【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、酵素切断可能なペプチド配列によって少なくとも1つのクエンチャーに連結されている少なくとも1つのフルオロフォアを含む光プローブであって;フルオロフォア又は各々のフルオロフォアは、酵素切断可能なペプチド配列に連結されている場合に、少なくとも1つのクエンチャーによって実質的に蛍光消光され;フルオロフォア又は各々のフルオロフォアは、少なくとも1つのプローブエレメントの酵素切断可能なペプチド配列が切断される場合に、少なくとも1つのクエンチャーから分離され;ここで、酵素切断可能なペプチド配列は、配列番号1〜配列番号14(Table 1(表1))のうちの1つを含み、1つ又は複数のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)によって選択的に切断可能である、光プローブが提供される。
【0012】
【表1】
【0013】
配列番号1は、公知のペプチド配列に対応する。しかし、このような配列は、本明細書に記載の光プローブのタイプにおいては公知ではない。
【0014】
一実施形態において、酵素切断可能なペプチド配列が配列番号2〜配列番号14(Table 1(表1))のうちの1つを含む、本明細書に記載の光プローブが提供される。
【0015】
用語「実質的に蛍光消光された」とは、本発明者らは、消光されたフルオロフォアの蛍光が、消光されていないフルオロフォアの蛍光の30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満であることを意味する。
【0016】
MMPにより酵素切断可能なペプチド配列が切断された結果、プローブの少なくとも1つのフルオロフォアがクエンチャーから分離されるため、少なくとも1つのフルオロフォアの蛍光は、もはやクエンチャーによって消光されない。したがって、適切な光の波長でプローブを励起した際、プローブの少なくとも1つのフルオロフォアが蛍光を発する。
【0017】
このため、本発明の光プローブの蛍光は、MMPの存在を示す。典型的には、本発明の光プローブの蛍光は、活性MMP及び機能性MMPの存在を示す。
【0018】
好ましくは、酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-2及び/又はMMP-9及び/又はMMP-13によって選択的に切断可能である。例えば、酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-2によって選択的に切断可能であり得る。酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-9によって選択的に切断可能であり得る。酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-13によって選択的に切断可能であり得る。
【0019】
より好ましくは、酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-9及び/又はMMP-13によって選択的に切断可能である。酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-9及び/又はMMP-13のみによって選択的に切断可能であり得る。例えば、一実施形態において、酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-9及びMMP-13によって切断可能である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、酵素切断可能なペプチド配列は、1つ又は複数のMMP-2、MMP-9及びMMP-13によって切断され、プローブの蛍光の増加が生じ、バックグラウンド蛍光よりも少なくとも5倍大きくなる。より好ましくは、酵素切断可能なペプチド配列は、1つ又は複数のMMP-2、MMP-9及びMMP-13によって切断され、蛍光の増加が生じ、バックグラウンド蛍光より少なくとも8倍大きくなる。
【0021】
好ましくは、酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-2、MMP-9及びMMP-13以外のMMPによっては切断されない。酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-2、MMP-9及びMMP-13に対する基質であり得るが、他のMMPの基質ではない。例えば、酵素切断可能なペプチド配列は、MMP-1、MMP-3、MMP-7、MMP-8及びMMP-11によっては切断されることはない。
【0022】
MMPは、組織リモデリングに重要な役割を果たし、このように、様々な病理過程に関連する酵素である。したがって、MMPの活性を検出する光プローブを用いて、それらの病理過程を検出することができる。病理の例としては、線維症、関節炎、特に変形性関節炎、がん、アテローム性動脈硬化及び肝硬変が挙げられる。実際、MMPはいずれかの炎症性疾患において上方調節され、このように、これらのプローブはそれらの診断に有用であり得る。
【0023】
MMP、特にMMP-9及びMMP-13は、線維症組織において過剰発現されることが示されている。したがって、蛍光が、配列番号1〜配列番号14、典型的には配列番号2〜配列番号14を含む酵素切断可能なペプチド配列のその選択的な切断によってMMP-9及び/又はMMP-13の存在を示す、光プローブは、線維症組織の存在を検出することができる。
【0024】
線維症組織は、心臓、肺、肝臓、結合組織、皮膚、腸又は関節等の多くの組織タイプで生じ得る。したがって、これらの組織タイプにおけるMMP-9又はMMP-13の検出によって、線維症組織の存在を示すことができる。例えば、対象の肺におけるMMP-9及び/又はMMP-13の検出によって、肺の線維症領域内の進行中の線維増殖を示すことができる。
【0025】
