条件等が地域によって異なるためである。例えば、日付“2016/4/1”の時刻“4:30”から“5:00”の間の30分間における、“北海道エリアPV1”のPV想定出力比は“0.009kWh/kW”である。
【0186】
各PV50がいずれの電力エリアに設置されるかについては、ユーザによって、後述の設定画面から入力される。
【0187】
PV想定出力比データベース172に保存されるPV想定出力比のデータは、例えば1年前のPV出力比のデータの日付を変更したものでもよいし、天候等の要因に基づいて予め算出されたものであってもよい。
【0188】
図23は、本実施形態にかかる蓄電池属性データベース173のテーブル構成の一例を示す図である。
図23に示すように、蓄電池属性データベース173は、蓄電池No.と、蓄電池51ごとの充電レートと、放電レートと、想定価格と、償却期間とを対応付けて保存する。
【0189】
項目「蓄電池No.」は、蓄電池51を識別する番号である。蓄電池属性データベース173は、番号に限らず、蓄電池51を特定できるコード等を保存してもよい。
【0190】
項目「充電レート」は、蓄電池51の充電レートが登録される項目である。充電レートは、電池容量に対する充電時の電流の相対的な比率である。充電レートの値が大きい蓄電池51ほど、より速く充電をすることができる。
【0191】
項目「放電レート」は、蓄電池51の放電レートが登録される項目である。放電レートは、電池容量に対する放電時の電流の相対的な比率である。
【0192】
項目「想定価格」は、蓄電池51の定格容量1kWあたりの想定される購入価格が登録される項目である。想定価格は、本実施形態における分散型電源の初期費用の一例である。
【0193】
また、項目「償却期間」は、蓄電池51の会計上の償却期間が登録される項目である。償却期間は、例えば、固定資産の減価償却において定められた法定耐用年数であってもよい。
【0194】
なお、上述のPV属性データベース171、PV想定出力比データベース172、蓄電池属性データベース173に保存されるデータおよび値は一例であり、これに限定されるものではない。
【0195】
図20に戻り、本実施形態の出力部1114は、実施形態1と同様の機能を備えた上で、シミュレーション対象の需要家と電源と分散型電源との組み合わせを設定するための設定画面を表示装置104に出力する。設定画面の詳細については、ケース生成部1112の説明で後述する。
【0196】
また、本実施形態の出力部1114は、上述の第1のシミュレーションと第2のシミュレーションのいずれを実行するかについての選択画面を表示装置104に出力する。例えば、
図13に示した実施形態1のメニュー画面に、第1のシミュレーションと第2のシミュレーションのいずれかを指定可能な機能を追加してもよい。
【0197】
また、本実施形態の出力部1114は、後述する算出部1113によって算出される評価対象期間における分散型電源の設置による収益の変動量(増分利益)と、収益が増加する分散型電源の定格容量と、分散型電源の設置にかかる初期費用の回収期間とを出力する。
【0198】
図20に戻り、本実施形態の受付部1111は、実施形態1と同様の機能を備えた上で、需要家と電源と分散型電源との組み合わせの入力を受け付ける。具体的には、受付部1111は、出力部1114によって表示装置104に出力された設定画面に入力された需要家と電源と分散型電源との組み合わせの入力を受け付ける。また、受付部1111は、出力部1114によって表示装置104に出力された設定画面に入力された分散型電源の組み合わせのパターンと、分散型電源の定格容量とを、受け付ける。設定画面の詳細については、ケース生成部1112の説明で後述する。
【0199】
また、受付部1111は、上述の第1のシミュレーションと第2のシミュレーションのいずれを実行するかについての、ユーザの選択を受け付ける。
【0200】
本実施形態のケース生成部1112は、実施形態1と同様の機能を備えた上で、さらに、受付部1111が受け付けた需要家と電源と分散型電源の組み合わせと、分散型電源の組み合わせパターンとから、シミュレーションケースを生成する。
【0201】
図24は、本実施形態にかかるシミュレーション対象の電源と分散型電源との組み合わせを設定するための設定画面の一例を示す図である。
図24に示す「電源No.」、「電源名称」、「基準」、「追加/削除」については、
図14で説明した実施形態1の電源設定画面と同様である。本実施形態におけるシミュレーション対象の電源と分散型電源との組み合わせを設定するための設定画面(以下、電源および分散型電源の設定画面という)は、実施形態1の電源設定画面の入力欄に加えて、入力欄「分散型電源」を含む。
【0202】
図24に示す電源および分散型電源の設定画面の入力欄「分散型電源」は、分散型電源を設置する電源の設定を受け付ける項目である。例えば、ユーザにより、電源および分散型電源の設定画面のいずれかの行に入力欄「分散型電源」に丸が入力された場合、当該行に対応する電源に、分散型電源が設置される組み合わせが後述の受付部1111により受け付けられる。
図24に示す例では、いずれの行にも丸が入力されていないため、電源に分散型電源は設置されないことを示す。
【0203】
また、
図25は、本実施形態にかかるシミュレーション対象の需要家と分散型電源との組み合わせを設定するための設定画面の一例を示す図である。
図25に示す「需要家No.」、「需要家名称」、「基準」、「追加/削除」については、
図15で説明した実施形態1の需要家設定画面と同様である。本実施形態におけるシミュレーション対象の需要家と分散型電源との組み合わせを設定するための設定画面(以下、需要家および分散型電源の設定画面という)は、実施形態1の需要家設定画面の入力欄に加えて、入力欄「分散型電源」を含む。
