【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代洋上直流送電システム開発事業/システム開発/要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記転流装置は、前記第1直流送電線路における前記第1位置と前記第1結合点との間である第1区間、および前記第2直流送電線路における前記第2位置と前記第1結合点との間である第2区間とにそれぞれ設けられる、
請求項3に記載の直流電流遮断装置。
前記共通補助線路に前記半導体遮断器が設けられる位置は、前記第1補助線路と前記第2補助線路と、前記共通補助線路とが電気的に接続される位置と前記第2結合点との間である、
請求項10に記載の直流電流遮断装置。
前記転流装置は、複数の半導体スイッチング素子を直列に接続した1つ以上のレグ、あるいは、1つ以上の半導体スイッチング素子と1つ以上の整流素子とを直列に接続した1つ以上のレグの何れか2つのレグと、少なくとも1つのコンデンサとが並列に接続されたフルブリッジユニットを、1個または2個以上を直列に接続してなる、
請求項1に記載の直流電流遮断装置。
前記転流装置は、複数の半導体スイッチング素子を直列に接続したレグ、あるいは、少なくとも1つの半導体スイッチング素子と少なくとも1つの整流素子とを直列に接続したレグの何れか1つのレグと、少なくとも1つのコンデンサとが並列に接続されたハーフブリッジユニットを、1個または2個以上直列に接続してなる、
請求項1に記載の直流電流遮断装置。
前記第1機械式断路器と、前記第2機械式断路器と、前記第1ユニットと、前記第2ユニットとについて、電流を遮断する状態のオフ状態と、電流を流す状態のオン状態とに、それぞれの状態をそれぞれ制御する制御部
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1直流送電線路または前記第2直流送電線路に系統事故が生じるまでの定常動作時には、前記第1機械式断路器と前記第2機械式断路器とをオン状態、前記第1ユニットと前記第2ユニットとをオフ状態に制御して、
前記系統事故が発生した場合には、前記第1ユニットと、前記第1直流送電線路と前記第2直流送電線路のなかの前記系統事故が発生した直流送電線路に対応する前記第2ユニットとをオン状態に移行させることにより、前記系統事故が発生した直流送電線路に属する機械式断路器であって、前記第1機械式断路器と前記第2機械式断路器のなかの何れかの機械式断路器に流れる電流に略ゼロ電流状態を作りだし、
前記略ゼロ電流状態になった前記機械式断路器をオフ状態に移行させ、
前記第1ユニットと、前記系統事故が発生した直流送電線路に対応する前記第2ユニットをオフ状態にする、
請求項1に記載の直流電流遮断装置。
前記第1機械式断路器と、前記第2機械式断路器と、前記半導体遮断器と、前記転流装置について、電流を遮断する状態のオフ状態と、電流を流す状態のオン状態とに、それぞれの状態をそれぞれ制御する制御部
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1直流送電線路または前記第2直流送電線路に系統事故が生じるまでの定常動作時には、前記第1機械式断路器と前記第2機械式断路器と前記転流装置とをオン状態、前記半導体遮断器をオフ状態として動作させ、
前記系統事故が発生した場合には、前記半導体遮断器をオン状態に移行し前記転流装置をオフ状態に移行することにより、前記半導体遮断器に電流を転流させ、
略ゼロ電流状態になった前記第1機械式断路器と前記第2機械式断路器の何れかをオフ状態に移行させ、
前記半導体遮断器をオフ状態にする、
請求項6に記載の直流電流遮断装置。
前記第1機械式断路器と、前記第2機械式断路器と、前記転流装置とについて、電流を遮断する状態のオフ状態と、電流を流す状態のオン状態とに、それぞれの状態をそれぞれ制御する制御部
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1直流送電線路または前記第2直流送電線路に系統事故が生じるまでの定常動作時には、前記第1機械式断路器と前記第2機械式断路器とをオン状態、前記転流装置をオフ状態として動作させ、
前記系統事故が発生した場合には、前記転流装置を動作させ前記共振器と前記転流装置を含む電流閉回路内に存在し前記系統事故が発生した直流送電線路に属する機械式断路器であって、前記第1機械式断路器と前記第2機械式断路器のなかの少なくとも何れかの機械式断路器に流れる電流の略ゼロ電流状態を作りだし、
前記略ゼロ電流状態になった前記機械式断路器をオフ状態に移行させる、
請求項19に記載の直流電流遮断装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の直流電流遮断装置を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または相当する機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それらの構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1を参照して、第1の実施形態に係る直流電流遮断装置について説明する。
図1は、実施形態に係る直流電流遮断装置の構成図である。
【0009】
図1に示す直流電流遮断装置1は、機械式断路器2−1から2−3と、変流器3−1から3−3と、半導体遮断器(S)4と、整流装置(整流素子)5−1から5−3と、転流装置(C)7−1から7−3と、制御部9とを備える。なお、機械式断路器2−1から2−3は、機械接点式電流断路器の一例である。
【0010】
直流電流遮断装置1を適用する直流送電回路には、直流送電線路11から13と、直流送電線路11から13が電気的に結合する結合点j(第1結合点)とが含まれる。直流送電線路11から13は、3つの系統にそれぞれ対応付けられており、結合点jで互いに電気的に接続されている。直流送電線路11が第1直流送電線路の一例であり、直流送電線路12が第2直流送電線路の一例であり、直流送電線路13が第3直流送電線路の一例である。例えば、直流送電線路11から13の
図1に示されていない方の端部は、互いに異なる接続先(不図示)に接続されている。
【0011】
直流送電線路11から13は、例えば、直流送電回路の正極に対応付けられる。なお、以下の説明で、
図1のように直流送電回路の負極側の記載を省略することがある。
【0012】
直流送電線路11には、機械式断路器2−1が設けられ、直流送電線路12には、機械式断路器2−2が設けられ、直流送電線路13には、機械式断路器2−3が設けられている。直流送電線路2−1が第1機械式断路器の一例であり、直流送電線路2−2が第2機械式断路器の一例であり、直流送電線路2−3が第3機械式断路器の一例である。例えば、機械式断路器2−1が配置される位置は、直流送電線路11の端部である。機械式断路器2−2と2−3についても同様である。なお、以下の説明で、同様に構成された機械式断路器2−1から2−3を纏めて機械式断路器2ということがある。他の構成についても同様である。
【0013】
なお、直流送電線路11から13の各直流送電線にそれぞれに設けられる機械式断路器2の個数は、直流送電線路ごとに一個に制限されることはなく、複数であってもよい。
【0014】
なお、図示を省略するが、直流送電線路11から13には、その他方の端部に機械式断路器2と同様の機械接点式電流断路器がそれぞれ設けられていてもよい。このような機械式断路器2は、線路開閉器(Line Switch)として用いてもよい。
【0015】
直流送電線路11から13にそれぞれ流れる定常電流、及び、地絡、短絡等による異常電流は、後述する直流電流遮断装置1によって遮断される。
【0016】
直流送電線路11には、直流送電線路11に流れる電流を検出する変流器3−1が設けられている。直流送電線路12には、直流送電線路12に流れる電流を検出する変流器3−2が設けられている。直流送電線路13には、直流送電線路13に流れる電流を検出する変流器3−3が設けられている。例えば、変流器3−1は、合流点j3−1の比較的近傍で、且つ結合点jから離れる方向の位置に配置される。なお、
図1に示す変流器3−1の位置は、合流点j3−1を基準に結合点jから離れる方向の位置であり、一例を示すものである。変流器3−2と変流器3−3も同様である。変流器3−1から3−3は、それぞれ検出した電流の電流値に関する検出結果、または、検出した電流の過電流状態を示す検出結果を出力する。
【0017】
直流電流遮断装置1は、さらに共通補助線路20と、補助線路21(第1補助線路)と、補助線路22(第2補助線路)と、補助線路23(第3補助線路)とを備える。なお、共通補助線路20と、補助線路21から23とには、少なくとも機械式断路器2などの機械接点式電流断路器は設けられていない。
【0018】
例えば、補助線路21の第1端は、直流送電線路11のなかで機械式断路器2−1に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−1(第1位置)に電気的に接続される。補助線路22の第1端は、直流送電線路12のなかで機械式断路器2−2に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−2(第2位置)に電気的に接続される。補助線路23の第1端は、直流送電線路13のなかで機械式断路器2−3に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−3(第3位置)に電気的に接続される。補助線路21の第2端と、補助線路22の第2端と、補助線路23の第2端は、結合点j2(第2結合点)に電気的に接続される。
