特許第6845462号(P6845462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6845462高塩濃度グミ及びその製造方法並びに高塩濃度グミ製造用酵素製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845462
(24)【登録日】2021年3月2日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】高塩濃度グミ及びその製造方法並びに高塩濃度グミ製造用酵素製剤
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20210308BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20210308BHJP
【FI】
   A23G3/34 101
   A23L29/281
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-157276(P2016-157276)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-23318(P2018-23318A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 律彰
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−128391(JP,A)
【文献】 特開2010−130935(JP,A)
【文献】 特開平04−144643(JP,A)
【文献】 特開2011−130714(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/028274(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/00− 3/56
A23L 29/00−29/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスグルタミナーゼを配合することを特徴とする、ゼラチンを凝固剤とした、塩濃度が0.3%〜5%の高塩濃度グミの製造方法であって、トランスグルタミナーゼの添加量が、ゼラチン1gあたり0.001U〜1000Uである、製造方法。
【請求項2】
ゼラチンを溶解するために50℃以上に加温する工程を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
トランスグルタミナーゼ及びゼラチンを配合することを特徴とする、塩濃度が0.3%〜5%の高塩濃度グミ製造用酵素製剤であって、ゼラチン1gに対するトランスグルタミナーゼの配合量が0.001U〜1000Uである、酵素製剤。
【請求項4】
更に食塩を配合する、請求項3記載の酵素製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスグルタミナーゼを使用することを特徴として製造された高塩濃度グミ及びその製造方法、並びにトランスグルタミナーゼを含有することを特徴とする高塩濃度グミ製造用酵素製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グミは、果汁や砂糖等をゼラチンで固めた菓子の一種であり、世界中で広く食されている。グミの食感には様々なものがあり、配合するゼラチンの種類や濃度によりコントロールすることが可能である。世界的な主流は、ゼラチンを高配合したハードタイプグミである一方、日本においては、ゼラチン配合率の低いソフトタイプグミが多く市販されているが、「チューイー感」を有する食感であることがグミの共通した特徴である。チューイー感とは、噛んだ際、保形性と一定の反発力を持ちながらしなやかに変形する物性を意味する。また、グミの呈味にも様々なものがあるが、特に果汁を配合したものが多く、そのほとんどが砂糖や甘味料を配合した甘味系の菓子である。
【0003】
ゼラチンで固めた食べ物としては、グミの他に、テリーヌが広く食されている。テリーヌは、様々な具材と共にコンソメや食塩等をゼラチンで固めたフランス料理であるが、食感はゼリー様であり、グミとは全く異なりチューイー感はない。
【0004】
テリーヌのような食事系の味覚設計、すなわち塩味系でありながら、チューイー感のあるグミはほとんど存在しないが、その理由は、ゼラチンのゲル化を食塩が阻害するためである。低濃度の食塩であれば、ゼラチンを高配合することで保形性を保つことは可能であるが、ゼリー様の食感となりチューイー感は弱まる。高濃度の食塩を配合すると、保形性すら保てない。このように、食塩を高配合した食事系のグミは、ニーズはあるものの、化学的な要因により製造することが困難とされている。
【0005】
食塩を高濃度で配合したグミの製造方法としては、食物繊維を配合する方法(特許文献1)、食塩を含有するタブレットをグミ内部に点在させる方法(特許文献2)が開示されている。前者は、食物繊維によりネットワークを補強するため、純粋なゼラチンゲルの持つチューイー感とは若干異なる食感となる点、後者は、ゼラチンゲル特有のチューイー感は得られるものの、製法が煩雑であるという点において、課題が残されていた。
【0006】
