(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の防護柵では、落石等によって防護柵に衝撃力が作用した際に、ネットの伸びによって衝撃力を吸収させることができる。
【0007】
しかしながら、ネットで吸収されなかった衝撃力は支柱に伝達され、支柱には、この衝撃力と、これに抗する周辺地盤からの抗力とが作用する。大きな衝撃力を受けた場合には、支柱にかかる負荷が多大となり、支柱が負荷に耐えられずに塑性変形したり、支柱が傾倒して、これを支持する地盤や擁壁が崩壊したりしてしまうという問題があった。
【0008】
一方、引用文献2に記載の防護柵では、落石等により衝撃力が作用した際に、ネットを伸長させて衝撃力を吸収するとともに、ヒンジによって支柱を傾倒させることにより、支柱を支持する控えロープを伸長させて、この控えロープに取り付けた緩衝具によって衝撃力を吸収することができる。これにより、支柱に作用する負荷を軽減して支柱自身の変形を抑制することができる。
【0009】
しかしながら、引用文献2に記載の防護柵では、支柱を支持するために、各支柱に対して控えロープや控材を配設する必要があり、防護柵に必要な用地面積が増大してしまう。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、落石等を捕捉するために道路構造物や山の斜面等の地盤に設置される防護柵であり、支柱に作用する負荷を低減させることができ、防護柵に必要な用地面積を抑えることができる防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の防護柵は、
所定の間隔をおいて立設した複数の支柱の間にネットを張設した防護柵であって、
前記支柱は、立設される地盤の表面に配置されて当該表面に固定された基部と、前記地盤から離れるように上方へ延びる支柱本体とを有し、
前記基部の前記地盤と反対側において、前記基部と、
該基部を前記地盤に固定するために前記地盤に埋め込まれたアンカーに取付けられた定着体とに挟まれて配置され、前記基部から受ける外力を吸収可能な緩衝材を備え
、
前記基部は、直線状に延びる柱状体であって、前記地盤の斜面に沿って該地盤の上下方向に延在し、
前記支柱本体は、前記基部の上方側に結合されており、
前記基部の前記地盤に対する固定部位は、全て、前記基部の前記支柱本体との結合部位よりも前記上下方向の下方側に位置することを特徴とすることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、落石等により防護柵に衝撃力が作用した際に、ネットの伸びによって衝撃力を吸収できるとともに、支柱を傾倒させる外力、すなわち、落石等による衝撃力や、この衝撃力に抗する斜面からの抗力を基部から緩衝材に伝達して、この緩衝材で吸収させることができる。これにより、支柱に作用する負荷が低減され、支柱の折れや変形を抑制することができる。また、支柱は、基部を地盤の表面に固定することにより立設されるので、支柱を支持する控えロープや控材を不要にすることができ、防護柵に必要な用地面積を抑えることができる。
また、この構成によれば、斜面上を上下方向に延びる基部によって斜面を補強することができるので、斜面の安定性が向上する。
【0013】
請求項2に記載の防護柵は、請求項1に記載の防護柵において、
前記基部は、前記緩衝材よりも下方に配設された固定部材によって前記地盤に固定されることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、落石等により支柱に衝撃力が作用した際に、支柱は、固定部材によって固定された部位を回転中心として、これより上方の部分が谷側へ傾倒するように回動しようとするので、固定部材よりも上方に配置された緩衝材により、基部を地盤から離間させる方向へ移動させる外力、すなわち支柱を傾倒させる外力を効率よく吸収させることができる。
【0017】
請求項
3に記載の防護柵は、請求項
1又は2に記載の防護柵において、
前記支柱は、
前記地盤を構成している擁壁に立設され、
前記擁壁は、斜面と、該斜面の上端に形成された水平面とを有
し、
前記支柱本体の下端面は、前記水平面と対向接触しており、前記基部は、前記支柱本体の下端部から前記
擁壁の斜面に沿って上下方向に延在している
ことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、支柱本体の下端面が、擁壁の水平面と対向接触することにより支柱の立設状態が安定する。また、支柱の基部によって擁壁が補強されるので、擁壁を保護しながら落石等を防止することができる。
