(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記進行方向算出部は、複数の前記反射面の面方向が算出された場合には、前記複数の反射面の面方向を平均した面方向を用いて、前記進行方向を算出するように構成されている、
請求項3に記載の車両レーダシステム。
前記進行方向算出部は、複数の前記反射面の面方向が算出された場合には、前記複数の反射面の面方向のうち前記反射面を形成する前記観測点が最も多い反射面の面方向を用いて、前記進行方向を算出するように構成されている、
請求項3に記載の車両レーダシステム。
前記進行方向算出部は、複数の前記反射面の面方向が算出された場合には、前記複数の反射面の面方向のうち前記反射面観測点と前記ミラーゴースト観測点との観測点間の距離が最も短い前記観測点ペアに基づいた反射面の面方向を用いて、前記進行方向を算出するように構成されている、
請求項3に記載の車両レーダシステム。
前記ターゲット位置判定部は、前記車両の速度が予め設定された速度閾値よりも低いことを条件として、前記ミラーゴースト観測点を用いて、前記ターゲットの位置を判定するように構成されている、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両レーダシステム。
前記信頼度算出部は、前記車両の速度と予め設定された速度閾値との差が小さいほど、前記ターゲット位置判定部により判定された前記ターゲットの位置の信頼度を高くさせるように構成されている、
請求項9に記載の車両レーダシステム。
前記信頼度算出部は、前記車両の速度が予め設定された速度閾値よりも大きい場合には、前記ターゲット位置判定部により判定された前記ターゲットの位置の信頼度を減少させるように構成されている、
請求項9に記載の車両レーダシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。
<1.全体構成>
まず、本実施形態に係る車両レーダシステム100の構成について、
図1を参照して説明する。車両レーダシステム100は、前方レーダ11、左前側方レーダ12、右前側方レーダ13、処理装置30、ディスプレイ21、インジケータ22、ブザー23、及び走行制御装置40を備える。
【0010】
前方レーダ11、左前側方レーダ12、及び右前側方レーダ13は、ミリ波レーダである。3台のレーダ11〜13の変調方式は、FMCW方式や、2周波CW方式、多周波CW方式、パルス方式など何でもよく、限定されるものではない。各レーダ11〜13は、車両50の周辺の互に異なる領域を観測するように構成されている。
【0011】
図2に示すように、前方レーダ11は、車両50の前方中央、例えば、前方バンパの中央に搭載されており、車両50の前方中央を観測領域R11とする。左前側方レーダ12は、車両50の左前方、例えば、前方バンパの左端に搭載されており、車両50の前方左側を観測領域R12とする。右前側方レーダ13は、車両50の右前方、例えば、前方バンパの右端に搭載されており、車両50の前方右側を観測領域R13とする。
【0012】
3台のレーダ11〜13は、レーダ波を送信し、ターゲットで反射されたレーダ波を受信して、ターゲットTgを観測する。そして、3台のレーダ11〜13は、ターゲットTgの観測データを後述する処理装置30へ送信する。観測データには、車両に対するターゲットTgの方向及び車両からターゲットTgまでの距離の情報が含まれる。以下では、レーダ11〜13をまとめてレーダ10と称する。
【0013】
処理装置30は、CPU、ROM、RAM等を備える電子制御装置(ECU)である。処理装置30は、CPUがROMに記憶されているプログラムを実行することにより、検出部31、抽出部32、ペア判定部33、ターゲット位置判定部34、及び信頼度算出部35の機能を実現する。ターゲット位置判定部34は、進行方向算出部34a、進行方向位置判定部34b、方位算出部34c、及び方位位置判定部34dの機能を備える。これらの機能の一部又は全部は、ハードウェアを用いて実現してもよい。処理装置30の各機能の説明は後述する。
