(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
大気と混合する前の上記海水、または上記海洋動物に接触させる前の上記殺菌水に、紫外光を照射する工程をさらに含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔殺菌方法〕
本発明の一実施形態は、海洋動物の殺菌方法を提供する。当該殺菌方法は、海水に、電気分解された大気を混合させることによって、酸素富化海水を生成する工程;上記酸素富化海水を電気分解することによって、殺菌水を生成する工程;および上記殺菌水に海洋動物を接触させる工程を含んでいる。上記殺菌水は、NOCl、次亜塩素酸水(HOCl)、次亜塩素酸イオン(OCl
−)、OHラジカルおよび一重項酸素を含んでいる。殺菌水に含まれているこれらの成分が主に、殺菌作用を示す。いずれの成分も、非常に高い酸化力(したがって高い殺菌作用)を示すため、海洋動物に付着している細菌などと速やかに反応して、極めて短時間に消費される。また、一重項酸素は、海水および大気の成分と反応して、NaCl、NOCl、次亜塩素酸水、次亜塩素酸イオンおよびOHラジカルを生成し得る。したがって、上記殺菌水において、生成された一重項酸素は部分的に、NOCl、次亜塩素酸水、次亜塩素酸イオンおよびOHラジカルに変換される。以上のことから、上記殺菌水は、生成から海生動物の接触までの間に、NOCl、次亜塩素酸水、次亜塩素酸イオン、OHラジカルおよび一重項酸素を含んでいると説明され得る。
【0014】
上記殺菌方法は、2回の電気分解を実施することを包含している。1回目:大気への電気分解において、大気中の酸素分子の一部は、一重項酸素、および当該一重項酸素の一部と反応して生成した種々の酸化物(例えば、NO
x、SO
xおよびCO
xなど)を生成する。したがって、電気分解された大気を海水と混合することによって、海水における酸素(原子)の存在量が効率的に上昇する(酸素富化海水が生成される)。2回目:酸素富化海水の電気分解によって、海水および大気に含まれている成分に含まれている酸素を、一重項酸素として遊離させ得る。一重項酸素の遊離の結果として、一重項酸素の存在比が上昇することによって、上記殺菌水が生成される。
【0015】
上述のように、上記殺菌方法は、海水および大気を原料とする殺菌水を用いて海洋動物を殺菌する。当該殺菌水は、天然の材料を用いて生成されている。また、当該殺菌水は、酸素の含有量において異なるが、含まれている元素の組成に関しては、例えば、大気の不安定な状態(例えば、雷をともなった嵐など)によって自然に生じる海水および大気の混合物と類似している。したがって、上記殺菌方法に使用した後に海に戻した上記殺菌水は、自然の循環作用によって、元の大気および海水に戻る。
【0016】
本明細書に使用されるとき、「非加熱食品」は、加熱調理せずに、生のまま食することのできる食材(例えば、厚生労働省の定める非加熱食品としての衛生基準を満たしている食材)を意味する。したがって、「非加熱食品」を、加熱調理して食べても、加熱せずに食べてもよい。当該食材は、食するに適さない(inedible)部分を含み得る。当該部分は、骨格、表皮、外殻および一部の臓器などである。したがって、上記殺菌方法によって殺菌される対象は、生物体の全体または生物体の一部であり得る。上記対象は、生存している生物体であることが好ましく、非加熱食品における上記部分は、殺菌後に生物体から排除または切除され得る。
【0017】
本明細書に使用されるとき、殺菌は、人体による非加熱食品の摂取後に生じ得る、当該非加熱食品の毒性を、低下または消失させることを意味する。当該毒性は、非加熱食品としての生物体に含まれている病原体(例えば、細菌、真菌またはウイルス)に起因する。したがって、殺菌は、当該生物体を消毒すること、または無菌にすることを意味し、殺菌は、病原体の弱毒化、殺傷、死滅または破壊を引き起こす。一実施形態において、殺菌は、上記病原体の感染性を低下または消失させる。感染性の消失は、病原体から感染能を奪うこと(例えば、ウイルスの中和)、または病原体の活動を停止させること(例えば、溶菌またはウイルスの分解)によって実現され得る。
【0018】