【0019】
共通補助線路20は、結合点jと結合点j2との間を電気的に接続する。共通補助線路20には、半導体遮断器4が設けられる。半導体遮断器4は、第1ユニットの一例である。なお、半導体遮断器4の詳細については、後述する。
【0020】
上記の補助線路21から23のそれぞれに、少なくとも第2ユニットが設けられている。転流装置7−1から7−3は、互いに同じ構成にしてもよい。転流装置7は、第2ユニットの一例である。例えば、補助線路21には整流装置5−1と転流装置7−1とが設けられ、補助線路22には整流装置5−2と転流装置7−2とが設けられ、補助線路23には整流装置5−3と転流装置7−3とが設けられている。
【0021】
整流装置5−1は、補助線路21に、直流送電線路11に係る転流による電流が補助線路21に流れることを許容する向きに向けて設けられる。整流装置5−2は、補助線路22に、直流送電線路12に係る転流による電流が補助線路22に流れることを許容する向きに向けて設けられる。整流装置5−3は、補助線路23に、直流送電線路13に係る転流による電流が補助線路23に流れることを許容する向きに向けて設けられる。
【0022】
例えば、実施形態の整流装置5−1の方向に関して、直流送電線路11に係る転流による電流が流れることを許容する向きとは、転流装置7が転流させた電流が流れる方向に一致し、補助線路21において結合点j2から合流点j3−1に向かう方向である。整流装置5−1は、その方向に順方向電流を流す。上記は、整流装置5−2と整流装置5−3とについても同様である。
【0023】
転流装置7−1は、所定の条件が満たされた場合に直流送電線路11を流れる電流を、半導体遮断器4に流すように動作する。転流装置7−2は、所定の条件が満たされた場合に直流送電線路12を流れる電流を、半導体遮断器4に流すように動作する。転流装置7−3は、所定の条件が満たされた場合に直流送電線路13を流れる電流を、半導体遮断器4に流すように動作する。例えば、上記の所定の条件とは、変流器3−1から3−3の何れかが検出した電流の電流値が、予め定められた閾値を超えること、である。この場合、転流装置7−1から7−3のなかの上記の所定の条件が満たされたものが、上記の通り転流させる。転流装置7の詳細については後述する。
【0024】
なお、転流装置7が転流による電流が流れる方向とは逆方向に流れないように構成されていれば、整流装置5を設けなくてもよい。
【0025】
制御部9は、変流器3−1から3−3のそれぞれの検出結果に基づいて、直流電流遮断装置1の各部を制御する。例えば、制御部9は、機械式断路器2−1から2−3と、上記の第1ユニットと第2ユニットとについて、電流を遮断する状態のオフ状態と、電流を流す状態のオン状態とにそれぞれの状態を制御する。実施形態おける第1ユニットは、半導体遮断器4である。実施形態おける第2ユニットは、転流装置7である。
【0026】
次に、実施形態における直流電流遮断装置1の各部のより具体的な構成について順に説明する。
【0027】
まず、
図2Aと
図2Bを参照して、実施形態における半導体遮断器について説明する。
図2Aと
図2Bは、実施形態における半導体遮断器の構成例を示す図である。
【0028】
図2Aに示す半導体遮断器4Aは、半導体遮断器4の一例である。半導体遮断器4Aは、必要な耐圧を超えるような段数の並列回路ユニット4Uを備える。例えば、複数の並列回路ユニット4Uが直列に接続されている。並列回路ユニット4Uは、半導体スイッチング素子41とアレスタ40とを備える。半導体スイッチング素子41とアレスタ40は、互いに並列に接続されている。
【0029】
図2Bに示す半導体遮断器4Bは、半導体遮断器4の一例である。半導体遮断器4Bは、必要な耐圧を超えるような段数の半導体スイッチング素子41が直列に接続された半導体スイッチング素子列41Sとアレスタ40を備える。半導体スイッチング素子列41Sは、その全体に対してアレスタ40が並列に接続されている。
【0030】
上記の半導体遮断器4Aと4Bは、少なくとも複数の半導体スイッチング素子41の組と、複数の半導体スイッチング素子41の組の何れかに並列に接続されたアレスタ40とを備える。
【0031】
半導体遮断器4Aと4Bは、直列に接続された複数の半導体スイッチング素子41を備える。例えば、半導体遮断器4Aと4Bの半導体スイッチング素子41は、並列に接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)41aと整流器41bとを備える。各半導体スイッチング素子41において、IGBT41aのエミッタが整流器41bのアノードに、IGBT41aのコレクタが整流器41bのカソードに、それぞれ接続されている。なお、IGBT41aは、IEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)であってもよい。なお、半導体遮断器4Aと4Bは、少なくとも1個の半導体スイッチング素子41を備えるものであってもよい。整流器41bは、整流素子の一例である。
【0032】
半導体遮断器4Aと4Bにおいて、直列に接続された複数の半導体スイッチング素子41は、その極性の向きを一律に揃えて配列されている。
【0033】
例えば、直列に接続されて隣り合うk番目の半導体スイッチング素子41のIGBT41aのエミッタと(k+1)番目の半導体スイッチング素子41のIGBT41aコレクタとが互いに接続され、その接続が順に繰り返される。例えば、直列に接続された半導体スイッチング素子41のうち端部に位置する1番目の半導体スイッチング素子41(IGBT41a)のコレクタは、
図1の結合点jに接続される。同様に、直列に接続されて隣り合うk番目の半導体スイッチング素子41の整流器41bのアノードと(k+1)番目の半導体スイッチング素子41の整流器41bのカソードとが互いに接続され、その接続が順に繰り返される。例えば、直列に接続された整流器41bのうち端部に位置する1番目の整流器41bのカソードは、
図1の結合点jに接続される。
【0034】
半導体遮断器4Aと4Bにおいて、IGBT41aをオフ状態にして、整流器41bが逆バイアス状態にあると、半導体遮断器4Aと4Bが遮断状態にあり、IGBT41aをオン状態に遷移させることで、半導体遮断器4Aと4Bが導通状態になる。
【0035】
なお、半導体遮断器4は、少なくとも1つの半導体スイッチング素子41と、少なくとも1つの半導体スイッチング素子41に並列に接続されたアレスタ40を備える。なお、半導体遮断器4は、上記の半導体遮断器4Aと4Bの何れかであってもよく、他の形態のものであってもよい。
【0036】
なお、
図2Bに示す半導体スイッチング素子列41Sの複数個が互いに並列に接続されていてもよい。つまり、半導体遮断器4において、複数の半導体スイッチング素子41は、並列に接続されていてもよい。この場合、複数の半導体スイッチング素子41の極性の向きが一律に揃えられている。上記の配列方法に従う半導体遮断器4は、直列、あるいは並列接続した半導体スイッチング素子41の極性の向きを、同じ方向に向けて揃えて、特定の一方向のみに向けたものであってよい。
【0037】
次に、
図3Aから
図3Cを参照して、実施形態における転流装置について説明する。
図3Aから
図3Cは、実施形態における転流装置の構成例を示す図である。
図3Aから
図3Cに示す転流装置7の一例は、1個の半導体スイッチング素子72、または直列、あるいは並列に接続される複数の半導体スイッチング素子を備えるものである。半導体スイッチング素子72は、複数の半導体スイッチング素子に含まれる。半導体スイッチング素子72等の半導体スイッチング素子は、例えばIGBTやIEGT等である。次に、より具体的な一例を示す。
【0038】
図3Aに示す転流装置7Aは、転流装置7の一例である。転流装置7Aは、コンデンサ71と、レグ701と、レグ702とを備える。レグ701とレグ702は、それぞれ1つ以上の半導体スイッチング素子72と、1つ以上の整流器73とを備える。
図3Aに示すレグ701とレグ702は、1つの半導体スイッチング素子72と1つの整流器73とが直列に接続されている。この場合、転流装置7Aは、少なくとも1つのコンデンサ71と、2つの半導体スイッチング素子72と、2つの整流器73とを備える。整流器73は、整流素子の一例である。
【0039】
転流装置7Aにおいて、レグ701と、レグ702と、少なくとも1つのコンデンサ71とが、接続点j73と接続点j74との間に配置され、互いに並列に接続されたハーフブリッジユニットが形成されている。レグ701とレグ702における半導体スイッチング素子72と整流器73の接続点j71、j72のそれぞれが、ハーフブリッジユニットの外部に接続される。上記の接続点j71、j72のそれぞれが、転流装置7の外部に接続された場合、接続点j71が結合点j3(
図1)に電気的に接続される。接続点j72が結合点j2(
図1)に電気的に接続される。このような、転流装置7Aは、ブリッジ型と言われる。
【0040】
上記の半導体スイッチング素子72は、例えば、並列に接続された1つのIGBT72aと1つの整流器72bとを備える。各半導体スイッチング素子72において、IGBT72aのエミッタが整流器72bのアノードに、IGBT72aのコレクタが整流器72bのカソードに、それぞれ接続されている。なお、IGBT72aは、IEGTであってもよい。
【0041】
