特許第6845498号(P6845498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6845498-通信機能付き消火器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845498
(24)【登録日】2021年3月2日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】通信機能付き消火器
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/76 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   A62C13/76 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-220876(P2016-220876)
(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公開番号】特開2018-75311(P2018-75311A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】515088898
【氏名又は名称】モリタ宮田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500343599
【氏名又は名称】武藤 佳恭
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】栗岡 進
(72)【発明者】
【氏名】伝野 輔
(72)【発明者】
【氏名】近江 俊典
(72)【発明者】
【氏名】武藤 佳恭
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−113496(JP,A)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0388693(KR,Y1)
【文献】 特開2007−102295(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0012359(US,A1)
【文献】 特開2006−081650(JP,A)
【文献】 特開2008−245998(JP,A)
【文献】 特開2014−239850(JP,A)
【文献】 特開2016−106866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出時に消火用流体が通る消火用流体通路を備え、
噴射口から前記消火用流体を放出する消火器であって、
前記消火用流体を収容する本体容器と、
前記消火用流体通路の一部であって、前記本体容器内に配置された吐出管と、
前記本体容器の開口部を閉塞する蓋と、
前記蓋の上方に配置された操作レバーと、
前記消火用流体通路の一部であって、前記吐出管に接続され、先端に前記噴射口が設けられたノズル又はホースと、
回転体を有する発電機と、
前記消火用流体の放出時に信号を送信する送信機とを有し、
前記回転体は、前記吐出管の上端と前記噴射口との間に配置され、放出時の前記消火用流体の流動によって回転し、
前記発電機は、前記回転体の回転エネルギーを電力に変換し、
前記送信機は、前記発電機から供給された電力によって動作し、異常が発生したことの通報として前記信号を送信することを特徴とする通信機能付き消火器
【請求項2】
前記送信機は、前記信号を複数回送信することを特徴とする請求項1に記載の通信機能付き消火器
【請求項3】
前記送信機が送信した前記信号に対する応答信号を受信する受信機を有し、
前記受信機は、前記発電機から供給された電力によって動作することを特徴とする請求項1又は請求項に記載の通信機能付き消火器
【請求項4】
前記送信機が送信する前記信号には、前記消火器ごとに付与された識別符号が含まれることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の通信機能付き消火器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生を通報する通信機能を有した消火器に関する。
【背景技術】
【0002】
火災発生時には、速やかに消火活動を行うとともに周囲又は外部へ知らせる必要がある。
特許文献1には、消火薬剤を放射させる操作が消火操作部に対してなされた場合に、予め登録された通報先への通報を行う通報装置を備えた通報装置付き消火器が開示されている。
また、特許文献2には、本体容器の上部に、電源部とPHS制御部とで構成される制御ユニットが取り付けられており、使用に連動して所定の通報先へ通報を行う消火器が開示されている。
また、特許文献3には、ハンドルの動きを検出するセンサーを有し、ハンドルが可動したときに第3者へ通報する消火器が開示されている。
また、特許文献4には、安全ピンの抜き取り又は操作レバーを握ることでアクティブになるRFIDタグを消火器に装備し、携帯電話がRFIDタグから無線送信されるID情報を受信し、ID情報と共に緊急通報を消防関係部署に送信する緊急通報方法が開示されている。
また、特許文献5には、消火器設置台から消火器が持ち出されたことを検知して検知信号を出力する検知手段を備え、検知信号に応じて消火器設置台近傍に設置した警告灯を点滅又は点灯させる複数の消火器設置台及び消火器の設置場所報知方法が開示されている。
また、特許文献6には、外部の電源や制御機器を必要とすることなく、開放型スプリンクラーヘッドからの放水と放水停止の制御動作を可能とする消火設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−245998号公報
【特許文献2】特開2004−113496号公報
【特許文献3】特開2014−239850号公報
【特許文献4】特開2007−102295号公報
【特許文献5】特開2006−81650号公報
