(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845147
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】可動の患者担体を有する磁気共鳴検査システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
A61B5/055 366
A61B5/055 370
A61B5/055 390
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-544962(P2017-544962)
(86)(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公表番号】特表2018-506375(P2018-506375A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】EP2016053486
(87)【国際公開番号】WO2016135045
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年1月17日
(31)【優先権主張番号】15156948.0
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴェイ ポール ロイストン
(72)【発明者】
【氏名】ハム コルネリス レオナルドゥス ヒェラルドゥス
【審査官】
亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−105643(JP,A)
【文献】
特開2005−131103(JP,A)
【文献】
特開2008−220647(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0232395(US,A1)
【文献】
特開2009−165728(JP,A)
【文献】
特開2010−284233(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/153493(WO,A1)
【文献】
特開2000−107151(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0189608(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0303882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査ゾーンと、
ボアを有し、前記ボア内の前記検査ゾーンに静磁界を印加する磁石と、
支持表面を有する患者担体と、
前記支持表面に対し固定の幾何学的関係を有するRFアンテナと、
を有する磁気共鳴検査システムであって、前記患者担体が、前記支持表面に対し垂直方向に移動可能であるように設けられ、
前記磁石が、前記磁石の支持フレームを有するとともに、前記支持フレームに取り付けられたブリッジ部材を具備し、前記ブリッジ部材は、前記ボア内に配置される前記患者担体を支持し、前記患者担体の前記支持表面に対し垂直方向に移動可能であり、
前記患者担体の前記移動時、前記ブリッジ部材が、前記患者担体を支持し、
前記磁気共鳴検査システムが更に、
前記ブリッジ部材を駆動して前記患者担体の移動を制御する駆動システムであって、前記支持フレームと前記ブリッジ部材との間に取り付けられ、前記ブリッジ部材を垂直方向に駆動する1又は複数のアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する駆動制御モジュールと、を有する駆動システムと、
磁気共鳴信号の取得を制御するスキャン制御モジュールと、
有し、前記駆動制御モジュールが、前記スキャン制御モジュールに結合されるとともに、前記磁気共鳴信号の取得によって生じる運動を補償するように前記ブリッジ部材及び前記ブリッジ部材により支持される前記患者担体を垂直方向に駆動する、磁気共鳴検査システム。
【請求項2】
前記磁石は、前記ボアを有する円筒形状の磁石であり、スカート部品が、前記ブリッジ部材と前記ボアの内壁との間又は前記患者担体と前記ボアの内壁との間に提供される、請求項1に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項3】
