(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845128
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】オイルバス内のオイルを撹拌するオイル循環装置及びオイル循環システム
(51)【国際特許分類】
F16N 39/06 20060101AFI20210308BHJP
F01M 11/03 20060101ALI20210308BHJP
B01D 24/48 20060101ALI20210308BHJP
B01D 29/60 20060101ALI20210308BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
F16N39/06
F01M11/03 G
B01D29/36 B
B25J17/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-247916(P2017-247916)
(22)【出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-113016(P2019-113016A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年5月15日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】上村 徳光
(72)【発明者】
【氏名】上松 正明
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−086065(JP,A)
【文献】
特開昭60−048271(JP,A)
【文献】
特開2002−303113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 33/00、39/06
B67D 7/04
F01M 1/10、11/03−11/04
C10M175/00
B01D 24/48、29/60
B25J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルバス内のオイルを撹拌するオイル循環装置であって、
第1給排油口及び第2給排油口を有するオイルバスと、
前記オイルを循環させる循環ポンプと、
前記オイルバスと前記循環ポンプとの間を接続する一組の配管と、
前記配管に取付けられて前記第1給排油口及び前記第2給排油口のそれぞれに対するオイルの給排油方向を切替える第1切替弁と、
前記循環ポンプの前段階に配置されていてオイル内の不純物をろ過するフィルタ機構と、
少なくとも前記循環ポンプ及び前記第1切替弁を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
低位置にある前記第1給排油口にオイルを給油し且つ高位置にある前記第2給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記オイルバス内のオイルを前記オイルバス内の低位置から高位置へ撹拌する撹拌モードと、
前記撹拌モードを実行して前記オイルバス内の不純物を浮遊させた後、低位置にある前記第1給排油口からオイルを排油し且つ高位置にある前記第2給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプによって前記フィルタ機構に送られてきたオイル内の不純物をろ過するフィルタモードと、
を有する、オイル循環装置。
【請求項2】
さらに、前記第1切替弁と前記フィルタ機構との間に配置されていて、自身から前記フィルタ機構を介さずに前記循環ポンプへ向かう経路と自身から前記フィルタ機構へ向かう経路とを切替える第2切替弁を備える、請求項1に記載のオイル循環装置。
【請求項3】
前記オイル循環装置の構成要素は、組み立て可能なキットとして提供され、且つ、個別に取り外し可能であり、
前記構成要素を再配置することにより、前記循環ポンプの後段階に配置されてオイルを回収するオイル回収タンクと、前記循環ポンプの前段階に配置されて新しいオイルを収容する新オイルタンクと、を備え、
前記制御部はさらに、前記撹拌モードを実行して前記オイルバス内の不純物を浮遊させた後、低位置にある前記第1給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記オイルバスから前記オイル回収タンクへオイルを回収し、低位置にある前記第1給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記新オイルタンクから前記オイルバスへ新しいオイルを給油する、オイル交換モードを有する、請求項1又は2に記載のオイル循環装置。
【請求項4】
さらに、オイルを回収するオイル回収タンクと、新しいオイルを収容する新オイルタンクと、前記循環ポンプと前記第1切替弁との間の前記撹拌モードの経路に配置されていて、前記撹拌モードの経路と自身から前記オイル回収タンクへの回収経路とを切替える第3切替弁と、前記循環ポンプと前記第1切替弁との間の前記撹拌モードの経路に配置されていて、前記撹拌モードの経路と前記新オイルタンクから自身への給油経路とを切替える第4切替弁と、を備え、
前記制御部はさらに、前記撹拌モードを実行して前記オイルバス内の不純物を浮遊させた後、低位置にある前記第1給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うと共に前記回収経路へ切替える指令を前記第3切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記オイルバスから前記オイル回収タンクへオイルを回収し、低位置にある前記第1給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うと共に前記給油経路へ切替える指令を前記第3切替弁及び前記第4切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記新オイルタンクから前記オイルバスへ新しいオイルを給油する、オイル交換モードを有する、請求項1又は2に記載のオイル循環装置。
【請求項5】
