特許第6845151号(P6845151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845151
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】高パワー連続波中赤外レーザー
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/16 20060101AFI20210308BHJP
   H01S 3/06 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01S3/16
   H01S3/06
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-549721(P2017-549721)
(86)(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公表番号】特表2018-513555(P2018-513555A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】US2016023778
(87)【国際公開番号】WO2016154309
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年1月17日
(31)【優先権主張番号】62/137,070
(32)【優先日】2015年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イゴール・モスカレフ
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07593447(US,B2)
【文献】 特表2005−504437(JP,A)
【文献】 特開平11−261137(JP,A)
【文献】 特表2010−535361(JP,A)
【文献】 特開平05−075188(JP,A)
【文献】 特開2003−078192(JP,A)
【文献】 特開平05−190944(JP,A)
【文献】 特開昭62−234386(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102110948(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0130702(US,A1)
【文献】 米国特許第05757839(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0030865(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0121362(US,A1)
【文献】 BASU, Santanu,Nd-YAG and Yb-YAG rotary disk lasers,IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,IEEE,2005年,Volume: 11, Issue: 3,Page(s): 626 - 630,IEL Online(IEEE Xplore), DOI: 10.1109/JSTQE.2005.850238,URL,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=1516129
【文献】 YUMOTO, Masaki et al.,Extension of Mid-IR Lasing Spectral Region using Cr:ZnSe and Cr:CdSe Combined Active Medium,Conference on Lasers and Electro-Optics Europe & European Quantum Electronics Conference,IEEE,2019年,p.1,IEL Online(IEEE Xplore), DOI: 10.1109/CLEOE-EQEC.2019.8872524,URL,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8872524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/02,3/04−3/0959,
3/098−3/102,3/105−3/131,
3/136−3/213,3/23−4/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続波中赤外レーザーであって、
共振キャビティと、
遷移金属でドープされたII‐VI族多結晶物質から選択された利得媒体であって、該利得媒体が、内周及び外周と上面及び下面とによって画定されたリングに成形されていて、前記上面及び下面の一部が前記共振キャビティ内に位置する、利得媒体と、
前記利得媒体の周囲に位置するリング形状の第一のヒートシンクと、
ポンプ源と、
前記リングが取り付けられたモーターと、を備え、前記共振キャビティ内の前記リングの一部が、中赤外スペクトル内の波長において連続波レーザービームを放出するのに十分なポンプ光を受ける、連続波中赤外レーザー。
【請求項2】
前記利得媒体の面が、該面に固定された反射コーティングを更に備える、請求項1に記載の連続波中赤外レーザー。
【請求項3】
前記利得媒体がCr:ZnSe製であることを特徴とする請求項1に記載の連続波中赤外レーザー。
【請求項4】
前記利得媒体がCr:ZnS製であることを特徴とする請求項1に記載の連続波中赤外レーザー。
【請求項5】
前記利得媒体の周囲に位置するリング形状の第二のヒートシンクを更に備え、前記第一のヒートシンクと前記第二のヒートシンクの一方が前記利得媒体の内周に位置し他方が前記利得媒体の外周に位置する、請求項1に記載の連続波中赤外レーザー。
