(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程Dの金属が、銀、ニッケル、スズ、鉄、金、コバルト、銅、これらの酸化物、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0004】
従来、基材の表面のメタライゼーションは、電解めっき法と無電解めっき法の2種類の方法に大別される。
【0005】
ガルバノプラスティー法とも呼ばれる電解めっき法は、電流を用いた酸化還元反応に基づくものである。金属は、水性溶媒中の陽イオンとして供給される。メタライズしようとする基材と対極との間に電流が印加される。すると、金属陽イオンは、基材の表面で還元される。電解堆積の重大な欠点の1つは、メタライゼーションの対象が導電体でなければならない点にある。したがって、この種のメタライゼーションは、ポリマー、ガラス等の基材においては不可能である。
【0006】
無電解めっき法では電流を使用しない。金属は、別の手段である乾式法又は湿式法により堆積される。「乾式法」と呼ばれる方法のうち、PVD(物理蒸着法)及びCVD(化学蒸着法)を挙げることができるが、これらは、メタライゼーションを行うために基材を真空下に置く必要があることを、重大な欠点として有している。
【0007】
技術的により簡単に実施できる「湿式法」と呼ばれる方法は、より一般的であり、中でも特に、「無電解」浸漬法と呼ばれる無電解めっきが挙げられる。
【0008】
浸漬による無電解めっき法においても、金属は水性溶媒中の陽イオン種として供給される。還元剤も、通常は錯形成剤と共に溶媒中に存在する。めっき浴は、金属塩と還元剤の両者が浴中に存在するが、直接酸化還元反応を起こさないように調製される。酸化還元反応は、触媒の存在下でのみ可能である。そのために、メタライズしようとする基材の表面は、事前に増感剤及び必要に応じて活性化剤で処理され、表面に触媒活性が付与される。触媒活性を有する表面の存在下で、金属塩は、溶媒中に存在する還元剤と直接反応し、還元される。
【0009】
この、浸漬による無電解めっきのための技術は、表面処理業界において従来から用いられている。
【0010】
繰り返すと、具体的に下記に示す多くの欠点について注意が必要である。
・めっき液が不安定であり、基材の導入の前に金属塩が沈殿するおそれがある。
・堆積速度が遅い。
・化学触媒の使用は高価である。
・処理には全体として多くの工程を含んでいる。
・溶液の定期的なメンテナンスを要する。
・数種の金属を同時に堆積させることが困難である。
・金属堆積物の基材への接着力が弱いため、堆積物が非常に脆い。
【0011】
湿式法による非電解めっき法は、近年、エアロゾルスプレーイングの原理に基づく改良を受けている。この方法は、「JetMetal(登録商標)」法と呼ばれ、本願出願人によって開発及び改良された方法であり、1又は複数の酸化還元溶液は、メタライズの対象となる基材上にエアロゾルの形で噴霧される。溶液中に金属塩の形で存在する金属は、その後、還元剤と接触し、直接基材上で速やかに堆積する。「JetMetal(登録商標)」法によるメタライゼーションにより最終的に得られる金属薄膜は、このように、金属原子の堆積により形成される。この堆積物は、従来どおり洗浄及び乾燥することができる。基材上に均一で連続した金属堆積物を得るために、熱処理は不要である。
【0012】
この「JetMetal(登録商標)」エアロゾルメタライゼーション法は、具体的には、仏国特許発明第2763962号明細書、欧州特許第2326747号明細書、欧州特許第2318564号明細書に記載されている。この方法は、既存の他の無電解めっき法に対し、顕著な利点を有する。「JetMetal(登録商標)」法は、工業的規模で、室温及び大気圧下で、不純物を含まず、或いは殆ど不純物を含まない状態で、均一かつ連続的な金属薄膜で基材をメタライズすることを可能にする。
【0013】
更に、装飾用又は機能用の金属パターン(プリント回路、RFID用アンテナ等)を基材上に固定するためのいくつかの方法が知られている。
【0014】
この方法には、
→加法的な方法(金属の堆積):銀系インクによる印刷法、一時マスク法、又は
→減法的な方法(既存の金属のエッチング):フォトエッチング(フォトリソグラフィー)法、レーザーエッチング法が存在する。
【0015】
加法的な方法
銀系インクによる印刷法において、パターンは、銀粒子を充填したインクを用いた直接印刷法(スクリーン印刷法又はインクジェット印刷法)により形成される。インクに含まれる溶媒を除去し、導電性のパターンを得るためには熱処理が必要である。この方法により得られるパターンの電気伝導度は、他の金属堆積法により得られる連続的な金属薄膜のそれよりも低くなる。
【0016】
一時マスク法は、所定の領域のメタライゼーションを阻止するために、保護対象となる表面にマスク(接着剤、剥離可能なバーニッシュ、ステンシル等)を適用することからなる。この技術は、複雑なパターンの形成に適用することは困難であり、大量生産に向かない機械的動作を必要とする。
【0017】
減法的な方法
フォトエッチングは、プリント回路の製造のために、エレクトロニクス業界において広く用いられている。ベース基板は、エポキシ/グラスファイバー層を覆う銅の層を有している。銅は感光性樹脂(「フォトレジスト」)で覆われており、typon(パターンが印刷されたマスク)を通して露光され、これを露光工程という。露光された樹脂は、光の作用で重合する。その後、重合しなかった樹脂を可溶化するために、適切な現像液が用いられる。重合した樹脂で保護されない銅を侵食するために、化学エッチング法が適用される(エッチング工程)。最後に、基板を抽出溶液に接触させ、重合した樹脂の痕跡も全て除去する(剥離工程)(
図1参照)。
【0018】
レーザーエッチングは、基材上に既に存在する金属を選択的に除去するためのレーザーの使用からなる。この方法は、非常に精度が高いが、高価であり、広範囲のパターンに対して実施するのが困難である。
【0019】
このように、近年、微細かつ精密かつ複雑な金属パターン(アラベスク、エンレラック、カリグラフィー等)を、このようなパターンで被覆される基材の表面に、面方向と共に、厚さ方向についても、高い耐久性で堆積させることを可能にする、工業的な表面処理が求められていることが明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の根底をなす技術的課題の1つは、先行技術における、このような欠陥を解消することにある。
【0022】
したがって、本発明は、以下の目的の少なくとも1つを充足することを目的とする。
【0023】
求められる改善は、特に以下の分野のうち少なくとも1つである。
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、工業化及び自動化が容易な方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、実施が容易な方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、経済的な方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、工程間の停止時間がなく連続的に実施でき、既存のコーティング製造用のラインに統合可能な方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、基材に完全かつ堅固に密着した金属パターンが得られる方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、表面及び厚さが均一かつ規則的な金属パターンが得られる方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、特に電気伝導体用に十分な厚さを有する金属パターンが得られる方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、硬く、あらゆる種類の衝撃に対する耐久性を有する金属パターンが得られる方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、使用する消耗品が、入手容易かつ単純かつ安価であり、調合が容易である方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、「クリーン」であり、又は環境適合性を有し、すなわち、毒性がなく又はわずかな毒性しかなく又は非常に少量のみの溶液を使用し、処理に伴い排出される流出液のリサイクルが可能な方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、平坦又は3次元形状を有する物体上に装飾用の(パターンがミラー効果を発揮する)金属パターンを形成可能な方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、それを実施するための工業設備の柔軟性、設備の簡素化、生産工程の減少、生産性の増大等をもたらす方法を提供する、