さらに、別個の第1給排油口及び別個の第2給排油口を有する別個のオイルバスと、前記別個のオイルバスに接続する一組の別個の配管と、を備え、前記第1切替弁がさらに、前記別個の配管に取付けられて前記オイルバスから前記別個のオイルバスへオイル流路を切替えると共に、前記別個の第1給排油口及び前記別個の第2給排油口のそれぞれに対するオイルの給排油方向を切替える、請求項1から4のいずれか一項に記載のオイル循環装置。
【請求項6】
前記不純物が金属粉及びスラッジを含んでおり、前記フィルタ機構は、オイル内の前記金属粉を収集する金属粉収集部と、オイル内の前記スラッジをろ過するフィルタと、を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のオイル循環装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のオイル循環装置と、
複数の関節軸を有するロボットと、を備え、
前記オイルバスが前記複数の関節軸の各々に配置された減速機用オイルバスであり、
前記第1切替弁はさらに、前記減速機用オイルバスの間でオイル流路を切替えるように構成されており、
前記制御部がロボット制御装置であり、前記ロボット制御装置は、前記関節軸を所定の角度に制御することにより前記減速機用オイルバスの前記第1給排油口及び前記第2給排油口をそれぞれ低位置及び高位置に位置決めし、且つ、前記減速機用オイルバスの間でオイル流路を切替える指令を前記第1切替弁に対して行った後、前記撹拌モード及び前記フィルタモードを実行する、オイル循環システム。
【請求項8】
請求項3又は4に記載のオイル循環装置と、
複数の関節軸を有するロボットと、を備え、
前記オイルバスが前記複数の関節軸の各々に配置された減速機用オイルバスであり、
前記第1切替弁はさらに、前記減速機用オイルバスの間でオイル流路を切替えるように構成されており、
前記制御部がロボット制御装置であり、前記ロボット制御装置は、前記関節軸を所定の角度に制御することにより前記減速機用オイルバスの前記第1給排油口及び前記第2給排油口をそれぞれ低位置及び高位置に位置決めし、且つ、前記減速機用オイルバスの間でオイル流路を切替える指令を前記第1切替弁に対して行った後、前記撹拌モード及び前記オイル交換モードを実行する、オイル循環システム。
【請求項9】
オイルバス内のオイルを撹拌するオイル循環装置であって、
第1給排油口及び第2給排油口を有するオイルバスと、
前記オイルを循環させる循環ポンプと、
前記オイルバスと前記循環ポンプとの間を接続する一組の配管と、
前記配管に取付けられて前記第1給排油口及び前記第2給排油口のそれぞれに対するオイルの給排油方向を切替える第1切替弁と、
少なくとも前記循環ポンプ及び前記第1切替弁を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、低位置にある前記第1給排油口にオイルを給油し且つ高位置にある前記第2給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記オイルバス内のオイルを前記オイルバス内の低位置から高位置へ撹拌する撹拌モードを有し、
前記オイル循環装置の構成要素は、組み立て可能なキットとして提供され、且つ、個別に取り外し可能であり、
前記構成要素を再配置することにより、前記循環ポンプの後段階に配置されてオイルを回収するオイル回収タンクと、前記循環ポンプの前段階に配置されて新しいオイルを収容する新オイルタンクと、を備え、
前記制御部はさらに、前記撹拌モードを実行して前記オイルバス内の不純物を浮遊させた後、低位置にある前記第1給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記オイルバスから前記オイル回収タンクへオイルを回収し、低位置にある前記第1給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記新オイルタンクから前記オイルバスへ前記新しいオイルを給油する、オイル交換モードを有する、オイル循環装置。
【請求項10】
オイルバス内のオイルを撹拌するオイル循環装置であって、
第1給排油口及び第2給排油口を有するオイルバスと、
前記オイルを循環させる循環ポンプと、
前記オイルバスと前記循環ポンプとの間を接続する一組の配管と、
前記配管に取付けられて前記第1給排油口及び前記第2給排油口のそれぞれに対するオイルの給排油方向を切替える第1切替弁と、
少なくとも前記循環ポンプ及び前記第1切替弁を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、低位置にある前記第1給排油口にオイルを給油し且つ高位置にある前記第2給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記オイルバス内のオイルを前記オイルバス内の低位置から高位置へ撹拌する撹拌モードを有し、
さらに、オイルを回収するオイル回収タンクと、新しいオイルを収容する新オイルタンクと、前記循環ポンプと前記第1切替弁との間の前記撹拌モードの経路に配置されていて、前記撹拌モードの経路と自身から前記オイル回収タンクへの回収経路とを切替える第3切替弁と、前記循環ポンプと前記第1切替弁との間の前記撹拌モードの経路に配置されていて、前記撹拌モードの経路と前記新オイルタンクから自身への給油経路とを切替える第4切替弁と、を備え、
前記制御部はさらに、前記撹拌モードを実行して前記オイルバス内の不純物を浮遊させた後、低位置にある前記第1給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うと共に前記回収経路へ切替える指令を前記第3切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記オイルバスから前記オイル回収タンクへオイルを回収し、低位置にある前記第1給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を前記第1切替弁に対して行うと共に前記給油経路へ切替える指令を前記第3切替弁及び前記第4切替弁に対して行うことにより前記循環ポンプを介して前記新オイルタンクから前記オイルバスへ前記新しいオイルを給油する、オイル交換モードを有する、オイル循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル循環技術に関し、特にオイルバス内のオイルを撹拌するオイル循環装置及びオイル循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの関節軸には、動力源となるモータの回転速度を減速して必要なトルクを得るための減速機が配置されている。減速機の潤滑にオイルバス方式を採用する場合、オイル自体は長寿命化が進んでいるものの、減速機内の軸受等の劣化に起因して金属粉やスラッジ等の不純物が発生するため、オイルを定期的に交換、廃棄していた。また、減速機等の劣化を判断する材料として、オイルに含まれる鉄粉量を測定していた。