【0019】
請求項
4に記載の防護柵は、請求項1〜
3の何れか1項に記載の防護柵において、
前記基部に設けられ、前記地盤に対する接地面積を拡張する面積拡張部材を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、面積拡張部材によって接地面積を大きくすることができるので、地盤表面の安定性が向上する。
【0021】
請求項
5に記載の防護柵は、請求項1〜
4の何れか1項に記載の防護柵において、
前記アンカーは、前記緩衝材と前記基部とを貫通する態様で地中へ埋め込まれていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、緩衝材を取付けるアンカーによって基部を地盤に固定することができる。また、落石等により防護柵に衝撃力が作用した際に、支柱に作用する衝撃力や抗力などの外力を支柱の基部からアンカーボルトに取り付けられた緩衝材に伝達し、この緩衝材により吸収させることができる。
【0023】
請求項
6に記載の防護柵は、請求項1〜
5の何れか1項に記載の防護柵において、
前記緩衝材は、皿バネ又はゴム支承であることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、衝撃力が作用していない通常時において、皿バネやゴム支承の付勢力によって、基部を斜面側に押圧して基部を固定することができる。また、衝撃力が生じた場合には、皿バネやゴム支承によって基部から伝達される衝撃エネルギーを吸収することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の防護柵によれば、支柱に作用する衝撃力や斜面からの抗力を支柱に設けた緩衝機構に伝達して吸収させることができるので、支柱に作用する負荷を低減することができる。これにより、支柱の折れや変形を抑制することができる。また、支柱を支持する控えロープや控材を不要にすることができるので、防護柵に必要な用地面積を抑えることができる。また、既設道路構造物や斜面上に簡単に設置することができることから、既設構造物上に防護柵を新設する場合や既設防護柵を補強する場合に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態である防護柵10の正面図であり、
図2は側面図である。防護柵10は、複数の支柱20−1〜20−4と、各支柱に取り付けられた緩衝機構30−1〜30−4と、支柱20の間に張設されたネット50とを備える。なお、図示例では4本の支柱20−1〜20−4を記載しているが、支柱20の本数はこれに限られず、2本以上であればよい。
【0028】
支柱20−1〜20−4は、それぞれ、地盤となる山の斜面90に固定される基部22と、基部22から斜面90に対して立設する方向へ延在する支柱本体24とを有する。なお、本発明において地盤とは、支柱20を立設可能な土台となるものをいい、山を形成している自然のままの地盤(地山)だけではなく、擁壁等の構造物も含む概念である。基部22及び支柱本体24は、それぞれ、断面がほぼ同じ大きさの直線状に延在する柱状体であって、本実施の形態では、断面が略四角形の鋼管である。支柱本体24の一方の端部は、基部22の一端部に溶接接合されており、支柱20は全体として、基部22と支柱本体24との結合部位において屈曲した、くの字状に形成されている。基部22と支柱本体24との結合部は、板状の補強材29が溶接接合されることにより、結合強度が高められている。
【0029】
支柱20は、基部22が斜面90上に配置され、かつ斜面90に沿って上下方向に延在し、支柱本体24が基部22の上端部から延在するように設置される。支柱20は、基部22に形成された貫通孔22aを介して取り付けられる緩衝機構30により斜面90に対して固定される。
【0030】
なお、基部22及び支柱本体24の断面形状は、四角形に限られず、その他の多角形状や円形状であってもよい。さらに、基部22は、柱状以外の形状、例えば、支柱本体24よりも幅が大きい平板状の鋼板であってもよい。また、支柱本体24は、基部22の一端部から延在するのではなく、例えば、基部22の中央部から延在する態様であってもよい。
【0031】
緩衝機構30は、支柱20の基部22に設けられ、支柱に対して、これを傾倒させるような外力が作用した際に、この外力を吸収する機能、例えば、落石等によって支柱20が受けた衝撃力を吸収する機能を有する。本実施の形態の緩衝機構30は、さらに、支柱20を斜面90に対して固定する機能を有する。緩衝機構30は、斜面90に対する基部22の移動を規制する固定具31と、固定具31に取り付けられた緩衝材36とを備える。