MMPは、関節炎に関連していることが示されている。例えば、MMP-13は、変形性関節炎で過剰発現されることが示されている。したがって、蛍光がMMPの存在を示す光プローブを提供することで、関節炎の存在を検出することができる。例えば、対象の関節内又は関節周囲でのMMP-13の検出によって、その関節における変形性関節炎を示すことができる。
【0026】
更なる実施例において、組織におけるMMPの検出によって、がんを示すことができる。一実施形態において、組織におけるMMPの検出によって、良性新生物を悪性新生物から識別することができる。別の実施形態において、組織におけるMMPの検出によって、がん性組織と正常組織の間の境界を決定することができる。例えば、MMPはガン組織と正常組織の間の境界で検出することができ、又はMMPはがん性組織内で検出され、正常組織においては検出される可能性はない。したがって、本発明のプローブは、腫瘍の存在を検出し、及び/又はその腫瘍が良性であるか悪性であるかを決定することができる。
【0027】
がんはMMP9を高度に発現する。組織の異常領域とMMP活性の分子署名との組み合わせによって、これががんである可能性があることを臨床医に警告することができる。また、腫瘍辺縁もMMPを高度に発現するため、本明細書に記載のプローブは、例えば、腫瘍が切除される場合、外科医が腫瘍の辺縁を同定するのを助ける。
【0028】
典型的には、当技術分野で公知の光プローブは、MMP-2、MMP-9及びMMP-13に対する選択性は低く、一般に、MMPの存在を検出することしかできない。
【0029】
驚いたことに、本発明者らは、本発明のプローブがMMP-2、MMP-9及びMMP-13に対する選択性が高く、又はMMP-2、MMP-9及びMMP-13のみに対する基質であり、また、これらのMMPが他の類似の酵素の存在下においてin vitro及びin vivoで検出され得ることを見出した。したがって、本発明のプローブは、MMP-2、MMP-9及びMMP-13を過剰発現する疾患、例えば、線維症、肝硬変、関節炎及びがん等の線維増殖を、他の類似の酵素の存在下であっても正確に検出することができる。これは、他のMMPが正常組織で発現される場合に特に有益である。
【0030】
酵素切断可能なペプチド配列は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号7〜配列番号14のうちの1つを含み得る。好ましくは、酵素切断可能なペプチド配列は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号7〜配列番号14のうちの1つを含む。より好ましくは、酵素切断可能なペプチド配列は、配列番号3、配列番号5及び配列番号7のうちの1つを含む。より更に好ましくは、酵素切断可能なペプチド配列は、配列番号5及び配列番号7のうちの1つを含むか、又は配列番号7を含む。本発明者らは、これらの配列を含む酵素切断可能な配列がMMP-9及びMMP-13、又はMMP-2、MMP-9及びMMP-13に対する高い選択性を示すこと、及び/或いは当技術分野で公知のもの以外の他のプロテイナーゼによる非特異的切断に対してより抵抗性があることを見出した。
【0031】
好ましくは、酵素切断可能なペプチド配列は、配列番号7を含む。本発明者らは、配列番号7を含むプローブがMMP-2、MMP-9及びMMP-13に対して共に特異的であること、またプラスミン、トロンビン及び第Xa因子等の他のプロテイナーゼによる非特異的切断に対して高い抵抗性があることを見出した。したがって、配列番号7を含む本発明のプローブは、例えば、組織又は組織試料等の他のプロテイナーゼの存在下において、MMP-2、MMP-9及びMMP-13の活性を選択的に検出することができる。
【0032】
本プローブは、酵素切断可能なペプチド配列のいずれかの側に、1個又は複数の追加のアミノ酸を含んでいてもよい。これは、x-配列-y、x-配列-、又は-配列-yとして図示することができ、式中、x及びyは1〜10個のアミノ酸、好ましくは1〜5個のアミノ酸、更に好ましくは1〜2個のアミノ酸を表す。
【0033】
典型的には、第1のフルオロフォアの蛍光は、隣接部分によって、抑制又は「消光」され得る。隣接部分、又は「クエンチャー(消光剤)」は、フルオロフォアであってもよい。第1のフルオロフォア及び隣接する第2のフルオロフォアが同じタイプである場合(すなわち、それらが同じ励起及び発光スペクトルを有する同じ化学物質である場合)、第1のフルオロフォア及び第2のフルオロフォアは、互いの蛍光を消光し、「自己消光」し得る。例えば、カルボキシフルオレセイン、Cy5、及び7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)は、自己消光し得る。
【0034】
第1のフルオロフォア及び隣接する第2のフルオロフォアが異なるタイプである場合(すなわち、それらが異なる化学物質であり、異なる励起及び発光スペクトルを有する場合)、次いで、第1のフルオロフォアの発光スペクトル及び第2のフルオロフォアの励起スペクトルがオーバーラップするならば、エネルギーが蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence(又はForster) Resonance Energy Transfer;FRET)を介して一方から他方に転移され得る。言い換えると、これらは「FRETペア」を形成し、第2のフルオロフォアは、第1のフルオロフォアの蛍光を消光させることができる。第2のフルオロフォアは、第1のフルオロフォアの蛍光を吸収し、異なる波長でそれ自体を蛍光発光する。したがって、第2のフルオロフォアは、「蛍光クエンチャー」であり得る。例えば、2つのフルオロフォアを含むFRETペアは、(フルオロフォア/クエンチャー)Cy3/Cy5、及びカルボキシフルオレセイン/セミナフトローダミンカルボキシレート誘導体を含む。
【0035】