転流装置7Aの場合、コンデンサ71は、図示されていない充電手段によって、接続点j73の電位が接続点j74の電位より高くなるように充電される。2つの半導体スイッチング素子72が共にオフ状態にある場合、コンデンサ71の充電状態が保たれる。2つの半導体スイッチング素子72が共にオン状態になると、コンデンサ71がハーフブリッジユニットの外部に接続されて放電可能な状態になる。
【0042】
また、
図3Bに示す転流装置7Bは、転流装置7の一例である。転流装置7Bは、コンデンサ71と半導体スイッチング素子72とを備える。転流装置7Bは、コンデンサ71と半導体スイッチング素子72のコレクタとが接続点j75において直列に接続されている。直列に接続された半導体スイッチング素子72の接続点j71とコンデンサ71の接続点j72とが、転流装置7の外部にそれぞれ接続される。例えば、半導体スイッチング素子72の接続点j71が結合点j3(
図1)に接続され、コンデンサ71の接続点j72が結合点j2(
図1)に接続される。
【0043】
転流装置7Bの場合、コンデンサ71は、図示されていない充電手段により接続点j75側の電位が接続点j72側の電位より高くなるように充電される。
【0044】
また、
図3Cに示す転流装置7Cは、転流装置7の一例である。転流装置7Cは、レグ703と、レグ704と、少なくとも1つのコンデンサ71を備える。レグ703とレグ704は、2個以上のスイッチング素子が直列に接続されたレグの一例である。なお、レグ703とレグ704は、それぞれが1つ以上であってよく、それぞれを2個以上有する場合には、それらを並列に接続してもよい。
【0045】
転流装置7Cは、レグ703と、レグ704と、少なくとも1つのコンデンサ71とが、接続点j73と接続点j74との間に配置され、互いに並列に接続されたフルブリッジユニットを含む。例えば、レグ703では、1つ以上の半導体スイッチング素子72と1つ以上の半導体スイッチング素子75とを備える。
図3Cに示すレグ703では、1つの半導体スイッチング素子72と1つの半導体スイッチング素子75とが直列に接続されている。レグ703における半導体スイッチング素子72と半導体スイッチング素子75を接続点j72と定める。レグ704についてもレグ703と同様である。レグ704における半導体スイッチング素子72と半導体スイッチング素子74を接続点j71と定める。例えば、接続点j71、j72のそれぞれが、フルブリッジユニットの外部に接続される。上記の接続点j71、j72のそれぞれが転流装置7の外部に接続される場合、レグ704の接続点j72が電気的に結合点j2(
図1)に接続され、レグ703の接続点j71が電気的に結合点j3(
図1)に接続される。このような、転流装置7Cは、フルブリッジ型と言われる。
【0046】
なお、半導体スイッチング素子72、74、75は、同種のものである。例えば、半導体スイッチング素子72は、並列に接続されたIGBT72aと整流器72bとを備える。各半導体スイッチング素子72において、IGBT72aのエミッタが整流器72bのアノードに、IGBT72aのコレクタが整流器72bのカソードに、それぞれ接続されている。なお、IGBT72aは、IEGTであってもよい。
【0047】
なお、転流装置7Cは、フルブリッジ型に形成されたものであるが、その一部の半導体スイッチング素子を利用してハーフブリッジ型として機能させてもよい。例えば、転流装置7Cは、半導体スイッチング素子72についてはIGBT72aの導通状態を切替える制御の対象にして、半導体スイッチング素子74、75については、それぞれ有するIGBTをオフ状態に維持して、整流器を利用するようにしてもよい。或いは、転流装置7Cは、レグ703とレグ704の何れか一方と、コンデンサ71とを有するものであってもよい。
【0048】
転流装置7Cの場合におけるコンデンサ71の充電は、転流装置74Aと同様の方法により充電してよい。
【0049】
このように、転流装置7Aと7Bと7Cは、共に、直流送電回路の運転時において、コンデンサ71が所望の極性で所望の電圧の直流電圧に充電されている。例えば、転流装置7は、転流を開始するまでに、転流を開始可能なほどに、接続点j71の電位を接続点j72の電位より高くする。なお、前述の
図1等の構成図において、転流装置7の端子の近傍に「+」印を付けて、その端子が他方の端子より高電位になるように転流装置7が充電された状態にあることを示す。以下の説明においても同様である。
【0050】
図3Aから
図3Cにそれぞれ示す転流装置7は、1段分の構成を示したものであるが、これを複数段直列に連ねて構成することを制限するものではない。
【0051】
ここで、実施形態の直流電流遮断装置1の作用について説明する。
【0052】
制御部9は、直流送電線路11から13の何れかに系統事故が生じるまでの定常動作時には、機械式断路器2−1から2−3をオン状態、半導体遮断器4(第1ユニット)と全ての転流装置7(第2ユニット)とをオフ状態に制御する。直流送電線路11から13のそれぞれに流れる電流は、機械式断路器2−1から2−3のそれぞれを通じて流れる。
【0053】
制御部9は、直流送電線路11から13の何れかに系統事故が発生した場合には、系統事故が発生した少なくとも1つの直流送電線路に流れる電流を、下記の手順に従い遮断する。ここでは、
図1に示すように、直流送電線路12に系統事故が生じた場合を仮定して説明する。上記の系統事故により事故電流I
Aが流れる。
【0054】
まず、変流器3−2が検出した事故電流I
Aの検出結果に基づいて、制御部9は、系統事故が発生したことを検出する。
【0055】
制御部9は、系統事故を検出すると、半導体遮断器4をオン状態に移行させて、系統事故が発生した直流送電線路12に対応する転流装置7−2を動作可能な状態(オン状態)に移行させる。これにより、結合点jとj2を通り、転流装置7−2、整流装置5−2、機械式断路器2−2、半導体遮断器4のこれらを一巡する閉回路CC1が形成される。結合点jとj2とj3−2とを通る閉回路CC1に電流Iccが流れると、機械式断路器2−2に流れる事故電流I
Aが打ち消しあって、略ゼロ電流状態が生じる。
【0056】
上記の通り、系統事故が発生した直流送電線路12に属する機械式断路器2−2は、転流装置7−2を含む上記の閉回路CC1内に存在する。機械式断路器2−2に流れていた事故電流I
Aが転流装置7−2に転流されて、電流Icが流れる。このように機械式断路器2−2がゼロ電流状態になれば、機械式断路器2−2をオフ状態に遷移させることができる。
【0057】
次に、制御部9は、ゼロ電流状態になった機械式断路器2−2をオフ状態に移行させて、その後、半導体遮断器4をオフ状態にする。半導体遮断器4をオフ状態にすることにより、半導体遮断器4の両端に発生するエネルギーは、アレスタ40で消費される。
【0058】
制御部9は、機械式断路器2−2をオフ状態に移行させた後、転流装置7−2の動作を止める。
【0059】
上記の手順により、直流電流遮断装置1は、系統事故が発生した直流送電線路12に流れる電流を遮断することができる。
【0060】
なお、上記の動作は、他の直流送電線路の場合も同様である。上記の通り、半導体遮断器4は、1つであり、各直流送電線に対して共通化されている。このように、直流送電線路11から13のいずれの直流送電線で系統事故が発生した場合でも、1つの半導体遮断器4によって、系統事故が起きた直流送電線を切り離すことができる。
【0061】
ここで、実施形態の比較例を挙げて、実施形態に係る直流電流遮断装置1の優位性について説明する。
【0062】
送電網(直流送電回路)の複数の直流送電線路の中から、事故が起きた1つの直流送電線路のみを遮断するためには、比較例の直流電流遮断装置CEを用いると、送電網(直流送電回路)の直流送電線路を挟み、その両端に直流電流遮断装置CEをそれぞれ設けることが必要になる。
このような比較例の直流電流遮断装置CEでは、直流送電線路が多くなるにつれて直流電流遮断装置CEの個数も多くなる。このような比較例の直流電流遮断装置CEでは、直流送電線路が多くなるほど簡素に構成することができなくなる。
【0063】
これに対し、実施形態の直流電流遮断装置1は、1つの半導体遮断器4を、直流送電線路11から13で共用する。これにより、直流送電線路の系統数の増加に伴って半導体遮断器4の個数を追加する必要が無い。実施形態の直流電流遮断装置1は、上記の比較例に比べてより簡素に構成することができ、適用する直流送電線路の系統数が多くなるほどその優位性が高まる。
【0064】
実施形態によれば、直流送電線路11から13のそれぞれに個別に直流電流遮断装置CEを接続する比較例に対して、半導体遮断器4の個数を削減することができ、ひいては半導体スイッチング素子の部品点数を低減し、直流電流遮断装置1の低コスト、小型化を図ることができる。例えば、n回線の直流送電線路の結合点に適用した場合、半導体遮断器4を共通化することで削減できる半導体遮断器4の個数は(n−1)個である。絶縁耐圧を確保する必要がある半導体遮断器4は、内蔵する半導体スイッチング素子の部品点数が多く、一般に高価である。このように、半導体遮断器4の個数を削減可能な直流電流遮断装置1におけるコストと低減の効果は比較的大きなものとなる。
【0065】
なお、実施形態の直流電流遮断装置1は、比較例に対して上記の優位な点を備えるが、系統事故の事故電流を高速に遮断することができることに変わりはない。
【0066】
なお、以下の実施形態に共通する事項について説明する。
【0067】
実施形態の構成は、一例を示したものであり、結合点に接続される直流送電線路の系統数は、上記の事例に制限されることなく、任意の系統数の直流送電線路が接続される結合点や、結合点が機械的に離れて配置された場合にも適用できる。例えば、直流電流遮断装置1は、2つまたは4つ以上の直流送電線路の結合点や、分離して配置された2つの結合点にも適用できる。