→あらゆる種類の基材上に、微細かつ精密かつ複雑な金属パターンを形成するための、種々の金属(銀、銅、ニッケル等)のパターンを、従来の工業用コーティング及び/又は湿式メタライゼーション設備で得ることを可能にする方法を提供する、
→上記の目的の少なくとも1つにおいて言及されている方法の実施のための、経済的かつ高効率な工業設備を提供する、
→上記の目的の少なくとも1つにおいて言及されている方法において使用することができる、経済的かつ高効率な消耗品(のセット)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述の目的の全部又は一部は、第1の態様において、基材上に金属パターンを形成する方法に関し、
・本質的に下記の工程:
A.必要に応じて、金属パターンを受けるための基材の表面を準備する工程、
B.製造されるパターンのネガパターンに対応する位置が切り抜かれたスクリーン印刷用マスク/ステンシルを用いて、かつ/又は直接印刷法、好ましくはインクジェット印刷法により、前記製造されるパターンのネガパターンに対応する前記基材の表面に、一時保護膜を堆積させる工程、
C.必要に応じて、前記基材の表面、特に製造されるパターンに対応する領域を活性化する工程、
D.少なくとも1種類の金属の堆積により、基材、特に製造されるパターンに対応する領域上に、メタライゼーションを行う工程、
E.工程Bの一時保護膜を除去する工程、
F.必要に応じて、前記金属パターンを保持する前記基材の表面を洗浄する工程、
G.必要に応じて、前記金属パターンを保持する前記基材の表面を乾燥する工程、
H.必要に応じて、前記金属パターンを保持する前記基材の表面に仕上げ加工を行う工程を含み、
・前記一時保護膜を除去する工程Eを、工程Dの間、又は少なくともその一部を工程Dの間、及び/又は工程Dの後、又は少なくともその一部をメタライゼーション工程Dかつ/又はその後に、かつその一部をメタライゼーション工程Dの前に実施することを特徴とする本発明によって達成される。
【0025】
この、生産ライン上に配置可能であり、特に、金属パターンで改質される領域のネガパターンを形成する基材の表面の所定の領域に、一時保護膜を適用することによる、選択的メタライゼーション技術の開発は、本出願人によるものである。この一時保護膜の特徴は、金属パターンを受ける基材の表面から、容易かつ完全に除去可能である能力にあり、金属パターンの微細さと精密さは、複雑なものであっても、この除去操作により損なわれない。特に、本発明者らは、例えばパターンの製造工程の間又はその少なくとも一部の間に、方法の後の工程で使用される溶媒に溶解することによって、かつ/又はこのメタライゼーションDの後に、又はメタライゼーション工程Dの間及び/又はメタライゼーション工程Dの一部の前に、特に非機械的手段による一時保護膜の除去を、少なくとも部分的に行うことを提案する。
【0026】
実際には、一時保護膜の除去Eは、メタライゼーション中に完全に実施することができる。この場合、この除去Eの継続時間はメタライゼーションDの継続時間以下である。
【0027】
変形例によれば、この除去Eは、一部がメタライゼーションDの間、かつ一部がこのメタライゼーションDの後及び/又は前に実施される。
【0028】
別の変形例によれば、この除去Eは、このメタライゼーションDの前に、かつ一部が後に実施される。
【0029】
別の変形例によれば、この除去Eは、全部がこのメタライゼーションDの後に実施される。
【0030】
特に、本方法は、以下の利点を有している。
i)本方法は、複雑な形状を有する装飾的及び/又は機能的な金属パターン、特に、微細な文字要素を実現可能にする、
ii)本方法は、特に、硬度及び基材への密着性の点で、工業生産性と品質への要求に適合する、
iii)本方法は、容易かつ経済的に実施可能である、
iv)本方法は、導電性又は非導電性の複数の基材に適用可能である、
v)蒸着可能な金属又は合金の範囲が非常に広い、
vi)用いる消耗品、特に溶液は安定である、
vii)パターンの微細さ及び堆積物の厚さを容易に制御できる、
viii)本方法は、合金又は複合金属パターンを製造することが可能である。
【0031】
本発明の注目すべき特徴によると、工程Eは、本質的に下記の操作の少なくとも1つからなる。
・本方法において使用する溶媒の少なくとも1種類を用いた一時保護膜の溶解で、前記一時保護膜は、好ましくはアルカリ可溶性であり、好ましくは前記方法に適用されるアルカリ溶媒により溶解可能である一時保護膜の溶解
・液体相への取り込み
・気体、好ましくは空気による機械的取り込み
【0032】
第1の実施形態によると、金属の堆積Dは、エアロゾル状の1又は複数の酸化還元溶液の噴霧による無電解めっきである。
【0033】
更に、この本発明の第1の実施形態は、必要に応じて、メタライゼーション工程Dの前に、下記の工程の少なくとも1つを、好ましくは下記の順序で含んでいる。
I.基材の表面エネルギーを増大させる工程で、本方法が活性化工程Cを含む場合には、基材の表面エネルギーを増大させる工程Iは、必要に応じて、当該活性化工程Cの前に置かれてもよい。
J.基材の表面を湿潤させる工程、
K.基材の表面を洗浄する工程。
【0034】
好ましくは、工程Dの金属は、銀、ニッケル、銅、スズ、鉄、金、コバルト、これらの酸化物、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0035】
本方法が、金属パターンを受ける基材の表面を調製する工程Aを含んでいる場合、当該工程Aは、少なくとも1層のバーニッシュの堆積及び/又は脱脂を含んでいる。有利には、堆積されるバーニッシュは、顔料/色素を含み或いは含まず、熱及び/又はUV等の化学放射により硬化する有機層(水溶性粉末の形態を取るポリウレタン等)からなるものであってよい。
【0036】
基材の表面を調製する工程Aに含めることができる、工程Iによる基材の表面エネルギーを増大させるための任意の処理は、物理的処理、好ましくは以下の物理的処理:フレーム処理、プラズマ処理及びこれらの組み合わせ、及び/又は化学処理、好ましくは以下の化学処理:シラン系溶液の塗布、1種以上の酸性溶液を用いた表面の脱不動態化、希土類酸化物研磨、フッ素化及びこれらの組み合わせから選択される。
【0037】
第2の実施形態によると、金属の堆積Dは、1(又は複数)の適切な金属化溶液への浸漬による、(無電解型)自己触媒化学的メタライゼーション又は置換によるメタライゼーションであり、活性化工程Cを含み、必要に応じて、活性化Cの前に、以下の工程の少なくとも1つを、好ましくは以下の順序で含んでいる。
L.好ましくは工程B及び工程Cの前に実施されるサテンエッチング工程、
M.工程Lによるサテンエッチングを実施する場合における、基材の表面を洗浄する工程。
【0038】
第3の実施形態によると、基材自体が導電性の導電性の材質であり又は導電性を有するように処理されており(公知技術により、事前に導電性を付与する)、金属の堆積Dが電解めっきである。
【0039】
本発明の有益な実施形態によると、関連するメタライゼーション方法は、上述の第1の実施形態及び/又は第2の実施形態及び/又は第3の実施形態を含んでいてもよい。
【0040】
本発明の好ましい特徴によると、一時保護膜を溶解させるための溶媒は、メタライゼーション工程Dのために使用される液体の少なくとも1つ及び/又は必要に応じて少なくとも1回の洗浄工程において使用される液体中に含まれ、メタライゼーション工程Dの継続時間は制限されないが、好ましくは一時保護膜の溶解の継続時間以下である。
【0041】
有利には、得られる金属パターンは、装飾用及び/又は機能用のものであり、好ましくは、プリント回路、半導体基板上の集積回路、ラジオ波識別(RFID)チップ、電子リーダによって読取り可能なピクトグラム、化粧品及び/又は自動車製品の装飾的な視覚表現等の、製品、特に市販品の識別のための図形的及び/又は記述的情報を含み、好ましくはこれらのものからなる群に含まれる。
【0042】
