特許第6845265号(P6845265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845265
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】外科手術用ファスナー取り付け装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/115 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   A61B17/115
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-3310(P2019-3310)
(22)【出願日】2019年1月11日
(62)【分割の表示】特願2017-26674(P2017-26674)の分割
【原出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2019-80948(P2019-80948A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】13/442,273
(32)【優先日】2012年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ペナ
(72)【発明者】
【氏名】ポール シリカ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ラセネット
【審査官】 小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0080492(US,A1)
【文献】 特表2008−512173(JP,A)
【文献】 特開2008−114072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術用ステープラーエンドエフェクターであって、
近接機構に接続するための近位端とアンビルヘッドに取り付けられた遠位端とを有する中央ロッドを有する円形のアンビルアセンブリであって、前記アンビルヘッドは、組織接触表面を有するアンビルプレートと、ステープル形成ポケットの3つの円形の列とを有し、前記ステープル形成ポケットは、湾曲しており、かつ、ステープル形成ポケットの内側の列と、ステープル形成ポケットの中間の列と、ステープル形成ポケットの外側の列とを有し、前記ステープル形成ポケットの内側の列の前記ステープル形成ポケットは、前記ステープル形成ポケットの中間の列と入れ子状にされ、前記ステープル形成ポケットの中間の列は、前記ステープル形成ポケットの外側の列と入れ子状にされ、前記ステープル形成ポケットの内側の列の前記ステープル形成ポケットは、前記ステープル形成ポケットの中間の列および外側の列の前記ステープル形成ポケットよりも小さい、円形のアンビルアセンブリと、
前記ステープル形成ポケットの列に対応するステープル保持スロットの少なくとも2つの円形の列を有するステープルカートリッジアセンブリと
を備え、
前記ステープル形成ポケットの内側の列は、第1のステープルを形成し、前記ステープル形成ポケットの外側の列は、第2のステープルを形成し、前記第1のステープルおよび第2のステープルは、組織をステープル留めするように組織を圧縮するための異なる内部空間を有し、
前記第2のステープルによってステープル留めされた組織に加えられる圧力は、前記第1のステープルによってステープル留めされた組織に加えられる圧力よりも大きく、これにより、前記第2のステープルを囲む組織を通る血流は、前記第1のステープルを囲む組織を通る血流よりも制限され、これにより、止血をさらに容易にする、外科手術用ステープラーエンドエフェクター。
【請求項2】
前記ステープル形成ポケットの中間の列における各ステープル形成ポケットの長さは、前記ステープル形成ポケットの外側の列における各ステープル形成ポケットの長さよりも短い、請求項1に記載の外科手術用ステープラーエンドエフェクター。
【請求項3】
前記ステープル形成ポケットの内側の列によって形成される前記第1のステープルの横方向の長さは、前記ステープル形成ポケットの中間の列によって形成される第3のステープルの横方向の長さよりも小さい、請求項2に記載の外科手術用ステープラーエンドエフェクター。
【請求項4】
前記ステープル形成ポケットの中間の列によって形成される前記第3のステープルの横方向の長さは、前記ステープル形成ポケットの外側の列によって形成される前記第2のステープルの横方向の長さよりも小さい、請求項3に記載の外科手術用ステープラーエンドエフェクター。
【請求項5】
請求項1に記載のエンドエフェクターと、
電気機械的なハンドルと
を備える外科手術用ステープラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許出願番号13/207,653(2011年8月11日出願)の一部継続出願であり、この米国特許出願は、米国仮出願番号61/388,788(2010年10月1日出願)の利益を主張し、この米国仮出願は、米国仮出願番号61/410,980(2010年11月8日出願)の利益を主張する。これらの全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、外科手術用ファスナーまたはステープルを身体組織に付けるための外科手術用ステープル留め器具に関し、そしてより特定すると、屈曲したバックスパンのステープルを利用し、そして屈曲したステープル形成バケットを備える対応するアンビルを有する、外科手術用ステープル留め装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
ステープルまたはファスナーの環状アレイを組織に付けるための外科手術用ステープル留めデバイスは、当該分野において周知である。例えば、このような外科手術用ステープル留めデバイスは、端端吻合を用いて小腸切除術を行う際に、特定の有用性を有する。これらのデバイスは代表的に、ステープルプッシャーアセンブリまたは部材、およびアンビルアセンブリまたは部材を、この外科手術用ステープル留めデバイスの遠位端に備える。このアンビル部材は、組織をアンビル部材とカートリッジアセンブリとの間に配置するための引き込まれた構成から、組織を接合するため(すなわち、接合されるべき患者の器官の身体内の管状器官の端部をステープル留めするため)の前進した構成まで移動可能である。ファスナー(すなわち、例えば、ステープル)の1つ以上の環状または円形のアレイが、このカートリッジアセンブリに作動可能に収容される。このアンビル部材は、ステープル形成バケット部材の1つ以上の対応する環状アレイを備え、これらのステープル形成バケット部材は、ステープルがこのカートリッジアセンブリから排出された後に、これらのステープルを(例えば、「B」字型のステープルの構成に)打ち曲げるかまたは形成する。一般に、これらのステープルは、直線状のバックスパンを備える。理解され得るように、カートリッジアセンブリに関連する、アンビルのバケット部材および/またはプッシャーは、これらのステープルの直線状のバックスパンに適応するために、対応する構成(すなわち、ほぼ直線状の構成)を備える。
