特許第6845307号(P6845307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845307
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】監視システム及び監視方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20210308BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20210308BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20210308BHJP
   B61D 19/02 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H04N7/18 D
   G08B25/00 510M
   B61L25/02 Z
   B61D19/02 T
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-509122(P2019-509122)
(86)(22)【出願日】2018年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2018008791
(87)【国際公開番号】WO2018180311
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年7月24日
(31)【優先権主張番号】特願2017-62943(P2017-62943)
(32)【優先日】2017年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】大木 加奈
【審査官】 秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−148300(JP,A)
【文献】 特開2005−349997(JP,A)
【文献】 特開2009−279970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B61D 19/02
B61L 25/02
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車のドアを撮影する監視カメラと、前記監視カメラの映像をもとに前記ドアの挟み込み検知を行う制御装置と、前記監視カメラの映像を表示するモニタと、を備える監視システムであって、
前記制御装置は、前記ドアが開いた状態から閉じた状態になったときに、前記監視カメラが撮影した基準画像と、前記基準画像を撮影してからそれぞれ異なる時点において前記監視カメラが撮影した複数の観測画像と、のそれぞれの差分画像を取得し、複数の前記差分画像の中心座標から前記中心座標の動きを求め、前記中心座標が動いていないと判断した場合に、前記ドアに挟み込みが発生していると判断し、
前記モニタは、挟み込みが発生していると判断したドアを撮影する前記監視カメラの映像を強調して表示することを特徴とする監視システム。
【請求項2】
列車のドアを撮影する監視カメラの映像をもとに前記ドアの挟み込み検知を行う監視方法であって、
前記ドアが開いた状態から閉じた状態になったときに、前記監視カメラが撮影した基準画像と、前記基準画像を撮影してからそれぞれ異なる時点において前記監視カメラが撮影した複数の観測画像と、のそれぞれの差分画像を取得する差分算出工程と、
複数の前記差分画像の中心座標から前記中心座標の動きを求め、前記中心座標が動いていないと判断した場合に、前記ドアに挟み込みが発生していると判断する挟み込み判定工程とを備えることを特徴とする監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システム及び監視方法に係り、例えば、鉄道の車両のドアの監視システム及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道監視において、駅のプラットホーム(以下、「ホーム」という)や車両内外の安全性確保の観点で、監視カメラを用いたシステムが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。また、近年、鉄道監視システムでは車両内外やホームの監視に加えて、ホームに停車し車両ドアを開閉する際に、人や異物の挟み込みなど車両ドアに異常がないかどうか確認を行う車両ドア挟込検知技術が求められている。
【0003】
挟み込み検知の主な方式として、車両ドアに人や物を挟み込んだ場合、圧力や赤外線などを利用した物理的なセンサを用いて検知する手法が主に利用されていた。
