特許第6845401号(P6845401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6845401冷却装置およびその冷却装置を備えた冷却システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845401
(24)【登録日】2021年3月2日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】冷却装置およびその冷却装置を備えた冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20210308BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20210308BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   F28D15/02 D
   F28D15/02 G
   F28D15/02 101N
   H01L23/46 B
   H05K7/20 W
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-206118(P2017-206118)
(22)【出願日】2017年10月25日
(65)【公開番号】特開2019-78483(P2019-78483A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2018年3月30日
【審判番号】不服2019-12018(P2019-12018/J1)
【審判請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】513171493
【氏名又は名称】株式会社SMACO技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】509047959
【氏名又は名称】株式会社AOI技研
(74)【代理人】
【識別番号】100093894
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 清
(72)【発明者】
【氏名】贄川 潤
(72)【発明者】
【氏名】柳田 智基
【合議体】
【審判長】 林 茂樹
【審判官】 川上 佳
【審判官】 山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−252646(JP,A)
【文献】 特表2016−539454(JP,A)
【文献】 特開平11−121958(JP,A)
【文献】 特開平5−315781(JP,A)
【文献】 特開2007−263544(JP,A)
【文献】 特開2005−276646(JP,A)
【文献】 特開平7−94629(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0211277(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D15/02, H01L23/46, H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体からの熱を受ける受熱面を有する受熱板と、液体の冷媒が流通する冷媒流通通路を備えた冷媒流通部とを有し、該冷媒流通部は前記受熱板の隣または該受熱板の端縁部に近接して設けられ、前記受熱板には該受熱板の前記受熱面に沿って1本または複数本のヒートパイプの大部分の領域部位が配設され、該ヒートパイプの前記受熱面に沿って配設された前記大部分の領域部位は作動液の流れる通路が互いに間隔を介して複数配置された間隔配置通路部位を有して前記受熱板の前記受熱面に沿った板面のほぼ全領域に設けられ、前記受熱板に配設されたヒートパイプはその両端のうち少なくとも一端側が前記受熱板から外へはみ出すはみ出し部位と成しており、該はみ出し部位は前記受熱板から該受熱板と前記冷媒流通部との前記近接部位を通して前記受熱板から直進的にはみ出して前記受熱板と前記冷媒流通部との前記近接部位を介して前記冷媒流通部に通され、該冷媒流通部の前記冷媒流通通路は前記受熱板からはみ出した前記ヒートパイプの前記はみ出し部位を直進的に横切り該はみ出し部位における前記ヒートパイプをその一側面がわとその反対側となる側面がわとの両側から挟持する態様の流通通路と成すとともに、前記冷媒冷却通路は該冷媒流通通路の長手方向中央部で折り返された略U字状の折り返し通路と成して該折り返し通路の互いに対向する面によって前記はみ出し部位における前記ヒートパイプが挟持されておりヒートパイプが前記冷媒流通部に熱的に接続されて該冷媒流通部と前記受熱板とが直