本発明の特筆すべき特徴によると、本発明の方法は、例えば、コーティング及び/又は湿式めっき用等の工業用装置上で、連続的に/インラインで実施される。
【0043】
第2の態様によると、本発明は、好ましくは装飾及び/又は機能用の金属パターンを有する物品の製造方法であって、請求項の少なくとも1つに記載の方法を実施することを特徴とする物品の製造方法に関する。
【0044】
第3の態様によると、本発明は、本発明の方法を実施するための装置であって、
i.基材の表面上に一時保護膜を堆積させるためのモジュールと、
ii.メタライゼーションモジュールと、
iii.必要に応じて、仕上げ層を製造するためのモジュール及び/又は、
iv.必要に応じて、金属パターンを受けるための基材の表面を準備するためのモジュール及び/又は、
v.必要に応じて、工程Bの変形の1つにおいて有用な少なくとも1つのシルクスクリーン/ステンシルマスク及び/又は、
vi.必要に応じて、工程Cの基材の表面のための活性化モジュール及び/又は、
vii.必要に応じて、工程Eにより、工程Bの一時保護膜を除去するためのモジュール及び/又は、
viii.必要に応じて、工程Fにより、洗浄を行うためのモジュール及び/又は、
ix.必要に応じて、工程Hにより、少なくとも1つの仕上げ層を堆積させるためのモジュールを含む装置に関する。
【0045】
本発明の有利な実施形態によると、本装置は、例えば、コーティング及び/又は湿式めっき用等のラインに組み込むことができる。
【0046】
本発明の第4の態様によると、本発明は、本発明の方法を実施するための消耗品のセットであって、
a.工程Bの一時保護膜を形成するための消耗品と、
b.工程Dのメタライゼーションのための消耗品と、
c.必要に応じて、工程Aの金属パターンを受けるための基材の表面の調製のための消耗品及び/又は、
d.必要に応じて、工程Bの変形例の1つにおいて有用な、少なくとも1つのシルクスクリーン/ステンシルマスク及び/又は、
e.必要に応じて、工程Cの基材の表面の活性化のための消耗品及び/又は、
f.必要に応じて、工程Eにより、工程Bの一時保護膜を消去するための消耗品及び/又は、
g.必要に応じて、工程Fにより、洗浄を行うための消耗品及び/又は、
h.必要に応じて、工程Hにより、少なくとも1つの仕上げ層を堆積するための消耗品を含む消耗品のセットに関する。
【0047】
定義
本明細書の全体を通じて、単数形は、単数及び複数の両者を表す。
【0048】
以下に示す定義は、例示として、本発明の解釈のために用いることができる。
【0049】
「エアロゾル」という用語は、例えば、溶液又は分散液の霧状化及び/又は霧化により製造され、サイズが100μm未満、好ましくは60μm未満、更に好ましくは0.1〜50μmの液滴のミストを意味する。
【0050】
「無電解めっき」という用語は、特に、仏国特許発明第2763962号明細書、欧州特許第2326747号明細書、欧州特許第2318564号明細書に記載されている方法に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
基材
基材は、非導電性材料、半導体材料又は導電性材料であってよい。
【0053】
非導電性材料が用いられる場合、それは、ガラス、プラスチック/(共)重合体材料(ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、複合材料、セラミック、織物、木材、鉱物、石膏又はセメント材料を含み、理想的にはそれらからなる群より選択することができる。
【0054】
導電性材料が基材として用いられる場合、それは金属であってよい。
【0055】
基材となり得る半導体材料は、半導体産業において通常用いられるものの1つであってよい。
【0056】
本明細書に記載の特定の実施条件下において、基材は、上述の導電性又は非導電性の強固な基材である。強固な中空ガラス基材又は強固なポリマー基材が特に好ましい。
【0057】
本発明の意味するところにおいて、中空ガラス基材は、非平面状ガラスの基材であり、特に、ガラス製フラスコ又は瓶等のガラス容器である。
【0058】
本発明の方法の他の好ましい実施条件下において、基材は可撓性を有する基材である。それは、以下の物質:例えば、ポリマー、金属、織物、シートメタル及び紙から選択される。好ましくは、可撓性を有する基材は、織物又はポリマーフィルムである。例えば、可撓性を有する基材は、厚さが100μm〜5mmのポリエステルフィルム、密度が50〜600g/m
2の繊維又は紙製シートである。
【0059】
本発明において、「可撓性を有する基材」とは、人の力のみで、破壊又は損傷することなく、曲げたり折り畳んだりすることのできる基材をいう。
【0060】
一方、「強固な基材」とは、人の力のみで、破壊又は損傷することなく、曲げたり折り畳んだりすることのできない基材をいう。
【0061】
工程A:金属パターンを受けるための基材の表面の調製
この表面調製工程は、一時保護膜の塗布の前又は後に実施可能である。
【0062】
ある場合には、一時保護膜の塗布前に基材の調製を行うことにより、この層が物理化学的に変化を受け、基材上に固着し、一時保護膜の除去(好ましくは可溶化)がより困難になることを阻止することができる。
【0063】
場合によっては、接着力を強化し、除去(好ましくは可溶化)を遅らせるために、一時保護膜の塗布後に表面の調製を行ってもよい。
【0064】
このような調製は、任意の公知の好適な製品を用いた表面の清浄化/脱脂を含んでいてもよい。
【0065】
このような清浄化/脱脂に加え、或いはその代わりに、基材の表面に、例えば、UV架橋性のバーニッシュ等のバーニッシュを、圧縮空気スプレーガン(例えば、HVLP:大容量低圧スプレーガン)等の任意の公知の好適な手段を用いた噴霧により堆積させてもよい。
【0066】
変形例によると、工程Aは、表面エネルギーを増大させるための少なくとも1つの処理(工程I)を含んでいてもよい。
【0067】
工程B:製造されるパターンのネガパターンに対応する前記基材の表面への一時保護膜の堆積
【0068】
一時保護膜
本発明の注目すべき構成によると、この一時保護膜は、所望のパターンのネガパターンに対応するコーティングである。このコーティングは、基材の表面に塗布すると乾固及び/又は硬化し、かつ/又は、UV等の化学的放射により架橋される液体製品より得られる。
【0069】
この液体製品は、本発明の方法の後の工程において使用される少なくとも1つの溶媒に可溶であるという特徴を有している。具体的には、これは、アルカリ溶媒に可溶な製品であってもよい。
【0070】
この一時保護膜生成物は、例えば、好適な溶媒に高い溶解度を有するインク及び/又は他の有機製品を含んでいてもよい。
【0071】
変形例によると、保護被膜の形成に使用される液体製品は、乾固及び/又は硬化及び/又はUV等の化学的放射による架橋後に、基材への接着力を、本発明の方法において後に使用される、好ましくは液体の物質の少なくとも1つ、特に溶媒によって減少させることができる。そのような保護製品の例として、アルカリ感受性インクが挙げられる。
【0072】
もちろん、従来の印刷の場合のように、インクが顔料を含んでいる必要はない。しかし、色素を含むインクを用いると、基材の表面に塗布された一時保護膜が可視化され、実用的であり得る。
【0073】
B.1:一時保護膜の堆積は、例えば、スクリーン印刷用マスク/ステンシル、オフセット印刷、フレキソ印刷、パッド印刷又は任意の他の転写技術を用いた任意の公知の塗布技術によって行うことができる。
【0074】
スクリーン印刷用マスク/ステンシルは、例えば、ポリマー材料からなる物質より製造され、従来より当業者に公知である。
【0075】
B.2:他の場合には、一時保護膜の堆積は、基板上に微細、精密かつ透明な印刷を可能にする技術によって実施することができる。インクジェット印刷又は適切なインクを含むペンによる堆積は、この要求を満たす例である。
【0076】
工程C:基材の表面、特に形成されるパターンに対応する領域の活性化
C.1:工程Dが、エアロゾル状の1又は複数の酸化還元溶液の噴霧による無電解めっきである場合、金属によっては活性化Cが必要な場合がある。本工程は、この工程Dにおいて起こる酸化還元反応を加速することを目的とする。
【0077】
この工程Cの間に、少なくとも1つの増感性化学種を基材の表面に吸着させ、それによりメタライゼーション反応を加速させる。
【0078】
一時保護膜が存在する場合、好ましくは、1又は複数の増感性化学種は、保護されていない基材及び保護層に吸着されている。
【0079】
