特許第6845104号(P6845104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6845104-圧縮空気貯蔵装置 図000002
  • 特許6845104-圧縮空気貯蔵装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845104
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】圧縮空気貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20210308BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   B60T17/00 B
   B01D53/26 230
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-131814(P2017-131814)
(22)【出願日】2017年7月5日
(65)【公開番号】特開2019-14334(P2019-14334A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲たか▼田 雄史
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−103456(JP,A)
【文献】 特開2010−221179(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0088110(US,A1)
【文献】 特開2017−198086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00−17/22
B01D 53/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮するコンプレッサと、該コンプレッサから供給される圧縮空気を除湿するエアドライヤと、該エアドライヤにより除湿された圧縮空気を貯蔵するエアタンクと、該エアタンクの圧力を所定の調圧範囲に保つために圧縮空気の供給圧が前記調圧範囲を超えた時に開弁する常時閉の圧力レギュレータと、該圧力レギュレータの開弁に連動して開弁することで前記エアドライヤの圧力を大気開放する常時閉のパージバルブとを備えた圧縮空気貯蔵装置であって、前記圧力レギュレータとして調圧範囲を変更可能な電磁式の圧力レギュレータを採用し、前記エアドライヤの入口温度を検出する温度センサと、該温度センサの検出温度に基づき前記圧力レギュレータの調圧範囲を変更する制御装置とを備えたことを特徴とする圧縮空気貯蔵装置。
【請求項2】
車両に搭載されて該車両のエンジンによりコンプレッサが駆動され且つ主にブレーキ圧力源として圧縮空気がエアタンクに貯蔵されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気貯蔵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラック等の車両においては、空気を圧縮するエンジン駆動のコンプレッサと、該コンプレッサから供給される圧縮空気を除湿するエアドライヤと、該エアドライヤからの除湿された圧縮空気をチェックバルブを介して貯蔵するエアタンクとが、主としてブレーキ圧力源を確保するための圧縮空気貯蔵装置として搭載されている。
【0003】
図2は従来における圧縮空気貯蔵装置の概要を説明するための概略図を示し、エアドライヤ1の内部下方にオイルフィルタ2が備えられていると共に、その内部上方には乾燥剤3を充填した分離筒4が備えられており、また、エアドライヤ1の一側にコンプレッサ5から圧縮空気を導くエア入口6が備えられ、その他側にはエアタンク7に連通するエア出口8が備えられている。
【0004】
そして、コンプレッサ5からエアタンク7へ圧縮空気を供給する際には、該圧縮空気をコンプレッサ5からエア入口6を介してエアドライヤ1内に導入し、圧縮空気の油分をオイルフィルタ2を通して除去すると共に、圧縮空気の水分を分離筒4を通して除去するようにしており、然る後、エアドライヤ1内からエア出口8を介して圧縮空気をエアタンク7へ供給するようにしている。
【0005】
ここで、前記エアタンク7の圧力は、前記エアドライヤ1に内蔵された圧力レギュレータ9により所定の調圧範囲に保たれるようになっている。即ち、前記エアドライヤ1には、スプリングの付勢力により閉弁状態を保つようにした機械式の圧力レギュレータ9が採用されており、この圧力レギュレータ9には、エア入口6に導入される圧縮空気の一部が抽出されて圧力信号として導かれ、その空気圧が所定の調圧範囲を超えた時に、スプリングの付勢力に抗して開弁するようになっていて、この開弁により作用する空気圧で更にパージバルブ10が開弁して分離筒4内の圧力が大気開放されるようにしてあり、また、この大気開放により圧力レギュレータ9への圧力信号が低下し、その空気圧が前記調圧範囲を下回った時には、前記圧力レギュレータ9の閉弁により作動圧が喪失して前記パージバルブ10が閉弁するようになっている。
