特許第6845368号(P6845368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6845368LNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法、運用訓練装置、及び運用訓練プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6845368
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】LNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法、運用訓練装置、及び運用訓練プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   G09B9/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-148233(P2020-148233)
(22)【出願日】2020年9月3日
【審査請求日】2020年9月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500564507
【氏名又は名称】株式会社オメガシミュレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱 正造
(72)【発明者】
【氏名】村田 直紀
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】塙 恭一
【審査官】 田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−092895(JP,A)
【文献】 特開平08−320646(JP,A)
【文献】 特開2020−091475(JP,A)
【文献】 特開平09−031479(JP,A)
【文献】 特開平11−092774(JP,A)
【文献】 特開平06−102156(JP,A)
【文献】 中国実用新案第205609056(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00− 9/56
G09B 17/00−19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視部、故障発生部、及び制御部を含む運用訓練装置を用いたLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法であって、
前記監視部が、LNG受入サンプリングシステムを用いたLNGの受入検査で発生しうる異常事態の発生条件、及び前記異常事態の発生条件が成立した場合に発生させる故障を予め対応付けたシナリオを参照しながら、LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現するプロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視する監視ステップと、
監視中の工程が前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記故障発生部が、前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させる故障発生ステップと、
前記制御部が、前記受入検査の工程を実行しながら、前記故障発生部が発生させた前記プロセスモデルの構成要素の故障後における前記プロセスモデルの状態を表すプロセス情報を通知し、訓練員に対して前記プロセス情報から推定される前記異常事態の復旧操作を行わせる運用ステップと、
を含むLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法。
【請求項2】
前記プロセスモデルが、気化したLNGを受け入れる無水型サンプリングホルダーにおける外層の容積変化の模擬に対応した
請求項1記載のLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法。
【請求項3】
前記運用ステップにおいて、前記制御部が訓練員の操作内容に従って前記プロセスモデルを制御すると共に、前記プロセスモデルの制御に伴う前記プロセス情報の変化を訓練員に通知しながら、実際のLNG受入サンプリングシステムにおける前記受入検査の全工程を実行する運用を行う
請求項1又は請求項2記載のLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法。
【請求項4】
前記監視ステップにおいて、前記監視部が訓練指導員によって選択された複数の前記シナリオを参照しながら、前記プロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視し、
監視中の工程が少なくとも1つの前記シナリオにおける前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記故障発生ステップにおいて、前記故障発生部が前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させる
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法。
【請求項5】
LNG受入サンプリングシステムを用いたLNGの受入検査で発生しうる異常事態の発生条件、及び前記異常事態の発生条件が成立した場合に発生させる故障を予め対応付けたシナリオを参照しながら、LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現するプロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視する監視部と、
前記監視部で監視中の工程が前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記監視部からの指示に従い、前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させる故障発生部と、