前記スカート部品が、前記ブリッジ部材又は前記患者担体に可撓的に取り付けられる、請求項2に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項4】
前記スカート部品が、可撓性材料から形成されるか、可撓的に結合される複数のスカート素子として形成されるか、又は膨張可能なスカート素子として形成される、請求項2又は3に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項5】
前記患者担体が、前記支持表面に対し平行に移動可能であるように設けられる、請求項1に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項6】
前記検査ゾーンに一時的な勾配磁界を印加する勾配コイルと、
前記勾配コイルに電流を供給する勾配増幅器と、
を更に有し、
前記スキャン制御モジュールが、前記勾配増幅器を制御する勾配コントローラを有し、
前記駆動制御モジュールが、前記勾配コントローラに結合され、前記勾配磁界のスイッチングによる動きを補償するように前記患者担体の移動を制御する、請求項1に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項7】
前記検査ゾーンにRF場を生成するRFモジュールと、
前記検査ゾーンに勾配磁界を生成する勾配モジュールと、
を更に有し、
前記駆動システムが、前記支持表面に配される被検体に物質波が生成されるように前記アクチュエータを駆動し、
前記RFモジュール及び前記勾配モジュールが、前記物質波により前記被検体から生成された磁気共鳴エラストグラフィ信号を取得する、請求項1に記載の磁気共鳴検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動の患者担体を有する磁気共鳴検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
可動患者担体を有する磁気共鳴検査システムは、国際公開第2013/153493号から知られている。
【0003】
磁気共鳴イメージング(MRI)方法は、2次元又は3次元画像を形成するために磁界と核スピンとの間の相互作用を利用するものであり、MRI方法は、軟組織のイメージングの場合に、それらが多くの点で他のイメージング方法より優れており、イオン化放射線を必要とせず、通常は非侵襲であるという理由で、特に医療診断の分野において今日広く使用されている。
【0004】
概してMRI方法によれば、検査される患者の身体は、強く一様な磁界B
0中に配置され、同時に、磁界B
0の方向は、測定が関連付けられる座標系の軸(通常はz軸)を規定する。磁界B
0は、磁界強度に依存して、個別の核スピンについて異なるエネルギーレベルをもたらし、核スピンは、規定された周波数(いわゆるラーモア周波数又はMR頻度)の交番電磁界(RF場)の印加によって励起されることができる(スピン共鳴)。巨視的な観点から、個別の核スピンの分布は、全体の磁化を生成し、この全体の磁化は、適当な周波数の電磁パルス(RFパルス)の印加によって平衡状態から外れて偏向されることができ、このRFパルスの対応する磁界B
1は、z軸に対し垂直に延び、そのため、磁化はz軸を中心に歳差運動を行う。歳差運動は、円錐体の表面を表し、この円錐体の開き角はフリップ角と呼ばれる。フリップ角の大きさは、印加される電磁パルスの強度及び持続時間に依存する。いわゆる90°パルスの例において、磁化は、z軸から横方向の平面(フリップ角90°)へ偏向される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RFパルスの終了後、磁化は、元の平衡状態へ戻るように緩和し、その平衡状態において、z方向の磁化が、第1の時定数T1(スピン格子又は縦緩和時間)によって再び構築され、z方向に対し垂直な方向の磁化は、第2の及びより短い時定数T2(スピン−スピン又は横緩和時間)によって緩和する。横磁化及びそのバリエーションは、受信RFアンテナ(コイルアレイ)によって検出されることができ、RFアンテナは、磁化のバリエーションがz軸に対し垂直な方向において測定されるように、磁気共鳴検査システムの検査ボリューム内に配置され方向付けられる。横方向磁化の崩壊は、局所的な磁界不均一性によってもたらされるRF励起後に生じるディフェージングを伴い、これは、同じ信号位相を有する秩序ある状態からすべての位相角が一様に分散された状態への遷移を促す。ディフェージングは、リフォーカシングRFパルス(例えば180°パルス)によって補償されることができる。これは、受信コイルにエコー信号(スピンエコー)を生成する。