工程Cを実施するために、増感溶液は、好ましくは、基材の表面、好ましくは一時保護膜で覆われた基材の表面に、噴霧により塗布される。この噴霧は、圧縮空気スプレーガン(例えば、HVLP:大容量低圧スプレーガン)等の任意の公知の好適な手段を用いて実施される。変形例によると、これは、浸漬であってもよい。
【0080】
例えば、塩化スズ(II)(SnCl
2)又はSnSO
4/H
2SO
4/キノール/アルコール系の第1の増感溶液は、噴霧又は浸漬によって塗布される。次いで、基材の表面に核生成の中心を形成させるために、Sn
2+と反応することのできるパラジウム又は銀の溶液、又は外部で生成させたPdSnのコロイド溶液を塗布する。詳細については、例えば、「Metal Finishing Guidebook and Directory Issue」、1996年刊、 Metal Finishing publication、p.354、356及び357;H.Narcus著、「Metallizing of Plastics」、Reinhold Publishing Corporation、1960年刊、第2章、21ページ;F.Lowenheim著、「Modern electroplating」、John Wiley & Sons publication、1974年刊、第28章、636ページを参照されたい。
【0081】
有利には、基材の表面の増感の工程は、例えば、仏国特許出願公開第2763962号明細書の実施形態に記載の塩化スズ(II)系の増感溶液によって実施される。この場合、後述する洗浄液等を用いた洗浄工程が、増感工程の直後に、中間工程を置くことなく実施される。
【0082】
変形例によると、基材の表面の活性化は、増感溶液、特に、例えば、仏国特許発明第2763962号明細書の実施形態による塩化パラジウムによって実施される。この場合、後述する実施例に記載の洗浄液等を用いた洗浄工程が、活性化工程の直後に、中間工程を置くことなく実施される。
【0083】
C.2:工程Dが、1(又は複数)の好適なメタライゼーション溶液への浸漬による、電流を用いない/自己触媒的な化学的(「無電解」)メタライゼーションである場合、工程Dにおける触媒的な酸化還元反応を加速するための活性化Cは、通常必須である。
【0084】
これは、一時保護膜で被覆された基材の表面に、電流を印加せずに、化学的メタライゼーション触媒、例えばSn/Pdタイプの触媒を堆積させることからなる。触媒は、基材の全表面(固定されるパターンに対応する保護されていない領域及び一時保護膜層)に吸着される。
【0085】
この活性化Cは、好ましくは、工程L(サテンエッチング)及びそれに続く工程M(洗浄)の前に実施される。
【0086】
工程L
このサテンエッチング工程は、実際には、基材の表面エネルギーを増大させ、かつ/又は基材の表面粗さを増大させるための処理で、工程Iにおいて下記で定義されるタイプのものであってよい。
【0087】
電流の印加を伴わないメタライゼーションの場合、サテンエッチングは、堆積される金属パターンに対する適度な接着性を付与するために、好ましくは、物理的処理(コロナ放電、プラズマ処理)又は化学的処理(例えば、硫黄−クロム処理又は他の処理)により実施される。
【0088】
工程M
これは、工程Kにおいて下記で定義されるタイプの洗浄である。
【0089】
工程D:メタライゼーション
D.1:エアロゾルの噴霧によるメタライゼーション
以下の工程:工程C又は工程Dに先行してもよい、工程I(基材の表面エネルギーを増大させる処理)、工程J(基材の表面を湿潤させる工程)及び工程K(基材の表面の洗浄)について、D.1の説明に先立ち、以下に説明する。
【0090】
工程I
工程Iによる、基材の表面エネルギーを増大させるための処理は、物理的処理、好ましくは以下の物理的処理:フレーム処理、プラズマ処理及びこれらの組み合わせ、及び/又は化学処理、好ましくは以下の化学処理:シラン系溶液の塗布、1種以上の酸性溶液を用いた表面の脱不動態化、希土類酸化物研磨、フッ素化及びこれらの組み合わせから選択される。
【0091】
好ましくは、工程Iの物理的処理はフレーム処理である。
【0092】
更に、物理的処理は、基材が、プラスチック材料、複合材、ポリマーからなる強固な物質又はポリマー、メタルシート等の金属、織物若しくは紙製の可撓性の基材である場合、有利には、フレーム処理及び/又はプラズマ処理である。
【0093】
フレーム処理は、例えば、メタライズの対象となる基材を、温度が1200℃〜1700℃のフレームの下で通過させることである。フレーム処理の継続時間は、通常、4〜50秒である。フレームは、好ましくは、酸素等の酸化剤の存在下でプロパンガス(又は都市ガス)等の燃料を燃焼させることにより得られる。
【0094】
プラズマ処理は、例えば、メタライズの対象となる基材を、例えば商品名ACXYS(登録商標)又はPLASMATREAT(登録商標)の市販品等の、プラズマトーチ内で通過させることに対応する。
【0095】
工程Iにおいて、化学的処理は、好ましくは、以下の処理:シラン系溶液の塗布、1種以上の酸性溶液を用いた表面の不動態化、希土類酸化物研磨、フッ素化及びこれらの組み合わせから選択される。
【0096】
更により好ましくは、化学的処理は、シラン系溶液の塗布、1種以上の酸性溶液を用いた不動態化、フッ素化及びこれらの組み合わせである。
【0097】
更に、この化学的処理は、より具体的には、基材が、中空ガラス、金属又は合金製の強固な物質からなる場合に実施される。
【0098】
不動態化とは、例えば、硝酸、クエン酸、硫酸及びそれらの混合物である強酸性溶液等の、基材上に塗布された腐食性物質の作用によって、基材表面を覆う酸化物層が除去されるまで基板の表面が腐食されることを意味する。
【0099】
「希土類酸化物研磨」とは、例えば、希土類酸化物の溶液を、メタライズの対象になる基材の表面に塗布し、パッドで、特に基材の表面をこすることにより、基材の表面に存在する酸化物層が完全に除去され、後者(表面)が平滑になるまで基材の表面を研磨することを意味する。好ましくは、希土類酸化物溶液は、酸化セリウム溶液であり、例えば、POLIR−MALIN(登録商標)社から商品名GLASS POLISHING(登録商標)で市販されているタイプのものである。好ましくは、希土類酸化物研磨工程は、このようにして研磨された表面を、特に蒸留水を用いて洗浄する工程を含んでいる。
【0100】
フッ素化は、例えば、メタライズの対象となる基材を、減圧下のチャンバー内で、フッ素化添加剤を含む不活性ガス(アルゴン)系のガス状の溶液と接触させることに対応している。本発明によると、フッ素化は、例えば、商品名AIR LIQUIDE(登録商標)で市販されているタイプの装置を用いて実施される。
【0101】
基材の表面エネルギーを増大させるためのこれらの物理的又は化学的処理は、基材の表面エネルギーが50又は55ダイン以上、好ましくは60又は65ダイン以上、更に好ましくは70ダイン以上になるように実施されなければならない。これらの値を下回ると、基材の濡れが不十分になり、メタライゼーション後に得られる金属被膜の接着力、光沢及び反射特性が不十分になる。表面エネルギーの値は、例えば、ブラシ又はフェルトを用いて特定の溶液を基材に塗布し、このようにして塗布された溶液が収縮する時間を測定することからなる当業者に公知の技術により測定することができる。
【0102】
工程J:
湿潤工程Jは、酸化還元溶液を拡がり易くするために、基材の表面を液膜で被覆することからなっている。湿潤液は、以下の群より選択される:必要に応じて、1又は複数の、陰イオン性、陽イオン性又は中性界面活性剤が添加されており、脱イオンしていてもいなくてもよい水、1又は複数のアルコール(例えば、イソプロピルアルコール、エタノール及びこれらの混合物)を含むアルコール溶液及びこれらの混合物。特に、湿潤液として、陰イオン性界面活性剤及びアルコールが添加された脱イオン水が選択される。湿潤液を気化し、基材上にスプレー後その上で凝結させる湿潤工程の変形例において、工業上の好適性に関する明白な理由から、液体は主に水性であることが好ましい。湿潤の継続時間は、対象となる基材の表面及び湿潤エアロゾルの噴霧の流速に依存する。
【0103】
必要に応じて、基材の活性化工程Cを湿潤工程で置き換えてもよい。
【0104】
工程K:
有利には、この洗浄工程Kは、工程F又はM等の他の(記号で表示された)工程と同様、基材の表面の一部又は全部を、本発明の方法の種々の工程で実施される1又は複数の洗浄液の供給源と接触させることからなり、洗浄液、好ましくは脱イオン水のエアロゾルを噴霧することにより実施される。
【0105】