【0003】
本願に関連する背景技術としては、例えば特許文献1〜4が公知である。特許文献1では、重機、建機、小型船舶、自動車等の動力源として使用される比較的大型のエンジン等のオイル循環経路を洗浄する洗浄装置が開示されている。斯かる洗浄装置は、オイル循環経路に配置されたフィルタによりスラッジや金属粉等の不純物を除去している。
【0004】
特許文献2では、油液中の不純物を除去して、再使用可能な状態に油液を再生することができる油再生処理装置が開示されている。斯かる油再生処理装置は、分離剤を不純物含有油液に加えて撹拌し、イオン反応させて沈殿させる撹拌・反応層を備えている。
【0005】
特許文献3では、油圧管路のオイルフラッシング装置が開示されている。斯かるオイルフラッシング装置は、自動温度調節ヒータと、オイル中の鉄粉を吸着したのちこれを排出する電磁式鉄粉分離装置と、を有する電磁式異物回収オイルタンクを備えている。
【0006】
特許文献4では、冷間圧延機のクーラント油循環経路において、クーラント油中の鉄粉やスカム等の異物を除去する圧延用クーラント油浄化装置を開示している。斯かる圧延用クーラント油浄化装置は、遠心力を利用した複数段の鉄粉分離装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−307776号公報
【特許文献2】特開平08−150303号公報
【特許文献3】特開平07−284743号公報
【特許文献4】特開平11−169917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
減速機は、摩耗により発生した金属粉が隙間に引っ掛かり易い複雑な内部形状を有している。ロボットの手首側の関節軸では、ロボットを動作させることによってオイルバス内のオイルが撹拌されるため、金属粉が隙間から出て行き易いが、時間の経過に伴って比重の大きい金属粉がオイルバス内で沈殿してしまう。他方、ロボットの胴体側の関節軸では、ロボットを動作させても減速機の揺動がほとんど無いか微小なことからオイルバス内のオイルが撹拌され難いため、金属粉が隙間に引っ掛かった状態になるか又は時間の経過に伴って沈殿したままになり易い。従って、オイル交換を行っても十分な浄化作用が得られなかった。
【0009】
また、減速機等の劣化を判断するために行われる鉄粉量測定においても、オイルバス内で比重の大きい鉄粉が沈殿し易いため、グリース潤滑の減速機と比べて均一な試料の採取が困難であった。加えて、オイルバス内のオイルを撹拌させる目的でロボットを動作させる場合には、ロボットを操作できる有資格者が必要になるため、オイル交換や鉄粉量測定を容易に行えないという問題もあった。
【0010】
そこで、簡易な方法でオイルバス内のオイルを撹拌して不純物の測定精度又はオイル交換による浄化作用を向上させる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様は、オイルバス内のオイルを撹拌するオイル循環装置であって、第1給排油口及び第2給排油口を有するオイルバスと、オイルを循環させる循環ポンプと、オイルバスと循環ポンプとの間を接続する一組の配管と、配管に取付けられて第1給排油口及び第2給排油口のそれぞれに対するオイルの給排油方向を切替える第1切替弁と、循環ポンプの前段階に配置されていてオイル内の不純物をろ過するフィルタ機構と、少なくとも循環ポンプ及び第1切替弁を制御する制御部と、を備え、制御部は
、低位置にある第1給排油口にオイルを給油し且つ高位置にある第2給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を
第1切替弁に対して行うことによ
り循環ポンプを介してオイルバス内のオイルをオイルバス内の低位置から高位置へ撹拌する撹拌モードと、撹拌モードを実行してオイルバス内の不純物を浮遊させた後
、低位置にある第1給排油口からオイルを排油し且つ高位置にある第2給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を
第1切替弁に対して行うことによ
り循環ポンプによってフィルタ機構に送られてきたオイル内の不純物をろ過するフィルタモードと、を有する、オイル循環装置を提供する。
本開示の他の態様は、オイルバス内のオイルを撹拌するオイル循環装置であって、第1給排油口及び第2給排油口を有するオイルバスと、オイルを循環させる循環ポンプと、オイルバスと循環ポンプとの間を接続する一組の配管と、配管に取付けられて第1給排油口及び第2給排油口のそれぞれに対するオイルの給排油方向を切替える第1切替弁と
、少なくとも循環ポンプ及び第1切替弁を制御する制御部と、を備え、制御部は
、低位置にある第1給排油口にオイルを給油し且つ高位置にある第2給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を
第1切替弁に対して行うことによ
り循環ポンプを介してオイルバス内のオイルをオイルバス内の低位置から高位置へ撹拌する撹拌モード
を有し、
オイル循環装置の構成要素は、組み立て可能なキットとして提供され、且つ、個別に取り外し可能であり、構成要素を再配置することにより、循環ポンプの後段階に配置されてオイルを回収するオイル回収タンクと、循環ポンプの前段階に配置されて新しいオイルを収容する新オイルタンクと、を備え、制御部はさらに、撹拌モードを実行してオイルバス内の不純物を浮遊させた後
、低位置にある第1給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を
第1切替弁に対して行うことによ
り循環ポンプを介してオイルバスからオイル回収タンクへオイルを回収
し、低位置にある第1給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を
第1切替弁に対して行うことによ
り循環ポンプを介して新オイルタンクからオイルバスへオイルを給油する、オイル交換モー