【0006】
また、圧縮空気から除去された水分の一部は、エアドライヤ1内の底部に溜っているが、前記パージバルブ10の開弁による大気開放時に前記分離筒4内の圧力により前記オイルフィルタ2の油分と共に車外へ放出されるようになっており、しかも、前記大気開放により前記分離筒4内の圧力が急激に減圧することで圧縮空気が減圧膨張して乾燥空気となり、該乾燥空気が前記分離筒4内の乾燥剤3から水分を奪いながら車外へ放出されることで該乾燥剤3の再生化が図られるようになっている。
【0007】
尚、この種の圧縮空気貯蔵装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−103456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、斯かる従来の圧縮空気貯蔵装置にあっては、エアドライヤ1が分離筒4の乾燥剤3を通過させて圧縮空気の除湿を行うようにしていて、コンプレッサ5からエアドライヤ1に導入される圧縮空気が高温になるに従い除湿性能が低下してしまうため、例えば、車両が高速道路等で継続的な高速走行となった場合には、エンジン回転数の上昇に伴いコンプレッサの回転数も上昇し、該コンプレッサからエアドライヤに送り込まれる圧縮空気の温度が高くなって除湿性能が低下してしまうことを考慮しなければならない。
【0010】
このため、圧縮空気の温度が高くなる運転状態でも必要な除湿性能が得られるようエアドライヤ1のサイズを上げて1サイクル当たりの許容通気量を増やしたり、コンプレッサ5とエアドライヤ1との間の配管経路を長くして前記エアドライヤ1の入口温度を下げるといった措置が取られており、このような措置を取らなければならないことによって、コストの高騰や配置空間の増大を招いてしまっているという課題があった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来よりもコストを削減し且つ配置空間を縮小し得る圧縮空気貯蔵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、空気を圧縮するコンプレッサと、該コンプレッサから供給される圧縮空気を除湿するエアドライヤと、該エアドライヤにより除湿された圧縮空気を貯蔵するエアタンクと、該エアタンクの圧力を所定の調圧範囲に保つために圧縮空気の供給圧が前記調圧範囲を超えた時に開弁する常時閉の圧力レギュレータと、該圧力レギュレータの開弁に連動して開弁することで前記エアドライヤの圧力を大気開放する常時閉のパージバルブとを備えた圧縮空気貯蔵装置であって、前記圧力レギュレータとして調圧範囲を変更可能な電磁式の圧力レギュレータを採用し、前記エアドライヤの入口温度を検出する温度センサと、該温度センサの検出温度に基づき前記圧力レギュレータの調圧範囲を変更する制御装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
而して、このようにすれば、コンプレッサの高回転域で該コンプレッサからエアドライヤに送り込まれる圧縮空気の温度が高くなっても、該エアドライヤの入口温度を温度センサにより検出し、その検出温度に基づいて制御装置により圧力レギュレータの調圧範囲をそれまでより低い調圧範囲に変更すれば、該圧力レギュレータによるパージバルブの開弁が前記調圧範囲の変更前より低い圧力で行われることになり、エアドライヤに対する1サイクル当たりの圧縮空気の通気量を低減して前記エアドライヤの除湿性能を確保することが可能となる。
【0014】
また、本発明においては、車両に搭載されて該車両のエンジンによりコンプレッサが駆動され且つ主にブレーキ圧力源として圧縮空気がエアタンクに貯蔵されるように構成されていることが好ましく、このようにすれば、車両が高速道路等で継続的な高速走行となった場合に、エンジン回転数の上昇に伴いコンプレッサの回転数も上昇して該コンプレッサからエアドライヤに送り込まれる圧縮空気の温度が高くなっても、前述と同様に1サイクル当たりの圧縮空気の通気量を低減して前記エアドライヤの除湿性能を確保することが可能となる。
【0015】
しかも、車両が高速道路等で継続的な高速走行となっているような運転状態にあっては、ブレーキの使用頻度が大幅に少なくなることが予想され、エアタンクにおける圧縮空気の消費量が少なくて済み、圧力レギュレータの調圧範囲を下げても特に支障をきたさない条件となるので、このように車両に搭載して運用することは極めて好適である。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明の圧縮空気貯蔵装置によれば、コンプレッサの高回転域で該コンプレッサからエアドライヤに送り込まれる圧縮空気の温度が高くなった場合に、前記圧力レギュレータの調圧範囲をそれまでより低い調圧範囲に変更することができ、該圧力レギュレータによるパージバルブの開弁を前記調圧範囲の変更前より低い圧力で行わせることで1サイクル当たりの圧縮空気の通気量を低減して前記エアドライヤの除湿性能を確保することができるので、圧縮空気の温度が高くなる運転状態でも必要な除湿性能が得られるようエアドライヤのサイズを上げて1サイクル当たりの許容通気量を増やしたり、コンプレッサとエアドライヤとの間の配管経路を長くして前記エアドライヤの入口温度を下げるといった措置を講じる必要がなくなり、これまでよりもエアドライヤのサイズを下げたり、コンプレッサとエアドライヤとの間の配管経路を短くしたりすることが実現できて、圧縮空気貯蔵装置にかかるコストを大幅に削減し且つその配置空間をコンパクトなものとして搭載性の大幅な向上を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
