(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る電柱管理システムが移動体と組み合わせて用いられる際の構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る電柱管理システムにおいて、電柱の異常が判定される前の動作を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る電柱管理システムにおいて、電柱の認識をする動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る電柱管理システムにおいて、電柱の認識が行われる撮像データ(a)、電柱の地面と平行である断面形状(b)の例である。
【
図5】撮像データ中における電柱と道路との間の位置関係の例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る電柱管理システムにおいて、電柱の傾斜角の認識を行う手法を模式的に示す図である。
【
図7】実施形態に係る電柱管理システムにおいて、測定結果を地図上で示す場合の表示の一例である。
【
図8】従来の状態変化管理システムが移動体と組み合わせて用いられる際の構成を示す図である。
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る電柱管理システム1が実際に用いられる際の形態を示す図である。ここで、この電柱管理システム1は、
図8の構成と同様に、移動体(車両)Aに搭載されて路上を移動可能な部分である携帯端末10と、携帯端末10とは離間して配置されネットワーク(無線通信)を介して接続されたサーバシステム50とを具備する。ここで、測定の対象となる構造物(対象物)は、例えば電柱とされる。
【0013】
ここで、携帯端末10においては、前記の携帯端末110と同様に、周囲の撮像を行い2次元画像データを得る撮像部(撮像手段)11、自己の位置をGPS(Global Positioning System)信号を受信することによって認識する位置情報取得部(位置認識手段)12、時刻を認識する日時取得部(日時認識手段)13、自己の姿勢を認識するための姿勢認識手段として機能する3軸加速度センサ14、3軸地磁気センサ15が設けられる。また、携帯端末10全体の制御を行うCPU16が用いられ、CPU16はルータ17を介して外部のサーバシステム50との間の通信を高速で行うことができる。これによって、
図8の構成と同様に、撮像部11によって得られた撮像データ、この撮像データが取得された際の携帯端末10(移動体M)の位置情報、姿勢情報、日時をサーバシステム50側に送信することができる。この際、サーバシステム50は、取得されたこれらのデータを、リアルタイムで認識することもできる。
【0014】
サーバシステム50においては、
図8の構成と同様にCPU51、記憶部(記憶手段)52、表示部(表示手段)53が設けられる。記憶部52は、前記のように様々な時点で取得された撮像データ、これに対応する携帯端末10の位置情報、姿勢情報、日時等を記憶する。
【0015】
携帯端末10側の撮像部11としては、撮像部11の周囲全体の撮像をすることができる360度カメラ(例えば半天球カメラ)を用いることができる。これによって、対象物となる電柱が携帯端末10の周囲に存在した場合には、これを確実に撮像することができる。ただし、周囲の対象物を確実に撮像することができ、画像データとして取り込むことができる限りにおいて、撮像部11として、任意のものを用いることができる。
【0016】
更に、この携帯端末10には、レーザー光を発して対象物に照射すると共にその反射光を受光して対象物までの距離を認識するレーザー測距部(測距手段)18、移動体Mの走行距離を認識するオドメータ19が用いられる。CPU16は、これらを用いて、対象物までの距離、あるいはより厳密には、対象物上の各点までの距離を認識することができ、この情報も、サーバシステム50側に送信することができる。
【0017】
ここで、特許文献1に記載の状態変化管理システム100とは異なり、この電柱管理システム1においては、対象物が電柱に限定され、この電柱の形態的な特徴に基づき、CPU16が、取得された撮像データ中における対象物を自動的に認識する。この際、撮像データ中に複数の電柱が存在しても、各電柱を認識することができ、この認識の際には、ユーザの操作が不要である。その後、認識された電柱の傾きあるいはその経時変化が認識され、傾き量やその経時変化に応じて、異常の有無が判定される。