【0006】
検査される患者のような、イメージングされている被検体内において空間解像度を実現するために、3つの主軸に沿って延びる磁界勾配が、一様な磁界B
0に重ね合わせられ、これは、スピン共鳴周波数の線形の空間依存を与える。受信アンテナ(コイルアレイ)において収集される信号は、身体内の異なるロケーションに関連付けられることができるそれぞれ異なる周波数の成分を含む。受信コイルを通じて取得された信号データは、磁気共鳴信号の波数ベクトルの空間周波数ドメインに対応し、k空間データと呼ばれる。k空間データは、通常、異なる位相符号化により取得される複数のラインを含む。各々のラインは、k空間から多くのサンプルを収集することによってデジタル化される。k空間データの組は、フーリエ変換によってMR画像に変換される。
【0007】
横方向磁化は更に、一定の磁界勾配の存在下でディフェーズする。このプロセスは、いわゆる勾配エコーを形成する適当な勾配反転によって、RF誘導されるエコー(スピン)の形成と同様に、反転されることができる。しかしながら、勾配エコーの場合は、主磁界不均一性、化学シフトの効果及び他のオフ共鳴効果が、RFリフォーカスされるエコー(スピン)とは対照的に、リフォーカスされない。
【0008】
知られている磁気共鳴検査システムは、検査領域を提供するボアをもつ主磁石を有する。RFアンテナは、ボア内に固定されるように載置される。患者テーブルトップは、患者がMR検査中にボア内に横たわるために提供される。RFアンテナに対する患者テーブルトップの位置は、患者をRFアンテナのより近くに導くために調整可能である。
【0009】
米国特許第4629989号公報は、分極磁界の最適な均一領域に検査される患者を位置付けるための問題に関する。そのために、知られている患者アライメントシステムが、可視の基準ポイントを生成するためにレーザー光源を利用する。長手方向の駆動システムが、患者クレイドルを頭部又は足部を先頭にして移動させることができる。
【0010】
本発明の目的は、検査される患者の位置が磁気共鳴検査システムの静磁界内でより良く調整されることができる磁気共鳴検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、検査ゾーンと、検査ゾーンに静磁界を印加する磁石と、支持表面を有する患者担体と、支持表面に対し固定の幾何学的関係を有するRFアンテナと、を有し、患者担体が、支持表面に対し横断方向に移動可能であるように搭載される、本発明の磁気共鳴検査システムにおいて達成される。
【0012】
磁気共鳴検査システムにおいて、検査される患者から磁気共鳴信号を収集するRFアンテナは、検査される患者に対し固定の幾何学的関係を有して位置付けられる。検査ゾーンには、静磁界が印加され、RF励起フィールドは、例えば送信モードで動作されるRFアンテナによって、又は、個別の送信アンテナによって、生成されることができる。検査される患者の身体の一部は、検査ゾーンに配され、RF励起が、患者の身体内のスピンに印加されることができ、患者の身体から磁気共鳴信号が取得されることができる。RFアンテナを患者担体に搭載することによって、又は、検査される患者の身体上にRFアンテナを配置することによって、磁気共鳴信号を受信するためのRFアンテナが、検査される患者と固定の幾何学的な関係を有して位置付けられる。これは、RFアンテナと、磁気共鳴信号の取得のために検査される患者の身体との間の最適な距離を達成する。患者担体は、患者担体の支持表面に対し横断方向に移動可能であるので、検査される患者の身体の関心領域の位置は、静磁界の非常に良好な空間均一性をもつ領域において、より良く調整されることができる。良好な空間均一性をもつこの領域において、主磁界は空間的に高い一様性を有し、好適には更に、勾配磁界は線形からせいぜい非常に小さい逸脱を有するだけである。支持表面は、患者の身体が患者担体上に配置される表面である。例えば、患者は、テーブルトップ上に直接配置されることができ、又は、患者は、テーブルトップ上に配置される薄いマットレス上に配置されることができる。これらの例において、支持表面は、テーブルトップの表面によって形成される。取得される磁気共鳴信号から再構成される磁気共鳴画像は、高い画像品質を有し、更に、関心領域が非常に良好な静磁界の空間均一性の領域に正確に置かれるので、かかる再構成される磁気共鳴画像は、静磁界の空間不均一性による低いレベルのアーチファクトを有する。支持表面に対し横断方向の動きは、概して垂直方向である。それゆえ、空間均一性領域内における関心領域の正確な配置が、患者の身体のサイズに関係なく可能にされる。