ドを有する、オイル循環装置を提供する。
本開示の別の態様は、オイルバス内のオイルを撹拌するオイル循環装置であって、第1給排油口及び第2給排油口を有するオイルバスと、オイルを循環させる循環ポンプと、オイルバスと循環ポンプとの間を接続する一組の配管と、配管に取付けられて第1給排油口及び第2給排油口のそれぞれに対するオイルの給排油方向を切替える第1切替弁と、少なくとも循環ポンプ及び第1切替弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、低位置にある第1給排油口にオイルを給油し且つ高位置にある第2給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を第1切替弁に対して行うことにより循環ポンプを介してオイルバス内のオイルをオイルバス内の低位置から高位置へ撹拌する撹拌モードを有し、さらに、オイルを回収するオイル回収タンクと、新しいオイルを収容する新オイルタンクと、循環ポンプとオイル回収タンクとの間に配置されて撹拌モードの経路とオイル回収タンクの回収経路とを切替える第3切替弁と、循環ポンプと新オイルタンクとの間に配置されて撹拌モードの経路と新オイルタンクの給油経路とを切替える第4切替弁と、を備え、制御部はさらに、撹拌モードを実行してオイルバス内の不純物を浮遊させた後、低位置にある第1給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を第1切替弁に対して行うと共に回収経路へ切替える指令を第3切替弁に対して行うことにより循環ポンプを介してオイルバスからオイル回収タンクへオイルを回収し、低位置にある第1給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を第1切替弁に対して行うと共に給油経路へ切替える指令を第3切替弁及び第4切替弁に対して行うことにより循環ポンプを介して新オイルタンクからオイルバスへ新しいオイルを給油する、オイル交換モードを有する、オイル循環装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、簡易な方法によってオイルバス内のオイルを撹拌して不純物を浮遊させた後、不純物のろ過又はオイル交換を実行するため、不純物の測定精度又はオイル交換による浄化作用を向上させることができる。また、オイルバス内の不純物が低減するため、オイル交換のサイクルを延長できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態におけるロボットの構成を示す側面図である。
【
図2A】第1軸における減速機及びオイルバスの配置を示す概略図である。
【
図2B】第2軸における減速機及びオイルバスの配置を示す概略図である。
【
図3A】第1実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。
【
図3B】第1実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。
【
図3C】第1実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。
【
図3D】第1実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。
【
図4A】撹拌モード及びフィルタモードを組み合わせた第2実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。
【
図4B】撹拌モード及びフィルタモードを組み合わせた第2実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。
【
図4C】撹拌モード及びオイル交換モードを組み合わせた第3実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。
【
図4D】撹拌モード及びオイル交換モードを組み合わせた第3実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。
【
図4E】撹拌モード及びオイル交換モードを組み合わせた第3実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。
【
図5】撹拌モード、フィルタモード、及びオイル交換モードを組み合わせた第4実施形態に係るオイル循環装置の概略図である。
【
図6】フィルタ機構における金属粉収集部の構成要素を示す拡大断面図である。
【
図7】オイル循環システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】オイル循環システムにおける攪拌モード及びフィルタモードの動作を示すフローチャートである。
【
図9】オイル循環システムにおける攪拌モード及びオイル交換モードの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。各図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号が付与されている。また、以下に記載する実施形態は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲及び用語の意義を限定するものではない。
【0015】
図1は、一実施形態におけるロボット10の構成を示す側面図である。ロボット10は、公知の6軸マニピュレータであり、少なくとも減速機及びオイルバスを備えた第1軸J1〜第6軸J6の関節軸を有している。
【0016】
図2Aは、第1軸J1における減速機12及びオイルバス13の配置を示す概略図である。第1軸J1では、減速機12が、ロボットベース11に接続されると共に、オイルバス13内のオイル14に浸されている。第1軸J1は、ロボット10の胴体側の関節軸であるため、ロボットベース11が第1軸J1の回りで回転してもオイルバス13内のオイル14が撹拌され難いため、オイルバス13内の不純物は減速機12の隙間に引っ掛かった状態であるか又はオイルバス13内で沈殿した状態である。オイルバス13は、低位置にある第1給排油口15及び高位置にある第2給排油口16を有しており、後述するオイル循環装置は、第1給排油口15及び第2給排油口16に一組の配管を接続して循環ポンプを介してオイルバス13内のオイル14を撹拌した後(攪拌モード)、循環ポンプによって不純物のろ過(フィルタモード)又はオイル交換(オイル交換モード)を実行する。