グミにトランスグルタミナーゼを配合する技術としては、弾力がありコリコリとしたホルモン様の食感を有するグミの製造方法(特許文献3)、2つの食感が同時に味わえるグミ入りゼリー菓子の製造方法(特許文献4)等が知られているが、いずれもグミの食感を改質する技術であり、食塩をグミに高配合することは想定していない。
【0007】
ゼラチンに対してトランスグルタミナーゼを作用させる技術としては、調理後においても不溶性であるゼラチン加工食品の製造方法(特許文献5)等が開示されているが、加熱後も保形性を保つゼラチンゲルの製造技術であり、食塩を高配合する技術設計にはなっていない。
【0008】
このように、高塩濃度グミの製造方法に関してはいくつかの報告がなされており、ゼラチンに対してトランスグルタミナーゼを作用させる技術についても報告があるが、トランスグルタミナーゼを用いて高塩濃度グミの製造を試みた例はなく、当該手法によりグミ特有のチューイー感を有する高塩濃度グミが製造可能であることは、容易に想像し得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−128391号公報
【特許文献2】特開2010−104349号公報
【特許文献3】特開2011−130714号公報
【特許文献4】特開2011−188816号公報
【特許文献5】特許3012743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、塩味系の味覚設計でありながらチューイー感を有する高塩濃度グミ及びその製造方法を提供すること、並びに高塩濃度グミ製造用酵素製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、トランスグルタミナーゼを用いて高塩濃度グミを製造することにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)トランスグルタミナーゼを配合することを特徴とする、ゼラチンを凝固剤とした、塩濃度が0.3%〜5%の高塩濃度グミの製造方法。
(2)トランスグルタミナーゼの添加量が、ゼラチン1gあたり0.001U〜1000Uである、(1)記載の方法。
(3)ゼラチンを溶解するために50℃以上に加温する工程を有する、(1)又は(2)記載の方法。
(4)(1)乃至(3)記載の方法により製造された、高塩濃度グミ。
(5)トランスグルタミナーゼ及びゼラチンを配合することを特徴とする、塩濃度が0.3%〜5%の高塩濃度グミ製造用酵素製剤。
(6)ゼラチン1gに対するトランスグルタミナーゼの配合量が0.001U〜1000Uである、(5)記載の酵素製剤。
(7)更に食塩を配合する、(5)又は(6)記載の酵素製剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、塩味系の味覚設計でありながらチューイー感を有する高塩濃度グミを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による高塩濃度グミ及びその製造方法、並びに高塩濃度グミ製造用酵素製剤には、トランスグルタミナーゼを用いる。本発明に用いるトランスグルタミナーゼは、タンパク質やペプチド中のグルタミン残基を供与体、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素のことを指し、哺乳動物由来のもの、魚類由来のもの、微生物由来のものなど、種々の起源のものが知られている。本発明で用いる酵素は、この活性を有している酵素であれば、いかなる起源のものでも構わない。また、組み換え酵素であっても構わない。味の素社より「アクティバ」TGという商品名で市販されている微生物由来のトランスグルタミナーゼがその一例である。
【0014】
本発明による高塩濃度グミの凝固剤には、ゼラチンが用いられる。本発明に用いるゼラチンの由来は、豚皮、豚骨、牛皮、牛骨、魚鱗、魚皮等、いかなる動物のいかなる部位でも構わず、それらの組み合わせでも構わない。また、本発明に用いるゼラチンは、酸処理、アルカリ処理等、いかなる前処理が施されたものでも構わず、いかなる分子量のものでも構わない。本発明に用いるゼラチンの例として、新田ゼラチン社より市販されている「ゼラチン21」が挙げられる。
【0015】
グミにおけるゼラチンの配合率は、好ましくは3%〜20%であり、より好ましくは5%〜15%であり、特に好ましくは7%〜15%である。また、他の凝固剤と併用しても構わない。グミとゼリーの違いは、一般的にはゼラチンの濃度の違いとされ、グミにおけるゼラチン濃度はゼリーにおけるそれより多く、ゼリーと比べて保形性の強い固体である。
【0016】
本発明による高塩濃度グミには、食塩が0.3%〜5%、より好ましくは0.5%〜5%配合される。本発明に配合される食塩は、海水塩、岩塩等、いかなる種類のものでもよく、いかなる純度のものでも構わない。また、それらの組み合わせでも構わない。
【0017】
本発明のグミとは、ゼラチンによりゲル化された固体の食品であり、チューイー感を有する食感であることが特徴である。チューイー感とは、噛んだ際、保形性と一定の反発力を持ちながらしなやかに変形する物性を意味する。通常、食塩を配合することで当該物性は失われ、粘性の強いゲルとなり、食塩を更に高配合すると保形性が保てなくなる。本発明のグミには、トランスグルタミナーゼ、ゼラチン、食塩の他に、塩味系の味覚設計により、コンソメ、ブイヨン、エキス類、各種調味料等いかなる水溶性呈味成分を配合してもよく、野菜類、穀類、豆類、種子類、肉類、きのこ類、魚介類、藻類、チーズ等の乳製品、卵加工品等、いかなる非水溶性の具材を混合しても構わない。