【0018】
以下では、この際のCPU16の動作について説明する。
図2は、この動作を示すフローチャートの一例である。ここでは、撮像部11が新たに撮像データを入手し、この際に、この撮像データ中に存在すると認識された電柱の異常の有無を判定する場合の動作が示されている。この判定は撮像データが取得される度に行われ、その度に撮像データ、その判定結果、この際の携帯端末10の位置情報、姿勢情報、日時等は、記憶部52に記憶される。このため、CPU51、16は、最新のこれらのデータと、過去に得られたこれらのデータとを比較することができる。
【0019】
まず、CPU16は、撮像部11からこの新たな撮像データを入手し(S1)、この撮像データに対して、以降の処理が行われる。まず、CPU16は、この撮像データ中に、電柱が存在しているか、あるいは存在する場合には、存在する全ての電柱を認識する(S2)。
【0020】
図3は、このように電柱を認識する工程(S2)の詳細を示すフローチャートである。この工程においては、新たに入手した撮像データと共に、上記のレーザー測距部18による計測結果も用いられる。また、撮像部11として半天球カメラを用いた場合には、半天球が2次元に投影変換されたために実際の画像から湾曲して表示された2次元画像が得られるが、以降の処理を行うに際しては、この投影変換が逆変換されて通常の2次元画像とされたものが用いられるものとする。
【0021】
ここでは、まず、地面から所定の高さまで延伸する構造物が存在するか否かが認識される(S21)。ここでは、2次元画像における鉛直方向下方から上側に所定の高さまで連続的に延伸する構造物が存在するか否かが認識される。
図4(a)は、撮像データ中においてこうした構造物が存在した場合の一例である。こうした構造物が複数存在する場合には、その各々を画像中で認識する。この構造物は、電柱と認識される候補となる。このため、こうした構造物が全く認められなかった場合(S21:No)には、得られた画像データの中には電柱は全く存在しないと認められ(S22)、電柱を認識する工程(S2)は終了する。
【0022】
上記のように電柱と認識される候補の構造物が存在した場合には、この構造物に対して、地面からのある高さにおけるこの構造物の地面と平行な断面が円弧形状であるか否かが判定される(S23)。ここで、円弧形状である、とは、この断面がある一定の誤差以内の精度で円弧形状と認められたことを意味する。この判定のためには、撮像データだけでなく、レーザー測距部18によるこの構造物の表面の各点までの距離の測定結果が用いられる。
図4(b)は、このように断面形状が円弧形状であると認識された場合を示す。ここで、レーザー測距部18は図中下側からこの測定を行うものとする。この構造物の断面が円弧形状でない(円弧形状の断面を具備しない)と認められた場合(S23:No)には、この構造物は電柱ではないと認識される(S24)。
【0023】
この構造物の断面が円弧形状であると認められた場合(S23:Yes)には、次に、この構造物の車道(道路)からの距離が特定の範囲(例えば50cm以上2m以内)にあるか否かが判定される(S25)。ここで、車道は、撮像データ中において地面と平行に、略平行とされた2つの線分で仕切られた領域として認識される。また、CPU16は、前記の通り携帯端末10の現在の位置、姿勢を認識することができるため、車道あるいはその延伸方向と携帯端末10との間の位置関係を認識することができるため、撮像データ中における車道を認識することができる。ここでは、この構造体のこの線分からの距離が判定される。
図5は、撮像データにおけるこの判定が行われる状態を示す図である。この場合においても、撮像データと共に、レーザー測距部18によるこの構造物の表面の各点までの距離の測定結果が用いられる。この距離が上記の範囲内にない場合には、この構造体は電柱ではないと認識される(S24)。
【0024】
この距離が上記の範囲内にある場合には、この構造物は、電柱であると認識される(S26)。その後、CPU16は、撮像データが得られた際に位置情報取得部(位置認識手段)12によって認識された移動体Mの位置情報、3軸加速度センサ14、3軸地磁気センサ15(姿勢認識手段)によって認識された移動体M(撮像部11)の空間的姿勢、レーザー測距部(測距手段)18によって認識された当該構造体(電柱)までの距離を用いることによって、この電柱の位置情報を算出することができる(S27)。
【0025】