【0017】
図2Bは、第2軸J2における減速機18及びオイルバス19の配置を示す概略図である。第2軸J2では、減速機18が、ロボットアーム17に接続されると共に、オイルバス19内のオイル20に浸されている。第2軸J2も、ロボット10の胴体側の関節軸であるため、ロボットアーム17が第2軸J2の回りで回転してもオイルバス19内のオイル20が撹拌され難いが、第1軸J1の回りでロボットベース11が回転することによってオイルバス19内のオイル20を僅かに撹拌させることができる。しかしながら、オイルバス19内の不純物を浮遊させるには十分ではない。オイルバス19は、低位置にある第1給排油口21及び高位置にある第2給排油口22を有しており、後述するオイル循環装置は、第1給排油口21及び第2給排油口22に一組の配管を接続して循環ポンプを介して攪拌モードを実行した後、循環ポンプによってフィルタモード又はオイル交換モードを実行する。
【0018】
第3軸J3〜第6軸J6における減速機及びオイルバスの配置は、図示しないが、第2軸J2のものと同じ配置である。第3軸J3〜第6軸J6は、ロボット10の手首側の関節軸または関節に近い軸であるため、自身より胴体側の関節軸を動作させることにより、オイルバス内のオイルを撹拌させることができる。しかしながら、ロボット10の動作を停止した後、一定時間が経過すると、オイルバス内で不純物が沈殿してしまう。このため、後述するオイル循環装置は、第1軸J1及び第2軸J2と同様に、第3軸J3〜第6軸J6のオイルバスの第1給排油口及び第2給排油口に一組の配管を接続して循環ポンプを介して攪拌モードを実行した後、フィルタモード又はオイル交換モードを実行する。
【0019】
図3A〜
図3Dは、第1実施形態に係るオイル循環装置の構成要素を示す概略図である。オイル循環装置の構成要素は、組み立て可能なキットとして提供され、個別に取り外し可能であるため、可搬性を有している。ユーザは、作業内容(即ち、撹拌モード、フィルタモード、及びオイル交換モード)に応じて
図3A〜
図3Dに示す構成要素を適宜組み合わせることにより、オイル循環装置を組み立てることができる。なお、後述するオイル循環装置は、ロボットの減速機に適用されるだけではなく、他の潤滑対象に適用されてもよいことに留意されたい。
【0020】
図3Aは、撹拌モードにおけるオイル循環装置30の構成要素を示す概略図である。オイル循環装置30は、第1給排油口31及び第2給排油口32を有するオイルバス33と、オイル34を循環する循環ポンプ35と、オイルバス33と循環ポンプ35との間を接続する一組の配管36と、配管36に取付けられて第1給排油口31及び第2給排油口32のそれぞれに対するオイルの給排油方向を切替える第1切替弁37と、を備えている。循環ポンプ35及び第1切替弁37の制御は、手動でもよいが、オイル循環装置30はさらに、少なくとも循環ポンプ35及び第1切替弁37を制御する制御部38を備えていてもよい。制御部38は、公知のCPU又はASIC若しくはFPGAによって構成される。
【0021】
撹拌モードでは、制御部38が、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31にオイルを給油し且つ高位置にある第2給排油口32からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35を介してオイルバス33内のオイル34をオイルバス33内の低位置から高位置へ撹拌させる。これにより、オイルバス33内の不純物を浮遊させることができる。撹拌モードを実行してオイルバス33内の不純物を浮遊させた後、直接オイルバス33からサンプルオイルを取出し、不純物中の金属粉の濃度を測定してもよい。
【0022】
図3Bは、フィルタモードにおけるオイル循環装置40の構成要素を示す概略図である。オイル循環装置40は、撹拌モードにおけるオイル循環装置30と比べてさらに、循環ポンプ35の前段階に配置されていてオイル内の不純物をろ過するフィルタ機構41を備えている。不純物は金属粉及びスラッジを含んでおり、フィルタ機構41は、オイル内の金属粉を収集する金属粉収集部42と、残りの不純物であるオイル内のスラッジをろ過するフィルタ43と、を備えている。
【0023】
撹拌モードを実行してオイルバス33内の不純物を浮遊させた後、フィルタモードでは、制御部38が、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31からオイル34を排油し且つ高位置にある第2給排油口32にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35によってフィルタ機構41に送られてきたオイル内の不純物をろ過する。オイルバス33内の不純物を浮遊させた後にフィルタモードを実行するため、オイルバス33内に不純物が残り難く、不純物中の金属粉の測定精度を向上させることができる。
【0024】
図3Cは、オイル交換モードの回収作業におけるオイル循環装置50の構成要素を示す概略図である。オイル循環装置50は、撹拌モードにおけるオイル循環装置30と比べてさらに、循環ポンプ35の後段階に配置されるオイル回収タンク51を備えている。撹拌モードを実行してオイルバス33内の不純物を浮遊させた後、回収作業では、制御部38が、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35を介してオイルバス33からオイル回収タンク51へオイル34を回収する。オイルバス33内の不純物を浮遊させた後に回収作業を実行するため、オイルバス33内に不純物が残り難く、オイル交換による浄化作用を向上させることができる。
【0025】
図3Dは、オイル交換モードの給油作業におけるオイル循環装置60の構成要素を示す概略図である。オイル循環装置60は、撹拌モードにおけるオイル循環装置30と比べてさらに、循環ポンプ35の前段階に配置される新オイルタンク61を備えている。オイルを回収した後、給油作業では、制御部38が、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31にオイルを給油する給排油方向に切替えることにより、循環ポンプ35を介して新オイルタンク61からオイルバス33に新しいオイルを給油する。