接的または前記ヒートパイプを介して結合した一体部品と成しており、前記発熱体の熱が前記受熱板の前記受熱面を介して前記ヒートパイプに伝熱されて該熱が前記冷媒流通部の前記冷媒流通通路によって前記ヒートパイプを挟んだ両側から該冷媒流通通路を流通する液体の冷媒により冷却されることにより前記発熱体が冷却されるように構成したことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記冷媒流通部は複数の貫通孔が板状部材の板面方向に沿って並設形成された多孔板部材を有し、該多孔板部材が略U字形状に折り曲げられて該多孔板部材の前記貫通孔により前記冷媒流通通路が略U字状の折り返し通路に形成され該冷媒流通通路に液体の冷媒を流通させることによりヒートパイプの前記冷媒流通部側へのはみ出し部位における前記ヒートパイプを前記冷媒流通通路によって前記両側から挟持して前記液体の冷媒により冷却する構成と成していることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記受熱板の受熱面が該受熱板の表面に形成され、該受熱板とは反対側の裏面側に該裏面と間隔を介してヒートパイプ挟持板が設けられ、該ヒートパイプ挟持板と前記受熱板との前記間隔にヒートパイプが挟持されて配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記受熱板にはヒートパイプを配設するための溝が形成され、該溝に前記ヒートパイプが配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の冷却装置。
【請求項5】
前記受熱板にはヒートパイプを配設するための孔が形成され、該孔に前記ヒートパイプが配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記ヒートパイプは全長の7割以上が受熱板に配設されて残りの長さが冷媒流通部に配設されていることを特徴する請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記ヒートパイプは断面が略楕円形状または略長方形状の偏平形状に形成され、該偏平形状の長径方向が受熱板の面方向と略平行となるように前記ヒートパイプが配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の冷却装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれか一つの冷却装置を備え、該冷却装置の外部には該冷却装置の冷媒流通部に流通させる冷媒を冷却するための冷媒冷却装置が熱的に接続されていることを特徴とする冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の発熱体を冷却するために用いられる冷却装置およびその冷却装置を備えた冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内に多数の電子機器が配設されたデータセンター等においては、例えば室内を空冷により冷却するといったような方法より電子機器全体を冷却しているところが多い。データセンター等において、電子機器から発せられる熱量(熱エネルギ)は膨大であり、そのデータ処理能力の向上に伴いますます電子機器から発せられる熱量が大きくなることから、電子機器の冷却効率の向上が課題となっている。
【0003】
そこで、空冷に変わって水冷により電子機器の冷却を行うことも試みられており、その効果が高いことは確認されている。水冷により電子機器の冷却を行うシステムとしては、例えば図8(a)、(b)に示されるように、発熱体である電子部品実装基板1の上側に、受熱面2を有する例えば銅製の受熱板(コールドプレート)3(3a,3b,3c)を設けて電子部品実装基板1を冷却する冷却システムが提案されている。
【0004】
このシステムにおいて、受熱板3には、例えば図9に示されるように冷媒通路4(斜線部分、参照)を配設し、その冷媒通路4に、図8に示されているチラー7等の冷媒冷却機から水等の冷媒(通常は水であり、以下の説明では水とする)を通して冷却する構成と成している。なお、図8において、符号5(斜線部分、参照)は冷媒流通管、符号6は循環ポンプをそれぞれ示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−6957号公報
【特許文献2】特開2010−212533号公報
【特許文献3】特開2017−33267号公報