【0014】
処理装置30は、レーダ10から受信した観測データから、ターゲットTgの位置を判定し、判定したターゲットTgの位置の信頼度を算出する。そして、処理装置30は、判定したターゲットTgの位置の信頼度が予め設定された信頼度閾値を超えると、ターゲット位置を確定する。処理装置30は、処理の1つとして、ミラーゴーストに基づいてターゲットTgの位置を判定するターゲット位置判定処理を実行する。ミラーゴーストは、ターゲットTgで反射されたレーダ波である反射波が反射面によって反射して、レーダ10に帰還することにより発生する虚像である。反射面は、車両50周辺の壁やガードレールなどである。反射面における反射波の反射点からターゲットTgまでの距離をLtとすると、ミラーゴーストは、車両50に対して反射点の方向で且つ反射点から距離Lt遠方の位置で観測される。
【0015】
処理装置30は、確定したターゲットTgの位置に基づいて、車両50とターゲットTgとの衝突の可能性を判定する。そして、処理装置30は、車両50とターゲットTgが衝突する可能性がある場合には、衝突の可能性があるターゲットTgを検出したことを示す検出信号を、ディスプレイ21、インジケータ22、ブザー23及び走行制御装置40へ送信する。なお、3台のレーダ11〜13のそれぞれごとに処理装置30が設けられていて、各処理装置30がレーダ11〜13のそれぞれの観測データを個別に処理してもよい。また、3台のレーダ11〜13に対して1個の処理装置30が設けられていて、1個の処理装置30がレーダ11〜13のそれぞれの観測データを統括して処理してもよい。
【0016】
ディスプレイ21、インジケータ22、及びブザー23は、処理装置30が車両50の近くに衝突の可能性があるターゲットTgを検出した場合に、処理装置30からの検出信号に応じて警報を出力する警報装置である。ディスプレイ21は、車室内に設けられており、警告を表示する。インジケータ22は、ドアミラーや車室内に設けられており、点滅等して警告を示す。ブザー23は、車室内に設けられており、警告音を出力する。また、これらの警報装置の代わり、またはこれらの警報装置に加えて警報を音声で出力するスピーカを車室内に備えていてもよい。上述した警報装置は、すべて設けられている必要はなく、少なくとも一つ設けられていればよい。
【0017】
走行制御装置40は、処理装置30が車両50の近くに衝突の可能性があるターゲットTgを検出した場合に、処理装置30からの検出信号に応じて、車両50と他車両との衝突を回避するように、車両50の走行を制御する。具体的には、走行制御装置40は、車両50のブレーキや、アクセル、ステアリングなどを制御する。
【0018】
<2.ターゲット位置判定処理>
次に、処理装置30が実行するターゲット位置判定処理について、
図3のフローチャートを参照して説明する。処理装置30は、例えば、イグニッションがオンされるとターゲット位置判定処理を開始する。なお、処理装置30は、ミラーゴーストに基づくターゲット位置判定処理の他に、直接信号に基づく公知のターゲット位置判定処理も並列に実行するが、ここでは説明を省略する。直接信号は、ターゲットからの反射波を直接受信した受信信号である。
【0019】
まず、S10では、検出部31がレーダ10から観測データを取得する。
続いて、S20では、検出部31が取得した観測データから、複数の観測点を検出し、車両50から見た各観測点の位置、詳しくは各観測点の方向及び距離を認識する。
【0020】
続いて、S30では、抽出部32が、検出部31により検出された複数の観測点から、レーダ10を基準として、互いに同一方向に位置する観測点の対を観測点ペアとして抽出する。上述したように、ミラーゴーストは、レーダ10に対して反射面における反射点と同一方向に発生する。よって、抽出部32は、ミラーゴーストに基づく観測点を含む観測点ペアを抽出する。
【0021】