隣接部分は、蛍光を発しない化学物質であってもよい。隣接部分は、第1のフルオロフォアの蛍光を引き続き消光することができるが、それ自体を蛍光発光する代わりに、隣接部分は熱としてフルオロフォアから受け取ったエネルギーをその周囲に分散させ、「ダーククエンチャー(dark quencher)」である。例えば、ダーククエンチャーを含むFRETペアとしては、(フルオロフォア/クエンチャー)フルオレセイン/ジメチルアミノアゾベンゼンスルホン酸(DABSYL)、カルボキシフルオレセイン/BHQ-1、カルボキシフルオレセイン/メチルレッド、NBD/メチルレッド、カルボキシナフトフルオレセイン/QSY21、カルボキシナフトフルオレセイン/BHQ-3、セミナフトローダミンカルボキシレート誘導体/BHQ-3、セミナフトローダミンカルボキシレート誘導体/QSY21、Cy3/QSY21、Cy5/QSY21、及びCy5/BHQ-3が挙げられる。
【0036】
少なくとも1つのクエンチャー及び少なくとも1つのフルオロフォアは消光することができる。消光するクエンチャー及び少なくとも1つのフルオロフォアを含むプローブは、実質的に暗く、酵素切断可能なペプチド配列の切断前に蛍光を生じない。例えば、少なくとも1つのクエンチャーは、少なくとも1つのフルオロフォアと同じタイプのフルオロフォアであってもよく、少なくとも1つのクエンチャー及び少なくとも1つのフルオロフォアは、自己消光し得る。
【0037】
少なくとも1つのフルオロフォア及び少なくとも1つのクエンチャーが自己消光する(すなわち、少なくとも1つのフルオロフォア及び少なくとも1つのクエンチャーが同じタイプのフルオロフォアである)実施形態において、フルオロフォアは、フルオレセイン又はその誘導体、セミナフトローダミンカルボキシレート又はその誘導体、シアニンフルオロフォア、例えばCy2、Cy3、Cy5、Cy5.5又はCy7、ローダミン又はその誘導体、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、又はシアン蛍光タンパク質(CFP)、又は7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)から選択することができる。
【0038】
別の実施形態において、少なくとも1つのクエンチャーは、少なくとも1つのフルオロフォアとは異なるタイプのフルオロフォアであり、蛍光クエンチャーである。したがって、酵素切断可能なペプチド配列が切断される前に、少なくとも1つの蛍光クエンチャーを含むプローブは、蛍光クエンチャーによって放出される光の波長で蛍光を発し、少なくとも1つのフルオロフォアによって放出される光の波長で蛍光を発しない。
【0039】
更なる実施形態において、少なくとも1つのクエンチャーは、ダーククエンチャーであってもよい。したがって、ダーククエンチャーを含むプローブは、実質的に暗く、酵素切断可能なペプチド配列が切断される前に蛍光を生じない。
【0040】
少なくとも1つのフルオロフォア及び少なくとも1つのクエンチャーが異なる化学物質である実施形態において、少なくとも1つのフルオロフォアは、適切なクエンチャーとFRETペアを形成する任意のフルオロフォアであり得る。したがって、フルオロフォア及びクエンチャーは、フルオロフォアからクエンチャーにエネルギーを転移するための適切な励起及び発光スペクトルを確実に有するようにペアとして選択される(すなわち、フルオロフォア及びクエンチャーは、FRETペアを形成する)。例えば、典型的なフルオロフォア/クエンチャーペアとしては、Cy3/Cy5、Cy3/QSY21、Cy5/QSY21、Cy5/BHQ-3、カルボキシフルオレセイン/テトラメチルローダミン、フルオレセイン/メチルレッド、カルボキシフルオレセイン/BHQ-1、NBD/メチルレッド、カルボキシナフトフルオレセイン/QSY21、カルボキシナフトフルオレセイン/BHQ-3、セミナフトローダミンカルボキシレート誘導体/BHQ-3、セミナフトローダミンカルボキシレート誘導体/QSY21、シアン蛍光タンパク質(CFP)/黄色蛍光タンパク質(YFP)、カルボキシフルオレセイン/メチルレッド等が挙げられる。FRETペアの更なる例は、当業者によって容易に認識され得る。
【0041】
好ましくは、少なくとも1つのフルオロフォア及び少なくとも1つのクエンチャーは、Cy5/QSY21、カルボキシフルオレセイン/メチルレッド、カルボキシフルオレセイン/BHQ-1、及びCy5/BHQ-3から選択される。
【0042】
典型的には、本発明のプローブは、標的ゾーンのMMPの検出に対して使用されるように操作することができる。標的ゾーンは対象内の組織の一部であってもよく、本方法はin vivoで実施することができる。組織の一部は、対象の心臓、肺、肝臓、結合組織、皮膚、腸又は関節の一部であり得る。本発明のプローブは、循環系、神経系、消化器系又は生殖器系において使用することができる。例えば、標的領域は、対象の肺の一部であってもよい。
【0043】
標的ゾーンは、細胞培養物、生検試料等の組織試料、又は体液試料等の液体試料の一部であってもよい。
【0044】
したがって、本発明のプローブは、in vivo、ex vivo又はin vitroで使用することができる。
【0045】
本発明のプローブは、当技術分野で公知の任意の手段によって標的ゾーンに送達することができる。例えば、本発明のプローブは、内視鏡、スプレー、注射、局所的又は摂取によって送達することができる。例えば、プローブが肺の一部に送達される場合、プローブは気管支鏡を使用して標的ゾーンに送達することができる。
【0046】
プローブのフルオロフォアを励起するのに好適な波長の照明光は、当技術分野で公知の任意の従来の手段によって標的ゾーンに送達され得る。典型的には、プローブが対象の体内で使用される実施形態において、光は、光ファイバー等の手段によって送達される。標的ゾーンにおけるプローブからの蛍光は、光ファイバー等によって収集することができる。標的ゾーンのプローブからの蛍光は、照明光を送達したのと同じ光ファイバーによって収集されてもよい。例えば、標的ゾーンにプローブを送達すること、標的領域に光を送達すること、及び標的ゾーンからの蛍光を検出することの両方が可能である。収集された蛍光は、典型的には、電荷結合素子(CCD)等の記録装置に送られる。或いは、標的ゾーンのプローブからの蛍光は、CCD等の記録装置によって直接収集することができる。或いは、個々の機器を使用して、標的領域にプローブを送達し、標的ゾーンに光を送達し、標的領域からの蛍光を検出することができる。