【0004】
しかし最近では、ベビーカーの前輪部のように薄い部品などが挟まった際に、物理的なセンサでは検知出来ない場合があり、そのまま列車が走りだしてしまう事例が発生している。このため、物理的なセンサの代わり或いは併用で、監視映像の画像処理判定を用いた挟み込み検知技術への要望が高まっている。
【0005】
また、正常に挟み込み検知されず人や物が挟み込まれた状態で電車が走り出した場合、それを確認したホーム側の人間が緊急停止ボタンを押すことで、通知を受けた乗務員が電車の緊急停止操作を行う。これに関して、緊急停止ボタンが押されたにも関わらず、乗務経験の浅い乗務員が対応の優先順位を誤り、電車の走行を続けるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許開2014−184803号公報
【特許文献2】特許第5748468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述の通り、現在主に利用される物理的なセンサによる車両ドアの挟み込み検知は、検知対象に大きさの制限がある。すなわち、薄かったり細かったりするものに対して、検知できない可能性がある。また、挟み込み検知の誤検知(未検知)が有り、一度走行を始めてしまった列車に関しては、乗務員が停車措置を行うが、これについても人為的なミスが起こりうる可能性がある。これら観点から、監視カメラで監視し画像処理判定を用いて車両ドア付近の安全確認を行うことができる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、列車のドアを撮影する監視カメラと、前記監視カメラの映像をもとに前記ドアの挟み込み検知を行う制御装置と、前記監視カメラの映像を表示するモニタと、を備える監視システムであって、前記制御装置は、前記ドアが開いた状態から閉じた状態になったときに、前記監視カメラが撮影した基準画像と、前記基準画像を撮影してからそれぞれ異なる時点において前記監視カメラが撮影した複数の観測画像と、のそれぞれの差分画像を取得し、複数の前記差分画像の中心座標から前記中心座標の動きを求め、前記中心座標が動いていないと判断した場合に、前記ドアに挟み込みが発生していると判断し、前記モニタは、挟み込みが発生していると判断したドアを撮影する前記監視カメラの映像を強調して表示する
本発明は、列車のドアを撮影する監視カメラの映像をもとに前記ドアの挟み込み検知を行う監視方法であって、前記ドアが開いた状態から閉じた状態になったときに、前記監視カメラが撮影した基準画像と、前記基準画像を撮影してからそれぞれ異なる時点において前記監視カメラが撮影した複数の観測画像と、のそれぞれの差分画像を取得する差分算出工程と、複数の前記差分画像の中心座標から前記中心座標の動きを求め、前記中心座標が動いていないと判断した場合に、前記ドアに挟み込みが発生していると判断する挟み込み判定工程とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、監視映像の画像処理判定を用いた挟み込み検知を、物理的なセンサによる検知の代わり或いは併用で利用することで、挟み込む物の種類に関わらない、より正確な挟み込み検知を行うことができる。また、別の観点では、物理的なセンサや監視映像の画像処理判定を用いた挟み込み検知方法に加えて、乗務員がホームの状況を乗務室内に取り付けられている監視用モニタから映像で確認できるようにし、挟み込みを検知した際にアラームを鳴動させるなど乗務員の注意を促すことで、より容易で信頼性のある監視を実現する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る、列車の監視カメラシステムの配置例の概要を模式的に示す図である。
図2】実施形態に係る、監視カメラシステムを構成する各機器の接続を中心として説明するための図である。
図3】実施形態に係る、第1〜第4監視カメラの映像のモニタへの表示例を示した図である。
図4】実施形態に係る、二つの車両の各第1〜第4監視カメラの映像のモニタへの表示を監視方向を統一させた例を示した図である。
図5】実施形態に係る、挟み込み判定処理時の差分取得手順を示す図である。
図6】実施形態に係る、挟み込み判定処理時の差分の動き検出の観測手順を示す図である。
図7】実施形態に係る、「挟み込み有り」と判断した場合の監視映像の表示例を示す図である。
図8】実施形態に係る、挟み込み判定解除操作を可能に表示するモニタの表示例を示す図である。
図9】実施形態に係る、駅停車後、車両ドア開による監視開始までの処理を示すシーケンス図である。