【0032】
固定具31は、基部22の貫通孔22aに挿通され、地中に埋め込まれるアンカーボルト(アンカー)32と、斜面90との間に基部22及び緩衝材36を介在させて、アンカーボルト32の地上側の端部に螺合されるナット(アンカーに取付けられた定着体)33とを備える。
【0033】
緩衝材36は、弾性伸縮性を有し、設置状態において基部22に対して斜面90と反対側に配置され、基部22から受ける衝撃力などの外力を吸収する。本実施の形態の緩衝材36は、略円柱状であって、少なくとも軸方向に弾性伸縮性を有しており、中央部に軸方向に貫通する貫通孔36aを有している。
【0034】
図3は、緩衝材36の一例であるゴム支承を示している。このゴム支承は、鋼板70−1〜70−5と板状のゴム材72−1〜72−4とを交互に積み重ねた円柱状の積層ゴム体と、積層ゴム体の周囲を覆う被覆ゴム74とによって構成されており、中央部に貫通孔36aを有する。
【0035】
また、緩衝材36の他の例として、
図4に示すように、軸方向に複数枚重ねられ、中央部に円形孔を有する皿バネを用いることができる。皿バネは、図示していない被覆材により外周面が覆われた状態で用いられることが好ましい。なお、緩衝材36は、これに限られず、設置状態において基部22から受ける衝撃力などの外力を吸収可能なものであればよい。
【0036】
緩衝材36は、
図5に示すように、貫通孔36aにアンカーボルト32が挿通された状態で、基部22とナット33との間に弾性収縮可能に取り付けられる。なお、図示例では緩衝材36としてゴム支承を用いている。基部22と緩衝材36との間には座金35が配置されており、基部22は、緩衝材36の弾性付勢力により座金35を介して斜面90側へ押圧され固定される。
【0037】
複数の支柱20は、山の斜面90のほぼ同じ高さに所定の間隔をおいて立設されて、1つの支柱列を構成している。支柱列の両端に位置する支柱20−1,20−4には、それぞれ、支柱列の外側へ延びるサポートロープ60−1,60−2が張架されている。サポートロープ60−1,60−2は、一端が支柱20−1,20−4の上端部に接続され、他端が支柱列の外側で斜面90に埋設されたアンカー64に接続されている。なお、
図2及び
図7に示す側面図ではサポートロープ60−2の記載を省略している。
【0038】
設置状態における支柱20の高さ(すなわち、支柱本体24の高さ)は、一般に、約2m〜5mであって、隣り合う支柱20の間隔は約2m〜8mである。なお、これらの寸法は、設置する斜面の規模や状況によって適宜選択することができる。
【0039】
ネット50は、
図6に示すように、鋼線からなる線材(例えば、高張力硬鋼線を複数本撚った線材など)を網状にしたものであり、互いに網目の大きさが異なる第1のネット51と、第2のネット52とを含む。第1のネット51は、第2のネット52よりも網目が大きく、これらのネット51,52は重ねられた状態で支柱20に張設される。
【0040】
支柱列には、上部サポートロープ54及び下部サポートロープ55が横架されており、各支柱20の支柱本体24には、この支柱本体24に沿って延びる図示していない垂直サポートロープが張架されている。ネット50は、上部サポートロープ54、下部サポートロープ55及び垂直サポートロープと、これらのサポートロープに巻き付けられたコイル状のスプリング部材58とを介して支柱20に張設される。
【0041】
次に、
図7に基づいて上述した防護柵10の作用を説明する。なお、
図7では衝撃力による支柱20の傾斜状態を誇大表示している。
【0042】
防護柵10のネット50に落石96が衝突すると、ネット50が伸長して衝撃力が吸収される。また、重ねた状態で張設された第1のネット51及び第2のネット52の間に摩擦力が生じることにより、衝突エネルギーが減衰される。
【0043】
さらに、ネット50を介して支柱20に伝達された衝撃力により、支柱20は、支柱本体24が谷側へ傾倒するように移動する。この際、支柱20は、緩衝機構30の固定具31により移動が規制されるとともに、固定部31に取り付けられた緩衝材36が弾性収縮することで衝撃力が緩和される。
【0044】
なお、支柱列は、両側がサポートロープ60−1,60−2によって幅方向外側へ引張されているため、各支柱20が落石衝突位置に向かって支柱列の内側へ傾倒することを防止することができる。
【0045】
このように、防護柵10は衝撃力が作用した際に、ネット50によって衝撃力を緩和することができるとともに、支柱20に設けた緩衝機構30によって衝撃力を緩和することができる。これにより、支柱20に作用する負荷が低減され、支柱20の折れや変形を抑制することができる。