【0026】
図4A及び
図4Bは、撹拌モード及びフィルタモードを組み合わせた第2実施形態に係るオイル循環装置70の構成要素を示す概略図である。オイル循環装置70は、
図3Bに示すオイル循環装置40と比べてさらに、フィルタ機構41の前段階に配置されていて撹拌モードの経路71(
図4Aを参照)とフィルタモードの経路72(
図4Bを参照)とを切替える第2切替弁73を備えている。
【0027】
図4Aに示すように、撹拌モードでは、制御部38が、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31にオイル34を給油し且つ高位置にある第2給排油口32からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を行うと共に、第2切替弁73に対して撹拌モードの経路71に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35を介してオイルバス33内のオイル34をオイルバス33内の低位置から高位置へ撹拌する。これにより、オイルバス33内の不純物を浮遊させることができる。
【0028】
図4Bに示すように、フィルタモードでは、制御部38が、撹拌モードを実行してオイルバス33内の不純物を浮遊させた後、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31からオイル34を排油し且つ高位置にある第2給排油口32にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を行うと共に、第2切替弁73に対してフィルタモードの経路72に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35によってフィルタ機構41に送られてきたオイル34内の不純物をろ過する。オイル循環装置70が、第2切替弁73を備えていることにより、撹拌モード及びフィルタモードを自動的に切替えて実行できる。
【0029】
図4C〜
図4Eは、撹拌モード及びオイル交換モードを組み合わせた第3実施形態に係るオイル循環装置80の構成要素を示す概略図である。オイル循環装置80は、
図3C及び
図3Dに示すオイル循環装置50及び60と比べてさらに、オイル回収タンク51の前段階に配置されていて撹拌モードの経路81(
図4Cを参照)とオイル交換モードの回収経路82(
図4Dを参照)とを切替える第3切替弁83と、新オイルタンク61の後段階に配置されていて撹拌モードの経路81(
図4Cを参照)とオイル交換モードの給油経路84(
図4Eを参照)とを切替える第4切替弁85と、を備えている。
【0030】
図4Cに示すように、撹拌モードでは、制御部38が、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31にオイルを給油し且つ高位置にある第2給排油口32からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を行うと共に、第3切替弁83及び第4切替弁85に対して撹拌モードの経路81に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35を介してオイルバス33内のオイル34をオイルバス33内の低位置から高位置へ撹拌する。これにより、オイルバス33内の不純物を浮遊させることができる。
【0031】
図4Dに示すように、オイル交換モードの回収作業では、制御部38が、撹拌モードを実行してオイルバス33内の不純物を浮遊させた後、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31からオイル34を排油する給排油方向に切替える指令を行うと共に、第3切替弁83に対してオイル交換モードの回収経路82に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35を介してオイルバス33からオイル回収タンク51へオイル34を回収する。オイルバス33内の不純物を浮遊させた後に回収作業を実行するため、オイルバス33内に不純物が残り難く、オイル交換による浄化作用を向上させることができる。
【0032】
図4Eに示すように、オイル交換モードの給油作業では、制御部38が、オイルを回収した後、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を行うと共に、第3切替弁83及び第4切替弁85に対してオイル交換モードの給油経路84に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35を介して新オイルタンク61からオイルバス33へ新しいオイルを給油する。オイル循環装置80が、第3切替弁83及び第4切替弁85を備えていることにより、撹拌モード及びオイル交換モードを自動的に切替えて実行できる。
【0033】
図5は、撹拌モード、フィルタモード、及びオイル交換モードを組み合わせた第4実施形態に係るオイル循環装置90の概略図である。オイル循環装置90のオイルバスは、ロボットの第2軸J2のオイルバス19である。オイル循環装置90は、
図4C〜
図4Eに示すオイル循環装置80と比べてさらに、第4切替弁85の前段階に配置されたフィルタ機構41と、フィルタ機構41の前段階に配置されていて撹拌モードの経路91とフィルタモードの経路92とを切替える第2切替弁73と、を備えている。第4切替弁85の前段階にフィルタ機構41を配置することにより、新オイルタンク61から給油される新しいオイルに不純物が混じり難くなる。
【0034】
撹拌モードでは、制御部38が、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31にオイルを給油し且つ高位置にある第2給排油口32からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を行うと共に、第2切替弁73、第3切替弁83、及び第4切替弁85に対して撹拌モードの経路91に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35を介してオイルバス19内のオイル20をオイルバス19内の低位置から高位置へ撹拌する。これにより、オイルバス19内の不純物を浮遊させることができる。
【0035】