(工程)D.1は、エアロゾルの噴霧による非電解めっきであり、特に、仏国特許発明第2763962号明細書、欧州特許第2326747号明細書、欧州特許第2318564号明細書に記載の方法に関連している。
【0106】
エアロゾルは、例えば:
・1又は複数の酸化剤と1又は複数の還元剤を同時に含む単一の溶液、
・又は、第1の溶液が1又は複数の酸化剤を含み、第2の溶液が1又は複数の還元剤を含む2つの溶液、
・或いは、少なくとも1つの酸化剤溶液と、少なくとも1つの還元剤溶液が存在する場合、それぞれが、1若しくは複数の酸化剤又は1若しくは複数の還元剤を含んでいてもよい複数の溶液である。
【0107】
還元剤は、有利には、金属陽イオンを金属に還元するのに十分な強さを有しており、すなわち、還元剤の酸化還元対の標準酸化還元電位は、酸化剤の還元剤の酸化還元対の標準酸化還元電位よりも小さくなければならない(γルール)。
【0108】
非電解金属化工程の間に使用される酸化還元溶液は、エアロゾルの形態で基材上に噴霧され、好ましくは1又は複数の酸化金属陽イオンの溶液であり、1又は複数の金属陽イオン及び1又は複数の還元化合物の溶液、有利には水性溶液から得られる。これらの酸化還元溶液は、濃縮原液を希釈することによって得られることが好ましい。希釈剤は好ましくは脱イオン水である。
【0109】
本発明の好ましい構成によれば、エアロゾルの噴霧は、100μm未満、好ましくは60μm未満、より好ましくは0.1〜50μm未満の液滴のミストが得られるように、溶液及び/又は分散液の霧状化及び/又は霧化によって実施される。
【0110】
本発明による方法では、金属溶液の噴霧が、好ましくは連続的に行われ、基板が移動されて噴霧に供される。例えば、金属堆積物が銀である場合、噴霧は連続していることが好ましい。例えば、ニッケル系の金属堆積物の場合、噴霧は、休止時間と交互に行われることが好ましい。
【0111】
本発明の方法において、噴霧は、1dm
2のメタライズの対象となる表面に対して、0.5〜200秒、好ましくは1〜50秒、更に好ましくは2〜30秒の継続時間を有している。噴霧の継続時間は、金属堆積物の厚さと、その結果として堆積物の不透明度に影響を及ぼす。殆どの金属について、噴霧の継続時間が15秒未満であると、堆積物は半透明に分類され、噴霧の継続時間が60秒を超えると、堆積物は不透明に分類される。基材は、噴霧の間に少なくとも部分的に回転されてもよい。
【0112】
第1の噴霧の方法によると、1又は複数の金属イオンの溶液と、1又は複数の還元剤の溶液は、処理対象となる表面上に、1又は複数のエアロゾルの形態で、同時に連続的に噴霧される。この場合、酸化剤の溶液と還元剤の溶液との混合は、エアロゾルスプレーの形成の直前に、又は、好ましくはメタライゼーションの対象となる基材の表面と接触する直前に、酸化剤溶液から生成されたエアロゾルと、還元剤溶液から生成されたエアロゾルとを混合することにより実施されてもよい。
【0113】
第2の噴霧の方法によると、1又は複数の金属陽イオンの溶液、次いで1又は複数の還元剤の溶液が、1又は複数のエアロゾルを介して連続的に噴霧される。換言すれば、酸化還元溶液の噴霧は、1又は複数の金属酸化剤の溶液と、1又は複数の還元剤の溶液を個別に噴霧することによって実施される。この第2の可能性は、少なくとも1つの還元剤の溶液と金属塩の溶液を交互に噴霧することに対応する。
【0114】
第2の噴霧の方法の枠組みの中では、異なる金属又は合金の複数層を形成するために、数種の酸化型の金属陽イオンの組み合わせ、好ましくは、異なる塩が、還元剤とは当然別個に、かつそれぞれ個別に順次噴霧される。言うまでもなく、種々の性質の金属陽イオンとは別に、互いに異なる対陰イオンを使用することが可能である。
【0115】
噴霧工程の一変形例によると、酸化剤と還元剤との混合物は準安定的であり、混合物の噴霧後に、金属への変換を開始させるために、好ましくは、開始剤と、有利には、1又は複数のエアロゾルを介して接触させることにより、反応混合物の噴霧前、噴霧中又は噴霧後に、還元剤を活性化させる。この変形例においては、酸化剤と還元剤とを予め混合しておき、噴霧後に基板の表面を被覆するまでその反応を遅らせることができる。反応の開始又は活性化は、任意の好適な物理的手段(温度、紫外線等)又は化学的手段によって得られる。
【0116】
上に示し、以下の実施例で説明する方法論的考察以外に、本発明の方法において使用される製品について、より具体的な情報を提供することが適切である。
【0117】
噴霧によりエアロゾルを生成する溶液の製造に有機溶媒を使用する可能性を排除するものではないが、水が最も好適な溶媒であると思われる。
【0118】
基材のメタライゼーション工程の間に噴霧される酸化還元溶液は、1又は複数の金属酸化剤の溶液及び1又は複数の還元剤の溶液である。
【0119】
噴霧される酸化剤の溶液中の金属塩の濃度は、0.1g/L〜100g/L、好ましくは1〜60g/Lであり、原液の金属塩濃度は、0.5g/L〜500g/L、或いは原液の希釈率が、5〜5000である。有利には、金属塩は、硝酸銀、硫酸ニッケル、硫酸銅、塩化スズ(II)、クロロ金酸、塩化鉄(III)、塩化コバルト及びそれらの混合物が挙げられる。
【0120】
還元剤は、好ましくは、以下の化合物:水素化ホウ素物、ジメチルアミノボラン、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、ホルマリン、水素化アルミニウムリチウム、グルコース誘導体又はエリソルビン酸ナトリウム塩等の還元糖及びそれらの混合物から選択される。還元剤の選択には、pH及びメタライゼーション薄膜に要求される特性を考慮に入れる必要がある。こうした定型的な調整は、当業者の技術範囲内である。噴霧される還元剤溶液中の還元剤濃度は0.1g/L〜100g/L、好ましくは1〜60g/Lであり、原液の還元剤濃度は、0.5g/L〜250g/L、或いは原液の希釈率は、5〜2500である。
【0121】
本発明の特定の構成によれば、メタライゼーションの際に噴霧される酸化還元溶液の少なくとも1つに、粒子が含まれている。そのため、粒子は、金属堆積物に取り込まれる。これらの硬質粒子は、例えば、ダイヤモンド、セラミック、カーボンナノチューブ、金属粒子、希土類酸化物、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、グラファイト、金属酸化物及びそれらの混合物である。これらの粒子を金属薄膜に取り込ませることにより、メタライゼーションされた基材に、特別な機械的、トライボロジー的、電気的、機能的及び審美的特性が付与される。
【0122】
D.2:電流を用いない(無電解)浸漬によるメタライゼーション
この工程Dの前に、以下の工程の少なくとも1つ:工程L(基材の表面のサテンコーティング処理)及び工程M(基材の表面の洗浄)が先行していてもよい。
【0123】
この工程Lは、エアロゾルを噴霧することによる無電解メタライゼーションに関連して、D.1において上述した工程Iに従う。
【0125】
好ましくは、メタライゼーションD.2は、好ましくは、一時保護膜を除去後に、酸化剤、還元剤と共に安定剤及び界面活性剤を含む「無電解」浴中に、基材を浸漬することにより実施される。
【0126】
本工程の間に、メタライゼーションは、吸着された触媒粒子(例えば、パラジウム)に触媒される全ての領域で進行する。一時保護膜(好ましくは、工程Eにおいて除去される)で保護された表面では触媒されず、したがってメタライゼーション部位となることができない。
【0127】
一時保護膜が除去されない場合には、それによる汚染を避けるために、触媒が吸着できず、無電解浴に耐性を有する一時保護膜を適用する必要がある。
【0128】
電流を用いない浸漬によるメタライゼーションに関する詳細について、下記の実施例と共に、ガルバノプラスティーに関する文献等のこの技術を説明した多数の文献を参照することができる。
【0129】
D.3:基材が導電性材料である場合の電解メタライゼーション
このメタライゼーションの詳細については、この技術を説明した多数の文献を参照することができる。
【0130】
工程E:一時保護膜の除去
一時保護膜の除去は、メタライゼーション工程Dの間、又はメタライゼーション工程Dの少なくとも一部の間、及び/又はメタライゼーション工程Dの後、或いはメタライゼーション工程Dの少なくとも一部の間かつ/又はメタライゼーション工程Dの後、及び一部はメタライゼーション工程Dの前に実施することができる。
【0131】