【請求項6】
前記利得媒体の内周に位置するヒートシンクと前記利得媒体の内周との間に位置するリング形状の第一の箔と、前記利得媒体の外周に位置するヒートシンクと前記利得媒体の外周との間に位置するリング形状の第二の箔とを更に備える請求項に記載の連続波中赤外レーザー。
【請求項7】
前記第一の箔と前記第二の箔がインジウムを含む、請求項に記載の連続波中赤外レーザー。
【請求項8】
前記第一のヒートシンクと前記第二のヒートシンクからの熱除去を促進するように前記第一のヒートシンクと前記第二のヒートシンクに対して位置決めされたラジエーターを更に備える請求項に記載の連続波中赤外レーザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、連続波(CW,continuous wave)中赤外固体レーザーに関する。特に、本発明は、最小の熱レンズ効果で前例のないパワー発生を提供するために遷移金属イオンでドープされたII‐VI族の多結晶物質から選択されたカルコゲニド利得媒体を備える回転ディスク、より好ましくはリングを提供する。
【背景技術】
【0002】
2〜10μmのスペクトル範囲で動作する中赤外(中IR,middle‐infrared)レーザー源は、自由空間通信、防衛手段、リモートセンシング等の多様な防衛関連応用、並びに産業プロセス制御や医療応用において大きな需要がある。Cr及びFeでドープされたII‐VI族ワイドギャップ半導体に基づいた光ポンプレーザーの最近の発展により、1.9〜5μmスペクトル範囲の高出力パワーにアクセス可能となった。遷移金属(TM,transition metal)でドープされたII‐VI物質の分光特性と、その中赤外固体レーザーへの応用がいくつかの文献で報告されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。本願では、Cr:ZeSeでもたらされるCWレーザー光の前例のないパワースケーリングを提供する全く新しい光学構成が開示される。
【0003】
Cr2+:ZnS/Seレーザーのパワースケーリングは、工業、医療、物質加工、防衛応用の多数の応用において非常に関心がもたれている。中IRレーザーの応用を成功させるためには、大抵の医療応用が存在する2940nm付近の出力波長において数十から数百ワットの出力パワーに達することが特に重要である。また、これら物質の利得最大付近での出力波長(2.4μm)も、ポリマーの加工等の高スループットが特に重要となる物質加工応用にとって非常に大きな関心がもたれている。
【0004】
本発明者は、最近、利得素子の従来のスラブ形状に基づいた中IRレーザーシステムにおいて、2.4μmで最大20W、2940nmで最大3Wの出力パワーを得ることを報告した(非特許文献1)。残念ながら、Cr:ZnSe利得媒体及びCr:ZnS利得媒体の非常に高い熱光学係数が強力な熱レンズ効果をもたらすので、そのレーザーシステムは、高ポンプパワーレベルにおけるビーム品質が良くないという問題を有し、光学損傷閾値付近で動作するので、レーザーの故障の傾向が高い。MOPA(Master Oscillator Power Amplifier,主発振器パワー増幅器)及び利得媒体の多重素子構成は、この問題をある程度緩和するが、システムの複雑性が増すので、確実で決定的な解決策ではない。
【0005】
これらのレーザーを用いた本発明者の実験では、最も最近の結果が、従来の共振器設定に基づくCr:ZnS及びCr:ZnSeレーザーシステムの出力パワーに対して実用的制限を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7593447号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. Mirov, V. Fedorov, D. Martyshkin, I. Moskalev, M. Mirov, S. Vasilyev, “Progress in Mid-IR Lasers Based on Cr and Fe Doped II-VI Chalcogenides”, IEEE Selected Topics in Quantum Electron. 21, 1601719 (2015)
【非特許文献2】S. B. Mirov, V. V. Fedorov, D. V. Martyshkin, I. S. Moskalev, M. S. Mirov, and V. P. Gapontsev, “Progress in mid-IR Cr2+ and Fe2+ doped II-VI materials and lasers”, Opt. Mater. Express 1, 898-910 (2011)
【非特許文献3】V. I. Kozlovsky, V. A. Akimov, M. P. Frolov, Yu. V. Korestelin, A. I. Landman, V. P. Martovitsky, V. V. Mislavskii, Yu. P. Podmar'kov, Ya. K. Skasyrsky, and A. A. Voronov, "Room-temperature tunable mid-infrared lasers on transition-metal doped II-VI compound crystals grown from vapor phase," Phys. Status Solidi B 247(6), 1553-1556 (2010)
【非特許文献4】Sergey Mirov, Vladimir Fedorov, Igor S. Moskalev, Dmitri Martyshkin, and Changsu Kim, “Progress in Cr2+ and Fe2+ doped mid-IR laser materials” Laser & Photon. Rev. 4, 21-41 (2010)