【0004】
直線状のバックスパンのステープルと一緒に使用するために構成された、所定のステープルプッシャー構成について、所定のステープルの環状アレイ内に存在し得るステープルの数は、これらのステープルのバックスパンの長さ、ならびにそのカートリッジアセンブリの内径および外径によって、制限される。さらに、代表的に、ステープルの内側の環状アレイが、そのカートリッジアセンブリのステープルの各さらなる環状アレイ(例えば、中間および外側の環状アレイ)内に存在し得るステープルの数を決定する。すなわち、環状アレイの各々の中に同数のステープルが代表的に提供されて、各連続するステープル間の間隙における一貫した重なりを可能にする。特定の間隙距離が、各ステープルの環状アレイについて各連続するステープル間に存在し、代表的に、各連続するステープル間の最小の間隙距離は、内側環状アレイに存在し、そして連続するステープル間の間隙距離は、内側の環状アレイから外側の環状アレイ(単数または複数)に向かって増大する。その結果として、内側の環状アレイ内の連続したステープル間の間隙距離と、引き続く環状アレイ(単数または複数)内の連続したステープル間の間隙距離とは、等しくない。これらの等しくない間隙距離は、「目の詰まった」ステープル線を得ることをもたらすものではない。すなわち、各ステープルの環状アレイ内の連続するステープル間の等しい間隙距離は、ステープル留めされた組織のより良好な治癒を促進し得、このことは次に、ステープル留めされた組織の線におけるより少ない出血および漏出をもたらす。不運なことに、上記ステープルのバックスパンの長さは、隣の列のステープルとの干渉(すなわち、隣の列内まで延びること)から、幾何学により制限される。その結果として、組織が従来の外科手術用ステープル留めデバイスを用いてステープル留めされる結果、出血および漏出が、ステープル留めされた組織の線(すなわち、外側環状アレイ(単数または複数)におけるステープルの環状アレイ内の連続するステープル間の領域の隣接位置)において起こる機会が存在する。または、特定の例において、損なわれたステープル留めされた組織の線が形成され、これは次に、ステープル留めされた組織の分離をもたらし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
管状本体部分;
ステープルの環状アレイを排出するための、該本体部分の遠位端に配置されたカートリッジアセンブリであって、該ステープルの環状アレイのステープルの各々は、レッグおよび一般に屈曲または湾曲したバックスパンを有する、カートリッジアセンブリ;ならびに
該管状本体部分の該遠位端に配置され、そして該カートリッジアセンブリに対向して位置するアンビル部材であって、該アンビル部材は、該カートリッジアセンブリからの該ステープルの排出の際に、組織内で該ステープルを折り曲げるためのものであり、該アンビル部材は、対応するステープル形成バケットの環状アレイを有し、該バケットの各々は、直線状の構成を有し、該ステープルは、該レッグが該バックスパンまで、または該バックスパンを越える位置まで延びるように、該バケットによって折り曲げられる、アンビル部材
を備える、外科手術用ステープラー。
(項目2)
前記カートリッジアセンブリが、ステープルの内側環状アレイおよびステープルの外側環状アレイを備え、そして前記アンビル部材が、ステープル形成バケットの内側環状アレイおよび外側環状アレイを備える、上記項目に記載の外科手術用ステープラー。
(項目3)
前記ステープルの内側環状アレイ内の前記ステープルの各々の長さが、前記ステープルの外側環状アレイ内の前記ステープルの各々の長さより短く、そして前記ステープル形成バケットの内側環状アレイ内の前記ステープル形成バケットの各々の長さが、前記ステープル形成バケットの外側環状アレイ内の前記ステープル形成バケットの各々の長さより短い、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用ステープラー。
(項目4)
前記ステープルの内側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙が、前記ステープルの外側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙に等しく、そして前記ステープル形成バケットの内側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙が、前記ステープル形成バケットの外側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙に等しい、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用ステープラー。
(項目5)
前記ステープルの内側環状アレイおよび外側環状アレイ内の前記ステープルの各々の長さが互いに等しく、そして前記ステープル形成バケットの内側環状アレイおよび外側環状アレイ内の前記ステープル形成バケットの各々の長さが互いに等しい、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用ステープラー。
(項目6)
管状本体部分;
ステープルの内側環状アレイおよび外側環状アレイを排出するための、該本体部分の遠位端に配置されたカートリッジアセンブリであって、該ステープルは、レッグおよび一般に屈曲または湾曲したバックスパンを有し、該ステープルの外側環状アレイ内の該ステープルの該バックスパンの長さは、該ステープルの内側環状アレイ内の該ステープルの該バックスパンの長さより大きい、カートリッジアセンブリ;ならびに
該管状本体部分の該遠位端に配置され、そして該カートリッジアセンブリに対向して位置するアンビル部材であって、該アンビル部材は、該カートリッジアセンブリからの該ステープルの排出の際に、該ステープルを組織内で折り曲げるためのものであり、該アンビル部材は、対応するステープル形成バケットの内側環状アレイおよび外側環状アレイを有し、該ステープル形成バケットの各々は、直線状の構成を有し、該ステープルは、該レッグが該バックスパンまで、または該バックスパンを越える位置まで延びるように、該バケットによって折り曲げられる、アンビル部材
を備える、外科手術用ステープラー。
(項目7)