【0013】
本発明によれば、痩せた患者が検査される(イメージングされる)場合、患者担体は、この痩せた患者を均一性領域内において最適に位置付けるために、垂直方向に移動されることができる。太った患者が検査される(イメージングされる)場合、患者担体は、この太った患者を均一性領域内において最適に位置付けるために降下される。更に、患者担体は、概して、検査される患者を磁気共鳴検査システムの検査ゾーンの中へ及び外へ移動させるために、その長手軸に沿って移動可能でありうる。患者担体は更に、支持表面内において、長手軸に対し横方向に移動可能でありえ、すなわち空間均一性領域に関心領域を正確に位置付けるために、横方向に移動可能でありうる。こうして、任意に、患者担体は、垂直方向及び水平方向に移動可能である。
【0014】
支持表面は、患者担体の面であり、かかる面上の検査される患者は、準備の際及び検査中に、検査ゾーンに配置される。その支持面(それの一体部分でありうる)を有する患者担体は、支持面に対し横断方向に、すなわち支持面に対し垂直な方向に沿って、移動可能である。すなわち、患者担体は、支持表面内にある長手方向及び横方向並びに支持表面に対し垂直な横断方向をもつそれ自体の座標系を規定する。本発明によれば、患者担体は、横断方向(それ自体の基準フレームに対する方向)に移動されることができるように設けられる。実際に、長手方向は、(伸張する)患者担体の長軸に沿っており、横方向は、側方方向であり、横断方向は、垂直軸に沿っている。
【0015】
本発明のこれらの及び他の見地は、従属請求項に規定される実施形態を参照して更に詳しく述べられる。
【0016】
本発明の磁気共鳴検査システムの好適な実施形態において、磁石は、支持フレームを有するとともに、ブリッジ部材を具備し、ブリッジ部材は、支持表面に対し横断方向に移動可能であるように、支持フレームに搭載され、ブリッジ部材は、患者担体を支持する。ブリッジ部材は、磁石の支持フレームに、容易に移動可能であるように搭載される。代替として、ブリッジは、部屋の床に、又は、勾配コイル若しくはRF身体コイルに搭載されることができる。ブリッジ部材は、患者担体を支持する。それゆえ、支持表面に対し横断方向の動きを実現するために患者担体を適応させる必要がない。
【0017】
別の実施形態において、磁石は、検査ゾーンが位置するボアをもつ円筒形状の磁石であり、スカート部品が、ブリッジ部材又は患者担体とボア内壁との間に提供される。スカート部品は、ブリッジ部材の患者担体とボア内壁との間の間隙をカバーする。このようにして、対象が空間に落下することが回避される。スカート部品は更に、移動中に間隙が閉じる場合に、付添スタッフの手又は指がとらえられることを防ぎ、特に、この実施形態は、患者担体とボアの壁との間の指のはさまりが回避される点で安全である。好適には、スカート部品は、可撓的に取り付けられるか、可撓性材料で作られるか、又は可撓的に結合される複数のスカート素子から形成される。別の例において、スカート部品は、膨張可能なスカート部材として形成されることができる。これらの膨張可能なスカート部材は、間隙をカバーするようにある程度膨張することができる。これは、スカート部品が間隙をカバーし続ける一方で、間隙サイズが、特にその支持表面に対し横断方向に患者担体が移動する最中に変化することを、実現する。スカート部品は、可撓的に取り付けられるカバーとして形成されることができ、それらカバーは、ブリッジ部材とボアの内壁との間の間隙にわたって配置される。これらのスカート部品は、可撓性の変形可能な物質からなるカバーでありえ、又は、移動可能であるように可撓的に取り付けられることができる。変形又は移動可能性が、(検査される患者を担持する)患者担体が検査ゾーンの中へまたは外へ移動される間、間隙をカバーすることを可能にし、更に、磁石ボアの内壁に対する患者担体の滑らかな移動を確実にする。
【0018】