【特許文献4】特開2003−179375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図9に示したような水冷方式の受熱板3を設けて形成される図8に示したような冷却システムにおいては、受熱板3のほぼ全面に設けた冷媒通路4に水を通すために、受熱板3を有する冷却装置が重くなるといった問題があった。また、蛇行状に配設されている長い冷媒通路4に水を通すためには、例えば循環ポンプ6により水を送るための大きな動力が必要となり、冷却システムの大型化や高コスト化の問題もあった。そして、何よりも水冷方式を適用した受熱板3を有する冷却システムにおいては、冷媒通路4を含む水路で水の漏洩が発生した場合に、その水が電子機器に付着したりすると、短絡事故やシステム停止等、膨大な被害も考えられる、といった問題があった。
【0007】
なお、受熱板3の面内の温度を均一に保ち、冷却効率を向上させるために、マイクロチャンネルと呼ばれる非常に細い溝を受熱板3に形成したり、衝突噴流の構成を設けたり、といった技術改良も試みられているが、このような技術改良を行うためには構成が複雑になって、その分だけコストが高くなるといった問題が生じる。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、軽量でコストが安く、水漏れ等の危険性も極めて少ない安全で使いやすい冷却装置と該冷却装置を備えた冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明の冷却装置は、発熱体からの熱を受ける受熱面を有する受熱板と、液体の冷媒が流通する冷媒流通通路を備えた冷媒流通部とを有し、該冷媒流通部は前記受熱板の隣または該受熱板の端縁部に近接して設けられ、前記受熱板には該受熱板の前記受熱面に沿って1本または複数本のヒートパイプの大部分の領域部位が配設され、該ヒートパイプの前記受熱面に沿って配設された前記大部分の領域部位は作動液の流れる通路が互いに間隔を介して複数配置された間隔配置通路部位を有して前記受熱板の前記受熱面に沿った板面のほぼ全領域に設けられ、前記受熱板に配設されたヒートパイプはその両端のうち少なくとも一端側が前記受熱板から外へはみ出すはみ出し部位と成しており、該はみ出し部位は前記受熱板から該受熱板と前記冷媒流通部との前記近接部位を通して前記受熱板から直進的にはみ出して前記受熱板と前記冷媒流通部との前記近接部位を介して前記冷媒流通部に通され、該冷媒流通部の前記冷媒流通通路は前記受熱板からはみ出した前記ヒートパイプの前記はみ出し部位を直進的に横切り該はみ出し部位における前記ヒートパイプをその一側面がわとその反対側となる側面がわとの両側から挟持する態様の流通通路と成すとともに、前記冷媒冷却通路は該冷媒流通通路の長手方向中央部で折り返された略U字状の折り返し通路と成して該折り返し通路の互いに対向する面によって前記はみ出し部位における前記ヒートパイプが挟持されておりヒートパイプが前記冷媒流通部に熱的に接続されて該冷媒流通部と前記受熱板とが直接的または前記ヒートパイプを介して結合した一体部品と成しており、前記発熱体の熱が前記受熱板の前記受熱面を介して前記ヒートパイプに伝熱されて該熱が前記冷媒流通部の前記冷媒流通通路によって前記ヒートパイプを挟んだ両側から該冷媒流通通路を流通する液体の冷媒により冷却されることにより前記発熱体が冷却されるように構成した構成をもって課題を解決するための手段としている。
【0010】
また、第2の発明の冷却装置は、前記第1の発明の構成に加え、前記冷媒流通部は複数の貫通孔が板状部材の板面方向に沿って並設形成された多孔板部材を有し、該多孔板部材が略U字形状に折り曲げられて該多孔板部材の前記貫通孔により前記冷媒流通通路が略U字状の折り返し通路に形成され該冷媒流通通路に液体の冷媒を流通させることによりヒートパイプの前記冷媒流通部側へのはみ出し部位における前記ヒートパイプを前記冷媒流通通路によって前記両側から挟持して前記液体の冷媒により冷却する構成と成していることを特徴とする
【0011】
さらに、第の発明の冷却装置は、前記第1または第2の発明の構成に加え、前記受熱板の受熱面が該受熱板の表面に形成され、該受熱板とは反対側の裏面側に該裏面と間隔を介してヒートパイプ挟持板が設けられ、該ヒートパイプ挟持板と前記受熱板との前記間隔にヒートパイプが挟持されて配設されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、第の発明の冷却装置は、前記第1乃至第のいずれか一つの発明の構成に加え、前記受熱板にはヒートパイプを配設するための溝が形成され、該溝に前記ヒートパイプが配設されていることを特徴とする。さらに、第の発明の冷却装置は、前記第1乃至第のいずれか一つの発明の構成に加え、前記受熱板にはヒートパイプを配設するための孔が形成され、該孔に前記ヒートパイプが配設されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、第の発明の冷却装置は、前記第1乃至第のいずれか一つの発明の構成に加え、前記前記ヒートパイプは全長の7割以上が受熱板に配設されて残りの長さが冷媒流通部に配設されていることを特徴とする。