フィルタモードでは、制御部38が、撹拌モードを実行してオイルバス19内の不純物を浮遊させた後、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31からオイル20を排油し且つ高位置にある第2給排油口32にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を行うと共に、第2切替弁73及び第4切替弁85に対してフィルタモードの経路92に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35によってフィルタ機構41に送られてきたオイル20内の不純物をろ過する。オイルバス19内の不純物を浮遊させた後にフィルタモードを実行するため、オイルバス19内に不純物が残り難く、不純物中の金属粉の測定精度を向上させることができる。
【0036】
オイル交換モードの回収作業では、制御部38が、撹拌モードを実行してオイルバス19内の不純物を浮遊させた後、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31からオイル20を排油する給排油方向に切替える指令を行うと共に、第3切替弁83に対してオイル交換モードの回収経路93に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35を介してオイルバス19からオイル回収タンク51へオイル20を回収する。これにより、オイルバス19内に不純物が残り難いため、オイル交換による浄化作用を向上させることができる。
【0037】
オイル交換モードの給油作業では、制御部38が、オイル交換モードの回収作業を実行した後、第1切替弁37に対して低位置にある第1給排油口31にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を行うと共に、第3切替弁83及び第4切替弁85に対してオイル交換モードの給油経路94に切替える指令を行うことにより、循環ポンプ35を介して新オイルタンク61からオイルバス19へ新しいオイルを給油する。オイル循環装置90が、第2切替弁73、第3切替弁83、及び第4切替弁85を備えていることにより、撹拌モード、フィルタモード、及びオイル交換モードを自動的に切替えて実行できる。
【0038】
なお、オイル循環装置90はさらに、
図2Aに示すロボットの第1軸J1の第1給排油口15及び第2給排油口16を有する別個のオイルバス13と、別個のオイルバス13に接続する一組の別個の配管(図示せず)と、を備えていてもよい。斯かる場合には、第1切替弁37がさらに、別個の配管に取付けられてオイルバス19から別個のオイルバス13へオイル流路を切替えると共に、第1給排油口15及び第2給排油口16のそれぞれに対するオイルの給排油方向を切替える。
【0039】
図6は、フィルタ機構41における金属粉収集部42の構成要素を示す拡大断面図である。金属粉収集部42は、磁石95と、磁石95を覆う樹脂製のアダプタ96と、を備えている。磁石95は、制御部38によって制御される電磁石でもよい。アダプタ96は、オイルの流路方向97に対して直交する方向で配管36の中に挿入される。前述したフィルタモードによって金属粉収集部42が金属粉98を収集した後、ユーザがアダプタ96ごと配管36から引き抜き、さらに磁石95をアダプタ96から取り外すことにより、金属粉98がアダプタ96から落ちる。ユーザは、所定の測定器によって金属粉98の量を測定できる。金属粉収集部42がフィルタ43の前段階に配置されることにより、金属粉98の量を測定できると共に、金属粉98によるフィルタ43の目詰まりを防止できる。
【0040】
図7は、オイル循環システム100の構成を示すブロック図である。オイル循環システム100は、
図5に示すオイル循環装置90と、第1軸〜第6軸の関節軸を有するロボット101と、を備えている。オイルバスは第1軸〜第6軸の関節軸の各々に配置された減速機用オイルバス102〜107であり、第1切替弁37はさらに、減速機用オイルバス102〜107の間でオイル流路を切替えるように構成されている。また、制御部はロボット制御装置108であり、ロボット制御装置108は、第1軸〜第6軸サーボモータ109〜114を制御するモータ制御部115を備えている。
【0041】
ロボット制御装置108はさらに、第1切替弁37、第2切替弁73、第3切替弁83、第4切替弁85、及び循環ポンプ35に対して攪拌モードを実行する指令を行う攪拌モード指令部116と、攪拌モードを実行した後、第1切替弁37、第2切替弁73、及び循環ポンプ35に対してフィルタモードを実行する指令を行うフィルタモード指令部117と、を備えている。ロボット制御装置108はさらに、攪拌モードを実行した後、第1切替弁37、第3切替弁83、及び循環ポンプ35に対してオイル交換モード(回収)を実行する指令を行うオイル交換モード(回収)指令部118と、回収作業を実行した後、第1切替弁37、第3切替弁83、第4切替弁85、及び循環ポンプ35に対してオイル交換モード(給油)を実行する指令を行うオイル交換モード(給油)指令部119と、を備えていてもよい。
【0042】
ロボット制御装置108は、第1軸〜第6軸の関節軸をそれぞれ所定の角度に制御することにより、減速機用オイルバス102〜107の第1給排油口及び第2給排油口をそれぞれ低位置及び高位置に位置決めした後、攪拌モード及びフィルタモードを実行する。また、ロボット制御装置108は、第1軸〜第6軸の関節軸をそれぞれ所定の角度に制御することにより、減速機用オイルバス102〜107の第1給排油口及び第2給排油口をそれぞれ低位置及び高位置に位置決めした後、攪拌モード及びオイル交換モード(回収及び給油)を実行してもよい。
【0043】
図8は、オイル循環システム100における攪拌モード及びフィルタモードの動作を示すフローチャートである。斯かる動作は、コンピュータで実行可能なプログラムによって実行されてもよい。先ず、ステップS10では、第1軸〜第6軸の関節軸をそれぞれ所定の角度に制御することにより、減速機用オイルバス102〜107の第1給排油口及び第2給排油口をそれぞれ低位置及び高位置に位置決めする。ステップS11では、第1切替弁37に対して、第1軸〜第6軸の減速機用オイルバスの間でオイル流路を切替える指令を行う。ステップS12では、第1切替弁37に対して、低位置にある第1給排油口にオイルを給油し且つ高位置にある第2給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を行う。ステップS13では、第2切替弁73、第3切替弁83、及び第4切替弁85に対して、撹拌モードの経路に切替える指令を行う。ステップS14では、循環ポンプ35を駆動する指令を行うことにより、撹拌モードを実行する。これにより、オイルバス33内の不純物を浮遊させることができる。