前記受入検査の工程を実行しながら、前記故障発生部によって発生させた前記プロセスモデルの構成要素の故障後における前記プロセスモデルの状態を表すプロセス情報を通知し、訓練員に対して前記プロセス情報から推定される前記異常事態の復旧操作を要求する制御を行う制御部と、
を備えたLNG受入サンプリングシステムの運用訓練装置。
【請求項6】
前記プロセスモデルが、気化したLNGを受け入れる無水型サンプリングホルダーにおける外層の容積変化の模擬に対応した
請求項5記載のLNG受入サンプリングシステムの運用訓練装置。
【請求項7】
前記制御部は、訓練員の操作内容に従って前記プロセスモデルを制御すると共に、前記プロセスモデルの制御に伴う前記プロセス情報の変化を訓練員に通知しながら、実際のLNG受入サンプリングシステムにおける前記受入検査の全工程を実行する制御を行う
請求項5又は請求項6記載のLNG受入サンプリングシステムの運用訓練装置。
【請求項8】
前記監視部は、訓練指導員によって選択された複数の前記シナリオを参照しながら、前記プロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視し、
監視中の工程が少なくとも1つの前記シナリオにおける前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記故障発生部は、前記監視部からの指示に従い、前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させる
請求項5〜請求項7の何れか1項に記載のLNG受入サンプリングシステムの運用訓練装置。
【請求項9】
コンピュータに、
LNG受入サンプリングシステムを用いたLNGの受入検査で発生しうる異常事態の発生条件、及び前記異常事態の発生条件が成立した場合に発生させる故障を予め対応付けたシナリオを参照しながら、LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現するプロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視し、
監視中の工程が前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させ、
前記受入検査の工程を実行しながら、発生させた前記プロセスモデルの構成要素の故障後における前記プロセスモデルの状態を表すプロセス情報を通知し、訓練員に対して前記プロセス情報から推定される前記異常事態の復旧操作を行わせる処理を実行させる
LNG受入サンプリングシステムの運用訓練プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法、運用訓練装置、及び運用訓練プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、LNG(Liquefied Natural Gas)受入サンプリングシステムの例が開示されている。
【0003】
LNG受入サンプリングシステムは、購入したLNGの成分を分析し、購入したLNGが購入仕様に合致しているか否かを検査するシステムである。
【0004】
購入したLNGの一部を格納するサンプリングホルダーの違いにより、LNG受入サンプリングシステムには有水型と無水型が存在する。
【0005】
図5は、有水型LNG受入サンプリングシステムの概略構成例を示す図である。有水型LNG受入サンプリングシステムでは、受入配管1からサンプリングライン2を介してサンプリングしたLNGを気化器3で気化する。気化したLNGは、水ライン9を通じて供給された水が貯められている有水型サンプリングホルダー4内に一旦捕集され、充填ライン5を経由して捕集したLNGを充填ポンプ6によりサンプリングシリンダー7内に充填する。サンプリングシリンダー7は着脱可能となっており、サンプリングシリンダー7を分析室に持ち込んで、購入したLNGの組成分析を行う。
【0006】
また、LNGの受入中に外部からの自然入熱によって気化したLNGは、BOGライン8を通じて受入元のタンクに戻される。有水型サンプリングホルダー4の上部には攪拌器10が取り付けられている。攪拌器10はモーター11とプロペラ12を含んで構成され、プロペラ12を回転させて有水型サンプリングホルダー4内の空間を攪拌することで、有水型サンプリングホルダー4内に捕集されたLNGの組成を均一化し、サンプリングシリンダー7に組成分析用のLNGを充填する。
【0007】
一方、図6は、無水型LNG受入サンプリングシステムの概略構成例を示す図である。
【0008】
無水型LNG受入サンプリングシステムは、受入配管1、サンプリングライン2、気化器3、サンプリングシリンダー7、BOGライン8、無水型サンプリングホルダー13、N送入ライン17、真空ライン18、真空ポンプ19、1次サンプリングガス送入ライン20、サンプリングガス送入バルブ21、2次サンプリングガス送入ライン22、充填バルブ23、N送入バルブ24、N排出ライン25、N排出バルブ26、真空バルブ27を含んで構成される。なお、Nは窒素ガスを表す。
【0009】
また、無水型サンプリングホルダー13の内部は、ブラダ膜16によって外層14と内層15に分離されている。
【0010】
無水型LNG受入サンプリングシステムでは、受入配管1からサンプリングライン2を介してサンプリングしたLNGを気化器3で気化する。その上で、サンプリングガス送入バルブ21を「開」に制御することにより、気化したLNGを1次サンプリングガス送入ライン20から無水型サンプリングホルダー13の外層14内に一旦受け入れる。このとき、N排出ライン25のN排出バルブ26は「開」となっていて、ブラダ膜16は外層14に捕集したLNGのガス圧により収縮する。
【0011】
外層14内に一定量のLNGが捕集されたところでサンプリングガス送入バルブ21を閉じると共に、N送入ライン17のN送入バルブ24を開いてブラダ膜16の内層15にNを送入する。その後、再びN送入バルブ24を閉じ、N排出バルブ26を開いて内層15内のNを排出する操作を繰り返すことによりブラダ膜16の伸張と収縮を行う。ブラダ膜16の伸張と収縮により外層14に捕集されたLNGが攪拌され、外層14内におけるLNGの組成が均一化する。
【0012】