前記ステープルの内側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙が、前記ステープルの外側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙に等しく、そして前記ステープル形成バケットの内側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙が、前記ステープル形成バケットの外側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙に等しい、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用ステープラー。
(項目8)
管状本体部分;
ステープルの第一の環状アレイを排出するための、該本体部分の遠位端に配置されたカートリッジアセンブリであって、該ステープルの第一の環状アレイのステープルの各々は、ほぼ直線状のバックスパンを有する、カートリッジアセンブリ;および
該管状本体部分の該遠位端に配置され、そして該カートリッジアセンブリに対向して位置するアンビル部材であって、該アンビル部材は、該カートリッジアセンブリからの該ステープルの排出の際に、組織内で該ステープルを折り曲げるためのものであり、該アンビル部材は、対応するステープル形成バケットの第一の環状アレイを有し、該バケットの各々は、湾曲または屈曲した構成を有し、その結果、該ステープルの環状アレイは、該ステープルの形成中に、該ほぼ直線状のバックスパンを越える位置まで折り曲げて、第一の圧縮空間を提供する、アンビル部材
を備える、外科手術用ステープラー。
(項目9)
ステープルの第二の環状アレイおよび対応するステープル形成バケットの第二の環状アレイをさらに備え、該ステープル形成バケットの第二の環状アレイは、前記ステープル形成バケットの第一の環状アレイの深さより小さい深さを有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用ステープラー。
(項目10)
前記ステープルの第二の環状アレイの形成されるステープルは、前記第一の圧縮空間とは異なる第二の圧縮空間を提供するように折り曲げられる、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用ステープラー。
(項目11)
管状本体部分;
ステープルの第一の環状アレイを排出するための、該本体部分の遠位端に配置されたカートリッジアセンブリであって、該ステープルの第一の環状アレイのステープルの各々は、一般に曲がったバックスパンを有する、カートリッジアセンブリ;および
該管状本体部分の該遠位端に配置され、そして該カートリッジアセンブリに対向して位置するアンビル部材であって、該アンビル部材は、該カートリッジアセンブリからの該ステープルの排出の際に、組織内で該ステープルを打ち曲げるためのものであり、該アンビル部材は、対応するステープル形成バケットの第一の環状アレイを有し、該バケットの各々は、該ステープルの該ほぼ直線状の構成に適応して、該ステープルの形成を容易にするように構成されており、その結果、該ステープルの環状アレイは、該ステープルの形成中に、該一般に曲がったバックスパンを越える位置まで折り曲げられて、第一の圧縮空間を提供する、アンビル部材
を備える、外科手術用ステープラー。
【0006】
(摘要)
外科手術用ステープラーが提供される。このステープラーは、管状本体部分を備える。カートリッジアセンブリが、ステープルの環状アレイを排出するために、この本体部分の遠位端に配置される。このステープルの環状アレイのステープルの各々は、一般に屈曲したバックスパンを有する。この管状本体部分の遠位端に配置されたアンビル部材は、このカートリッジアセンブリに対向して配置されて、このカートリッジアセンブリからのステープルの排出の際に、これらのステープルを組織内で打ち曲げる。このアンビル部材は、対応するステープル形成バケットの環状アレイを有する。これらのバケットの各々は、これらのステープルの一般に屈曲した構成に適応するように構成されて、これらのステープルの形成を容易にする。
【0007】
(要旨)
本開示の1つの局面において、外科手術用ステープラーは、管状本体部分;ステープルの環状アレイを排出するための、この本体部分の遠位端に配置されたカートリッジアセンブリであって、このステープルの環状アレイのステープルの各々は、レッグおよび一般に屈曲または湾曲したバックスパンを有する、カートリッジアセンブリ;ならびにこの管状本体部分の遠位端に配置され、そしてこのカートリッジアセンブリに対向して位置するアンビル部材であって、このアンビル部材は、このカートリッジアセンブリからのこれらのステープルの排出の際に、これらのステープルを組織内で折り曲げるためのものであり、このアンビル部材は、対応するステープル形成バケットの環状アレイを有し、これらのバケットの各々は、直線状の構成を有し、これらのステープルは、これらのレッグがこのバックスパンまで、またはこのバックスパンを越える位置まで延びるように、これらのバケットによって折り曲げられる、アンビル部材を備える。
【0008】
特定の実施形態において、このカートリッジアセンブリは、ステープルの内側環状アレイおよびステープルの外側環状アレイを備え、そしてこのアンビル部材は、ステープル形成バケットの内側環状アレイおよび外側環状アレイを備える。ステープルの内側環状アレイ内のステープルの各々の長さは、ステープルの外側環状アレイ内のステープルの各々の長さより短くあり得、そしてステープル形成バケットの内側環状アレイ内のステープル形成バケットの各々の長さは、ステープル形成バケットの外側環状アレイ内のステープル形成バケットの各々の長さより短くあり得る。ステープルの内側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙は、ステープルの外側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙に等しくあり得、そしてステープル形成バケットの内側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙は、ステープル形成バケットの外側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙に等しくあり得る。
【0009】
ステープルの内側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙は、ステープルの外側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙に等しくあり得、そしてステープル形成バケットの内側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙は、ステープル形成バケットの外側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙に等しくあり得る。