上記殺菌方法の実施によって存在数を低下させる病原体としては、上述の通り、細菌、ウイルスおよび真菌が挙げられる。当該病原体は、海面付近および河口付近において増殖可能である。細菌の例は、病原性大腸菌、ビブリオ属に属する細菌(腸炎ビブリオ、コレラ菌、ナグビブリオ、ビブリオ フルビアリス、ビブリオ ミミカス、ビブリオ バルニフィカスなど)、サルモネラ属に属する細菌(サルモネラ エンテリティディス)、クロストリジウム属に属する細菌(ウェルシュ菌、ボツリヌス菌など)、リステリア属に属する細菌(リステリア菌)、赤痢菌属に属する細菌(赤痢菌)、ブドウ球菌属に属する細菌(黄色ブドウ球菌)、バシラス属に属する細菌(セレウス菌)であり、ウイルスの例は、ノロウイルスである。
【0019】
本明細書に使用されるとき、「海洋動物」は、海水から酸素を体内に取り込む器官を有している海に生息する動物のうち、人間の食用に供する動物を意味する。海洋動物は、特に貝類である。貝類は、二枚貝または巻貝であり、貝類の具体例としては、カキ、ホタテ、アワビ、サザエ、ほっき貝および赤貝などが挙げられる。
【0020】
本明細書に使用されるとき、「殺菌水を海洋動物に接触させる」は、海洋動物の外表面および器官内に殺菌水を接触させることを意味する。殺菌水を接触させる器官は、呼吸器官、消化吸収器官および排泄器官である。ここで、用語「器官内」は、生物学的に、上述の器官の内腔(すなわち生体外)を意味しており、海洋動物の呼吸、接触および排泄において、海水(を含んでいる体液)が直接に接触する表面である。したがって、「器官内」は「外表面」の一部とみなし得るが、本明細書では、生物学的ではなく、一般的な区別に基づいて、生体の外部から観察できる生体外の部分を「外表面」、例えば生体を解剖したときに観察できる生体外の部分を「器官内」と表す。
【0021】
本明細書に使用されるとき、「殺菌水」は、NOCl、次亜塩素酸水、次亜塩素酸イオン、OHラジカルおよび一重項酸素を含んでいる水(海水および大気の混合物)を意味する。したがって、「殺菌水」は、海洋動物を殺菌するための水性の液体であり、「殺菌水」に接触させられた海洋動物がされればよく、「殺菌水」が殺菌または滅菌されている必要はない。
【0022】
上記殺菌水は、上記成分の高い反応性を十分に生かすため、生成されるとすぐに海洋動物との接触に使用されることが好ましい。したがって、後述する実施例に説明されている通り、実際の殺菌方法では、殺菌水の生成および海洋動物の殺菌をほぼ同時に実施することが最も好ましい。
【0023】
一実施形態において、1回目および2回目の電気分解は、1cm
3の大気に対して、2.5〜6.5kWの電力において、数秒間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9秒間)にわたって実施される。この条件の範囲において1回目および2回目の電気分解を実施すれば、大気中の酸素分子を十分に分解することができる。
【0024】
大気および海水の混合比率は、海水中の塩基物の存在量によって変化し得る。当該存在量も種々の条件によって変化し得る。一例としての実施形態において、大気および海水の混合比率の範囲は、1:5〜1:15(v/v)である。大気および海水の混合比率が以上の範囲にあれば、NOCl、HOClおよびOHラジカルの生成に必要な元素を供給し得る。また、上記混合比率であれば、殺菌水における溶存酸素濃度が、海洋動物の呼吸にとって過剰にならない。
【0025】
上記殺菌方法は、1回以上の、紫外線を照射する工程を含んでいる。一実施形態において、上記殺菌方法は、1回の、紫外線を照射する工程を含んでおり、当該工程は、大気と混合する前の海水または海洋動物に接触させる前の殺菌水に対して、実施され得る。他の実施形態において、上記殺菌方法は、2回の、紫外線を照射する工程を含んでおり、当該工程は、大気と混合する前の海水および海洋動物に接触させる前の殺菌水に対して、実施され得る。これらの実施形態において、紫外線を照射する工程は、海水または殺菌水に含まれている病原体を殺菌する工程である。当該紫外光は、181〜330nmの波長を有している、その照射によって殺菌性を示す光である。
【0026】