図10】実施形態に係る、車両ドアを閉めた際の挟み込み判定の処理を含むシーケンス図である。
図11】実施形態に係る、挟み込み判定解除処理のシーケンス図である。
図12】実施形態に係る、挟み込み判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。本実施形態の概要は次の通りである。(1)車両ドアを監視する監視カメラの映像を元に画像処理を行い、車両ドア付近にある物体が近くを通過しているだけなのか或いは車両ドアに挟み込まれているのか区別する。(2)監視カメラの映像は、電車がホームに停車しドアが開いた時点などの所定のタイミングで、乗務室内に取り付けられている監視用モニタに対し割り付ける。(3)車両ドアが閉められた時点で画像処理による挟み込み検知を行い、挟み込みが発生した場合監視モニタの該当映像を、注目を引きやすい表示態様、例えば赤色枠で囲んで表示し、更にアラーム音を鳴動させるなどの処理を行う。
【0013】
これらによって、次の効果が得られる。(1)車両ドアの挟みこみ検知において、物理的なセンサの代わり或いは併用で、監視映像の画像処理判定を用いることで、監視システムの可用性、信頼性が向上する。(2)車両ドアの監視映像を監視モニタに自動で割り付けることで、乗務員自身が車両ドアの映像を見て状況を確認することができ、監視システムの利便性が向上する。(3)車両ドアの監視映像を監視モニタに割り付けている際に、挟み込みを検知した場合、監視モニタの該当映像を注目を引きやすい表示態様で表示され、アラーム音を鳴動させることで、乗務員の注意を促し作業効率、監視の容易性、信頼性が向上する。
【0014】
図1は、1編成の列車に搭載した鉄道向け監視カメラシステム100であり、列車内から乗降口(車両ドア)付近を監視する監視カメラシステム100の配置例の概要を模式的に示す。図1(a)は第1〜第4車両1〜4の4両編成の列車と各種の搭載機器の配置概要を示している。図1(b)は、一つの車両40に着目し、第1〜第4監視カメラ11とその撮影は対象である第1〜第4車両ドア71〜74の関係を示している。
【0015】
また、図2は、監視カメラシステム100の構成の一実施例を説明するためのブロック図である。なお、図1は監視カメラシステム100の列車への搭載及び配置を中心として、図2は監視カメラシステム100を構成する各機器の接続を中心として説明するための図である。図2の破線の枠は、図1(a)の第1〜第4車両1〜4を示しており、監視カメラシステム100を構成する全ての機器は、例えば有線接続であればネットワークケーブルで接続されている。
【0016】
図1(a)に示すように、列車は、先頭の第1車両1、中間の第2車両2及び第3車両3、最後尾の第4車両4の4両編成であって、鉄道向けの監視カメラシステム100が列車内の車両に搭載されている。このとき列車の進行方向は、第1車両1を先頭車両として進む方向として説明する。
【0017】
各車両(第1〜第4車両1〜4)は、片側4ドア(両側で8ドア)の車両である。各車両の一方の側(例えば進行方向の左側)において、進行方向側から第1車両ドア71、第2車両ドア72、第3車両ドア73及び第4車両ドア74を備える。他方の側(例えば進行方向の右側)にも、進行方向側から第1車両ドア71、第2車両ドア72、第3車両ドア73及び第4車両ドア74を備える。
【0018】
乗客は、駅のホーム99に合わせて開く左側若しくは右側のどちらか片側の扉から、または両側の扉から、車両への乗り降りを行う。
【0019】
第1〜第4車両ドア71〜74のそれぞれに対して、それぞれ第1〜第4監視カメラ11〜14が、乗降監視のために取り付けられている。第1〜第4監視カメラ11〜14は、例えば、IPカメラであって、車両外側(側面)の所定の位置に取り付けられている。また、図1では、車両の左右にある乗降用の扉の、左側の扉とその左側の扉に関わる監視カメラだけを図示し、反対側(右側)の扉及びその扉に関わる監視カメラを図示していない。監視カメラ以外の他の構成は、左右の扉に関係なく共通である。
【0020】
先頭の第1車両1には、監視用のモニタPC140が設けられており、また、最後尾の第4車両4にも、監視用のモニタPC142が設けられている。モニタPC140、142は、それぞれ複数で構成されてもよい。
【0021】
運転手は、全ての第1〜第4監視カメラ11〜14が撮像した映像を、モニタPC140、142によって確認することができる。表示される映像は、例えば、1つの車両の監視カメラについて複数に分割された表示領域で示し、順次別の車両の監視カメラの映像に切り替わるように表示されてもよい。
【0022】