無水型サンプリングホルダー13でのLNGの攪拌が終了すると、サンプリングガス送入バルブ21及びN排出バルブ26を閉じ、N送入バルブ24を開いて内層15内にNガスを送入し、ブラダ膜16を伸張させる。この状態において充填バルブ23を開ければ、外層14内のLNGが、2次サンプリングガス送入ライン22を介してサンプリングシリンダー7内に充填される。
【0013】
無水型LNG受入サンプリングシステムで新たなLNGの受入検査を行う場合に備えて無水型サンプリングホルダー13を洗浄する必要がある。この場合、各種バルブを閉めた状態で真空バルブ27を開き、無水型サンプリングホルダー13内の気体を真空ポンプ19で吸引することにより無水型サンプリングホルダー13を真空状態にして、吸引した気体を真空ライン18から排出する。また、サンプリングシリンダー7についても真空ポンプ19で真空状態を作り出すことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−31479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
こうしたLNG受入サンプリングシステムの制御は自動化されているが、例えばLNGやNの僅かな圧力変化及び温度変化等により、作業員による制御室からの操作が必要になることがある。また、自動制御だけではサンプリングシリンダー7や無水型サンプリングホルダー13が規定の真空状態に達しないこともあるため、作業員が制御室から真空ポンプ19等を操作して、サンプリングシリンダー7及び無水型サンプリングホルダー13を規定通りの真空状態にすることもある。
【0016】
このように、受け入れたLNGをサンプリングシリンダー7に充填するまでの手順は複雑であり、各種バルブの操作量や開閉タイミング等を規定にあわせるためには、熟練した操作が要求される。
【0017】
したがって、作業員の操作技能を向上させるためには、運用訓練装置を用いた操作訓練が必要とされる。
【0018】
しかしながら、これまでLNG受入サンプリングシステムの動作をコンピュータ上で模擬的に再現した運用訓練装置は存在しない。しかも、他のプラントやシステムでも用いられる従来の運用訓練装置を用いた操作訓練では、熟練した操作技能を有する訓練指導員がインストラクターとなり、操作訓練を受けている訓練員であるトレーニーが運用訓練装置を通じてインストラクターの設定した課題に対応した操作を行い、インストラクターがトレーニーの操作を指導することが行われてきた。
【0019】
また、従来の運用訓練装置では、操作訓練の実施時間にあわせてインストラクターが拘束されることになるため、操作訓練に参加するインストラクターの調整が難しく、かつ、インストラクターとなるような操作技能を有する作業員がこの間に実際の現場の作業を行うことができなくなるという問題も生じる。
【0020】
本発明は上記事実を鑑みてなされたものであり、LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現したプロセスモデルの挙動に応じた異常事態を発生させることができるLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法、運用訓練装置、及び運用訓練プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、第1態様に係るLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法は、監視部、故障発生部、及び制御部を含む運用訓練装置を用いたLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法であって、前記監視部が、LNG受入サンプリングシステムを用いたLNGの受入検査で発生しうる異常事態の発生条件、及び前記異常事態の発生条件が成立した場合に発生させる故障を予め対応付けたシナリオを参照しながら、LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現するプロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視する監視ステップと、監視中の工程が前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記故障発生部が、前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させる故障発生ステップと、前記制御部が、前記受入検査の工程を実行しながら、前記故障発生部が発生させた前記プロセスモデルの構成要素の故障後における前記プロセスモデルの状態を表すプロセス情報を通知し、訓練員に対して前記プロセス情報から推定される前記異常事態の復旧操作を行わせる運用ステップと、を含む。
【0022】
第2態様に係るLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法は、第1態様に係る運用訓練方法において、前記プロセスモデルが、気化したLNGを受け入れる無水型サンプリングホルダーにおける外層の容積変化の模擬に対応する。
【0023】
第3態様に係るLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法は、第1態様又は第2態様に係る運用訓練方法の前記運用ステップにおいて、前記制御部が訓練員の操作内容に従って前記プロセスモデルを制御すると共に、前記プロセスモデルの制御に伴う前記プロセス情報の変化を訓練員に通知しながら、実際のLNG受入サンプリングシステムにおける前記受入検査の全工程を実行する運用を行う。
【0024】
第4態様に係るLNG受入サンプリングシステムの運用訓練方法は、第1態様〜第3態様の何れかの態様に係る運用訓練方法の監視ステップにおいて、前記監視部が訓練指導員によって選択された複数の前記シナリオを参照しながら、前記プロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視し、監視中の工程が少なくとも1つの前記シナリオにおける前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記故障発生ステップにおいて、前記故障発生部が前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させる。
【0025】