【0044】
ステップS15では、第1切替弁37に対して、低位置にある第1給排油口からオイルを排油し且つ高位置にある第2給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を行う。ステップS16では、第2切替弁73に対してフィルタモードの経路に切替える指令を行う。ステップS17では、循環ポンプを駆動する指令を行うことにより、フィルタモードを実行する。オイルバス33内の不純物を浮遊させた後にフィルタモードを実行するため、オイルバス33内に不純物が残り難く、不純物中の金属粉の測定精度を向上させることができる。
【0045】
ステップS18において、ユーザが金属粉の量を測定し、減速機等の劣化を判断する。ステップS19では、実行していない関節軸が有るかを判定し、有る場合には(ステップS18のYES)、ステップS11に戻り、第1切替弁37に対して、別個の減速機用オイルバスにオイル流路を切替える指令を行う。次いで、ステップS12〜ステップS17において、攪拌モード及びフィルタモードを実行する。ステップS18において、実行していない関節軸が無い場合には(ステップS18のNO)、斯かる動作は終了する。
【0046】
図9は、オイル循環システム100における攪拌モード及びオイル交換モードの動作を示すフローチャートである。斯かる動作は、コンピュータで実行可能なプログラムによって実行されてもよい。先ず、ステップS20では、第1軸〜第6軸の関節軸をそれぞれ所定の角度に制御することにより、減速機用オイルバス102〜107の第1給排油口及び第2給排油口をそれぞれ低位置及び高位置に位置決めする。ステップS21では、第1切替弁37に対して、第1軸〜第6軸の減速機用オイルバスの間でオイル流路を切替える指令を行う。ステップS22では、第1切替弁37に対して、低位置にある第1給排油口にオイルを給油し且つ高位置にある第2給排油口からオイルを排油する給排油方向に切替える指令を行う。ステップS23では、第2切替弁73、第3切替弁83、及び第4切替弁85に対して、撹拌モードの経路に切替える指令を行う。ステップS24では、循環ポンプ35を駆動する指令を行うことにより、撹拌モードを実行する。これにより、オイルバス33内の不純物を浮遊させることができる。
【0047】
ステップS25では、第1切替弁37に対して、低位置にある第1給排油口からオイルを排油し且つ高位置にある第2給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を行う。ステップS26では、第3切替弁83に対してオイル交換モードの回収経路に切替える指令を行う。ステップS27では、循環ポンプを駆動する指令を行うことにより、オイル交換モードの回収作業を実行する。オイルバス33内の不純物を浮遊させた後に回収作業を実行するため、オイルバス33内に不純物が残り難く、オイル交換による浄化作用を向上させることができる。
【0048】
ステップS28では、第1切替弁37に対して、低位置にある第1給排油口にオイルを給油する給排油方向に切替える指令を行う。ステップS29では、第3切替弁83及び第4切替弁85に対してオイル交換モードの給油経路に切替える指令を行う。ステップS30では、循環ポンプを駆動する指令を行うことにより、オイル交換モードの給油作業を実行する。
【0049】
ステップS31では、実行していない関節軸が有るかを判定し、有る場合には(ステップS31のYES)、ステップS21に戻り、第1切替弁37に対して、別個の減速機用オイルバスにオイル流路を切替える指令を行う。次いで、ステップS22〜ステップS30において、攪拌モード及びオイル交換モードを実行する。ステップS31において、実行していない関節軸が無い場合には(ステップS31のNO)、終了する。
【0050】
前述したオイル循環システム100によれば、第1軸〜第6軸の減速機用オイルバスを自動的に切替えながら、不純物中の金属粉の測定又はオイル交換を連続して実行できる。
【0051】
前述した実施形態におけるコンピュータで実行可能なプログラムは、コンピュータ読取り可能な非一時的記録媒体、CD−ROM等に記録して提供できる。本明細書において種々の実施形態について説明したが、本発明は、前述した種々の実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲に記載された範囲内において種々の変更を行えることを認識されたい。
【符号の説明】
【0052】
10 ロボット
11 ロボットベース
12 減速機
13 オイルバス
14 オイル
15 第1給排油口
16 第2給排油口
17 ロボットアーム
18 減速機
19 オイルバス
20 オイル
21 第1給排油口
22 第2給排油口
30 オイル循環装置
31 第1給排油口
32 第2給排油口
33 オイルバス
34 オイル
35 循環ポンプ
36 配管
37 第1切替弁
38 制御部
40 オイル循環装置
41 フィルタ機構
42 金属粉収集部
43 フィルタ
50 オイル循環装置
51 オイル回収タンク
60 オイル循環装置
61 新オイルタンク
70 オイル循環装置
71 撹拌モードの経路
72 フィルタモードの経路
73 第2切替弁
80 オイル循環装置
81 撹拌モードの経路
82 オイル交換モードの回収経路
83 第3切替弁
84 オイル交換モードの給油経路
85 第4切替弁
90 オイル循環装置
91 撹拌モードの経路
92 フィルタモードの経路
93 オイル交換モードの回収経路
94 オイル交換モードの給油経路
95 磁石
96 アダプタ
97 オイルの流路方向
98 金属粉
100 オイル循環システム
101 ロボット
102〜107 減速機用オイルバス
108 ロボット制御装置
109〜114 第1軸〜第6軸サーボモータ
115 モータ制御部
116 攪拌モード指令部
117 フィルタモード指令部
118 オイル交換モード(回収)指令部
119 オイル交換モード(給油)指令部