一時保護膜の少なくとも一部をメタライゼーションの間に除去する場合、この除去によって生成される残渣が、メタライゼーションを阻害する可能性はないという仮定の下で、後者において用いられる手段によりこれを実現する。特に、エアロゾルの噴霧によるメタライゼーションが、これに該当する。
【0132】
メタライゼーション後の一時保護膜の除去は、例えば、ニッケル等のある種の金属を用いたエアロゾルの噴霧によるメタライゼーションにおけるように、メタライゼーション溶液等のメタライゼーションの手段が、一時保護膜を可溶化できない場合に用いることができる。
【0133】
本発明の好ましい実施形態によれば、このような除去は、プロセスで使用される溶媒中への溶解である。
【0134】
本発明の別の可能性によれば、本方法は、洗浄工程Fを含んでおり、一時保護膜の除去工程Eは、一部が工程Dの間に、かつ少なくとも一部が工程Fの間に実施される。
【0135】
本発明の別の可能性によれば、本方法は、乾燥工程Gを含み、一時保護膜の除去工程Eは、一部が工程Dの間に、かつ少なくとも一部が工程Gの間に実施される。
【0136】
E.1:エアロゾル噴霧によるメタライゼーション
本実施形態では、メタライゼーション工程中に一時保護膜の除去を行うことができる。このような場合には、メタライゼーション溶液の少なくとも一方が、一時保護膜の溶剤を含んでいることが重要である。
【0137】
実際に、更により好ましくは、一時保護膜は、アルカリに可溶性であり(例えば、インク)、メタライゼーション溶液は、高いアルカリ性のpHを有し、このような一時保護膜の可溶化を可能にする。
【0138】
メタライゼーション溶液の噴霧の間に、保護されていない領域がメタライゼーションされ、一方、保護層は可溶化され、流出液中に除去され、金属パターンが出現する。
【0139】
一時保護膜によって最初に被覆されていた領域上の金属化の可能性を阻止するために、メタライゼーションの継続時間は、制限されることが好ましい。
【0140】
本実施形態において、活性化を必要としない金属(例えば、ニッケル)について、一時保護膜の溶媒を用いて、例えば、対象となる金属パターンと金属層で被覆された一時保護膜自体を含む基材の表面への噴霧により、洗浄を行うことができる。後者(一時保護膜)の溶解は、それを被覆する金属層の除去を伴う。
【0141】
E.2:電流を用いない浸漬によるメタライゼーション
メタライゼーションの前に、このように、好適な溶液、すなわち、一時保護膜の溶媒を含む溶液を基材の表面上に塗布する。これは、例えば、浸漬に続いて洗浄することによって実施することができる。この溶解により、形成される金属パターンのネガパターンに対応する基材の表面の領域が露出する。
【0142】
表面の脱保護された領域は、活性化されて(触媒が吸着されて)いないため、この領域では、金属パターンを形成するのに十分な継続時間の間に、メタライゼーションが開始されない。十分な継続時間とは、基材の表面の活性化領域上への金属パターンの形成に必要な時間を意味する。
【0143】
工程F:洗浄
本発明によれば、本方法に関与する複数の堆積工程の間に実施される洗浄は、好適な公知の方法、例えば、洗浄液の噴霧/洗浄液の排出又は洗浄液中への浸漬により実施される。後者は、有利かつ好ましくは水であり、より具体的には脱イオン水である。
【0144】
工程G:乾燥/ブローイング
特に各洗浄工程の後に実施してもよい乾燥又はブローイングは、洗浄水の排出からなる。それは、有利には、例えば20〜60℃の温度で、例えば5バール/空気パルスでのパルス圧縮空気システムを使用して20〜60℃の温度で実施することができる。開放空間又はオーブンでの乾燥が可能である。
【0145】
工程H:金属パターンを有する基材の表面の仕上げ処理
外部の刺激性の薬剤に対する金属パターンの保護を強化するために、かつ/又は金属パターンの導電性を強化するために、本発明により、好ましくは電解めっきによる厚膜化により、少なくとも1つの、メタライゼーション工程Dの金属と同一又は異なる金属を用いたメタライゼーション(「ポストメタライゼーション」)を提供することができる。
【0146】
仕上げ処理の変形例は、金属パターンを担持する基材の表面上に、架橋性液体組成物の少なくとも1つのトップコートの堆積であってもよい。保護層上で架橋可能なこの液体組成物は、例えば、塗料又はバーニッシュ、好ましくは仕上げバーニッシュである。このバーニッシュは、水溶性又は有機系、好ましくは有機系基剤を含んでいてもよい。それは、以下の塗料:アルキド、ポリウレタン、エポキシ、ビニル、アクリル及びそれらの混合物の中から選択される。好ましくは、以下の化合物:エポキシ、アルキド及びアクリルから選択され、さらに好ましくは、アルキドバーニッシュである。架橋性液体仕上げ組成物は、UV又は熱ベーキングによって架橋することができ、着色のための顔料又は染料を含んでいてもよい。
【0147】
本発明による方法では、処理の様々な工程から生じる廃液を、本方法において再利用し、環境への影響を低減するために、有利に再処理及び再利用することができる。
【0148】
本発明の方法には、(下記に示すような)多くの利点が存在する。
【0149】
本発明の方法は、金属パターンの優れた接着性及び外部からの攻撃に対する非常に高い抵抗性を、長期間にわたり可能にする、高い生産性を有する工業的規模での、微細かつ複雑な金属パターンの選択的な堆積に関する。
【0150】
任意のタイプの基材上に金属パターンを生成するための本方法によって提供される、柔軟性、視覚的、装飾的及び機能的可能性は、極めて有用である。
【0151】
更に、本発明の方法は、
・物体の装飾又は図形的若しくは記述的な識別情報による、メタライズされた標識のための、
・及び半導体基板上の集積回路のプリント回路、ラジオ波識別チップ、電子リーダで読み取り可能なピクトグラム等の、電子デバイスの機能部材の製造のための新しい工業プロセスを実現可能にする。
【0152】
このように、本発明は、本明細書に記載され請求される、金属パターンの選択的堆積の技術を含む、これらの新規かつ有利な工業的プロセスを提供する。
【0153】
(付記)
(付記1)
基材上に金属パターンを製造する方法であって、
・本質的に下記の工程:
A.必要に応じて、金属パターンを受けるための基材の表面を準備する工程、
B.製造されるパターンのネガパターンに対応する位置が切り抜かれたスクリーン印刷用マスク/ステンシルを用いて、かつ/又は直接印刷法、好ましくはインクジェット印刷法により、前記製造されるパターンのネガパターンに対応する前記基材の表面に、一時保護膜を堆積させる工程、
C.必要に応じて、前記基材の表面、特に製造されるパターンに対応する領域を活性化する工程、
D.製造されるパターンに対応する領域上に、少なくとも1種類の金属の堆積によるメタライゼーションを行う工程、
E.工程Bの一時保護膜を除去する工程、
F.必要に応じて、前記金属パターンを保持する前記基材の表面を洗浄する工程、
G.必要に応じて、前記金属パターンを保持する前記基材の表面を乾燥する工程、
H.必要に応じて、前記金属パターンを保持する前記基材の表面に仕上げ加工を行う工程を含み、
・前記一時保護膜を除去する工程Eを、工程Dの間、又は少なくともその一部を工程Dの間、及び/又は工程Dの後、又は少なくともその一部をメタライゼーション工程Dかつ/又はその後に、かつその一部をメタライゼーション工程Dの前に実施する方法。
【0154】
(付記2)
工程Eが、本質的に下記の操作の少なくとも1つを含むことを特徴とする付記1に記載の方法。
・前記方法において使用する溶媒の少なくとも1種類を用いた前記一時保護膜の溶解で、前記一時保護膜は、好ましくはアルカリ可溶性であり、好ましくは前記方法に適用されるアルカリ溶媒により溶解可能である前記一時保護膜の溶解
・液体相への取り込み
・気体、好ましくは空気による機械的取り込み
【0155】
(付記3)
・金属の堆積Dが、エアロゾル状の1又は複数の酸化還元溶液の噴霧による無電解めっきであり、
・必要に応じて、メタライゼーション工程Dの前に、下記の工程の少なくとも1つを、好ましくは下記の順序で含むことを特徴とする付記1及び/又は2に記載の方法。
I.前記基材の表面エネルギーを増大させる工程で、前記方法が活性化工程Cを含む場合には、基材の表面エネルギーを増大させる工程Iは、必要に応じて、当該活性化工程Cの前に置かれてもよい。
J.前記基材の表面を湿潤させる工程、
K.前記基材の表面を洗浄する工程。
【0156】
(付記4)
工程Dの金属が、銀、ニッケル、スズ、鉄、金、コバルト、銅、これらの酸化物、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする付記3に記載の方法。