【0068】
なお、転流装置7は、複数個が直列に接続されて形成されていてもよい。また、少なくとも1つ以上の転流装置7の一部または全部が、フルブリッジ型で構成されていてもよい。
【0069】
また、半導体遮断器4をオフ状態にした際のエネルギーが、アレスタ40が不要なほどに低ければ、アレスタ40を備えていなくてもよい。半導体遮断器4は、半導体スイッチング素子の極性を双方向型に構成してもよく、一方向型に構成してもよい。
【0070】
また、
図1の直流送電線路11に設けた機械式断路器2−1の個数は、1個であるが、複数であってもよく、直流送電線路11に設けた機械接点式電流断路器を直並列接続してもよい。
【0071】
実施形態によれば、直流電流遮断装置1は、少なくとも直流送電線路11と直流送電線路12とが結合点jで互いに電気的に接続される直流送電回路に設けられる。直流電流遮断装置1は、機械式断路器2−1と、機械式断路器2−2と、補助線路21と、補助線路22と、共通補助線路20と、第1ユニットと、第2ユニットと、を持つ。機械式断路器2−1は、直流送電線路11に設けられる。機械式断路器2−1は、直流送電線路12に設けられる。補助線路21は、直流送電線路11のなかで機械式断路器2−1に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−1に電気的に接続される。補助線路22は、直流送電線路12のなかで機械式断路器2−2に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−2に電気的に接続される。共通補助線路20は、補助線路21および補助線路22が電気的に接続される結合点j2と、結合点jとの間に電気的に接続される。第1ユニットは、共通補助線路20に設けられる。第2ユニットは、直流送電線路11または補助線路21である第1線路と、直流送電線路12または補助線路22である第2線路とにそれぞれ設けられる。第1ユニットおよび第2ユニットの一方は、少なくとも1つの半導体スイッチング素子を有して電流を遮断可能な半導体遮断器4である。第1ユニットおよび第2ユニットの他方は、所定の条件が満たされた場合に直流送電線路11または直流送電線路12を流れる電流を、半導体遮断器4に流すように転流させる転流装置7である。これにより、複数の直流送電線の結合点において、何れかの直流送電線に流れる事故電流を遮断するための直流電流遮断装置1を、より簡素に構成することができる。
【0072】
また、直流送電回路は、結合点jに電気的に接続された直流送電線路13を有する。直流電流遮断装置1は、直流送電線路13に設けられる機械式断路器2−3と、直流送電線路13のなかで機械式断路器2−3に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−3に電気的に接続される補助線路23と、をさらに備える。第2ユニットは、直流送電線路13または補助線路23である第3線路にも設けられる。これにより、直流電流遮断装置1は、少なくとも直流送電線路を含む直流送電回路においても、より簡素に構成することができる。
【0073】
また、第1ユニットは、半導体遮断器4であり、第2ユニットは、転流装置7であることにより、半導体遮断器4が各直流送電線路の電流を遮断することを可能にする。これにより、半導体遮断器4の個数を、半導体遮断器4をそれぞれ独立に設ける場合より削減することができる。
【0074】
また、転流装置7は、補助線路21と補助線路22とにそれぞれ設けられることにより、直流送電線路毎に転流させることができる。
【0075】
また、整流装置5−1は、補助線路21に設けられ、直流送電線路11から転流装置7が転流させた電流が流れることを許容する向きに設けられる。整流装置5−2は、補助線路21に設けられ、直流送電線路11に係る転流による電流が流れることを許容する向きに設けられることにより、転流を制限することなく、転流とは異なる方向の電流を制限することができる。
【0076】
また、転流装置7は、1個の半導体スイッチング素子、または直列、あるいは並列に接続される複数の半導体スイッチング素子を備えることにより、半導体スイッチング素子の動作により、転流開始を制御することができる。
【0077】
また、転流装置7は、複数の半導体スイッチング素子を直列に接続したレグ(703,704)、あるいは、1つ以上の半導体スイッチング素子と1つ以上の整流素子とを直列に接続したレグ(701,702)の何れか2つのレグと、少なくとも1つのコンデンサとが並列に接続されたフルブリッジユニットを、1個または2個以上を直列に接続してなるフルブリッジ型に構成することができる。
【0078】
また、転流装置7は、複数の半導体スイッチング素子を直列に接続したレグ、あるいは、少なくとも1つの半導体スイッチング素子と少なくとも1つの整流素子とを直列に接続したレグの何れか1つと、少なくとも1つのコンデンサとが並列に接続されたハーフブリッジユニットを、1個または2個以上直列接続してなるブリッジ型に構成することができる。
【0079】
また、制御部9は、機械式断路器2と、第1ユニットと、第2ユニットについて、電流を遮断する状態のオフ状態と、電流を流す状態のオン状態とに、それぞれの状態をそれぞれ制御する。制御部9は、直流送電線路11または直流送電線路12に系統事故が生じるまでの定常動作時には、機械式断路器2−1または2−2をオン状態、ユニットと第2ユニットとをオフ状態に制御する。制御部9は、系統事故が発生した場合には、第1ユニットと、直流送電線路11と直流送電線路12のなかの系統事故が発生した直流送電線路に対応する第2ユニットをオン状態に移行させることにより、系統事故が発生した直流送電線路に属する機械式断路器2であって、機械式断路器2−1から2−3のなかの何れかの機械式断路器2に流れる電流に略ゼロ電流状態を作りだし、略ゼロ電流状態になった機械式断路器2をオフ状態に移行させ、そののち第1ユニットと、系統事故が発生した直流送電線路に対応する第2ユニットをオフ状態にする。これにより、系統事故が発生した直流送電線路に流れる電流を遮断することを、より簡素な構成で実施できる。
【0080】
また、実施形態の直流送電回路では、直流送電線路11から13に半導体遮断器4や転流装置7などの半導体装置を設けることなく構成できる。このような構成であれば、定常動作時に上記の半導体装置による導通損失が生じない。また、定常動作時に比較的大きな電流が流れる直流送電回路である程、その効果が顕著になる。
【0081】
なお、実施形態の機械式断路器2−1から2−3は、並列に接続されたアレスタを備えていなくてもよい。
【0082】
(第2の実施形態)
図4を参照して、第2の実施形態に係る直流電流遮断装置について説明する。
図4は、実施形態に係る直流電流遮断装置の構成図である。
図1との相違点を中心に説明する。
【0083】
図4に示す直流電流遮断装置1は、機械式断路器2−1から2−3と、変流器3−1から3−3と、半導体遮断器4−1から4−3と、整流装置5と、転流装置7と、制御部9とを備える。
【0084】
直流電流遮断装置1を適用する直流送電回路には、直流送電線路11から13と、直流送電線路11から13が電気的に結合する結合点j2(第1結合点)とが含まれる。
【0085】
直流電流遮断装置1は、さらに共通補助線路20と、補助線路21(第1補助線路)と、補助線路22(第2補助線路)と、補助線路23(第3補助線路)とを備える。
【0086】
例えば、補助線路21の第1端は、直流送電線路11のなかで機械式断路器2−1に対して結合点j2とは反対側に位置した合流点j3−1(第1位置)に電気的に接続される。補助線路22と補助線路23とについても同様である。補助線路21の第2端と、補助線路22の第2端と、補助線路23の第2端は、結合点j(第2結合点)に電気的に接続される。
【0087】
共通補助線路20は、結合点jと結合点j2との間に電気的に接続される。共通補助線路20には、整流装置5と、転流装置7とが設けられる。転流装置7は、第1ユニットの一例である。
【0088】
補助線路21には半導体遮断器4−1が設けられ、補助線路22には半導体遮断器4−2が設けられ、補助線路23には半導体遮断器4−3が設けられている。半導体遮断器4−1から4−3は、第2ユニットの一例である。つまり、第2ユニットは、少なくとも補助線路21と補助線路22とにそれぞれ設けられている。また、第2ユニットは、さらに補助線路23にも設けられている。このように第2ユニットは、各補助線路にそれぞれ設けられていてよい。
【0089】
整流装置5は、転流装置7と電気的に直列になるように、転流装置7とともに共通補助線路20に設けられる。整流装置5は、直流送電線路11から13のなかの何れかに係る転流による電流が共通補助線路20に流れることを許容する向きに向けて設けられる。
【0090】
転流装置7は、所定の条件が満たされた場合に直流送電線路11を流れる電流を、半導体遮断器4−1から4−3の何れかの半導体遮断器に流すように動作する。
【0091】
なお、直流送電線路11に係る転流による電流が流れることを許容する向きとは、共通補助線路20において結合点j2から結合点jに向かう方向である。整流装置5は、その方向に順方向電流を流す。
【0092】
ここで、実施形態の直流電流遮断装置1の作用について説明する。
【0093】
図4に示すように、直流送電線路12に系統事故が生じた場合を仮定して説明する。上記の系統事故により事故電流I
Aが流れる。
【0094】