【0204】
図25に示す需要家および分散型電源の設定画面の入力欄「分散型電源」は、分散型電源を設置する需要家の設定を受け付けるための欄である。例えば、
図25に示す例では、“東京エリア需要家2”に分散型電源が設置される組み合わせが、後述の受付部1111により受け付けられる。
【0205】
また、
図26は、本実施形態にかかる分散型電源の組み合わせのパターンを設定するための設定画面の一例を示す図である。
図26に示すように、分散型電源の組み合わせのパターンを設定するための設定画面は、表示欄「パターン」と、入力欄「PVNo.」と「蓄電池No.」とを含む。
【0206】
表示欄「パターン」は、分散型電源の組み合わせの数が表示される欄である。
図26に示される設定画面にユーザが入力する組み合わせの数に応じて、出力部1114が、番号を表示してもよい。または、予めユーザが設定可能なパターン数の上限までの数が、出力部1114によって表示欄「パターン」に表示されてもよい。
【0207】
入力欄「PVNo.」と「蓄電池No.」とは、分散型電源として導入するPV50と蓄電池51の組み合わせを受け付けるための欄である。本実施形態では、当該組み合わせ毎にパターンを設定する。PVNo.は、分散型電源として導入するPV50の種別であって、
図21に示したPV属性データベース171の「PVNo.」に対応する。蓄電池No.は、分散型電源として導入する蓄電池51の種別であって、
図23に示した蓄電池属性データベース173の「蓄電池No.」に対応する。
【0208】
例えば、
図26に示す“パターン1”は、
図21に示すPVNo.“1”のPV50と、
図23に示す蓄電池No.“1”の蓄電池51との組み合わせが、分散型電源として導入されるパターンである。各パターンには、PV50と、蓄電池51との両方が常に含まれなくともよく、蓄電池No.とPVNo.のいずれか一方のみが設定されてもよい。
【0209】
図24,25に示した電源および分散型電源の設定画面、需要家および分散型電源の設定画面に設定された電源または需要家との分散型電源の組み合わせでは、分散型電源の種類(PV50または蓄電池51)が特定されていない。そこで、
図26に示される設定画面で設定されたパターンによって、各電源または需要家に組み合わされる分散型電源の種類の組み合わせが設定される。本実施形態においては、
図26で設定されたパターン(分散型電源の組み合わせ)の各々について、シミュレーションを行う例とする。
【0210】
また、
図27は、本実施形態にかかる分散型電源の定格容量を設定するための設定画面の一例を示す図である。
図27に示すように、当該設定画面は、表示欄「PV/蓄電池No.」と、入力欄「PV容量」と、「蓄電池容量」とを含む。
【0211】
表示欄「PV/蓄電池No.」は、それぞれ、
図21,23に示したPV属性データベース171と、蓄電池属性データベース173の「PVNo.」と「蓄電池No.」が出力部1114によって表示される項目である。
【0212】
入力欄「PV容量」は、「PV/蓄電池No.」に設定されたPVNo.で識別されるPV50の定格容量の設定を受け付ける欄である。また、入力欄「蓄電池容量」は、「PV/蓄電池No.」に設定された蓄電池No.で識別される蓄電池51の定格容量の設定を受け付ける欄である。ユーザは、PV50と蓄電池51との定格容量を当該設定画面で入力することにより、定格容量を自由に設定して収益性を評価するシミュレーションの結果を得ることができる。
【0213】
本実施形態では
図24〜27に示す設定画面を個別の画面として説明したが、これらは同一画面上に表示されてもよい。また、
図24〜27に示す設定画面の構成は一例であり、ユーザが電源と需要家と分散型電源の組み合わせにかかるシミュレーションケースを設定可能な画面であれば、表示欄および入力欄はこれらに限定されるものではない。
【0214】
図20に戻り、本実施形態の算出部1113は、生成されたシミュレーションケースに基づいて、シミュレーションを実行し、電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標を算出する。具体的には、算出部1113は、ユーザがシミュレーション実行操作をしたことを受付部1111から通知された場合に、電力小売り事業の電力購入コストを最小化するための最適化モデル(最適化問題)の目的関数を用いたシミュレーションを実行する。電力小売り事業の電力購入コストは、本実施形態における電力の購入費用の一例である。
【0215】
また、本実施形態では、算出部1113は、生成されたシミュレーションケースに基づいて、分散型電源を電源または需要家に設置した場合における収益性の変化を含めた電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標を算出する。
【0216】
算出部1113は、シミュレーションにおいて、下記の式(4−1)または式(4−2)と、式(5−1)〜(5−17)とを用いる。
【0217】
具体的には、算出部1113は、式(5−1)〜(5−17)に示される制約条件下で、式(4−1)または式(4−2)の目的関数の値を最小化する最適化問題(線形計画問題)を解く。例えば、算出部1113は、単体法や内点法等の手法を用いてもよい。
【0219】
式(4−1)、式(4−2)の説明において、実施形態1の式(1)および式(2−1)〜(2−4)と同様の変数およびパラメータについては説明を省略する。
【0220】
式(4−1)のP
PV(d,t)、P
rest(d,t)、Q
dchg(d,t)、Q
ddis(d,t)は最適化問題の解となる変数である。
【0221】
変数P
PV(d,t)は、需要家dに設置したPV50の、時刻tにおける発電出力量である。
【0222】
変数P