第5態様に係るLNG受入サンプリングシステムの運用訓練装置は、LNG受入サンプリングシステムを用いたLNGの受入検査で発生しうる異常事態の発生条件、及び前記異常事態の発生条件が成立した場合に発生させる故障を予め対応付けたシナリオを参照しながら、LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現するプロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視する監視部と、前記監視部で監視中の工程が前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記監視部からの指示に従い、前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させる故障発生部と、前記受入検査の工程を実行しながら、前記故障発生部によって発生させた前記プロセスモデルの構成要素の故障後における前記プロセスモデルの状態を表すプロセス情報を通知し、訓練員に対して前記プロセス情報から推定される前記異常事態の復旧操作を要求する制御を行う制御部と、を備える。
【0026】
第6態様に係るLNG受入サンプリングシステムの運用訓練装置は、第5態様に係る運用訓練装置において、前記プロセスモデルが、気化したLNGを受け入れる無水型サンプリングホルダーにおける外層の容積変化の模擬に対応する。
【0027】
第7態様に係るLNG受入サンプリングシステムの運用訓練装置は、第5態様又は第6態様に係る運用訓練装置において、前記制御部が、訓練員の操作内容に従って前記プロセスモデルを制御すると共に、前記プロセスモデルの制御に伴う前記プロセス情報の変化を訓練員に通知しながら、実際のLNG受入サンプリングシステムにおける前記受入検査の全工程を実行する制御を行う。
【0028】
第8態様に係るLNG受入サンプリングシステムの運用訓練装置は、第5態様〜第7態様の何れかの態様に係る運用訓練装置において、前記監視部が、訓練指導員によって選択された複数の前記シナリオを参照しながら、前記プロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視し、監視中の工程が少なくとも1つの前記シナリオにおける前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記故障発生部は、前記監視部からの指示に従い、前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させる。
【0029】
第9態様に係るLNG受入サンプリングシステムの運用訓練プログラムは、コンピュータに、LNG受入サンプリングシステムを用いたLNGの受入検査で発生しうる異常事態の発生条件、及び前記異常事態の発生条件が成立した場合に発生させる故障を予め対応付けたシナリオを参照しながら、LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現するプロセスモデルを用いて行われている訓練での前記受入検査の工程を監視し、監視中の工程が前記異常事態の発生条件を満たした場合、前記プロセスモデルの構成要素に対して前記異常事態に対応した故障を発生させ、前記受入検査の工程を実行しながら、発生させた前記プロセスモデルの構成要素の故障後における前記プロセスモデルの状態を表すプロセス情報を通知し、訓練員に対して前記プロセス情報から推定される前記異常事態の復旧操作を行わせる処理を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0030】
第1態様、第5態様、及び第9態様によれば、LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現したプロセスモデルの挙動に応じた異常事態を発生させることができる、という効果を有する。
【0031】
第2態様、及び第6態様によれば、LNG受入サンプリングシステムに特有のプロセス情報を再現することができる、という効果を有する。
【0032】
第3態様、及び第7態様によれば、LNGの受入からサンプリングシリンダーへのLNGの充填までの一連のLNG受入サンプリングシステムの各工程に対応した操作訓練を行うことができる、という効果を有する。
【0033】
第4態様、及び第8態様によれば、複数の異常事態の発生に対応した復旧操作を習得することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】運用訓練装置の機能構成例を示す図である。
図2】シナリオに基づく運用訓練装置の動作例を示す図である。
図3】運用訓練装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
図4】運用訓練処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】有水型LNG受入サンプリングシステムの概略構成例を示す図である。
図6】無水型LNG受入サンプリングシステムの概略構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0036】
図1は、本実施形態に係る運用訓練装置30の機能構成例を示す図である。図1に示すように運用訓練装置30は、シミュレータモデル31、監視部32、及び故障発生部33を備える。
【0037】
シミュレータモデル31は、訓練指導員(以降、「インストラクター」という)による各種設定、及び訓練員(以降、「トレーニー」という)からの操作指示を受け付けてLNG受入サンプリングシステムの各工程を模擬的に実行し、工程の実行中に発生したイベントや模擬したLNG受入サンプリングシステムの状態(「プロセスモデル35の挙動」とともいう)をインストラクター及びトレーニーに通知する。トレーニーは、操作に伴って変化する、シミュレータモデル31から通知されたLNG受入サンプリングシステムの状態を確認しながら、LNGの受入検査の全工程が終了するまで、LNG受入サンプリングシステムで発生する各種イベントに対応した操作を行う。
【0038】
LNG受入サンプリングシステムが無水型の場合、受入検査の工程は、例えば系内パージ工程、ガス捕集開始工程、ガス捕集終了工程、サンプリングシリンダー7の真空引き及びパージ工程、シリンダー充填工程、並びに、シリンダーブロック工程で構成される。