【0010】
特定の実施形態において、ステープルの内側環状アレイおよび外側環状アレイ内のステープルの各々の長さは互いに等しく、そしてステープル形成バケットの内側環状アレイおよび外側環状アレイ内のステープル形成バケットの各々の長さは互いに等しい。
【0011】
本開示の別の局面において、外科手術用ステープラーは、管状本体部分;ステープルの内側環状アレイおよび外側環状アレイを排出するための、この本体部分の遠位端に配置されたカートリッジアセンブリであって、このステープルは、レッグおよび一般に屈曲または湾曲したバックスパンを有し、ステープルの外側環状アレイ内のステープルのバックスパンの長さは、ステープルの内側環状アレイ内のステープルのバックスパンの長さより大きい、カートリッジアセンブリ;ならびにこの管状本体部分の遠位端に配置され、そしてこのカートリッジアセンブリに対向して位置するアンビル部材であって、このアンビル部材は、このカートリッジアセンブリからのステープルの排出の際に、これらのステープルを組織内で折り曲げるためのものであり、このアンビル部材は、対応するステープル形成バケットの内側環状アレイおよび外側環状アレイを有し、これらのステープル形成バケットの各々は、直線状の構成を有し、これらのステープルは、これらのレッグがこのバックスパンまで、またはこのバックスパンを越える位置まで延びるように、これらのバケットによって折り曲げられる、アンビル部材を備える。
【0012】
特定の実施形態において、ステープルの内側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙は、ステープルの外側環状アレイ内の各連続するステープル間の間隙に等しく、そしてステープル形成バケットの内側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙は、ステープル形成バケットの外側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット間の間隙に等しい。
【0013】
本開示の別の局面において、外科手術用ステープラーは、管状本体部分;ステープルの第一の環状アレイを排出するための、この本体部分の遠位端に配置されたカートリッジアセンブリであって、このステープルの第一の環状アレイのステープルの各々は、ほぼ直線状のバックスパンを有する、カートリッジアセンブリ;およびこの管状本体部分の遠位端に配置され、そしてこのカートリッジアセンブリに対向して位置するアンビル部材であって、このアンビル部材は、このカートリッジアセンブリからのこれらのステープルの排出の際に、これらのステープルを組織内で折り曲げるためのものであり、このアンビル部材は、対応するステープル形成バケットの第一の環状アレイを有し、これらのバケットの各々は、湾曲または屈曲した構成を有し、その結果、ステープルの環状アレイは、これらのステープルの形成中に、そのほぼ直線状のバックスパンを越える位置まで折り曲げられて、第一の圧縮空間を提供する、アンビル部材を備える。
【0014】
この外科手術用ステープラーは、ステープルの第二の環状アレイおよび対応するステープル形成バケットの第二の環状アレイを有し得、このステープル形成バケットの第二の環状アレイは、ステープル形成バケットの第一の環状アレイの深さより小さい深さを有する。ステープルの第二の環状アレイの形成されるステープルは、第一の圧縮空間とは異なる第二の圧縮空間を提供するように、折り曲げられ得る。
【0015】
別の局面において、外科手術用ステープラーは、管状本体部分;ステープルの第一の環状アレイを排出するための、この本体部分の遠位端に配置されたカートリッジアセンブリであって、ステープルの第一の環状アレイのステープルの各々は、一般に曲がったバックスパンを有する、カートリッジアセンブリ;およびこの管状本体部分の遠位端に配置され、そしてこのカートリッジアセンブリに対向して位置するアンビル部材であって、このアンビル部材は、このカートリッジアセンブリからのこれらのステープルの排出の際に、これらのステープルを組織内で打ち曲げるためのものであり、このアンビル部材は、対応するステープル形成バケットの第一の環状アレイを有し、これらのバケットの各々は、これらのステープルのほぼ直線状の構成に適応するように構成されて、これらのステープルの形成を容易にし、その結果、ステープルの環状アレイは、その形成中に、一般に曲がったバックスパンを越える位置まで折り曲げられて、第一の圧縮空間を提供する、アンビル部材を備える。
【0016】
本開示の種々の実施形態が、図面を参照しながら本明細書中以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示の1つの実施形態による、アンビル部材およびカートリッジアセンブリを備える外科手術用ステープル留め装置の斜視図である。
図2図2は、図1に図示されるアンビル部材およびカートリッジアセンブリの斜視図である。
図3図3は、先行技術のカートリッジアセンブリおよびアンビル部材の斜視図である。
図4図4は、図3に示される細部の拡大された領域の斜視図である。
図5図5は、直線状のバックスパンを有する先行技術のステープルの斜視図である。
図6図6は、図1に図示されるカートリッジアセンブリと、そこに収容されたステープルのアレイの平面図である。
図7図7は、図6に図示されるステープルのアレイの斜視図である。
図8図8は、図2に図示されるアンビル部材の平面図である。
図9図9は、図8に図示される細部の拡大された領域の平面図である。
図10図10は、本開示の代替の実施形態によるアンビル部材の平面図である。
図11図11は、図10に図示される細部の拡大された領域の平面図である。
図12図12は、先行技術のステープルの斜視図である。
図13A図13Aは、本開示の代替の実施形態によるアンビル部材の平面図である。
図13B図13Bは、図13Aに図示される細部の拡大された領域の平面図である。
図14A図14Aは、形成された構成で示される、図12の先行技術のステープルの側面図である。
図14B図14Bは、図14Aの形成されたステープルの斜視図である。
図15A図15Aは、形成された構成で示される、図12の先行技術のステープルの側面図である。
図15B図15Bは、図15Aの形成されたステープルの斜視図である。
図16A図16Aは、本開示の代替の実施形態によるステープルの斜視図である。
図16B図16Bは、形成された構成で示される、図16Aのステープルの側面図である。