続いて、S40では、ペア判定部33が、抽出部32により抽出された観測点ペアのうちの一方を、ターゲットTgのミラーゴーストを表すミラーゴースト観測点と判定し、観測点ペアのうちの他方を、ミラーゴーストを発生させる反射面を表す反射面観測点と判定する。具体的には、上述したように、ミラーゴーストは、レーダ10に対して、ミラーゴーストを発生させる反射面よりも遠方で観測される。よって、ペア判定部33は、観測点ペアのうちのレーダ10から遠い方の観測点をミラーゴースト観測点と判定し、観測点ペアのうちのレーダ10に近い方の観測点を反射面観測点と判定する。
【0022】
続いて、S50では、S30において複数の観測点ペアが抽出されたか否か判定する。S30において複数の観測点ペアが抽出されていると判定された場合はS60へ進み、S30において観測点ペアが1つしか抽出されていないと判定された場合は、S60を飛ばしてS70へ進む。
【0023】
S60では、ターゲット位置判定部34が、2組の観測点ペアからターゲットTgの位置を判定する。例えば、
図4に示すように、反射面SAにおける第1反射面観測点Wa及び第1ミラーゴースト観測点Gaから成る第1観測点ペアPaと、反射面SAにおける第2反射面観測点Wb及び第2ミラーゴースト観測点Gbからなる第2観測点ペアPbとが抽出されているとする。
【0024】
ターゲット位置判定部34は、第1反射面観測点Waを中心とし、第1ミラーゴースト観測点Gaを通る第1仮想円Caと、第2反射面観測点Wbを中心とし、第2ミラーゴースト観測点Gbを通る第2仮想円Cbと、を算出する。さらに、ターゲット位置判定部34は、第1仮想円Caと第2仮想円Cbとの2つの交点Ra,Rbを算出し、2つの交点Ra,RbをターゲットTgの位置の候補とする。そして、ターゲット位置判定部34は、2つの交点Ra,Rbのうち、車両50の進行方向に近い方の交点Rbの位置を、ターゲットTgの位置と判定する。
【0025】
続いて、ターゲット位置判定部34は、観測点ペアが1つしか抽出されていない場合でも可能な手法でターゲットTgの位置を判定する。
まず、S70では、ターゲット位置判定部34は、車両50の上方から鳥瞰した車両50の鳥瞰図上における、反射面の面方向を算出する。例えば、
図5に示すように、反射面SAにおける反射面観測点Wa及びミラーゴースト観測点Gaからなる、1組の観測点ペアPaのみが抽出されているとする。
図5において、黒丸は観測点を示す。
【0026】
ターゲット位置判定部34は、反射面観測点Waと、S20において抽出された観測点のうち反射面観測点Waの周囲の観測点とから、車両50の鳥瞰図上における反射面SAの面方向を算出する。レーダ10から反射面SAへ放射されたレーダ波は、反射面SAの複数の位置で反射してレーダ10へ戻る。そのため、
図5に示すように、反射面SA上では複数の観測点が同一の線上に抽出される。そこで、ターゲット位置判定部34は、反射面観測点Waと反射面観測点Waと同一の線上の点とみなせる複数の観測点とから、反射面SAの面方向を算出する。
【0027】
また、
図6に示すように、互いに異なる反射面SA1,SA2によって複数のミラーゴーストが発生し、複数の観測点ペアPa,Pbが抽出された場合には、ターゲット位置判定部34は、複数の反射面SA1,SA2の面方向をそれぞれ算出する。すなわち、
図6の場合、ターゲット位置判定部34は、反射面観測点Waとその周囲の観測点とから反射面SA1の面方向を算出し、反射面観測点Wbとその周囲の観測点とから反射面SA2の面方向を算出する。
【0028】
続いて、S80では、ターゲット位置判定部34は、今回の処理サイクルを含めて、ターゲットTgを2回以上検出したか否か判定する。つまり、ターゲット位置判定部34は、過去の処理サイクル(例えば、一つ前の処理サイクル)において、今回の処理サイクルと同一のターゲットTgを検出したか否か判定する。S80において、ターゲットTgが2回以上検出されていると判定された場合はS90へ進み、ターゲットTgが今回の処理サイクルで初めて検出されたと判定された場合は、S90を飛ばしてS100へ進む。
【0029】