他の実施形態において、駆動システムが、患者担体の移動を制御するために提供され、駆動システムは、患者担体の運動を駆動する1又は複数のアクチュエータと、アクチュエータを制御する駆動制御モジュールと、を有する。これは、患者支持体がその適切な位置に駆動されることを実現し、その結果、検査される患者を保持しながらに、患者支持体の高さを手動で調整する必要がない。駆動制御モジュールは、好適には、磁気共鳴信号の取得によって引き起こされる動きを補償するために、患者担体を駆動するように構成される。これは、検査される患者が、磁気共鳴信号の取得中にもたらされた任意の振動を経験せず、又は少なくともより小さい程度で経験するので、患者の快適さを改善する。これは特に、駆動制御モジュールが、勾配磁界のスイッチングによる動きを補償するために患者担体の移動を制御するように勾配コントローラに結合される場合に、達成される。こうして、勾配スイッチングによって生成される振動は、患者担体の動きによって補償され、検査される患者の身体上へ伝達されない。
【0019】
代替として、駆動制御モジュールは、患者支持体にゆえに検査される患者の身体上に自立的に意図的に振動を加えるように機能することができる。これは、別の発振器が検査される患者の身体に物質波を発信する必要なく、MRエラストグラフィを実施することを可能にする。
【0020】
本発明のこれらの及び他の見地は、添付の図面を参照して以下に記述される実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明が使用される磁気共鳴イメージングシステムを概略的に示す図。
【
図2】本発明が使用される磁気共鳴イメージングシステムの正面図。
【
図3】本発明が使用される磁気共鳴イメージングシステムの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明が使用される磁気共鳴イメージングシステムを概略的に示す。磁気共鳴イメージングシステムは、主コイル10の組を有する主磁石を有し、それにより、安定した一様な磁界が生成される。主コイルは、例えばトンネル形状の検査空間を囲むようにボアを形成する態様で構成される。検査される患者は、このトンネル形状の検査空間内に摺動される患者担体に配置される。磁気共鳴イメージングシステムは更に、複数の勾配コイル11、12を有し、それによって、特に個別の方向に一時的な勾配をもつ形で空間バリエーションを呈する磁界が、一様な磁界に重ね合わせられるように生成される。勾配コイル11、12は、勾配制御部21に接続され、勾配制御部21は、1又は複数の勾配増幅器及び制御可能な電源ユニットを有する。勾配コイル11、12は、電源ユニット21による電流の印加によってエネルギーを供給される;このために、電源ユニットは、適当な時間的形状をもつ勾配パルス(「勾配波形」とも呼ばれる)を生成するために電流を勾配コイルに印加する電子勾配増幅回路を具備する。勾配の強度、方向及び持続時間は、電源ユニットを制御することによって制御される。磁気共鳴イメージングシステムは更に、RF励起パルスを生成するための及び磁気共鳴信号を受信するための送信アンテナ及び受信アンテナ(コイル又はコイルアレイ)13、16を有する。送信コイル13は、好適には身体コイル13として構成され、それにより、検査される対象が囲まれることができる。身体コイルは通常、検査される患者30が磁気共鳴イメージングシステムに配置されるときに、検査される患者30が身体コイル13によって囲まれるように、磁気共鳴イメージングシステムに配置される。身体コイル13は、RF励起パルス及びRFリフォーカスパルスを送信するための送信アンテナとして働く。好適には、身体コイル13は、送信されるRFパルス(RF)の空間的に一様な強度分布を伴う。同じコイル又はアンテナが、概して、送信コイル及び受信コイルとして交互に使用される。一般に、受信コイルは多数の素子を有し、各素子は、一般に単一ループを形成する。ループの形状のさまざまなジオメトリ及びさまざまな素子の取り合わせが可能である。送信及び受信コイル13は、電子送信及び受信回路15に接続される。
【0023】
送信及び受信として働くことができる1つの(又は少数の)RFアンテナ素子があることに留意すべきである。更に、一般に、ユーザは、受信素子のアレイとして一般に形成される特定用途の受信アンテナを用いることを選択することができる。例えば、表面コイルアレイ16は、受信及び/又は送信コイルとして使用されることができる。このような表面コイルアレイは、かなり小さいボリュームにおいて高い感度を有する。受信コイルは、プリアンプ23に接続される。プリアンプ23は、受信コイル16によって受信されたRF共鳴信号(MS)を増幅し、増幅されたRF共鳴信号は、復調器24に供給される。受信アンテナ(例えば表面コイルアレイ)は復調器24に接続され、受信され事前増幅された磁気共鳴信号(MS)が、復調器24によって復調される。