図2は、図1と同様に、車両の左右にある乗降用の扉の、左側の扉とその片側の扉に関わる監視カメラだけを図示し、反対側の扉及びその扉に関わる監視カメラを図示していない。その他の構成は、左右の扉に関係なく共通である。
【0023】
モニタリングシステム100は、図1または図2に示すように、第1〜第4車両1〜4を連結した列車に設置される。監視カメラシステム100は、第1〜第4監視カメラ11〜14、モニタPC140、142、L2−SW(レイヤ2スイッチ)144〜147、サーバ50(制御装置)、録画装置51、上位サーバ52、警報器53、非常停止装置55を備える。なお、図示しない電源供給ケーブルが、各機器に第1〜第4車両1〜4の電源供給部(図示しない)から電源を供給する。
【0024】
先頭の第1車両1には、サーバ50と録画装置51、上位サーバ52、警報器53、非常停止装置55、第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)、モニタPC140、1421、及びL2−SW144が設置されている。
【0025】
サーバ50、録画装置51、モニタPC140、142、警報器53、非常停止装置55及び第1〜第4監視カメラ11〜14は、それぞれL2−SW144に接続され、上位サーバ52は、サーバ50に接続されている。また、L2−SW144は、後の第2車両2に設置されたL2−SW145と接続されている。
【0026】
最後尾の第4車両4には、第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)、モニタPC142、警報器53、非常停止装置55及びL2−SW147が設置されている。第1〜第4監視カメラ11〜14、警報器53、非常停止装置55及びモニタPC142は、それぞれL2−SW147に接続されている。また、L2−SW147は、前の第3車両3に設置されたL2−SW146と接続されている。
【0027】
なお、上位サーバ52は、例えば、列車の運行を管理する装置であり、例えば、TMS(Train Management System)である。上位サーバ52は、列車運行中には、列車の運行情報をサーバ50に所定の周期で出力している。列車の運行情報は、少なくとも、列車の速度情報、乗降扉開閉情報(乗降用の扉が開いているか、閉じているかの情報)、次に停車する駅若しくは現在停車中の駅のホームにおける乗降口の情報(例えば、左側の扉が乗降口であるか、右側の扉が乗降口であるかの情報)、車両数である。
【0028】
中間の第2車両2には、第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)、及びL2−SW145が設置されている。L2−SW145は、前の第1車両1に設置されたL2−SW144、及び後の第3車両3に設置されたL2−SW146とそれぞれネットワークケーブルで接続されている。また第3車両3は、第2車両2と同様に、第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)、及びL2−SW146が設置されており、L2−SW146は、前の第2車両2に設置されたL2−SW145、及び後の第4車両4に設置されたL2−SW147とそれぞれネットワークケーブルで接続されている。
【0029】
このように、先頭の第1車両1と中間の第2車両2、中間の第2車両2と第3車両3同士、中間の第3車両3と最後尾の第4車両4は、それぞれ隣り合う車両に搭載されたL2−SW同士をネットワークケーブル等で接続することで、列車内で1つのネットワークを構築している。
【0030】
図1図2の監視カメラシステム100では、先頭の第1車両1に運転手(乗務員)が搭乗し、列車の運行(運転や、乗降口の開閉等)の操作を1人で行うことができる。第1〜第4監視カメラ11の映像から列車を停止すべきと判断した場合に、運転手等は、非常停止装置55を操作することで列車を緊急停止させることができる。また、警報器53からは緊急時である旨のアラーム等が出力される。
【0031】
全ての第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)は、予め定められた視野内をそれぞれ所定の撮像フレームレートで撮像する。そして、第1〜第4監視カメラ11〜14は、撮像した映像(ライブ映像)をH.264/MPEG4/JPEG等の形式で圧縮し、L2−SWとネットワークケーブルを経由して、録画装置51及びモニタPC140、142に送信する。
【0032】
録画装置51は、入力された映像を、撮像した監視カメラ及び撮像時刻と関連付けて常時記録している。モニタPC140、142は、全ての第1〜第4監視カメラ11〜14のライブ映像及び録画映像をサーバ50の指示により、伸張及び切り出し等の映像処理を施して画面に表示する。