図2】従来例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、先に図2で説明した従来例と同様に、トラック等の車両に対し主にブレーキ圧力源を確保するための圧縮空気貯蔵装置として搭載した場合を例示しており、図2と同一の符号を付した部分については同一物を表わしている。
【0020】
本形態例に関し圧縮空気貯蔵装置としての基本的な構成は図2の従来例と大きく変わるところはないが、これまでスプリングの付勢力により閉弁状態を保つようにした機械式の圧力レギュレータ9(図2参照)に換えて、調圧範囲を変更可能な電磁式の圧力レギュレータ11を採用し、前記エアドライヤ1の入口温度を検出する温度センサ12と、該温度センサ12の検出温度に基づき前記圧力レギュレータ11の調圧範囲を変更する制御装置13とを備えたところが新たな特徴部分となっている。
【0021】
ここで、前記電磁式の圧力レギュレータ11には、例えば、弁体を具備したプランジャをスプリングの付勢力により閉弁状態を保つように装備し且つ前記プランジャを取り囲むように配置したソレノイドを励磁させることで前記スプリングの付勢力に任意の電磁力をアシストして開弁圧力を調整し得るようにしたものを用いれば良い。
【0022】
また、前記制御装置13における具体的な制御は、前記温度センサ12の検出温度が高くなるに従い前記圧力レギュレータ11の調圧範囲を下げるように変更する制御として実行され、当該検出温度におけるエアドライヤ1の除湿性能の低下度合いを参酌し、エアドライヤ1に対する1サイクル当たりの圧縮空気の通気量を適切に調整して前記エアドライヤ1における必要な除湿性能が確保されるようにしてある。
【0023】
而して、車両が高速道路等で継続的な高速走行となった場合に、エンジン回転数の上昇に伴いコンプレッサ5の回転数も上昇して該コンプレッサ5からエアドライヤ1に送り込まれる圧縮空気の温度が高くなっても、該エアドライヤ1の入口温度を温度センサ12により検出し、その検出温度に基づいて制御装置13により圧力レギュレータ11の調圧範囲をそれまでより低い調圧範囲に変更すれば、該圧力レギュレータ11によるパージバルブ10の開弁が前記調圧範囲の変更前より低い圧力で行われることになり、エアドライヤ1に対する1サイクル当たりの圧縮空気の通気量を低減して前記エアドライヤ1の除湿性能を確保することが可能となる。
【0024】
従って、上記形態例によれば、車両が高速道路等で継続的な高速走行となってコンプレッサ5からエアドライヤ1に送り込まれる圧縮空気の温度が高くなった場合に、圧力レギュレータ11の調圧範囲をそれまでより低い調圧範囲に変更することができ、該圧力レギュレータ11によるパージバルブ10の開弁を前記調圧範囲の変更前より低い圧力で行わせることで1サイクル当たりの圧縮空気の通気量を低減して前記エアドライヤ1の除湿性能を確保することができる。
【0025】
この結果、圧縮空気の温度が高くなる運転状態でも必要な除湿性能が得られるようエアドライヤ1のサイズを上げて1サイクル当たりの許容通気量を増やしたり、コンプレッサ5とエアドライヤ1との間の配管経路を長くして前記エアドライヤ1の入口温度を下げるといった措置を講じる必要がなくなり、これまでよりもエアドライヤ1のサイズを下げたり、コンプレッサ5とエアドライヤ1との間の配管経路を短くしたりすることが実現できて、圧縮空気貯蔵装置にかかるコストを大幅に削減し且つその配置空間をコンパクトなものとして搭載性の大幅な向上を図ることができる。
【0026】
しかも、特に本形態例の如く、トラック等の車両に対し主にブレーキ圧力源を確保するための圧縮空気貯蔵装置として搭載されている場合、前記車両のエンジンによりコンプレッサ5が駆動され且つ主にブレーキ圧力源として圧縮空気がエアタンク7に貯蔵されるように構成されることになるが、車両が高速道路等で継続的な高速走行となっているような運転状態にあっては、ブレーキの使用頻度が大幅に少なくなることが予想され、エアタンク7における圧縮空気の消費量が少なくて済み、圧力レギュレータ11の調圧範囲を下げても特に支障をきたさない条件となるので、このように車両に搭載して運用することは極めて好適である。
【0027】
尚、本発明の圧縮空気貯蔵装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 エアドライヤ
5 コンプレッサ
7 エアタンク
10 パージバルブ
11 圧力レギュレータ
12 温度センサ
13 制御装置
図1
図2