rest(d,t)は、需要家dに設置したPV50の、時刻tにおける出力抑制電力である。出力抑制電力は、PV50から出力された電力が、
図19に示す変圧器40を超えて、送電線41へ送電されることを抑制するために必要とされる電力である。PV50から出力された電力が、
図19に示す変圧器40を超えて、送電線41へ送電されることを「逆潮流」といい、電力小売り事業者は、逆潮流を発生させないように分散型電源の出力量を管理しなければならない。
【0223】
変数Q
dchg(d,t)は、需要家dに設置した蓄電池51の時刻tにおける充電電力量である。
【0224】
変数Q
ddis(d,t)は、需要家dに設置した蓄電池51の時刻tにおける放電電力量である。
【0225】
P
PV(d,t)、P
rest(d,t)、Q
dchg(d,t)、Q
ddis(d,t)の値の単位はkWhである。
【0226】
また、c
w(d)は、需要家dの託送料金の1kWhあたりの単価が、算出部1113によって、入力されるパラメータである。算出部1113は、
図11に示す託送データベース150から取得した託送料金の従量料金の1kWhあたりの単価をc
w(d)に入力する。
【0227】
式(4−2)のW
PV(d)、W
SBd(d)、W
SBg(g)は最適化問題の解となる変数である。
【0228】
変数W
PV(d)は、需要家dに設置されたPV50の定格容量である。また、変数W
SBd(d)は、需要家dに設置された蓄電池51の定格容量である。変数W
SB(g)は、電源gに設置された蓄電池51の定格容量である。なお、式(4−2)を用いた第2のシミュレーションでは、分散型電源の定格容量は算出部1113により最適化問題の解として出力されるため、
図27に示す設定画面で設定された分散型電源の定格容量は使用されない。
【0229】
また、式(4−2)のC
PV、C
SB、T
PV、T
SB、Tは、算出部1113による値の入力を受け付けるパラメータである。
【0230】
パラメータC
PVは、
図21に示すPV属性データベース171に登録されたPV50の想定価格である。
【0231】
パラメータC
SBは、
図23に示す蓄電池属性データベース173に登録された蓄電池51の想定価格である。
【0232】
パラメータT
PVは、
図21に示すPV属性データベース171に登録されたPV50の償却期間である。
【0233】
パラメータT
SBは、
図23に示す蓄電池属性データベース173に登録された蓄電池51の償却期間である。
【0234】
パラメータTは、電力小売り事業の収益性を評価する評価対象期間である。例えば、パラメータTには、評価対象期間が年単位で入力される。
【0235】
式(4−1)および式(4−2)は、両方とも、電力小売り事業における電力購入コストの金額を示す目的関数である。算出部1113は、第1のシミュレーションでは式(4−1)を用い、第2のシミュレーションでは式(4−2)を用いる。
【0236】
式(4−1)は、分散型電源を設置したことによる評価対象期間における託送料金の支払額の変化量を含む電力小売り事業の電力購入コストの値を示す式である。
【0237】
一方、式(4−2)は、式(4−1)に加えて、さらに、評価対象期間における、分散型電源の設置にかかる初期費用の投資回収コストを含む電力小売り事業の電力購入コストの値を示す式である。
【0238】
まず、式(4−1)について説明する。式(4−1)の第1項および第2項は、実施形態1の式(1)と同様である。式(4−1)の第3項は、評価対象期間における分散型電源を設置したことによる託送料金の支払額の変化量を示す。
【0239】
次に、式(4−2)について説明する。式(4−2)の第1項および第2項は、実施形態1の式(1)と同様である。また式(4−2)の第5項は、式(4−1)の第3項と同様である。
【0240】
式(4−2)の第3項は、各電源に設置された蓄電池51の評価対象期間における投資回収コストの合計値を示す。投資回収コストは、分散型電源の償却期間で投資コスト(分散型電源の初期投資)を回収するために、1年当たりに必要な金額である。また、式(4−2)の第4項は、各需要家に設置されたPV50の評価対象期間における投資回収コストと、各需要家に設置された蓄電池51の評価対象期間における投資回収コストとの、合計値を示す。
【0241】
次に、式(5−1)〜(5−17)について説明する。
【0243】
以下、式(5−1)〜(5−17)に含まれる変数およびパラメータについて説明する。実施形態1の式(1)および式(2−1)〜(2−4)、式(4−1)、式(4−2)と同様の変数およびパラメータについては説明を省略する。
【0244】
S
d(d,t)、Q
gchg(g,t)、Q
gdis(g,t)、S
g(g,t)は最適化問題の解となる変数である。
【0245】
変数S
d(d,t)は、需要家dに設置した蓄電池51の時刻tにおける蓄電残量である。変数Q
gchg(g,t)は、電源gに設置した蓄電池51の時刻tにおける充電電力量である。変数Q
gdis(g,t)は、電源gに設置した蓄電池51の時刻tにおける放電電力量である。変数S
g(g,t)は、電源gに設置した蓄電池51の時刻tにおける蓄電残量である。
【0246】
また、P
cont(d)、η
chg、η
dis、R
chg、R
dis、η
PV(t)は、算出部1113による値の入力を受け付けるパラメータである。
【0247】
パラメータP
cont(d)は、需要家dの契約電力量である。算出部1113は、
図7に示す販売価格データベース130から取得した需要家dの契約電力量をパラメータP
cont(d)に入力する。
【0248】
また、パラメータη
chgは、蓄電池51の充電損失率である。また、パラメータη
disは、蓄電池51の放電損失率である。蓄電池51の充電損失率および放電損失率の値は、定数で定められてもよいし、