【0033】
なお、録画映像は、主に事故や犯罪の発生等の有事の際に、解析資料や証拠映像として使用される。また、サーバ50やモニタPC140、142や第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)や録画装置51の主な設定は、操作者が、予めシステム運用開始時に設定する。
【0034】
また、第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)は、録画装置51及びモニタPC140、142に、所定の送信フレームレートで映像を送信する。または、第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)は、モニタPC140、142からL2−SWを介して送信される送信要求に応じて、録画装置51及びモニタPC140、142に所定の送信フレームレートで映像を送信する。
【0035】
なお、第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)の映像を、監視カメラが自動的に所定のフレームレートで送信するか、モニタPC140、142からの送信要求に応じて送信するかは、予め操作者が、予めシステム運用開始時に設定することが可能であるし、また、運転手がサーバ50を操作して切り替えることが可能である。
【0036】
また、サーバ50は、第1〜第4監視カメラ11〜14(11a〜14a及び11b〜14b)の画角や撮影方向を制御することができる。また、サーバ50は、取得した映像に対して画像処理を施し、監視対象領域に警告事由が発生したか否かを判断する。ここでは、警告事由とは、例えば、第1〜第4車両ドア71〜74に何らかの物体(人の腕やカバン、傘、ベビーカーの車輪等)が挟まった状態を想定する。なお、警告事由の判定は、画像処理の他に、第1〜第4車両ドア71〜74に設けられた物理センサ(赤外線センサや圧力センサ)の検知結果が用いられてもよい。それらを併用することで、検知確度が高まる。
【0037】
ここで、図1(b)を参照して、第1〜第4監視カメラ11〜14による運用形態について説明する。駅のホーム99に停車中の1つの車両40(4ドア構成)を表している。第1監視カメラ11は、第1車両ドア71の前方側上方に取り付けられ、後方下側を撮像方向に設定されている。第2監視カメラ12は、第2車両ドア72の後方側上方に取り付けられ、前方下側を撮像方向に設定されている。第3監視カメラ13は、第3車両ドア73の前方側上方に取り付けられ、後方下側を撮像方向に設定されている。第4監視カメラ14は、第4車両ドア74の後方側上方に取り付けられ、前方下側を撮像方向に設定されている。
【0038】
第1〜第4監視カメラ11〜14はそれぞれ第1〜第4車両ドア71〜74を監視しており、第1車両ドア71と第2車両ドア72、また、第3車両ドア73と第4車両ドア74とはそれぞれ対となる組合せであることとする。
【0039】
図3に第1〜第4車両ドア71〜74の映像をモニタ80の4分割表示に割り付けた例を示す。図3(a)は映像の向き(監視方向)を調整しない状態で表示した例であり、図3(b)は映像の向きを全てのカメラで統一して表示した例である。モニタ80への映像割り付けは、車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)が開いてから全ての車両ドアについて挟み込み無く正常に閉じるまでの間行われる。
【0040】
なお、図示の形態のモニタ80では、一つのモニタ80で1車両分すなわち4映像が最大となるが、監視モニタ画面にページ送り機能を加えて、複数車両分の映像を表示するようにしてもよい。
【0041】
また、図4に示すように、モニタ80において、最低限必要な映像範囲を切り出して、一つの監視モニタ画面に2車両分の8映像以上の映像を表示してもよい。例えば、上段85は、第1車両1の監視映像で、下段86は第2車両2の監視映像である。
【0042】
つづいて、車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)を閉じた時の挟み込み判定処理について説明する。乗客の乗り降りが完了したのち乗務員98は、車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)を閉じる。この時、車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)を閉める指示を、サーバ50でも受け取り、定期周期での車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)の監視映像の静止画取得を開始する。