上記殺菌方法によれば、非加熱食品としての海洋動物を、季節を問わずに出荷することができる。また、海洋動物を、卵から孵した水域において、出荷するまで成育させる必要はない。例えば、成体ではあるが、出荷するには大きさが十分ではない海洋動物は、第1の成育地から、非加熱食品として消費される地域の近く(第2の成育地)に移される。第2の成育地において十分な大きさに育成された後に、海洋動物は、本発明の一実施形態に係る殺菌方法によって殺菌され、出荷され得る。このような2段階の育成によって、十分な大きさの成体を運ぶ必要がないので、海洋動物の輸送コストを低下させ得る。
【0027】
また、第1の成育地における海洋動物が、天災または一時的な水質の悪化などによって死滅するおそれが生じた場合に、第2の成育地に海洋動物を移すことによって、経済的な損失を未然に防ぐことができる。非加熱食品としての海洋動物は、一般的に、養殖によって生産されており、衛生的な安全性は、養殖された海域の水質に左右される。しかし、本発明の一実施形態に係る殺菌方法によれば、成育地の水質に関わらず、衛生的に安全な海洋動物を非加熱食品として市場に供することができる。
【0028】
上記殺菌水におけるNOCl、HOCl、OHラジカルおよび一重項酸素の存在は、市販のキットや試薬(例えば、DOキット、CODキット、O
3キット、トリジン試薬(いずれも商品名は異なるものの、複数の製造業者から市販されている))を用いて、検出可能である。
【0029】
〔殺菌装置〕
本発明の一実施形態は、殺菌装置を提供する。当該殺菌装置を
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る殺菌装置10の構成を示す模式図である。
【0030】
図1に示すように、殺菌装置10は、第1照射槽1、混合槽3、電気分解槽5、第2照射槽7および殺菌槽9を備えている。第1照射槽1には、第1ポンプP
1を介して、海中から海水が導入される。電気分解槽5には、第2ポンプP
2を介して、大気中から大気が導入される。導入された海水および大気は、混合槽3において混合された後に、第2照射槽7および第3ポンプP
3を経て、殺菌槽9に供給される。殺菌装置10におけるそれぞれの構成要素の機能の詳細を、以下に説明する。
【0031】
第1ポンプP
1は、上述の通り、海水を第1照射槽1に導入するためのポンプである。第1ポンプP
1は、第1照射槽1に導入される海水の量を調節可能な、通常のポンプである。
【0032】
第1照射槽1は、第1ポンプP
1によって導入された海水に、紫外線を照射するための容器である。したがって、第1照射槽1は、海水によって腐食されない任意の材料によって形成されており、第1照射槽1内には、紫外線照射ランプ(図示せず)が備えられている。
図1において、第1照射槽1は、実線によって示されている配管の途中に配置されている円筒形の容器として示されているが、紫外線照射ランプが配置されている配管であり得る。第1照射槽1において紫外線の照射を受けた海水は、混合槽3に送られる。
【0033】
第2ポンプP
2は、上述の通り、大気を電気分解槽5に導入するためのポンプである。第2ポンプP
2は、電気分解槽5に導入される大気の量を調節可能な、通常のポンプである。
【0034】
電気分解槽5は、第2ポンプP
2によって導入された大気を部分的に電気分解するための容器である。電気分解槽5内には、電源に接続されている陽極および陰極(図示せず)が備えられている。
図1において、電気分解槽5は、実線によって示されている配管の途中に配置されている矩形の容器として示されているが、上記陽極および電極が配置されている配管であり得る。電気分解槽5において、部分的に電気分解を受けた大気(以下では、単に「空気」)は、混合槽3に送られる。
【0035】
混合槽3は、第1照射槽1からの海水および電気分解槽5からの空気を混合した後に、当該海水および空気の混合物(酸素富化海水)を部分的に電気分解するための容器である。混合槽3では、海水に空気を送り込むことによって、酸素富化海水が生成される。例えば、当該酸素富化海水は、混合槽3に存在している海水に、空気を吹き込む(例えばバブリング)によって、生成される。このとき、空気は、混合槽3における海水の水面より下方から、当該海水に噴射される。したがって、空気は、第2ポンプP
2の動作によって、当該空気の噴射口の水深にしたがった水圧より高い圧力をともなって、混合槽3に噴射される。
【0036】