S90では、進行方向算出部34a及び進行方向位置判定部34bが、S70において算出された反射面の面方向を用いて、ターゲットTgの位置を判定する。詳しくは、ミラーゴーストが生じる反射面と、ターゲットTgの進行方向とに相関がある確率が高いことに着目した。つまり、ターゲットTgからの反射波を反射する壁やガードレールなどの反射面は、ターゲットTgの近くに位置し、ターゲットTgは反射面の面方向に沿って進行している可能性が高いことに着目した。
【0030】
そこで、進行方向算出部34aは、
図5に示すように、過去の処理サイクルにおいて判定したターゲットTgの位置である過去位置Ps1と、今回の処理サイクル又は過去位置Ps1が判定された過去の処理サイクルのS70において算出された面方向とから、ターゲットTgの進行方向DTを算出する。また、
図6に示すように、S70において複数の面方向が算出されている場合には、進行方向算出部34aは、複数の面方向のそれぞれについて進行方向DTを算出する。
【0031】
進行方向位置判定部34bは、観測点ペアPaの反射面観測点Waを中心として、観測点ペアPaのミラーゴースト観測点Gaを通る仮想円Caと、算出された進行方向DTとの2つの交点Ra,Rbを算出し、2つの交点Ra,RbをターゲットTgの位置の候補とする。そして、進行方向位置判定部34bは、2つの交点Ra,Rbのうち、過去位置Ps1に近い位置を、ターゲットTgの現在位置Ps2と判定する。また、進行方向位置判定部34bは、進行方向算出部34aにより複数の進行方向DTが算出されている場合には、複数の進行方向DTのうち、車両50の進行方向DSと交差する方向の進行方向DTを用いて、ターゲットTgの現在位置Ps2を判定する。
【0032】
ただし、車両50の進行方向DSは、複数の進行方向DTと交差する場合がある。よって、S70において、複数の反射面の面方向が算出されている場合には、進行方向算出部34aは、過去位置Ps1と、複数の反射面の面方向を平均した面方向とを用いて、進行方向DTを算出してもよい。あるいは、このような場合には、進行方向算出部34aは、過去位置Ps1と、複数の反射面の面方向のうち反射面を形成する観測点が最も多い反射面の面方向とを用いて、進行方向DTを算出してもよい。あるいは、このような場合には、進行方向算出部34aは、過去位置Ps1と、複数の反射面の面方向のうち反射面観測点とミラーゴースト観測点との観測点間の距離が最も短い観測点ペアに基づいた反射面の面方向とを用いて、進行方向DTを算出してもよい。
【0033】
続いて、S100では、方位算出部34c及び方位位置判定部34dが、S70で算出した反射面の面方向を用いて、ターゲットTgの位置を判定する。詳しくは、
図7に示すように、反射面にレーダ波が入射する入射角θ1の値と、反射面でレーダ波が反射したときの反射角θ2の値は一致し、反射面に対して反射角θ2の方向にターゲットTgが位置することに着目した。
【0034】
そこで、方位算出部34cは、反射面に対してレーダ10から送信されたレーダ波の入射角θ1と等しい値の反射角θ2の方位を、反射面に対するターゲットTgの方位として算出する。そして、方位位置判定部34dは、
図7に示すように、観測点ペアPaの反射面観測点Waを中心として、観測点ペアPaのミラーゴースト観測点Gaを通る仮想円Ca上で、且つ、反射面観測点Waから反射角θ2の方位にある位置を、ターゲットTgの位置と判定する。なお、S70において複数の反射面が算出されている場合、どの反射面を用いても、ターゲットTgの位置は同じ位置と判定されるため、どの反射面を用いてターゲットTgの位置を判定してもよい。
【0035】
続いて、S110では、ターゲット位置判定部34は、S60、S90及びS100において判定されたターゲット位置を加重平均し、その平均値をターゲット位置と判定する。S60においてターゲット位置が判定されていない場合は、S90及びS100において判定されたターゲット位置を加重平均し、その平均値をターゲット位置と判定する。加重平均において、異なる手法で判定された複数のターゲット位置のそれぞれの重みは等しくしてもよい。また、加重平均において、S60において判定されたターゲット位置の重みを最大にし、S100において判定されたターゲット位置の重みを最小にし、S90に置いて判定されたターゲット位置の重みを他二つの重みの間にしてもよい。