制御部9は、系統事故を検出すると、半導体遮断器4−2をオン状態に移行させて、系統事故が発生した直流送電線路12に対応する転流装置7を動作可能な状態(オン状態)に移行させる。これにより、結合点jとj2を通り、転流装置7、整流装置5、半導体遮断器4−2、機械式断路器2−2を一巡する閉回路が形成される。結合点jとj2とj3−2を通る閉回路に電流Iccが流れると、機械式断路器2−2に流れる事故電流I
Aが打ち消しあって、略ゼロ電流状態が生じる。なお、略ゼロ電流状態には、電流Iccと事故電流I
Aとによる合成電流が0になる状態(ゼロ電流状態)が含まれる。機械式断路器2−2に流れていた事故電流I
Aが転流装置7−2に転流されて、電流Icが流れる。
【0095】
次に、制御部9は、ゼロ電流状態になった機械式断路器2−2をオフ状態に移行させて、その後、半導体遮断器4−2をオフ状態にする。半導体遮断器4−2をオフ状態にすることにより、半導体遮断器4−2の両端に発生するエネルギーは、アレスタ40で消費される。
【0096】
制御部9は、ゼロ電流状態になった機械式断路器2−2をオフ状態に移行させた後、転流装置7の動作を止める。
【0097】
上記の手順により、直流電流遮断装置1は、系統事故が発生した直流送電線路12に流れる電流を遮断することができる。
【0098】
なお、上記の動作は、他の直流送電線の場合も同様である。転流装置7は、1つであり、各直流送電線に対して共通化されている。このように、1つの転流装置7は、直流送電線路11から13のいずれの直流送電線で系統事故が発生した場合でも、系統事故が起きた直流送電線を切り離すために作用することができる。
【0099】
実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することの他、第1ユニットは、転流装置7であり、第2ユニットは、半導体遮断器4であり、半導体遮断器4が、補助線路21と補助線路22とにそれぞれ設けられることにより、各直流送電線路の電流を遮断するために、転流装置7を共用することを可能にする。これにより、転流装置7を各直流送電線路にそれぞれ独立に設ける場合より、転流装置7の個数を削減することができる。
【0100】
また、整流装置5は、転流による電流が流れることを許容する向きに転流装置7(第1ユニット)と電気的に直列に設けられていることにより、転流を制限することなく、転流とは異なる方向の電流を制限することができる。
【0101】
(第3の実施形態)
図5と
図6を参照して、第3の実施形態に係る直流電流遮断装置について説明する。
図5は、実施形態に係る直流電流遮断装置の構成図である。
図1との相違点を中心に説明する。
【0102】
図5に示す直流電流遮断装置1は、機械式断路器2−1と2−2と、変流器3−1と3−2と、半導体遮断器4と、整流装置5−1と5−2と、転流装置7−1と7−2と、制御部9と、変換器10とを備える。なお、変換器10は、直流電流遮断装置1の外部の装置であってもよい。
【0103】
直流電流遮断装置1を適用する直流送電回路には、直流送電線路11,12,14と、直流送電線路11,12,14が電気的に結合する結合点j(第1結合点)とが含まれる。
【0104】
直流電流遮断装置1は、さらに共通補助線路20と、補助線路21(第1補助線路)と、補助線路22(第2補助線路)とを備える。
【0105】
実施形態の直流送電回路では、第1の実施形態の直流送電線路13に代わり、直流送電線路14が結合点jに接続されている。直流送電線路14は、第1端が結合点j(第1結合点)に接続され、第2端が変換器10の直流側端子に接続されている。
【0106】
変換器10の交流側端子には、三相交流送電線路15が接続され、三相交流送電線路15を介して発電機(G)10Gが接続されている。例えば、発電機10Gは、3相交流発電機などである。
【0107】
図6に変換器10の構成を示す。
図6は、実施形態の変換器を示す構成図である。変換器10は、交流直流変換部10A、変圧器10Bと、交流遮断器10Cとを備える。交流直流変換部10Aは、交流電力と直流電力の双方向変換を行う。このような変換器10は、三相交流送電線路15側端子と直流送電線路14側端子との間で、電力の相互変換を行う。
【0108】
制御部9は、変流器3−1と3−2の検出結果に基づいて、直流電流遮断装置1の各部を制御する。制御部9は、さらに、変流器3−1と3−2の検出結果に基づいて、変換器10を制御してもよい。なお、
図5に示す構成部において、制御部9と変換器10との間の接続の記載を省略している。
【0109】
本実施形態の直流送電回路は、前述の第1の実施形態に対応する。直流電流遮断装置1は、第1の実施形態と同様に作用する。
【0110】
実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することの他、結合点jに、発電機10Gなどを、変換器10を介して接続された直流送電回路に適用することが可能なる。これにより、適用可能な直流送電回路の構成の自由度を高めつつ、直流送電線路11,12それぞれに個別に直流電流遮断装置を接続する場合と比較して、半導体遮断器4を削減することができる。
【0111】
(第4の実施形態)
図7と
図8を参照して、第4の実施形態に係る直流電流遮断装置について説明する。
図7は、実施形態に係る直流電流遮断装置の構成図である。
図1との相違点を中心に説明する。
【0112】
図7に示す直流電流遮断装置1は、機械式断路器2−1から2−3と、変流器3−1から3−3と、半導体遮断器4と、整流装置5−1から5−3と、転流装置7T−1から7T−3と、制御部9とを備える。
【0113】
図7に示す直流電流遮断装置1を適用する直流送電回路には、直流送電線路11から13と、直流送電線路11から13が電気的に結合する結合点j(第1結合点)とが含まれる。
【0114】
直流電流遮断装置1は、さらに共通補助線路20と、補助線路21(第1補助線路)と、補助線路22(第2補助線路)と、補助線路23(第3補助線路)とを備える。
【0115】
直流電流遮断装置1は、共通補助線路20に設けられる第1ユニットを備える。直流電流遮断装置1は、直流送電線路11(第1線路)と、直流送電線路12(第2線路)と、直流送電線路13(第3線路)と、にそれぞれ設けられる第2ユニットと、を備える。半導体遮断器4は、第1ユニットの一例であり、転流装置7T−1から7T−3は、第2ユニットの一例である。
【0116】
例えば、
図7に示すように直流送電線路11には、機械式断路器2−1と転流装置7T−1とが設けられ、直流送電線路12には、機械式断路器2−2と転流装置7T−2とが設けられ、直流送電線路13には、機械式断路器2−3と転流装置7T−3とが設けられている。例えば、機械式断路器2−1が直流送電線路11の端部に、機械式断路器2−2が直流送電線路12の端部に、機械式断路器2−3が直流送電線路13の端部に配置されている。なお、直流送電線路11から13の各直流送電線にそれぞれに設けられる機械式断路器2−1から2−3の個数は、一個に制限されることはなく、複数であってもよい。
【0117】
次に、
図8Aと
図8Bを参照して、実施形態における転流装置について説明する。
図8Aと
図8Bは、実施形態における転流装置の構成例を示す図である。
図8Aと
図8Bに示す転流装置7Tの一例は、1個の半導体スイッチング素子72、または直列、あるいは並列に接続される複数の半導体スイッチング素子を備えるものである。半導体スイッチング素子72は、複数の半導体スイッチング素子に含まれる。半導体スイッチング素子72等の半導体スイッチング素子は、例えばIGBTやIEGT等である。次に、より具体的な一例を示す。
【0118】
図8Aに示す転流装置7Dは、転流装置7Tの一例である。転流装置7Dは、1つの半導体スイッチング素子75を備える。半導体スイッチング素子75は、並列に接続されたIGBT75aと整流器75bとを備える。各半導体スイッチング素子75において、IGBT75aのエミッタが整流器75bのアノードに、IGBT75aのコレクタが整流器75bのカソードに、それぞれ接続されている。なお、IGBT75aは、IEGTであってもよい。転流装置7の接続点j71、j72のそれぞれが、転流装置7Tの外部に接続される。例えば、接続点j71が電気的に機械式断路器2−1(
図7)等に接続される。接続点j72が電気的に結合点j(
図7)に接続される。
【0119】
図8Bに示す転流装置7Eは、転流装置7Tの一例である。転流装置7Eは、レグ703と、レグ704と、少なくとも1つのコンデンサ71を備える。転流装置7Eは、前述の転流装置7Cと同様の構成を備える。ただし、転流装置7Eは、転流装置7Cとは接続先が異なる。
【0120】
レグ703における半導体スイッチング素子72と半導体スイッチング素子75を接続点j71と定める。レグ704についてもレグ703と同様である。レグ704における半導体スイッチング素子72と半導体スイッチング素子74を接続点j72と定める。例えば、接続点j71、j72のそれぞれが、フルブリッジユニットの外部に接続される。上記の接続点j71、j72のそれぞれが転流装置7Eの外部に接続される場合、レグ704の接続点j72が電気的に結合点j(
図7)に接続され、レグ703の接続点j72が機械式断路器2(
図7)等に電気的に接続される。このような、転流装置7Eは、フルブリッジ型と言われる。
【0121】
ここで、実施形態の直流電流遮断装置1の作用について説明する。
【0122】
制御部9は、直流送電線路11から13の何れかに系統事故が生じるまでの定常動作時には、機械式断路器2−1から2−3と、全ての転流装置7T(第2ユニット)とをオン状態、半導体遮断器4(第1ユニット)をオフ状態に制御する。直流送電線路11に流れる電流は、機械式断路器2−1と転流装置7T−1とを通じて流れる。直流送電線路12に流れる電流は、機械式断路器2−2と転流装置7T−2とを通じて流れる。直流送電線路13に流れる電流は、機械式断路器2−3と転流装置7T−3とを通じて流れる。