プリアンプ23及び復調器24は、デジタルで実現され、表面コイルアレイに組み込まれることができる。復調された磁気共鳴信号(DM)は、再構成ユニットに供給される。復調器24は、増幅されたRF共鳴信号を復調する。復調された共鳴信号は、イメージングされる対象の部分の局所スピン密度に関する実際の情報をもつ。更に、送信及び受信回路15は、変調器22に接続される。変調器22及び送信及び受信回路15は、RF励起及びリフォーカシングパルスを送信するように送信コイル13を活性化する。特に、表面受信コイルアレイ16は、ワイヤレスリンクを通じて送信及び受信回路に結合される。表面コイルアレイ16によって受信される磁気共鳴信号データは、送信及び受信回路15に送信され、(例えば表面コイルを同調させ離調させるための)制御信号が、ワイヤレスリンクを通じて表面コイルに送信される。
【0024】
再構成ユニットが、復調された磁気共鳴信号(DM)から1又は複数の画像信号を導き出し、かかる画像信号は、検査される対象のイメージングされた部分の画像情報を表現する。実際の再構成ユニット25は、好適には、イメージングされる対象の一部の画像情報を表現する画像信号を、復調された磁気共鳴信号から導き出すようにプログラムされるデジタル画像処理ユニット25として構成される。再構成ユニットの出力における信号は、モニタ26に供給され、その結果、再構成された磁気共鳴画像がモニタに表示されることができる。代替として、更なる処理又は表示を待つ間、再構成ユニット25からの信号をバッファユニット27に記憶することが可能である。
【0025】
本発明による磁気共鳴イメージングシステムは更に、例えば(マイクロ)プロセッサを有するコンピュータの形の制御ユニット20を具備する。制御ユニット20は、RF励起の実行及び一時的な勾配磁界の印加を制御する。この目的で、本発明によるコンピュータプログラムが、例えば制御ユニット20及び再構成ユニット25にロードされる。
【0026】
図2は、本発明が使用される磁気共鳴イメージングシステムの正面図を示す。
図2は、磁石フレーム101を示しており、磁石フレーム101には、主コイル、勾配コイル及びRF身体コイルが載置される。主コイルは、円筒形状であり、ボア115を形成する。ボア115内には、検査ゾーン111が位置し、検査ゾーン111からは、検査される患者からの磁気共鳴信号が取得されることができる。均一性領域117は、概して球形又は楕円領域であり、かかる領域内では、主磁界が、高い程度の空間均一性を有する。一般に、半径25cmの球形ボリュームにわたり2ppmの主磁界均一性が達成される。更に、勾配磁界は、線形性との非常にわずかな逸脱のみを有する。磁石フレーム101は、検査室の床109に配置される。患者テーブルトップ14は、ブリッジ部材103上に搭載される。ブリッジ部材は、テーブルトップの表面に対し横断方向に、この例では垂直方向に、移動可能であるように装備される。アクチュエータ105は、フレームに取り付けられて提供され、ブリッジ部材を横断方向に、すなわち両矢印で示すように上下方向に、移動させるように動作する。
【0027】
図3は、本発明が使用される磁気共鳴イメージングシステムの側面図を示す。
図3において、検査される患者は、テーブルトップ14上に示されているが、磁気共鳴検査システムの検査ゾーン111の外側に位置している。テーブルトップ14は、基台113上に載せてあり、磁石フレーム101内の検査ゾーンに平行移動されることができる。RFコイルアレイ17は、患者の身体上にすでに配置されている。RFコイルアレイ17は、実際に、患者の身体上に直接配置されることができ、又は、別のコイル支持体が、テーブルトップ14に装備されることができ、かかるコイル支持体には、RFコイルアレイが取り付けられることができる。スカート部品107が、ブリッジ部材103に可撓的に取り付けられ、検査ゾーンの内壁に到達する。ブリッジ部材の移動中、スカート部品は、ブリッジ部材と内壁との間及び更にテーブルトップと内壁との間の間隙をカバーする。アクチュエータ105は、基台113に位置する油圧システム113によって駆動される油圧アクチュエータである。代替として、圧電アクチュエータが、ブリッジ部材を駆動して垂直方向に移動させるようにアクチュエータを制御する電気駆動及び制御モジュールと共に用いられることができる。駆動及び制御モジュール113は更に、テーブルをボアの中へ及び外へ長手方向に移動させるよう制御する運動制御器32と組み合わせられることができる。