【0047】
例えば、蛍光は、ファイバー共焦点蛍光顕微鏡(fCFM)を使用して、標的領域の組織から検出することができる。
【0048】
プローブからの蛍光は、間接的に画像化することができる。例えば、蛍光は光音響撮像を使用することにより音波に変換することができる。光音響撮像は、標的領域の高解像度画像を生成し得る。
【0049】
好ましくは、対象はヒト対象である。しかし、対象は、非ヒト動物、例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、又は齧歯類であってもよい。
【0050】
少なくとも1つのフルオロフォアは、スペーサーによって酵素切断可能なペプチド配列に連結させることができる。少なくとも1つのクエンチャーは、スペーサーによって酵素切断可能なペプチド配列に連結させることができる。スペーサーは、飽和又は不飽和の炭化水素鎖、エーテル、ポリマー、ポリエチルグリコール(PEG)、ポリグリコール、ポリエーテル等であってよい。スペーサーは、ペプチドであってもよい。スペーサーがペプチドである実施形態において、ペプチドは、1〜10個のアミノ酸長、1〜20個のアミノ酸長、又は1〜30個のアミノ酸長であってよい。スペーサーは、アミノ酸と、飽和又は不飽和の炭化水素鎖、エーテル、ポリマー、PEG、ポリグリコール、ポリエーテル等の混合物であってもよい。例えば、スペーサーは、6-アミノヘキサン酸(Ahx)、又はPEG、又はPEGとアミノ酸の交互鎖を含むことができる。
【0051】
スペーサーが、例えばPEG又はポリエーテル等の極性基又は親水性基を含む実施形態において、リンカーは、水性媒体中でのプローブの溶解性を増加させることができる。したがって、例えば、極性基又は親水性基を含む少なくとも1つのスペーサーを含むプローブを提供することにより、追加の界面活性剤を必要とすることなく、標的領域に直接適用するのに生物学的に許容され得る媒体にプローブをより容易に溶解させることができる。
【0052】
本プローブは、実質的に蛍光消光されない少なくとも1つのレポーターフルオロフォアを含むことができる。好ましくは、少なくとも1つのレポーターフルオロフォアは、少なくとも1つのフルオロフォアが蛍光を発する光の波長とは異なる波長で蛍光を発する。したがって、少なくとも1つのレポーターフルオロフォアは、酵素切断可能なペプチド配列が切断される前及び後に蛍光を発するため、少なくとも1つのレポーターフルオロフォアは、適切な波長の光が照射された場合に蛍光を発する。したがって、標的ゾーンのプローブの存在又は配置は、MMPの存在の有無にかかわらずモニターされ、基準として使用することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明のプローブは、次のように示すことができる:
F-A-Seq-B-Q (1)
式中、
Fは、少なくとも1つのフルオロフォアであり、
A、Bは、それぞれ、存在していても存在していなくてもよいスペーサーであり、
Seqは、酵素切断可能なペプチド配列を含むペプチド配列であり、
Qは、少なくとも1つのクエンチャーである。
【0054】
酵素切断可能なペプチド配列に連結されている少なくとも1つのフルオロフォアのユニットは、便宜的に、「プローブエレメント」と定義される。言い換えると、プローブエレメントは、酵素切断可能なペプチド配列に連結されている少なくとも1つのフルオロフォアを含み得る。
【0055】
したがって、プローブエレメントは、次のように示すことができる:
(F-A-Seq)- (2)
【0056】
本発明の一実施形態において、プローブは、単一のプローブエレメント及びクエンチャーを含む。
【0057】
好ましくは、プローブは、複数のプローブエレメントを含み、また、各々の複数のプローブエレメントは、酵素切断可能なペプチド配列に連結されている少なくとも1つのフルオロフォアを含む。
【0058】
当技術分野で公知の光プローブは、酵素によるプローブの非特異的切断等の過程のため、in vivoで、又は他の場合に、例えば、組織溶解産物、組織試料又は体液の試料等において不安定であることが多い。このような非特異的切断は、プローブの蛍光を生じる可能性があり、標的領域のMMPの存在を示すものとして誤認される可能性がある。或いは、非特異的切断は、プローブを分解する可能性があり、プローブが全く観察されないようになる可能性がある。
【0059】
驚いたことに、決定した配列と組み合わせた複数のプローブエレメントを含む光プローブを提供することにより、in vivoでのプローブの安定性が改善される。理論によって拘束されることは望まないが、本発明者らは、複数のプローブエレメントの提供によって、各々のプローブエレメントを非特異的切断から保護し、それによってプローブの構造的適応力を向上させることができることを示唆する。
【0060】
更に、複数のプローブエレメントを含むプローブを提供することにより、プローブ1つ当たりのフルオロフォアの数が増加し、その結果、プローブ1つ当たりの蛍光が増加する。更に、プローブ1つ当たりの蛍光のこの増加によって、低濃度のMMPの検出、又は低濃度のプローブの使用が可能となる、より大きなシグナルノイズ比を提供することができる。
【0061】
プローブはコアを含んでいてもよく、複数のプローブエレメントはコアに連結されていてもよい。複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントは、独立してコアに直接連結されていてもよい。複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントは、独立してリンカーを介してコアに間接的に連結されていてもよい。リンカーは、飽和又は不飽和の炭化水素鎖、エーテル、ポリマー、ポリエチルグリコール(PEG)、ポリグリコール、ポリエーテル等であってよい。リンカーは、1つ又は複数のアミノ酸を含んでいてもよい。例えば、リンカーは、以下の一覧:[-(リジン)-(PEG