上記酸素富化海水は部分的に、混合槽3においてさらに電気分解される。したがって、混合槽3は、電源に接続されている陽極および陰極を備えている。
図1において、混合槽3は、矩形の容器として示されているが、上記酸素富化海水を生成する部分としての矩形の容器、および当該容器からの当該酸素富化海水を部分的に電気分解するための、電極を備えている配管の2つから構成され得る。部分的に電気分解された酸素富化海水(殺菌水)は、第2照射槽7に送られる。陰極の材料としては、塩水中における電蝕に強い金属(例えばTi、Md、Ag、AuおよびPt)が挙げられる。
【0037】
第2照射槽7は、第1照射槽1と類似の構成なので、第2照射槽7ついての説明を省略する。第2照射槽7からの殺菌水は、第3ポンプP
3によって殺菌槽9に送られる。
【0038】
殺菌槽9は、殺菌水を海洋動物に接触させることによって、当該海洋動物を殺菌する容器である。殺菌槽9には、殺菌装置10の運転前に、殺菌される対象である海洋動物が収められている。殺菌槽9に送られてくる殺菌水と同容積の殺菌水が、殺菌槽9から排出される。一定の時間(例えば、1時間または2時間)にわたって、殺菌装置10を運転させることによって、殺菌槽9に収められた海洋動物は、殺菌される。
【0039】
一実施形態において、殺菌槽9は、海洋動物を入れる前に、殺菌装置10を予備的に運転させることによって殺菌水を用いて洗浄され得るか、または他の方法(例えば、紫外線照射、消毒剤による消毒)によって殺菌され得る。
【0040】
(まとめ)
本発明の各実施形態の概要は以下の通りである。
(1)海水に、電気分解処理した大気を混合させることによって、酸素富化海水を生成する工程;上記酸素富化海水を電気分解処理することによって、殺菌水を生成する工程;および上記殺菌水を海洋動物に接触させる工程を含んでおり、上記殺菌水は、NOCl、次亜塩素酸水、次亜塩素酸イオン、OHラジカルおよび一重項酸素を含んでいる、非加熱食品としての海洋動物の、殺菌方法。
(2)海水および大気の混合比は、1:5〜1:15(v/v)である、(1)に記載の殺菌方法。
(3)上記海洋動物は貝類である、(1)または(2)に記載の殺菌方法。
(4)大気と混合する前の上記海水、または上記海洋動物に接触させる前の上記殺菌水に、紫外光を照射する工程をさらに含んでいる、(1)〜(3)のいずれかに記載の殺菌方法。
【実施例】
【0041】
〔通常の養殖条件におけるカキの成育〕
カキの成育に適する環境から任意に選択した、日本国内の場所において、カキを、春から夏の季節を選んで、食用カキと類似の条件(季節以外)のもとに成育させた。当該場所として、互いに数百km離れた環境の異なる2か所を選択した。各場所において、開始時期をずらした2回(すなわち計4回)の成育を行った。なお、各場所(海域)を管理している個人または団体から、当該場所をカキの成育試験に使用する許可を得た。複数の網カゴを連ねた綱を準備し、当該網カゴにカキを入れた。綱を海上に浮かべたうきに吊るして、カキを海中に入れた。カキが成育環境に十分になじんだ約14日後に、海中から綱を引き上げた。それぞれの成育において、カキを2群に分けた。一方の群(未処理群)を、海中から引き揚げた後に、特に手を加えずに密閉容器につめた。他方の群(処理群)を、海中から引き揚げた後に、以下に説明する殺菌処理を施した。
【0042】
〔カキの殺菌処理〕
処理群として選択したカキをさらに2群に分けて、
図1に例示した殺菌装置10の殺菌槽9に入れた。一方の群を殺菌槽9に入れた後に、1時間にわたって殺菌装置10を運転させた。このときの大気および海水の混合比率は、1:5(v/v)であった。他方の群を殺菌槽9に入れた後に、2時間にわたって殺菌装置10を運転させた。ポンプP
1の取水口およびポンプP
3の排水口を、カキを成育させた場所のすぐ近くに入れた。つまり、処理群および未処理群におけるカキを、成育の開始以降には、他の場所から得られた海水に触れさせていない。殺菌装置10を1時間にわたって運転させた後に、殺菌槽9において、カキを無菌的に密閉容器につめ(処理群1)、殺菌装置10を1時間にわたって運転させた後に、殺菌槽9において、カキを無菌的に密閉容器につめた(処理群2)。
【0043】
殺菌槽9に供給される殺菌水に少なくとも一重項酸素が含まれていることを、上述のO