【0046】
また、支柱20は、衝撃力が作用していない通常状態において、緩衝材36の弾性付勢力によって、基部22が斜面90側に押圧されて安定的に固定される。このように、緩衝機構30によって支柱20を斜面90上に固定することができるので、ヒンジを介して支柱を地上に立設した従来の防護柵のように、それぞれの支柱ごとに、支柱を支持する控えロープや控材を設置する必要がなく、防護柵に必要な用地面積を抑えることができる。さらに、通常状態では、基部22によって斜面90の表面が押圧されるので、斜面90の安定化を図ることができる。
【0047】
また、基部22に設けた緩衝材36の弾性伸縮性により支柱20に作用する外力を緩和するものであるため、例えば、防護柵10に積雪による荷重(落石等の衝撃荷重よりも時間による荷重変化の少ない静的荷重)が作用した場合であっても、支柱20の折れや変形を的確に防止して積雪被害を防ぐことができる。なお、緩衝材34の設置態様は、上述のものに限られず、地中に埋め込まれたアンカーに取付けられた定着体によって緩衝材34の地盤に対する移動が規制されることで、基部22から受ける外力を吸収可能となるように緩衝材34が弾性力を発揮し得る態様であればよい。
【0048】
(第2の実施の形態)
図8は、防護柵10の第2の実施の形態を示す正面図であり、
図9は、
図8に示す防護柵10の側面図である。
図8〜
図11において、第1の実施の形態と対応する部位には同一符号を付している。以下に説明する第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成については詳細な説明を省略する。なお、
図9及び
図11に示す側面図ではサポートロープ60−2や、後述する間隔保持部材45の記載を省略している。
【0049】
本実施の形態の防護柵10は、既設の擁壁(道路構造物)91に対して設置される。擁壁91は、例えば、鉄筋コンクリート擁壁やコンクリートブロック擁壁、石積み擁壁など、公知の構造物を対象とすることができる。擁壁91は、斜面91bと、斜面91bの上端に形成された水平面である上面91aとを有する。
【0050】
防護柵10は、複数の支柱20−1〜20−4と、支柱20を擁壁91に固定する固定部材40−1〜40−4と、隣接する支柱20の間隔を保持する間隔保持部材45と、各支柱20に取り付けられた緩衝機構30−1〜30−4と、支柱20の間に張設されたネット50とを備える。支柱20は、擁壁91に固定される基部22と、基部22から擁壁91に対して立設する方向へ延在する支柱本体24とを有し、各支柱20−1〜20−4の基部22には、面積拡張部材48−1〜48−4が取り付けられる。
【0051】
支柱20の基部22及び支柱本体24は、それぞれ直線状に延在する柱状体であって、支柱20は全体として基部22と支柱本体24との結合部位において屈曲した、くの字状に形成されている。基部22及び支柱本体24の長さは、それぞれ適宜設定することができ、本実施の形態では、基部22と支柱本体24とがほぼ同じ長さになるように設定されている。基部22と支柱本体24との結合部には、補強材29が溶接接合されている。
【0052】
図9及び
図10に示すように、支柱本体24を構成する柱状体の下端部(すなわち、基部22と結合される側の端部)には、接地部25が設けられている。接地部25は、支柱本体24を構成する鋼管の端部に接合された平板状の鋼板によって形成されている。この接地部25により、支柱本体24の下端面(接地面)25aは、擁壁91の上面91aと面接触可能な平面状に形成される。
【0053】
支柱20は、基部22が擁壁91の斜面91b上に配置されて、この斜面91bに沿って上下方向に延在し、かつ、支柱本体24の下端面25aが擁壁91の上面91aと面接触し、支柱本体24がこの上面91aから上方へ延在するように設置される。支柱20の基部22は、固定部材40と緩衝機構30とにより面積拡張部材48を介して擁壁91に固定される。なお、接地部25は、上面91aに対して固定されておらず、自重で乗った状態となっている。
【0054】
面積拡張部材48は、擁壁91に対する接地面積を大きくするものであり、基部22と斜面91bとの間に配置された平板状の部材であって、基部22とともに固定部材40及び/又は緩衝機構30により擁壁91に固定される。このような面積拡張部材48としては、例えば、平板状の鋼板を用いることができる。
【0055】