図16C図16Cは、図16Bの形成されたステープルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
本開示の詳細な実施形態が、本明細書中に開示される。しかし、開示される実施形態は、本開示の単なる例示であり、本開示は、種々の形態で実施され得る。従って、本明細書中に開示される具体的な構造的細部および機能的細部は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、特許請求の範囲の基礎として、および本開示を事実上任意の適切に詳述される構造で様々に使用することを当業者に教示するための代表的な基礎として、解釈されるべきである。
【0019】
図面および以下の説明において、用語「近位」とは、慣習的であるように、外科手術用器具の使用者に近い方の端部をいい、一方で、用語「遠位」とは、外科手術用器具の使用者から遠い方の端部をいう。
【0020】
ここで図面を特に詳細に参照すると、図面において、同じ参照番号は、数枚の図にわたって類似の要素または同一の要素を確認する役に立ち、図1は、本開示の1つの実施形態に従う外科手術用ステープル留め装置10(装置10)を示す。装置10は、管状器官の円形吻合を実施するように構成される。簡単に言えば、装置10は、1つ以上の旋回可能な起動ハンドル部材14(2つの旋回可能なハンドル部材14が図に示されている)を有するハンドルアセンブリ12を備える。装置10は、回転可能な把持部材18を備える前進デバイス16を備え、この回転可能な把持部材は、アンビル部材26をカートリッジアセンブリ22のほうに近づけるように構成される。ハンドルアセンブリ12から管状本体部分20が延び、この管状本体部分は、一般に湾曲した構成を有する。特定の実施形態において、本体部分20は真っ直ぐであってもよく、そして他の実施形態において、任意の構成に屈曲するように可撓性であってもよい。本体部分20は、ステープル24(図1図6および図7を参照のこと)の環状アレイに関連する、カートリッジアセンブリ22で終わる。アンビル部材26は、カートリッジアセンブリ22に対向して位置し、そしてカートリッジアセンブリ22内に作動可能に配置された接続デバイスまたは構造体(明示的には示さない)において、シャフト28によって装置10に接続される。本体部分20、前進デバイス16、ハンドルアセンブリ12(ハンドル部材14を含む)のより詳細な説明については、共有に係る米国特許第5,915,616号(Violaら,1997年10月10日出願)が参照され、これは、その全体が本明細書中に参考として援用される。例えば、管状本体部分20は、シャフト28および回転可能な把持部材18に接続するためのシャフトを備え得、回転させられる場合、本体部分20のシャフトを移動させ、そしてアンビル部材26をステープルカートリッジアセンブリ22と近接させる。ステープル留め装置10は、プッシャー部材をさらに備え、このプッシャー部材は、ステープルをカートリッジアセンブリ22からアンビル部材に向けて前進させるための複数のフィンガーを有する。旋回する起動ハンドル部材14の動きは、このプッシャー部材を動かしてステープルを排出させる。ハンドルアセンブリ12は、本体部分20のシャフトおよびプッシャー部材を移動させるためのアセンブリを備える。例えば、螺旋状の溝を有するカム部材が、把持部材18のピンを受容し、その結果、この把持部材が回転させられると、このカム部材が近位に移動し、本体部分20のシャフトを移動させる。ねじ切りされた部材および他の手段が、プッシャー部材を起動させてアンビル部材26をカートリッジアセンブリ22に向ける方向、およびカートリッジアセンブリ22から離れる方向に移動させるために使用され得る。このカートリッジアセンブリは、取り外し可能かつ交換可能なユニットであり、その結果、ステープル留め装置10が再装填されて再度使用され得ることが想定される。
【0021】
この装置は、カートリッジアセンブリ、アンビル部材および関連する機構を備える、交換可能なヘッドを有することもまた想定される。ステープル留め装置10は、図1の、上記のような手動で起動されるハンドルアセンブリを備え得るか、または第一の駆動部材および第二の駆動部材を有する動力式アクチュエータアセンブリを備え得る。例えば、米国特許出願番号12/946,082(2010年11月15日出願、その全内容は、本明細書中に参考として援用される)は、動力式アクチュエータアセンブリを有する外科手術用デバイスを開示する。このようなアクチュエータアセンブリは、モータ式ハンドルによって動力を与えられ得る。
【0022】
ここで図2および図6図9を参照すると、本開示の1つの実施形態によるアンビル部材26およびカートリッジアセンブリ22が図示されている。
【0023】
カートリッジアセンブリ22は、複数のステープル24(図1図6および図7)を収容するように構成される。具体的には、カートリッジアセンブリ22は、環状スロット30(図1および図6)のアレイを備え、これらのスロットは、対応するステープル24の環状アレイ(図6および図7)を収容するように構成される。図示される実施形態において、スロット30の3つの環状アレイ(スロット30aの内側環状アレイ、スロット30bの中間環状アレイおよびスロット30cの外側環状アレイ(他に記載されない限り、本明細書中でまとめてスロット30と称する)を含む)ならびにステープルの対応する3つの環状アレイ(ステープル24aの内側環状アレイ、ステープル24bの中間環状アレイおよびステープル24cの外側環状アレイ(他に記載されない限り、本明細書中でまとめてステープル24と称する)を含む)が存在する。図6を参照のこと。特定の実施形態において、カートリッジアセンブリ22およびアンビル部材26は、ステープルおよび対応するスロットの、2つの環状アレイを備え得る。
【0024】
スロット30は、対応する複数のステープルプッシャー(明示的には示さない)と整列する。特定の実施形態において、これらのステープルプッシャーは、一般に屈曲した構成を有して、ステープル24をカートリッジアセンブリ22から排出することを容易にする。他の実施形態において、これらのステープルプッシャーは、他の構成(すなわち、直線状、円形など)で構成され得る。
【0025】
ステープル24は、任意の適切な生体適合性材料(外科手術用鋼、形状記憶合金、ポリマー材料などが挙げられるが、これらに限定されない)から作製され得る。図示される実施形態において、ステープル24は、外科手術用鋼から作製される。特定の実施形態において、1つ以上のステープルの環状アレイ(例えば、ステープル24aの内側環状アレイ)が1つの材料から作製され、そして1つ以上のステープルの環状アレイ(例えば、ステープル24bの中間環状アレイおよびステープル24cの外側環状アレイ)が異なる材料から作製されることが、有利であることが示され得る。
【0026】