【0123】
制御部9は、直流送電線路11から13の何れかに系統事故が発生した場合には、系統事故が発生した少なくとも1つの直流送電線路に流れる電流を、下記の手順に従い遮断する。ここでは、
図1に示すように、直流送電線路12に系統事故が生じた場合を仮定して説明する。上記の系統事故により事故電流I
Aが流れる。
【0124】
まず、変流器3−2が検出した事故電流I
Aの検出結果に基づいて、制御部9は、系統事故が発生したことを検出する。
【0125】
制御部9は、系統事故を検出すると、半導体遮断器4をオン状態に移行させるとともに、系統事故が発生した直流送電線路12に対応する転流装置7T−2をオフ状態または流れている電流がゼロになるように動作させる。
【0126】
例えば、第1の方法として、転流装置7T−2をオフ状態にする場合は、結合点jとj2を通る経路に転流し、電流Icが流れて、機械式断路器2−2に流れる事故電流I
Aの略ゼロ電流状態を作りだす。
【0127】
或いは、第2の方法として、転流装置7T−2に流れている電流がゼロになるように動作させる場合は、転流装置7T−2は、例えば、結合点jとj2を通り、転流装置7−2、半導体遮断器4、整流装置5−2、機械式断路器2−2のこれらを一巡する閉回路に電流Iccを流す。結合点jとj2を通る閉回路に電流Iccが流れると、機械式断路器2−2に流れる事故電流I
Aが打ち消しあって、略ゼロ電流状態が生じる。
【0128】
上記の何れかの方法により、機械式断路器2−2に流れていた事故電流I
Aが半導体遮断器4に転流されて、電流Icが流れる。このように機械式断路器2−2と転流装置7−2に流れる電流がゼロ電流状態になれば、機械式断路器2−2をオフ状態に遷移させることができる。
【0129】
次に、制御部9は、ゼロ電流状態になった機械式断路器2−2をオフ状態に移行させて、その後、半導体遮断器4をオフ状態にする。半導体遮断器4をオフ状態にすることにより、半導体遮断器4の両端に発生するエネルギーは、アレスタ40で消費される。
【0130】
なお、制御部9は、事故電流I
Aが半導体遮断器4に転流された後に、転流装置7−2をオフ状態に、または、動作を止めた状態に遷移させてよい。
【0131】
上記の手順により、直流電流遮断装置1は、系統事故が発生した直流送電線路12に流れる電流を遮断することができる。
【0132】
実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することの他、転流装置7Tは、直流送電線路11における合流点j3−1と結合点jとの間である第1区間、および直流送電線路12における合流点j3−2と結合点jとの間である第2区間とにそれぞれ設けられることにより、転流装置7T−1が直流送電線路11に設けられ、転流装置7T−2が直流送電線路12に設けられる直流送電回路において、直流電流遮断装置1が、直流送電線路11または直流送電線路12に流れる電流を遮断することができる。また、直流送電線路11における合流点j3−3と結合点jとの間である第3区間に、さらに転流装置7Tが設けられることにより、転流装置7T−3が直流送電線路13に設けられる直流送電回路において、直流電流遮断装置1が、直流送電線路13に流れる電流を遮断することができる。なお、
図7に示す区間Sec1は、第1区間の一例であり、区間Sec2は第2区間の一例であり、区間Sec3は、第3区間の一例である。
【0133】
また、整流装置5−1は、補助線路21に設けられ、直流送電線路11から転流装置7が転流させた電流が流れることを許容する向きに設けられる。整流装置5−2は、補助線路22に設けられ、直流送電線路11から転流装置7が転流させた電流が流れることを許容する向きに設けられることにより、転流を制限することなく、転流とは異なる方向の電流を制限することができる。
【0134】
なお、転流装置7Tは、各直流送電線に流れる電流を半導体遮断器4に転流させる機能を持つものであり、少なくとも定格電流が連続して流れるように構成されている。このような転流装置7Tの構成は、
図8に示したものに限定されない。例えば、
図8(a)に示した転流装置7Dの半導体スイッチング素子75は、片方向の電流の導通状態を制御可能なものであるが、双方向の電流の導通状態を制御可能なものであってもよい。
【0135】
また、半導体遮断器4は、半導体スイッチング素子41を、片方向の電流の導通状態を制御可能であってもよく、双方向の電流の導通状態を制御可能なものであってもよい。このような半導体遮断器4は、双方向に導通可能な状態、或いは、一方向のみに導通可能な状態の何れかの導通状態を有するものであってよい。
【0136】
また、制御部9は、機械式断路器2と、半導体遮断器4と、転流装置7Tについて、電流を遮断する状態のオフ状態と、電流を流す状態のオン状態とに、それぞれの状態をそれぞれ制御する。制御部9は、直流送電線路11または直流送電線路12に系統事故が生じるまでの定常動作時には、機械式断路器2と転流装置7Tをオン状態、半導体遮断器4をオフ状態として動作させる。制御部9は、系統事故が発生した場合には、半導体遮断器4をオン状態に移行することにより、半導体遮断器4に電流を転流させる。さらに、制御部9は、略ゼロ電流状態になった機械式断路器2−1または2−2をオフ状態に移行させて、そののち半導体遮断器4をオフ状態にする。これにより、直流送電線路11または直流送電線路12の電流を定常動作時に流すように配置された転流装置7T−1または7T−2を、オフ状態にすることにより転流を開始することができる。
【0137】
(第5の実施形態)
図9を参照して、第5の実施形態に係る直流電流遮断装置について説明する。
図9は、実施形態に係る直流電流遮断装置の構成図である。
図1との相違点を中心に説明する。
【0138】
図9に示す直流電流遮断装置1は、機械式断路器2−1から2−3と、機械式断路器2A−1から2A−3と、変流器3−1から3−3と、半導体遮断器4と、整流装置5−1から5−3と、転流装置7−1から7−3と、制御部9とを備える。機械式断路器2A−1は、第4機械式断路器の一例であり、機械式断路器2A−2は、第5機械式断路器の一例であり、機械式断路器2A−3は、第6機械式断路器の一例である。
【0139】
直流電流遮断装置1を適用する直流送電回路には、直流送電線路11から13と、直流送電線路11から13が電気的に結合する結合点j(第1結合点)とが含まれる。
【0140】
直流電流遮断装置1は、さらに共通補助線路20と、補助線路21(第1補助線路)と、補助線路22(第2補助線路)と、補助線路23(第3補助線路)と、補助線路24(第4補助線路)と、補助線路25(第5補助線路)と、補助線路26(第6補助線路)と、を備える。
【0141】
機械式断路器2A−1は、直流送電線路11において機械式断路器2−1に対して結合点jとは反対側に設けられる。機械式断路器2A−2は、直流送電線路12において機械式断路器2−2に対して結合点jとは反対側に設けられる。機械式断路器2A−3は、直流送電線路13において機械式断路器2−3に対して結合点jとは反対側に設けられる。
【0142】
例えば、直流送電線路11において、機械式断路器2は、電流を遮断する機能を持つ遮断器であり、機械式断路器2Aは、高耐圧を持つ断路器である。
【0143】
補助線路24の第1端は、直流送電線路11のなかで機械式断路器2A−1に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j5−1(第4位置)と、結合点j2とに電気的に接続される。補助線路25の第1端は、直流送電線路12のなかで機械式断路器2A−2に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j5−2(第5位置)と、結合点j2とに電気的に接続される。補助線路26の第1端は、直流送電線路13のなかで機械式断路器2A−3に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j5−3(第6位置)と、結合点j2とに電気的に接続される。補助線路24の第2端と、補助線路25の第2端と、補助線路26の第2端は、結合点j2(第2結合点)に電気的に接続される。つまり、補助線路21は、直流送電線路11のなかで機械式断路器2−1と機械式断路器2A−1との間に位置する合流点j3−1と、結合点j2との間に設けられ、合流点j3−1と結合点j2に電気的に接続される。補助線路22と補助線路23についても同様である。
【0144】
整流装置5−1は、補助線路24に、直流送電線路11から転流装置7が転流させた電流が補助線路24に流れることを許容する向きに向けて設けられる。整流装置5−2は、補助線路25に、直流送電線路12から転流装置7が転流させた電流が補助線路25に流れることを許容する向きに向けて設けられる。整流装置5−3は、補助線路26に、直流送電線路13に係る転流による電流が補助線路26に流れることを許容する向きに向けて設けられる。例えば、整流装置5−1は、結合点j2から合流点j5に向かう方向に順方向電流を流すように設けられる。整流装置5−2と5−3についても同様である。
【0145】
共通補助線路20は、結合点jと結合点j2との間を電気的に接続する。共通補助線路20には、半導体遮断器4が設けられる。なお、共通補助線路20に半導体遮断器4が設けられる位置は、合流点j4と結合点j2との間である。なお、合流点j4は、補助線路21から23と、共通補助線路20とが電気的に接続される位置に配置される。