2)-]
1-2、[-(PEG-k)-]
1-3、及び[-(PEG-k)
0-2-NH-(CH
2)
3-O-CH
2-]から選択することができる。
【0062】
用語「コア」とは、本発明者らは、複数のプローブエレメントを連結して単一のユニットを形成する共通の部分を意味する。したがって、コアは、単一の原子であってもよく、或いは官能基、飽和若しくは不飽和の炭化水素鎖、又はポリグリコール(直鎖状、分枝状若しくは環状)、ペプチド配列、複素環又はポリマーを含むことができる。コアは、典型的には、コアに連結されるのに必要なプローブエレメントの数に関して正確な原子価を有するように選択される。例えば、3つのプローブエレメントを有する実施形態において、コアは、3つのプローブエレメントがコアに連結され得るように、3以上の原子価を有するように選択される。
【0063】
コアは、各々の複数のプローブエレメントに結合し得る複数のコネクターを含み、それによって、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントをコアに連結させることができる。
【0064】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、次のように示すことができる:
[F-A-Seq-B-Q-L]
n-C (3)、又は、
[Q-A-Seq -B-F-L]
n-C (4)
式中、
Fは、少なくとも1つのフルオロフォアであり、
A、Bは、それぞれ、存在していても存在していなくてもよいスペーサーであり、
Seqは、酵素切断可能なペプチド配列を含むペプチド配列であり、
Qは、少なくとも1つのクエンチャーであり、
Lは、存在していても存在していなくてもよいリンカーであり、
nは、2〜6であり、
Cは、コアである。
【0065】
リンカーが、例えばPEG又はポリエーテル等の極性基又は親水性基を含む実施形態において、リンカーは、水性媒体中でのプローブの溶解性を増加させることができる。したがって、例えば、極性基又は親水性基を含む少なくとも1つのリンカーを含むプローブを提供することにより、追加の界面活性剤を必要とすることなく、標的領域に直接適用するのに生物学的に許容され得る媒体にプローブをより容易に溶解させることができる。
【0066】
好ましくは、リンカーは、少なくとも1つのD-アミノ酸を含む。より好ましくは、リンカーは、少なくとも1つのD-リジン残基を含む。D-リジン残基等のD-アミノ酸を含むリンカーを提供すると、驚いたことに、プラスミン、トロンビン及び第Xa因子等の酵素の存在下において、プローブの安定性及び寿命が増加することが分かった。したがって、例えばリンカー中に少なくとも1つのD-リジン残基を提供することで、in vivoに存在する酵素によるリンカーの非特異的切断を防止することができる。
【0067】
数種類のプローブエレメントが単一のプローブで提供される場合、第1のプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアが第2のプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアを実質的に蛍光消光するようにして、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアが自己消光することができる。したがって、第1のプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアは、第2のプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアに対するクエンチャーとして作用し、またその逆もあり、追加の消光部分は必要とされない可能性がある。したがって、本プローブは、製造するのにより簡単で、よりコストが安価となり得る。
【0068】
コアは、少なくとも1つのクエンチャー又は各々のクエンチャーを含む。言い換えると、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントはクエンチャーを含んでいなくてもよく、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアは、コアのクエンチャーによって消光され得る。したがって、プローブは、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントが少なくとも1つのクエンチャーを含むプローブに比べ、少ないクエンチャー又は消光部分を含有することができる。したがって、プローブは、より少ない成分でより容易に合成することができ、プローブは、低コストで製造することができる。
【0069】
複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントは、酵素切断可能なペプチド配列によって少なくとも1つのフルオロフォアに連結されている少なくとも1つのクエンチャーを含んでいてもよい。したがって、酵素切断可能なペプチド配列がMMPによって切断される場合、少なくとも1つのフルオロフォアは、少なくとも1つのクエンチャーから分離され得る。複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアは同じであってもよい。各々の複数のプローブエレメントの少なくとも1つのクエンチャーは同じであってもよい。
【0070】