ステープル24は、従来のステープルと類似であるが、従来のステープル(図5)とは異なり、ステープル24は、図7に最もよく示されるように、一般に屈曲したかまたは曲がった構成を有するバックスパン32を備える。ステープル24の屈曲したバックスパンは、以下により詳細に記載されるように、各連続するステープル間の等しいかまたは一貫した間隙距離「G」が、ステープル24aの内側環状アレイ、ステープル24bの中間環状アレイ、およびステープル24cの外側環状アレイにおいて達成可能であるように、ステープルが整列することを可能にする(図9)。
【0027】
図7の参照を続けて、ステープル24の作動的特徴が、ステープル24aの内側環状アレイのステープル24aの観点で記載される。ステープル24aは、1対のレッグ36aを備え、これらのレッグは、一般に尖った先端を有するが(図7に最もよく見られるように)、この先端は、他の適切な構成(例えば、鈍い、平坦、面取りされたものなど)を有してもよい。レッグ36aは、バックスパン32aから延びる。
【0028】
バックスパン32aは、一般に屈曲または湾曲した構成を有し、ここでバックスパン32aの曲率半径は、中央部分38aにおいて最も小さい(図7)。中央部分38aにおける曲率半径は、特定の外科手術手順、特定の外科手術用デバイス、ステープルの環状アレイの数、製造業者が想定する用途などに適応するように、調節され得る。ステープル24aの屈曲したバックスパン32aは、各連続するステープル24a間の間隙距離「G」を最小にしながら、ステープル24aがステープル24aの内側環状アレイ内で配置されることを可能にする。すなわち、直線状のバックスパンを有する従来のステープルとは異なり、ステープル24aの屈曲したバックスパン32aは、カートリッジアセンブリ22の輪郭に沿うように構成され、従って、ステープル24aの内側環状アレイ内でのステープル24aの「目のより詰まった」グループ分け(すなわち、より高密度のステープル)を可能にする。さらに、ステープル24bおよび24cのそれぞれの屈曲したバックスパン32bおよび32cは、これらの環状アレイ内のステープルの長さが、ステープル24aの環状アレイ内のステープル24aの長さより大きくなることを可能にする。すなわち、それぞれのステープル24および24cの屈曲したバックスパン32bおよび32cに起因して、ステープル24bおよび24cの長さは、ステープル24aの環状アレイ内の連続するステープル24a間の特定の間隙距離「G」の「重なり」に適応するように、増大し得る。例えば、図7を特に参照して、ステープル24aの内側環状アレイ内の各ステープル24aは、長さ「A」を有し、そしてステープル24aの内側環状アレイ内の各連続するステープル24a間の間隙は、間隙「G」に等しい。ステープル24bの中間環状アレイ内のステープル24bの長さは、ステープル24aの長さ「A」より大きい長さ「B」を有し、そしてステープル24bの中間環状アレイ内の各連続するステープル24b間の間隙は、間隙「G」に等しい(図7を参照のこと)。ステープル24cの外側環状アレイ内のステープル24cの長さは、それぞれのステープル24aおよび24cの長さ「A」および「B」より大きい長さ「C」を有し、そしてステープル24cの外側環状アレイ内の各連続するステープル24c間の間隙は、間隙「G」に等しい(図7を参照のこと)。
【0029】
理解され得るように、ステープル24a〜24cの「目のより詰まった」グループ分けは、ステープルが「入れ子状」になることを可能にし、従って、所定のカートリッジアセンブリ22について、直線状のバックスパンを有するステープルと比較して、互いに対してより密に充填されることを可能にする。ステープル24a〜24cのこの「入れ子状」の構成は、直線状のバックスパンを有するステープルと比較して、ステープル24aの増大した内径を提供する。
【0030】
ここで図8および図9を参照すると、アンビル部材26は、ステープル形成バケット40の対応する環状アレイ(ステープル形成バケット40aの内側環状アレイ、バケット40bの中間環状アレイおよびバケット40cの外側環状アレイを含む)を備える。従来のステープル形成バケット(図3および図4)とは異なり、ステープル形成バケット40a、40bおよび40cの各々は、対応するステープル24a、24bおよび24cの一般に屈曲した構成に適応するように構成されて、これらのステープルの形成を容易にする。この目的で、バケット40a、40bおよび40cの各々は、一般に屈曲または湾曲した構成を有し、そしてその内部のそれぞれのステープル24a、24bおよび24cに調和させられ、その結果、ステープル24a、24bおよび24cは、その形成の際に、ほぼ「B」字型の構成を有する。ステープル形成バケット40a、40bおよび40cの曲率半径は、中央部分38aにおいて最も小さく、対応するステープル24a、24bおよび24cの曲率半径に一致する。
【0031】
図8および図9の参照を続けると、ステープル形成バケット40aの内側環状アレイ内のステープル形成バケット40aの寸法は、対応するステープル24aの寸法に実質的に等しい。具体的には、ステープル形成バケット40aは、ステープル24aよりわずかに大きく、ステープル24aを「B」字型の構成に形成することを容易にする。ステープル形成バケット40aの内側環状アレイ内の各連続するステープル形成バケット40a間の間隙は、間隙「G」に等しい。図示される実施形態において、間隙「G」は、ステープル形成バケット40aがステープル24aより大きい結果として、間隙「G」より小さいように図示されている。あるいは、特定の実施形態において、間隙「G」は間隙「G」に等しくあり得る。同様に、ステープル形成バケット40bの中間環状アレイのステープル形成バケット40bの寸法、およびステープル形成バケット40cの外側の環状アレイのステープル形成バケット40cの寸法は、ステープル24bの中間環状アレイおよびステープル24cの外側環状アレイの、対応するステープル24bおよび24cの寸法に実質的に等しい。各連続するステープル形成バケット40bおよび40c間の間隙は、各連続するステープル形成バケット40a間の間隙「G」に等しい。図9を参照のこと。
【0032】
使用において、組織(例えば、管状器官の一部分)は、アンビル部材26とカートリッジアセンブリ22との間に配置される。前進デバイス16の回転可能なグリップ18が起動させられて、アンビル部材26をカートリッジアセンブリ22に向けて近接させる。ハンドル14は旋回させられ、ステープル24を組織に通してアンビル部材26に押し付けるように打ち込むかまたは排出して、管状器官の円形吻合を完了させ得る。
【0033】