【非特許文献5】S. Mirov, V. Fedorov, I. Moskalev, D. Martyshkin, “Recent progress in transition metal doped II-VI mid-IR lasers” IEEE Selected Topics in of Quantum Electronics 13, 810-822 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
必要とされているのは、中IRスペクトルにおける医療応用及び物質加工の必要性を満たすようにはるかに高いパワーを可能にする新規光学構成である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記必要性は、本開示のTMドープII‐VI族物質等の回転カルコゲニド利得媒体を備えて構成され、熱レンズ効果を防止するCW中IRレーザーによって満たされる。本発明者の核となるアイディアは、リング形状の回転利得素子を介して整合させた同軸ポンプビーム及びレーザーモードの走査を行うことである。
【0010】
2400nmの中心波長について従来技術のほぼ7倍、2940nmの中心波長について10倍という予期せぬパワー出力は、多くの用途を有し得る光学構成を与える。
【0011】
より具体的には、本発明は連続波(CW)中IRレーザーを提供し、そのCW中IRレーザーは、共振キャビティと、遷移金属でドープされたII‐VI族多結晶物質(TM:II‐VI)から選択された利得媒体(その利得媒体は、ディスク、より好ましくは、内周及び外周と上面及び下面によって画定されたリングに成形され、その上面及び下面の一部は共振キャビティ内に位置する)と、ポンプ源と、リングが取り付けられたモーターとを備える。共振キャビティ内に位置するリングの一部は、中IRスペクトル内の波長においてCWレーザービームを放出するのに十分なポンプ光を受けるようにされる。
【0012】
好ましい実施形態では、TM:II‐VI利得媒体はCr:ZnS又はCr:ZnSeである。
【0013】
他の実施形態では、本発明のCWレーザーは、その利得媒体の一以上の面がそれに固定された反射コーティングを有する。
【0014】
他の実施形態では、反射コーティングは必要とされない。
【0015】
他の実施形態では、利得媒体は、ポンプ光に対して垂直入射とされるが、他の実施形態では、ブリュースター入射角とされる。
【0016】
上記段落の好ましい実施形態において、本発明のリングは、その内周内に位置するヒートシンク、その外周に位置するヒートシンク、又はその両方を更に含む。
【0017】
上記段落、特に段落[0015]の好ましい実施形態では、箔が周囲に位置するヒートシンクの間に挿入される。
【0018】
本開示の上記及び他の態様、特徴及び利点は、図面からより容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のCW中IRレーザーの例示的な一光学構成である。
図2図1のレーザーが発生させる入出力曲線及びビームプロファイルを与える。
図3】本発明のカルコゲニド利得媒体の多様な図を与える。図3aは本発明のカルコゲニド利得媒体の内径と外径との間の関係性を示す図である。図3bは図3aのリングの側面図である。図3cは図3aのリングの三次元レンダリングである。
図4】ヒートシンク及び中間層を含むリングの好ましい実施形態の側面図である。
図5】本発明のリングを含むアセンブリの分解三次元図を与える。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。可能な限り、同じ又は同様の参照番号を図面及び明細書で用いて、同じ又は同様の部分やステップを指称する。図面は単純化されていて、縮尺どおりではない。特に断らない限り、明細書及び特許請求の範囲における用語は、ダイオード及びファイバーレーザーの分野の当業者にとって一般的で慣用されている意味で与えられる。「結合」や同様の用語は、必ずしも直接的で直の接続を示すものではなく、自由空間や中間素子を介した機械的接続や光学的接続も含む。
【0021】
本願において、本発明者は、利得素子構成の全く新しいアプローチに基づいたCW Cr2+:ZnSeの記録的な出力パワーを得た初めての結果を報告する。本発明者の新規アプローチの重要なアイディアは、ポンピング及びレーザー発振が生じる利得素子の小さな体積内で利得媒体によって吸収される平均ポンプパワーによって熱レンズ効果が発生する事実に基づいている。純CWシステムとは対照的に、低ポンプデューティーサイクルを有するCr2+:ZnS/Se QCWレーザー及び利得スイッチレーザーシステムは、熱レンズ効果の問題を有さず、極めて高いピークパワーのポンプ放射に耐えることができる一方、非常に高いレーザー発振効率を示し、高い出力ビーム品質をもたらす。
【0022】
従って、多数の高ピークパワーQCWレーザーシステムを組み合わせるコヒーレントビーム法が見つかれば、高CW出力パワーを得て、熱レンズ効果を防止することができることになる。このアイディアを実現するための直接的なアプローチは、十分高速でポンプビームを横切るように利得素子を連続的にシフトさせる(ずらす)ことである。この場合、ポンプビームスポットの経路中に位置する利得素子の全ての領域が、QCWレーザーシステムにおけるポンピング条件と同様のポンピング条件を受けるが、システム全体としては純CW出力を示す。何故ならば、ポンプ領域間に間隙が存在しないからである。無限運動を実現するための本発明者提案の解決策は、大型の回転リング利得素子を使用することである。
【0023】