【0146】
ここで、実施形態の直流電流遮断装置1の作用について説明する。
【0147】
制御部9は、直流送電線路11から13の何れかに系統事故が生じるまでの定常動作時には、機械式断路器2−1から2−3と、機械式断路器2A−1から2A−3とをオン状態、半導体遮断器4(第1ユニット)と全ての転流装置7(第2ユニット)とをオフ状態に制御する。直流送電線路11から13のそれぞれに流れる電流は、機械式断路器2と機械式断路器2Aのそれぞれを通じて伝送される。
【0148】
制御部9は、直流送電線路11から13の何れかに系統事故が発生した場合には、系統事故が発生した少なくとも1つの直流送電線路に流れる電流を、下記の手順に従い遮断する。ここでは、
図9に示すように、直流送電線路12に系統事故が生じた場合を仮定して説明する。上記の系統事故により、機械式断路器2−2と機械式断路器2A−2に事故電流I
Aが流れる。
【0149】
まず、変流器3−2が検出した事故電流I
Aの検出結果に基づいて、制御部9は、系統事故が発生したことを検出する。
【0150】
制御部9は、系統事故を検出すると、半導体遮断器4をオン状態に移行させて、系統事故が発生した直流送電線路12に対応する転流装置7−2を動作可能な状態(オン状態)に移行させる。これにより、結合点jを通り、転流装置7−2、機械式断路器2−2のこれらを一巡する閉回路が形成される。結合点jを通る閉回路に電流Iccが流れると、機械式断路器2−2に流れる事故電流I
Aが打ち消しあって、略ゼロ電流状態が生じる。
【0151】
上記の通り、系統事故が発生した直流送電線路12に属する機械式断路器2−2は、転流装置7−2を含む上記の閉回路内に存在する。機械式断路器2−2に流れていた事故電流I
Aが半導体遮断器4に転流されて、整流装置5−2を通る電流Icが流れる。このように機械式断路器2−2がゼロ電流状態になれば、機械式断路器2−2をオフ状態に遷移させることができる。
【0152】
次に、制御部9は、ゼロ電流状態になった機械式断路器2−2をオフ状態に移行させる。さらに、制御部9は、ゼロ電流状態になった機械式断路器2A−2をオフ状態に移行させて、その後、半導体遮断器4をオフ状態にする。半導体遮断器4をオフ状態にすることにより、半導体遮断器4の両端に発生するエネルギーは、アレスタ40で消費される。
【0153】
なお、制御部9は、事故電流I
Aが半導体遮断器4に転流された後に、転流装置7−2をオフ状態に遷移させる。
【0154】
上記の手順により、直流電流遮断装置1は、系統事故が発生した直流送電線路12に流れる電流を遮断することができる。
【0155】
なお、上記の動作は、他の直流送電線の場合も同様である。半導体遮断器4は、1つであり、各直流送電線に対して共通化されている。このように、直流送電線路11から13のいずれの直流送電線で系統事故が発生した場合でも、1つの半導体遮断器4によって、系統事故が起きた直流送電線を切り離すことができる。
【0156】
実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することの他、機械式断路器2A−1は、直流送電線路11において機械式断路器2−1に対して結合点jとは反対側に設けられる。機械式断路器2A−2は、直流送電線路12において機械式断路器2−2に対して結合点jとは反対側に設けられる。補助線路24は、直流送電線路11のなかで機械式断路器2A−1に対して結合点j1とは反対側に位置した合流点j5−1と、結合点j2とに電気的に接続される。補助線路25は、直流送電線路12のなかで機械式断路器2A−2に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j5−2と、結合点j2とに電気的に接続される。これにより、機械式断路器2A−1と2A−2と機械式断路器2−1とから2−2とを備える直流送電回路において、直流送電線路11または直流送電線路12に生じた事故電流I
Aを、補助線路24または補助線路25を含む経路に転流させることができる。
【0157】
なお、実施形態における第1ユニットは、半導体遮断器4であり、第2ユニットは、転流装置7であることにより、半導体遮断器4が、直流送電線路11または直流送電線路12に係る転流による電流を遮断することができる。
【0158】
(第6の実施形態)
図10を参照して、第6の実施形態に係る直流電流遮断装置について説明する。
図10は、実施形態に係る直流電流遮断装置の構成図である。
図1、
図9との相違点を中心に説明する。
【0159】
図10に示す直流電流遮断装置1は、機械式断路器2−1から2−3と、機械式断路器2A−1から2A−3と、変流器3−1から3−3と、半導体遮断器4と、整流装置5−1から5−3と、整流装置5Aと、転流装置7−1から7−3と、制御部9とを備える。
【0160】
補助線路21の第1端は、直流送電線路11のなかで機械式断路器2A−1に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−1(第1位置)に電気的に接続される。補助線路22の第1端は、直流送電線路12のなかで機械式断路器2A−2に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−2(第2位置)に電気的に接続される。補助線路23の第1端は、直流送電線路13のなかで機械式断路器2A−3に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−3(第3位置)に電気的に接続される。少なくとも補助線路21の第2端と、補助線路22の第2端と、補助線路23の第2端は、結合点j2(第2結合点)に電気的に接続される。
【0161】
また、補助線路24は、直流送電線路11のなかで機械式断路器2−1に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j5−1(第4位置)と、結合点j2とに電気的に接続される。補助線路25は、直流送電線路12のなかで機械式断路器2−2に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j5−2(第5位置)と、結合点j2とに電気的に接続される。補助線路26は、直流送電線路13のなかで機械式断路器2−3に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j5−3(第6位置)と、結合点j2とに電気的に接続される。
【0162】
機械式断路器2−1は、直流送電線路11において機械式断路器2A−1に対して結合点jとは反対側に設けられる。機械式断路器2−2は、直流送電線路12において機械式断路器2A−2に対して結合点jとは反対側に設けられる。機械式断路器2−3は、直流送電線路13において機械式断路器2A−3に対して結合点jとは反対側に設けられる。
【0163】
機械式断路器2A−1は、第1機械式断路器の一例であり、機械式断路器2A−2は、第2機械式断路器の一例であり、機械式断路器2A−3は、第3機械式断路器の一例である。機械式断路器2−1は、第4機械式断路器の一例であり、機械式断路器2−2は、第5機械式断路器の一例であり、機械式断路器2−3は、第6機械式断路器の一例である。
【0164】
実施形態において、共通補助線路20に半導体遮断器4と整流装置5Aとが設けられる位置は、結合点jと結合点j2との間である。なお、結合点j2は、補助線路21から26と、共通補助線路20とが電気的に接続される位置に配置される。
【0165】
実施形態の転流装置7は、例えば、前述の
図3に示した転流装置7A,7B,7Cを適用できる。なお、転流装置7は、その合流点j2側が合流点j3−2側に対して高電位になるように設けられている。
【0166】
ここで、実施形態の直流電流遮断装置1の作用について説明する。
図10に示すように、直流送電線路12に系統事故が生じた場合を仮定して説明する。上記の系統事故により事故電流IAが流れる。
【0167】
制御部9は、系統事故を検出すると、半導体遮断器4をオン状態に移行させて、系統事故が発生した直流送電線路12に対応する転流装置7−2を動作可能な状態(オン状態)に移行させる。これにより、結合点jを通り、転流装置7−2、整流装置5−2、機械式断路器2−2Aのこれらを一巡する閉回路が形成される。結合点jを通る閉回路に電流Iccが流れると、機械式断路器2−2と機械式断路器2A−2とに流れる事故電流IAが打ち消しあって、略ゼロ電流状態が生じる。
【0168】
上記の通り、系統事故が発生した直流送電線路12に属する機械式断路器2−2は、転流装置7−2を含む上記の閉回路内に存在する。機械式断路器2−2に流れていた事故電流IAが半導体遮断器4に転流されて、整流装置5−2を通る電流Icが流れる。このように機械式断路器2−2がゼロ電流状態になれば、機械式断路器2−2をオフ状態に遷移させることができる。
【0169】
次に、制御部9は、ゼロ電流状態になった機械式断路器2−2をオフ状態に移行させる。さらに、制御部9は、ゼロ電流状態になった機械式断路器2A−2をオフ状態に移行させて、その後、半導体遮断器4をオフ状態にする。半導体遮断器4をオフ状態にすることにより、半導体遮断器4の両端に発生するエネルギーは、アレスタ40で消費される。
【0170】
なお、制御部9は、事故電流IAが半導体遮断器4に転流され、機械式断路器2−2と機械式断路器2A−2をオフ状態に移行させた後に、転流装置7−2をオフ状態に遷移させる。
【0171】
上記の手順により、直流電流遮断装置1は、系統事故が発生した直流送電線路12に流れる電流を遮断することができる。なお、上記の動作は、他の直流送電線の場合も同様である。