【0014】
さらに、第の発明の冷却装置は、前記第1乃至第のいずれか一つの発明の構成に加え、前記ヒートパイプは断面が略楕円形状または略長方形状の偏平形状に形成され、該偏平形状の長径方向が受熱板の面方向と略平行となるように前記ヒートパイプが配設されていることを特徴とする。
【0015】
さらに、第の発明の冷却システムは、前記第1乃至第のいずれか一つの発明の冷却装置を備え、該冷却装置の外部には該冷却装置の冷媒流通部に流通させる冷媒を冷却するための冷媒冷却装置が熱的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の冷却装置は、発熱体からの熱を受ける受熱面を有する受熱板に、該受熱板の板面に沿ってヒートパイプが配設されている構成であり、そのヒートパイプに受熱機能を持たせた受熱板を有することを特徴とするものである。ヒートパイプ内部は少量の作動液が入っているもののほぼ空洞であるために、従来例で示したように受熱板に水管を設ける場合のように受熱板が重くならず、冷却装置の軽量化が可能である。そのため、例えばデータセンター等のサーバー等に適用することを想定した場合にも、冷却装置の軽量化により、付帯する設備や建屋構造等においてコスト低減等を図ることができる。
【0017】
また、本発明の冷却装置は、受熱板には水管等を設けないため、水等の漏洩の心配は殆ど無く、万が一ヒートパイプの作動液の漏洩が生じても水管等からの漏洩と異なり、被害を最小限に抑えることができる。
【0018】
さらに、本発明の冷却装置は、水管を用いた冷却装置と異なり、ポンプ等により水を送るための大きな動力は全く必要なく、システムの軽量化、低コスト化、省エネルギー化を可能とすることができる。また、ポンプ等により水管に水を送ることにより生じるエロージョンコロージョンにより水管等が経年劣化するといったことを低減でき、長期信頼性が高く、受熱板側においてはメンテナンスフリーをほぼ実現できる。
【0019】
そして、本発明においては、受熱板からはみ出したヒートパイプの一端側または両端側が、受熱板の隣または該受熱板の端縁部に近接した冷媒流通通路に熱的に接続されて、ヒートパイプ(前記の如く受熱機能を持たせたヒートパイプ)により受熱した発熱体の熱を、冷媒流通通路を流れる液体の冷媒によって冷却することにより前記発熱体を迅速に冷却することができる。なお、冷媒流通通路には冷媒を流通させることになるが、従来例のように受熱板の板面のほぼ全領域に敷設される水管に水を通す場合等と異なり、ヒートパイプの一端側または両端側を冷却するために冷媒を流通させればよいので、大きな動力源は不要であり、軽量化も可能であるし、エロージョンコロージョン等による管路劣化も非常に少ない。
【0020】
さらに、本発明の冷却装置は、冷流通部と前記受熱板とが直接的または前記ヒートパイプを介して結合した一体部品と成しているので、取り扱いもしやすくできる。
【0021】
そして、本発明の冷却システムは、その優れた冷却装置を備え、冷却装置の外部に、該冷却装置の冷媒流通部に流通させる冷媒を冷却するための冷媒冷却装置を熱的に接続することにより、簡単な構成で電子機器等の発熱体を迅速、かつ、良好に冷却することができ、軽量で、コストの安い冷却システムを構築することができる。
【0022】
また、本発明において、冷却装置のヒートパイプの全長の7割以上を受熱板に配設し、残りの長さを冷媒流通部に配設することにより、受熱板に配設するヒートパイプの長さの割合を大きくすることによって効率的に冷却が可能となる上に、冷却装置のより一層の軽量化や冷却システムのより一層の軽量化を図ることができる。また、冷却システムに要する動力費用も大幅に低減できる。
【0023】
さらに、本発明において、冷却装置のヒートパイプを断面が略楕円形状または略長方形状の偏平形状に形成し、該偏平形状の長径方向が受熱板の面方向と略平行となるように前記ヒートパイプを配設することにより、受熱板とヒートパイプとの熱的接合面を広く形成できて効率的に冷却が可能となり、かつ、冷却装置の厚みを薄くできる。
【0024】
さらに、本発明において、冷却装置の受熱板の受熱面とは反対側の裏面側に、該裏面と間隔を介してヒートパイプ挟持板を設け、該ヒートパイプ挟持板と前記受熱板との前記間隔にヒートパイプが挟持して配設することにより、受熱板にヒートパイプを挟むことにより非常に容易に冷却装置を形成でき、より一層のコストダウンを図ることができる。
【0025】