本開示に従って、形成されるステープル24a、24bおよび24cの環状アレイは、ステープル24a、24bおよび24cの内側、中間および外側の環状アレイ内の、連続するステープル24a、24bおよび24c間の一貫した間隙の「G」おかげで、「目の詰まった」ステープル線を形成し、そしてステープル24a、24bおよび24cの内側、中間および外側の環状アレイ内の、連続するステープル24a、24bおよび24c間で起こる出血または漏出の可能性が、排除されないにしても低下する。ステープル24a、24bおよび24cならびに対応するステープル形成バケット40a、40bおよび40cの、この独特の屈曲した構成は、従来の外科手術用ステープル留めデバイスに代表的に付随する上記欠点を克服する。すなわち、従来の外科手術用ステープル留めデバイスの内側、中央および外側の環状アレイ内の、それぞれの連続するステープル形成バケット間の間隙「g1」、「g2」、および「g3」(図3および図4)は、内側環状アレイから外側環状アレイに向かって増大する。すなわち、「g1」<「g2」<「g3」である。理解され得るように、組織内で形成されるステープルは、ステープル形成バケットの間隙距離「g1」、「g2」、および「g3」に対応する距離で、互いから間隔を空ける。上記のように、これらの「等しくない」間隙距離は、「目の詰まった」ステープル線を得ることをもたらすものではない。
【0034】
上記のことから、種々の図面を参照して、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の改変が本開示に対してなされ得ることを理解する。例えば、ステープル24a、24bおよび24cならびに対応するステープル形成バケット40a、40bおよび40cは、本明細書中で、異なる長さを有すると記載されたが、ステープル24a、24bおよび24cならびに対応するステープル形成バケット40a、40bおよび40cが同じ長さを有し得ること(図10および図11)は、本開示の範囲内である。この実施形態において、ステープル(明示的には示さない)および対応するステープル形成バケット140は、ステープル形成バケット140a〜140cの内側環状アレイ、中間環状アレイおよび外側環状アレイを含めて、同じ長さを有する。図10および図11に図示される実施形態において、同数のステープル形成バケット140が、ステープル形成バケット140aの内側環状アレイ、ステープル形成バケット140bの中間環状アレイおよびステープル形成バケット140cの外側環状アレイ内に示されている。この実施形態は、「目の詰まった」ステープル線が必要とされない場合に、利点を示し得る。
【0035】
しかし、「目の詰まった」ステープル線が必要とされる例においては、これらのステープルの独特の屈曲したバックスパンおよび対応するステープル形成バケット140b〜140cは、1つ以上の追加のステープル(またはより大きいステープル)および対応するステープル形成バケット140b〜140cが、ステープルおよび対応するステープル形成バケット140b〜140cの、中間環状アレイおよび外側環状アレイ内に提供されることを可能にする。すなわち、所定のカートリッジアセンブリおよびアンビルに関して、ステープルおよび対応するステープル形成バケット140b〜140cの幾何学的形状(例えば、屈曲したバックスパン)は、それぞれカートリッジアセンブリおよびアンビルの輪郭に沿い、そしてその結果として、追加のステープルおよびステープル形成バケット140bが、ステープルおよびステープル形成バケット140cと干渉することなく、ステープル形成バケット140bの環状アレイ内に提供されることを可能にする。そして同様に、追加のステープルおよびステープル形成バケット140cが、カートリッジアセンブリおよびアンビルと干渉することなく、またはカートリッジアセンブリおよびアンビルの外周縁部まで延びることなく、ステープル形成バケット140cの環状アレイ内に提供されることを可能にする。追加のステープルおよび対応するステープル形成バケット140a〜140cは、連続するステープル間およびステープル形成バケット140a〜140c間の間隙を充分に重ねるように、提供され得る。
【0036】
図12図15Bを参照すると、ステープルおよびステープル形成バケットの代替の実施形態が図示されており、それぞれ224(図12)および240(図13Aおよび図13B)で表わされている。ステープル224およびステープル形成バケット240に独特の特徴のみが、本明細書中で議論される。
【0037】
図12図15Bに図示される実施形態において、ステープル224およびステープル形成バケット240は、形成されるステープルに、組織を圧縮するための異なる内部空間を提供して、ステープル留めされた組織セグメントにおいて望ましいレベルの止血および血流を達成するために利用され得る。1つの特定の実施形態において、例えば、ステープル224aの内側環状列(ステープル224a)は、組織をステープル留めするために、ステープル224bの外側環状列(ステープル224b)(図15Aおよび15Bを参照のこと)より大きい圧縮空間(図14Aおよび図14B)を提供し得る。換言すれば、形成された構成にあるステープル224bは、形成された構成にあるステープル224aよりも大きい圧縮力を、ステープル留めされた組織に提供する。従って、ステープル224bによりステープル留めされた組織に加えられる圧力は、ステープル224aによりステープル留めされた組織に加えられる圧力より大きいので、ステープル224bを囲む組織を通る血流は、ステープル224aを囲む組織を通る血流より少なく(より制限され)、これによって、止血をさらに容易にする。しかし、血流は、ステープル224bによりステープル留めされた組織を通して完全には制限されないので、血液灌流が改善され、そしてステープル留めされた組織の不必要な壊死は、予防および/または妨害され得る。
【0038】
ステープル224aおよび224bは、それぞれのステープルレッグ236a(図14A図14B)および236b(図15A図15B)を備え、これらのステープルレッグは、バックスパン232a、232bから延びる。図12図15Bに図示される実施形態において、ステープルレッグ236aおよび236bは、互いに同じ長さを有し、そしてバックスパン232a、232bは、「直線状の」構成を有して、ステープル224a、224bをステープル形成バケット240a、240b(図13Aおよび図13B)内で形成することを容易にする。
【0039】
ステープル形成バケット240は、ステープル形成バケット240aの内側環状列(バケット240a)およびステープル形成バケット240bの外側環状列(バケット240b)の観点で記載される。図13Aおよび図13Bを参照のこと。理解され得るように、より多いかまたはより少ないバケット240が、利用され得る。
【0040】