或いは、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントの少なくとも1つのクエンチャー及び少なくとも1つのフルオロフォアは異なっていてもよい。第1の波長で蛍光を発する第1のフルオロフォアは酵素活性を検出するために使用されるが、第1の波長とは異なる第2の波長で蛍光を発する第2のフルオロフォアが基準として働く場合、これは有用であり得る。このような二重のエレメントプローブは、第1の波長及び第2の波長の両方で蛍光をモニターする、多重波長検出において使用され得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントは、少なくとも2つのクエンチャーを含むことができる。例えば、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントは、1つのフルオロフォア及び2つのクエンチャーを含むことができるか、又は、各々のプローブエレメントは、2つのフルオロフォア及び2つのクエンチャーを含むことができる。少なくとも2つのクエンチャーを含むプローブエレメントを提供することにより、単一のクエンチャーを含むプローブエレメントよりもより完全にプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアの蛍光を消光して、より大きなシグナルノイズ比を提供し、酵素切断可能なペプチド配列が切断される場合により大きな蛍光の変化を提供することができる。
【0072】
プローブがコアに直接的又は間接的に連結されている複数のプローブエレメントを含む実施形態において、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントの少なくとも1つのクエンチャーは、コアに対するプローブエレメントの近位端にあってもよく、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアは、コアに対するプローブエレメントの遠心端にあってもよい。したがって、酵素切断可能なペプチド配列が切断される場合、フルオロフォアは、クエンチャー及びコアから分離され、クエンチャーはコアに連結されたままである。
【0073】
或いは、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントの少なくとも1つのクエンチャーは、コアに対してプローブエレメントの遠心端にあってもよく、複数のプローブエレメント内の各々のプローブエレメントの少なくとも1つのフルオロフォアは、コアに対してプローブエレメントの近位端にあってもよい。したがって、酵素切断可能なペプチド配列が切断される場合、クエンチャーはフルオロフォア及びコアから分離され、フルオロフォアはコアに連結されたままであり得る。例えば、コアに連結されているフルオロフォアは自己消光する可能性はなく、クエンチャーがフルオロフォアの蛍光の消光に必要となり得る。
【0074】
複数のプローブエレメントの1つ又は複数は、少なくとも2つのフルオロフォアを含むことができる。少なくとも2つのフルオロフォアを含む複数のプローブエレメントの1つ又は複数を提供することにより、プローブのより高いシグナルノイズ比を提供することができ、複数のプローブエレメントの酵素切断可能なペプチド配列が切断される場合、より大きな蛍光シグナルを提供することができる。したがって、本発明のプローブが標的領域に適用される場合、MMPが存在しない標的領域とMMPが存在する標的領域との間で、より高いコントラストを得ることができる。
【0075】
プローブは、少なくとも2つのプローブエレメント、少なくとも3つのプローブエレメント、少なくとも4つのプローブエレメント、又は少なくとも5つのプローブエレメントを含むことができる。一実施形態において、プローブが少なくとも2つのプローブエレメントを含む場合、酵素切断可能なペプチド配列は配列番号1である。
【0076】
好ましくは、プローブは3つのプローブエレメントを含む。より多くのプローブエレメントでは、酵素切断可能なペプチド配列が切断される際、蛍光の増強がより大きくなる。
【0077】
プローブは、プローブが重合し得るように、重合可能な部分を含むことができる。したがって、プローブは重合可能なプローブであってもよい。重合可能な部分は、好ましくはエチレン系不飽和部分である。重合可能な部分は、好ましくは、重合可能な部分が、少なくとも1つのクエンチャーによって少なくとも1つのフルオロフォアの蛍光消光を妨げることのないように配置される。
【0078】
本発明の一実施形態において、重合可能なプローブは、溶媒の存在下で重合させてゲルを形成させることができる。例えば、重合可能なプローブは、水性媒体中で重合され、ヒドロゲルを形成することができ、重合されたプローブは、水によって膨張されたポリマーネットワークを形成する。ゲルは、追加の成分を含むことができる。追加の成分は、ゲルの1つ又は複数の特性を調節することができる。例えば、追加の成分がポロゲン(例えば糖)である場合、ゲルはより多孔性になる可能性があり、したがって、媒体はゲル全体に容易に分散し得る。したがって、重合可能なプローブ及びポロゲンを含むゲルは、ゲルの表面積を増加させ、より高い濃度のMMPがゲルに浸透するようになり、重合されたプローブの酵素切断可能なペプチド配列の切断が可能になる。
【0079】
重合可能なプローブは、1つ又は複数の追加のモノマーと重合してポリマー組成物を形成することができる。1つ又は複数の追加のモノマーとしては、スチレン、メチルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アクリルアミド等を挙げることができる。1つ又は複数の追加のポリマーは、構造強度、可撓性、多孔性等のポリマー組成物に望ましい特性を提供することができる。
【0080】
重合可能なプローブは、1つ又は複数のイニシエーター、通常、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)及び過硫酸アンモニウム、TEMED及び過硫酸カリウム、又はTEMED及びリボフラビンで重合させることができる。
【0081】
1つ又は複数の追加のポリマーは、重合可能なプローブに支持体として作用し得る。
【0082】
本発明の第2の態様によれば、標的ゾーンのMMP活性を検出する方法であって、