【0157】
(付記5)
前記金属パターンを受けるための表面への少なくとも1層のバーニッシュの堆積及び/又は脱脂を含む工程Aを含むことを特徴とする付記3又は4に記載の方法。
【0158】
(付記6)
工程Iによる前記基材の表面エネルギーを増大させるための処理が、物理的処理、好ましくは以下の物理的処理:フレーム処理、プラズマ処理及びこれらの組み合わせ、及び/又は化学処理、好ましくは以下の化学処理:シラン系溶液の塗布、1種以上の酸性溶液を用いた表面の脱不動態化、希土類酸化物研磨、フッ素化及びこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする付記3〜5の少なくとも1つに記載の方法。
【0159】
(付記7)
前記金属の堆積Dは、1(又は複数)の適切な金属化溶液に浸漬することによる化学的メタライゼーション(無電解又は置換)であり、活性化工程Cを含み、必要に応じて、メタライゼーションDの前に、以下の工程の少なくとも1つを、好ましくは以下の順序で含むことを特徴とする付記1及び/又は2の少なくとも1つに記載の方法。
L.好ましくは工程Cの前に実施されるサテンエッチング工程、
M.工程Lによるサテンエッチングを実施する場合における、前記基材の表面を洗浄する工程。
【0160】
(付記8)
前記基材自体が導電性の導電性の材質であり又は導電性を有するように処理されている場合において、前記金属の堆積Dが電解めっきであることを特徴とする付記1及び/又は2に記載の方法。
【0161】
(付記9)
前記仕上げ加工Hが、1又は複数のバーニッシュ層及び/又は1若しくは複数の金属からなる電解質コーティングの形成であることを特徴とする付記1及び/又は2に記載の方法。
【0162】
(付記10)
一時保護膜を溶解するための溶媒が、メタライゼーション工程Dのために使用される液体の少なくとも1つ及び/又は必要に応じて少なくとも1回の洗浄工程において使用される液体中に含まれ、当該メタライゼーション工程Dの継続時間が、好ましくは一時保護膜の溶解の継続時間以下であることを特徴とする付記3に記載の方法。
【0163】
(付記11)
得られる金属パターンが、装飾用及び/又は機能用のものであり、好ましくは、プリント回路、半導体基板上の集積回路、ラジオ波識別(RFID)チップ、電子リーダによって読取り可能なピクトグラム、化粧品及び/又は自動車製品の装飾的な視覚表現等の、製品、特に市販品の識別のための図形的及び/又は記述的情報を含み、好ましくはこれらのものからなる群に含まれることを特徴とする付記1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【0164】
(付記12)
工業用装置上で、連続的に/インラインで実施されることを特徴とする付記1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【0165】
(付記13)
好ましくは装飾及び/又は機能用の金属パターンを有する物品の製造方法であって、付記1〜12の少なくとも1つに記載の方法を実施することを特徴とする物品の製造方法。
【0166】
(付記14)
付記1〜13の少なくとも1項に記載の方法を実施するための装置であって、
i.基材の表面上に一時保護膜を堆積させるためのモジュールと、
ii.メタライゼーションモジュールと、
iii.必要に応じて、仕上げ層を製造するためのモジュール及び/又は、
iv.必要に応じて、金属パターンを受けるための基材の表面を準備するためのモジュール及び/又は、
v.必要に応じて、工程Bの変形の1つにおいて有用な少なくとも1つのシルクスクリーン/ステンシルマスク及び/又は、
vi.必要に応じて、工程Cの基材の表面のための活性化モジュール及び/又は、
vii.必要に応じて、工程Eにより、工程Bの一時保護膜を除去するためのモジュール及び/又は、
viii.必要に応じて、工程Fにより、洗浄を行うためのモジュール及び/又は、
ix.必要に応じて、工程Hにより、少なくとも1つの仕上げ層を堆積させるためのモジュールを含む装置。
【0167】
(付記15)
付記1〜13のいずれか1項に記載の方法を実施するための消耗品のセットであって、
a.工程Bの一時保護膜を形成するための消耗品と、
b.工程Dのメタライゼーションのための消耗品と、
c.必要に応じて、工程Aの金属パターンを受けるための基材の表面の準備のための消耗品及び/又は、
d.必要に応じて、工程Bの変形の1つにおいて有用な少なくとも1つのシルクスクリーン/ステンシルマスク及び/又は、
e.必要に応じて、工程Cの基材の表面の活性化のための消耗品及び/又は、
f.必要に応じて、工程Eにより、工程Bの一時保護膜を消去するための消耗品及び/又は、
g.必要に応じて、工程Fにより、洗浄を行うための消耗品及び/又は、
h.必要に応じて、工程Hにより、少なくとも1つの仕上げ層を堆積するための消耗品を含む消耗品のセット。
【実施例】
【0168】
添付された図面を参照しながら、種々の基材上への金属パターンの製造に関する以下の実施例の記載を読むことにより、本発明をより深く理解することができるであろう。
・
図1は、プリント回路の製造のための公知のフォトリソグラフィー方法を説明する概略図である。
・
図2は、エアロゾルの噴霧を用いて本発明の方法を実施する実施例1及び2のプロトコールを説明する概略図である。
・
図3は、実施例1のスクリーン印刷マスクを示す図である。
・
図4は、実施例1において得られた金属パターンを示す図である。
・
図5は、実施例2のスクリーン印刷マスクを示す図である。
・
図6は、実施例2において得られた金属パターンを示す図である。
【0169】
実施例1:塗装されたプラスチック基材上への装飾用の金属(銀)パターンの形成
【0170】
・−A−表面の調製
ジェット・メタル・テクノロジーズ(登録商標)社製のUV架橋性バーニッシュ(塗料)商品番号VB330Rを、空気HVLPガンを用い、空気圧3〜4バールで、寸法25cm×20cmの、予め脱脂したABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン)プレート上に塗布する。
【0171】
塗布されたプレートから、60℃のオーブン内で5分間溶媒を除去し、UVチャンバー内で重合させる(0.7〜1.2J/cm
2、UVA)。
【0172】
・−B−一時保護膜の堆積
アルカリ可溶性のバインダーを含む速乾性のアルカリ可溶性製品であるSOCOMORE社から市販されているPropaso SCの薄膜を、形成する金属パターンのネガパターンに対応するスクリーン印刷マスクを用いて、塗装されたプレート上に固定する。
【0173】
マスクは、
図3に示す。最も明るい領域は、一時保護膜を形成するためのアルカリ可溶性製品/インクを通過させる。
【0174】
・−I−表面エネルギーの増大処理
フレーム温度を1400℃に調節したフレームスプレーガンを用いて、合計5秒間で急速に通過させることにより、フレーム処理を行う(フレーム処理後、基材は、50ダインを超える表面エネルギーを有しなければならない)。
【0175】
フレーム処理工程の後、保護されていない表面は、全体を水で湿潤させなければならない(表面に水を噴霧することにより、連続的な液膜を形成させる)。
【0176】
・−C−活性化/増感
塩化スズ(II)系の増感溶液を、HVLPガンを用いて10秒間噴霧する。
【0177】
・−K−洗浄
HVLPガンを用いて脱イオン水を10秒間噴霧することにより、増感溶液を洗浄する。
【0178】
・−D−メタライゼーション/−E−一時保護膜の除去
濃度2g/Lで、アルカリ性のpH11.2±0.2の硝酸銀水溶液と、グルコース水溶液を、HVLPガンを用いて40秒間同時に噴霧する。
・メタライゼーションは、インクが付着していない領域で進行する。
・インクの薄膜は、メタライゼーション溶液に接触することにより溶解する。
【0179】
・−F−洗浄
HVLPガンを用いて脱イオン水を10秒間噴霧することにより洗浄する。
【0180】
・−G−乾燥/ブローイング
室温で5バールの間欠的なパルス状の圧縮空気により、乾燥/ブローイングを行う。
【0181】
・−H−仕上げ
ジェット・メタル・テクノロジーズ(登録商標)社製のUV架橋性バーニッシュ商品番号VM112により、HVLPガンを用いて、上記のようにメタライズされたプレートを塗装する。
【0182】
プレートを、60℃のオーブン内で5分間溶媒を除去し、UVチャンバー内で重合させる(0.7〜1.2J/cm
2、UVA)。
【0183】