さらに、本発明において、冷却装置の受熱板にヒートパイプを配設するための溝を形成し、該溝に前記ヒートパイプを配設したり、前受熱板にヒートパイプを配設するための孔を形成し、該孔に前記ヒートパイプを配設したりすることによってヒートパイプの配設を容易とし、この構成においても非常に容易に冷却装置を形成できる。
【0026】
さらに、本発明において、冷却装置の冷媒流通部は複数の貫通孔が板状部材の板面方向に沿って並設形成された多孔板部材を有し、該多孔板部材が略U字形状に折り曲げられて該多孔板部材の前記貫通孔により前記冷媒流通通路が略U字状の折り返し通路に形成されているものにあっては、該冷該多孔板部材の前記貫通孔に液体の冷媒を流通させることによりヒートパイプの前記冷媒流通部側へのはみ出し部位を冷却する構成と成すことにより、多孔板部材を用いて非常に容易に冷却装置を形成することができ、多孔板部材の貫通孔に液体の冷媒を流通させて効率的にヒートパイプを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る冷却装置の第1実施例における平面構成を説明する模式的な説明図(a)と、冷却装置の側面図(b)と、A−A’断面図(c)である。
図2】第1実施例の冷却装置における冷媒流通部を説明するための説明図である。
図3】本発明に係る冷却装置の第2実施例における平面構成を説明する模式的な説明図(a)と、冷却装置の側面図(b)と、A−A’断面図(c)である。
図4】本発明に係る冷却装置の第3実施例における冷媒流通部を説明するための説明図である。
図5】本発明に係る冷却装置の第4実施例を模式的に示す平面図である。
図6】本発明に係る冷却装置の第5実施例を電子部品実装基板の電子部品上に設けた状態例を模式的に示す側面図である。
図7】本発明に係る冷却装置の他の実施例における受熱板の構成例を模式的に示す斜視図である。
図8】従来の冷却システムの一例を説明するための模式的な側面図(a)と平面図(b)である。
図9図8に示す冷却システムに設けられている冷却板の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本実施例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【実施例1】
【0029】
図1(a)には、本発明に係る冷却装置の第1実施例の平面構成を説明する説明図が模式的に示されている。同図に示されるように、第1実施例の冷却装置は、発熱体(図8に示した電子部品実装基板1等)からの熱を受ける受熱面2を有する例えば銅製の平板状の受熱板3と、液体の冷媒が流通する冷媒流通通路8を備えた冷媒流通部9とを有しており、該冷媒流通部9は受熱板3の隣に近接して(例えば密着して)設けられている。なお、冷媒流通部9は、図1(b)に示されるように、上下に互いに間隔を介して配設された例えばアルミニウム合金製の板部材10を有して形成されており、板部材10は、図1(a)の部位Cで折り返して配設されている。
【0030】
なお、図1(a)は、受熱板3を透かして示しており、受熱板3には、該受熱板3の裏側の板面に沿って、受熱板3のほほ全領域に渡ってヒートパイプ11(図の斜線部分、参照)が敷設されて配設されており、該ヒートパイプ11の少なくとも一端側は受熱板3からはみ出している。そして、該はみ出し部位が冷媒流通部9の板部材10に上下方向から挟持されて冷媒流通部9に熱的に接続され、冷却装置は、冷流通部9と受熱板3とがヒートパイプ11を介して結合した一体部品と成している。なお、冷媒流通部9を形成する板部材10は透明ではないので、冷媒流通部9を上から見た場合にヒートパイプ11は見えないが、説明を分かりやすくするために冷媒流通部9に配設されている(板部材10に挟持されている)ヒートパイプ11を実線により示している。
【0031】
本実施例において、ヒートパイプ11は、全長の7割以上が受熱板3に配設されて残りの長さが冷媒流通部9に配設されている。また、ヒートパイプ11は、図1(c)に示されるように、断面が略楕円形状または略長方形状の偏平形状に形成され、該偏平形状の長径方向が受熱板3の面方向と略平行となるようにヒートパイプ11が配設されている。受熱板3の受熱面2とは反対側の裏面側には、該裏面と間隔を介して例えば銅製の平板状のヒートパイプ挟持板13が設けられ、該ヒートパイプ挟持板13と受熱板3との前記間隔にヒートパイプ11が挟持されて配設されている。
【0032】
受熱板3とヒートパイプ挟持板13とは共に例えば厚みが約1mmの銅製の板により形成され、冷媒流通部9を形成する板部材10も厚みが約1mmの板であり、ヒートパイプ11の厚みが約2mmであることから、冷却装置の厚みは約4mmで非常に薄く形成されている。受熱板3とヒートパイプ挟持板13を銅製として板部材10をアルミニウム合金製とする場合、受熱板3とヒートパイプ挟持板13と板部材10との接触面にはニッケルメッキ等が適宜施されている。