面積拡張部材48の大きさ(擁壁91に対する接地面積の大きさ)は、基部22の大きさや、隣接する支柱20の間隔などにより適宜設定することができる。本実施の形態では、面積拡張部材48の長さ寸法Lが、基部22の長さ寸法とほぼ同じであって、面積拡張部材48の幅寸法Wが、基部22の幅寸法(すなわち基部22の外径寸法)よりも大きく設定されており、設置状態において、面積拡張部材48が、基部22の下面(擁壁91との対向面)のほぼ全域を覆い、かつ基部22の両側縁よりも幅方向外側に突出している。
【0056】
固定部材40は、基部22に形成された貫通孔及び面積拡張部材48に形成された貫通孔を貫通して地中に埋め込まれるアンカーボルト42と、アンカーボルト42に螺合され、座金44を介在させて基部22を固定するナット43とを備える。固定部材40は、基部22において緩衝機構30よりも下方に取付けられる。
【0057】
緩衝機構30の構成は第1の実施形態と同様であり、その設置態様は、基部22と斜面91bとの間に面積拡張部材48が介在されていることを除き、第1の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
支柱列において隣り合う基部22の間には、支柱20の間隔を所定間隔に保持する間隔保持部材45が配置される。間隔保持部材45は、支柱20の配列方向に沿って延びる棒状の部材である。
【0059】
次に、
図11に基づいて上述した防護柵10の作用を説明する。なお、
図11では、支柱20及び緩衝機構30に作用する力を分かりやすくするために、落石96の衝撃力による支柱20の傾斜状態を誇大表示している。
【0060】
防護柵10のネット50に落石96が衝突すると、ネット50が伸長して衝撃力が緩和されるとともに、第1のネット51及び第2のネット52の間に摩擦力が生じることにより、衝突エネルギーが吸収される。
【0061】
支柱20は、ネット50を介して伝達された衝撃力及び斜面91bからの抗力により、固定部材40による固定点を回転中心として、支柱本体24が谷側へ傾倒するように回動する。この際、支柱20は、緩衝機構30の固定具31により回動移動が規制されるとともに、固定部31に取り付けられた緩衝材36が弾性収縮することで衝撃力が緩和される。
【0062】
このように、支柱20に設けた緩衝機構30によって衝撃力を緩和することで、支柱20に作用する負荷が低減され、支柱20の折れや変形を抑制することができる。また、固定部材40により支柱20の固定点を設定し、この固定点よりも上方に緩衝機構30を設けることで、緩衝機構30によって基部22を斜面から離間させる方向へ移動させる外力を効率よく減少させることができる。
【0063】
さらに、支柱20は、衝撃力が作用していない通常状態において、支柱本体24が擁壁91の上面91aに上方から載置された状態となっているので、立設状態が安定する。また、支柱20は、固定部材40によって斜面91bに対して強固に固定されるとともに、緩衝機構30によって斜面91bに対して揺動可能に固定されるので、支柱20の立設状態の安定性を向上させながら、支柱20に作用する負荷の軽減させることができる。
【0064】
このような防護柵10は、特に、既設の擁壁91に対し、補修を行う際に設置されることが好ましい。つまり、防護柵10は、擁壁91上に固定された基部22が擁壁91の斜面91bを押圧することで、擁壁91が補強されて擁壁91の崩壊が防止される。また、面積拡張部材48によって、擁壁91に対する接地面積を大きく確保することで、より効果的に擁壁91を保護することができる。
【0065】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施の形態では、1本の支柱20に対して一つの緩衝機構30を設けているが、緩衝機構30を複数設ける構成であってもよい。
【0066】
また、
図12に示すように、支柱20が立設されるのは斜面に限られず、例えば、地盤となる垂直擁壁の垂直面91cに基部22が固定されるものであってもよい。この場合、支柱20は、基部22と支柱本体24がそれぞれ垂直方向へ延びるように、直線状の柱状体とすることができる。このように、本発明に係る防護柵は、落石、土砂崩れ、雪崩などの災害から防護するために、構造物や山の斜面等の地盤に設置されるものであればよい。また、本発明に係る防護柵10は、支柱20を地盤の表面に固定するものであって簡単に設置することができるため、既設構造物上に防護柵10を新設する場合や、
図12に示すように既設防護柵(例えば、支柱81が地中に埋設された従来の防護柵)80を補強するために、防護柵10を新設する際などに、特に好適に用いることができる。