このようにして、インクが最初に堆積した領域のネガパターンに対応する金属銀パターンが得られる。
図4参照(メタライゼーションされていない領域は、スクリーン印刷インクで被覆されていた領域に対応している。)。
【0184】
実施例2:強固なポリマー基材上への導電性パターンの形成
【0185】
・−B−一時保護膜の堆積
アルカリ可溶性のバインダーを含む速乾性のアルカリ可溶性製品であるSOCOMORE社から市販されているPropaso SCの薄膜を、形成する金属パターンのネガパターンに対応するスクリーン印刷マスクを用いて、寸法25cm×20cmのABSプレート上に固定した。マスクは、
図5に示す。最も明るい領域は、一時保護膜を形成するためのアルカリ可溶性製品/インクを通過させる。
【0186】
・−I−表面エネルギーの増大処理
フレーム温度を1400℃に調節したフレームスプレーガンを用いて、合計5秒間で急速に通過させることにより、フレーム処理を行う(フレーム処理後、基材は、50ダインを超える表面エネルギーを有しなければならない)。
【0187】
フレーム処理工程の後、保護されていない表面は、全体を水で湿潤させなければならない(表面に水を噴霧することにより、連続的な液膜を形成させる)。
【0188】
・−C−活性化/増感
塩化スズ(II)系の増感溶液を、HVLPガンを用いて10秒間噴霧する。
【0189】
・−K−洗浄
HVLPガンを用いて脱イオン水を10秒間噴霧することにより、増感溶液を洗浄する。
【0190】
・−D−メタライゼーション/−E−一時保護膜の除去
濃度2g/Lで、アルカリ性のpH11.5±0.2の硝酸銀水溶液と、グルコース水溶液を、HVLPガンを用いて25秒間同時に噴霧する。
・メタライゼーションは、インクが付着していない領域で進行する。
・インクの薄膜は、メタライゼーション溶液に接触することにより溶解する。
【0191】
・−F−洗浄
HVLPガンを用いて脱イオン水を10秒間噴霧することにより洗浄する。
【0192】
・−G−乾燥/ブローイング
室温で5バールの間欠的なパルス状の圧縮空気により、乾燥/ブローイングを行う。
【0193】
このようにして、インクが最初に堆積した領域のネガパターンに対応する導電性回路が得られる。
図6参照(メタライゼーションされていない領域は、スクリーン印刷インクで被覆されていた領域に対応している。)。
【0194】
銀の堆積物について、硫酸銅と硫酸からなる従来の銅酸性浴を用いた、銅による電解めっきによる厚膜化を行うことにより、十分な導電性を示す。
【0195】
実施例3:インクジェット印刷による連続的な装飾用金属パターンの形成
【0196】
・ポリプロピレン樹脂製の製品(直径2.5cm、高さ8cmの円筒形)を、垂直コンベアに固定する。
【0197】
・コンベアを、毎分3m/分の定速で移動させ、物品を350rpmで回転させる。
【0198】
・−A−表面の調製
物品の表面をイソプロピルアルコールで拭くことにより脱脂し、3%の赤色色素を含むジェット・メタル・テクノロジーズ(登録商標)社製のUV架橋性バーニッシュ商品番号VB330Rを、3台のHVLPガンを用いて塗布する。ポリプロピレン製品を50℃の加熱オーブン中に移し、4分間溶媒を除去し、UVオーブン内で、0.9J/cm
2の出力で、物品の表面を照射する。
【0199】
・−I−表面エネルギーの増大処理
フレーム温度を1400℃に調節したフレームスプレーガンを用いて、合計5秒間で急速に通過させることにより、コンベア上で、フレーム処理を行う(フレーム処理後、基材は、50ダインを超える表面エネルギーを有しなければならない)。
【0200】
フレーム処理工程の後、保護されていない表面は、全体を水で湿潤させなければならない(表面に水を噴霧することにより、連続的な液膜を形成させる)。
【0201】
・−B−一時保護膜の堆積
リコーGen4プリンティングヘッドを用いた、アルカリ感受性バインダーを含む、商品名Heavy Duty Inkのアルカリ感受性TIGERインクによるインクジェット印刷を、回転している物品に対し、(コンベアから取り外すことなく)連続的に実施する。出力40mJ/cm
2の水銀灯でUV照射することにより、インクを架橋させる。
【0202】
この印刷は、所望のパターンのネガパターンに対応している。
【0203】
インク中の薄膜形成剤により、表面が確実に被覆される。なお、顔料は、以下の方法における正確な操作のために必須ではない。
【0204】
・−C−活性化/増感
塩化スズ(II)系の増感溶液を、HVLPガンを用いて5秒間噴霧する。
【0205】
・−K−洗浄
HVLPガンを用いて、脱イオン水を10秒間噴霧することにより、増感溶液を洗浄する。
【0206】
・−D−メタライゼーション
濃度2g/Lで、アルカリ性のpH11.2±0.2の硝酸銀水溶液と、グルコース水溶液を、HVLPガンを用いて20秒間同時に噴霧する。
・メタライゼーションは、インクが付着していない領域で進行する。
アルカリ感受性インクの接着力は、メタライゼーションの間に溶液と接触する際に影響を受ける。
【0207】
・−F−洗浄/−E−一時保護膜の除去
HVLPガンを用いて脱イオン水を20秒間噴霧することにより洗浄する。
【0208】
メタライゼーション工程の間に影響を受けていたインクは、この洗浄の間に除去される。
【0209】
・−G−乾燥
エアーブレードを用いた、室温、5バールの間欠的なパルス状の圧縮空気により、乾燥を行う。
【0210】
・−H−仕上げ
ジェット・メタル・テクノロジーズ(登録商標)社製のUV架橋性バーニッシュ商品番号VM112により、HVLPガンを用いて、上記のようにメタライズされたプレートを塗装する。
【0211】
プレートから、60℃のオーブン内で5分間溶媒を除去し、UVチャンバー内で重合させる(0.7〜1.2J/cm
2、UVA)。
【0212】
このようにして、最初に付着したインクのネガパターンに対応して、鏡面効果を有する金属銀の装飾パターンが得られる。メタライゼーションされていない領域は、ベースバーニッシュの赤色を示す。ピクトグラムは、商標又はロゴを表示させるために形成できる。
【0213】
実施例4:銅で同時に電解めっきによる厚膜化した銀パターンの形成
【0214】
・−B−一時保護膜の堆積
巻き取り/巻き戻し装置を備えたコンベア上に平らになるように設置した、厚さ75μmの可撓性ポリアミドフィルム上に、速乾性のアルカリ可溶性インク薄膜LINX、製品番号1070を、インクジェット噴霧(セイコー製ヘッド)により固定する。
【0215】
インクジェットパターンは、形成されるパターンのネガパターンに対応している。
【0216】
・−I−表面エネルギーの増大処理
金属堆積物の基材への接着力を増大させるために、大気圧プラズマ前処理(ロータリープラズマヘッド)を適用した(フレーム処理後、基材は、50ダインを超える表面エネルギーを有しなければならない)。
【0217】
フレーム処理工程の後、表面は、全体を水で湿潤させなければならない(表面に水を噴霧することにより、連続的な液膜を形成させる)。
【0218】
・−C−活性化/増感
塩化スズ(II)系の増感溶液を、HVLPガンを用いて5秒間噴霧する。
【0219】
・−K−洗浄
HVLPガンを用いて脱イオン水を10秒間噴霧することにより、増感溶液を洗浄する。
【0220】
・−D−メタライゼーション/−E−一時保護膜の除去
濃度2g/Lで、アルカリ性のpH11.2±0.2の硝酸銀水溶液と、グルコース水溶液を、HVLPガンを用いて20秒間同時に噴霧する。
・メタライゼーションは、インクが付着していない領域で進行する。
・インクの薄膜は、メタライゼーション溶液に接触することにより可溶化され、溶出する。
【0221】
・−F−洗浄
HVLPガンを用いて脱イオン水を10秒間噴霧することにより洗浄する。
【0222】
・−H−仕上げ
銀パターンを有するフィルムは、コンベアによって、20℃の硫酸銅と硫酸とを含む酸性銅浴を含むタンクに導入され、厚さ10μmの、電解めっきを用いた銅による厚膜化を受ける。
【0223】
ポリアミドフィルムは、銀パターンが形成された領域の1つの上で、可溶性銅正極の反対側に配置された負極接点に接続される。
【0224】
電流密度を3A/dm
2とすることにより、20分で10μmの銅堆積物の生成が可能になる。
【0225】
・−F−洗浄
脱イオン水を30秒間噴霧することにより洗浄する。
【0226】
・−G−乾燥
室温、5バールの間欠的なパルス状の圧縮空気により、乾燥を行う。
【0227】
全工程において、ポリアミドフィルムは、処理開始時に巻き戻され、各工程を経て、工程の最後に再び巻き取られる。