特許文献1の回転ディスクとは異なり、本発明者は、リング形状であって、TM:II‐VI利得媒体を備える構造を提案する。また、特許文献1の回転ディスクとは異なり、利得素子全体の実質的に全ての表面から熱を除去することによって、利得素子の活性領域に注入される熱エネルギーを最小にする一方で、注入される光エネルギーを増大させる。
【0024】
「概念実証(proof of concept)」レーザーシステムの一般的な実験設定が図1に示されている。図1は、高パワーCr:ZnSe波長可変レーザーシステム10の一般的な光学構成を与える。ポンプ12は、50WのTmファイバーレーザーシステムである。また、ポンプレーザーは、1550〜1940nm内で動作するあらゆるCWファイバーレーザーであってもよく、必要とされる仕様に応じて、Cr:ZnS利得媒体をポンピングするためのエルビウムファイバーレーザー(IPGフォトニクス社製のELM/ELRシステム)や、Cr:ZnS媒体及びCr:ZnSe媒体両方用のツリウムファイバーレーザー(IPGフォトニクス社製のTLM/TLRレーザー)であり得る。本発明者はTLR‐100‐1908‐WCレーザーと、TLM‐100‐1908‐WCシステムを有する。波長調整は、リトロウ(Littrow)構成の高効率回折格子18で行われる。図1は、Cr:ZnSe回転リング利得素子19の両側のレンズ14及び16と、出力カプラー20を更に与える。2.45μmと2.94μmという二つの重要な出力波長についてのレーザーの入出力特性が、50Wの最大ポンプパワーにおける出力カプラー20から0.5mで測定したビームプロファイルの像と共に図2に示されている。
【0025】
2940nmにおける出力スペクトルと、13.9Wの最大出力パワーも図2の挿入図に示されている。出力線幅の予測上限は0.25nm未満である。レーザーは、2450nmにおける27.5Wと、2940nmにおける13.9Wの最大出力パワーを、それぞれ63.7%と37.4%の平均スロープ効率で有する純CW出力を示す。
【0026】
図3は、本発明用に構成されたカルコゲニド媒体の一例を与える。
【0027】
図3aは上面図又は下面図を与える。実験的な実施形態について、リング19は、20mmの内周30と、50mmの外周32を有していた。好ましくは、外周32の外径は、25から50mmの範囲内であり、又は、より好ましくは25mm未満である。内周30は、モーター取り付け等の工学的要求に応じて異なる。リング19は、接地面34を更に与える。
【0028】
図3bは本発明の側面図を与え、その上に設けられた反射防止コーティング36を示す。実験的なバージョンについて幅40は0.5mmであって、0.25から1.0mmの幅の範囲が想定される。リング19は、ベベル38を更に与える。図3cはリング19の等角図を与える。
【0029】
RPMの範囲に関しては、一般的に言って、RPMは可能な限り小さく設定されるが(機械的安定性のため)、熱レンズ効果を防止するのに十分高くなければならない。RPMの範囲は、ポンプパワーに応じて異なる。現状では、本発明者は、50Wのポンプパワーにおいて、5000RPMで50mmのリングを回転させている。リングについて想定されるRPMの範囲は、全ポンプパワーに応じて、500〜10000RPMである。
【0030】
実験的な実施形態は、反射防止コーティングされたCr:ZnS/Seリングをポンプビーム及びレーザーモードの垂直入射で用いる。しかしながら、この方法を用いて熱レンズ効果を効率的に除去するため、コーティングされていないリング利得素子をブリュースター入射角で用いることができる。これは、コスト効率を顕著に上げる可能性がある。
【0031】
利得媒体のポンピングに関して、Cr:ZnSe利得媒体は、1908〜1940nmにおけるTmファイバーレーザーでのポンピングにより適していて、より長い波長(例えば、2.2〜3.2μm)においてより高い利得を有し、特に、2.94μmの医療用波長の発生に重要である。Cr:ZnS物質は、1550〜1567nmにおけるErファイバーレーザーでのポンピングに最も適していて、より短い波長(例えば、1.9〜2.9μm)においてより高い利得を有し、また、2.4μm付近で動作する高パワーレーザーにもより適している。
【0032】
図4は、本発明の更なる実施形態を与える。リング19は、内側箔48と外側箔49(この場合インジウム)との間に位置する。好ましくは、インジウム箔は150μmの深さを有する。更に、これら箔は、外側ヒートシンク44と内側ヒートシンク46によって挟まれ得る。好ましくは、全ての層は互いに締まり嵌めして、間隙が存在しない。
【0033】
図5は、図4の実施形態の分解三次元図を与え、利得媒体の全表面に十分な冷却を与えるための追加構造を更に含む。左から右に、ラジエーター50は、外側ヒートシンク44に囲まれる一方で、内側ヒートシンク46に固定される。外側ヒートシンク44は外側インジウム箔49を取り囲み、外側インジウム箔49は、内側インジウム箔48及び内側ヒートシンク46と共にリング19を挟む。内側ヒートシンクからの熱の除去を促進するラジエーター52と、利得媒体を回転させるための直流/交流モーター54とで、構造が完成する。
【0034】
本開示の構造の多様な変更を、本開示の要旨及び本質的な特徴から逸脱せずに行うことができる。従って、上記説明に含まれるすべての事項は例示目的のみで解釈されるものであり、限定的な意味においては本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によって定められるものである。
【符号の説明】
【0035】
10 波長可変レーザーシステム
12 ポンプ
14 レンズ
16 レンズ
18 回折格子
19 リング
20 出力カプラー
44 外側ヒートシンク
46 内側ヒートシンク
48 内側箔
49 外側箔
50 ラジエーター
52 ラジエーター
54 モーター
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5