図23に示す蓄電池属性データベース173にさらに登録されても良い。
【0249】
また、パラメータR
chgは、蓄電池51ごとの充電レートである。また、パラメータR
disは、蓄電池51ごとの放電レートである。
【0250】
また、パラメータη
PV(t)は、PV50ごとの時刻tにおける定格容量に対する発電出力比である。算出部1113は、
図22に示すPV想定出力比データベース172から取得した発電出力比を、パラメータη
PV(t)に入力する。
【0251】
また、上述したように、算出部1113が、式(4−2)によって第2のシミュレーションを実行する場合は、W
PV(d)、W
SBd(d)、W
SBg(g)は変数である。一方、算出部1113が、式(4−1)によって第1のシミュレーション処理を実行する場合は、W
PV(d)、W
SBd(d)、W
SBg(g)は算出部1113による値の入力を受け付けるパラメータである。この場合、W
PV(d)には、
図27に示す設定画面で設定されたPV50の定格容量の値が算出部1113によって入力される。また、W
SBd(d)、W
SBg(g)には、
図27に示す設定画面で設定された蓄電池51の定格容量の値が算出部1113によって入力される。
【0252】
式(5−1)は、電力エリアごとの需給バランスが一致するという制約条件を示す式である。また、式(5−2)は、需要家ごとかつ時刻ごとに逆潮流を発生させないという制約条件を示す式である。式(5−3)は、需要家ごとかつ時刻ごとの契約電力量を制限する制約条件を示す式である。
【0253】
また、式(5−5)は、蓄電池51ごとかつ時刻ごとの、電源側に設置された蓄電池51の容量の制約条件を示す式である。式(5−6)は、蓄電池51ごとかつ時刻ごとの、電源側に設置された蓄電池51のエネルギー保存則による制約条件を示す式である。式(5−7)は、蓄電池51ごとかつ時刻ごとの、電源側に設置された蓄電池51の放電電力量の制約条件を示す式である。式(5−8)は、蓄電池51ごとかつ時刻ごとの、電源側に設置された蓄電池51の充電電力量の制約条件を示す式である。
【0254】
また、式(5−9)は、蓄電池51ごとかつ時刻ごとの、蓄電池51の順潮流不可の制約条件を示す式である。順潮流不可の制約とは、蓄電池51の時刻単位あたりに充電する電力量から放電する電力量を減算した値が、当該蓄電池51が設置された電源の、時刻単位あたりに発電する電力量を越えてはいけないという制約条件である。
【0255】
式(5−12)は、PV50ごとかつ時刻ごとの、需要家側に設置されたPV50の容量の制約条件を示す式である。また、式(5−13)は、PV50ごとかつ時刻ごとの、需要家側に設置されたPV50の抑制電力量の制約条件を示す式である。
【0256】
また、式(5−14)は、蓄電池51ごとかつ時刻ごとの、需要家側に設置された蓄電池51の容量の制約条件を示す式である。また、式(5−15)は、蓄電池51ごとかつ時刻ごとの、需要家側に設置された蓄電池51のエネルギー保存則による制約条件を示す式である。式(5−16)は、蓄電池51ごとかつ時刻ごとの、需要家側に設置された蓄電池51の放電電力量の制約条件を示す式である。式(5−17)は、需要家側に設置された蓄電池51の充電電力量の制約条件を示す式である。
【0257】
また、式(5−4)と、式(5−10)と、式(5−11)とは、それぞれ実施形態の式(2−2)、式(2−3)、式(2−4)と同様であるため、説明を省略する。
【0258】
算出部1113は、上述の式(5−1)〜(5−17)に示される制約条件下で、式(4−1)または式(4−2)の目的関数の値を最小化する処理を行って変数の値を算出する。また、算出部1113は、各シミュレーションケースごとの算出結果をシミュレーションケースと対応付けて記憶部115に保存する。
【0259】
また、算出部1113は、算出した変数P
g(g,t)、P
Jb(a,t)、P
Js(a,t)、P
flow(l,t)、P
PV(d,t)、P
rest(d,t)、Q
dchg(d,t)、Q
ddis(d,t)、S
d(d,t)、Q
gchg(g,t)、Q
gdis(g,t)、S
g(g,t)、W
PV(d)、W
SBd(d)、W
SBg(g)の値と、パラメータP
d(d,t)に入力した時刻tにおける需要家dの需要電力量と、評価対象期間における各シミュレーションケースごとの電力の需給計画を生成する。本実施形態の算出部1113は、実施形態1の需給計画に加えて、各時刻におけるPV50による発電量と、出力抑制電力と、蓄電池51による充電および放電される電力量等を含む。
【0260】
そして、算出部1113は、実施形態1で説明した式(3−1)〜(3−3)によって、シミュレーションケースごとに評価対象期間における電力小売り事業における売上、利益、費用を算出する。
【0261】
また、上述のように、本実施形態の算出部1113は、上述の式(4−1)または式(4−2)によって、分散型電源を設置したことによる各シミュレーションケースごとの増分利益を算出する。増分利益は、最適化問題を解くための目的関数として式(4−1)または式(4−2)を用いるとした上で、分散型電源を設置しない条件で最適化問題を解いた場合と、分散型電源を設置した条件で最適化問題を解いた場合と、における目的関数の値の差分である。例えば、第1のシミュレーションの場合は、分散型電源を設置することによって託送料金の支払額が減少し、増分利益が発生する。また、第2のシミュレーションの場合は、分散型電源の投資コスト(分散型電源の初期投資)を予め電力購入コストとして含めているため、増分利益は分散型電源の投資コストを除いた金額となる。
【0262】