【特許文献6】特開2016−106866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の通報装置付き消火器は、電源又は蓄電池によって通報装置に電力を供給している。そのため、電源設備や蓄電池などに対する継続的な保守が必要である。
特許文献2の消火器は、電源又は蓄電池によってPHS制御部に電力を供給している。そのため、電源設備や蓄電池などに対する継続的な保守が必要である。
特許文献3の消火器は、電源又は電池によって制御装置に電力を供給している。そのため、電源設備や蓄電池などに対する継続的な保守が必要である。
特許文献4の緊急通報方法は、RFIDタグから送信されるID情報を受信するRFIDリーダが必要である。そのため、消火器単体では機能しない。
特許文献5の複数の消火器設置台及び消火器の設置場所報知方法は、消火器設置台から消火器が持ち出されたことを検知して検知信号を出力するものである。そのため、実際に消火器が使用されたか否かは判別できない。
特許文献6の消火設備は、水流に常時臨ませた水車を利用して発電する発電機と、発電機で発電した電力を蓄える蓄電池とを備え、蓄電池は、火災による感熱を検出する感熱部、スプリンクラーヘッドに対する分岐流路を開閉する制御弁、及びスプリンクラーヘッドからの放水を制御する制御部に電力を供給している。そのため、水車や蓄電池などに対する継続的な保守が必要である。また、スプリンクラーヘッドから放水されたことを通報するものではない。
【0005】
そこで、本発明は、消火用流体の放出時に消火用流体の流動により発電することで確実に通信する、通信機能付き消火器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の通信機能付き消火器は、放出時に消火用流体が通る消火用流体通路を備え、噴射口から前記消火用流体を放出する消火器であって、前記消火用流体を収容する本体容器と、前記消火用流体通路の一部であって、前記本体容器内に配置された吐出管と、前記本体容器の開口部を閉塞する蓋と、前記蓋の上方に配置された操作レバーと、前記消火用流体通路の一部であって、前記吐出管に接続され、先端に前記噴射口が設けられたノズル又はホースと、回転体を有する発電機と、前記消火用流体の放出時に信号を送信する送信機とを有し、前記回転体は、前記吐出管の上端と前記噴射口との間に配置され、放出時の前記消火用流体の流動によって回転し、前記発電機は、前記回転体の回転エネルギーを電力に変換し、前記送信機は、前記発電機から供給された電力によって動作し、異常が発生したことの通報として前記信号を送信することを特徴とする
求項記載の本発明は、請求項1に記載の通信機能付き消火器において、前記送信機は、前記信号を複数回送信することを特徴とする。
請求項記載の本発明は、請求項1又は請求項に記載の通信機能付き消火器において、前記送信機が送信した前記信号に対する応答信号を受信する受信機を有し、前記受信機は、前記発電機から供給された電力によって動作することを特徴とする。
請求項記載の本発明は、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の通信機能付き消火器において、前記送信機が送信する前記信号には、前記消火器ごとに付与された識別符号が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消火用流体の放出時に消火用流体の流動により発電することで確実に通信する、通信機能付き消火器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による通信機能付き消火装置の設置状態を示す概念図
図2】同通信機能付き消火装置の動作時を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による通信機能付き消火器は、消火用流体を収容する本体容器と、消火用流体通路の一部であって、本体容器内に配置された吐出管と、本体容器の開口部を閉塞する蓋と、蓋の上方に配置された操作レバーと、消火用流体通路の一部であって、吐出管に接続され、先端に噴射口が設けられたノズル又はホースと、回転体を有する発電機と、消火用流体の放出時に信号を送信する送信機とを有し、回転体は、吐出管の上端と噴射口との間に配置され、放出時の消火用流体の流動によって回転し、発電機は、回転体の回転エネルギーを電力に変換し、送信機は、発電機から供給された電力によって動作し、異常が発生したことの通報として信号を送信するものである。本実施の形態によれば、放出時に消火用流体の流動を利用して発電し信号を送信するので、消火用流体が放出されたこと、すなわち火災などの異常が発生したことを通報することができる。また、火災などが発生していない正常時には送信機に対して電力を供給する必要がないため、電源や電池が不要である。また、初期火災の消火に用いられる消火器に適用することで、早期に火災発生を通報することができる。また、消火用流体の流動圧が比較的高い位置に回転体を配置することで、より確実に発電できる。
発明の第の実施の形態は、第1の実施の形態による通信機能付き消火器において、送信機は、信号を複数回送信するものである。本実施の形態によれば、送信した信号が外部の監視盤などに到達しない可能性を低減できる。
本発明の第の実施の形態は、第1又はの実施の形態による通信機能付き消火器において、送信機が送信した信号に対する応答信号を受信する受信機を有し、受信機は、発電機から供給された電力によって動作するものである。本実施の形態によれば、送信した信号が外部の監視施設などに到達したことを確認できる。
本発明の第の実施の形態は、第1から第のいずれか1つの実施の形態による通信機能付き消火器において、送信機が送信する信号には、消火器ごとに付与された識別符号が含まれるものである。本実施の形態によれば、信号を送信した消火器の特定が容易となり、火災発生場所を把握するまでの時間を短縮できる。
【実施例】
【0010】
以下に本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の一実施例による通信機能付き消火装置の設置状態を示す概念図であり、図1(a)はホース付きの消火器を示し、図1(b)はホース無しの消火器を示している。