【0039】
系内パージ工程は受入サンプリングシステムの事前準備を行う工程であり、例えば真空漏れチェックやブラダ膜16の動作チェックが含まれる。系内パージ工程はトレーニーからのサンプリング準備指示により実行される。
【0040】
ガス捕集開始工程は、LNG受入サンプリングシステムで実際にLNGの受入を開始する工程であり、トレーニーからのガス捕集開始指示により実行される。
【0041】
ガス捕集終了工程は、LNG受入サンプリングシステムへのLNGの受入を停止する工程であり、トレーニーからのガス捕集終了指示により実行される。
【0042】
サンプリングシリンダー7の真空引き及びパージ工程は、サンプリングシリンダー7にLNGを充填するための準備を行う工程であり、サンプリングシリンダー7にLNGを供給するライン等に異常がなければ、サンプリングシリンダー7にLNGを充填するシリンダー充填工程、及びサンプリングシリンダー7へのLNGの充填を停止するシリンダーブロック工程が行われる。サンプリングシリンダー7の真空引き及びパージ工程からシリンダーブロック工程は、トレーニーからのシリンダー充填指示により実行される。
【0043】
シミュレータモデル31は制御部34とプロセスモデル35を含み、制御部34とプロセスモデル35を用いて上記の処理を実行する。
【0044】
制御部34は、トレーニーの操作に従ってLNG受入サンプリングシステムにおける各工程の処理を忠実に実行する機能を有する。また、制御部34は、トレーニーの操作に対応した指示を後述するプロセスモデル35に通知する。プロセスモデル35に通知される指示には、LNG受入サンプリングシステムの構成要素の状態を変化させる指示、例えば特定のバルブの開閉指示や特定のポンプの起動停止指示が含まれる。
【0045】
プロセスモデル35は、制御部34の指示に従ったLNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現する。プロセスモデル35が模擬的に再現するLNG受入サンプリングシステムの方式に制約はなく、有水型であっても無水型であってもよく、また、その他の方式のLNG受入サンプリングシステムであってもよい。したがって、LNG受入サンプリングシステムとは、各方式のLNG受入サンプリングシステムを総称した表現である。
【0046】
1つのプロセスモデル35には、何れか1つの方式のLNG受入サンプリングシステムの各構成要素の動作を再現する模擬モデルが含まれる。例えばプロセスモデル35が無水型LNG受入サンプリングシステムの動作を模擬的に再現する場合、プロセスモデル35は例えば無水型サンプリングホルダー13、真空ポンプ19、及び充填バルブ23といった無水型LNG受入サンプリングシステムに含まれる各構成要素の動作を再現する。
【0047】
プロセスモデル35は制御部34から指示を受け付けると、制御部34から指示されたLNG受入サンプリングシステムの構成要素に対して、指示された操作を指示された操作量だけ行う。制御部34からの指示が、例えば充填バルブ23に対する開指示であれば、充填バルブ23を指示された操作量だけ開けて、操作量に応じた流量でLNGをサンプリングシリンダー7に充填する。
【0048】
このように、プロセスモデル35では、制御部34の指示に従ってLNG受入サンプリングシステムにおける状態が変化することになる。プロセスモデル35によって模擬されるLNG受入サンプリングシステムの状態のことを「プロセスモデル35の状態」と呼び、プロセスモデル35の状態はプロセス情報としてプロセスモデル35から制御部34に通知される。プロセス情報には、LNG受入サンプリングシステムの各箇所における温度、圧力、真空度、及び流量といった物理量の他、LNG受入サンプリングシステムの運用状態や構成要素の故障を通知するアラーム等の状態情報が含まれる。
【0049】
例えば、プロセスモデル35が無水型LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現している場合、プロセスモデル35は、ブラダ膜16の伸縮状況やそれに伴う無水型サンプリングホルダー13内の内層15や外層14の容積変化を再現し、プロセス情報として制御部34に通知する。ブラダ膜16の動きは、内層15と外層14の差圧、及び差圧によって変形したブラダ膜16が元の形状に戻ろうとする復元力によって定義されるが、プロセスモデル35はこうしたブラダ膜16の動きを忠実に再現し、内層15や外層14の容積変化をプロセス情報として制御部34に通知する。
【0050】
また、気化器3の内部における上段、中段、下段にはそれぞれLNGを気化するためのヒーターが設置されているが、プロセスモデル35は、各々のヒーターのオンオフ操作に応じて生じる熱負荷をプロセス情報として制御部34に通知する。
【0051】
したがって、制御部34は、プロセスモデル35から受け付けたプロセス情報を運用訓練装置30の後述する出力ユニット49に出力して、LNG受入サンプリングシステムの状況をトレーニー及びインストラクターに通知する。
【0052】
トレーニーは制御部34から通知されたプロセス情報を参考にして、プロセスモデル35で起きている事象を把握し、事象に対応した操作を行う訓練を行う。
【0053】
すなわち、シミュレータモデル31は、実際のLNG受入サンプリングシステムを制御する設備制御盤のシミュレータとして機能する。
【0054】
監視部32は、少なくとも1つのシナリオ36を備え、シミュレータモデル31で行われているプロセスモデル35を用いたLNG受入サンプリングシステムによるLNGの受入検査における各工程の実行状況を監視し、インストラクターがシナリオ36に予め設定した条件に従い、プロセスモデル35の構成要素に対して異常事態を発生させる。
【0055】
インストラクターは、LNG受入サンプリングシステムを用いたLNGの受入検査で発生しうる異常事態の発生条件と、異常事態の発生条件が成立した場合にプロセスモデル35内のLNG受入サンプリングシステムに発生させる故障とを対応付けた複数のシナリオ36を予め生成し、監視部32に登録しておく。その上で、インストラクターは監視部32に登録した複数のシナリオ36の中から少なくとも1つのシナリオ36を選択する。なお、異常事態の発生条件と対応付けられる故障には、故障発生対象となるLNG受入サンプリングシステムの構成要素、及び故障の種類が定義されている。