図28は、上述の式(4−1)によって第1のシミュレーション処理を実行した場合の、本実施形態にかかる分散型電源の組み合わせパターンごとに想定される増分利益を示す表の一例である。
図28に示すように、算出部1113は、
図26に示す設定画面で設定されたPV50と蓄電池51との組み合わせパターンごとに想定される増分利益と、当該増分利益の増加金額に対応するPV50または蓄電池51の定格容量とを表示する表を生成する。例えば、
図26のパターン“1”は、“PV No.”が“1”で、“蓄電池 No.”が“1”である。そこで、表には、“PV No.”が“1”の場合の想定価格“25万/kW”(
図21)と、“蓄電池 No.”が“1”の場合の想定価格“20万/kWh”(
図23)と、の場合の増分利益(300万円/年)と、PV50の定格容量(150kW)と、蓄電池51の定格容量(10kWh)と、投資額(PV25万円/kW×150kW+蓄電池20万円/kWh×10kWh=3950万円)が表示される。
図28に示される表の他の欄も、パターンに応じて割り当てられるものとして説明を省略する。
【0263】
図28に示す例はある1つの需要家に分散型電源が設置された場合の増分利益を示すので、算出部1113は、当該表を需要家ごとに生成する。また、電源に分散型電源が設置された場合については、算出部1113は、蓄電池51のみを表示した増分利益と、定格容量とを表示する表を生成する。
【0264】
さらに、本実施形態の算出部1113は、上述の式(4−1)によって第1のシミュレーションの処理を実行した場合は、シミュレーションケースごとに評価対象期間における分散型電源の投資回収期間を算出する。具体的には、算出部1113は、式(4−1)で算出した分散型電源の投資コストと、算出した増分利益とに基づいて、増分利益の累積額が投資コストの金額と同額になる年数を算出する。
【0265】
本実施形態においては、利益および利益率に加えて、分散型電源を設置したことによる増分利益と、分散型電源の投資回収期間とを電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標とする。
【0266】
例えば、算出部1113は、投資回収期間を示すグラフを生成してもよい。
図29は、本実施形態にかかる投資回収期間を示すグラフの一例として、
図26のパターン“1”の場合を示したものである。
図29に示すように、定格容量がPV150kW、蓄電池10kWhの分散型電源を需要家に設置した場合における初期投資額(投資回収コスト)は
図28の通り、3950万円である。当該シミュレーションケースにおいて、算出部1113は、増分利益は1年当たり300万円であると算出している。この場合、
図29に示すように、投資回収期間は13.2年である。
【0267】
また、算出部1113は、PV50と蓄電池51との組み合わせのパターンごとに、投資回収期間を比較する表を生成してもよい。
図30は、本実施形態にかかる投資回収期間を示す表の一例である。
図30に示すように、算出部1113は、
図26に示す設定画面で設定されたPV50と蓄電池51との組み合わせパターンごとに、算出した投資回収期間の年数を表示する表を生成する。
【0268】
また、
図31は、本実施形態にかかる投資回収期間を示すグラフの他の一例である。
図31に示す横軸の“PV単価”は、
図21に示すPV属性データベース171に登録されたPV50ごとの想定価格である。また、
図31に示す奥行方向の軸の“蓄電池単価”は、
図23に示す蓄電池属性データベース173に登録された蓄電池51ごとの想定価格である。また、
図31に示す縦軸の“投資回収期間”は、算出部1113が算出した投資回収期間の年数である。
【0269】
また、
図32は、本実施形態にかかる分散型電源の組み合わせパターンごとに想定される増分利益を示す表の他の一例である。具体的には、
図32は、上述の式(4−2)によって第2のシミュレーションの処理を実行した場合の、本実施形態にかかる分散型電源の組み合わせパターンごとに想定される増分利益を示す。
図32に示すように、算出部1113は、
図26に示す設定画面で設定されたPV50と蓄電池51との組み合わせパターンごとに算出される評価対象期間における増分利益の合計値と、当該増分利益の増加金額に対応するPV50または蓄電池51の容量とを表示する表を生成する。例えば、
図32のパターン“1”は、“PV No.”が“1”で、“蓄電池 No.”が“1”である。そこで、表には、“PV No.”が“1”の場合の想定価格“25万/kW”(
図21)と、“蓄電池 No.”が“1”の場合の想定価格“20万/kWh”(
図23)と、の場合の増分利益(0円)と、PV50の最適容量(0kW)と、蓄電池51の最適容量(0kWh)と、が表示される。
図32に示される表の他の欄も、パターンに応じて割り当てられるものとして説明を省略する。
【0270】
上述の式(4−2)では、分散型電源の投資コストを予め電力購入コストとして含めている。このため、
図32では、初期投資額を除いた増分利益の金額が表示される。
【0271】
図32に示す例はある1つの需要家に分散型電源が設置された場合の増分利益を示すので、算出部1113は、当該表を需要家ごとに生成する。また、電源に分散型電源が設置された場合については、算出部1113は、蓄電池51のみを表示した増分利益と、定格容量とを表示する表を生成する。
【0272】
また、算出部1113は、利益と利益率とに基づいて、実施形態1と同様に、シミュレーションケースごとの収益性を比較したグラフを生成してもよい。
【0273】
算出部1113は、
図28〜32に示す生成したグラフまたは表を、シミュレーションケースと対応付けて記憶部1115に保存する。または、算出部1113は、ユーザからの操作を受付部1111が受け付けた場合等にグラフ等を生成するものとしてもよい。算出部1113が生成したグラフ等は、上述の出力部1114が表示装置104に出力する。また、出力部1114は、不図示のプリンタ等にグラフ等を出力してもよい。