【0033】
また、冷媒流通部9を形成する板部材10には、図2に示されるような態様で、管路14により形成された冷媒流通通路8がヒートパイプ11の配設方向を横切る方向に伸長し、図の部位C側で折り返してU字形状に配設されている。冷媒流通通路8を形成する管路14の一端側と他端側には、それぞれ、冷媒の導入や導出を行うための外部管路(例えば図8に示した冷媒流通管5等)が接続され、図1(a)の矢印に示されるように冷媒(例えば水)が流通する。そして、本実施例の冷却装置は、前記発熱体の熱が受熱板3の受熱面2を介してヒートパイプ11に伝熱され、該熱が冷媒流通部9を流通する冷媒により冷却されることにより前記発熱体が冷却されるように構成されている。
【0034】
本実施例の冷却装置は以上のように構成されており、冷却装置の外部に、該冷却装置の冷媒流通部に流通させる冷媒を冷却するためのチラー7等の冷媒冷却機を設けて冷却システムを形成することができ、例えば図8に示したような循環ポンプ6の駆動によってチラー7等から導出される冷媒が、冷媒流通管5を介して冷媒流通通路8に導入され、この冷媒とヒートパイプ11の端部との熱交換により温まった冷媒が冷媒流通通路8を通って導出されてチラー7等に送られ、チラー7等により冷却されて再び冷媒流通通路8に送られる、といった動作が繰り返されて、電子部品実装基板1等の発熱体の冷却が行われる。
【0035】
なお、このように、本実施例においても、チラー7等からの冷媒が冷媒流通通路8を通して循環されるが、冷媒流通通路8は図9に示した従来例の冷媒通路4と異なり、何度も迂回しながら受熱板3の面全体にわたって敷設された状態ではなく、冷媒流通部9において一度方向を変えているだけで短く、小さい動力でも冷媒を循環させることができる。
【実施例2】
【0036】
次に、本発明に係る冷却装置の第2実施例について説明する。なお、第2実施例を始めとする以下の各実施例について、前記第1実施例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【0037】
図3(a)には、第2実施例の冷却装置の平面構成を説明する説明図が模式的に示されており、図3(b)には冷却装置の側面図が、図3(c)には図3(a)のA−A’断面図がそれぞれ示されている。これらの図に示されるように、第2実施例の冷却装置において、受熱板3側の構成は前記第1実施例とほぼ同様に構成されており、第2実施例では冷媒流通部9側の構成を前記第1実施例と異なる構成としている。
【0038】
具体的には、第2実施例における冷媒流通部9は、ヒートパイプ11の配設方向を横切る方向に液体の冷媒が流通する冷媒流通通路8が形成された筒形状(ダクト状)を呈しており、図3(a)の矢印に示されるように、冷媒流通通路8の一端側から他端側に向けて冷媒が流通する態様と成している。なお、冷媒流通通路8の冷媒導入部と冷媒導出部は、いずれも縮径しており、冷媒の導入や導出を行うための外部管路(例えば図8に示した冷媒流通管5等)を接続しやすく形成されている。また、冷媒流通部9とヒートパイプ11との接続部(図3(c)のS、参照)は、水等の冷媒が漏れないようにシールされている。
【0039】
第2実施例においては、冷媒流通通路8は冷媒流通部9において一端側から他端側に流通するだけで短く、小さい動力でも冷媒を循環させることができ、前記第1実施例と同様の効果を奏することができる。
【実施例3】
【0040】
次に、本発明に係る冷却装置の第3実施例について説明する。第3実施例の冷却装置において、受熱板3側の構成は前記第1実施例とほぼ同様に構成されており、第3実施例では冷媒流通部9側の構成を前記第1実施例と異なる構成としている。具体的には、図4に示されるように、第3実施例において、冷媒流通部9を形成する板部材10は、複数の貫通孔15が板状部材の板面方向に沿って並設形成された多孔板部材16により形成されており、該多孔板部材16の貫通孔15に液体の冷媒を流通させることによりヒートパイプ11の冷媒流通部9側へのはみ出し部位を冷却する構成と成している。
【0041】
多孔板部材16の一端側と他端側には、それぞれ、キャップ部材17が設けられて、該キャップ部材17と多孔板部材16の間から冷媒が漏れないようにキャップ部材17と多孔板部材16とがシールされている。キャップ部材17は、その先端側が縮径しており、冷媒の導入や導出を行うための外部管路(例えば図8に示した冷媒流通管5等)を接続しやすく形成されている。
【実施例4】
【0042】
次に、本発明に係る冷却装置の第4実施例について説明する。第4実施例の冷却装置は、図5に示されるように、1本のヒートパイプ11を蛇行状に受熱板3に配設し、該ヒートパイプ11の一端側20を冷媒流通部9において略直角に曲げて冷媒流通部9の長手方向に伸長させるようにしている。なお、冷媒流通部9の構成は、例えば前記第1〜第3実施例のいずれかと同様に形成することができるが、図5においては、その構成の図示は省略している。