【0056】
図2はシナリオ36に基づく運用訓練装置30の動作例を示す図である。
【0057】
シナリオ36には異常事態の発生条件と異常事態の発生条件が成立した場合に発生させる故障が対応付けられている。したがって、シナリオ36は、異常事態の発生条件が成立したか否かを判定するため、シミュレータモデル31で実行される受入検査の工程の実行状況を監視する。
【0058】
異常事態の発生条件の設定内容に制約はないが、一例として工程の進捗状況を異常事態の発生条件に設定する例について説明する。
【0059】
制御部34で実行する受入検査の各工程には予め番号が一意に付与されており(以降、「工程番号」という)、制御部34は、実行中の工程番号を更新する。したがって、監視部32は制御部34が更新する工程番号を参照し、工程番号によって表される制御部34で実行中の工程が、異常事態の発生条件としてシナリオ36に設定されている工程番号によって表される工程に到達した場合に、異常事態の発生条件と対応付けられた故障の発生指示を故障発生部33に通知する。
【0060】
このように、監視部32は、インストラクターによって選択されたシナリオ36に基づき、シナリオ36に設定されている異常事態の発生条件が成立した場合、成立した異常事態の発生条件と対応付けられている動作を実行する機能を備える。
【0061】
なお、異常事態の発生条件を工程の進捗状況ではなく、LNG受入サンプリングシステムの各箇所における温度、圧力、真空度、及び流量といった物理量、及びトレーニーの操作手順等で定義してもよいことは言うまでもない。
【0062】
故障発生部33は、プロセスモデル35におけるLNG受入サンプリングシステムを構成する構成要素毎に、構成要素の故障を発生させる機能を備える。
【0063】
具体的には構成要素がバルブであればバルブの漏れ、ポンプであればポンプの動作が停止するポンプトリップや能力低下、並びに、各種ガスの流路であるラインであればガス漏れ、外部からラインへの気体の流入、及びライン内圧力上昇といった故障を構成要素毎に発生させる機能を有する。
【0064】
したがって、例えば監視部32から特定のポンプ(ポンプAとする)に対する故障の発生指示を受け付けた場合、故障発生部33はプロセスモデル35におけるLNG受入サンプリングシステムのポンプAに、故障の発生指示で通知された故障の種類に対応した故障を発生させる(図2参照)。
【0065】
これにより、プロセスモデル35が故障発生によって変化したプロセス情報を制御部34に通知することで、故障後のプロセス情報がトレーニー及びインストラクターに示される。
【0066】
以上の動作により運用訓練装置30は、プロセス情報に基づき、LNG受入サンプリングシステムのどこでどのような異常事態が発生したのかを推定する能力や、推定した異常事態の復旧操作を身に着けさせる訓練をトレーニーに提供することができる。
【0067】
なお、故障発生部33で発生可能な故障項目は例えばインストラクターによって登録される。したがって、インストラクターは、運用訓練装置30でトレーニーに対するLNG受入サンプリングシステムの操作訓練を実行する前に、訓練に必要な故障項目を予め故障発生部33に登録しておく。
【0068】
図1に示した運用訓練装置30は、コンピュータ40を用いて構成される。図3は、運用訓練装置30における電気系統の要部構成例を示す図である。
【0069】
コンピュータ40は、図1に示した運用訓練装置30の各部の処理を担うCPU(Central Processing Unit)41、運用訓練プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)42、CPU41の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)43、不揮発性メモリ44、及び入出力インターフェース(I/O)45を備える。CPU41、ROM42、RAM43、不揮発性メモリ44、及びI/O45はバス46を介して各々接続されている。
【0070】
不揮発性メモリ44は、不揮発性メモリ44に供給される電力が遮断されたとしても、記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。不揮発性メモリ44は、必ずしもコンピュータ40に内蔵されている必要はなく、例えばメモリカードのようにコンピュータ40に着脱される記憶装置であってもよい。不揮発性メモリ44には、例えばシナリオ36や故障発生部33で発生可能な故障項目が記憶される。
【0071】
I/O45には、例えば通信ユニット47、入力ユニット48、及び出力ユニット49が接続される。
【0072】
通信ユニット47は図示しない通信回線に接続され、図示しない通信回線に接続される外部装置と通信を行う通信プロトコルを備える。図示しない通信回線には、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)といった公知の通信回線が含まれる。図示しない通信回線は有線であっても無線であってもよい。
【0073】
入力ユニット48は、インストラクターやトレーニーからの操作を受け付けてCPU41に通知する装置であり、例えばボタン、タッチパネル、キーボード、ポインティングデバイス、及びマウスが用いられる。
【0074】
出力ユニット49は、CPU41によって処理された情報を出力する装置であり、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、及び映像をスクリーンに投影するプロジェクタのような表示デバイスや、文字及び図形を用紙等の記録媒体に形成する画像形成ユニットが含まれる。
【0075】
プロセス情報、及びプロセスモデル35におけるLNG受入サンプリングシステムの状況は出力ユニット49に出力される。
【0076】
なお、運用訓練装置30は、I/O45に接続される図3に例示したユニットを必ずしも備える必要はなく、状況に応じて必要となるユニットを備えればよい。例えば、クラウドサービスを利用して運用訓練装置30を構築した場合、運用訓練装置30は無人のデータセンターに設置される。このような場合、インストラクター及びトレーニーは、データセンターとは異なる他の場所に設置された図示しない操作端末と運用訓練装置30を図示しない通信回線で接続し、図示しない操作端末経由でプロセスモデル35におけるLNG受入サンプリングシステムの操作及び状況の確認を行うことになる。したがって、運用訓練装置30の入力ユニット48及び出力ユニット49はなくても構わない。