【0043】
なお、静止画の取得は、動画である映像からそれを構成する画像フレームを所定のタイミング(例えば、0.5秒ごと)で抽出することで行ってもよい。また、静止画は取得開始してから一定時間の間だけ取得する。
【0044】
次に、挟み込み判定処理を具体的に説明する。挟み込み判定処理では、監視対象エリアの差分画像をもとに判定を行う。図5は、挟み込み判定処理時の差分取得手順を示す図である。
【0045】
ここで、第1監視カメラ11が監視する第1車両ドア71に、人の手が挟まっているかどうか判定する場合を例示する、他の監視カメラ(第2〜第4監視カメラ12〜14)についても同様の処理がなされる。サーバ50には、予め何も挟み込んでいない正常に閉じた第1車両ドア71を映す第1監視カメラ11の静止画(以下、「基準画像91」という)が記憶されている。また、挟み込み判定処理中に撮影した画像を「観測画像92」という。
【0046】
挟み込み判定処理を行うために、第1車両ドア71が閉じてから最初に取得した第1車両ドア71の観測画像92と、基準画像91を重ねて差分(差分画像94)を取得し、差分が無ければ「挟み込み無し」と判断する。差分を取得する画像処理については、一般的な技術を用いることができる。
【0047】
図6は挟み込み判定処理時の差分の動き検出の観測手順を示す図である。この時、図5の手順で差分が取得できた場合、次は正常な静止画と定期的に取得している第1車両ドア71の静止画を順に比較し、前述で差分として捉えた物体の動きを観測する。
【0048】
まず、基準画像91と定期的に取得している第1車両ドア71の観測画像92を順に比較し、それぞれ取得した差分(差分画像94)の外枠を四角形Fで囲み、中心座標Cを求める。なお、最初の差分画像94の中心座標を「C1」とし、順次「C2」、「C3」・・・、「Cn」とし、区別しない場合は「C」と表記する。
【0049】
次に最初に求めた差分画像94の中心座標C1に対する、以降の中心座標C2、C3、・・・「Cn」の差分を求め、その差分が一定の閾値を上回った場合、差分として捉えた物体は車両ドアに挟みこまれているのではなく、移動している物体(例えば、歩行者等)であるとし、「挟み込み無し」と判断する。
【0050】
中心座標Cの差分が一定の閾値を下回った場合、すなわち中心座標Cの動きが小さい場合、差分として捉えた物体はドア付近に滞留している物体であり、第1車両ドア71に挟み込まれている、すなわち「挟み込み有り」と判断する。
【0051】
次に、挟み込み確定時の処理を説明する。図7は、「挟み込み有り」と判断した場合の監視映像の表示例である。通常、モニタ80には、駅停車後に車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)を開けた時点より車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)の監視映像が割り付けられ表示されている。
【0052】
ただし、前述で挟み込みが発生していると判断した監視カメラの映像について、図7のように赤枠F100等で囲んだり明るく表示させたり枠を点滅表示させるなど、注意を引きやすい強調した表示態様で表示する。注意の引きやすさを時間の経過と共に強めても良い。
【0053】
また、サーバ50は、挟み込みが1件以上発生した場合、警報器53でアラーム音を鳴動する。このとき、表示態様と同じように、挟み込みを認識時点から時間が経つにしたがって、アラーム音を大きくする等の処理を行ってもよい。
【0054】
つづいて、挟み込み判定解除処理を説明する。挟み込みが解除されたかどうかの判定は、モニタ80の映像を確認する乗務員98の判断とする。図8は、挟み込み判定解除操作を可能に表示するモニタ80の表示例を示す。表示領域の下部に、タッチ操作(又は外部入力インタフェイス等からの操作)する十字入力ボタンB12、や解除ボタンB11等を用意する。乗務員98は、挟み込みが解消された映像を十字入力ボタンB12で選択して、解除ボタンB11を押下することで、挟み込み判定状態を解除する。
【0055】
選択中の映像に対しては青枠F101を描画し、解除された映像については赤枠F100の描画を削除する。全ての車両ドアの監視映像が挟み込み無しの状態となった場合、電車の走行開始指示(列車発車許可)を待ち、走行開始後監視モニタの映像表示を全て終了する。また、挟み込みが0件になった場合アラーム音の鳴動を停止する。
【0056】