a. 第1態様に記載のプローブを標的ゾーンに適用する工程と;
b. 適切な波長の光で標的ゾーンを照射してプローブのフルオロフォアを励起させる工程と;
c. プローブの蛍光強度を決定する工程と
を含み、
プローブのフルオロフォア又は各々のフルオロフォアの有意な蛍光が、標的ゾーンにおけるMMPの存在を示す、方法が提供される。
【0083】
標的ゾーンにおけるMMPの存在の検出は、線維症、肝硬変、がん及び関節炎等の症状の診断で使用することができる。
【0084】
用語「有意な蛍光」とは、本発明者らは、プローブのクエンチャーからフルオロフォアを十分に分離して、クエンチャーがバックグラウンド上のフルオロフォアの蛍光、又は存在する場合、標的領域における自己蛍光を消光することが防止された、フルオロフォアの蛍光を意味する。標的領域内の固有の細胞又は組織の自己蛍光は、第1プローブのフルオロフォアよりも短い蛍光寿命を有し得る。標的領域内の固有の細胞又は組織の自己蛍光は、プローブのフルオロフォアよりも速い速度で経時的に低減し得る。したがって、標的領域で観察された経時的にゆっくりと減衰する蛍光は、プローブを示し得る。また、標的領域で観察された経時的に速く低減する蛍光は、自己蛍光を示し得る。
【0085】
したがって、本方法は、標的ゾーンの蛍光強度をある期間にわたって決定する工程と、その期間にわたって蛍光の減衰率を決定する工程と、減衰率が遅いその蛍光の蛍光強度を決定する工程を含み、減衰率が遅い蛍光がプローブの蛍光に対応する。
【0086】
好ましくは、MMPは、MMP-2、及び/又はMMP-9及び/又はMMP-13である。好ましくは、MMPは、MMP-9及び/又はMMP-13である。
【0087】
当技術分野で公知の光プローブを使用してMMPの活性を決定する方法は、異なる様々なタイプのMMPを、例えば、MMP-1、MMP-3及びMMP-8に対してMMP-2、MMP-9及びMMP-13等を識別することは困難である。いくつかのタイプのMMPだけが、いくつかの疾患、例えば、線維症、がん及び関節炎等において過剰発現されることが明らかになっている。例えば、MMP-2、MMP-9及びMMP-13は、線維症組織で過剰発現されることが明らかになっている。したがって、例えば、MMP-2、MMP-9及びMMP-13を特異的に検出する方法を提供することにより、他の関連酵素の存在下においてMMP-2、MMP-9及びMMP-13を過剰発現する疾患を特異的かつ確実に検出することができる。
【0088】
プローブの少なくとも1つのフルオロフォアは、標的ゾーンの配置に応じて選択され得る。例えば、標的ゾーンが対象の皮膚上で、又は対象の肺内等で直接観察することができる場合、少なくとも1つのフルオロフォアは、スペクトルの可視領域で蛍光を発するように選択することができる。標的領域が皮膚又は組織を通って観察される場合、少なくとも1つのフルオロフォアは、プローブの蛍光が皮膚又は組織によって有意に吸収されないようにスペクトルの赤外領域で蛍光を発するように選択することが可能であり、それによって、組織の皮膚を通して観察することができる。例えば、少なくとも1つのフルオロフォアは、近赤外線(600nm〜950nmの間の蛍光波長)で蛍光を発するように選択され得る。赤外線撮像技術は、当業者には周知である。
【0089】
標的ゾーンは、対象内の組織の一部であってもよく、本方法はin vivoで実施することができる。組織の一部は、例えば、対象の心臓、肺、肝臓、結合組織、皮膚、腸又は関節の一部であり得る。例えば、標的ゾーンは、対象の肺の一部であってもよい。更に、本発明の方法は、循環系、神経系、消化器系又は生殖器系において実施することができる。
【0090】
標的ゾーンは、細胞培養物、生検試料等の組織試料、又は体液試料等の液体試料の一部であってもよい。
【0091】
標的ゾーンは、標的領域であってもよい。標的ゾーンは、標的量であってもよい。
【0092】
したがって、本発明の方法は、in vivoで、ex vivoで、又はin vitroで実施することができる。
【0093】
本発明のプローブは、当技術分野で公知の任意の手段によって標的ゾーンに送達することができる。例えば、本発明のプローブは、内視鏡、スプレー、注射、局所的又は摂取によって送達することができる。例えば、プローブが肺の一部に送達される場合、プローブは気管支鏡等の内視鏡を使用して標的ゾーンに送達することができる。
【0094】
プローブのフルオロフォアを励起するのに好適な波長の照明光は、当技術分野で公知の任意の従来の手段によって標的ゾーンに送達され得る。典型的には、プローブが対象の体内で使用される実施形態において、光は、光ファイバー等の手段によって送達される。標的ゾーンにおけるプローブからの蛍光は、光ファイバー等によって収集することができる。標的ゾーンのプローブからの蛍光は、照明光を送達したのと同じ光ファイバーによって収集されてもよい。収集された蛍光は、典型的には、電荷結合素子(CCD)等の記録装置に送られる。或いは、標的ゾーンのプローブからの蛍光は、CCD等の記録装置によって直接収集することができる。例えば、標的ゾーンにプローブを送達すること、標的領域に光を送達すること、及び標的ゾーンから蛍光を検出することである。或いは、個々の機器を使用して、標的領域にプローブを送達し、標的ゾーンに光を送達し、標的領域からの蛍光を検出することができる。
【0095】
例えば、蛍光は、ファイバー共焦点蛍光顕微鏡(fCFM)を使用して、標的領域の組織から検出することができる。
【0096】
またフルオロフォアは、光音響フルオロフォアであってもよい。光音響フルオロフォアは、強い照明によって、例えばフルオロフォアの吸収範囲に調整されたレーザーによって励起された場合、超音波を生成する。その後、生成された超音波を検出することができる。光音響フルオロフォアを含むプローブは、マルチスペクトル光音響トモグラフィ(MSOT)によって照射及び検出され得る。MSOTは、複数の波長の光パルスで標的ゾーンを照射し、パルスに応じて光音響フルオロフォアを取り囲んでいる環境の熱弾性膨張によって生成された音波を検出する。