【0077】
次に、本実施形態に係る運用訓練装置30の動作について詳細に説明する。
【0078】
図4は、運用訓練装置30でLNG受入サンプリングシステムに対する運用訓練を開始した場合に、CPU41によって実行される運用訓練処理の流れの一例を示すフローチャートである。運用訓練処理を規定する運用訓練プログラムは、例えば運用訓練装置30のROM42に予め記憶されている。運用訓練装置30のCPU41は、ROM42に記憶される運用訓練プログラムを読み込み、運用訓練処理を実行する。
【0079】
なお、運用訓練処理の開始に先立ち、インストラクターが運用訓練装置30に登録されている複数のシナリオ36の中から、少なくとも1つのシナリオ36を選択しているものとする。また、運用訓練装置30には、インストラクターが選択したシナリオ36で発生が予定されている故障項目が登録されている。
【0080】
ステップS10において、CPU41は、予め定めた工程シーケンスに従って受入検査の工程を実行する。
【0081】
ステップS20において、CPU41は、プロセスモデル35におけるLNG受入サンプリングシステムの状況、プロセス情報、及び工程の進捗状況の少なくとも1つを取得し、選択されたシナリオ36に設定されている異常事態の発生条件を満たしているか否かを判定する。異常事態の発生条件を満たしていない場合にはステップS30に移行する。
【0082】
ステップS30において、CPU41は、トレーニーから入力ユニット48を通じて何らかの操作を受け付けたか否かを判定する。トレーニーから何らかの操作を受け付けた場合、ステップS40に移行する。
【0083】
ステップS40において、CPU41は、トレーニーから受け付けた操作に対応した処理を行い、プロセスモデル35におけるLNG受入サンプリングシステムの状態を変化させ、ステップS60に移行する。このLNG受入サンプリングシステムの状態の変化によりプロセス情報も変化するため、ステップS60において、CPU41は、プロセス情報の更新を行い、出力ユニット49を通じて更新後のプロセス情報をインストラクター及びトレーニーに通知する。
【0084】
ステップS30の判定処理において、トレーニーから何れの操作も受け付けていないと判定された場合にもステップS60に移行する。プロセス情報にはLNG受入サンプリングシステムに対する操作が行われなくても、例えば温度や気圧のように時間の経過に伴って変化するものもあるため、この場合、ステップS60において、CPU41はトレーニーからの操作ではなく時間の経過に伴い変化したプロセス情報の更新を行う。
【0085】
一方、ステップS20の判定処理で異常事態の発生条件を満たしていると判定された場合にはステップS50に移行する。
【0086】
ステップS50において、CPU41は、異常事態の発生条件に対応付けられている故障を、プロセスモデル35におけるLNG受入サンプリングシステムに発生させる。この場合、ステップS60において、CPU41は故障の発生に伴い変化したプロセス情報の更新を行う。
【0087】
ステップS70において、CPU41は、例えばガス捕集開始指示のように次の工程の開始指示の有無により、実行中の工程の処理が終了したか否かを判定する。実行中の工程が終了していない場合にはステップS10に移行して、同じ工程内の処理を継続する。また、実行中の工程が終了した場合には、ステップS80に移行する。
【0088】
ステップS80において、CPU41は、受入検査の全工程を終了したか否かを判定する。受入検査の全工程を終了していない場合にはステップS90に移行する。
【0089】
ステップS90において、CPU41は実行中の工程を次の工程に移行させた後、ステップS10に戻り、新たな工程を実行する。
【0090】
ステップS80の判定処理で受入検査の全工程が終了したと判定されるまでステップS10〜S90の処理を繰り返し実行することで、運用訓練装置30は、実際のLNG受入サンプリングシステムにおける受入検査の全工程の操作をトレーニーに訓練させる。また、運用訓練装置30は、プロセスモデル35の挙動に応じた異常事態を発生させながら、トレーニーに異常事態の復旧操作を訓練させる。
【0091】
ステップS80の判定処理で受入検査の全工程が終了したと判定された場合、図4に示す運用訓練処理を終了する。
【0092】
なお、受入サンプリングシステムはできるだけ小型であることが要求されるため、受入サンプリングシステムの容積は小さくなる傾向がある。特に無水型受入サンプリングシステムの場合、真空状態で運転することから無水型サンプリングホルダー13やサンプリングシリンダー7に充填されているLNGの分子数が、大気圧で運転した場合よりも極めて少なくなることがある。このような場合、無水型サンプリングホルダー13やサンプリングシリンダー7に送入されるLNGの流量が若干変化するだけでも無水型サンプリングホルダー13やサンプリングシリンダー7に充填される分子数の変化、すなわち圧力の変化に大きな影響を与える。そして、この圧力の変化が更に大きなLNGの流量の変化を引き起こすという悪循環が発生するため、無水型LNG受入サンプリングシステムの状態を計算すると計算結果に不連続な箇所が生じるなど、プロセスモデル35が不安定な状態になることがある。
【0093】
したがって、運用訓練装置30ではLNG受入サンプリングシステムの状態計算(すなわち、プロセス情報の計算)の高速化により、こうした問題点を改善している。
【0094】
また、無水型受入サンプリングシステムは真空状態を作り出す必要があるため、真空度を計算するには外部からの空気の混入状況を考慮する必要がある。したがって、運用訓練装置30においても、指定した量の空気を外部から混入させる機能を有する。具体的には、プロセスモデル35ではサンプリングシリンダー7の接続部に仮想バルブを設け、この仮想バルブの開閉により空気の混入による真空度の低下といった異常事態を再現する。
【0095】
このように、運用訓練装置30では、受入サンプリングシステムに特有の再現困難な物理的現象をプロセスモデル35でモデル化した上で、受入サンプリングシステムの再現を行っている。