本実施例において、消火装置は、蓄圧式消火器1である。
消火器1は、本体容器10と、本体容器10に収容された消火薬剤(消火用流体)12と、本体容器10の開口部11を閉塞する蓋13と、蓋13の上方に配置された操作レバー14と、消火薬剤の誤放出を防止する安全栓15と、放出時に消火薬剤12が通る消火用流体通路20を備える。本体容器10内には、空気やガスなどの気体が所定の圧力で蓄圧されている。
また、消火器1は、回転体31を有する発電機30と、発電機30から供給された電力によって動作する送受信機40とを備える。
【0011】
図1(a)において、消火用流体通路20は、本体容器10内に配置された吐出管21と、後端が吐出管21に接続されたホース22とからなる。吐出管21の上部には、操作レバー14の操作により動作する作動弁16が設けられている。ホース22の先端には、噴射口22aが設けられている。
回転体31は、放出時の消火薬剤12の流動によって回転する。回転体31は、消火用流体通路20のうち、消火薬剤12の流動圧が比較的高い吐出管21の上端と噴射口22aとの間に配置されている。消火薬剤12の流動圧が比較的高い位置に回転体31を配置することで、確実に発電できる。なお、図1(a)に示すように、吐出管21とホース22との接続部に回転体31を配置することがより好ましい。
発電機30は、回転体31の回転エネルギーを電力に変換し、得られた電力を送受信機40に供給する。
【0012】
図1(b)において、消火用流体通路20は、本体容器10内に配置された吐出管21と、後端が吐出管21に接続されたノズル23とからなる。ノズル23の先端には、噴射口23aが設けられている。
図1(b)に示すようなホースが無いタイプの消火器の場合も、回転体31の配置は同様である。すなわち回転体31は、消火用流体通路20のうち、吐出管21の上端と噴射口23aとの間に配置される。
【0013】
送受信機40は、消火薬剤12の放出時に信号を送信する送信機能と、送信した信号に対する応答信号を受信する受信機能とを有する。なお、送信機と受信機を別々に設けても良い。また、簡略化のため、受信機を省略し送信機だけを設けることもできる。
送受信機40は、発電機30から供給された電力によって動作するので、火災などが発生していない正常時には電力を供給する必要がない。そのため、家庭用電源や商用電源などの電源や、一次電池や二次電池などの電池が不要である。
【0014】
図2は、本実施例による通信機能付き消火装置の動作時を示す概念図である。なお、図1(a)を用いて説明したホース付きの消火器のみを示し、図1(b)を用いて説明したホース無しの消火器は省略するが、ホース無しの消火器の場合の動作も同様である。
火災などの異常発生時には、操作レバー14の操作により作動弁16が開き、消火薬剤12が吐出管21、ホース22を通って噴射口22aから放出される。
【0015】
回転体31は、この放出時の消火薬剤12の流動によって回転する。発電機30は、回転体31の回転エネルギーを電力に変換し、得られた電力を送受信機40に供給する。
送受信機40は、発電機30から電力が供給されると起動し、火災発生信号などの信号を、消防署などの監視施設50内のサーバー51に接続された外部側送受信機52に向けて送信する。外部側送受信機52は、信号を受信すると、応答信号を送受信機40に向けて送信する。送受信機40は、応答信号を受信すると、応答信号を受信したことを音又は光などの報知手段によって周囲に知らせる。
このように、消火器1は、消火薬剤12の放出時に、消火薬剤12の流動を利用して発電し、信号を送信する。したがって、消火薬剤12が放出されたこと、すなわち火災などの異常が発生したことを通報することができる。特に、初期火災の消火に用いられる消火器1に適用することで、早期に火災発生を通報することができる。また、火災などが発生していない正常時には送受信機40に対して電力を供給する必要がないため、電源や電池が不要である。また、送信した信号に対する応答信号を受信して知らせるので、送信した信号が外部の監視施設50に到達したことを確認できる。
なお、送受信機40は、信号を複数回送信することが好ましい。信号を複数回送信することによって、送信した信号が外部側送受信機52に到達しない可能性を低減できる。これは、受信機を省略して送信機だけを備える場合に特に有効である。
また、送受信機40が送信する信号には、消火器1ごとに付与された識別符号が含まれることが好ましい。信号に識別符号を含めることで、例えば、サーバー51に消火器1の設置場所と識別符号との対応テーブルを予め記憶させておき、外部側送受信機52が識別番号を含む信号を受信した際は、識別番号とテーブルとを照合し、信号を送信した消火器1の設置場所を操作端末53に表示させることができる。これにより、操作端末53を操作する監視員などは、火災発生場所を特定するまでの時間を短縮できる。
【0016】
なお、上記実施例では、消火装置1が蓄圧式消火器の場合を説明したが、本発明は、消火装置1が加圧式消火器の場合やスプリンクラーの場合にも同様に適用できる。なお、消火装置1がスプリンクラーの場合、回転体31が常時水中にあるとスケールが付着して固着する懸念があるので、回転体31は、正常時には水が流れず、火災などが発生してスプリンクラーヘッドから放水される異常時に水が流れる水路に配置することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の通信機能付き消火装置は、一般住居、病院、社屋などにおける消火器やスプリンクラーに適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 消火器(消火装置)
10 本体容器
11 開口部
12 消火薬剤(消火用流体)
13 蓋
14 操作レバー
15 安全栓
16 作動弁
20 消火用流体通路
21 吐出管
22 ホース
22a 噴射口
23 ノズル
23a 噴射口
30 発電機
31 回転体
40 送受信機
50 監視施設
51 サーバー
52 外部側送受信機
53 操作端末
図1
図2