【0274】
図28〜32に示すグラフおよび表の表示形式は一例であり、これに限定されるものではない。
【0275】
次に、以上のように構成された本実施形態のシミュレーションケースの生成処理の流れについて説明する。
【0276】
図33は、本実施形態にかかるシミュレーションケースの生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、
図13に示したメニュー画面の選択肢“シミュレーションケース設定”がユーザによって選択され、
図24〜27に示した設定画面が出力部1114によって表示された場合に開始する。
【0277】
まず、受付部1111は、需要家と電源と分散型電源との組み合わせの入力を受け付ける(S21)。また、この場合に、受付部1111は、分散型電源の組み合わせのパターンと、分散型電源の定格容量とを受け付ける。受付部1111は、受け付けた需要家と電源との組み合わせと、分散型電源の組み合わせのパターンと、分散型電源の定格容量とを、ケース生成部1112に送出する。
【0278】
ケース生成部1112は、入力された需要家と電源と分散型電源との組み合わせと、分散型電源の組み合わせのパターンとから、電力小売り事業の収益評価のシミュレーションで用いられるシミュレーションケースを生成する。また、ケース生成部1112は、生成したシミュレーションケースを記憶部1115に保存する(S22)。
【0279】
次に、本実施形態の収益性評価のシミュレーション処理の流れについて説明する。
図34は、本実施形態にかかる収益性評価のシミュレーション処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、
図13に示したメニュー画面の選択肢“シミュレーション実行”がユーザによって選択された場合に開始する。また、
図34は、算出部1113が、式(4−1)に基づく第1のシミュレーションを実行する場合の流れを示す。
【0280】
算出部1113は、記憶部1115に保存された複数のシミュレーションケースから、1つめのシミュレーションケースを選択する(S31)。
【0281】
そして、算出部1113は、選択したシミュレーションケースに基づいて、式(4−1)と式(5−1)〜(5−17)のパラメータP
gmax(g)、P
flowmax(l)、P
d(d,t)、P
cont(d)、η
a、η
chg、η
dis、R
chg、R
dis、η
PV(t)、c
g(g,t)、c
Jb(a,t)、c
Js(a,t)、c
w(d)に、記憶部1115の各データベースから取得した値を設定する。また、算出部1113は、W
PV(d)、W
SBd(d)、W
SBg(g)に、
図27に示す設定画面で設定されたPV50または蓄電池51の定格容量の値を設定する(S32)。
【0282】
次に、S33のパラメータの設定の処理において、算出部1113は、式(5−1)〜(5−17)の制約条件を満たした上で、目的関数である式(4−1)の値(電力購入コスト)が最小となる変数P
g(g,t)、P
Jb(a,t)、P
Js(a,t)、P
flow(l,t)、P
PV(d,t)、P
rest(d,t)、Q
dchg(d,t)、Q
ddis(d,t)、S
d(d,t)、Q
gchg(g,t)、Q
gdis(g,t)、S
g(g,t)、の値を算出する(S33)。また、算出部1113は、分散型電源を設置しない場合における式(4−1)の値を算出し、各シミュレーションケースごとの式(4−1)の値との差を算出することにより、増分利益を算出する。
【0283】
また、算出部1113は、S33の処理で算出した各変数の値と、パラメータP
d(d,t)に入力した時刻tにおける需要家dの需要電力量とに基づいて、シミュレーションケースごとの需給計画を生成する(S34)。
【0284】
次に、算出部1113は、シミュレーションケースごとに、実施形態1で説明した式(3−1)〜(3−3)を実行し、評価対象期間における電力小売り事業における売上と、利益と、費用とを算出する(S35)。
【0285】
算出部1113は、算出した各変数の値と、需給計画のデータまたはグラフと、売上と、利益と、費用とを、シミュレーションケースと対応付けて記憶部1115に保存する(S36)。また、算出部1113は、
図28に示すように、分散型電源を設置したことによる増分利益を示す表またはグラフを生成し、シミュレーションケースと対応付けて記憶部1115に保存する。
【0286】
ここで、算出部1113は、全てのシミュレーションケースについて、シミュレーション処理が終了したか否かを判断する(S37)。
【0287】
全てのシミュレーションケースについて、シミュレーション処理が終了していない場合(S37“No”)、算出部1113は、次のシミュレーションケースを選択する(S38)。
【0288】
全てのシミュレーションケースについて、シミュレーション処理が終了するまで、算出部1113は、S32〜S38の処理を繰り返す。
【0289】
全てのシミュレーションケースについて、シミュレーション処理が終了した場合(S37“Yes”)、算出部1113は、各シミュレーションケースの売上と、利益とに基づいて、利益率を算出する(S39)。また、算出部1113は、利益と利益率とに基づいて、実施形態1と同様に、シミュレーションケースごとの収益性を比較したグラフを生成してもよい。
【0290】
また、算出部1113は、分散型電源の初期投資額と、1年当たりの増分利益とに基づいて、増分利益の累積額が初期投資額と同額になる年数を算出することにより、分散型電源の投資回収期間(初期費用の回収期間)を算出する(S40)。また、算出部1113は、