【0018】
本発明の高塩濃度グミの製造において、トランスグルタミナーゼ、ゼラチン、食塩は、他の原材料と共にお湯に溶解されるが、その順序は、いかなる順序でも構わない。ゼラチンの溶解温度は、一般的には50℃以上とされており、溶解方法によりその温度は異なる。膨潤溶解法は、水で膨潤させた後にお湯で溶解する方法で、溶解温度は50℃〜60℃である。一方、直接溶解法は、お湯で直接溶解する方法で、溶解温度は60℃〜70℃である。更に高温で溶解することも可能であるが、ゼラチンの品質劣化を招く可能性がある。尚、魚由来のゼラチンには、より低温で溶解するものも存在するが、グミの室温融解のリスクが高いため、グミの製造には適さない。すなわち、高塩濃度グミの製造工程において、ゼラチンは、50℃以上のお湯で溶解する。ただし、トランスグルタミナーゼは、高温での溶解を避けるのが望ましく、例えば、60℃以下で溶解する。ゼラチンを60℃以上で溶解した場合は、60℃以下に冷却後、トランスグルタミナーゼを添加溶解するのが望ましい。溶解後、冷却することでゼラチンのゲル化が進行し、グミが製造される。ゼラチンのゲル化のための冷却は、いかなる温度、時間でも構わないが、例えば5℃にて1時間冷却することでゲル化する。一般的には、ゼラチンの凝固温度は20℃以下である。トランスグルタミナーゼの反応工程は、トランスグルタミナーゼがゼラチンに作用することが可能な時間であれば特に構わなく、非常に短い時間でも逆に長時間作用させても構わないが、現実的な作用時間としては1分〜24時間が好ましい。反応温度に関しても、トランスグルタミナーゼが活性を保つ範囲であればどの温度であっても構わないが、現実的な温度としては0℃〜60℃で作用させることが望ましい。すなわち、通常のグミ製造工程を経ることで、十分な反応時間が得られる。また、トランスグルタミナーゼの反応後、冷却によるゼラチンのゲル化前、もしくはゲル化後に、トランスグルタミナーゼの失活工程を設けてもよい。例えば、80℃にて1分処理することでトランスグルタミナーゼは失活する。
【0019】
本発明による高塩濃度グミの製造において、トランスグルタミナーゼ、ゼラチン、食塩が配合される場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、ゼラチン1gあたり0.001U〜1000Uが好ましく、0.01U〜100Uがより好ましい。尚、トランスグルタミナーゼの酵素活性については、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを基質として反応を行い、生成したヒドロキサム酸をトリクロロ酢酸存在下で鉄錯体を形成させた後525nmの吸光度を測定し、ヒドロキサム酸の量を検量線より求め活性を算出する。37℃、pH6.0で1分間に1μmolのヒドロキサム酸を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義した(特開昭64−27471号公報参照)。
【0020】
トランスグルタミナーゼを配合することにより、高塩濃度グミ製造用酵素製剤を得ることができる。また、ゼラチン及び/又は食塩を併せて配合してもよい。更に、デキストリン、乳糖等の賦形剤、酵母エキス、畜肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物、α化澱粉、アルギン酸、キサンタンガム等の増粘多糖類、乳化剤、色素、酸味料、香料等その他のいかなる食品素材、食品添加物を混合してもよい。本発明の高塩濃度グミ製造用酵素製剤におけるトランスグルタミナーゼ、ゼラチン、食塩の配合量は0%より多く、100%より少ないが、トランスグルタミナーゼとゼラチンを配合する場合、トランスグルタミナーゼの含有量はゼラチン1gあたり0.001U〜1000Uが好ましく、0.01U〜100Uがより好ましい。
【0021】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、この実施例により何ら限定されない。
【実施例1】
【0022】
ゼラチン、水、食塩を、表1に示す配合にて混合し、電子レンジで十分に加熱溶解した。液温が60℃以下になるまで放冷した後、トランスグルタミナーゼを添加溶解し、製氷皿に注入した。室温にて1時間静置した後、冷蔵庫に入れて2時間冷却して凝固させ、製氷皿から取り出すことでグミを得た。配合率は、トランスグルタミナーゼを除いた原料の合計が100%となるよう設定した。ゼラチンは「ゼラチン21」(新田ゼラチン社製)、トランスグルタミナーゼは「アクティバ」TG(味の素社製)を用いた。得られたグミは、官能評価に供した。官能評価は、チューイー感、保形性、スティッキー感について、1点〜7点の評点法にて、4名のパネルにて行った。チューイー感とは、噛んだ際、保形性と一定の反発力を持ちながらしなやかに変形する物性を意味し、チューイー感があることが好ましいグミの食感の条件となる。通常、食塩を配合することで当該物性は失われ、粘性の強いスティッキーなゲルとなり、食塩を更に高配合すると保形性が保てなくなる。保形性とは、ゲルが崩れずに形状を保つ性質を意味する。スティッキー感とは、ゲルの粘度が高く、こしあんのようなネチネチとした状態を意味する。評点は、1点が「なし」、2点が「非常に弱い」、3点が「弱い」、4点が「ややあり」、5点が「あり」、6点が「強い」、7点が「非常に強い」と定義した。また、チューイー感に関しては、4点以上を好ましいグミの食感であると定義し、4点以上が得られた試験区に「○」を付した。結果を表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