3キットを用いて確認した。これによって、当該殺菌水には、NOCl、HOCl、OHラジカルおよび一重項酸素が少なくとも含まれていることがわかった。
【0044】
〔処理群および未処理群におけるカキの、非加熱食品としての安全性評価〕
各成育によって得られたカキの、非加熱食品としての安全性評価を、外部(株式会社 食品微生物センター)に委託した。委託先から受け取った報告書の内容を表1にまとめる。
【0045】
委託先からの報告書には、検査方法にとして、「検査方法:食品衛生検査指針微生物編(1990・2004) 食品衛生検査指針追補II微生物編(1996)厚生労働省 監修を準用」と記載されていた。また、報告書には、各検査項目(微生物種)に対する試験方法(使用培地)として、一般生菌:標準寒天培地、大腸菌群:XM-G寒天培地、大腸菌群:XM-G寒天培地、黄色ブドウ球菌:卵黄加マンニット食塩寒天培地がそれぞれ示されていた。また、上記報告書には、加熱しない食品に対する評価の基準値(1gの検体に含まれている菌数)として、一般生菌:1.0×10
4(1万未満)、大腸菌群:10×10
3(1千未満)、大腸菌:陰性、真菌 カビ 酵母:8.0×10
2(800未満)が示されていた。
【0046】
なお、表1において、1回の成育によって得られた3種類のカキ(未処理群、処理群1および処理群2)に、殺菌処理の時間に応じた0、1および2の数字を割り当てた。また、各群には、当該番号の前にハイフンを挟んで、成育場所を表す数字(1または2)に2回の成育のいずれかを表すアルファベット(aまたはb)を付した。例えば、表1において、「1a−1」は、第1の場所における1回目の成育の後に、1時間の殺菌処理を受けたカキ表している。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示すように、各評価項目における結果は、未処理群(末尾の数字が0)において基準値を超えている(加熱しない食品として衛生的に適していない)場合であっても、上述の殺菌処理を施すことによって、基準値を下回ることを示している。より詳細には、試験群1bにおける項目「一般生菌」、「大腸菌群」および「大腸菌」を例にとると、殺菌前に10〜数十万(CFU/g)いた大腸菌群および大腸菌は、本実施例に係る殺菌処理(1時間)によって、約1/1000または検出限界以下(CFU/0.1g)まで減少していた(殺菌率:約99.83〜99.99%以上)。一般生菌の値を参照すると、1時間の処理は、2時間の処理と同等の殺菌率を示している。よって、本実施例に係る殺菌処理は、1時間以内に十分な殺菌作用を発揮しており、さらに短い処理時間(例えば、10分間〜30分間)でも、生カキを非加熱食品として食する程度まで十分に殺菌できると予測される。したがって、本発明の一実施形態に係る方法を用いて殺菌することによって、病原体(細菌、真菌およびウイルス)の活動が相対的に活発な春から夏に水揚げした生のカキを、食品の衛生的な基準を満たしている非加熱食品として、市場に供することができる。
【0049】
次に、海水中のウイルスを不活性化する、殺菌装置10の能力をさらに試験した(実際の試験操作を、北里大学の衛生微生物研究室に依頼した)。試験には、コクサッキーウイルス(Coxsackie virus B6 schmin)を3.0×10
3個/mlの濃度において混合した海水(水温21℃)を用いた。殺菌装置10にかけなかった海水(No1)、殺菌装置10において1回の処理を受け、装置の出口から採取した海水(No2)、殺菌装置10の循環運転中に、処理開始から5分後に装置の槽内から採取した海水(No3)、および殺菌装置10の循環運転中に、処理開始から10分後に装置の槽内から採取した海水(No4)のそれぞれ等量ずつを、培養細胞(予め準備した)の培地に入れた。海水を培地に入れてから24時間後に、感染細胞の数をカウントした。結果を以下に表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示す通り、No1では、混合した濃度にしたがった数に対応する感染細胞が確認された。一方で、No2、No3およびNo4ではいずれも、ほぼ完全にウイルスは不活性化されていた。したがって、殺菌装置10は、極めて短時間にウイルスを不活性化できることが分かった。