図9は、駅停車後、車両ドア開による監視開始までの処理について、乗務員98、サーバ50、モニタ80及び監視カメラ(第1〜第4監視カメラ11〜14)に着目したシーケンス図である。図10は、車両ドアを閉めた際のシーケンス図である。図11は、挟み込み判定解除処理のシーケンス図である。図12は、監視カメラシステム100による駅停車から発車までの概略を示すフローチャートである。図9のシーケンスは図12のフローチャートのS11〜S13に対応し、図10のシーケンスは図12のフローチャートのS14〜S22に対応し、図11のシーケンスは図12のフローチャートのS22、S23に対応する。
【0057】
サーバ50は、列車が駅に停車しドアが開いたか否かを監視し(S11)、ドアが開いていない場合(S11のN)は映像表示を停止状態にして(S12)、停車監視を継続する(S11)。列車が駅に停車し車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)が開いた旨を検知すると(S11のY)、サーバ50は、第1〜第4監視カメラ11〜14の監視映像を乗務員室等に設定されているモニタ80へ順次割り付け表示処理を開始する(S13)。
【0058】
つぎに、乗務員98等の操作により車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)が閉まると(S14)、サーバ50は挟み込み判定(S15〜)を行う。
【0059】
まずサーバ50は、監視カメラ(第1〜第4監視カメラ11〜14)のIDを示す変数Nを初期化(N=0)する(S15)。つづいて、変数Nをインクリメントし(S16)、カメラN(N=1〜4の場合に第1監視カメラ11〜第4監視カメラ14のそれぞれに対応する)の映像をもとに、図6で説明した挟み込み判定処理を行う(S17)。
【0060】
サーバ50は、挟み込みありの場合(S18のY)、その映像を表示する際のフレーム(枠)を赤に設定し(S19)、挟み込み無しの場合(S18N)、フレームを無しに設定する(S20)。
【0061】
つづいて、サーバ50は、変数Nが所定数(J)を超えているかをチェックすることで全ての監視カメラ(第1〜第4監視カメラ11〜14)について挟み込み判定を行ったか判断する(S21)。挟み込み判定が残っていれば(S21のN)、S16の処理に戻る。
【0062】
ここで図10のシーケンスを参照して、挟み込み判定のより具体的な手順を説明する。図10のシーケンスに示すように、取得時間分取得が完了すると(S100)、次に予めサーバ50内で所有している、各監視カメラの車両ドアに何も挟み込んでいない正常な状態の静止画(基準画像91)と、上記の取得時間で最初に取得した静止画(観測画像92)との差分比較を行う(S101)。
【0063】
この時差分が見られた監視カメラについてのみ、差分が有ることを示すフラグを立てる(S102)。次に差分が見られた監視カメラの監視映像について、挟み込み判定処理を行う(S103)。
【0064】
差分が見られる場合、中心座標Cの差分判定処理を行う(S103)。すなわち、今度は取得した静止画(観測画像92)と基準画像91との差分を取得する。次にその差分となる物体の四辺を覆う四角形Fを描画し、その中心点を求めて中心座標Cとする。
【0065】
サーバ50は、この中心座標Cを予め閾値として定める値と比較し、閾値を下回った場合、S104の処理として、挟み込みが発生していると判断し、モニタ80へ該当映像の赤枠描画指示、該当映像を映す監視カメラの挟み込み発生フラグ立て、全体の挟み込み発生件数のインクリメントを実施する。
【0066】
また、挟み込み発生時はアラーム鳴動処理を行う(S105)。挟み込み発生件数のインクリメントの際に、アラーム鳴動フラグが立っていない場合、アラームの鳴動開始指示とアラーム鳴動フラグのインクリメントも実施する。
【0067】
なお、静止画の差分の閾値チェックは、静止画枚数分実施するのではなく、閾値を超えた場合はその時点で次の監視カメラの静止画の閾値チェックに移行する。上記を、全ての監視カメラの静止画について閾値チェックが完了するまで実施する。
【0068】
図12の説明に戻る。
全ての挟み込み判定が終了すると(S21のY)、挟み込みの発生件数が1件以上あるか否かを判断する(S22)。
【0069】
挟み込みの発生件数が1件以上あれば(S22のY)、サーバ50は、例えば図8のモニタ80の表示例に示したような解除ボタンB11の操作によって挟み込み判定が解除されたかどうか判断する(S23)。解除ボタンB11の操作によって挟み込み判定が解除された場合、サーバ50は、挟み込み発生件数が1件以上あるか否かを再度判定する(S22)。
【0070】