表2に示す通り、食塩の配合率が増えるに従いチューイー感は減少する傾向、また、保形性も減少、スティッキー感は増大する傾向が確認された(試験区1〜8)。食塩の配合率が0.3%以上においては、好ましいグミの食感であるチューイー感は得られなかった。特に、食塩配合率5%以上では、舌で簡単に潰せるスプレッド様の食感となっていた。一方、トランスグルタミナーゼを添加した場合においては、食塩によるチューイー感の減少、保形性の減少、スティッキー感の増大は明らかに抑制されており、食塩の配合率が5%まで、好ましいグミの食感であるチューイー感が得られた(試験区9〜16)。以上より、好ましいグミの食感であるチューイー感のあるグミを製造するためには、0.3%以上の食塩配合率の場合トランスグルタミナーゼの添加が必須であり、食塩配合率5%までは、トランスグルタミナーゼの添加により好ましいグミの食感であるチューイー感を有するグミを製造可能であることが明らかとなった。すなわち、ゼラチンを凝固剤とした、塩濃度が0.3%〜5%の高塩濃度グミにおいて、トランスグルタミナーゼを配合することで、好ましいグミの食感であるチューイー感を有するグミを製造することが可能である。
【実施例2】
【0026】
ゼラチン、水、粉末カップスープ(オニオングラタンスープ)、食塩を、表3に示す配合にて混合し、電子レンジで十分に加熱溶解した。液温が60℃以下になるまで放冷した後、トランスグルタミナーゼを添加溶解し、製氷皿に注入した。更に、5mm角程度にカットしたダイスチーズと、ソテーオニオンのみじん切りを、製氷皿に注入した溶液にトッピング具材として適量添加した。室温にて1時間静置した後、冷蔵庫に入れて2時間冷却して凝固させ、製氷皿から取り出すことでグミを得た。当該グミは、甘味系の菓子ではなく、食事系の味覚設計、すなわち塩味系のグミである。配合率は、トランスグルタミナーゼ及びトッピング具材を除いた原料の合計が100%となるよう設定し、表3には少数第一位まで記した。ゼラチンは「ゼラチン21」(新田ゼラチン社製)、トランスグルタミナーゼは「アクティバ」TG(味の素社製)、粉末カップスープは「クノールカップスーププレミアムオニオングラタンスープ」(味の素社製)の食塩を除いた粉末区分のみを用いた。得られたグミは、官能評価に供した。官能評価は、チューイー感、保形性、スティッキー感について、1点〜7点の評点法にて、4名のパネルにて行った。評価項目及び評点の定義は、実施例1と同様とした。結果を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
表3に示す通り、トランスグルタミナーゼを添加しない場合、保形性が弱くスティッキーな食感で、グミとして好ましいチューイー感は得られなかった(試験区1〜3)。一方、トランスグルタミナーゼを添加することにより、好ましいグミの食感であるチューイー感が顕著に得られ、保形性は増大、スティッキー感は抑制され、オニオングラタンスープ味のグミが得られた(試験区4〜6)。以上より、トランスグルタミナーゼを添加することにより、グミとして好ましいチューイー感を有する食事系の味覚設計のグミ、すなわち塩味系のグミを製造できることが示された。
【実施例3】
【0029】
ゼラチン、水、食塩を、表4に示す配合にて混合し、電子レンジで十分に加熱溶解した。液温が60℃以下になるまで放冷した後、トランスグルタミナーゼを添加溶解し、製氷皿に注入した。室温にて1時間静置した後、冷蔵庫に入れて2時間冷却して凝固させ、製氷皿から取り出すことでグミを得た。配合率は、トランスグルタミナーゼを除いた原料の合計が100%となるよう設定した。ゼラチンは「ゼラチン21」(新田ゼラチン社製)、トランスグルタミナーゼは「アクティバ」TG(味の素社製)を用いた。得られたグミは、官能評価に供した。官能評価は、チューイー感、保形性、スティッキー感について、1点〜7点の評点法にて、4名のパネルにて行った。評価項目及び評点の定義は、実施例1と同様とした。結果を表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
表4に示す通り、トランスグルタミナーゼの添加量が増えるに従い、保形性は増大、スティッキー感は減少する傾向が確認され、チューイー感においては適正添加範囲があるものと考えられた。好ましいグミの食感であるチューイー感は、ゼラチン1gに対するトランスグルタミナーゼの添加量が0.001U〜1000Uの範囲において得られ、それより少ないと効果が弱く、それより多いとゲルが硬くなり過ぎてしなやかさがなくなり、チューイー感は逆に低下する。以上より、ゼラチンを凝固剤とした高塩濃度グミにトランスグルタミナーゼを添加して、好ましいグミの食感であるチューイー感を有するグミを製造する場合において、ゼラチン1gに対するトランスグルタミナーゼの適正添加量範囲は0.001U〜1000Uであることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によると、塩味系の味覚設計でありながらチューイー感を有する高塩濃度グミを得ることができるので、食品分野において極めて有用である。