【0043】
第4実施例では、1本のヒートパイプ11を曲げることにより、より容易にヒートパイプ11を受熱板3に配設できて製造がより容易である。また、例えば前記第2実施例で適用したような冷媒流通部9を設けて冷却装置を形成する場合には、ヒートパイプ11と冷媒流通部9とをシールする部位の数を少なくでき、その分だけ製造が容易となり、かつ、水漏れ等の心配もより一層少なくできる。
【実施例5】
【0044】
次に、本発明に係る冷却装置の第5実施例について説明する。第5実施例の冷却装置は、図6に示されるように、冷媒流通部9を受熱板3の隣に設けずに受熱板3の端縁部に設けて形成されており、冷媒流通部9は受熱板3の受熱面2の反対側に設けられ、ヒートパイプ挟持板13上に接触させて設けてられている。なお、図6に示されている例は、電子部品実装基板(基板)21上の電子部品22が発熱体であり、この電子部品22を冷却する冷却装置として第5実施例の冷却装置が適用され、電子部品22上に設けられている。
【0045】
第5実施例では、このように、冷媒流通部9がヒートパイプ挟持板13上に設けられていることから、同図に示されるように、ヒートパイプ11は、その端部側が図の上側に向けて冷媒流通部9側に折り曲げられて設けられ、冷媒流通部9と熱的に接続されている。
【0046】
第5実施例のように、冷却装置を冷媒流通部9がヒートパイプ挟持板13上に設けられている構成とすると、基板21上に配設された発熱体としての電子部品22を冷却する場合に、例えば基板21に配設される他の部品が電子部品22に近接して設けられていても、その部品に冷却装置が触れないような態様で設けることができ、冷却装置の配設態様の自由度を上げることができる。なお、第5実施例の変形例として、電子部品22の配設態様によっては、図6の鎖線に示されるように、冷媒流通部9を受熱板3側に設けてヒートパイプ11を熱的に接続することもできる。
【0047】
なお、本発明は、前記各実施例に限定されることはなく、様々な実施の態様を採り得る。例えば、前記実施例では、いずれも、ヒートパイプ11は平板状の受熱板3と平板状のヒートパイプ挟持板13との間に挟持する態様としたが、受熱板3とヒートパイプ挟持板13のヒートパイプ11に接する側の面に、例えば図7(a)に示されるようなヒートパイプ11を配設するための溝18を形成して、該溝にヒートパイプ11を配設してもよい。
【0048】
また、受熱板3にヒートパイプ11を配設するために、図7(b)に示されるようなヒートパイプ挿通孔19(孔)を形成し、該ヒートパイプ挿通孔19にヒートパイプ11を配設するようにしてもよい。
【0049】
さらに、受熱板3と冷媒流通部9とが近接されて配設されていれば、間に隙間を設けて形成することもできるし、例えば図5の鎖線に示されるように、必要に応じて間に大きな間隔Sを設けてもよい。
【0050】
さらに、前記各実施例では、ヒートパイプ11は、全長の7割以上が受熱板3に配設されて残りの長さが冷媒流通部9に配設されていたが、ヒートパイプ11の受熱板3への配設割合は特に限定されるものでなく適宜設定されるものである。
【0051】
さらに、前記各実施例では、ヒートパイプ11は、断面が略楕円形状または略長方形状の偏平形状に形成されていたが、ヒートパイプ11は必ずしも断面が略楕円形状または略長方形状の偏平形状に形成されるとは限らず、他の形状としてもよい。
【0052】
さらに、受熱板3や冷媒流通部9の形状や材質等も適宜設定されるものであり、例えば受熱板3の平面形状を円形状にしたり、楕円形状にしたり、さらに複雑な形状としたりすることもできる。受熱板3の形状を複雑な形状にした場合も、例えば前記第4実施例のように、1本のヒートパイプ11を折り曲げて受熱板3の形状に対応させたパタンを形成すれば、そのパタンのヒートパイプ11と受熱板3とを設けて冷却装置を大量生産することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の冷却装置および冷却システムは、簡単な構成で軽量で効率良く発熱体の冷却を行うことができるので、電子部品等の冷却用として利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 電子部品実装基板
2 受熱面
3 受熱板
8 冷媒流通通路
9 冷媒流通部
10 板部材
11 ヒートパイプ
13 ヒートパイプ挟持板
14 管路
15 貫通孔
16 多孔板部材
18 溝
19 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9