【0096】
また、運用訓練装置30は、インストラクターが予め選択したシナリオ36における異常事態の発生条件に基づいて異常事態を発生させることができる。したがって、トレーニーの操作訓練に必ずしもインストラクターは必要でなく、トレーニーの操作訓練に参加可能なインストラクターがいない場合であっても、トレーニーだけで操作訓練を行うことができる。
【0097】
以上、実施形態を用いて運用訓練装置30の一態様について説明したが、開示した運用訓練装置30の形態は一例であり、運用訓練装置30の形態は実施形態に記載の範囲に限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も開示の技術的範囲に含まれる。例えば、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、図4に示した運用訓練処理の順序を変更してもよい。
【0098】
また、1台の運用訓練装置30に方式の異なる複数のLNG受入サンプリングシステムに対応したプロセスモデル35を構築し、訓練対象となるLNG受入サンプリングシステムの方式に対応したプロセスモデル35を選択させるようにしてもよい。この場合、1台の運用訓練装置30で、複数の方式のLNG受入サンプリングシステムにおける操作を訓練することができる。
【0099】
また、本開示では、一例として運用訓練処理をソフトウェアで実現する形態について説明した。しかしながら、図4に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はPLD(Programmable Logic Device)に実装し、ハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、運用訓練処理をソフトウェアで実現した場合と比較して処理の高速化が図られる。
【0100】
このように、運用訓練装置30のCPU41を例えばASIC、FPGA、PLD、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPU(Foating Point Unit)といった特定の処理に特化した専用のプロセッサに置き換えてもよい。
【0101】
また、運用訓練装置30の処理は、1つのCPU41によって実現される形態の他、複数のCPU41、又はCPU41とFPGAとの組み合わせというように、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで実行してもよい。更に、運用訓練装置30の処理は、運用訓練装置30の筐体の外部に位置する、物理的に離れた場所に存在するプロセッサとの協働によって実現されるものであってもよい。
【0102】
実施形態では、運用訓練装置30のROM42に運用訓練プログラムが記憶されている例について説明したが、運用訓練プログラムの記憶先はROM42に限定されない。本開示の運用訓練プログラムは、コンピュータ40で読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば運用訓練プログラムをCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)及びDVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)のような光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、運用訓練プログラムを、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカードのような可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。ROM42、不揮発性メモリ44、CD−ROM、DVD−ROM、USB、及びメモリカードは非一時的(non−transitory)記憶媒体の一例である。
【0103】
更に、運用訓練装置30は、通信ユニット47を通じて外部装置から運用訓練プログラムをダウンロードし、ダウンロードした運用訓練プログラムを、例えば不揮発性メモリ44に記憶してもよい。この場合、運用訓練装置30のCPU41は、外部装置からダウンロードした運用訓練プログラムを読み込んで運用訓練処理を実行する。
【符号の説明】
【0104】
1・・・受入配管、2・・・サンプリングライン、3・・・気化器、4・・・有水型サンプリングホルダー、5・・・充填ライン、6・・・充填ポンプ、7・・・サンプリングシリンダー、8・・・BOGライン、9・・・水ライン、10・・・攪拌器、11・・・モーター、12・・・プロペラ、13・・・無水型サンプリングホルダー、14・・・外層、15・・・内層、16・・・ブラダ膜、17・・・N送入ライン、18・・・真空ライン、19・・・真空ポンプ、20・・・1次サンプリングガス送入ライン、21・・・サンプリングガス送入バルブ、22・・・2次サンプリングガス送入ライン、23・・・充填バルブ、24・・・N送入バルブ、25・・・N排出ライン、26・・・N排出バルブ、27・・・真空バルブ、30・・・運用訓練装置、31・・・シミュレータモデル、32・・・監視部、33・・・故障発生部、34・・・制御部、35・・・プロセスモデル、36・・・シナリオ、40・・・コンピュータ、41・・・CPU、42・・・ROM、43・・・RAM、44・・・不揮発性メモリ、45・・・I/O、46・・・バス、47・・・通信ユニット、48・・・入力ユニット、49・・・出力ユニット
【要約】
【課題】LNG受入サンプリングシステムの動きを模擬的に再現したプロセスモデルの挙動に応じた異常事態を発生させる。
【解決手段】運用訓練装置30は、LNG受入サンプリングシステムを用いたLNGの受入検査で発生しうる異常事態の発生条件、及び異常事態の発生条件が成立した場合に発生させる故障を予め対応付けたシナリオ36を参照しながら、プロセスモデル35を用いた受入検査の工程を監視し、受入検査の工程が異常事態の発生条件を満たした場合、異常事態に対応した故障を発生させると共に故障発生後におけるプロセスモデル35の状態をトレーニーに通知し、トレーニーに対して異常事態の復旧操作を行わせる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6