【0172】
実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することの他、機械式断路器2A−1が第1機械式断路器の一例であり、機械式断路器2A−2が第2機械式断路器の一例であり、機械式断路器2−1が第4機械式断路器の一例であり、機械式断路器2−2が第5機械式断路器の一例であり、さらに、第1ユニットが転流装置7であり、第2ユニットが半導体遮断器4であることにより、転流装置7が、直流送電線路11または直流送電線路12に係る電流を転流させることができる。
【0173】
(第7の実施形態)
図11と
図12を参照して、第7の実施形態に係る直流電流遮断装置について説明する。
図11は、実施形態に係る直流電流遮断装置の構成図である。
図10との相違点を中心に説明する。
【0174】
図11に示す直流電流遮断装置1は、機械式断路器2B−1から2B−3と、機械式断路器2A−1から2A−3と、変流器3−1から3−3と、転流装置(C)7E−1から7E−3と、共振器(LC)8と、制御部9とを備える。
【0175】
第6の実施形態の事例との違いを整理する。実施形態の直流電流遮断装置1は、半導体遮断器(S)4と、整流装置5−1から5−3と、整流装置5Aと、補助線路24から26と、を備えずに、これに代えて、共振器8を備えている。共振器8は共振回路の一例である。また、機械式断路器2と、転流装置7の種別がそれぞれ異なる。
【0176】
共通補助線路20には、共振器8が設けられ、共振器8が結合点jとj2の間に接続されている。
【0177】
図12は、実施形態の共振器8の構成図である。
図12に示すように共振器8は、コンデンサ81とリアクトル82とを含む直列共振回路の一例である。コンデンサ81とリアクトル82とにより定まる周波数で共振する。
【0178】
図11に示すように、補助線路21には転流装置7E−1が設けられ、補助線路22には転流装置7E−2が設けられ、補助線路23には転流装置7E−3が設けられている。例えば、転流装置7E−1から7E−3は、前述の
図8(b)に示したフルブリッジ型の転流装置7Eで構成され、正負の電圧を出力可能に構成されている。転流装置7E−1から7E−3は、共振器8の電流振動を拡大するように動作する。
【0179】
例えば、機械式断路器2B−1から2B−3は、互いに同じ構造で構成されており、電流を遮断する機能を持つ遮断器である。機械式断路器2A−1から2A−3は、互いに同じ構造で構成されており、高耐圧特性を持つ断路器である。
【0180】
ここで、実施形態の直流電流遮断装置1の作用について説明する。
図11に示すように、直流送電線路12に系統事故が生じた場合を仮定して説明する。上記の系統事故により事故電流I
Aが流れる。
【0181】
制御部9は、前述したように系統事故を検出すると、系統事故が発生した直流送電線路12に対応する転流装置7E−2を動作可能な状態(オン状態)に移行させる。これにより、転流装置7E−2は、共振器8の共振電流を拡大可能になる。この場合、結合点jを通り、共振器8、転流装置7E−2、機械式断路器2B−2のこれらを一巡する閉回路が形成される。結合点jを通る閉回路に、共振による電流Iccが流れ、その電流Iccの振幅が拡大されると機械式断路器2B−2と機械式断路器2A−2とに流れる事故電流I
Aと打ち消しあって、略ゼロ電流状態が生じる。
【0182】
上記の通り、系統事故が発生した直流送電線路12に属する機械式断路器2B−2は、転流装置7E−2を含む上記の閉回路内に存在する。機械式断路器2B−2に流れていた事故電流IAが転流装置7E−2によって制限されて、転流装置7E−2を通る電流Icが流れる。このように機械式断路器2B−2がゼロ電流状態になれば、機械式断路器2B−2をオフ状態に遷移させることができる。
【0183】
次に、制御部9は、機械式断路器2B−2をオフ状態に移行させる。機械式断路器2B−2をオフ状態にすることにより機械式断路器2B−2の電気接点間に発生するエネルギーは、アレスタ202で消費される。
【0184】
制御部9は、機械式断路器2B−2をオフ状態に移行させ後、転流装置7E−2の動作状態を停止させる。
【0185】
最後に、制御部9は、ゼロ電流状態になった機械式断路器2A−2をオフ状態に移行させる。
【0186】
上記の手順により、直流電流遮断装置1は、系統事故が発生した直流送電線路12に流れる電流を遮断することができる。
【0187】
なお、上記の動作は、他の直流送電線の場合も同様である。共振器8は、1つであり、各直流送電線に対して共通化されている。これにより、共振器8を直流送電線ごとに設けることが不要になり、より簡素に構成することができる。
【0188】
また、直流電流遮断装置1は、1つの半導体遮断器4も含まずに構成されており、これに代わり追加されたものは、共振器8である。共振器8は、受動部品の組み合わせで構成されており、半導体遮断器4に比べるとより簡素に構成できる。
【0189】
なお、直流送電線路11から13のいずれの直流送電線で系統事故が発生した場合でも、系統事故が起きた直流送電線を切り離すことができる。
【0190】
実施形態によれば、直流電流遮断装置1は、第1の実施形態と同様の効果を奏することの他、少なくとも直流送電線路11と直流送電線路12とが結合点jで互いに電気的に接続される直流送電回路に設けられる。直流電流遮断装置1は、機械式断路器2B−1と2B−2と、補助線路21と、補助線路22と、共通補助線路20と、共振器8と、転流装置7−1と7−2と、を持つ。機械式断路器2B−1は、直流送電線路11に設けられる。機械式断路器2B−1は、直流送電線路12に設けられる。補助線路21は、直流送電線路11のなかで機械式断路器2B−1に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−1に電気的に接続される。補助線路22は、直流送電線路12のなかで機械式断路器2B−2に対して結合点jとは反対側に位置した合流点j3−2に電気的に接続される。共通補助線路20は、補助線路21および補助線路22が電気的に接続される結合点j2と、結合点jとの間に電気的に接続される。共振器8は、共通補助線路20に設けられ、振動する信号を出力する。転流装置7−1と7−2は、直流送電線路11または補助線路21である第1線路と、直流送電線路12または補助線路22である第2線路とにそれぞれ設けられる。転流装置7−1と7−2は、所定の条件が満たされた場合に直流送電線路11または直流送電線路12を流れる電流を転流させる。これにより、転流装置7−1と7−2は、共振器8から供給される信号に基づいて生成された電圧が所定の電圧を超えた場合に転流を開始させることができる。
【0191】
なお、制御部9は、機械式断路器2Bと、転流装置7について、電流を遮断する状態のオフ状態と、電流を流す状態のオン状態とに、それぞれの状態をそれぞれ制御する。制御部9は、直流送電線路11または直流送電線路12に系統事故が生じるまでの定常動作時には、機械式断路器2Bをオン状態、転流装置7をオフ状態として動作させる。制御部9は、系統事故が発生した場合には、転流装置7−1または7−2を動作させ共振器8と転流装置7−1または7−2を含む電流閉回路内に存在し、系統事故が発生した直流送電線路に属する機械式断路器2に流れる電流の略ゼロ電流状態を作りだし、略ゼロ電流状態になった機械式断路器2B−1または2B−2をオフ状態に移行させることにより、系統事故が起きた直流送電線を切り離すことができる。
【0192】
少なくとも上記の何れかの実施形態によれば、直流電流遮断装置は、少なくとも第1直流送電線路と第2直流送電線路とが第1結合点で互いに電気的に接続される直流送電回路に設けられる。直流電流遮断装置は、第1機械式断路器と、第2機械式断路器と、第1補助線路と、第2補助線路と、共通補助線路と、第1ユニットと、第2ユニットと、を持つ。第1機械式断路器は、前記第1直流送電線路に設けられる。第2機械式断路器は、前記第2直流送電線路に設けられる。第1補助線路は、前記第1直流送電線路のなかで前記第1機械式断路器に対して前記第1結合点とは反対側に位置した第1位置に電気的に接続される。第2補助線路は、前記第2直流送電線路のなかで前記第2機械式断路器に対して前記第1結合点とは反対側に位置した第2位置に電気的に接続される。共通補助線路は、前記第1補助線路および前記第2補助線路が電気的に接続される第2結合点と、前記第1結合点との間に電気的に接続される。第1ユニットは、前記共通補助線路に設けられる。第2ユニットは、前記第1直流送電線路または前記第1補助線路である第1線路と、前記第2直流送電線路または前記第2補助線路である第2線路とにそれぞれ設けられる。前記第1ユニットおよび前記第2ユニットの一方は、少なくとも1つの半導体スイッチング素子を有して電流を遮断可能な半導体遮断器である。前記第1ユニットおよび前記第2ユニットの他方は、所定の条件が満たされた場合に前記第1直流送電線路または前記第2直流送電線路を流れる電流を、前記半導体遮断器に流すように転流させる転流装置である。これにより、複数の直流送電線の結合点において、何れかの直流送電線に流れる事故電流を遮断するための直流電流遮断装置を、より簡素に構成することができる。
【0193】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0194】
なお、上記の実施形態では、直流送電回路の正極側に機械式断路器2を設けた事例について説明したが、正極側に代えて負極側に機械式断路器2を設けること、あるいは、正極と負極の双方に遮断する機械式断路器2を設けること、を制限するものではない。