上記の工程(S23、S25、S26、S27)は、電柱の候補と認識された全ての構造物(S21)の各々について行われる。全ての対象について判定が終了したら(S28:Yes)、電柱を認識する工程(S2)は終了する。
【0026】
図2のフローチャートにおいて、電柱を認識する工程(S2)が終了し、電柱が全く認識されなかった場合(S3:No)には、CPU16は、この旨をサーバシステム50側に送信し、CPU51は、その旨を表示部53で表示させる(S4)。あるいは、特許文献1に記載のシステムと同様に携帯端末10側にも表示部を設けてもよく、この場合には、この旨がこの表示部でも表示される。ユーザは、この旨を確認した場合には、電柱が視野に入る位置に移動体Mを移動させるように指示を出す、あるいは移動体Mを直接操作することができる。この場合には、上記の撮像データを取得した後の作業は終了し、次回の撮像データが取得された後に同様の作業が行われる。
【0027】
電柱が認識された場合(S3:Yes)には、CPU16は、撮像データ及びその結果をサーバシステム50側に送信し、CPU51は、その旨を表示部53で表示させる(S5)。
【0028】
その後、CPU16は、認識された電柱の状態を認識する(S6)。この認識も、撮像データやレーザー測距部18によるこの構造物の表面の各点までの距離の測定結果を用いて行われる。ここで測定される項目としては、まず、電柱の傾斜(地面からの傾斜角)がある。
図6は、撮像データにおいてこの測定をする状況を模式的に示す図である。ここでは、地面Gと認識された部分でありかつ電柱Pと交差する部分を含む水平方向の領域における電柱Pを挟んだ2点(A、B)が設定される。一方、電柱Pの断面の中心上にあり地面Gと認識された部分と垂直な方向において離間した2点(C、D)が設定される。線分ABと線分CDとの間のなす角度θの90°からの偏差が、この電柱Pの傾斜角であると認識される。
【0029】
次に、CPU16は、この結果に基づき、この電柱に異常があるか否かを判定する(S7)。この際、この傾斜角が、ある閾値よりも大きかった場合に、この電柱に異常があると認識することができる。
【0030】
あるいは、上記のように、CPU16は、電柱が認識された場合にはその位置を認識する(S27)ため、異なる時点で認識された電柱において、この位置情報が同一である電柱は、同一の電柱であると推定される。地形によっては、実際には電柱に異常がない場合においても、撮像データにおいて線分ABと線分CDとの間のなす角度が90°とはならない場合もあるが、上記の構成においては、記憶部52を参照し、過去に認識された電柱と新たに認識された電柱との間の対応関係を認識することができるため、この場合には、過去に同様にして算出されたこの角度とこのようにして新たに算出された角度とを比較し、この差がある閾値よりも大きかった(変化が大きかった)場合に、この電柱に異常が発生したと認識することができる。
【0031】
この際、比較対象となる過去の撮像データは、記憶部52に記憶されたもののうち、撮像データを取得した際の携帯端末10の位置、姿勢が同一又は近かったものを選択して用いることができる。この点については特許文献1に記載の技術と同様である。また、このように同一の電柱に対する過去のデータと最新のデータを比較するためには、過去の撮像データと、これに対応する位置情報、姿勢情報を測定の度に記憶部52に記憶させることが好ましい。ただし、撮像データ自身は記憶させず、上記の角度のような数値化された測定結果と電柱との対応関係を識別可能な形で記憶させ、これを用いて上記の比較を行ってもよい。
【0032】
上記の例では、電柱の傾斜角が大きい、あるいはその変化が大きい場合に、この電柱に異常があると判定したが、その他の項目についての評価を行うこともできる。例えば、電柱に損傷(ひび割れ等)がある場合には、その大きさ(深さ、広がり等)を撮像データ、あるいはレーザー測距部18による測定結果から認識することが可能である(S6)。その後、この損傷の度合いを示す大きさが、閾値よりも大きい、あるいはこの損傷が過去のデータと比べて大きくなった場合には、同様にこの電柱に異常が発生したと認識することができる(S7)。以上のように過去のデータと最新のデータを比較することにより、電柱の傾斜又は損傷の進行状況や経年変化を確認することができ、電柱の修理や交換の頻度等の判断基準の選定に利用することができる。
【0033】