【0097】
好ましくは、対象はヒト対象である。しかし、対象は、非ヒト動物、例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ又は齧歯類であってもよい。
【0098】
標的ゾーンが対象の肺の一部である実施形態において、標的領域におけるMMPの存在は、標的ゾーン内の線維症を示し得る。
【0099】
MMPを検出するための当技術分野で公知の光プローブは、典型的には、in vivoで、又は他のプロテイナーゼが存在する試料、例えば、組織溶解産物又は体液の試料等の中で安定性が低く、そのため、MMPの信頼性の高い検出を提供することができない。例えば、光プローブは、対象の肺の中で急速に崩壊し、肺におけるMMPのあらゆる有意な検出を妨げることが観察されている。したがって、信頼性の高いデータを得ることができるように、in vivoで十分に安定しているプローブを使用して標的領域のMMPを検出する方法を提供することで、MMPのin situ検出が可能になり、その結果、疾患のある局所的領域でMMPの過剰発現が生じる疾患を検出することができる。したがって、侵襲的手順は回避することができる。
【0100】
標的ゾーンが対象の関節にある実施形態において、標的ゾーンにおけるMMPの存在は、標的領域の関節炎を示し得る。例えば、標的ゾーンにおけるMMPの存在は、変形性関節炎又は慢性関節リウマチを示し得る。
【0101】
標的ゾーンにおけるMMPの存在は、標的領域の悪性新生物を示し得る。標的ゾーンにおける低レベルのMMPは、標的ゾーンにおける良性新生物を示し得る。したがって、本態様の方法は、新生物又は腫瘍の性質を決定する方法であり得、新生物又は腫瘍の性質を、生検等の侵襲的手法を必要とすることなく、視覚的に決定することができる。
【0102】
標的ゾーンにおけるMMPの存在は、がん性組織と正常組織との間の境界を示し得る。腫瘍の程度を任意の精度で視覚的に決定することは現時点では不可能であり、このため、腫瘍を外科手術によって除去する場合、全腫瘍を確実に除去しようと目視で明らかな腫瘍及び周囲組織が除去されている。これは、必要以上に多くの組織が切除され、又は腫瘍の一部が切除されない可能性がある。したがって、本態様の方法は、標的ゾーンにおける腫瘍の検出を可能にし、腫瘍の境界の決定を可能にし、その結果、最低限の量の組織を外科手術によって切除することができるため、全腫瘍切除の可能性を最大限にしつつ、対象への外傷を最小限にすることができる。
【0103】
本発明は、第3の態様において、組織の一部を評価する方法にも及び、本方法は、
a. 第1の態様に記載のプローブを組織の一部に適用する工程と;
b. 適切な波長の光で組織の一部を照射してプローブのフルオロフォアを励起させる工程と;
c. プローブの蛍光強度を決定する工程と
を含み、
プローブの有意な蛍光が組織の一部におけるMMPの存在を示し、組織の一部におけるMMPの存在が、MMPが発現又は過剰発現される疾患を示す。
【0104】
プローブの有意な蛍光は、組織の一部における活性MMPの存在を示し得る。組織の一部におけるMMPの存在は、MMPが活性化されている疾患を示し得る。
【0105】
好ましくは、MMPは、MMP-2、及び/又はMMP-9及び/又はMMP-13である。好ましくは、MMPは、MMP-9及び/又はMMP-13である。
【0106】
組織の一部は、例えば、生検等によって対象から除去された組織試料の一部であってもよく、また本方法はin vitroで実施することができる。組織の一部は対象の一部であってもよく、また本方法はin vivoで実施することができる。例えば、組織の一部は、肺、心臓、肝臓、皮膚、結合組織又は関節の一部であり得る。
【0107】
疾患は線維症であってもよく、また組織の一部は線維症組織を含んでいてもよい。疾患はがんであってもよく、また組織の一部は腫瘍又は新生物を含んでいてもよい。疾患は関節炎であってもよい。
【0108】
組織の一部におけるMMPの存在の決定によって、対象が進行中の線維増殖を有するか否かを臨床医が決定することができる。組織の一部におけるMMPの活性の決定によって、対象が進行中の線維増殖を有するか否かを臨床医が決定することができる。したがって、本方法は、対象が線維症を有するか否か、又は臨床的に進行中の線維症を有する否かを決定する方法であり得る。組織の一部におけるMMPの存在の決定によって、対象ががんを有するか否かを臨床医が決定することができる。したがって、本方法は、対象ががんを有するか否かを決定する方法であり得る。組織の一部におけるMMPの存在の決定によって、対象が関節炎を有するか否かを臨床医が決定することができる。したがって、本方法は、対象が関節炎を有しているか否かを決定する方法であり得る。組織の一部におけるMMPの存在の決定によって、対象が肝硬変を有するか否かを臨床医が決定することできる。したがって、本方法は、対象が肝硬変を有しているか否かを決定する方法であり得る。
【0109】
第1の態様及び第2の態様の好ましい任意選択の特徴は、第2の態様の好ましい任意選択の特徴である。
【0110】
いくつかの実施形態において、組織の一部は、新生物又は腫瘍を含むことが知られている。プローブに有意な蛍光が欠如しているのは、良性新生物を示し得る。プローブの有意な蛍光は、悪性新生物を示し得る。
【0111】
蛍光プローブの配置は、がん性組織と正常組織との間の境界を示し得るため、本発明の方法は、がん性組織の程度を決定することができる。したがって、外科的切除のための組織の適切な部分を決定することができ、それによって、がん性組織のすべてが切除される機会を最大限にしつつ、最小限の組織を切除することができる。
【0112】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様に記載のプローブを適切な希釈剤又は緩衝液中に含むパーツのキットが提供される。
【0113】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、非限定的な例としてここで説明する。