【0036】
続いて、S120では、ターゲット位置判定部34は、観測が終了したか否か判定する。例えば、イグニッションがオフされると、観測を終了する。S110において観測が終了していないと判定された場合はS10の処理に戻り、S110において観測が終了したと判定された場合は、本処理を終了する。
【0037】
ここで、処理装置30は、車両50の速度が予め設定された速度閾値よりも低いことを条件として、上述したミラーゴーストに基づくターゲット位置判定処理を実行するようにしてもよい。すなわち、処理装置30は、車両50の速度が速度閾値よりも低い場合に限って、ミラーゴースト観測点を用いてターゲットの位置を判定するようにしてもよい。ミラーゴーストを発生させる反射面が周囲に存在する場所は見通しが悪い場所(例えば、交差点)であり、車両50の速度が比較的低速になると考えられる。よって、処理装置30は、ミラーゴーストが発生しやすい状況に限って、ミラーゴースト観測点を用いてターゲットの位置を判定するようにしてもよい。速度閾値は、例えば、30km/hとしてもよい。
【0038】
また、信頼度算出部35は、判定されたターゲットTgの位置の信頼度を算出する。ここで、ターゲットTgからの直接波に基づいた受信信号である直接信号を用いて、判定されたターゲットTgの位置を第1位置とし、S110の処理において判定されたターゲットTgの位置を第2位置とする。信頼度算出部35は、第1位置と第2位置のそれぞれの信頼度を算出する。詳しくは、信頼度算出部35は、第1位置一致する第2位置が判定された場合に、第1位置に一致する第2位置が判定されていない場合よりも、第1位置の信頼度を増加させる。
【0039】
また、信頼度算出部35は、S70の処理において複数の面方向が算出された場合には、1つの面方向しか算出されていない場合よりも、第2位置の信頼度を増加させる。また、信頼度算出部35は、第1位置の信頼度を第2位置の信頼度よりも高くする。
【0040】
さらに、信頼度算出部35は、車両50の速度に応じて、第2位置の信頼度を変化させてもよい。具体的には、信頼度算出部35は、車両50の速度と上述した速度閾値との差が小さいほど、第2位置の信頼度を高くするようにしてもよい。また、信頼度算出部35は、車両50の速度が上述した速度閾値よりも大きい場合には、第2位置の信頼度を減少させてもよい。これにより、実際に存在するターゲットTgをミラーゴーストと誤判定するなどして、誤ったターゲット位置を確定することを抑制することができる。
【0041】
そして、処理装置30は、第1位置及び第2位置のいずれかの信頼度が信頼度閾値を超えた場合に、ターゲット位置を確定する。すなわち、処理装置30は、第1位置及び第2位置のうち、信頼度が信頼度閾値を超える方をターゲット位置と確定する。
【0042】
<3.効果>
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)反射面観測点とその周囲の観測点とから、ターゲットTgからの反射波を反射する反射面の面方向が算出される。反射面の面方向がわかると、反射面の面方向と1組の観測点ペアとから、ターゲットの位置を判定することができる。すなわち、観測点ペアが1組しかない場合でも、ターゲットの位置を判定することができる。
【0043】
(2)反射面へのレーダ波の入射角θ1の値と等しい値の反射角θ2の方位を、ターゲット方位として算出することができる。よって、算出したターゲットTgの方位において、反射観測点を基準としてミラーゴースト観測点と等距離にある位置を、ターゲットTgの位置と判定することができる。
【0044】
(3)ミラーゴーストが生じる反射面は壁やガードレールなどであり、反射面の面方向とターゲットTgの進行方向とには相関が高いことがわかった。よって、ターゲットTgの過去位置Ps1と反射面の面方向とから、ターゲットTgの進行方向を算出することができる。そして、ターゲットTgの進行方向の延長戦上において、反射面観測点を基準としてミラーゴースト観測点と等距離にある2つの位置のうち、過去位置Ps1と近い位置をターゲットTgの位置と判定することができる。