また、電柱自身ではなく、電柱に接続された送電線も、撮像データ中において、電柱に連結した細線(直線又は曲線)として認識することができる。送電線の高さが所定の値よりも小さい、あるいはこの高さの変動が大きい場合には、異常があると認識することができる。あるいは、送電線の曲率半径が所定の値よりも小さい、あるいは過去のデータと比べて曲率半径の変動が大きい場合には異常があると認識することもできる。すなわち、認識された電柱について数値化されて認識された状態の変動が大きかった場合に、この電柱に異常が発生したと認識することができる。この状態として、傾斜角、ひび割れ以外にも設定が可能である。
【0034】
上記の判定は、認識された全ての電柱に対して行われ、全ての電柱に対しての判定が行われたら(S8:Yes)、CPU16は、撮像データ及びその結果をサーバシステム50側に送信し、CPU51は、その旨を表示部53で表示させる(S9)。同様の表示を、携帯端末10側の表示部で行ってもよい。この判定結果も、記憶部52に記憶させることができる。
【0035】
また、CPU51は、記憶部52に記憶された地図のデータ、あるいはネットワークを介して入手した地図のデータを用いて、表示部53において様々な箇所の地図を表示させることができる。前記の通り、CPU51は、上記のように各電柱の位置を認識することができるため、表示された地図中においてこの電柱の位置を表示し、かつ異常が認められた電柱を強調表示することができる。また、アイコン化されて表示された電柱をユーザが画面中で選択し、アイコンを選択することによって、上記の判定結果を表示させることができる。
図7は、このように表示部53で表示される画像の一例である。ここでは、認識された電柱Pが地図中でアイコン化されて表示されている。異常が認められた電柱Pを強調表示する(例えば正常なものと異なる色にする、サイズを大きくする、点滅する等)ことによって、特に、電柱が多く存在する場合における各々の状態や位置関係をより容易かつ適正に認識することができる。なお、このような表示を、携帯端末10側で行ってもよい。
【0036】
また、例えば異常と判定された電柱Pをクリックすることによって、具体的な異常の内容、例えば傾斜角の変化が認められた、損傷が認められた、送電線に異常が認められた等、を表示させることができる。あるいは、異常が認められなかった電柱においても、その傾斜角等、認識された状態(S6)を表示させることもできる。尚、異常が認められない電柱であっても、異常と判定される閾値に対して近い値に達している場合には、注意喚起のための警告表示を行ってもよい。
【0037】
上記の例では、CPU16が電柱を認識し(S2)、この電柱の状態を数値化して認識し(S6)、この値によって電柱の異常の有無を認識した。すなわち、CPU16は、撮像データ中における構造物の中から電柱を認識する電柱認識手段、この電柱の状態を認識する状態認識手段、認識された状態によって電柱の異常の有無を判定する判定手段として機能していた。しかしながら、CPU16の代わりにサーバシステム50側のCPU51がこれらを行ってもよい。また、電柱認識手段、状態認識手段、判定手段として、個別のプロセッサを用いてもよく、CPU16、CPU51がこれらを適宜分担してもよい。
【0038】
また、上記の携帯端末10において、撮像を行うための撮像部(撮像手段)11、測距を行うレーザー測距部(測距手段)18、移動体Mの位置や姿勢を求めるための位置情報取得部(位置認識手段)12、3軸加速度センサ(姿勢認識手段)14、3軸地磁気センサ(姿勢認識手段)15は、移動体M側に搭載する必要があるが、携帯端末10における他の構成要素は、これらを制御して上記のような測定が可能である限りにおいて、任意である。例えば、これらの構成要素が全てサーバシステム側で制御されてもよい。
【0039】
このように、上記の電柱管理システム1を用いて、電柱の異常の有無を判定することができる。この際、ユーザによる電柱の指定は不要となるため、ユーザの負担を大きく軽減することができる。特に、単一のシステムを用いて多くの電柱を管理する場合において、この効果は顕著である。
【0040】
なお、上記の例では、電柱を認識するために、高さ(S21)、断面形状(S2)、車道からの距離(S23)が用いられた 。しかしながら、電柱の幾何学的特徴に応じ、これらを設定することが可能である。例えば、異なる高さの2箇所における断面形状を用いる、あるいは送電線と認められる構造物が接続されているか否か、等を用いてこの認識を行うことが可能である。
【0041】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。