サーバ50は、挟み込み件数が0になったと判断すると、すなわち、挟み込み状態が解消されたと判断すると(S22のN)、列車発車許可の状態にする(S24)。この後、乗務員98の操作によって、列車は走行を開始するが、モニタ80への第1〜第4監視カメラ11〜14の映像の表示は、所定条件の間、例えば、列車速度が所定以上(例えば3km/h以上)となるまで継続する。また、列車走行開始後、挟み込み判定処理を継続した場合に、挟み込みが検知された場合、サーバ50は、非常停止装置55に列車停止を指示してもよい。
【0071】
ここで、図11を参照して挟み込み判定解除処理を具体的な手順を説明する。図8等で説明したように、挟み込み判定の解除は乗務員98の確認をもって行う。
【0072】
乗務員98は、サーバ50は車両ドアが閉められたという通知を受けると、まず挟み込み判定処理の完了を待つ(S201)。完了後、挟み込み発生件数が1件も無い場合はそのまま乗務員の走行指示を待ち、走行を開始したらモニタ80の映像表示を全て終了する(S202)。
【0073】
挟み込み発生件数が1件以上有る場合、乗務員98の確認作業後終了を待つ(S203)。乗務員は挟み込みが発生している全ての車両ドアについて確認作業を行い、問題無いと判断した場合、映像を選択し解除ボタンを押下する(S204)。
【0074】
解除ボタンが押下されたら、サーバ50はモニタ80へ該当映像の赤枠描画削除指示、該当映像を映す監視カメラの挟み込み発生フラグ削除、挟み込み発生件数のデクリメントを実施する(S205)。挟み込み発生件数がまだ1件以上存在する場合は、挟み込み発生件数が0になるまで上記処理を繰り返す。
【0075】
また、挟み込み発生件数のデクリメントの際に、挟み込み発生件数が0になった場合、アラームの鳴動停止指示、アラーム鳴動フラグの削除を実施し(S206)、乗務員の走行指示を待つ(S207)。走行を開始したらモニタ80の映像表示を全て終了する(S208)。
【0076】
以上、本実施形態によると、次の効果が得られる。(1)車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)の挟みこみ検知において、物理的なセンサの代わり或いは併用で、監視映像の画像処理判定を用いることで、監視カメラシステム100の可用性、信頼性を向上させることができる。(2)車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)の監視映像をモニタ80に自動で割り付けることで、乗務員98自身が車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)の映像を見て状況を確認することができ、監視カメラシステム100の利便性が向上する。(3)車両ドア(第1〜第4車両ドア71〜74)の監視映像をモニタ80に割り付けている際に、挟み込みを検知した場合、モニタ80の該当映像を注目を引きやすい表示態様で表示し警報器53でアラーム音を鳴動させることで、乗務員98の注意を促し作業効率、監視の容易性、信頼性を向上させることができる。
【0077】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0078】
例えば、上述の実施形態の処理に合わせて次の機能が追加・変更されてもよい。(1)監視カメラシステム100に振動計測装置が取り付けられる場合であって、何かしらを挟み込んだまま列車が走行開始した場合、通常の走行開始時より振動が過剰に発生すると想定できる。その振動情報を用いた挟み込み検知と併用することで、検知精度が向上する。(2)監視カメラシステム100に騒音計測装置が取り付けられる場合、何かしらを挟み込んだまま列車が走行開始した場合、通常の走行開始時より騒音が過剰に発生すると想定できる。その騒音情報を用いた挟み込み検知と併用することで、検知精度が向上する。(3)第1〜第4車両ドア71〜74の開状態から、乗務員98の状況確認作業→確認後削除ボタンで赤枠削除→挟み込み件数が0になるまで映像表示を続けているが、「削除ボタンを押下することで、選択した映像そのものの表示を終了する。」または「全ての映像表示が終了したら、乗務員による走行開始が可能となる。」といった処理としてもよい。選択した映像を削除し表示終了したら、残っている映像を詰めて表示することで操作性が向上する。
【符号の説明】
【0079】
1〜4 第1〜第4車両11〜14、11a〜14a、11b〜14b 第1〜第4監視カメラ40 車両50 サーバ51 録画装置52 上位サーバ53 警報器55 非常停止装置71〜74 第1〜第4車両ドア80 モニタ98 乗務員99 ホーム100 監視カメラシステム140、142 モニタPC144〜147 L2−SW
図1
図2
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図12