【0045】
(4)ターゲットTgからの反射波が複数の反射面で反射され、反射面の面方向が複数算出されることがある。このような場合は、それぞれの面方向からターゲットTgの進行方向が算出される。ここで、車両50にとって、最も注意すべきターゲットTgは自身の進行方向と交差する方向に進行するターゲットTgである。よって、算出された進行方向のうち、車両50の進行方向と交差する方向の進行方向を用いて、ターゲットTgの位置が判定される。これにより、複数の面方向が算出された場合には、最も注意すべき方向へターゲットTgが進行していると判定して、安全性を高めることができる。
【0046】
(5)車両50の速度が閾値よりも低い場合に限って、ミラーゴースト観測点を用いてターゲットTgの位置が判定されるようにした場合、ミラーゴーストが出現する状況に限って、ミラーゴースト観測点を用いてターゲットTgの位置が判定される。そのため、実際に存在するターゲットTgをミラーゴーストと誤判定するなどして、誤ったターゲット位置を確定することを抑制することができる。
【0047】
(6)ターゲットTgの第1位置に一致するターゲットTgの第2位置が判定された場合には、第1位置に一致する第2位置が判定されていない場合よりも、第1位置の信頼度が増加される。これにより、第1位置と第2位置が一致する場合には、ターゲットTgの位置を早期に確定することができる。ひいては、ドライバへ警報情報を早期に提示することができる。
【0048】
(7)複数の反射面の面方向が算出された場合には、1つの面方向しか算出されていない場合よりも、ターゲットTgの第2位置の信頼度が高くされる。これにより、ターゲットTgからの反射波が複数の反射面で反射して、複数のミラーゴーストが発生した場合には、ターゲットTgの位置を早期に確定することができる。ひいては、ドライバへ警報情報を早期に提示することができる。
【0049】
(8)ターゲットTgの第1位置の信頼度が、第2位置の信頼度よりも高くされる。これにより、第2位置よりも第1位置の方が優先され、誤ったターゲットTgの位置を確定することを抑制することができる。
【0050】
(他の実施形態)
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0051】
(a)上記実施形態では、処理装置30は、S60、S90及びS100の処理を順番に行い、異なる複数の手法でターゲットの位置を判定しているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、処理装置30は、S60の処理の実行後、S90及びS100の処理は実行せずS120の処理へ進んでもよいし、S90の処理の実行後、S100の処理は実行せずにS120の処理へ進んでもよい。すなわち、処理装置30は、1つの手法によって位置を判定するだけでもよい。この場合、3つの手法の優先度は、上述した加重平均の重みが重い順とすればよい。
【0052】
(b)上記実施形態において、処理装置30は、ターゲット位置判定処理において、S50及びS60の処理を実行しなくてもよい。
(c)上記実施形態では、車両50の前側に3台のレーダ11〜13が搭載されているが、レーダ11の1台だけが搭載されていてもよいし、レーダ12及びレーダ13の2台が搭載されていてもよい。また、車両50の後側にレーダが搭載されていてもよい。車両50に少なくとも1台のレーダが搭載されていればよく、レーダの搭載位置は特に限定されない。
【0053】
(d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0054】
(e)上述した車両レーダシステムの他、車両レーダシステムの制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、位置検出方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。