図29〜31に示すように、投資回収期間を示すグラフまたは表を生成する。また、算出部1113は、算出した利益率、投資回収期間、および生成したグラフまたは表を、シミュレーションケースと対応付けて記憶部1115に保存する。
【0291】
出力部1114は、算出部1113が算出したシミュレーション結果を表示装置104に出力する(S41)。例えば、出力部1114は、シミュレーションケースごとの利益と利益率とを比較したグラフ、分散型電源を設置したことによる増分利益を示す表またはグラフ、分散型電源の投資回収期間を示すグラフまたは表を出力する。また、出力部1114は、さらに、シミュレーションケースごとの需給計画を示すグラフをさらに出力しても良い。
【0292】
図33,34では、シミュレーションケースの設定とシミュレーション処理の実行はそれぞれ別個の処理として開始されるものとしたが、処理の手順はこれに限定されるものではない。例えば、シミュレーションケースの設定とシミュレーション処理の実行は、一連の処理として続けて行われるものであってもよい。
【0293】
また、
図34では、算出部1113は、個々のシミュレーションケースごとのループ処理(S32〜S38)が終了した後に、各シミュレーションケースの利益率の算出の処理(S39)および分散型電源の初期投資の回収期間の算出の処理(S40)を行うものとしたが、利益率の算出もループ処理内で行うものとしてもよい。
【0294】
また、算出部1113が第2のシミュレーションを実行する場合は、式(4−2)においてはW
PV(d)、W
SBd(d)、W
SBg(g)はパラメータではないので、S32のパラメータの設定の処理において、算出部1113は、これらに値を設定しない。算出部1113は、その他のパラメータについては、第1のシミュレーションと同様に、記憶部1115の各データベースから取得した値を設定する。
【0295】
また、S33の処理においては、算出部1113は、第1のシミュレーションと同様の変数の値に加えて、W
PV(d)、W
SBd(d)、W
SBg(g)の値を算出する。また、算出部1113は、式(4−2)の第3項および第4項により、分散型電源の初期投資の投資回収コストを算出する。
【0296】
また、算出部1113が第2のシミュレーションを実行する場合は、償却期間で分散型電源の初期投資の回収することを前提として分散型電源の投資コストを除いた増分利益を求めているため、S40の分散型電源の投資回収期間の算出の処理は行わない。あるいは、算出部1113は、第2のシミュレーションにおいても、第1のシミュレーションと同様の処理により、分散型電源の投資回収期間を算出しても良い。
【0297】
上述のS32、S33、S40以外の処理は、算出部1113は、第2のシミュレーションにおいても第1のシミュレーションと同様の処理を行う。
【0298】
このように、本実施形態の電力小売り事業評価装置1の記憶部1115は、PV属性データベース171と、PV想定出力比データベース172と、蓄電池属性データベース173とを記憶する。また、受付部1111は、需要家と電源と分散型電源との組み合わせの入力を受け付ける。そして、出力部1114は、需要家と電源と分散型電源との組み合わせと記憶部1115に記憶されたデータベースのデータとに基づいて、分散型電源の設置による収益の変動量と、収益が増加する分散型電源の容量とを出力する。このため、本実施形態の電力小売り事業評価装置1によれば、分散型電源を需要家または電源に設置した場合における電力小売り事業について、より高精度な収益性評価をすることができる。
【0299】
また、本実施形態の電力小売り事業評価装置1の記憶部1115は、さらに、PV属性データベース171と蓄電池属性データベース173とに分散型電源の初期費用(想定価格)を記憶する。また、出力部1114は、さらに、分散型電源の初期費用と、需要家と電源と分散型電源との組み合わせと、PV属性データベース171と、PV想定出力比データベース172と、蓄電池属性データベース173とに記憶されたデータとに基づいて、分散型電源の初期費用の回収期間を出力する。このため、本実施形態の電力小売り事業評価装置1によれば、分散型電源を設置するためにかかる初期費用を含めた電力小売り事業の収益性を評価することができる。
【0300】
本実施形態における分散型電源は、PV50または蓄電池51である。PV50と蓄電池51とは、分散型電源のなかでも一般的に用いられることが多いものである。このため、本実施形態の電力小売り事業評価装置1によれば、一般的な分散型電源であるPV50または蓄電池51を設置した場合における電力小売り事業の評価ができるため、多くの電力小売り事業者の業態に対応することができる。
【0301】
(変形例)
上述の実施形態1で説明した電力小売り事業評価装置1の機能は、クラウドコンピューティングや、データセンターに設置されたサーバ装置等により実現されてもよい。
図35は、本変形例における電力小売り事業評価装置システムSの全体構成の一例を示す図である。
【0302】
図35に示すように、本変形例における電力小売り事業評価装置システムSは、情報処理装置1001と、データセンター80に設置されたサーバ装置10とを含む。情報処理装置1001と、データセンター80に設置されたサーバ装置10とは、ネットワーク90を介して相互に接続されている。ネットワーク90は、インターネット等のネットワークである。
【0303】
本変形例において、電力小売り事業者、または電力小売り事業者からの要求に応じて収益性の評価に関する処理を行う者(ユーザ)は、情報処理装置1001を用いて電源と需要家との組み合わせの入力や、収益性評価のシミュレーションの実行操作等を行う。また、電力小売り事業の評価のシミュレーションのサービスを提供する事業者等が、データセンター80等に設置されたサーバ装置10を管理し、ユーザに対してサービスの提供を行う。