バケット240aおよび240bの各々は、対応するステープル224aおよび224bを受容して、ステープル224aおよび224bを形成するように構成される。バケット240aおよび240bは、それぞれのステープル224aおよび224bの形成を容易にするために、曲がった構成を有する。しかし、先に記載したステープル形成バケットとは異なり、バケット240aは、バケット240bの深さとは異なる深さを有して、ステープル224aおよび224bを異なる圧縮空間で形成することを容易にする。例えば、1つの特定の実施形態において、バケット240aは、バケット240bの深さより大きい深さを有して、ステープル224bの圧縮空間「CS2」(図15A)より大きい圧縮空間「CS1」(図14A)でステープル224aを形成する。具体的には、異なる深さを有する曲がったバケット240a、240bは、それぞれ直線状のバックスパン232a、232bおよびレッグ236aおよび236bを同じ長さで有するステープル224a、224bと組み合わさって、ステープル224a、224bが異なる圧縮空間で形成されることを可能にする。例えば、図14Bおよび15Bを参照のこと。すなわち、ステープル224a、224bとバケット240a、240bとのこの特殊な組み合わせは、ステープル224bがバックスパン232bを越える位置まで折り曲げられて(図15A図15B)、ステープル224aにより提供される圧縮空間「CS1」より小さい圧縮空間「CS2」を提供することを可能にし、その結果、ステープル224bによりステープル留めされた組織は、ステープル224aによりステープル留めされた組織よりも高い圧力下にある。この様式で、このバックスパンは、これらのステープルのレッグの変形を妨害せず、そして折り曲げの角度は変化し得る。これらのステープルは、バックスパンからの妨害なしで、これらのステープルのレッグがバックスパンまで、またはバックスパンを越える位置まで延びるように、これらのバケットによって折り曲げられ得る。
【0041】
特定の実施形態において、ステープル留めされる組織に対して、ステープル224bよりも高い圧力を、ステープル224aに加えさせることが、有利であることが示され得る。この実施形態において、バケット240aは、バケット240bの深さより小さい深さを有する。
【0042】
特定の実施形態において、ステープル224a、224bの各々は、バックスパン232a、232bを越える位置まで折り曲げられ得る。例えば、バケット240aは、バックスパン232aを越える位置までステープル224aを折り曲げるように構成された深さを有し得、その結果、ステープル224aにより与えられる圧縮空間は、ステープル224bにより与えられる圧縮空間より大きいか、または小さい。
【0043】
1つの特定の実施形態において、上記圧縮空間を達成するために、バケット240a、240bは同じ深さを有し得、そしてステープルレッグ236a、236bは異なる長さを有し得る。当業者は、ステープル224aおよび224bが形成される際に特定の圧縮空間を達成するために必要とされる、ステープルレッグ236a、236bの種々の長さを理解する。
【0044】
特定の実施形態において、前進デバイス16、プッシャー部材、または両方の操作は、ステープルが変形させられるかまたは折り曲げられる程度を変化させるために利用され得る。例えば、アンビル部材をカートリッジアセンブリにより近く近接させることによって、これらのステープルは、比較的小さい内部空間で折り曲げられ、そして組織は、より大きい程度まで圧縮される。あるいは、プッシャー部材がさらに前進させられて、ステープルをさらに折り曲げ得るかまたは変形させ得る。望ましくは、ステープルが折り曲げられる程度を外科医が測定することを可能にするインジケータが、ステープル装置のハンドルアセンブリ12に存在する。変更可能な折り曲げは、本明細書中に開示される実施形態の任意のもの(異なるサイズ(形成前)のステープルが使用される実施形態、同じサイズのステープルが使用される実施形態、屈曲または湾曲したバックスパンのステープルが使用される実施形態、および/または屈曲もしくは湾曲したステープル形成バケットが使用される実施形態を含む)において使用され得る。
【0045】
いくつかの実施形態(例えば、図16A図16Cに図示されるもの)において、バケット(明示的には示さない)は、ほぼ直線状の構成を有し得、そしてステープル324は、一般に曲がった構成を有するバックスパン332を備え得、ステープル324をバックスパン332を越える位置まで折り曲げることを容易にする。この様式で、このバックスパンは、これらのステープルのレッグの変形または折り曲げを妨害しない。これらのステープルは、このバックスパンと干渉することなく、これらのレッグがこのバックスパンまで、またはこのバックスパンを越える位置まで延びるように、これらのバケットにより折り曲げられ得る。1つの特定の実施形態において、例えば、曲がったバックスパン332aから延びるレッグ336aを有する、形成されたステープル324aは、圧縮空間「CS1」と類似の圧縮空間を提供し得(図16B)、そして曲がったバックスパン332bから延びるレッグ336bを有する、形成されたステープル324bは、圧縮空間「CS2」と類似の圧縮空間を提供し得る(図16C)。これらのバケットの直線状の構成は、本明細書中に開示される実施形態の任意のもの(ステープルの折り曲げまたは変形の程度を変化させるステープル留め装置、および異なるサイズの(形成前)ステープルが使用される実施形態、または同じサイズのステープルが使用される実施形態を含む)と一緒に使用され得る。
【0046】
本明細書中に開示される実施形態のいずれかにおいて、ステープリング留め装置は、3列のステープルを付けるように構成され得ること、およびこれらのステープルは、バックスパンにおいて1つより多くの屈曲部を有し得るか、または不規則である湾曲したバックスパン(すなわち、1つより多くの半径を有する)を有し得ることもまた想定される。
【0047】
本開示の数個の実施形態が図面に示されたが、本開示はこれらに限定されることを意図されない。なぜなら、本開示は当該分野が許容すると同程度に範囲が広いこと、および本明細書も同様に読まれることが意図されるからである。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、特定の実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内で、他の改変を予測する。
【符号の説明】
【0048】
10 外科手術用ステープル留め装置
12 ハンドルアセンブリ
14 ハンドル部材
16 前進デバイス
18 把持部材
22 カートリッジアセンブリ
20 管状本体部分
24 ステープル
26 アンビル部材
28 シャフト
30 スロット
32 バックスパン
36a レッグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C