【0304】
本変形例の情報処理装置1001と、サーバ装置10のハードウェア構成は、
図1で説明した実施形態1の電力小売り事業評価装置1のハードウェア構成と同様である。あるいは、サーバ装置10は、クラウドコンピューティング技術による仮想マシンであってもよい。
【0305】
図35に示すように、情報処理装置1001は、受付部2111と、通信部116と、出力部2114とを備える。
【0306】
受付部2111は、
図2で説明した実施形態1の受付部111と同様の機能を備える。また、出力部2114は、実施形態1の出力部114と同様の機能を備える。
【0307】
通信部116は、サーバ装置10との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部116は、受付部2111が受け付けた電力小売り事業者が電力を供給する対象となる需要家、および、当該電力小売り事業者が電力の購入する対象となる電源の組み合わせをサーバ装置10に送信する。また、通信部116は、サーバ装置10が算出した電力の需給計画や、シミュレーションケースごとに電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標等をサーバ装置10から受信する。
【0308】
また、
図35に示すように、サーバ装置10は、通信部117と、ケース生成部2112と、算出部2113と、記憶部2115とを備える。
【0309】
ケース生成部2112と、算出部2113とは、
図2で説明した実施形態1のケース生成部112および算出部113とそれぞれ同様の機能を備える。また、記憶部2115は、
図2で説明した実施形態1の記憶部115と、同様のデータベース等を記憶する。
【0310】
通信部117は、情報処理装置1001との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部117は、情報処理装置1001から送信された電力小売り事業者が電力を供給する対象となる需要家、および、当該電力小売り事業者が電力の購入する対象となる電源の組み合わせを受信する。また、通信部117は、算出部2113が算出した電力の需給計画や、シミュレーションケースごとに電力小売り事業の収益性を評価する電力小売り事業評価指標等を情報処理装置1001へ送信する。
【0311】
情報処理装置1001と、サーバ装置10とは、
図18A,18Bと同様に、シミュレーションケースの生成処理および収益性評価のシミュレーション処理を実行する。
【0312】
本変形例の電力小売り事業評価装置システムSによれば、ユーザが電力小売り事業の評価のシミュレーションを行うための電力小売り事業評価装置1を有していなくとも、電力小売り事業の評価のシミュレーションを行うことができる。また、1つのサーバ装置10に対して複数の情報処理装置1001が接続することも可能であるため、より多くのユーザが電力小売り事業の評価のシミュレーションを行うことができる。
【0313】
上述の各実施形態の電力小売り事業評価装置1で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0314】
また、上述の各実施形態の電力小売り事業評価装置1で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上述の各実施形態の電力小売り事業評価装置1で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、上述の各実施形態の電力小売り事業評価装置1で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0315】
上述の各実施形態の電力小売り事業評価装置1で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムは、上述した各部(受付部、ケース生成部、算出部、出力部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、受付部、ケース生成部、算出部、出力部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0316】
上述の変形例の情報処理装置1001およびサーバ装置10で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0317】
また、上述の変形例の情報処理装置1001およびサーバ装置10で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上述の変形例の情報処理装置1001およびサーバ装置10で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、上述の変形例の情報処理装置1001およびサーバ装置10で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0318】
上述の変形例の情報処理装置1001およびサーバ装置10で実行される電力小売り事業の収益性評価プログラムは、上述した各部(通信部(情報処理装置)、受付部、出力部、通信部(サーバ装置)、ケース生成部、算出部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、通信部(情報処理装置)、受付部、出力部、通信部(サーバ装置)、ケース生成部、算出部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0319】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。